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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080194
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20240606BHJP
   C08J 7/043 20200101ALI20240606BHJP
【FI】
B32B27/30 A
C08J7/043 Z CER
C08J7/043 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193177
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】平間 進
(72)【発明者】
【氏名】角 卓憲
【テーマコード(参考)】
4F006
4F100
【Fターム(参考)】
4F006AA22
4F006AA36
4F006AB24
4F006AB43
4F006BA01
4F006BA02
4F006CA04
4F006CA05
4F006CA08
4F006DA04
4F006EA03
4F006EA05
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK45A
4F100AK49A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA26
4F100EH46
4F100EJ05C
4F100EJ08C
4F100JL11
(57)【要約】
【課題】新規な基材を提供する。
【解決手段】基材を、樹脂(A)を含む基材層(A)上に、アミノ基を有するポリマー(B)を含有する層(B)が形成された基材とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(A)を含む基材層(A)上に、アミノ基を有するポリマー(B)を含有する層(B)が形成された基材。
【請求項2】
前記樹脂(A)が、アクリル樹脂(A1)を含む、請求項1記載の基材。
【請求項3】
前記アクリル樹脂(A1)が、主鎖に環構造を有するアクリル樹脂(A1-1)を含む、請求項2記載の基材。
【請求項4】
前記主鎖に環構造を有するアクリル樹脂(A1-1)が、環構造を1~50質量%の割合で有する、請求項3記載の基材。
【請求項5】
前記主鎖に環構造を有するアクリル樹脂(A1-1)が、N-置換マレイミド単量体由来の構造、グルタルイミド構造及びラクトン環構造から選択された少なくとも1つの環構造を0質量%超25質量%以下の割合で有する、請求項4記載の基材。
【請求項6】
前記樹脂(A)が、更にポリカーボネート樹脂(A2)を含む、請求項2記載の基材。
【請求項7】
前記主鎖に環構造を有するアクリル樹脂(A1-1)が、N-置換マレイミド単量体由来の構造、グルタルイミド構造及びラクトン環構造から選択された少なくとも1つの環構造を有し、
前記樹脂(A)が、更にポリカーボネート樹脂(A2)を含み、
前記主鎖に環構造を有するアクリル樹脂(A1-1)とポリカーボネート樹脂(A2)との質量比(前者/後者(質量比))が、5/95~95/5である、請求項3記載の基材。
【請求項8】
前記ポリマー(B)が、ポリアルキレンイミン及びイミノアルキレン骨格を有するアクリルポリマーから選択された少なくとも1種を含む、請求項1又は2記載の基材。
【請求項9】
前記ポリマー(B)が、イミノアルキレン骨格を有するアクリルポリマーを含む、請求項8記載の基材。
【請求項10】
前記基材層(A)と前記層(B)との厚み比が、1/0.001~1/0.1である、請求項1又は2記載の基材。
【請求項11】
樹脂(A)を含む基材層(A)と、
前記基材層(A)上に形成され、アミノ基を有するポリマー(B)を含有する層(B)と、
前記層(B)上に形成された表面層(C)とを含む積層フィルム。
【請求項12】
前記ポリマー(B)が、ポリアルキレンイミン及びイミノアルキレン骨格を有するアクリルポリマーから選択された少なくとも1種である、請求項11記載の積層フィルム。
【請求項13】
前記ポリマー(B)が、イミノアルキレン骨格を有するアクリルポリマーである、請求項12記載の積層フィルム。
【請求項14】
前記表面層(C)が、架橋ないし硬化した樹脂を含む、請求項11記載の積層フィルム。
【請求項15】
前記表面層(C)が、有機溶媒由来の成分を50質量ppm以上含む、請求項11記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルム等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2014-162860号公報)には、熱可塑性樹脂フィルム上に水性塗料からなる塗膜が形成されてなる積層フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-162860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、新規な基材(例えば、表面層を形成するための基材)等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者の検討によれば、上記特許文献1のように、基材(基材フィルム)上に表面層(塗布液等により形成される層(塗膜)等)を形成する際、十分な密着性(例えば、基材に対する密着性)で表面層を形成できない場合や、表面層を形成するための塗液(塗布液、コーティング液)により基材が浸食される場合があることがわかった。
【0006】
このような中、本発明者は、樹脂[アクリル樹脂(例えば、主鎖に環構造を有するアクリル樹脂等)等]を含む基材層上に、特定のポリマーを含有する特定の層(中間層)を形成することで、基材層上(中間層上)に表面層を形成(中間層を介して表面層を形成)しても、十分な密着性で表面層を形成したり、基材層の浸食を効率よく抑制(ないし防止)したりできること、特に、表面層を塗液(例えば、有機溶媒を含む塗布液)により形成しても、十分な密着性での表面層の形成と効率よい基材の浸食の抑制とを両立できること等を見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の発明等に関する。
[1]
樹脂(A)を含む基材層(A)上に、アミノ基を有するポリマー(B)を含有する層(B)が形成された基材。
[2]
前記樹脂(A)が、アクリル樹脂(A1)を含む、[1]記載の基材。
[3]
前記アクリル樹脂(A1)が、主鎖に環構造を有するアクリル樹脂(A1-1)を含む、[2]記載の基材。
[4]
前記主鎖に環構造を有するアクリル樹脂(A1-1)が、環構造を1~50質量%の割合で有する、[3]記載の基材。
[5]
前記主鎖に環構造を有するアクリル樹脂(A1-1)が、N-置換マレイミド単量体由来の構造、グルタルイミド構造及びラクトン環構造から選択された少なくとも1つの環構造を0質量%超25質量%以下の割合で有する、[4]記載の基材。
[6]
前記樹脂(A)が、更にポリカーボネート樹脂(A2)を含む、[2]記載の基材。
[7]
前記主鎖に環構造を有するアクリル樹脂(A1-1)が、N-置換マレイミド単量体由来の構造、グルタルイミド構造及びラクトン環構造から選択された少なくとも1つの環構造を有し、
前記樹脂(A)が、更にポリカーボネート樹脂(A2)を含み、
前記主鎖に環構造を有するアクリル樹脂(A1-1)とポリカーボネート樹脂(A2)との質量比(前者/後者(質量比))が、5/95~95/5である、[3]記載の基材。
[8]
前記ポリマー(B)が、ポリアルキレンイミン及びイミノアルキレン骨格を有するアクリルポリマーから選択された少なくとも1種を含む、[1]又は[2]記載の基材。
[9]
前記ポリマー(B)が、イミノアルキレン骨格を有するアクリルポリマーを含む、[8]記載の基材。
[10]
前記基材層(A)と前記層(B)との厚み比が、1/0.001~1/0.1である、[1]又は[2]記載の基材。
[11]
樹脂(A)を含む基材層(A)と、
前記基材層(A)上に形成され、アミノ基を有するポリマー(B)を含有する層(B)と、
前記層(B)上に形成された表面層(C)とを含む積層フィルム。
[12]
前記ポリマー(B)が、ポリアルキレンイミン及びイミノアルキレン骨格を有するアクリルポリマーから選択された少なくとも1種である、[11]記載の積層フィルム。
[13]
前記ポリマー(B)が、イミノアルキレン骨格を有するアクリルポリマーである、[12]記載の積層フィルム。
[14]
前記表面層(C)が、架橋ないし硬化した樹脂を含む、[11]記載の積層フィルム。
[15]
前記表面層(C)が、有機溶媒(有機溶媒由来の成分)を50質量ppm以上含む、[11]記載の積層フィルム。
[16]
樹脂(A)を含む基材層(A)と、
前記基材層(A)上に形成され、アミノ基を有するポリマー(B)を含有する層(B)と、
前記層(B)上に形成された表面層(C)とを含む積層フィルムを製造する方法であって、
前記基材層(A)上に、前記層(B)が形成された基材の前記層(B)に、前記表面層(C)の形成成分を含む塗布液を塗布する塗布工程を含む、積層体の製造方法。
[17]
前記塗布液が、有機溶媒を含む[16]記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新規な基材を提供しうる。このような基材は、樹脂を含む基材層と、この基材層上に形成された特定のポリマーを含む層(中間層)とで構成されており、基材層上に、表面層を形成するための基材等として使用しうる。
このような新規な基材の一態様によれば、中間層を介して表面層を形成することで、十分な(高い、優れた)密着性にて表面層を形成しうる。
また、このような基材の他の態様によれば、中間層を介して表面層を形成することで、表面層の形成のために塗液(又は塗布液、例えば、有機溶媒を含む塗布液)を使用しても、基材層の浸食を効率よく抑制ないし防止しつつ、表面層を形成しうる。
さらに、このような基材のさらに他の態様によれば、中間層を介して表面層を形成することで、表面層の形成のために塗液(又は塗布液、例えば、有機溶媒を含む塗布液)を使用しても、十分な(高い、優れた)密着性と、基材層の浸食の効率よい抑制ないし防止とを両立しつつ、表面層を形成しうる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
・基材
本発明の基材は、基材層(層(A)等ということがある)と、この基材上に形成された、アミノ基を有するポリマー(ポリマー(B)等ということがある)を含有する層(層(B)等ということがある)とで構成されている。
【0010】
<基材層>
基材層は、樹脂(樹脂(A)等ということがある)を含む(樹脂(A)で構成されている)。すなわち、基材層は、樹脂(A)を構成成分とする樹脂基材(基材層)である。
【0011】
樹脂(A)は、特に限定されず、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等のいずれであってもよいが、熱可塑性樹脂を好適に使用してもよい。
【0012】
具体的な樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂[例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)等]、シクロオレフィン系樹脂、ハロゲン系樹脂(又はハロゲン含有樹脂、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系ポリマー)、スチレン系樹脂[例えば、ポリスチレン、スチレン系共重合体(例えば、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(ABS樹脂)、アクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体(ASA樹脂)等)等]、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂)、ポリアミド系樹脂(例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610等の脂肪族ポリアミド系樹脂)、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ゴム質重合体[例えば、ゴム(ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴム等)を配合したスチレン系ポリマー(例えば、ABS樹脂、ASA樹脂等のスチレン系共重合体)等]、セルロース系樹脂{又はセルロース誘導体、例えば、セルロースエステル[例えば、セルロースアセテート(セルロースジアセテート、セルローストリアセテート)、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースアシレート]、セルロースエーテル[例えば、アルキルセルロース(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース等)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドキシエチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース等)、カルボキシアルキルセルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース等)]、シアノエチルセルロース等}、熱可塑性エラストマー(例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、アミド系エラストマー)等が挙げられる。
【0013】
樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0014】
これらの樹脂のうち、本発明の効果を効率よく得やすい等の観点から、アクリル樹脂(アクリル系樹脂)、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネート系樹脂)等が好ましい。そのため、樹脂(A)(又は基材層(A))は、アクリル樹脂(アクリル樹脂(A1)等ということがある)及びポリカーボネート樹脂(ポリカーボネート樹脂(A2)等ということがある)から選択された少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0015】
以下、アクリル樹脂及びポリカーボネート樹脂について詳述する。
【0016】
[アクリル樹脂(A1)]
アクリル樹脂(A1)は、通常、(メタ)アクリル酸エステル単位[(メタ)アクリル酸エステル由来の単位(構造単位)]を有していてもよい。
【0017】
