(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000802
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】メモリシステム
(51)【国際特許分類】
G11C 11/16 20060101AFI20231226BHJP
G11C 13/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
G11C11/16 230
G11C13/00 400H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099719
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】片山 明
(72)【発明者】
【氏名】初田 幸輔
(57)【要約】
【課題】高速の読み出し動作を行うことが可能なメモリシステムを提供すること。
【解決手段】メモリシステムは、複数の第1配線と、複数の第2配線と、複数のメモリセルと、第3配線と、センスアンプと、第1スイッチ素子と、第1トランジスタと、を備える。前記第1ノードは、前記第1スイッチ素子より前記センスアンプ側に位置する。前記第2ノードは、前記第1スイッチ素子より前記メモリセル側に位置する。前記第1スイッチ素子がオン状態のとき、前記第1ノードと前記第2ノードとが接続される。前記第1スイッチ素子がオフ状態のとき、前記第1ノードと前記ゲート端子とが接続され、前記ゲート端子に供給された電圧に応じて前記第1ノードと前記第1電源線との間で電流が流れる。
【選択図】
図12A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延伸する複数の第1配線と、
前記第1方向と交差する第2方向に延伸する複数の第2配線と、
前記複数の第1配線と前記複数の第2配線とが交差する位置において前記第1配線と前記第2配線との間に接続されるメモリセルと、
前記複数の第1配線の各々に接続可能な第3配線と、
前記第3配線に接続され、前記複数のメモリセルに対する読み出し動作を実行するセンスアンプと、
前記複数の第1配線と前記第3配線との間に設けられた第1スイッチ素子と、
第1端子が前記第1配線から前記第3配線までの配線上の第1ノードに接続され、第2端子が第1電源線に接続され、ゲート端子が前記第1配線から前記第3配線までの配線上の第2ノードに接続される第1トランジスタと、を備え、
前記第1ノードは、前記第1スイッチ素子より前記センスアンプ側に位置し、
前記第2ノードは、前記第1スイッチ素子より前記メモリセル側に位置し、
前記第1スイッチ素子がオン状態のとき、前記第1ノードと前記第2ノードとが接続され、
前記第1スイッチ素子がオフ状態のとき、前記第1ノードと前記ゲート端子とが接続され、前記ゲート端子に供給された電圧に応じて前記第1ノードと前記第1電源線との間で電流が流れる、メモリシステム。
【請求項2】
制御回路をさらに備え、
前記制御回路は、読み出し動作時に、読み出し動作の対象である前記メモリセルに接続された前記第1配線と前記ゲート端子とが接続され、前記第1スイッチ素子がオフ状態に制御されたときの前記第1ノードの電圧に基づいて前記メモリセルの状態を判断する、請求項1に記載のメモリシステム。
【請求項3】
前記制御回路は、
前記第1スイッチ素子をオン状態に制御して第1電圧を前記第1配線及び前記第3配線に供給し、
前記第1スイッチ素子をオフ状態に切り替え、
前記第3配線に、前記第1電圧よりも低い第2電圧を供給する、請求項2に記載のメモリシステム。
【請求項4】
前記第1電圧が供給される第2電源線と、
前記第2電源線と前記第3配線との間に設けられた第2スイッチ素子と、をさらに備える、請求項3に記載のメモリシステム。
【請求項5】
前記第2電圧が供給される第3電源線と、
前記第3電源線と前記第3配線との間に設けられた第3スイッチ素子と、をさらに備える、請求項4に記載のメモリシステム。
【請求項6】
前記第3配線に接続可能であり、前記第3配線に前記第2電圧を供給するリセット回路をさらに備える、請求項4に記載のメモリシステム。
【請求項7】
前記リセット回路は、ダイオード素子又はダイオード接続されたトランジスタを含み、前記第3配線に向かって電流を流す整流作用を備える、請求項6に記載のメモリシステム。
【請求項8】
前記センスアンプは、第1対象電圧が供給される第1センス端子と第2対象電圧が供給される第2センス端子とを備え、
前記制御回路は、前記第1対象電圧と前記第2対象電圧との差に基づいて、読み出し動作の対象である前記メモリセルの状態を判断する、請求項7に記載のメモリシステム。
【請求項9】
ゲート端子が前記第1センス端子に接続され、ソース端子及びドレイン端子の一方が前記第3配線に接続可能な第2トランジスタと、
前記第2トランジスタのソース端子及びドレイン端子の一方と前記第3配線との間の第4スイッチ素子と、
前記第2トランジスタのゲート端子と前記第4スイッチ素子との間の第5スイッチ素子と、をさらに備え、
前記制御回路は、
前記第1スイッチ素子及び前記第2スイッチ素子をオフ状態に制御し、前記第4スイッチ素子及び前記第5スイッチ素子をオン状態に制御して、前記第1センス端子及び前記第2トランジスタのゲート端子に前記第1対象電圧を供給し、
前記第1スイッチ素子、前記第2スイッチ素子、前記第4スイッチ素子、及び前記第5スイッチ素子をオフ状態に制御して、前記リセット回路から前記第3配線に前記第2電圧を供給し、
前記第1スイッチ素子、前記第2スイッチ素子、及び前記第5スイッチ素子をオフ状態に制御し、前記第4スイッチ素子をオン状態に制御して、前記第2センス端子に前記第2対象電圧を供給する、請求項8に記載のメモリシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は記憶装置を備えたメモリシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上に抵抗変化型のメモリ素子等が集積化された記憶装置を備えたメモリシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2021/0295888号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高速の読み出し動作を行うことが可能なメモリシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係るメモリシステムは、第1方向に延伸する複数の第1配線と、前記第1方向と交差する第2方向に延伸する複数の第2配線と、前記複数の第1配線と前記複数の第2配線とが交差する位置において前記第1配線と前記第2配線との間に接続されるメモリセルと、前記複数の第1配線の各々に接続可能な第3配線と、前記第3配線に接続され、前記複数のメモリセルに対する読み出し動作を実行するセンスアンプと、前記複数の第1配線と前記第3配線との間に設けられた第1スイッチ素子と、第1端子が前記第1配線から前記第3配線までの配線上の第1ノードに接続され、第2端子が第1電源線に接続され、ゲート端子が前記第1配線から前記第3配線までの配線上の第2ノードに接続される第1トランジスタと、を備える。前記第1ノードは、前記第1スイッチ素子より前記センスアンプ側に位置する。前記第2ノードは、前記第1スイッチ素子より前記メモリセル側に位置する。前記第1スイッチ素子がオン状態のとき、前記第1ノードと前記第2ノードとが接続される。前記第1スイッチ素子がオフ状態のとき、前記第1ノードと前記ゲート端子とが接続され、前記ゲート端子に供給された電圧に応じて前記第1ノードと前記第1電源線との間で電流が流れる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】一実施形態に係るメモリシステムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係るメモリセルの構成を模式的に示す斜視図である。
【
図3】一実施形態に係る可変抵抗素子の構成を模式的に示す断面図である。
【
図4】一実施形態に係るスイッチング素子の電気特性を示す図である。
【
図5】一実施形態に係るメモリセルの読み出し動作時における電気特性を示す図である。
【
図6】一実施形態に係るメモリシステムに含まれる判定回路の機能構成を示すブロック図である。
【
図7】一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作の原理を説明するための回路図である。
【
図8】一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作の原理を説明する図である。
【
図9】一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作の原理を説明するための回路図である。
【
図10】一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作の原理を説明する図である。
【
図11】一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作の原理を説明する図である。
【
