(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080200
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】可変容量型ピストンポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 1/324 20200101AFI20240606BHJP
【FI】
F04B1/324
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193191
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100178504
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 健人
(72)【発明者】
【氏名】山本 怜
【テーマコード(参考)】
3H070
【Fターム(参考)】
3H070AA01
3H070BB04
3H070BB06
3H070CC12
3H070CC37
3H070DD44
3H070DD52
3H070DD59
(57)【要約】 (修正有)
【課題】可変容量型ピストンポンプのコンパクト性やポンプの駆動軸周辺の主要部品の強度や耐久性を維持しつつ斜板の位置検出装置を設ける。
【解決手段】中央領域A1を前記可変容量型ピストンポンプ10を水平面上に載置したときにシリンダバレル14の上端を通る水平面と下端を通る水平面とで挟まれた領域と定義し、非中央領域A2を中央領域A1以外の領域であってかつハウジング11、12の内部にある領域と定義した場合に、非中央領域において斜板18と当接して斜板の回転軸19周りの回転運動を並進運動に変換する並進運動部材43、31が設けられており、並進運動部材には、並進運動部材の並進運動の方向と略直交する方向に向けて延設された取付ロッドが設けられていると共に、取付ロッドには信号発信部が取付けられており、ハウジング11には信号発信部からの信号を受信する検出部ユニットが設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジング内に支持された駆動軸と、前記駆動軸と共に回転するシリンダバレルと、前記シリンダバレルに設けられたプランジャ室に摺接可能に挿入された複数個のプランジャと、前記ハウジングに傾転可能に支持された斜板とを備えた可変容量型ピストンポンプにおいて、
前記可変容量型ピストンポンプは中央領域と非中央領域を備えており、
前記中央領域を前記可変容量型ピストンポンプを水平面上に載置したときに前記シリンダバレルの上端を通る水平面と下端を通る水平面とで挟まれた領域と定義し、前記非中央領域を前記中央領域以外の領域であってかつ前記ハウジングの内部にある領域と定義した場合に、
前記非中央領域において前記斜板と当接して前記斜板の回転軸周りの回転運動を並進運動に変換する並進運動部材が設けられており、
前記並進運動部材には、前記並進運動部材の並進運動の方向と略直交する方向に向けて延設された取付ロッドが設けられていると共に、前記取付ロッドには信号発信部が取付けられており、前記ハウジングには前記信号発信部からの信号を受信する検出部ユニットが設けられている
ことを特徴とする可変容量型ピストンポンプ。
【請求項2】
前記非中央領域には、前記斜板の回転軸と直角方向に位置し、前記斜板の傾転角度を増大する向きに作用するコントロールシリンダが設けられており、前記コントロールシリンダの内圧を制御することで前記可変容量型ピストンポンプの定馬力特性が調整できるようになっており、前記駆動軸を挟んで前記コントロールシリンダと反対側にはフィードバック部材が配置されており、前記コントロールシリンダと前記フィードバック部材のいずれか一方を前記並進運動部材として前記取付ロッドが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の可変容量型ピストンポンプ。
【請求項3】
前記コントロールシリンダの内部は、電磁式のサーボ弁の出口と接続されており、前記サーボ弁のスプールの一方の端部と前記フィードバック部材の一方の端部との間にはフィードバックばねが配置されており、前記斜板の回転に伴って生じるフィードバック部材の並進運動が前記フィードバックばねを介して前記スプールに伝達されることで、電磁式のサーボ弁の入力信号の大きさに応じた前記斜板の傾転角度の上限が設定されるようになっていることを特徴とする請求項2に記載の可変容量型ピストンポンプ。
【請求項4】