(メタ)アクリル酸エステル単位を構成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、脂肪族(メタ)アクリレート[例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸C1-18アルキル)等]、脂環族(メタ)アクリレート[例えば、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸シクロプロピル、(メタ)アクリル酸シクロブチル等の(メタ)アクリル酸C3-20シクロアルキル)、架橋環式(メタ)アクリレート(例えば、(メタ)アクリル酸イソボルニル)等]、芳香族(メタ)アクリレート[例えば、(メタ)アクリル酸アリールエステル(例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸o-トリル等の(メタ)アクリル酸C6-20アリール)、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸C6-10アリールC1-4アルキル)、(メタ)アクリル酸フェノキシアルキル(例えば、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等の(メタ)アクリル酸フェノキシC1-4アルキル)等]等が挙げられる。
【0018】
(メタ)アクリル酸エステルには、置換基(例えば、ヒドロキシル基、アルコキシ基、グリシジル基等)を有する(メタ)アクリル酸エステルも含まれる。このような(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、ヒドロキシル基を有するメタクリル酸エステル[例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-12アルキル)等]、アルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル[例えば、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル等のメタクリル酸C1-12アルコキシC1-12アルキル等)]、グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等)等が挙げられる。
【0019】
(メタ)アクリル酸エステルは、1種又は2種以上組み合わせて(メタ)アクリル酸エステル単位を構成してもよい。
【0020】
(メタ)アクリル酸エステル単位は、所望の物性にもよるが、特に、メタクリル酸エステル単位を少なくとも含むことが好ましい。
【0021】
(メタ)アクリル酸エステル単位を構成するメタクリル酸エステルとしては、例えば、脂肪族メタクリレート[例えば、メタクリル酸アルキルエステル(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸へプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸ヘプタデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸C1-18アルキル、好ましくはメタクリル酸C1-12アルキル)等]、脂環族メタクリレート[例えば、メタクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、メタクリル酸シクロプロピル、メタクリル酸シクロブチル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸C3-20シクロアルキル、好ましくはメタクリル酸C3-12シクロアルキル)、架橋環式メタクリレート(例えば、メタクリル酸イソボルニル等)等]、芳香族メタクリレート[例えば、メタクリル酸アリールエステル(例えば、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸o-トリル、メタクリル酸m-トリル、メタクリル酸p-トリル、メタクリル酸2,3-キシリル、メタクリル酸2,4-キシリル、メタクリル酸2,5-キシリル、メタクリル酸2,6-キシリル、メタクリル酸3,4-キシリル、メタクリル酸3,5-キシリル、メタクリル酸1-ナフチル、メタクリル酸2-ナフチル、メタクリル酸ビナフチル、メタクリル酸アントリル等のメタクリル酸C6-20アリール、好ましくはメタクリル酸C6-10アリール)、メタクリル酸アラルキルエステル(例えば、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸C6-10アリールC1-4アルキル)、メタクリル酸フェノキシアルキル(例えば、メタクリル酸フェノキシエチル等のメタクリル酸フェノキシC1-4アルキル)等]等を挙げることができる。
【0022】
(メタ)アクリル酸エステル単位は、メタクリル酸エステル単位の中でも、透明性を向上させる等の観点から、メタクリル酸アルキルエステル単位(例えば、メタクリル酸C1-18アルキル単位)を少なくとも含むことが好ましく、特にメタクリル酸メチル単位を少なくとも含むことがさらに好ましい。
【0023】
なお、アクリル樹脂(A1)は、必要に応じて、(メタ)アクリル酸エステル単位以外の他の重合性単量体(モノマー)由来の単位を含んでいてもよい。このような他のモノマーとしては、例えば、酸基含有モノマー(メタクリル酸、アクリル酸等)、スチレン系モノマー[例えば、スチレン、ビニルトルエン、置換基(例えば、ハロゲン基、アルコキシ基、アルキル基、ヒドロキシ基等)を有するスチレン(例えば、α―メチルスチレン、クロロスチレン等)、スチレンスルホン酸又はその塩等]、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル等)、不飽和ニトリル(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、オレフィン系モノマー(例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-オクテン等のC2-10アルケン)、アミド基含有ビニル系単量体[例えば、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド(例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N-シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN-シクロアルキル(メタ)アクリルアミド;N-フェニル(メタ)アクリルアミド等のN-アリール(メタ)アクリルアミド;N-ベンジル(メタ)アクリルアミド等のN-アラルキル(メタ)アクリルアミド等)等]、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステル(例えば、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル等のアルキルエステル)等が挙げられる。
【0024】
他のモノマーは、1種又は2種以上組み合わせて他のモノマー由来の単位を構成してもよい。
【0025】
アクリル樹脂(A1)(又はアクリル樹脂(A1)の構成単位)中の(メタ)アクリル酸エステル単位の含有割合は、例えば、10質量%以上(例えば、20質量%以上)の範囲から選択でき、好ましくは30質量%以上(例えば、40質量%以上)、さらに好ましくは50質量%以上(例えば、55質量%以上)であってもよく、60質量%以上、70質量%以上等であってもよい。
【0026】
アクリル樹脂(A1)がメタクリル酸エステル単位を含む場合、アクリル樹脂(A1)(又はアクリル樹脂(A1)の構成単位)中のメタクリル酸エステル単位の含有割合は、例えば、10質量%以上の範囲から選択でき、20質量%以上、好ましくは30質量%以上(例えば、40質量%以上)、さらに好ましくは50質量%以上(例えば、55質量%以上)であってもよく、60質量%以上、70質量%以上等であってもよい。
【0027】
アクリル樹脂(A1)がメタクリル酸エステル単位を含む場合、(メタ)アクリル酸エステル単位中のメタクリル酸エステル単位の含有割合は、例えば、10質量%以上(例えば、20質量%以上)、好ましくは30質量%以上(例えば、40質量%以上)、さらに好ましくは50質量%以上(例えば、60質量%以上)であってもよく、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上等であってもよい。
【0028】
アクリル樹脂(A1)がメタクリル酸アルキルエステル単位を含む場合、(メタ)アクリル酸エステル単位中のメタクリル酸アルキルエステル単位の含有割合は、例えば、10質量%以上(例えば、20質量%以上)、好ましくは30質量%以上(例えば、40質量%以上)、さらに好ましくは50質量%以上(例えば、60質量%以上)であってもよく、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上等であってもよい。
【0029】
アクリル樹脂(A1)がメタクリル酸メチル単位を含む場合、(メタ)アクリル酸エステル単位中のメタクリル酸メチル単位の含有割合は、例えば、10質量%以上(例えば、20質量%以上)、好ましくは30質量%以上(例えば、40質量%以上)、さらに好ましくは50質量%以上(例えば、60質量%以上)であってもよく、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上等であってもよい。
【0030】
(環構造)
アクリル樹脂(A1)は、環構造(環状構造)を有するアクリル樹脂(アクリル樹脂(A1-1)等ということがある)であってもよい。この環構造は、通常、アクリル樹脂(ポリマー鎖)の主鎖に有するものであってもよい。
【0031】
アクリル樹脂が環構造を有することにより、アクリル樹脂において種々の物性(例えば、耐熱性、硬度(強度)、酸素や水蒸気のバリヤ性、光学特性、寸法安定性、形状安定性等)を、付与、改善又は向上しうる。
特に、環構造を有することで、耐溶剤性がある程度向上できることが想定されるが、本発明者の検討によれば、環構造を有しても十分な耐溶剤性が得られない場合(またはさらに向上ないし改善された耐溶剤性が必要となる場合)があることがわかった。そのため、本発明では、上記のような物性を付与しつつ、十分な耐溶剤性(例えば、環構造の割合を極端に大きくする等を要さずとも、優れた耐溶剤性)を実現しうる。
【0032】
具体的な環構造としては、例えば、環状イミド構造(例えば、N-置換マレイミド単量体由来の構造、グルタルイミド構造等)、環状アミド構造(例えば、ラクタム構造等)、環状エステル構造(例えば、ラクトン環構造等)、無水酸構造(例えば、無水マレイン酸単量体由来の構造、無水グルタル酸構造)等が挙げられる。
【0033】
環構造は、特に、非無水酸構造(例えば、無水マレイン酸単量体由来の構造、無水グルタル酸構造等でない環構造)であってもよい。
【0034】
環構造を有するアクリル樹脂(アクリル樹脂(A1-1))は、1種又は2種以上の環構造を有していてもよい。なお、2種以上の環構造を有する場合、2種以上の環構造は、同系統の環構造(例えば、2種以上の環状イミド構造等)であってもよく、異なる系統の環構造(例えば、環状イミド構造とラクトン構造との組み合わせ等)であってもよい。
【0035】
グルタルイミド構造及び無水グルタル酸構造としては、例えば、以下の式(1)で表される構造が挙げられる。
【0036】
【化1】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基であり、Rは水素原子又は置換基であり、Xは酸素原子又は窒素原子である。Xが酸素原子のときn=0であり、Xが窒素原子のときn=1である。)
【0037】
式(1)のR1及びR2において、アルキル基としては、例えば、C1-8アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソへキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等)等が挙げられる。
【0038】
1及びR2は、特に、水素原子又はC1-4アルキル基であるのが好ましい。
【0039】
式(1)のRにおいて、置換基としては、例えば、炭化水素基等が挙げられる。
炭化水素基としては、例えば、脂肪族基、脂環族基、芳香族基等が挙げられる。なお、炭化水素基は、さらにハロゲン等の置換基を有していてもよい。
【0040】
式(1)のRにおいて、脂肪族基としては、例えば、C1-10アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソへキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等)等が挙げられる。これらのアルキル基のなかでも、C1-4アルキル基、特にメチル基が好ましい。
【0041】
式(1)のRにおいて、脂環族基としては、例えば、C3-12シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)が挙げられる。これらのシクロアルキル基のなかでも、C3-7シクロアルキル基、特にシクロヘキシル基が好ましい。
【0042】
式(1)のRにおいて、芳香族基としては、例えば、C6-20芳香族基[例えば、C6-20アリール基(例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、2,3-キシリル基、2,4-キシリル基、2,5-キシリル基、2,6-キシリル基、3,4-キシリル基、3,5-キシリル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、ビナフチル基、アントリル基等)、C7-20アラルキル基(例えば、ベンジル基等)等]が挙げられる。これらの芳香族基のなかでも、フェニル基及びトリル基が好ましい。
【0043】
代表的には、式(1)において、R及びRがそれぞれ独立して水素原子又はメチル基、Rが、C1-10アルキル基、C3-12シクロアルキル基又はC6-20芳香族基であってもよく、好ましくは、R及びRがそれぞれ独立して水素原子又はメチル基、Rが、C1-4アルキル基、C3-7シクロアルキル基、C6-20アリール基又はC7-20アラルキル基であってもよく、さらに好ましくは、R及びRがそれぞれ独立して水素原子又はメチル基、Rが、メチル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はトリル基であり、最も好ましくは、R及びRがそれぞれ独立して水素原子又はメチル基、Rがシクロヘキシル基又はフェニル基であってもよい。
【0044】
なお、環構造は、式(1)で表わされる構造を1種又は2種以上有していてもよい。
【0045】
特に、環構造が、式(1)で表される構造を有する場合、環状非無水物構造であるグルタルイミド構造(すなわち、式(1)において、Xが窒素原子である構造)を有するのが好ましい。
なお、上記式(1)において、Xが酸素原子(及びn=0)のとき、上記式で表される構造は、無水グルタル酸構造となる。このような無水グルタル酸構造は、加水分解したり、酸価が大きくなって耐水性や耐熱水性を低下させたり光学特性を変動させる虞がある。そのため、環構造は、無水グルタル酸構造を実質的に有していないか、含んでいても少
ないのが好ましい場合がある。
【0046】
マレイミド単量体(特にN-置換マレイミド単量体)及び無水マレイン酸単量体由来の構造としては、例えば、以下の式(2)で表される構造が挙げられる。
【0047】
【化2】
(式中、R、Rは互いに独立して水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子又は置換基であり、Xは酸素原子または窒素原子である。Xが酸素原子のときn=0であり、Xが窒素原子のときn=1である。)