図12A】一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作に係る回路図である。
【
図12B】一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作に係る回路図である。
【
図12C】一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作に係る回路図である。
【
図12D】一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作に係る回路図である。
【
図13】一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作に係るタイミングチャートである。
【
図14】一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作に係る回路図である。
【
図15A】一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作に係るタイミングチャートである。
【
図15B】一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作に係るタイミングチャートである。
【
図16】一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作に係る回路図である。
【
図17】一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作に係るタイミングチャートである。
【
図18A】一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作を説明する回路図である。
【
図18B】一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作を説明する回路図である。
【
図18C】一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作を説明する回路図である。
【
図18D】一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作を説明する回路図である。
【
図18E】一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作を説明する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態にかかる不揮発性半導体記憶装置を図面を参照して具体的に説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する要素について、同一符号が付されており、必要な場合にのみ重複して説明する。以下に示す各実施形態は、この実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示する。実施形態の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定されない。実施形態の技術的思想は、特許請求の範囲に対して、種々の変更を加えたものであってもよい。
【0008】
本発明の各実施の形態において、可変抵抗素子101からスイッチング素子102に向かう方向を上又は上方という。逆に、スイッチング素子102から可変抵抗素子101に向かう方向を下又は下方という。このように、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明するが、例えば、可変抵抗素子101とスイッチング素子102との上下関係が図示と逆になるように配置されてもよい。以下の説明で、例えば可変抵抗素子101の上方のスイッチング素子102という表現は、上記のように可変抵抗素子101とスイッチング素子102との上下関係を説明しているに過ぎず、可変抵抗素子101とスイッチング素子102との間に他の部材が配置されていてもよい。上方又は下方は、複数の層が積層された構造における積層順を意味する。ワード線WLの上方のビット線BLと表現する場合、平面視でワード線WLとビット線BLとが重ならない位置関係であってもよい。一方、ワード線WLの鉛直上方のビット線BLと表現する場合は、平面視でワード線WLとビット線BLとが重なる位置関係を意味する。
【0009】
本明細書において「αはA、B又はCを含む」、「αはA,B及びCのいずれかを含む」、「αはA,B及びCからなる群から選択される一つを含む」、といった表現は、特に明示が無い限り、αがA~Cの複数の組み合わせを含む場合を排除しない。さらに、これらの表現は、αが他の要素を含む場合も排除しない。
【0010】
以下の説明において、「電圧」は2端子間の電位差を指すが、「電圧」が電圧VSS又はグラウンド電圧を基準とした電位を指す場合もある。
【0011】
[1.第1実施形態]
図1~
図13を用いて、第1実施形態に係るメモリシステムについて説明する。第1実施形態に係るメモリシステム1は、例えば、メモリセルMCが複数配列されたメモリセルアレイ10と、当該メモリセルを制御する制御回路40と、を含む。
【0012】
[1-1.メモリシステムの全体構成]
第1実施形態に係るメモリシステムの全体構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、一実施形態に係るメモリシステムの全体構成を示すブロック図である。
図1に示すように、メモリシステム1は、メモリセルアレイ10、ワード線選択/駆動回路20(WL Selector/Driver)、ビット線選択/駆動回路30(BL Selector/Driver)、及び制御回路40(Controller)を含む。
【0013】
メモリセルアレイ10には、複数のメモリセルMC、複数のローカルワード線LWL、及び複数のローカルビット線LBLが設けられている。各ローカルワード線LWLは、D1方向に延伸する。各ローカルビット線LBLは、D2方向に延伸する。各メモリセルMCは、ローカルワード線LWLとローカルビット線LBLとの間に設けられており、ローカルワード線LWL及びローカルビット線LBLに電気的に接続されている。メモリセルMCは2端子のメモリセルである。メモリセルMCの第1端子11はローカルワード線LWLに接続されている。メモリセルMCの第2端子12はローカルビット線LBLに接続されている。詳細は後述するが、ローカルワード線LWLとローカルビット線LBLとは交差している。ローカルワード線LWLとローカルビット線LBLとが交差する位置にメモリセルMCが設けられている。
【0014】
図1では、D1方向とD2方向とが直交する構成が例示されている。ただし、D1方向とD2方向とは直角ではない角度で交差していてもよい。
図1では、ローカルワード線LWLがD1方向に直線状に延伸した構成が例示されている。ただし、ローカルワード線LWLは直線状でなくてもよい。ローカルワード線LWLは、ローカルワード線LWL全体を見た場合にD1方向に延伸していればよい。
図1では、ローカルビット線LBLがD2方向に直線状に延伸した構成が例示されている。ただし、ローカルビット線LBLは直線状でなくてもよい。ローカルビット線LBLは、ローカルビット線LBL全体を見た場合にD2方向に延伸していればよい。
【0015】
複数のローカルワード線LWL及び複数のローカルビット線LBLからそれぞれ1つのローカルワード線LWL及びローカルビット線LBLを選択することで、書き込み動作及び読み出し動作の対象であるメモリセルMCが指定される。具体的には、特定のローカルワード線LWL及びローカルビット線LBLに所定の電圧を印加することによって、メモリセルMCに所定の電流が流れる。当該メモリセルMCに所定の電流を流すことによって、メモリセルMCに対する書き込み動作及び読み出し動作が実行される。なお、以下の説明において、メモリセルMCに対する読み出し動作を「センス動作」又は「センスアンプ動作」と言い換えることができる。
【0016】
ワード線選択/駆動回路20は、D1方向において、メモリセルアレイ10と隣接する位置に設けられている。各ローカルワード線LWLはワード線選択/駆動回路20に接続されている。
【0017】
ビット線選択/駆動回路30は、D2方向において、メモリセルアレイ10と隣接する位置に設けられている。各ローカルビット線LBLはビット線選択/駆動回路30に接続されている。
【0018】
制御回路40は、ワード線選択/駆動回路20及びビット線選択/駆動回路30に接続されている。制御回路40は、判定回路50(discrimination)及びセンスアンプ60(SA)を含んでいる。制御回路40は、グローバルワード線GWLを介してワード線選択/駆動回路20に接続されており、グローバルビット線GBLを介してビット線選択/駆動回路30に接続されている。より具体的に、グローバルワード線GWL及びグローバルビット線GBLはセンスアンプ60に接続されている。詳細は後述するが、センスアンプ60はメモリセルMCに対する読み出し動作を実行する。
【0019】