前記フィードバック部材と前記サーボ弁とは前記駆動軸の軸線方向と平行な軸線方向に直列に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の可変容量型ピストンポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械などに油圧ポンプとして広く用いられている出力一定形可変容量型ピストンポンプに対して、ポンプの斜板の傾斜角度を検出するための機構をコンパクトにかつ低コストで設けることを提案するものであり、これにより、作業状況や原動機の負荷状況に応じたより最適な吐出流量制御を行うことができる可変容量型ピストンポンプを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、可変容量型ピストンポンプの出力トルクの調整を、ばね部材の機械的な調整で行うのみならず、減圧弁の出力油圧の調整で行うことが特許文献1により提案されていた。特に、特許文献1の
図10に記載の可変容量型ピストンポンプによれば、実際の斜板の位置に応じたフィードバックをパイロット制御弁(特許文献1のスプール84を参照)に作用させる機構を設けることで、特許文献1の
図11、
図12で図説されているような、パイロット圧力応じたポンプの最大吐出流量の調整もできるようになっている。この特許文献1に記載の油圧ポンプであれば、原動機の出力を適切に油圧ポンプに割り当てるための調整を行いやすいなどの有利な点がある。
【0003】
一方で、建設機械などの分野においては、より効率的な運用のために油圧制御機器を電気制御化することが進められているところであり、特にエンジンやモーターなどの原動機の出力トルクの適切な分配の制御などに使用するための情報として、実際の油圧ポンプの吐出流量の情報を数値情報として把握することが望まれている。
【0004】
実際の油圧ポンプの稼働状況の情報を数値情報としても把握するために、従来から、可変容量型ポンプの斜板の位置を検出することが行われており、例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4に記載のような検出機構が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-053854号公報
【特許文献2】実開平7-010470号公報
【特許文献3】特開2020-153284号公報
【特許文献4】特開昭62-055484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2、特許文献3に記載の斜板の位置検出装置は斜板の回転角度を回転角センサーで検出するものであり、このような検出機構は斜板の傾斜角度がダイレクトに計測できる点で優れてはいるが、検出のためのリンク機構をポンプ駆動軸の周辺に配置する必要があるため、ポンプ駆動軸周辺の幅寸法が大きくなることでコンパクト性が損なわれたり、ポンプ駆動軸周辺の重要主要部品の設計を変更することが強度品質の維持の観点から好ましくないなど、小型タイプの油圧ポンプにとっては不都合な面があった。また、回転角センサーは直線方向の動きを検出するセンサーに比較して高額であるため、小型の油圧ポンプに適用するにはコスト面でも不都合があった。また、上記特許文献4に記載のポンプでは、斜板の位置を操作するピストンシリンダの直線移動をリニア変位検出器で検出することが記載されているが、リニア変位検出器はピストンシリンダの移動方向と直列に配置されているため、ポンプ全長が長くなってしまうという不具合があり、また、そもそも、斜板の位置を操作するピストンシリンダを有さないタイプのポンプ(例えば、特許文献1に記載のようなポンプなど)には適用できないものであった。
【0007】
その一方で、建設現場における作業性の向上や環境対策などの観点から、高性能を維持しつつ小型化された建設機械への要望は高く、油圧ショベルなどに搭載する油圧ポンプも小型化や低コスト化が求められている。