【0048】
式(2)のRにおいて、置換基としては、例えば、炭化水素基等が挙げられる。
当該炭化水素基としては、例えば、脂肪族基{例えば、アルキル基[例えば、C1-6直鎖アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)、C1-6分岐アルキル基(例えば、イソプロピル基等)等のC1-6アルキル基等]等}、脂環族基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のC3-20シクロアルキル基等)、芳香族基{例えば、C6-20芳香族基[例えば、C7-20アラルキル基(例えば、ベンジル基等)、C6-20アリール基(例えば、フェニル基等)]}等が挙げられる。なお、炭化水素基は、さらにハロゲン等の置換基を有していてもよい。
【0049】
式(2)において、好ましくは、R及びRがそれぞれ独立して水素原子、RがC3-20シクロアルキル基又はC6-20芳香族基であってもよく、より好ましくはR及びRがそれぞれ独立して水素原子、Rがシクロヘキシル基、ベンジル基又はフェニル基であってもよい。
【0050】
が酸素原子のとき、式(2)により示される環構造は無水マレイン酸単量体由来の構造となる。
【0051】
一方、Xが窒素原子のとき、式(2)により示される環構造はN-置換マレイミド単量体由来の構造となる。
【0052】
式(2)において、Xが窒素原子のとき、好ましくは、R及びRがそれぞれ独立して水素原子、RがC3-20シクロアルキル基又はC6-20芳香族基であってもよく、より好ましくはR及びRがそれぞれ独立して水素原子、Rがシクロヘキシル基、ベンジル基又はフェニル基であってもよい。
【0053】
環構造は、式(2)で表わされる構造を1種又は2種以上有していてもよい。
【0054】
特に、環構造が、式(2)で表される構造を有する場合、環状非無水酸構造であるマレイミド単量体由来の構造(すなわち、式(2)において、Xが窒素原子である構造)を有するのが好ましい。
【0055】
なお、上記式(2)において、Xが酸素原子(及びn=0)であるとき、上記式(2)は無水マレイン酸単量体由来の構造となる。このような無水マレイン酸単量体由来の構造は、加水分解したり、酸価が大きくなって耐水性や耐熱水性を低下させたり光学特性を変動させる虞がある。そのため、環構造は、無水マレイン酸単量体由来の構造を実質的に有していないか、含んでいても少ないのが好ましい場合がある。
【0056】
ラクトン環構造としては、特に限定されず、例えば、4から8員環であってもよいが、環構造の安定性に優れることから5員環又は6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。
【0057】
ラクトン環構造は、特開2004-168882号公報等に開示される構造等であってもよいが、例えば、以下の式(3)で表される構造や式(4)で表される構造等が挙げられる。
【0058】
【化3】
(式中、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子又は置換基である。)
【0059】
式(3)において、置換基としては、例えば、炭化水素基等の有機残基等が挙げられる。
当該炭化水素基としては、例えば、脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のC1-20アルキル基、エテニル基、プロペニル基等のC2-20不飽和脂肪族炭化水素基等)、芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基等のC6-20芳香族炭化水素基等)等が挙げられる。
【0060】
前記炭化水素基は、酸素原子を含んでいてもよく、水素原子の一つ以上が、水酸基、カルボキシル基、エーテル基及びエステル基から選ばれる少なくとも1種類の基により置換されていてもよい。
【0061】
式(3)において、好ましくは、Rが水素原子又はメチル基、R及びRがそれぞれ独立して水素原子又はC1-20アルキル基であってもよく、より好ましくは、Rが水素原子又はメチル基、R及びRがそれぞれ独立して水素原子又はメチル基であってもよい。
【0062】
【化4】
(式中、R10、R11、R12およびR13は、互いに独立して、水素原子又は置換基(例えば、炭化水素基(例えば、炭素数1~18の炭化水素基)又は複素環基)である。)
【0063】
式(4)において、炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基は、例えば、アルキル基(前記例示のアルキル基等)が挙げられる。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~8がより好ましい。アルキル基は、直鎖状であってもよく、環状であってもよく、分岐を有してもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ベンジル基などの前記例示の芳香族炭化水素基が挙げられる。
複素環基としては、例えば、テトラヒドロフラニル基、ピリジル基等のヘテロ原子を含む(例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を単独で又は2種以上組み合わせで含む)ヘテロ環基が挙げられる。
【0064】
10~R13は、互いに独立して、水素原子または炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、全て水素原子であることがより好ましい。
【0065】
式(3)には6員環のラクトン環構造が示され、式(4)には5員環のラクトン環構造が示されるが、ラクトン環構造は4員環から8員環であってもよい。環構造の安定性に優れることから、環構造は5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。
【0066】
環構造は、式(3)で表される構造及び式(4)で表される構造を、それぞれ、1種又は2種以上含んでいてもよい。また、環構造は、式(3)で表される構造及び式(4)で表される構造を組み合わせて含んでいてもよい。
【0067】
ラクタム環構造としては、特に限定されず、例えば、以下の式(5)で表されるピロリジノン環構造等が挙げられる。
【0068】
ピロリジノン環構造は、基本骨格として5員環のアミド環構造(環状アミド構造)を有する。この環状アミド構造は、5員環のラクタム構造(γ―ラクタム構造)でもある。主鎖にピロリジノン環構造を有するとは、5員環であるピロリジノン環構造の基本骨格を構成する5つの原子のうち少なくとも1つの原子、典型的にはアミド結合(―N(R)CO-)を構成しない3つの炭素原子が当該重合体の主鎖に位置し、主鎖を構成することを意味する。
【0069】
【化5】
(式中、R14~R16は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基である。)
【0070】
式(5)のR14において、置換基としては、例えば、炭化水素基又は-NHCOR17基(R17は、水素原子又は炭化水素基)等が挙げられる。
【0071】
14又はR17における炭化水素基としては、例えば、脂肪族基、脂環族基、芳香族基等が挙げられる。
脂肪族基としては、例えば、C1-18アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プ
ロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のC1-18直鎖又は分岐アルキル基等)等が挙げられる。
脂環族基としては、例えば、C3-18シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)等が挙げられる。
芳香族基としては、例えば、C6-20芳香族基[例えば、C6-20アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等)、C7-20アラルキル基(例えば、ベンジル基等)等]が挙げられる。
【0072】
14としては、特に、水素原子、C1-18直鎖アルキル基(例えば、メチル基等)等が好ましい。
また、R17としては、特に、水素原子、C1-18直鎖アルキル基(好ましくは、C1-12直鎖アルキル基、より好ましくは、C1-4直鎖アルキル基等)、C6-20アリール基(例えば、フェニル基等)、C3-18シクロアルキル基(好ましくは、C3-12シクロアルキル基、より好ましくは、C3-6シクロアルキル基等)等が好ましい。
【0073】
式(5)のR15において、置換基としては、例えば、-COOR18基(R18は、水素原子又は炭化水素基)等が挙げられる。
【0074】
18における炭化水素基としては、例えば、R14又はR17で例示の炭化水素基等が挙げられる。
また、R18の特に好ましい態様も、R17の特に好ましい態様と同じである。
【0075】
式(5)のR16において、置換基としては、例えば、-COR19基(R19は、水素原子又は炭化水素基)等が挙げられる。
【0076】
19における炭化水素基としては、例えば、R14又はR17で例示の炭化水素基等が挙げられる。
また、R19の特に好ましい態様も、R17の特に好ましい態様と同じである。
【0077】
アクリル樹脂(A1-1)が有する環構造は、所望の物性(例えば、耐熱性、硬度(強度)、耐溶剤性、表面硬度、酸素や水蒸気のバリヤ性、光学特性、寸法安定性、形状安定性等)等に応じて適宜選択してもよい。例えば、耐熱性等の観点から、環構造は、ラクトン環構造、環状イミド構造(例えば、N-置換マレイミド単量体由来の構造、グルタルイミド構造等)を好適に含んでいてもよい。
【0078】
また、耐水性や耐熱水性等の観点から、環構造は、環状非無水物構造[例えば、ラクトン環構造、環状イミド構造(特に、グルタルイミド構造、N-置換マレイミド単量体由来の構造)]を好適に含んでいてもよい。
【0079】
さらに、表面硬度、耐溶剤性、バリヤ特性、光学特性等の観点から、環構造は、ラクトン環構造、グルタルイミド構造等を好適に含んでいてもよい。
【0080】
特に、環構造は、環状イミド構造(特に、グルタルイミド構造、N-置換マレイミド単量体由来の構造)及びラクトン環構造から選択された少なくとも1種の環構造を含有していてもよく、特に少なくともラクトン環構造を含有していてもよい。なお、このような環構造であれば、他の樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂等)との組み合わせにおいて、各種物性のバランス(例えば、耐熱性と屈折率等)を調整しやすい場合もある。
【0081】
環構造の含有割合は、用途や所望の物性等に応じて選択でき、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂(A1-1)中、0質量%超(例えば、0.1質量%以上、0.5質量%以上)程度の範囲から選択でき、1質量%以上、好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であってもよく、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上等であってもよい。
【0082】
環構造の含有割合(又はその上限値)は、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂(A1)中、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、22質量%以下、20質量%以下等であってもよい。
【0083】
環構造の含有割合が大きくなると、耐熱性、硬度(強度)、耐溶剤性、表面硬度、寸法安定性等の点で好ましい。
一方、環構造の含有割合が大きくなりすぎると、脆くなったり、透明性低下、光弾性係数の絶対値増加等につながる可能性がある。
このような観点から、環構造は、少なすぎず大きくなりすぎない、適度な含有割合としてもよい。
特に、本発明では、層(B)を形成することにより(又は層(B)の形成により相乗的に)、優れた耐溶剤性を実現しやすいため、環構造の含有割合を極端に大きくすることなく(例えば、環構造の種類等によっても選択できるが、アクリル樹脂(A1-1)中、50質量%以下、好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下等)、上記のような物性を効率よく得ることも可能である。
【0084】
なお、これらの上限値と下限値とを適宜組み合わせて適当な範囲(例えば、1~70質量%、3~60質量%、5~60質量%、5~50質量%等)を設定してもよい(他も同じ)。
【0085】
特に、アクリル樹脂(A1-1)が、グルタルイミド構造を有する場合、グルタルイミド構造の含有割合は、例えば、1質量%以上(例えば、5質量%以上)、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であってもよく、90質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下(例えば、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下等)であってもよい。
【0086】
アクリル樹脂(A1-1)が、N-置換マレイミド単量体由来の構造を有する場合、N-置換マレイミド単量体由来の構造の含有割合は、例えば、1質量%以上(例えば、3質量%以上)程度の範囲から選択、5質量%以上(例えば、5~90質量%)、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~50質量%、さらに好ましくは10~30質量%であってもよく、40質量%以下(例えば、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下等)であってもよい。
【0087】
アクリル樹脂(A1-1)が、ラクトン環構造を有する場合、ラクトン環構造の含有割合は、例えば、1質量%以上(例えば、1~90質量%、1~80質量%)程度の範囲から選択、3質量%以上(例えば、3~70質量%)、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~50質量%(例えば、10~30質量%)であってもよく、40質量%以下(例えば、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下等)であってもよい。
【0088】
アクリル樹脂(A1-1)が、ラクタム環構造を有する場合、ラクタム環構造の含有割合は、例えば、1~80質量%、好ましくは5~70質量%、さらに好ましくは10~50質量%程度であってもよい。
【0089】
なお、アクリル樹脂(A1-1)における環構造の割合は、環構造の種類等に応じて、慣用の方法を利用でき、例えば、環状エステル構造(ラクトン環構造)の割合は、脱アルコール反応率に基づいて求めてもよく、非環状エステル構造(例えば、環状イミド構造、環状アミド構造、無水酸構造等)の割合は、NMR(例えば、H-NMR、13C-NMR等)分析に基づいて求めてもよい。NMR分析(NMR測定)において、分析(測定)条件は、適宜選択できるが、例えば、所定の測定溶媒(例えば、CDCl、DMSO-d)を用い、所定の測定温度(例えば、40℃)で分析(測定)してもよい。
【0090】
一例として、脱アルコール反応率に基づく方法を説明する。