制御回路40は、コマンドに応じて書き込み動作及び読み出し動作を実行する。制御回路40は、書き込み動作及び読み出し動作において指定されたアドレスに応じて、ワード線選択/駆動回路20及びビット線選択/駆動回路30に制御信号を供給する。当該制御信号に応じて、ワード線選択/駆動回路20及びビット線選択/駆動回路30は、それぞれ指定されたアドレスに対応するローカルワード線LWL及びローカルビット線LBLを選択する。ワード線選択/駆動回路20及びビット線選択/駆動回路30は、選択されたローカルワード線LWL及びローカルビット線LBLに、それぞれ書き込み電圧又は読み出し電圧を印加する。
【0020】
本実施形態では、それぞれ1本のグローバルワード線GWL及びグローバルビット線GBLが制御回路40に接続された構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、それぞれ複数のグローバルワード線GWL及びグローバルビット線GBLが制御回路40に接続されていてもよい。当該複数のグローバルワード線GWL及びグローバルビット線GBLは、それぞれ異なるメモリセルアレイ10に接続されていてもよい。
【0021】
グローバルワード線GWLは複数のローカルワード線LWLに接続可能である。グローバルビット線GBLは複数のローカルビット線LBLに接続可能である。
【0022】
判定回路50は、読み出し動作によって得られたメモリセルMCの電圧(読み出し電圧)に基づいて、メモリセルMCに記憶されたデータ値を判定する。詳細は後述するが、メモリセルMCは、可変抵抗素子101を含み、当該可変抵抗素子101の抵抗状態(低抵抗状態又は高抵抗状態)に依存する2値のデータを記憶する。判定回路50によって当該可変抵抗素子101の抵抗状態が判定されることで、メモリセルMCに記憶されたデータの判定が行われる。
【0023】
[1-2.メモリセルアレイ10の構成]
図2は、一実施形態に係るメモリセルの構成を模式的に示す斜視図である。
図2に示すように、メモリセルMCはローカルワード線LWLの上方(D3方向)に設けられている。ローカルビット線LBLはメモリセルMCの上方(D3方向)に設けられている。換言すると、メモリセルMCは、互いに異なる層に設けられたローカルワード線LWLとローカルビット線LBLとが交差する領域において、ローカルワード線LWLとローカルビット線LBLとの間に設けられている。
【0024】
メモリセルMCは、可変抵抗素子101及びスイッチング素子102を含む。可変抵抗素子101及びスイッチング素子102は、ローカルワード線LWLとローカルビット線LBLとの間で直列に接続されている。ローカルワード線LWL側に可変抵抗素子101が設けられており、ローカルビット線LBL側にスイッチング素子102が設けられている。
【0025】
可変抵抗素子101は、低抵抗状態又は高抵抗状態に切り替え可能な不揮発性のメモリ素子である。可変抵抗素子101の低抵抗状態を「第1低抵抗状態」という場合がある。可変抵抗素子101の高抵抗状態を「第1高抵抗状態」という場合がある。本実施形態では、可変抵抗素子101として、磁気トンネル接合(MTJ)を含む磁気抵抗効果素子が用いられた構成について説明する。以降、磁気抵抗効果素子をMTJ素子と称する場合がある。MTJ素子は、絶縁層を介して隣接する2つの磁性層の各々の磁化方向の関係(平行又は非平行)によって、絶縁層におけるトンネル効果による抵抗(トンネル抵抗)が変化するメモリ素子である。即ち、一方の磁性層の磁化の向きと他方の磁性層の磁化の向きとの相対的な関係(磁化配列)に応じて、MTJ素子は複数の抵抗状態(抵抗値)を含む。
【0026】
スイッチング素子102は、2端子の素子である。スイッチング素子は、2つの端子に印加される電圧に応じて低抵抗状態又は高抵抗状態に切り替えられる。スイッチング素子102の低抵抗状態を「第2低抵抗状態」という場合がある。スイッチング素子102の高抵抗状態を「第2高抵抗状態」という場合がある。第2低抵抗状態の抵抗は、上記の可変抵抗素子101の第1低抵抗状態の抵抗より低い。第2高抵抗状態の抵抗は、上記の可変抵抗素子101の第1高抵抗状態の抵抗より高い。つまり、スイッチング素子102が第2高抵抗状態である場合、メモリセルMCの抵抗は、ほぼスイッチング素子102の抵抗によって決定される。一方、スイッチング素子102が第2低抵抗状態である場合、メモリセルMCの抵抗は、ほぼ可変抵抗素子101の抵抗によって決定される。
【0027】
図2の構成とは異なり、ローカルビット線LBL側に可変抵抗素子101が設けられてもよい。ローカルワード線LWL側にスイッチング素子102が設けられていてもよい。ローカルワード線LWLがスイッチング素子102の上方(D3方向)に設けられてもよい。ローカルビット線LBLが可変抵抗素子101の下方(D3方向の逆方向)に設けられてもよい。ローカルワード線LWLと可変抵抗素子101との間に他の部材が設けられていてもよい。同様に、ローカルビット線LBLとスイッチング素子102との間に他の部材が設けられていてもよい。
【0028】
本実施形態では、可変抵抗素子101として、MTJ素子が用いられた構成が説明されるが、可変抵抗素子101として、MTJ素子以外の可変抵抗素子が用いられてもよい。例えば、可変抵抗素子101として、抵抗変化型メモリ素子(ReRAM)、強誘電体メモリ(FeRAM)、有機メモリ、及び相変化メモリ素子(PRAM)が用いられてもよい。
【0029】
[1-3.MTJ素子の構成]
図3は、一実施形態に係る可変抵抗素子の構成を模式的に示す断面図である。
図3に示すように、可変抵抗素子101として用いられるMTJ素子は、記憶層101a、参照層101b、及びトンネルバリア層101cを含む。記憶層101aは第1の磁性を備えた強磁性層である。参照層101bは第2の磁性を備えた強磁性層である。トンネルバリア層101cは非磁性層である。記憶層101aの磁化方向は可変である。参照層101bの磁化方向は固定されている。記憶層101aに供給された書き込み電流によって、記憶層101aの磁化方向が変化する。書き込み電流の方向によって、記憶層101aの磁化方向が決定される。一方、参照層101bに書き込み電流が供給されても参照層101bの磁化方向は変化しない。トンネルバリア層101cは絶縁層である。「磁化方向は可変である」という表現は、書き込み電流が供給される前(書き込み前)と書き込み電流が供給された後(書き込み後)とで磁化方向が変化可能であることを意味する。「磁化方向は固定されている」とは、書き込み電流が供給される前(書き込み前)と書き込み電流が供給された後(書き込み後)とで磁化方向が変化しないことを意味する。
【0030】
記憶層101aの磁化方向が参照層101bの磁化方向に対して平行である場合(磁化方向が同じ向きである場合)、MTJ素子は低抵抗状態である。記憶層101aの磁化方向が参照層101bの磁化方向に対して反平行である場合(磁化方向が反対向きである場合)、MTJ素子は高抵抗状態である。このように、記憶層101aの磁化方向によって抵抗状態(低抵抗状態又は高抵抗状態)が制御されるため、MTJ素子は、当該抵抗状態に基づいて異なる2値データを記憶することができる。
【0031】
図3には、可変抵抗素子101として、記憶層101aが参照層101bの下方に設けられたボトムフリー型のMTJ素子が用いられた構成が例示されているが、この構成に限定されない。可変抵抗素子101として、記憶層101aが参照層101bの上方に設けられたトップフリー型のMTJ素子が用いられてもよい。MTJ素子が、参照層101bから記憶層101aに印加される磁界をキャンセルするシフトキャンセリング層をさらに含んでいてもよい。
【0032】
[1-4.スイッチング素子の電気特性]
図4は、一実施形態に係る2端子型のスイッチング素子の電気特性を示す図である。
図4に示すように、スイッチング素子102は、2端子間に印加される電圧が増加して第1の電圧V1に達すると、高抵抗状態111から低抵抗状態112に切り替えられる。スイッチング素子102は、スイッチング素子102が低抵抗状態112に切り替えられると、2端子間の電圧が第1の電圧V1よりも低い第2の電圧V2に移行し、電流が急激に増加する、という特性を有する。さらに、スイッチング素子102は、2端子間に印加される電圧が減少して第2の電圧V2に達すると、低抵抗状態112から高抵抗状態111に切り替えられる、という特性を有する。すなわち、スイッチング素子102は、高抵抗状態111から低抵抗状態112に切り替えられるときには電圧V1と電圧V2との間の負性抵抗領域をたどる(矢印RR1)が、低抵抗状態112から高抵抗状態111に切り替えられるときには負性抵抗領域をたどらずに高抵抗状態111に移行する(矢印RR2)。スイッチング素子102は、双方向(正方向及び負方向)で互いに対称的な電気特性を有している。
【0033】
本実施形態のスイッチング素子102は、一例として、上述するように電圧V1で抵抗値が急激に下がり、それに伴い印加電圧は急減に下がり、電流は増加(スナップバック)する、という特性を有する。本実施形態のスイッチング素子102は、2端子型のスイッチング素子である。このような特性を有するスイッチング素子に使用する材料組成は、メモリセルの特性に応じて、適宜選択される。
【0034】
ローカルワード線LWLとローカルビット線LBLとの間に所定の電圧が印加されてスイッチング素子102が低抵抗状態に切り替えられることで、可変抵抗素子101に対する書き込み動作及び読み出し動作を行うことが可能となる。
【0035】
[1-5.メモリセルMCの電気特性]
図5は、選択されたメモリセルMCの読み出し動作時における電気特性を模式的に示した図である。