この点、特許文献1に記載の油圧ポンプは全長の短縮化などの小型化が図られているいるものではあったが、さらに電子制御化へ対応すべく従来技術のような斜板の位置検出装置を設けようとすると、上記のごとくコンパクト性が損なわれたり、ポンプの駆動軸周辺の主要部品の設計変更をしなければならないなどの不都合な面があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明における可変容量型ピストンポンプは、ハウジングと、前記ハウジング内に支持された駆動軸と、前記駆動軸と共に回転するシリンダバレルと、前記シリンダバレルに設けられたプランジャ室に摺接可能に挿入された複数個のプランジャと、前記ハウジングに傾転可能に支持された斜板とを備えた可変容量型ピストンポンプにおいて、前記可変容量型ピストンポンプは中央領域と非中央領域を備えており、前記中央領域を前記可変容量型ピストンポンプを水平面上に載置したときに前記シリンダバレルの上端を通る水平面と下端を通る水平面とで挟まれた領域と定義し、前記非中央領域を前記中央領域以外の領域であってかつ前記ハウジングの内部にある領域と定義した場合に、前記非中央領域において前記斜板と当接して前記斜板の回転軸周りの回転運動を並進運動に変換する並進運動部材が設けられており、前記並進運動部材には、前記並進運動部材の並進運動の方向と略直交する方向に向けて延設された取付ロッドが設けられていると共に、前記取付ロッドには信号発信部が取付けられており、前記ハウジングには前記信号発信部からの信号を受信する検出部ユニットが設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
また、好ましくは、本発明における可変容量型ピストンポンプは、前記非中央領域には、前記斜板の回転軸と直角方向に位置し、前記斜板の傾転角度を増大する向きに作用するコントロールシリンダが設けられており、前記コントロールシリンダの内圧を制御することで前記可変容量型ピストンポンプの定馬力特性が調整できるようになっており、前記駆動軸を挟んで前記コントロールシリンダと反対側にはフィードバック部材が配置されており、前記コントロールシリンダと前記フィードバック部材のいずれか一方を前記並進運動部材として前記取付ロッドが設けられていることを特徴とするものであり、また、前記コントロールシリンダの内部は、電磁式のサーボ弁の出口と接続されており、前記サーボ弁のスプールの一方の端部と前記フィードバック部材の一方の端部との間にはフィードバックばねが配置されており、前記斜板の回転に伴って生じるフィードバック部材の並進運動が前記フィードバックばねを介して前記スプールに伝達されることで、電磁式のサーボ弁の入力信号の大きさに応じた前記斜板の傾転角度の上限が設定されるようになっていることを特徴とするものである。
【0010】
また、さらに好ましくは、前記フィードバック部材と前記サーボ弁とは前記駆動軸の軸線方向と平行な軸線方向に直列に配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特許文献1に記載のような従来の可変容量型ピストンポンプのコンパクト性や、ポンプの駆動軸周辺の主要部品の強度や耐久性を維持しつつ、斜板の位置検出装置を設けることができるという利点がある。これにより、ポンプの吐出流量をリアルタイムで把握することができ、別途検出されているポンプ吐出圧力とからポンプの使用トルクをリアルタイムで把握できることになるため、小型タイプの建設機械においても原動機の出力配分などのシステム全体の制御をより適切に行うことができるようになる。しかも、それを低コストで実現することができるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る可変容量型ピストンポンプの概略構造を示す縦断面図であり、駆動軸の回転中心を通る断面図である(一部部品は断面ではなく側面視で記載している)。
【
図2】
図1と同じ方向から見た可変容量型ピストンポンプの側面図である。
【
図3】本発明における検出部の構造を説明するための図であり、
図1と
図2のX-X矢印から見た場合の検出部の概略構造を示す図である。
【
図4】本発明における検出部の構造を説明するための図であり、
図3のY-Y矢印から見た場合の検出部の概略構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係る可変容量型ピストンポンプ(以下、ピストンポンプという)10 につき図面参照して詳細に説明する。
図1はピストンポンプ10の概略構造を示す縦断面図であり、駆動軸の回転中心を通る断面図である(なお、便宜上、図の一部を断面状態で表していないところもある)。
図1においてピストンポンプ10は、第1ハウジング11と第2ハウジング12の内部に駆動軸13と共に回転可能に支持されたシリンダバレル14と、前記シリンダバレル14に軸方向に摺動可能に挿入された複数個のプランジャ15と、プランジャ15の頭部を支持するシュー16と、駆動軸13と直交する方向に延びる斜板の回転軸19周りに回転可能なように支持されている斜板18とを基本構造として備えている。なお、