【0091】
まず、重合で得られた重合体組成からすべての水酸基がメタノールとして脱アルコールした際に起こる重量減少量を基準にし、ダイナミックTG測定において重量減少が始まる前の150℃から重合体の分解が始まる前の300℃までの脱アルコール反応による重量減少から、脱アルコール反応率を求めた。
すなわち、ラクトン環構造を有した重合体のダイナミックTG測定において150℃から300℃までの間の重量減少率の測定を行い、得られた実測重量減少率を(X)とする。他方、当該重合体の組成から、その重合体組成に含まれる全ての水酸基がラクトン環の形成に関与するためアルコールになり脱アルコールすると仮定した時の理論重量減少率(すなわち、その組成上において100%脱アルコール反応が起きたと仮定して算出した重量減少率)を(Y)とする。
なお、理論重量減少率(Y)は、より具体的には、重合体中の脱アルコール反応に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体のモル比、すなわち当該重合体組成における前記原料単量体の含有率から算出することができる。
これらの値(X)、(Y)を脱アルコール計算式:
1-(実測重量減少率(X)/理論重量減少率(Y))
に代入してその値を求め、%で表記すると、脱アルコール反応率が得られる。
【0092】
なお、アクリル樹脂(A1)は、通常、熱可塑性(樹脂)であってもよい。
【0093】
(各種物性等)
アクリル樹脂(A1)(例えば、アクリル樹脂(A1-1))の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、5000以上(例えば、7000以上程度の範囲から選択してもよく、例えば、10000以上(例えば、10000~1000000)、好ましくは20000以上(例えば、25000~500000)、さらに好ましくは30000以上(例えば、50000~300000)であってもよい。特に、アクリル樹脂(A1)のMwが50000以上(例えば、80000~200000)であると、樹脂基材自体の強度、搬送工程での取り扱い性、製膜性のバランス等の点で好ましい。
【0094】
アクリル樹脂(A1)の分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定されないが、例えば、1~10(例えば、1.1~7.0)、好ましくは1.2~5.0(例えば、1.5~4.0)程度であってもよく、1.5~3.0程度であってもよい。
【0095】
なお、分子量(及び分子量分布)は、例えば、GPCを用い、ポリスチレン換算により測定してもよい。
【0096】
アクリル樹脂(A1)のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、例えば、50℃以上(例えば、60~250℃)程度のものを使用してもよく、比較的高いもの[例えば、70℃以上(例えば、80~200℃)、好ましくは90℃以上(例えば、100~180℃)、さらに好ましくは110℃以上(例えば、115~160℃)程度であってもよく、120℃以上(例えば、120~150℃)程度]であってもよい。
なお、ガラス転移温度は、例えば、アクリル樹脂に環構造を導入することで(アクリル樹脂(A1-1)とすることで)、比較的高いものが得られやすい。
【0097】
アクリル樹脂(A1)の酸価は、用途等にもよるが、通常、小さいのが好ましく、例えば、10mmol/g以下、好ましくは5mmol/g以下、さらに好ましくは3mmol/g以下(例えば、1.5mmol/g以下)程度であってもよく、1.2mmol/g以下(例えば、1mmol/g以下、0.8mmol/g以下、0.7mmol/g以下、0.6mmol/g以下、0.5mmol/g以下、0.4mmol/g以下、0.35mmol/g以下等)であってもよい。
【0098】
アクリル樹脂(A1)の揮発分量(残存揮発分量)は、特に限定されないが、例えば、1質量%以下(例えば、0.005~0.8質量%)、好ましくは0.5質量%以下(例えば、0.01~0.4質量%)、さらに好ましくは0.3質量%以下(例えば、0.03~0.3質量%)程度であってもよい。なお、揮発分(残存揮発分)には水を含まない。
【0099】
アクリル樹脂(A1)の水分量(含水量)は、例えば、1質量%以下(例えば、0.001~0.9質量%)、好ましくは0.1質量%以下(例えば、0.001~0.09質量%)、さらに好ましくは0.05質量%以下(例えば、0.001~0.04質量%)程度であってもよい。
【0100】
なお、アクリル樹脂(A1)が、共重合体であるとき、共重合の形態は特に限定されず、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体等であってもよい。
【0101】
例えば、アクリル樹脂(A1-1)は、環構造を有しているため、通常、共重合体と言えるが、環構造の導入形態は、特に限定されず、環構造の種類等に応じて選択でき、ランダムに導入されていてもよく、ブロック、交互、グラフト等のように導入されていてもよい。
【0102】
なお、アクリル樹脂(A1)は、市販品であってもよく、製造(合成)したものを使用してもよい。以下、アクリル樹脂(A1)(特にアクリル樹脂(A1-1))の製法について説明する。
【0103】
(製造方法)
アクリル樹脂(A)は、重合成分を重合する工程(重合工程)を少なくとも経て製造できる。
【0104】
重合成分は、アクリル樹脂の原料となるモノマーであり、前記例示の(メタ)アクリル酸エステルや他のモノマーに相当する。モノマーの種類や好ましい態様などは前記と同様である。
【0105】
なお、アクリル樹脂(A1-1)は、環構造を有するが、環構造の種類によっては、重合成分は、環構造を構成するモノマーや環構造の原料となるモノマーを含んでいてもよい。
【0106】
例えば、マレイミド単量体や無水マレイン酸単量体由来の構造を有するアクリル樹脂を製造する場合、重合成分は、例えば、無水マレイン酸、マレイミド系モノマー[例えば、マレイミド;N-アルキルマレイミド(例えば、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミドなどのN-C1-10アルキルマレイミド)、N-シクロアルキルマレイミド(例えば、シクロヘキシルマレイミドなどのN-C3-20シクロアルキルマレイミド)、N-アリールマレイミド(例えば、N-フェニルマレイミドなどのN-C6-10アリールマレイミド)、N-アラルキルマレイミド(例えば、N-ベンジルマレイミドなどのN-C7-10アラルキルマレイミド)などのN-置換マレイミドなど]を含んでいてもよい。
【0107】
ラクトン環構造を有するアクリル樹脂を製造する場合、重合成分は、ラクトン環の原料となるモノマー、例えば、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステル(例えば、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル等のアルキルエステル)、下記式で表される単量体等を含んでいてもよい。なお、前記式(4)に示す構成単位は、例えば、下記式に示す単量体を重合させて形成できる。
【0108】
【化6】
(式中、R10、R11、R12およびR13は、前記式(4)におけるR10、R11、R12およびR13と同一である。)
【0109】
ラクタム環構造を有するアクリル樹脂を製造する場合、重合成分は、ラクタム系単量体[例えば、N-ビニルピロリドン系単量体(例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-4-ブチルピロリドン、N-ビニル-4-プロピルピロリドン、N-ビニル-4-エチルピロリドン、N-ビニル-4-メチルピロリドン、N-ビニル-4-メチル-5-エチルピロリドン、N-ビニル-4-メチル-5-プロピルピロリドン、N-ビニル-5-メチル-5-エチルピロリドン、N-ビニル-5-プロピルピロリドン、N-ビニル-5-ブチルピロリドンなど)、N-ビニルカプロラクタム系単量体(例えば、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニル-6-メチルカプロラクタム、N-ビニル-6-プロピルカプロラクタム、N-ビニル-7-ブチルカプロラクタムなど)など]などを含んでいてもよい。
【0110】
重合は、通常、ラジカル重合であってもよい。
【0111】
重合は、重合開始剤(特にラジカル重合開始剤)の存在下で行ってもよい。重合開始剤(ラジカル重合開始剤)としては、特に限定されないが、例えば、有機過酸化物[例えば、パーオキシド(ジアルキルパーオキシド、ジアシルパーオキシドなど)、パーオキシモノカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタールなど]、アゾ化合物などが含まれる。
【0112】
具体的な重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物[例えば、tert―アミルパーオキシイソノナノエート、t―アミルパーオキシ―2―エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサネート、tert-ブチルパーオキシラウレート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert-ブチルパーオキシアセテート、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、tert-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサネート、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、tert-ヘキシルパーオキシ2-エチルヘキサネート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン等]、アゾ化合物[例えば、2-(カルバモイルアゾ)-イソブチロニトリル、1,1'-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビスイソブチレート、2、2'-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2、2'-アゾビス(2-メチルプロパン)等]等が挙げられる。
【0113】
重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0114】
重合は、連鎖移動剤の存在下で行ってもよい。
【0115】
連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えば、チオール化合物{例えば、第1級チオール[例えば、脂肪族第1級チオール(例えば、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール(n―ドデシルメルカプタン)、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、デカントリチオール等の第1級アルキルメルカプタン、好ましくは第1級C3―30アルキルメルカプタン)等]、第2級チオール[例えば、脂肪族第2級チオール(例えば、2-プロパンチオール、2-ブタンチオール、2-メチル-1-プロパンチオール、3-メチル-2-ブタンチオール、3-ペンタンチオール、2-デカンチオール、3-デカンチオール、4-デカンチオール、5-デカンチオール、2-ヘキサデカンチオール、5-ヘキサデカンチオール、8-オクタデカンチオール等の第2級アルキルメルカプタン、好ましくは第2級C3―30アルキルメルカプタン)、脂環族第2級チオール(例えば、シクロヘキサンチオール、シクロペンタンチオール等のシクロアルキルメルカプタン、好ましくはC3―20シクロアルキルメルカプタン)、芳香族第2級チオール(例えば、チオフェノール等のアリールメルカプタン、好ましくはC6-20アリールメルカプタン)等]、第3級チオール[例えば、脂肪族第3級チオール(例えば、tert-ブチルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、tert-ノニルメルカプタン、tert-ヘキシルメルカプタン等のtert-アルキルメルカプタン、好ましくはC3―30tert-アルキルメルカプタン)等]}等が挙げられる。
【0116】
重合開始剤や連鎖移動剤は、それぞれ、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。重合開始剤や連鎖移動剤の使用量は、用いる単量体の種類、その使用比率(単量体組成物の組成)、或いは反応条件等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
【0117】
重合(ラジカル重合)は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などのいずれであってもよく、特に、不純物を含まない等の観点から溶液重合であってもよい。
【0118】
重合を溶媒中で行う場合(例えば、溶液重合である場合)、溶媒としては、重合成分の種類等に応じて適宜選択でき、特に限定されないが、例えば、有機溶媒[芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなど)、脂肪族又は脂環族炭化水素類(例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなど)、ハロゲン系溶媒(例えば、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素など)など]、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、エーテル類[例えば、鎖状エーテル類(例えば、ジエチルエーテルなど)、環状エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)など]、アミド類[例えば、N-置換アミド(N,N-ジメチルホルムアミドなどのN-アルキル置換アルカンアミド)]、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルカノール)、グリコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのアルカンジオール又はポリアルカンジオールのモノアルキルエーテル)など]などが挙げられる。
【0119】
溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0120】
なお、各成分(例えば、重合成分、重合開始剤、連鎖移動剤、その他の成分、溶媒など)は、重合開始の段階ですべて反応系(反応器)に存在させて(仕込んで)もよく、重合の進行とともに添加(又は混合)してもよく、これらを組み合わせてもよい。このような場合、各成分の添加速度や添加時間は、適宜選択できる。
【0121】
各成分は、複数回(2回以上、例えば、2~5回など)に分割して反応系に添加してもよい。重合成分(モノマー)は、重合の進行とともに反応系に添加してもよく、その場合、重合成分を複数回に分割して添加してもよいし、重合成分を滴下させてもよい。
【0122】