図5において、横軸は選択されたメモリセルMCの2端子間の電圧(ローカルワード線LWLとローカルビット線LBLとの間に印加されている電圧)を示しており、縦軸は選択されたメモリセルMCに流れる電流を示している。特性(L)は、可変抵抗素子101が低抵抗状態であるときの特性である。特性(H)は、可変抵抗素子101が高抵抗状態であるときの特性である。
【0036】
上記のように、高抵抗状態のスイッチング素子102の抵抗は、高抵抗状態の可変抵抗素子101の抵抗よりも高い。この場合、メモリセルMCの抵抗は、ほぼスイッチング素子102の抵抗によって決定される。したがって、スイッチング素子102が高抵抗状態から低抵抗状態に切り替えられる前のメモリセルMCの電気特性(特性部分(a)に対応)は、可変抵抗素子101が低抵抗状態である場合であっても高抵抗状態である場合であっても、実質的に差はない。つまり、スイッチング素子102が高抵抗状態から低抵抗状態に切り替えられるときにメモリセルMCの2端子間に印加されている電圧(閾電圧Vth)は、スイッチング素子102が低抵抗状態である場合であっても高抵抗状態である場合であっても、実質的に差はない。
【0037】
一方、低抵抗状態のスイッチング素子102の抵抗は、低抵抗状態の可変抵抗素子101の抵抗よりも低いので、スイッチング素子102が高抵抗状態から低抵抗状態に切り替えられた後は、メモリセルMCの抵抗はほぼ可変抵抗素子101の抵抗によって決定される。したがって、スイッチング素子102が高抵抗状態から低抵抗状態に切り替えられた後のメモリセルMCの電気特性(特性部分(b)に対応)において、可変抵抗素子101が低抵抗状態である場合の電気特性は、可変抵抗素子101が高抵抗状態である場合の電気特性と異なる。具体的には、特性部分(b)における電圧-電流の勾配について、可変抵抗素子101が高抵抗状態である場合の勾配は可変抵抗素子101が低抵抗状態である場合の勾配よりも小さい。
【0038】
図5に示すように、読み出し動作における読み出し電流Ireadに対して、可変抵抗素子101が低抵抗状態である場合の読み出し電圧はVreadLであり、可変抵抗素子101が高抵抗状態である場合の読み出し電圧はVreadHである。読み出し電圧VreadLは、読み出し電圧VreadHより小さい。読み出し電圧VreadLと読み出し電圧VreadHとの差に基づいて、可変抵抗素子101の抵抗状態(低抵抗状態又は高抵抗状態)を判定することが可能である。
【0039】
図5において、ホールド電流Iholdは、スイッチング素子102が低抵抗状態から高抵抗状態に切り替えられるときにメモリセルMCに流れる電流である。ホールド電圧Vholdは、メモリセルMCにホールド電流Iholdが流れるときにメモリセルMCの2端子間に印加される電圧である。可変抵抗素子101が低抵抗状態の場合におけるホールド電圧がVholdLである。可変抵抗素子101が高抵抗状態の場合におけるホールド電圧がVholdHである。ホールド電圧VholdL及びVholdHを特に区別しない場合、これらは単にホールド電圧Vholdと記載される。
【0040】
[1-6.判定回路の機能構成]
図6は、一実施形態に係るメモリシステムに含まれる判定回路の機能構成を示すブロック図である。
図6に示すように、判定回路50は、電圧保持部51(Voltage Maintaining)、電圧差取得部52(Voltage Difference Obtaining)、比較部53(Comparison)、及び決定部54(Decision)を含む。
【0041】
電圧保持部51は、メモリセルMCの読み出し動作によって得られた読み出し電圧(VreadL又はVreadH)を判定対象電圧として保持する。このように、メモリセルMCに記憶されたデータの読み出し動作を「第1読み出し動作」という場合がある。判定対象電圧を「第1対象電圧」という場合がある。
【0042】
さらに、電圧保持部51は、当該判定対象電圧についてデータ判定を行うための参照電圧を保持する。参照電圧は、上記の第1読み出し動作の後に行われる第2読み出し動作によって取得される。参照電圧を「第2対象電圧」という場合がある。上記の第1読み出し動作の後に可変抵抗素子101への書き込み動作が行われる。可変抵抗素子101が低抵抗状態又は高抵抗状態に切り替えられた後に第2読み出し動作が行われる。第1読み出し動作が行われるときの可変抵抗素子101の抵抗状態を「判定対象抵抗状態」といい、第2読み出し動作が行われるときの可変抵抗素子101の抵抗状態を「参照抵抗状態」という場合がある。
【0043】
電圧差取得部52は、電圧保持部51によって保持されている判定対象電圧と参照電圧との間の電圧差を取得する。
【0044】
比較部53は、電圧差取得部52によって取得された電圧差と基準電圧差とを比較する。基準電圧差は、例えば、可変抵抗素子101が低抵抗状態である場合の読み出し電圧VreadLと、可変抵抗素子101が高抵抗状態である場合の読み出し電圧VreadHとの電圧差に1/2を乗じた値である。
【0045】
決定部54は、比較部53によって取得された比較結果に基づいて、可変抵抗素子101の抵抗状態を判定する。具体的には、判定対象電圧と参照電圧との電圧差が基準電圧差よりも小さい場合、可変抵抗素子101の判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と同じ抵抗状態であると判定される。判定対象電圧と参照電圧との電圧差が基準電圧差よりも大きい場合、可変抵抗素子101の判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と異なる抵抗状態であると判定される。
【0046】
[1-7.読み出し動作の原理]
図7~
図11を用いて、メモリシステムの読み出し動作の原理について説明する。
図7及び
図8は、上記の第1読み出し動作について説明する図である。
図9及び
図10は、上記の第2読み出し動作について説明する図である。
図7及び
図9は、それぞれの読み出し動作における回路図を示す。
図8及び
図10は、それぞれの読み出し動作においてノードN1に供給される電圧を示す図である。なお、上記の読み出し動作を「センス動作」又は「センスアンプ動作」ということができる。
【0047】
図7及び
図9に示す構成では、メモリセルMCはローカルビット線LBLとローカルワード線LWLとの間に設けられている。ローカルビット線LBLには、スイッチ素子SW0を介して接地電位が供給されている。スイッチ素子SW0がオン状態の場合、ローカルビット線LBLには接地電位が供給され、スイッチ素子SW0がオフ状態の場合、ローカルビット線LBLには電圧Vuselが供給される。例えば、電圧Vuselは閾電圧Vthの半分程度の電圧である。ローカルワード線LWLとグローバルワード線GWLとの間にスイッチ素子SW1が設けられている。グローバルワード線GWLとデータX方向配線DXLとの間にスイッチ素子SW2が設けられている。データX方向配線DXLとトランジスタTr1のゲート端子との間にスイッチ素子SW3が設けられている。トランジスタTr1はNMOS型トランジスタ(以下、「NMOS」という。)である。
【0048】
トランジスタTr1の第1端子は接地電位が供給される電源線GNDに接続されている。トランジスタTr1の第2端子はノードN1に接続されている。電源線VDDとノードN1との間にトランジスタTr2が設けられている。トランジスタTr2はPMOS型トランジスタ(以下、「PMOS」という。)である。トランジスタTr2の第1端子は電源線VDDに接続されている。トランジスタTr2の第2端子はノードN1に接続されている。トランジスタTr2のゲート端子はノードN2に接続されている。ノードN1とノードN2との間にスイッチ素子SW4が設けられている。つまり、トランジスタTr2のゲート端子は、スイッチ素子SW4を介してトランジスタTr2の第2端子に接続される。
【0049】
センスアンプAmpは端子A1及び端子A2を備える。ノードN2は端子A1に接続されている。ノードN2に容量素子C1が接続されている。容量素子C1は、ノードN2の電圧を保持する。ノードN1と端子A2との間にスイッチ素子SW5が設けられている。スイッチ素子SW5と端子A2との間のノードN3に容量素子C2が接続されている。容量素子C2は、ノードN3の電圧を保持する。
【0050】
データX方向配線DXLと電源線Vhhとの間にスイッチ素子SW6及びトランジスタTr3が直列に接続されている。電源線Vhhを「第2電源線」という場合がある。スイッチ素子SW6を「第2スイッチ素子」という場合がある。電源線Vhhには、ローカルワード線LWL、グローバルワード線GWL、及びデータX方向配線DXLに対してプリチャージするための高電圧が供給される。電源線Vhhに供給される電圧を「第1電圧Vprc」という場合がある。例えば、第1電圧Vprcは、メモリセルMCのスイッチング素子102の閾電圧Vthに基づいて決定される。具体的には、第1電圧Vprcは、[Vth+5σ×Vth]であり、電圧Vuselの2倍程度の電圧である。もちろん、第1電圧Vprcは、上記の値に限定されない。スイッチ素子SW1~SW6は、オン状態とオフ状態とを切り替えることができればよく、NMOS又はPMOSが用いられる。
【0051】