図1は駆動軸13の回転中心線が水平方向を向くようにピストンポンプ10を載置した場合を示すものとする。また、本発明の説明に際し、便宜上、「上方向」と「下方向」を定義しておくに、
図1のようにピストンポンプ10が水平面に載置された状態において、駆動軸13と直交する鉛直上方向を「上方向」、駆動軸13と直交する鉛直下方向を「下方向」と定義する。なお、駆動軸13と平行方向の面であってかつ上下方向に延びる面を「側面」とよぶ。
【0014】
前記プランジャ15は、斜板18に摺接し、駆動軸13が回転すると駆動軸13の軸心方向にストロークする。そして、プランジャ15の軸心方向の往復によるプランジャ室20の容積変化とシリンダバレル14と摺接する弁板23によって、吸入工程と吐出工程が切り換えられることにより、流体を吐出する。ピストンポンプ10は、プランジャ室20の内圧により生じる複数本のプランジャ15の合力が、斜板18の傾転角度が減少する向きに斜板18の傾転モーメントとして作用するという基本機能を有しているものであり、この点は特許文献1に記載のピストンポンプと同様である。流体を吐出する吐出ポート17はハウジング12の側面に設けられている(
図2を参照)。
【0015】
ここで、本発明の説明にあたり、便宜上、「中央領域A1」と「非中央領域A2」という概念を定義しておく。「中央領域A1」とは、ピストンポンプ10を水平面上に載置したときにシリンダバレル14の最も上方端を通る水平面と最も下方端を通る水平面とで挟まれる領域と定義する。「非中央領域A2」とは、「中央領域A1」以外の領域であってかつハウジング11、12の内部にある領域と定義する。これを、
図1を使って説明すると、
図1の一点鎖線S11はシリンダバレル14の最も上方端を通る水平面の位置を表し、一点鎖線S12はシリンダバレル14の最も下方端を通る水平面の位置を表しており、一点鎖線S11と一点鎖線S12で示す2つの水平面の間の領域が「中央領域A1」である。そして一点鎖線S21と一点鎖線S22はそれぞれ、ピストンポンプ10のハウジング内の空間における最も上方端を通る水平面と、最も下方端を通る水平面を表しており、一点鎖線S21と一点鎖線S11で示す2つの水平面の間の領域、および一点鎖線S12と一点鎖線S22で示す2つの水平面の間の領域が「非中央領域A2」となる。
【0016】
本発明の実施の形態に係るピストンポンプ10においては、非中央領域A2において斜板18と当接するようにコントロールシリンダ31とフィードバック部材43が配置されている。コントロールシリンダ31とフィードバック部材43とは駆動軸13を間に挟んで反対側になるように配置されている。
【0017】
コントロールシリンダ31はハウジング12に例えば、ねじ機構により締結されたシリンダ32と、該シリンダ32に摺動自在に嵌挿されたコントロールピストン33と、を備える。コントロールシリンダ31の内部には、二次圧力を比例的に調整することが可能な減圧弁34の二次圧力が導かれるようになっている。(なお、本実施形態では途中にサーボ弁50が設けられているが、このサーボ弁50については後ほど説明する)。減圧弁34の入口側は補助ポンプなどの任意の圧力源に接続されている。
【0018】
このコントロールシリンダ31による斜板18の傾転角度を増大せしめるモーメントと、複数本のプランジャ15の合力により吐出圧力の増大に伴って斜板18の傾転角度を減少せしめるモーメントのバランスにより、斜板18の傾転角度が自動調整され、可変容量型ピストンポンプの吐出圧力と吐出流量の積が一定となるような定馬力特性で稼働するようになっている。そして、コントロールシリンダ13の内圧を任意の値に制御し調整することで、定馬力特性の設定を簡便に変更できるようになっている。(なお、本明細書においては、「ピストンポンプ10の吐出流量が大きくなる方向」を「傾転角度を増大させる方向」として説明している。)
【0019】
続いて、フィードバック部材43の構成と機能について説明する。このフィードバック部材43は斜板18の回転変化量を、並進運動の出力物理量としてピストンポンプ10の他の機能部品にフィードバックする部材であり、本実施形態においては並進運動を検出する部材(後述する信号発信部76、取付ロッド70など)を取付けるための「並進運動部材」としての役割を担う部材である。フィードバック部材43は駆動軸13を間に挟んでコントロールシリンダ31と反対側になるように配置されている。フィードバック部材43は一方側の端部が斜板18に当接するようになっており、他方側の端部がフィードバックピストン41の一方側の端部と一体的に連結されている。フィードバックピストン41の他方側の端部は、フィードバックばね44の一方側の端部に当接しており、フィードバックばね44の他方側の端部はばね受座45を介して、サーボ弁50のスプール51にばね力を伝達できるように構成されている。フィードバックピストン41はフィードバックシリンダ42の内部に摺動可能なように格納されている。フィードバックシリンダ42は第2ハウジング12にネジなどの手段により固定されている。