重合は、通常、所定の温度(又は加温下)で行われる。重合温度(反応温度)としては、重合成分、重合開始剤、溶媒の種類等に応じて適宜選択でき、例えば、20℃以上、好ましくは30℃以上(例えば、35~180℃)、さらに好ましくは40℃以上(例えば、45~170℃)、特に50℃以上(例えば、55~160℃)、特に好ましくは60℃以上(例えば、65~150℃)であってもよく、通常70~140℃(例えば、80~130℃)程度であってもよい。
【0123】
なお、重合の経過とともに、重合温度を変化させてもよいが、このように変化させる場合であっても、通常、上記温度の範囲内で重合を行う場合が多い。
【0124】
重合は、撹拌下で行ってもよい。また、重合は、空気中で行ってもよく、不活性雰囲気下(窒素、ヘリウム、アルゴン中など)で行ってもよい。
【0125】
重合時間(熟成する場合)は、重合成分の量、重合温度などに応じて適宜選択でき、特に限定されないが、例えば、30分以上(例えば、40分~24時間)、好ましくは1時間以上(例えば、1.5~16時間)、さらに好ましくは2時間以上(例えば、2.5~12時間)であってもよい。
【0126】
アクリル樹脂(A1-1)は環構造を有する。このような環構造は、環構造の種類に応じて、上記のような重合とともに形成されてもよく(例えば、マレイミド単量体や無水マレイン酸単量体由来の構造、ラクタム環構造などの場合)、重合後、さらに環構造を形成又は導入する工程を経てアクリル樹脂に形成又は導入できる。環構造の形成又は導入する方法としては、特に限定されず、公知の方法に従うことができる。
【0127】
例えば、ラクトン環構造は、前記のように、ラクトン環の原料となるモノマー[例えば、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステル]由来の単位を含むアクリル樹脂を環化(環化縮合、環化処理)することで、形成又は導入できる。環化は、環化触媒[例えば、リン系触媒(例えば、リン酸ステアリルなどのリン酸エステル)]の存在下で行ってもよい。
【0128】
グルタルイミド構造は、(メタ)アクリル酸エステル単位をイミド化する方法などの公知の方法(例えば、特開2006-309033号公報、特開2006-317560号公報、特開2006-328329号公報、特開2006-328334号公報、特開2006-337491号公報、特開2006-337492号公報、特開2006-337493号公報、特開2007-009182号公報などに記載の方法)によりアクリル系ポリマーに形成又は導入できる。
【0129】
無水グルタル酸構造は、例えば、隣接する(メタ)アクリル酸エステル単位及び(メタ)アクリル酸単位間で分子内脱アルコール反応させる方法(例えば、特開2006-283013号公報、特開2006-335902号公報、特開2006-274118号公報に記載の方法等)により、アクリル系ポリマーに形成又は導入することができる。
【0130】
このような重合工程(及び必要に応じて環化工程)を経て、アクリル樹脂(A1)を得ることもできるが、当該重合工程を経て得られた樹脂は、適宜、慣用の手法にて精製、分離などしてもよい。
【0131】
[ポリカーボネート樹脂(A2)]
ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネート系樹脂、ポリカーボネート樹脂(A2))としては、例えば、芳香族骨格を有するもの(芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族骨格含有ポリカーボネート樹脂)、脂肪族骨格(脂環族骨格、非脂環式の脂肪族骨格)を有するもの、これらを組み合わせて有するもの等が挙げられる。
【0132】
ポリカーボネート樹脂(A2)は、カーボネート結合を有するものであればよいが、通常、少なくともジヒドロキシ化合物を重合成分とする[ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(ジヒドロキシ化合物骨格)を有する]樹脂であってもよい。
【0133】
ジヒドロキシ化合物(ジヒドロキシ化合物骨格)としては、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物(芳香族ジヒドロキシ化合物骨格)、脂肪族ジヒドロキシ化合物(脂肪族ジヒドロキシ化合物骨格)等が挙げられる。
【0134】
芳香族ジヒドロキシ化合物(芳香族ジヒドロキシ化合物骨格に対応する芳香族ジヒドロキシ化合物)としては、例えば、ビフェノール類(例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジヒドロキシビフェニル)、ビスフェノール類{例えば、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類[例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジエチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-(3,5-ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’-ジヒドロキシ-ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-5-ニトロフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン等のビス(ヒドロキシフェニル)C1-10アルカン類]、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン類[例えば、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシフェニル)C4-20シクロアルカン類]、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン類[例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン]、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル類[例えば、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジクロロジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-2,5-ジエトキシジフェニルエーテル]、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド類[例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド等]、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン類[例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン等]、フルオレン骨格を有するジヒドロキシ化合物{例えば、ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類[例えば、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン]、ビス(ヒドロキシアルコキシ)フルオレン類[例えば、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ-2-メチル)フェニル)フルオレン等の9,9-ビス[(ヒドロキシC2-4アルコキシ)フェニル]フルオレン類]等が挙げられる。
【0135】
芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0136】
脂肪族ジヒドロキシ化合物(脂肪族ジヒドロキシ化合物骨格に対応する脂肪族ジヒドロキシ化合物)としては、脂環式ジヒドロキシ化合物[例えば、炭素数70以下(例えば、50以下、30以下、4~20程度)の脂環式ジヒドロキシ化合物、5員環又は6員環構造を少なくとも有する脂環式ジヒドロキシ化合物、炭素数70以下(例えば、50以下、30以下、4~20程度)で、かつ5員環又は6員環構造を少なくとも有する脂環式ジヒドロキシ化合物等]、非脂環式(脂肪族)ジヒドロキシ化合物等が含まれる。
【0137】
脂環式ジヒドロキシ化合物(脂肪族ジヒドロキシ化合物骨格に対応する脂肪族ジヒドロキシ化合物)としては、例えば、シクロアルカンジオール類{又はジヒドロキシシクロアルカン類、例えば、モノ(単環式)シクロアルカンジオール類[例えば、シクロヘキサンジオール類(例えば、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジオール)等のC4-10(モノ)シクロアルカンジオール類)等]、ポリ(多環式)シクロアルカンジオール類ないし架橋環式シクロアルカンジオール類[例えば、トリシクロデカンジオール、ペンタシクロペンタデカンジオール、デカリンジオール(又はトリシクロテトラデカンジオール、例えば、2,6-デカリンジオール、1,5-デカリンジオール、2,3-デカリンジオール)、ノルボルナンジオール(例えば、2,3-ノルボルナンジオール、2,5-ノルボルナンジオール)、アダマンタンジオール(例えば、1,3-アダマンタンジオール)等]等}、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン類{又はシクロアルカンジアルカノール類、例えば、モノ(単環式)シクロアルカンジアルカノール類[例えば、シクロヘキサンジメタノール類(例えば、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール)等のC4-10(モノ)シクロアルカンジC1-4アルカノール類)等]、ポリ(多環式)シクロアルカンジアルカノール類ないし架橋環式シクロアルカンジアルカノール類[例えば、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、デカリンジメタノール(又はトリシクロテトラデカンジメタノール、例えば、2,6-デカリンジメタノール、1,5-デカリンジメタノール、2,3-デカリンジメタノール)、ノルボルナンジメタノール(例えば、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノール)、アダマンタンジメタノール(例えば、1,3-アダマンタンジメタノール)等]等}、ヘテロ環式脂肪族ジヒドロキシ化合物{例えば、ヘテロ単環式脂肪族ジドロキシ化合物(例えば、テトラヒドロフラン-2,2-ジメタノール等)、ヘテロ多環式脂肪族ジヒドロキシ化合物等}等が挙げられる。
【0138】
非脂環式ジヒドロキシ化合物(非脂環式ジヒドロキシ化合物骨格に対応する非脂環式ジヒドロキシ化合物)としては、例えば、アルカンジオール類(例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,5-ヘプタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のC2-20アルカンジオール類)、ポリアルカンジオール類(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のポリC2-6アルカンジオール類)等が挙げられる。
【0139】
脂肪族ジヒドロキシ化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0140】
ジヒドロキシ化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0141】
ポリカーボネート樹脂は、強度等などの物性の点で、少なくとも芳香族骨格(例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物骨格)を有していてもよく、一方で、光学的特性と強度のバランス等の点で、脂肪族骨格[特に脂環族骨格、例えば、脂肪族ジヒドロキシ化合物骨格(特に、脂環族ジヒドロキシ化合物骨格)]を有するものを好ましく使用することもできる。
そのため、ジヒドロキシ化合物もまた、芳香族ジヒドロキシ化合物を少なくとも含むのが好ましく、一方で、脂肪族ジヒドロキシ化合物(特に、脂環族ジヒドロキシ化合物)を少なくとも含むのも好ましい。
【0142】
芳香族ジヒドロキシ化合物(骨格)を含むジヒドロキシ化合物(骨格)において、ジヒドロキシ化合物(骨格)全体に対する、芳香族ジヒドロキシ化合物(骨格)の割合は、その種類や所望の物性等に応じて選択できるが、例えば、1質量%以上(例えば、5質量%以上)、好ましくは10質量%以上(例えば、20質量%以上)、さらに好ましくは30質量%以上(例えば、40質量%以上)であってもよく、50質量%以上(例えば、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、(実質的に)100質量%)であってもよい。
【0143】
脂肪族ジヒドロキシ化合物(骨格)を含むジヒドロキシ化合物(骨格)において、ジヒドロキシ化合物全体に対する、脂肪族ジヒドロキシ化合物の割合は、その種類や所望の物性等に応じて選択できるが、例えば、1質量%以上(例えば、5質量%以上)、好ましくは10質量%以上(例えば、20質量%以上)、さらに好ましくは30質量%以上(例えば、40質量%以上)であってもよく、50質量%以上(例えば、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、(実質的に)100質量%)であってもよい。
【0144】
脂肪族ジヒドロキシ化合物が、脂環式ジヒドロキシ化合物を含む場合、脂肪族ジヒドロキシ化合物(骨格)全体に対する、脂環式ジヒドロキシ化合物(骨格)の割合は、その種類や所望の物性等に応じて選択できるが、例えば、10質量%以上(例えば、30質量%以上)、好ましくは50質量%以上(例えば、60質量%以上)、さらに好ましくは70質量%以上(例えば、80質量%以上)であってもよく、85質量%以上(例えば、90質量%以上、93質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、(実質的に)100質量%)であってもよい。
【0145】
なお、ポリカーボネート樹脂は、前記のように、通常、少なくともジヒドロキシ化合物を重合成分とする(ジヒドロキシ化合物骨格を有する)が、必要に応じてジヒドロキシ化合物(ジヒドロキシ化合物骨格)に加えて他の重合成分[他の重合成分由来の構造単位(他の重合成分骨格)]を含んでいてもよい。
【0146】
このような他の重合成分(他の重合成分骨格に対応する他の重合成分)としては、例えば、3以上のヒドロキシ基を有する化合物{例えば、芳香族ポリヒドロキシ化合物[例えば、フロログルシン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプテン-2、4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプテン-3、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)オキシインドール、5-クロルイサチン、5,7-ジクロルイサチン、5-ブロムイサチン]等}等が挙げられる。
【0147】