図7に示すように、第1読み出し動作では、スイッチ素子SW1~SW3がオン状態に制御され、読み出し動作の対象のメモリセルMCに接続されたローカルワード線LWLがトランジスタTr1のゲート端子に接続される。スイッチ素子SW4がオン状態に制御され、トランジスタTr2のゲート端子と第2端子とが接続される。つまり、スイッチ素子SW4がオン状態のとき、トランジスタTr2はダイオード接続された状態に制御される。トランジスタTr1のゲート端子には、メモリセルMCの抵抗状態に起因した電圧が供給される。つまり、メモリセルMCの抵抗状態によってトランジスタTr1に流れる電流量が決定される。その結果、ノードN1の電圧は、メモリセルMCの抵抗状態に依存する。つまり、容量素子C1には、メモリセルMCの抵抗状態に基づくサンプル電圧Vsmplが保持される。
【0052】
図8を用いて、
図7の状態においてノードN1に供給される電圧を説明する。
図8に示すグラフはトランジスタTr1、Tr2のId-Vd特性である。特性201は、メモリセルMC(可変抵抗素子101)が低抵抗状態“P”である場合のトランジスタTr1の特性である。特性202は、メモリセルMCが高抵抗状態“AP”である場合のトランジスタTr1の特性である。特性203は、上記のようにダイオード接続されたトランジスタTr2の特性である。
【0053】
メモリセルMCが低抵抗状態“P”である場合、ノードN1に供給される電圧は、特性201と特性203との交点P1に基づいて、Vsmpl(P)に決定される。メモリセルMCが高抵抗状態“AP”である場合、ノードN1に供給される電圧は、特性202と特性203との交点P2に基づいて、Vsmpl(AP)に決定される。
図8に示すように、ダイオード接続されたトランジスタTr2において、電流Idは電圧Vdの変化に対して急峻に立ち上がる。その結果、
図7に示す状態では、メモリセルMCの抵抗状態が異なる場合であっても、ノードN1の差(Vsmpl(P)-Vsmpl(AP))は小さい。
【0054】
上記の第1読み出し動作の後に、読み出し動作の対象のメモリセルMCに対して、低抵抗状態“P”又は高抵抗状態“AP”への書き込み動作が実行される。書き込み動作が実行される場合、スイッチ素子SW3及びSW6はオフ状態に制御され、スイッチ素子SW1及びSW2はオン状態に制御され、データX方向配線DXLには電源線Vhhから、書き込み動作に必要な電圧が供給される。当該書き込み動作の後に、以下の第2読み出し動作が実行される。以下の説明では、上記の書き込み動作として、低抵抗状態“P”への書き込み動作が実行された場合について説明する。
【0055】
図9に示すように、第2読み出し動作では、スイッチ素子SW1~SW3がオン状態に制御され、読み出し動作の対象のメモリセルMCに接続されたローカルワード線LWLがトランジスタTr1のゲート端子に接続される。スイッチ素子SW4がオフ状態に制御され、第2トランジスタTr2のダイオード接続が解除される。容量素子C1にはサンプル電圧Vsmplが保持されているので、トランジスタTr2は、そのゲート端子がサンプル電圧Vsmplによって制御された状態のId-Vd特性を示す。トランジスタTr1のゲート端子には、低抵抗状態“P”への書き込み動作が実行された後のメモリセルMCの抵抗状態に起因した電圧が供給される。上記のトランジスタTr1とTr2の関係に基づいて、ノードN1の電圧及び容量素子C2に保持される電圧が評価用電圧Vevalに決定される。
【0056】
図7及び
図9では、ローカルビット線LBLに接地電位GNDが供給された構成が例示されているが、ローカルビット線LBLに閾電圧Vthの半分程度の電圧が供給されてもよい。
【0057】
図10を用いて、
図9の状態においてノードN1に供給される電圧を説明する。
図10に示すグラフは、
図8と同様、トランジスタTr1、Tr2のId-Vd特性である。特性211は、低抵抗状態“P”への書き込み動作が実行されたメモリセルMCを介してゲート端子に電圧が供給されたトランジスタTr1の特性である。参考のために点線で示された特性212は、上記の書き込み動作で高抵抗状態“AP”への書き込み動作が実行された場合のトランジスタTr1の特性である。特性221は、第1読み出し動作によって容量素子C1にサンプル電圧Vsmpl(P)が保持された場合のトランジスタTr2の特性である。よって、特性221は交点P1を通る曲線である。特性222は、第1読み出し動作によって容量素子C1にサンプル電圧Vsmpl(AP)が保持された場合のトランジスタTr2の特性である。よって、特性222は交点P2を通る曲線である。
【0058】
上記のように、第1読み出し動作の際にメモリセルMCが低抵抗状態“P”だった場合、第2読み出し動作時のノードN1に供給される電圧は、特性211と特性221との交点P1に基づいて、電圧Veval(P)に決定される。第1読み出し動作の際にメモリセルMCが低抵抗状態“AP”だった場合、第2読み出し動作時のノードN1に供給される電圧は、特性211と特性222との交点P3に基づいて、電圧Veval(AP)に決定される。
【0059】
図11は、各動作におけるノードN1の変動を示すグラフである。
図11に示すグラフの横軸は時間であり、縦軸はノードN1に供給される電圧である。当該グラフの横軸は、第1読み出し動作(1st RD)、低抵抗状態“P”への書き込み動作(RWT(P))、及び第2読み出し動作(2nd RD)に区分されている。
【0060】
第1読み出し動作の期間では、
図7に示すようにトランジスタTr2がダイオード接続されているため、
図8に示すように、メモリセルMCの抵抗状態が低抵抗状態“P”であっても高抵抗状態“AP”であっても、ノードN1に供給される電圧(Vsmpl(P)とVsmpl(AP))に大差はない。書き込み動作の期間でも、ノードN1に供給される電圧は上記と同様である。第2読み出し動作の期間では、
図9に示すようにトランジスタTr2のダイオード接続が解除されるため、
図10に示すように、電圧Veval(P)に比べて電圧Veval(AP)は高い。
【0061】
上記のように、第2読み出し動作によって得られるノードN1の電圧を評価することで、第1読み出し動作が実行されたときのメモリセルMCの抵抗状態を判定することができる。換言すると、第1読み出し動作によって得られた第1対象電圧と、第2読み出し動作によって得られた第2対象電圧との差に基づいて、読み出し動作の対象であるメモリセルMCの状態を判断することができる。
図7及び
図9に示すように、第1対象電圧はセンスアンプAmpの端子A1に供給され、第2対象電圧は端子A2に供給される。端子A1を「第1センス端子」という場合がある。端子A2を「第2センス端子」という場合がある。
【0062】
[1-8.読み出し動作に係る回路構成]
図12Aは、一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作に係る回路図である。
図7及び
図9に示す回路図と類似するが、
図7、9のトランジスタTr1の代わりにトランジスタTr4が設けられている点において、
図7及び
図9に示す回路図と相違する。
【0063】
トランジスタTr4を「第1トランジスタ」という場合がある。ローカルワード線LWLを「第1配線」という場合がある。ローカルビット線LBLを「第2配線」という場合がある。データX方向配線DXLを「第3配線」という場合がある。スイッチ素子SW2を「第1スイッチ素子」という場合がある。本実施形態では、スイッチ素子SW2がグローバルワード線GWLとデータX方向配線DXLとの間に設けられた構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、スイッチ素子SW2は、ローカルワード線LWLとグローバルワード線GWLとの間に設けられてもよい。つまり、スイッチ素子SW2(第1スイッチ素子)は、ローカルワード線LWL(第1配線)とデータX方向配線DXL(第3配線)との間に設けられている、ということができる。
【0064】
図12Aに示すように、トランジスタTr4の第1端子は、スイッチ素子SW2とSW3との間においてデータX方向配線DXLに接続されている。トランジスタTr4の第2端子は、スイッチ素子SW8を介して電源線GNDに接続されている。トランジスタTr4のゲート端子は、スイッチ素子SW7を介してグローバルワード線GWLに接続されている。トランジスタTr4はNMOSである。トランジスタTr4は、
図7、9のトランジスタTr1と同様に、ノードN1に供給される電圧を決定するためのトランジスタとして用いられる。つまり、トランジスタTr4の特性は、
図8の特性201、202、
図10の211、212と同様の特性を示す。
【0065】
本実施形態では、トランジスタTr4の第1端子がデータX方向配線DXLに接続され、そのゲート端子がグローバルワード線GWLに接続可能な構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、トランジスタTr4の第1端子がグローバルワード線GWLに接続され、そのゲート端子がローカルワード線LWLに接続可能な構成であってもよい。又は、トランジスタTr4の第1端子がデータX方向配線DXLに接続され、そのゲート端子がローカルワード線LWLに接続可能な構成であってもよい。ローカルワード線LWL(第1配線)からデータX方向配線DXL(第3配線)までの配線上に位置するノードをノードNX及びノードNYと規定すると、トランジスタTr4の第1端子がノードNXに接続され、そのゲート端子がノードNYに接続されている、ということができる。スイッチ素子SW2は、ノードNXとノードNYとの間に設けられている。ノードNXを「第1ノード」という場合がある。ノードNYを「第2ノード」という場合がある。ノードNXはスイッチ素子SW2(第1スイッチ素子)よりセンスアンプ60側に位置している。ノードNYはスイッチ素子SW2よりメモリセルMC側に位置している。