他の重合成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0148】
ポリカーボネート樹脂(A2)が、他の重合成分(3以上のヒドロキシ基を有する化合物)由来の構造単位を有する場合、ジヒドロキシ化合物及び他の重合成分(3以上のヒドロキシ基を有する化合物)(由来の構造単位)全体に対する、他の重合成分(3以上のヒドロキシ基を有する化合物)(由来の構造単位)の割合は、例えば、10質量%以下(例えば、5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下程度)であってもよく、0.001質量%以上(例えば、0.005質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上等)であってもよい。
【0149】
なお、ポリカーボネート樹脂(A2)は、通常、熱可塑性(樹脂)であってもよい。
【0150】
ポリカーボネート樹脂(A2)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0151】
ポリカーボネート樹脂(A2)のガラス転移温度(Tg)は、その種類・組成等によるが、例えば、50℃以上(例えば、60~300℃)、好ましくは70℃以上(例えば、80~250℃)、さらに好ましくは90℃以上(例えば、90~200℃)程度であってもよい。
【0152】
なお、ポリカーボネート樹脂(A2)は、市販品を用いてもよく、慣用の方法により製造したものを用いてもよい。
【0153】
例えば、ポリカーボネート樹脂は、ホスゲン法(例えば、ホスゲンを用いた溶液重合法)、炭酸ジエステルを用いる方法(例えば、炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法)等のいずれにより製造してもよい、代表的には、炭酸ジエステルを用いる方法により製造してもよい。
【0154】
このような炭酸ジエステルを用いる方法では、例えば、必要に応じて、重合触媒(アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等)等の存在下で、ジヒドロキシ化合物[さらに必要に応じて他の重合成分(3以上のヒドロキシ基を有する化合物等)]と、炭酸ジエステル[例えば、ジアリールカーボネート(例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等)、ジアルキルカーボネート(例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-t-ブチルカーボネート)等]とを反応[重合(溶液重合)]させることにより製造してもよい。
【0155】
前述の通り、樹脂(A)は、少なくともアクリル樹脂(A1)(アクリル樹脂(A1-1)等)及びポリカーボネート樹脂(A2)から選択された少なくとも1種を含んでいてもよい
【0156】
このような場合、樹脂(A)全体に対する、アクリル樹脂(A1)(アクリル樹脂(A1-1)等)及びポリカーボネート樹脂(A2)から選択された少なくとも1種の割合は、1質量%以上(例えば、5質量%以上)の範囲から選択してもよく、通常、10質量%以上(例えば、20質量%以上)、好ましくは30質量%以上(例えば、40質量%以上)、さらに好ましくは50質量%以上(例えば、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、(実質的に)100質量%)であってもよい。
【0157】
樹脂(A)がアクリル樹脂(A1)を含む場合、樹脂(A)全体に対する、アクリル樹脂(A1)(アクリル樹脂(A1-1)等)の割合は、1質量%以上(例えば、5質量%以上)の範囲から選択してもよく、通常、10質量%以上(例えば、20質量%以上)、好ましくは30質量%以上(例えば、40質量%以上)、さらに好ましくは50質量%以上(例えば、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、(実質的に)100質量%)であってもよい。
【0158】
樹脂(A)がポリカーボネート樹脂(A2)を含む場合、樹脂(A)全体に対する、ポリカーボネート樹脂(A2)の割合は、1質量%以上(例えば、5質量%以上)の範囲から選択してもよく、通常、10質量%以上(例えば、20質量%以上、10~50質量%)、好ましくは30質量%以上(例えば、40質量%以上)、さらに好ましくは50質量%以上(例えば、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、(実質的に)100質量%)であってもよい。
【0159】
また、耐熱性を維持しつつ強度を付与できる等の観点から、樹脂(A)として、アクリル樹脂(A1)(主鎖に環構造を有するアクリル樹脂(A1-1)等)及びポリカーボネート樹脂(A2)を併用するのも好ましい。
このような場合、樹脂(A)において、アクリル樹脂(A1)(アクリル樹脂(A1-1)等)及びポリカーボネート樹脂(A2)を含む場合、アクリル樹脂(A1)とポリカーボネート樹脂(A2)との質量比(前者/後者(質量比))は、例えば、1/99~99/1(例えば、3/97~97/3)、好ましくは5/95~95/5(例えば、7/93~93/7)、さらに好ましくは10/90~90/10(例えば、15/85~85/15)程度であってもよく、10/90~99/1(例えば、20/80~98/2、30/70~97/3、50/50~95/5、55/45~93/7、60/40~90/10、65/35~85/15)等であってもよく、1/99~90/10(例えば、2/98~80/20、3/97~70/30、5/95~50/50、7/93~45/55、10/90~40/60、15/85~35/65、50/50~90/10、80/20~70/30)等であってもよい。
【0160】
[基材層の態様等]
基材層(基材層(A)等ということがある)は、少なくとも樹脂(A)を含んでいればよく、必要に応じて他の成分(添加剤)を含んでいてもよい。他の成分としては、特に限定されず、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、補強材、難燃剤、帯電防止剤、有機フィラー、無機フィラー、ブロッキング防止剤、樹脂改質剤、有機充填剤、無機充填剤、可塑剤、滑剤、位相差低減剤等が挙げられる。
【0161】
他の成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0162】
基材層が、他の成分(非樹脂成分)を含む場合、他の成分の割合は、基材中に、例えば、0.01~10質量%(例えば、0.05~5質量%)程度であってもよい。
【0163】
基材層の形状は、特に限定されず、二次元的形状(例えば、フィルム等)、三次元的形状等であってよい。基材層の形状は、通常は、フィルム(又はシート)状である。
【0164】
基材層(フィルム等)の製造方法は、基材層の形状等に応じて適宜選択でき、特に限定されず、従来公知の方法に従ってよい。
【0165】
例えば、樹脂(A)(及び他の成分を含む組成物)を、公知の成膜方法[例えば、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法等]によって成膜することにより、フィルムを得ることができる。成膜方法としては、溶液キャスト法、溶融押出法等が好ましい。
【0166】
溶液キャスト法を実施するための装置は、例えば、ドラム式キャスティングマシン、バンド式キャスティングマシン、スピンコーターである。
【0167】
溶液キャスト法に使用する溶媒は、樹脂(A)(及びその組成物)を溶解する限り限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;アセトン、メチルエチエルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素;ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0168】
溶融押出法は、例えば、Tダイ法、インフレーション法等が挙げられる。溶融押出時の成形温度は、好ましくは150~350℃、より好ましくは200~300℃である。
【0169】
Tダイ法を選択した場合、例えば、公知の押出機の先端部にTダイを取り付けることにより、帯状のフィルムを形成できる。形成した帯状のフィルムは、ロールに巻き取って、フィルムロールとしてもよい。溶融押出法では、材料の混合による樹脂の形成から、当該樹脂を用いたフィルムの成形までを連続的に行うことができる。
【0170】
フィルムは、未延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであってもよい。機械的強度を高める等の観点からは延伸フィルム(特に二軸延伸フィルム)であってもよい。二軸延伸フィルムは、同時二軸延伸フィルム及び逐次二軸延伸フィルムのいずれでもよい。また、延伸フィルムの遅相軸の方向は、フィルムの流れ方向であってもよく、幅方向であってもよく、更には任意の方向であってもよい。
【0171】
基材層(例えば、フィルム)には、必要に応じて、表面処理を施してもよい。
表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理等が挙げられる。
【0172】
基材層(フィルム等)の厚さは、特に限定されず、用途等によって適宜調整できるが、例えば、1~800μm、好ましくは3~500μm、より好ましくは5~400μm、さらに好ましくは10~300μmであってもよい。
【0173】
フィルムのヘイズは、特に限定されないが、用途等によっては、1%以下(例えば、0~1%)、好ましくは0.5%以下(例えば、0~0.5%)等であってもよい。ヘイズは、JIS K7136の規定に基づいて測定される。ヘイズを1%以下にすることにより、フィルムを画像表示装置等に組み込んだ場合に表示される色感が優れたものとなる。
【0174】
フィルムのb値は、特に限定されないが、用途等によっては、2以下(例えば、0.1~2)、好ましくは1.5以下(例えば、0.1~1.5)、さらに好ましくは1以下(例えば、0.1~1)、最も好ましくは0.5以下(例えば、0.1~0.5)であってもよい。ここで、b値とは、JIS Z 8729に規定されるL表色系における指数である。
【0175】
<層(B)>
[ポリマー(B)]
層(B)は、アミノ基を有するポリマー(ポリマー(B)等ということがある)を含有する。
【0176】
アミノ基を有するポリマーにおいて、アミノ基としては、第1級、第2級、第3級のいずれであってもよく、これらを組み合わせて有していてもよい。
【0177】
特に、ポリマー(B)は、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選択された少なくとも1種を少なくとも有していてもよい。
【0178】
なお、アミノ基(例えば、後述のイミノアルキレン骨格におけるイミノ基)は、塩(例えば、塩化水素、臭化水素等のハロゲン化水素等の無機酸との塩)を形成していてもよい。
【0179】
また、ポリマー(B)は、層(B)(基材、後述の積層フィルム)において、架橋(ないし硬化)されうるが、このように架橋される態様においては、架橋前(原料段階)のポリマー(B)が、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選択された少なくとも1種を少なくとも有していてもよい。
【0180】
代表的なポリマー(B)としては、イミノアルキレン骨格(イミノアルキレン基)を有するポリマーが挙げられる。イミノアルキレン骨格としては、アルキレンイミン(例えば、エチレンイミン、プロピレンイミン、1,2-ブチレンイミン、2,3-ブチレンイミン、1,1-ジメチルエチレンイミン等のC2-10アルキレンイミン)に対応する骨格(基)等が挙げられる。
【0181】
具体的なポリマー(B)としては、アルキレンイミンを重合成分とするポリマー等が挙げられる。
【0182】
アルキレンイミンとしては、例えば、エチレンイミン、プロピレンイミン、1,2-ブチレンイミン、2,3-ブチレンイミン、1,1-ジメチルエチレンイミン等のC2-10アルキレンイミン等が挙げられる。
【0183】
アルキレンイミンは、単独で又は2種以上組み合わせて重合成分としてもよい。
【0184】
ポリマー(B)(アルキレンイミンを重合成分とするポリマー)としては、例えば、ポリアルキレンイミン、イミノアルキレン骨格を有するアクリルポリマー(アルキレンイミンを重合成分とするアクリルポリマー、アミノアルキル化アクリルポリマー)等が挙げられる。
【0185】
ポリアルキレンイミンとしては、前述のアルキレンイミン(例えば、エチレンイミン等)の重合体(ポリアルキレンイミン)の他、ポリアルキレンイミンの誘導体[例えば、アルキレンオキシド付加物(ポリアルキレンイミンにアルキレンオキシドを付加重合させたポリアルキレンイミン誘導体)、イソシアネート付加物(例えば、オクタデシルイソシアネート等の脂肪族イソシアネートの付加物)]等が含まれる。
【0186】
アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド,1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、トリメチルエチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラメチルエチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、オクチレンオキシド、スチレンオキシド、1,1-ジフェニルエチレンオキシドなどが挙げられる。好ましいアルキレンオキシドには、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が含まれる。
【0187】
アルキレンオキシドは、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。2種以上組み合わせる場合、アルキレンオキサイドの付加は、ランダムであってもよく、ブロック(例えば、エチレンオキシドとプロピレンオキサイドとのブロック等)であってもよい。
【0188】
ポリアルキレンイミンの重量平均分子量は、例えば、100~100000、好ましくは200~90000、さらに好ましくは300~80000であってもよい。
【0189】
ポリアルキレンイミンのアミン価は、例えば、1mmol/g以上(例えば、2~50mmol/g)、好ましくは3mmol/g以上(例えば、5~30mmol/g)、さらに好ましくは8mmol/g以上(例えば、10~25mmol/g)等であってもよい。
【0190】
イミノアルキレン骨格を有するアクリルポリマーとしては、例えば、カルボキシル基を有するアクリルポリマーとアルキレンイミンとの反応物(カルボキシル基を有するアクリルポリマーのカルボキシル基とアルキレンイミンとの反応物)等が挙げられる。
【0191】
カルボキシル基を有するアクリルポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル(前記例示のもの等)とカルボキシル基含有モノマー(例えば、(メタ)アクリル酸等)との共重合体(コポリマー)等が挙げられる。
【0192】
アルキレンイミンとしては、前記例示のものが挙げられる。
【0193】
なお、反応物において、アルキレンイミンの反応量(付加数)は特に限定されないが、例えば、カルボキシル基1モルに対して、アルキレンイミン1モル以上(例えば、1~100モル、1~50モル、1~30モル等)であってもよい。
【0194】
イミノアルキレン骨格を有するアクリルポリマーの重量平均分子量は、例えば、1000以上(例えば、2000~500000)、好ましくは3000以上(例えば、4000~300000)、さらに好ましくは5000以上(例えば、8000~200000)であってもよい。
【0195】
イミノアルキレン骨格を有するアクリルポリマーのアミン価は、例えば、0.1mmol/g以上(例えば、0.1~20mmol/g)、好ましくは、0.2mmol/g以上(例えば、0.2~10mmol/g)、さらに好ましくは、0.1mmol/g以上(例えば、0.3~5mmol/g)等であってもよい。
【0196】
好ましいポリマー(B)には、ポリアルキレンイミン(例えば、ポリエチレンイミン)、イミノアルキレン骨格を有するアクリルポリマー等が挙げられ、特にイミノアルキレン骨格を有するアクリルポリマーを好適に使用してもよい。
【0197】
そのため、ポリマー(B)は、ポリアルキレンイミン及びイミノアルキレン骨格を有するアクリルポリマー(例えば、アミノエチル化アクリルポリマー)から選択された少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0198】
なお、ポリマー(B)は、市販品を用いてもよく、慣用の方法により製造したものを用いてもよい。例えば、ポリエチレンイミンは、商品名「エポミン」(日本触媒製)、イミノエチレン骨格を有するアクリルポリマー(アミノエチル化アクリルポリマー)は、商品名「ポリメント」(日本触媒製)として入手できる。
【0199】
なお、ポリマー(B)は、層(B)(基材、後述の積層フィルム)において、その一部又は全部において、架橋されていてもよい。例えば、後述の架橋剤を含む層(B)において、架橋剤との反応によりポリマー(B)が架橋されていてもよい。
【0200】
[他の成分]
層(B)は、他の成分を含んでいてもよい。
【0201】
他の成分(添加剤等)としては、特に限定されず、例えば、架橋剤、ブロッキング防止剤、分散安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、触媒、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。他の成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0202】
特に、層(B)は、架橋剤(ポリマー(B)の架橋剤)を含んでいてもよい。
【0203】
架橋剤としては、例えば、ポリマー(B)のアミノ基(イミノ基)と反応して架橋構造を形成可能な官能基を有するもの等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0204】
架橋構造を形成可能な官能基としては、例えば、アルデヒド、ケトン、アルキルハライド、イソシアネート、チオイソシアネート、二重結合、エポキシ、酸、酸無水物、アシルハライド、エステルなどが挙げられ、これらを分子内に有する化合物が用いられる。
【0205】
代表的な架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤(エポキシ化合物)等が挙げられる。エポキシ化合物は、特に限定されず、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、脂肪族エポキシ化合物[例えば、(ポリ)アルキレングリコールジグリシジルエーテル]、芳香族エポキシ化合物(例えば、ビスフェノールA型等)等のいずれであってもよい。
【0206】
架橋剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0207】
<基材の態様等>
基材は、基材層(基材層(A))と層(B)とで構成されている。層(B)は、基材層上に形成されていればよく、例えば、基材層(フィルム状の基材層)の少なくとも一方の面上(一方の面上、又は両面上)に形成されてもよい。
【0208】
層(B)の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、基材層に、層(B)の構成成分を含む塗布液(易接着層形成用組成物、易接着層形成用塗布液)を塗布(コーティング)することにより形成してもよい。
【0209】
このような塗布液において、溶媒(溶剤)としては、ポリマー(B)や他の成分(架橋剤等)の種類等に応じて選択でき、例えば、水、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等)、窒素含有溶媒(例えば、N-メチルピロリドン等のラクタム類等)等が挙げられる。
【0210】
溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0211】
塗布液は、ポリマー(B)や他の成分(架橋剤等)の種類等に応じて、水系、溶剤系(有機溶媒系)のいずれであってもよい。なお、塗布液が水系の場合も、水に加えて有機溶媒を使用してもよい。
【0212】
塗布液において、固形分濃度は、例えば、1~50質量%、好ましくは5~30質量%程度であってもよい。
【0213】
塗布方法は、特に限定されないが、例えば、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、スロットオリフィスコート法、カーテンコート法、ファウンテンコート法等が挙げられる。
【0214】
塗布後の乾燥は自然乾燥であってもよく、加熱下で乾燥してもよい。加熱乾燥温度は、特に限定されないが、例えば、50℃以上、好ましくは60~200℃、さらに好ましくは70~180℃程度であってよい。
なお、架橋剤を使用する場合、架橋剤の態様等によって、必要に応じて適宜架橋処理を行ってもよい。加熱下での乾燥により、架橋させる(架橋を進行させる)こともできる。
【0215】
層(B)の厚みは、特に限定されないが、良好な密着性又は接着性を実現したり、各種用途において基材層の物性を効率良く反映する等の観点から、例えば、0.05~10μm、好ましくは0.1~5μm、さらに好ましくは0.2~3μm程度であってよい。
【0216】
基材層(フィルム)と層(B)との厚み比は、特に限定されないが、良好な密着性又は接着性を実現したり、各種用途において基材層の物性を効率良く反映する等の観点から、例えば、前者/後者=1/0.0001~1/0.5、好ましくは1/0.001~1/0.3(例えば、1/0.001~1/0.1)、さらに好ましくは1/0.003~1/0.1(例えば、1/0.005~1/0.08)程度であってもよい。
【0217】
なお、層(B)の形成工程又は形成後において、延伸処理を行ってもよい。特に、層(B)に含まれるポリマー(B)が、ポリアルキレンイミンやイミノアルキレン骨格を有するアクリルポリマー等を含む場合、層(B)は基材層(A)の延伸に対して良好に追随しやすい。その結果、層(B)にひび割れなどの不具合が生じにくくなる。
【0218】
延伸は、二軸延伸であってもよい。二軸延伸は、同時二軸延伸及び逐次二軸延伸のいずれでもよい。
【0219】
・積層体(積層フィルム)
前記基材は、樹脂(A)を含む基材層を備えており、そのままでも使用できるが、特に、層(B)とを備えており、この層(B)は、基材層に表面層を形成するための中間層(プライマー層)として好適に機能しうる。
【0220】
そのため、前記基材は、表面層を形成(層(B)上に形成)するための(表面層形成用の基材)として好適に使用してもよい。
【0221】
従って、本発明には、前記基材に、さらに表面層を形成した積層体(積層フィルム)、すなわち、基材樹脂(A)を含む基材層(A)と、この基材層(A)上に形成され、ポリマー(B)を含有する層(B)と、層(B)上に形成された表面層(表面層(C)ということがある)とを含む(有する)積層体(積層ユニット、積層フィルム)も含まれる。
【0222】
表面層は、適宜選択でき、特にその目的は問わないが、例えば、保護層(表面保護層)、加飾層(加飾ないし装飾を目的とする層等)等であってもよく、複数の目的を兼ね備えた層であってもよい。
【0223】
具体的な表面層(又はその形成目的)は、ハードコート層、トップコート層(上塗り層)、着色層等であってもよい。
【0224】
そして、このような表面層の成分もまた、その目的等に応じて選択できる。例えば、ハードコート層等であれば、硬化性組成物(ハードコート層形成用の硬化性組成物)の硬化物(例えば、熱ないし光硬化させた硬化物)等で形成してもよい。また、トップコート層等であれば、例えば、塗料用の樹脂[例えば、アクリル系樹脂(アイオノマー樹脂等も含む)、ウレタン系樹脂]等で形成してもよい。
【0225】
代表的には、表面層は、その使用目的を問わず、架橋ないし硬化した樹脂(ポリマー)を含んでいてもよい。
【0226】
このような樹脂としては、架橋ないし硬化の態様によって選択できる。
【0227】
例えば、表面層(ハードコート層等)は、硬化性樹脂{例えば、光硬化性樹脂[例えば、多官能性(メタ)アクリレート(例えば、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート)、ウレタン(メタ)アクリレート等]、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂等)等}を含む硬化性組成物を硬化(架橋)させることにより、形成してもよい。
【0228】
なお、硬化性組成物は、必要に応じて、反応性希釈剤(例えば、単官能性モノマー等)、重合開始剤(光重合開始剤)、光増感剤、硬化剤(例えば、エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂であれば、当該熱硬化性樹脂の種類に応じた硬化剤等)、着色剤等の他の成分を含んでいてもよい。
【0229】
その他、表面層(トップコート層等)は、塗料用の樹脂(例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等)(又は塗料用の樹脂を含む組成物)を硬化させることにより、形成してもよい。
【0230】
なお、このような硬化においても、組成物は、樹脂の種類・態様等に応じて、硬化剤ないし架橋剤(例えば、多価金属化合物等)、着色剤等の他の成分を含んでいてもよい。
【0231】
また、表面層は、溶媒を含む組成物(塗液、塗布液、塗料)により、形成されるものであってもよい。
【0232】
溶媒としては、例えば、水;アルコール化合物(又はアルコール類、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等の脂肪族アルコール)、炭化水素化合物(又は炭化水素類、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素)、ケトン化合物(又はケトン類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のアルカノン(ジアルキルケトン))、エステル化合物(又はエステル類、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪酸エステル)、エーテル化合物(又はエーテル類、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル)、ハロゲン化合物(又はハロゲン系溶媒、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素)、アミド化合物(又はアミド類、例えば、ジメチルホルムアミド等)、硫黄含有化合物(又は硫黄含有溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド)等の有機溶媒(有機溶剤)が挙げられる。
【0233】
これらの溶媒は、1種で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0234】
特に、表面層は、有機溶媒を含む組成物(塗料、塗布液)により、形成してもよい。
【0235】
なお、このような溶媒は、組成物を使用することにより、ほとんどの溶媒は表面層に含まれることなく、揮発(乾燥)するが、一部、溶媒に由来する成分として表面層に残存していてもよい。
【0236】
このような場合、表面層(C)に含まれる溶媒(例えば、有機溶媒)の割合は、例えば、1質量ppm以上(例えば、10質量ppm以上、50質量ppm以上、100質量ppm以上、200質量ppm以上、300質量ppm以上等)等であってもよく、10質量%以下(例えば、5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下等)であってもよい。
【0237】
本発明によれば、前記層(B)を介することにより、架橋ないし硬化性の成分や溶媒を含む組成物であっても、表面層(C)を効率よく形成しうる(例えば、十分な密着性を担保できたり、基材層の浸食を抑制ないし防止できる)。
【0238】
なお、表面層の厚さは、特に限定されず、用途等によって適宜調整できるが、例えば、1~1000μm(例えば、3~800μm、5~500μm、10~300μm)等であってもよい。
【0239】
積層フィルムは、基材の層(B)上に、表面層(C)を形成することにより製造できる。
【0240】
形成方法(製造方法)は、表面層(C)の態様等によって選択できるが、例えば、表面層(C)の形成成分(例えば、前述の硬化性樹脂、塗料用の樹脂、他の成分、溶媒等)を含む塗布液(コーティング液)を塗布(コーティング)する塗布(コーティング)工程を少なくとも経てもよい。
【0241】
なお、表面層(C)が架橋ないし硬化した樹脂を含む場合、塗布後又は塗布とともに、必要に応じて架橋ないし硬化処理(光照射、加熱等)してもよい。
【0242】
架橋ないし硬化した樹脂を含む表面層を基材上に設ける(形成する)方法の一例を挙げる。
【0243】
このような表面層(ハードコート層、トップコート層等)は、例えば、前述の組成物(硬化性組成物等)を基材層の層(B)上に、塗工(さらには架橋ないし硬化)することに設けることができる。
【0244】
塗工(塗布)後、必要に応じて、乾燥処理して溶媒を揮発させてもよい。さらに、必要に応じて、エージング処理や架橋ないし硬化処理(光照射、加熱等)を行ってもよい。
【0245】
組成物(硬化性組成物)を塗布する方法としては、公知の方法を用いることができ、具体的には、コンマコーティング、グラビアコーティング、リバースコーティング、ロールコーティング、リップコーティング、スプレーコーティングなどを挙げることができる。
【0246】
基材(又は積層フィルム)は、樹脂(A)を含む基材層を備えている。そのため、基材(又は積層フィルム)は、樹脂(A)の種類(表面層(C)を形成する場合には、さらに、その種類や目的)等に応じて、各種用途(例えば、光学用、加飾用)等として好適に使用できる。具体的な用途としては、例えば、光学部材(例えば、光学用保護フィルム、光学フィルム、光学シート等を備えた部材)、加飾フィルム(自動車部品、家電製品、鉄道などの車輌、船舶、建材などの装飾用)等として、TOM、IM、押出法などの様々な成形技術において利用することができる。