【0066】
[1-9.読み出し動作]
図12A~
図12D及び
図13を用いて、本実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作について説明する。
図12A~
図12Dに示す回路図は全て同じ回路図だが、スイッチ素子SW0~SW8のオン/オフの制御状態が異なる。以下の動作は制御回路40によって実行される。
【0067】
図12Aに示す制御状態は、
図13の時刻T1における状態である。
図12Aに示すように、スイッチ素子SW1~SW4、SW6がオン状態に制御され、スイッチ素子SW0、SW5、SW7、SW8がオフ状態に制御される。この状態において、スイッチ素子SW2はオン状態なので、ノードNXとNYとが接続されている。したがって、ローカルワード線LWL、グローバルワード線GWL、及びデータX方向配線DXLに対して、電源線Vhhから供給された第1電圧Vprcに基づく充電(プリチャージ動作)が行われる。プリチャージ動作によって、ノードN1に供給される電圧は、時刻T1から徐々に上昇し、第1電圧Vprcで安定する。このとき、ローカルビット線LBLには電圧Vusel(閾電圧Vthの半分程度の電圧)が供給される。
【0068】
図12Bに示す制御状態は、
図13の時刻T2における状態である。
図12Bに示すように、スイッチ素子SW2、SW6がオフ状態に切り替えられ、スイッチ素子SW0、SW7、SW8がオン状態に切り替えられる。
【0069】
スイッチ素子SW2がオフ状態かつスイッチ素子SW7がオン状態に制御されることによって、トランジスタTr4のゲート端子とノードNYとが接続されるため、ローカルワード線LWL及びグローバルワード線GWLがトランジスタTr4のゲート端子に接続される。スイッチ素子SW0がオン状態に制御されることによって、メモリセルMCの抵抗状態に起因してローカルワード線LWLからローカルビット線LBLに電荷が移動する。そして、
図5に示すように、メモリセルMCの両端子間の電圧がホールド電圧Vholdに達すると、スイッチング素子102が低抵抗状態から高抵抗状態に切り替えられ、メモリセルMCの両端子間の電圧がホールド電圧Vholdに維持される。したがって、トランジスタTr4のゲート端子には、メモリセルMCの抵抗状態に起因した電圧が供給される。
【0070】
スイッチ素子SW6がオフ状態かつスイッチ素子SW8がオン状態に制御されることによって、電源線Vhhからの第1電圧Vprcの供給が遮断された状態で、トランジスタTr4を介してデータX方向配線DXLと電源線GNDとが導通する。そのため、データX方向配線DXLに供給されていた電荷は、トランジスタTr4及びスイッチ素子SW8を通って電源線GNDに移動する。つまり、トランジスタTr4のゲート端子に供給された電圧に応じてノードNXと電源線GNDとの間で電流が流れる。その結果、ノードN1に供給される電圧は時刻T2から徐々に下降し、以下のように、サンプル電圧Vsmplで安定する。
【0071】
図12Bに示す状態は
図7に示す状態と等価である。
図12BのトランジスタTr4は
図7のトランジスタTr1と同等の機能を有する。つまり、
図12Bの状態は、
図7における第1読み出し動作に対応する。したがって、
図12BのノードNXからノードN1にはサンプル電圧Vsmplが供給される。同様に、トランジスタTr2のゲート端子及び容量素子C1にもサンプル電圧Vsmplが供給される。つまり、容量素子C1には、サンプル電圧Vsmplが保持される。
【0072】
そして、例えば、スイッチ素子SW1及びSW2をオン状態に制御し、スイッチ素子SW3、SW6~SW8をオフ状態に制御することで、読み出し動作の対象のメモリセルMCに対して、低抵抗状態“P”又は高抵抗状態“AP”への書き込み動作(RWT)が実行される。詳細は後述するが、制御回路40は、このサンプル電圧Vsmplに基づいて、メモリセルMCの状態を判断する。
【0073】
図12Cに示す制御状態は、
図13の時刻T3における状態である。
図12Cに示すように、スイッチ素子SW0、SW4、SW7、SW8がオフ状態に制御され、スイッチ素子SW1~3、SW5、SW6がオン状態に制御される。
図12Cの状態は、
図12Aの状態に類似しているが、スイッチ素子SW4がオフ状態かつスイッチ素子SW5がオン状態に制御される点において、
図12Aの状態と相違する。このように制御されることによって、ローカルワード線LWL、グローバルワード線GWL、及びデータX方向配線DXLに対して電源線Vhhから供給された第1電圧Vprcに基づく充電(プリチャージ動作)が行われる。プリチャージ動作によって、ノードN1に供給される電圧は、時刻T3から徐々に上昇し、第1電圧Vprcで安定する。このとき、ローカルビット線LBLには電圧Vuselが供給される。
【0074】
図12Dに示す制御状態は、
図13の時刻T4における状態である。
図12Dに示すように、スイッチ素子SW2、SW6がオフ状態に切り替えられ、スイッチ素子SW0、SW7、SW8がオン状態に切り替えられる。
【0075】
スイッチ素子SW2がオフ状態かつスイッチ素子SW7がオン状態に制御されることによって、ローカルワード線LWL及びグローバルワード線GWLがトランジスタTr4のゲート端子に接続される。スイッチ素子SW0がオン状態に制御されることによって、
図12Bと同様にメモリセルMCの両端子間の電圧がホールド電圧Vholdに維持される。したがって、トランジスタTr4のゲート端子には、書き込み動作(RWT)が実行されたメモリセルMCの抵抗状態に起因した電圧が供給される。
【0076】
スイッチ素子SW6がオフ状態かつスイッチ素子SW8がオン状態に制御されることによって、電源線Vhhからの第1電圧Vprcの供給が遮断された状態で、データX方向配線DXLと電源線GNDとが導通するため、データX方向配線DXLに供給されていた電荷は、トランジスタTr4及びスイッチ素子SW8を通って電源線GNDに移動する。その結果、ノードN1に供給される電圧は時刻T4から徐々に下降し、以下のように、評価電圧Vevalで安定する。
【0077】
図12Dに示す状態は
図9に示す状態と等価である。
図12DのトランジスタTr4は
図9のトランジスタTr1として機能する。つまり、
図12Dの状態は、
図9における第2読み出し動作に対応する。したがって、
図12DのノードN1には評価電圧Vevalが供給される。同様に、容量素子C2に評価電圧Vevalが保持される。
【0078】
図10に示すように、第1読み出し動作の際に、メモリセルMCが低抵抗状態“P”だった場合と、メモリセルMCが低抵抗状態“AP”だった場合とで、ノードN1に供給される電圧は異なる。したがって、時刻T4の後のノードN1に供給される電圧の挙動は、前者の場合はVeval(P)であり、後者の場合はVeval(AP)である。このように、第2読み出し動作によって得られるノードN1の電圧を評価することで、第1読み出し動作が実行されたときのメモリセルMCの抵抗状態を判定することができる。
【0079】
図12Aに示す回路と
図7に示す回路とを対比すると、
図7に示す回路では、メモリセルMCからトランジスタTr1のゲート端子に到達するまでにローカルワード線LWL、グローバルワード線GWL、及びデータX方向配線DXLを通過する必要があるが、
図12Aに示す回路では、メモリセルMCからトランジスタTr4のゲート端子に到達するまでにデータX方向配線DXLを通過する必要がない。なお、データX方向配線DXLは非常に長いため、データX方向配線DXLに形成される寄生容量は非常に大きい。
【0080】
本実施形態に係るメモリシステムの読み出し方法では、ローカルワード線LWLをフローティングにした状態で、メモリセルMCに閾電圧Vth以上の電圧が印加される。この電圧の印加によってメモリセルMCのスイッチング素子102が高抵抗状態から低抵抗状態に切り替えられ、ローカルワード線LWLからメモリセルMCを介してローカルビット線LBLに電荷が流れる。そのため、ローカルワード線LWLの電位が徐々に低下し、メモリセルMCの両端子間の電圧が減少する。そして、
図5に示すように、メモリセルMCの両端子間の電圧がホールド電圧Vholdに達すると、スイッチング素子102が低抵抗状態から高抵抗状態に切り替えられ、メモリセルMCの両端子間の電圧がホールド電圧Vholdに維持される。このように、フローティング状態のローカルワード線LWLに保持されたホールド電圧Vholdに基づいて、上記の第1読み出し動作が行われる。
【0081】
例えば、
図7に示す回路の場合、フローティング状態のローカルワード線LWLに保持された電荷に基づいてトランジスタTr1のゲート端子が制御される。したがって、グローバルワード線GWL及びデータX方向配線DXLの寄生容量が大きい場合、当該寄生容量によってトランジスタTr1のゲート端子に供給される電圧にばらつきが生じ、動作遅延が発生する。さらに、ローカルワード線LWLの回路規模よりグローバルワード線GWLの回路規模の方が大きく、グローバルワード線GWLの回路規模よりデータX方向配線DXLの回路規模の方が大きい。そのため、ローカルワード線LWLの寄生容量よりグローバルワード線GWLの寄生容量の方が大きく、グローバルワード線GWLの寄生容量よりデータX方向配線DXLの寄生容量の方が大きい。