【実施例0247】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではない。
【0248】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。以下では、便宜上、「質量部」を単に「部」と記すことがある。
【0249】
なお、本実施例における物性の測定方法及び評価方法は、下記の通りである。
【0250】
(1)重量平均分子量(Mw)
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。測定に用いた装置および測定条件は以下のとおりである。
-システム:東ソー株式会社製GPCシステム HLC-8220
-測定側カラム構成
ガードカラム:東ソー社製、TSKguardcolumn SuperHZ-L
分離カラム :東ソー社製、TSKgel SuperHZM-M 2本直列接続
-リファレンス側カラム構成
リファレンスカラム:東ソー社製、TSKgel SuperH-RC
-展開溶媒 :クロロホルム(富士フィルム和光純薬社製、特級)
-展開溶媒の流量 :0.6mL/分
-標準試料 :TSK標準ポリスチレン(東ソー社製、PS-オリゴマーキット)
-カラム温度 :40℃
【0251】
(2)ガラス転移温度
ガラス転移温度は、JIS K 7121の規定に準拠して求めた。示差走査熱量計(リガク社製、Thermo plus EVO DSC-8230)を用い、約10mgのサンプルを窒素ガス雰囲気下で常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により求めた。なお、リファレンスには、α-アルミナを用いた。
【0252】
(3)フィルムの厚さ
フィルムの厚さは、デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ社製)を用いて求めた。
【0253】
(4)基材層の耐溶剤性評価
フィルム(基材)の上[層(B)(中間層)が形成された基材においては層(B)(中間層)の上、層(B)(中間層)が形成されていない基材においては基材層(基材層(A))上]に、アプリケーターを使用して、表面層(表面層(C))形成用塗液を乾燥後の厚みが20μmになるように塗布し、5分間放置した。その後、塗液を拭き取って目視による表面の変化を下記評価基準で評価した。
なお、スプレー缶入りの塗液4Dについては、アプリケーターでの塗工ではなく満遍なくスプレー塗布して5分間放置した後、塗液を拭き取って目視による表面の変化を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:変化なし
×:白化、クラック、シワ、膨れのいずれかが見られた
【0254】
(5)密着性評価
旧JIS-K5400に準じて、フィルム(基材層)上に形成した表面層(表面層(C))の密着性を評価した。まず表面層の上から、1mm間隔で11本の切込みを入れた後、90℃向きを変えて同様に11本の切込みを入れ、10マス四方100マスの碁盤目を作成した。
切り込みは表面層を貫通し、その下の層を貫通しない程度とした。次に碁盤目を完全に覆うようにセロハンテープを貼付け、よく擦って密着させた後、テープの端をもって45度の角度で一気に剥がした。テープを剥がした後に、フィルム上に残ったマス目の数を数えた。
評価基準:
〇:残存している碁盤目が90以上
△:残存している碁盤目が70以上90未満
×:残存している碁盤目が70未満
××:塗膜の外観が実用レベル以下(クラック・そり)
【0255】
[樹脂組成物1Aの製造]
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応容器に、メタクリル酸メチル(MMA)229.6部、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシメチル(MHMA)33部、トルエン248.6部、およびn-ドデシルメルカプタン0.19部を仕込み、これに窒素ガスを通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt-アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富株式会社製、商品名:ルペロックス(登録商標)570)0.25部を添加した。続けて、t-アミルパーオキシイソノナノエート0.51部とスチレン12.4部とを2時間かけて滴下した。これらを滴下している間、約105~110℃で還流し、溶液重合を進行させた。滴下終了後、同温度でさらに4時間の熟成を行った。
【0256】
得られた重合溶液に、リン酸ステアリル(堺化学工業株式会社製、商品名:Phoslex A-18)0.21部を加え、約90~110℃の還流下において1.5時間、ラクトン環構造を形成するための環化縮合反応を進行させた。
【0257】
得られた重合溶液を、240℃に加熱した多管式熱交換器に通して環化縮合反応を完結させた。その後、重合溶液を、ベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、35.1部/時(樹脂量換算)の処理速度で導入した。上記ベントタイプスクリュー二軸押出機は、バレル温度が250℃であり、1個のリアベント、4個のフォアベント(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)、および第3ベントと第4ベントとの間に位置するサイドフィーダーを備え、先端部にリーフディスク型のポリマーフィルタ(濾過精度5μm)が配置されている。重合溶液の導入に際して、別途準備しておいた酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液を0.15部/時の投入速度で第2ベントの下流から、イオン交換水を0.54部/時の投入速度で第1および第3ベントの下流から、それぞれ投入した。酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液には、それぞれ4.3部の酸化防止剤(BASFジャパン株式会社製、商品名:イルガノックス1010、株式会社ADEKA製、商品名:アデカスタブ(登録商標)LAO-412S)と、失活剤として14部のオクチル酸亜鉛(日本化学産業株式会社製、商品名:ニッカオクチクス亜鉛)とを、トルエン144部に溶解させた溶液を用いた。
【0258】
脱揮完了後、押出機内に残された溶融状態にある樹脂組成物を当該押出機の先端からポリマーフィルタで濾過しながら排出した。その後、押出機の先端に備わっているダイスを通過させ、冷却水を満たした水槽で冷却することにより、上記樹脂組成物のストランドを得た。上記冷却水は、孔径1μmのフィルタ(オルガノ株式会社製、製品名:ミクロポアフィルタ1EU)で濾過し、30±10℃の範囲内の温度に保持されていたものである。冷却後のストランドを切断機(ペレタイザ)に導入することで、ラクトン環構造を主鎖に有する(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂組成物1Aを得た。得られた樹脂組成物1Aの重量平均分子量は14.9万、ガラス転移温度は122℃であった。また、ラクトン環構造の含有率は19.6%であった。
【0259】
[樹脂組成物2Aの製造]
主鎖にグルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル樹脂(ダイセル・エボニック製、商品名:プレキシイミドTT50、Tg152℃)を樹脂組成物2Aとした。
【0260】
[樹脂組成物3Aの製造]
主鎖にN-置換マレイミド構造を有する(メタ)アクリル樹脂(株式会社日本触媒製、商品名:ポリイミレックスPML203、Tg140℃)を樹脂組成物3Aとした。
【0261】
[樹脂組成物4Aの製造]
樹脂組成物1Aのペレットとポリカーボネート樹脂(株式会社帝人製、商品名:パンライトL-1225Y、Tg150℃)のペレットを重量比8:2でドライブレンドし、80℃の熱風オーブンで8時間乾燥した。その後、乾燥したペレットを二軸押出機を用いて240℃で混練し、これを樹脂組成物4Aとした。
【0262】
[基材層1Fの製造]
樹脂組成物1Aのペレットを80℃の熱風オーブンで8時間乾燥した。その後、乾燥したペレット1Aを、濾過精度5μmのリーフディスク型ポリマーフィルターを備える単軸押出機を用いて、270℃の条件で溶融押出しして溶融フィルムを製膜した。得られた溶融フィルムは120℃に調整された第1冷却ロール、95℃に調整された第2冷却ロール、および複数のパスロールに順次通した後にポリエチレン製の粘着剤付き保護フィルムを貼合して巻き取った。保護フィルムを除いたフィルムの厚みは140μmであった。得られたこの未延伸フィルムを基材層1Fとした。
【0263】
[基材層2F、3F、4Fの製造]
樹脂組成物2A、3A、4Aのペレットをそれぞれ用い、樹脂組成物2A、3Aについては280℃の条件で、樹脂組成物4Aについては270℃の条件で溶融押出した以外は基材フィルム1Fと同様に、未延伸のフィルムを得て、基材層2F、3F、4Fとした。
【0264】
[中間層(層(B))形成用塗液1Cの調製]
アミノエチル化ポリマー溶液(日本触媒製、商品名:ポリメントNK―350)100質量部にイソプロピルアルコール250質量部を添加することにより塗液1Cを得た。
【0265】
[中間層(層(B))形成用塗液2Cの調製]
アミノエチル化ポリマー溶液(日本触媒製、商品名:ポリメントNK―350)100質量部にイソプロピルアルコール250質量部と、架橋剤としてjER828(三菱ケミカル製)3質量部を添加することにより塗液2Cを得た。
【0266】
[中間層(層(B))形成用塗液3Cの調製]
アミノエチル化ポリマー溶液(日本触媒製、商品名:ポリメントNK―350)100質量部にイソプロピルアルコール250質量部と、架橋剤としてデナコールEX―931(ナガセケムテックス製)12.4質量部を添加することにより塗液3Cを得た。
【0267】
[表面層形成用塗液1Dの調製]
溶剤として酢酸エチル50質量部、多官能アクリレートとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)35質量部と、単官能モノマーとしてメタクリル酸メチル(MMA)15質量部と、開始剤としてOmnirad184を1.5質量部とを十分に攪拌して混合することにより塗液1Dを得た。
【0268】
[表面層形成用塗液2Dの調製]
溶剤としてメチルイソブチルケトン50質量部、多官能アクリレートとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)35質量部と、単官能モノマーとしてイソボルニルアクリレート(IBOA)15質量部と、開始剤としてOmnirad184を1.5質量部とを十分に攪拌して混合することにより塗液2Dを得た。
【0269】
[表面層形成用塗液3Dの調製]
溶剤としてトルエン50質量部、多官能アクリレートとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)35質量部と、単官能モノマーとしてイソボルニルアクリレート(IBOA)15質量部と、開始剤としてOmnirad184を1.5質量部とを十分に攪拌して混合することにより塗液3Dを得た。
【0270】
[表面層形成用塗液4Dの調製]
溶剤としてエチルベンゼン、メチルイソブチルケトンが含まれている市販の2液型ウレタンスプレー エアーロック 062-6034(ロックペイント社製)を準備し、塗液4Dとした。
【0271】
[表面層形成用塗液5Dの調製]
溶剤として酢酸エチルが含まれている市販のアクリセットAST―8850E(日本触媒社製)を100質量部に、架橋剤としてアルミキレートA(川研ファインケミカル製)1.5質量部を添加することにより塗液5Dを得た。
【0272】
[実施例1]
保護フィルムを除いた基材層1Fの片側表面に、ワイヤーバーを使用して、塗液1Cを乾燥後の厚みが1μmになるように塗布し、80℃の温度で3分間乾燥させて中間層を形成した。このフィルムを2つ用意して、一方に対して、表面層形成用塗液1Dを用いて、基材層の耐溶剤性評価を行った。他方に対して、中間層の上にアプリケーターを使用して、塗液1Dを乾燥後の厚みが20μmになるように塗布し、80℃の温度で3分間乾燥させた。次いでベルトコンベア式UV照射装置(高圧水銀ランプ、照度500mW/cm)を用い、積算光量1.0J/cmで塗布膜を硬化させて表面層を形成し、積層フィルムを得た。この積層フィルムに対して密着性評価を行った。基材層の耐溶剤性評価、密着性評価の結果を以下の表に示す。なお、密着性評価において、括弧内の数字は残存している碁盤目の数を示す。
【0273】
[実施例2~34、比較例1~14]
基材層1F~4Fと中間層形成用塗液1C~3Cと表面層形成用塗液1D~5Dとの組合せを変更して実施例2~34に係る積層フィルムを得た。それぞれの積層フィルムについて、実施例1と同じように基材層の耐溶剤性と密着性とを評価した。各実施例において、基材層の耐溶剤性評価で使用した表面層形成用塗料と、実際に表面層を形成する際に使用する表面層形成用塗料とを同一にした。基材層と塗液との組合せおよび基材層の耐溶剤性評価、密着性評価の結果を表に示す。
【0274】
中間層形成用塗液1C~3Cを用いないこと以外は同様にして、基材層1F~4Fと表面層形成用塗液1D~5Dとの組合せを変更して比較例1~14に係る2積層フィルムを得た。それぞれの2積層フィルムについて、実施例1と同じように基材層の耐溶剤性と密着性とを評価した。
【0275】
ただし、実施例1では基材層の上に形成された中間層に対して表面層形成用塗液1D~5Dを塗布していたが、比較例1~14では、基材層の表面に表面層形成用塗液1D~5Dを塗布した。各比較例において、基材層の耐溶剤性評価で使用した表面層形成用塗料と、実際に表面層を形成する際に使用する表面層形成用塗料とを同一にした。基材層と塗液との組合せおよび基材層の耐溶剤性評価、密着性評価の結果を表に示す。
【0276】
なお、表面層形成用塗液2D、3Dを使用した際は実施例1と同じ方法で塗布、乾燥して表面層を形成した。表面層形成用塗液4Dを使用した際は、乾燥後の厚みが20μmとなるように、中間層の上にスプレーで満遍なく塗布した後、室温で15分放置して乾燥させて表面層を形成した。また、表面層形成用塗液5Dを使用した際は、アプリケーターを使用して、塗液5Dを乾燥後の厚みが20μmになるように塗布し、80℃の温度で3分間乾燥させることで表面層を形成した。
【0277】
なお、いずれの表面層にも、表面層形成用塗料に由来する溶媒が若干(例えば、50~500ppm程度)含まれていた。
【0278】
【表1】
【0279】
【表2】
【0280】
[実施例35]
実施例1~34のそれぞれにおいて、中間層を形成後、島津製作所製のオートグラフ(AG-Xplus)を用いて150℃で100%延伸(一軸延伸)し、その後に表面層を形成したこと以外は、実施例1~34と同様にして基材及び積層フィルムを得た。
いずれも、延伸処理しても、中間層は基材層に良好に追随し、中間層は基材層から剥離することなく、ひび割れ等は生じなかった。また、表面層を形成しても、未延伸の場合と同様の耐溶剤性及び密着性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0281】
本発明によれば、新規な基材を提供できる、このような基材は、表面層を形成するための基材等として好適に使用しうる。