【0082】
したがって、
図12Aに示す回路のように、トランジスタTr4のゲート端子をグローバルワード線GWLに接続し、ノードNXとノードNYとの導通をスイッチ素子SW2によって遮断することで、読み出し動作におけるデータX方向配線DXLに属する寄生容量の影響を抑制することができる。その結果、上記のようにトランジスタTr4のゲート端子に供給される電圧のばらつきを低減することができ、動作遅延を抑制することができる。
【0083】
[2.第2実施形態]
図14及び
図15Aを用いて、第2実施形態に係るメモリシステム1について説明する。第2実施形態に係るメモリシステムは、第1実施形態に係るメモリシステムと類似している。以下の説明において、第1実施形態に係るメモリシステムと同様の構成についての説明を省略し、主に当該メモリシステムと相違する点について説明する。
【0084】
[2-1.読み出し動作に係る回路構成]
図14は、一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作に係る回路図である。
図14に示す回路図は、
図12Aに示す回路図と類似しているが、電源線Vaa及びスイッチ素子SW9が設けられている点において、
図12Aの回路図と相違する。
【0085】
図14に示すように、電源線Vaaがスイッチ素子SW9を介してノードN1に接続されている。電源線Vaaには、電源線Vhhに供給される第1電圧Vprcよりも低い第2電圧Vresが供給される。
図14では、電源線Vaaは、スイッチ素子SW3とノードN1との間に接続されているが、この構成に限定されない。電源線Vaaは、スイッチ素子SW3とノードNXとの間に接続されてもよい。電源線Vaaを「第3電源線」という場合がある。スイッチ素子SW9を「第3スイッチ素子」という場合がある。
【0086】
[2-2.読み出し動作]
図15Aを用いて、本実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作について説明する。
図15Aは、一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作に係るタイミングチャートである。
図15Aのタイミングチャートは
図13のタイミングチャートと類似しているが、時刻T4以降の動作が相違する。時刻T1~T3における動作は
図13と同じなので、説明を省略する。
【0087】
図13では、時刻T3で行われたプリチャージ動作によってノードN1に第1電圧Vprcが供給された状態から、トランジスタTr4を介してノードNXから電源線GNDに電流が流れることで、ノードN1に供給される電圧が低下する。上記のように、データX方向配線DXLの寄生容量が大きいため、ノードN1に供給される電圧(
図15Aの時刻T4以降の点線)は相対的に緩やかに低下する。
【0088】
一方、本実施形態の場合、時刻T1~T3では、スイッチ素子SW9はオフ状態に制御され、時刻T4で、
図14に示すように、スイッチ素子SW2、SW4、SW6がオフ状態に制御され、スイッチ素子SW0、SW1、SW3、SW5、SW7、SW8がオン状態に制御された状態で、スイッチ素子SW9がオン状態に制御される。スイッチ素子SW9がオン状態に制御されることで、ノードN1には第2電圧Vresが供給される。したがって、時刻T4でノードN1に供給される電圧(
図15Aの時刻T4以降の実線)は第2電圧Vresまで急峻に低下する。そして、時刻T5でスイッチ素子SW9がオフ状態に制御される。このように制御されることで、ノードN1には、トランジスタTr2のゲート端子に供給されたサンプル電圧VsmplとトランジスタTr4のゲート端子に供給された電圧との関係に依存した評価電圧Vevalが供給される。
【0089】
上記の読み出し動作では、スイッチSW9が時刻T4のときだけオン状態に制御される構成を例示したが、
図15Bに示すように、スイッチSW9が時刻T2でもオン状態に制御されてもよい。その場合、スイッチSW9は、時刻T2’でオフ状態に制御される。
【0090】
上記の動作によって、ノードNXよりセンスアンプ60側の寄生容量が大きい場合であっても、読み出し動作の遅延を抑制することができる。その結果、より高速な読み出し動作を実現することができる。
[3.第3実施形態]
図16~
図18Eを用いて、第3実施形態に係るメモリシステム1について説明する。第3実施形態に係るメモリシステムは、第2実施形態に係るメモリシステムと類似している。以下の説明において、第2実施形態に係るメモリシステムと同様の構成についての説明を省略し、主に当該メモリシステムと相違する点について説明する。
【0091】
[3-1.読み出し動作に係る回路構成]
図16は、一実施形態に係るメモリシステムの読み出し動作に係る回路図である。
図16に示す回路図は、
図14に示す回路図と類似しているが、
図14の回路図では、ノードN1がスイッチ素子SW9を介して電源線Vaaに接続された構成を備えているのに対して、
図16の回路図では、ノードN1がスイッチ素子SW10及びトランジスタTr5を介して電源線VDDに接続された構成を備えている点において、両者は相違する。
【0092】
スイッチ素子SW10は、ノードN1とトランジスタTr2との接続、又は、ノードN1とトランジスタTr5との接続を切り替え可能な切換スイッチである。トランジスタTr5は、PMOSである。トランジスタTr5の第1端子は電源線VDDに接続されている。トランジスタTr5の第2端子及びゲート端子は互いに接続されており、これらはスイッチ素子SW10に接続されている。つまり、トランジスタTr5は、ダイオード接続されたトランジスタである。
【0093】
トランジスタTr5は、
図7に示すように、スイッチ素子SW4がオン状態に制御され、ダイオード接続されたトランジスタTr2と等価である。したがって、スイッチ素子SW10がノードN1とトランジスタTr5とを接続した状態で、スイッチ素子SW1~SW3がオン状態に制御され、スイッチ素子SW6~SW8がオフ状態に制御されることで、電源線Vhhに供給される第1電圧Vprcよりも低いサンプル電圧VsmplがノードN1に供給される。この場合、このサンプル電圧Vsmplを「第2電圧」という場合がある。スイッチ素子SW10及びトランジスタTr5によって構成される回路を「リセット回路」という場合がある。この場合、リセット回路は、スイッチ素子SW10を介してデータX方向配線DXLに接続可能であり、データX方向配線DXLに第2電圧(Vsmpl)を供給する、ということができる。リセット回路は、データX方向配線DXLに向かって電流を流す整流作用を備える。
【0094】
上記の場合、トランジスタTr2を「第2トランジスタ」という場合がある。スイッチ素子SW10のうちノードN1とトランジスタTr2との接続の有無を制御する部分又は機能を「第4スイッチ素子」という場合がある。スイッチ素子SW4を「第5スイッチ素子」という場合がある。この場合、トランジスタTr2(第2トランジスタ)のゲート端子はセンスアンプAmpの端子A1(第1センス端子)に接続され、トランジスタTr2のソース端子及びドレイン端子の一方とデータX方向配線DXL(第3配線)との間にスイッチ素子SW10(第4スイッチ素子)が設けられている。トランジスタTr2のゲート端子とスイッチ素子SW10との間にスイッチ素子SW4(第5スイッチ素子)が設けられている。
【0095】
[3-2.読み出し動作]
第3実施形態の読み出し動作は第2実施形態の読み出し動作と類似しているが、時刻T5においてノードN1に供給される電圧において相違する。具体的には、第2実施形態では、
図15Aに示すように、時刻T5の時点でノードN1に供給される電圧が第2電圧Vresであるのに対して、第3実施形態では、
図17に示すように、時刻T5の時点でノードN1に供給される電圧はサンプル電圧Vsmplである。第3実施形態の動作について、
図17及び
図18A~
図18Eを参照しながら説明する。
【0096】
図18Aに示す制御状態は、
図17の時刻T1における状態である。
図18Aに示すように、スイッチ素子SW1~SW4、SW6がオン状態に制御され、スイッチ素子SW0、SW5、SW7、SW8がオフ状態に制御される。スイッチ素子SW10はノードN1とトランジスタTr2とを接続する。この状態において、スイッチ素子SW2はオン状態なので、ノードNXとNYとが接続されている。したがって、ローカルワード線LWL、グローバルワード線GWL、及びデータX方向配線DXLに対して、電源線Vhhから供給された第1電圧Vprcに基づく充電(プリチャージ動作)が行われる。プリチャージ動作によって、ノードN1に供給される電圧は、時刻T1から徐々に上昇し、第1電圧Vprcで安定する。このとき、ローカルビット線LBLには電圧Vuselが供給される。
【0097】
図18Bに示す制御状態は、
図17の時刻T2における状態である。
図18Bに示すように、スイッチ素子SW2、SW6がオフ状態に切り替えられ、スイッチ素子SW0、SW7、SW8がオン状態に切り替えられる。スイッチ素子SW10はノードN1とトランジスタTr2とを接続した状態に維持される。
【0098】
スイッチ素子SW2がオフ状態かつスイッチ素子SW7がオン状態に制御されることによって、トランジスタTr4のゲート端子とノードNYとが接続されるため、ローカルワード線LWL及びグローバルワード線GWLがトランジスタTr4のゲート端子に接続される。スイッチ素子SW0がオン状態に制御されることによって、
図12Bの動作と同様に、メモリセルMCの両端子間の電圧がホールド電圧Vholdに維持される。したがって、トランジスタTr4のゲート端子には、メモリセルMCの抵抗状態に起因した電圧が供給される。
【0099】
スイッチ素子SW6がオフ状態かつスイッチ素子SW8がオン状態に制御されることによって、電源線Vhhからの第1電圧Vprcの供給が遮断された状態で、トランジスタTr4を介してデータX方向配線DXLと電源線GNDとが導通する。そのため、データX方向配線DXLに供給されていた電荷は、トランジスタTr4及びスイッチ素子SW8を通って電源線GNDに移動する。つまり、トランジスタTr4のゲート端子に供給された電圧に応じてノードNXと電源線GNDとの間で電流が流れる。その結果、ノードN1に供給される電圧は時刻T2から徐々に下降し、サンプル電圧Vsmplで安定する。
【0100】
図18Bに示す状態は
図7に示す状態と等価である。
図18BのトランジスタTr4は
図7のトランジスタTr1と同等の機能を有する。つまり、
図18Bの状態は、
図7における第1読み出し動作に対応する。したがって、
図18BのノードNXからノードN1にはサンプル電圧Vsmplが供給される。同様に、トランジスタTr2のゲート端子及び容量素子C1にもサンプル電圧Vsmplが供給される。つまり、容量素子C1には、サンプル電圧Vsmplが保持される。
【0101】
この状態を換言すると、スイッチ素子SW2(第1スイッチ素子)及びスイッチ素子SW6(第2スイッチ素子)がオフ状態に制御され、スイッチ素子SW10(第4スイッチ素子)及びスイッチ素子SW4(第5スイッチ素子)がオン状態に制御されることによって、センスアンプAmpの端子A1(第1センス端子)及びトランジスタTr2(第2トランジスタ)のゲート端子に第1対象電圧が供給される。
【0102】
そして、例えば、スイッチ素子SW1及びSW2をオン状態に制御し、スイッチ素子SW3、SW6~SW8をオフ状態に制御することで、読み出し動作の対象のメモリセルMCに対して、低抵抗状態“P”又は高抵抗状態“AP”への書き込み動作(RWT)が実行される。詳細は後述するが、制御回路40は、このサンプル電圧Vsmplに基づいて、メモリセルMCの状態を判断する。
【0103】
図18Cに示す制御状態は、
図17の時刻T3における状態である。
図18Cに示すように、スイッチ素子SW0、SW4、SW7、SW8がオフ状態に制御され、スイッチ素子SW1~3、SW5、SW6がオン状態に制御される。スイッチ素子SW10はノードN1とトランジスタTr2とを接続した状態に維持される。
図18Cの状態は、
図18Aの状態に類似しているが、スイッチ素子SW4がオフ状態かつスイッチ素子SW5がオン状態に制御される点において、
図18Aの状態と相違する。このように制御されることによって、ローカルワード線LWL、グローバルワード線GWL、及びデータX方向配線DXLに対して電源線Vhhから供給された第1電圧Vprcに基づく充電(プリチャージ動作)が行われる。プリチャージ動作によって、ノードN1に供給される電圧は、時刻T3から徐々に上昇し、第1電圧Vprcで安定する。このとき、ローカルビット線LBLには電圧Vuselが供給される。
【0104】
図18Dに示す制御状態は、
図17の時刻T4における状態である。
図18Dに示すように、スイッチ素子SW2、SW6がオフ状態に切り替えられ、スイッチ素子SW0、SW7、SW8がオン状態に切り替えられる。スイッチ素子SW10はノードN1とトランジスタTr5とを接続した状態に切り替えられる。
【0105】
スイッチ素子SW2がオフ状態かつスイッチ素子SW7がオン状態に制御されることによって、ローカルワード線LWL及びグローバルワード線GWLがトランジスタTr4のゲート端子に接続される。スイッチ素子SW0がオン状態に制御されることによって、
図18Bと同様にメモリセルMCの両端子間の電圧がホールド電圧Vholdに維持される。したがって、トランジスタTr4のゲート端子には、書き込み動作(RWT)が実行されたメモリセルMCの抵抗状態に起因した電圧が供給される。
【0106】
スイッチ素子SW6がオフ状態、スイッチ素子SW8がオン状態、かつスイッチ素子SW10がノードN1とトランジスタTr5とを接続した状態に制御されることによって、電源線Vhhからの第1電圧Vprcの供給が遮断された状態で、トランジスタTr4を介してデータX方向配線DXLと電源線GNDとが導通する。そのため、データX方向配線DXLに供給されていた電荷は、トランジスタTr4及びスイッチ素子SW8を通って電源線GNDに移動する。
【0107】
さらに、スイッチ素子SW10がノードN1とダイオード接続されたトランジスタTr5とを接続するため、ノードN1には
図17Bと同様にサンプル電圧Vsmplが供給される。したがって、時刻T4でノードN1に供給される電圧はサンプル電圧Vsmplまで急峻に低下する。このサンプル電圧Vsmplは、
図15Aの第2電圧Vresと同様の目的で供給される。したがって、
図18Dで、トランジスタTr5を介してノードN1に供給されるサンプル電圧Vsmplを「第2電圧」という場合がある。
【0108】
この状態を換言すると、スイッチ素子SW2(第1スイッチ素子)、スイッチ素子SW6(第2スイッチ素子)、及びスイッチ素子SW4(第5スイッチ素子)がオフ状態に制御され、スイッチ素子SW10(第4スイッチ素子)によるノードN1とトランジスタTr2との接続状態がオフ状態に制御されることによって、ダイオード接続されたトランジスタTr5及びスイッチ素子SW10(リセット回路)からデータX方向配線DXL(第3配線)にサンプル電圧Vsmpl(第2電圧)が供給される。
【0109】
図18Eに示す制御状態は、
図17の時刻T5における状態である。
図18Eに示すように、スイッチ素子SW10はノードN1とトランジスタTr2とを接続した状態に切り替えられる。このように制御されることで、ノードN1には、トランジスタTr2のゲート端子に供給されたサンプル電圧VsmplとトランジスタTr4のゲート端子に供給された電圧との関係に依存した評価電圧Vevalが供給される。
【0110】
この状態を換言すると、スイッチ素子SW2(第1スイッチ素子)、スイッチ素子SW6(第2スイッチ素子)、及びスイッチ素子SW4(第5スイッチ素子)がオフ状態に制御され、スイッチ素子SW10(第4スイッチ素子)によるノードN1とトランジスタTr2との接続状態がオン状態に制御されることによって、センスアンプAmpの端子A2(第2センス端子)に第2対象電圧が供給される。
【0111】
上記の読み出し動作では、スイッチSW10が時刻T4のときだけノードN1とトランジスタTr5とを接続した状態に切り替えられる構成を例示したが、スイッチSW10が時刻T2でもノードN1とトランジスタTr5とを接続した状態に切り替えられてもよい。その場合、スイッチSW10は、時刻T2から所定時間経過後にノードN1とトランジスタTr2とを接続した状態に切り替えられる。
【0112】
上記の動作によって、ノードNXよりセンスアンプ60側の寄生容量が大きい場合であっても、読み出し動作の遅延を抑制することができる。その結果、より高速な読み出し動作を実現することができる。
【0113】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、本実施形態のメモリシステムを基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。さらに、上述した各実施形態は、相互に矛盾がない限り適宜組み合わせが可能であり、各実施形態に共通する技術事項については、明示の記載がなくても各実施形態に含まれる。
【0114】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0115】
1:メモリシステム、 10:メモリセルアレイ、 11:第1端子、 12:第2端子、 20:ワード線選択/駆動回路、 30:ビット線選択/駆動回路、 40:制御回路、 50:判定回路、 51:電圧保持部、 52:電圧差取得部、 53:比較部、 54:決定部、 60:センスアンプ、 101:可変抵抗素子、 101a:記憶層、 101b:参照層、 101c:トンネルバリア層、 102:スイッチング素子、 111:高抵抗状態、 112:低抵抗状態、 201~203、211、212、221、222:特性、 A1、A2:端子、 Amp:センスアンプ、 BL:ビット線、 C1、C2:容量素子、 DXL:データX方向配線、 GBL:グローバルビット線、 GND:電源線、 GWL:グローバルワード線、 LBL:ローカルビット線、 LWL:ローカルワード線、 MC:メモリセル、 N1~N3、NX、NY:ノード、 P1~P3:交点、 SW1~SW10:スイッチ素子、 T1~T5:時刻、 Tr1~Tr5:トランジスタ、 Vaa、VDD、Vhh:電源線、 WL:ワード線