【0020】
サーボ弁50は、駆動軸13の軸線方向と平行な軸線方向において、フィードバック部材43と略同軸で直列となるように配置されている。サーボ弁50のスプール51は、可動鉄心54で直線方向に動かすことができるようになっている。すなわち、サーボ弁50のソレノイドコイル53に電流を流すと、電流の大きさに応じた吸引力が可動鉄心54と固定鉄心55の間に発生し、可動鉄心54は固定鉄心55に向かって動かされることとなり、可動鉄心54と一体のロッドがスプール51を押すことで調整圧力入口流路36を調整圧力出口流路37に連通し、減圧弁34で所定の圧力に調整された圧油がコントロールシリンダ入口室39に導かれるようになっている。なお、可動鉄心54と一体のロッドの周りには摺動移動を滑らかに行えるように転動体56が配置されており、ソレノイドコイル53、可動鉄心54、固定鉄心55、および転動体56は、ソレノイドカバー52の内部に格納されて、第2ハウジング12に取り付けられている。上記のように調整圧力入口流路36が調整圧力出口流路37に連通されると、コントロールシリンダ入口室39に導かれた圧油により、コントロールシリンダ31は斜板18の傾転角度が大きくなる方向(
図1で左側)に押されるため、斜板18の傾転角度が大きくなってポンプ吐出量が大きくなる。この斜板18の回転により、コントロールシリンダ31と反対側の斜板位置に配置されているフィードバック部材43はフィードバックばね44を縮める方向(
図1の右側)に動かされる。フィードバックばね44が縮むことで増大したばね力はスプール51の一方側の端部に作用してスプール51を押し、スプール51は調整圧力出口流路37を調整圧力入口流路36から閉じる方向に動かされる。そして、スプール51が調整圧力出口流路37を調整圧力入口流路36から閉じた状態から、さらに、斜板18の傾転角度が大きくなるような運転状態(例えば、定馬力制御においてポンプ吐出圧が低下してポンプ吐出流量が増加する方向に移行するような運転状態)になると、さらにスプール51は
図1の右側に向けて動かされることになるが、この場合には、調整圧力出口流路37がタンク流路38に連通させられるようになり、コントロールシリンダ入口室39の圧力が低下し、コントロールシリンダ31が
図1の右側に押し戻されることになるため、結果的にポンプ吐出流量はある一定の流量よりも増大しないようにサーボ弁51により最大流量を規定される。このようにして、サーボ弁50のスプール51が、ソレノイドコイル53の励磁電流の大きさに応じて可動鉄心54に作用する電磁力とフィードバックばね44のばね力とが釣り合った位置に自動調整されることで、減圧弁34の設定圧力に応じた定馬力特性でポンプ制御できると共に、ソレノイドコイル53の励磁電流の大きさに応じたポンプ吐出流量の最大流量の調整ができるようになっている。なおサーボ弁50は本実施形態の構造のものに限らず、電磁式の直動タイプのサーボ弁であれば、例えば、ボイスコイル式のフォースモータを備えたサーボ弁などでもよい。
【0021】
上記のように、本発明の実施形態におけるピストンポンプ10は電気制御化されているものであるが、さらに、実際のポンプの稼働状況の情報を数値情報としても把握して制御に取り込むことができるよう、以下のような斜板18の傾転角度を間接的に検出する構成を備えている。斜板18の傾転角度はフィードバック部材43の位置から計算することができる。そのため、本発明の実施形態では、フィードバック部材43の位置を検出するべく、フィードバック部材43に軸孔74を設け、当該軸孔には位置センサーを取付けるための取付ロッド70の軸部72が挿通されている。取付ロッド70には位置センサーの信号発信部76が取付けられる。フィードバック部材43と取付ロッド70と信号発信部76とはハウジング11、12の内部収容空間内に完全に収容されており、ハウジング11、12と部品的な干渉がないように配置されている。
【0022】
一方、位置センサーの受信部である検出部ユニット61は、第一ハウジング11の側面に取付けられており、これら検出機能に関する構成について、
図2、
図3、
図4を使って説明する。
図2は
図1と同じ方向から見た可変容量型ピストンポンプの側面図である。
図3は
図1と
図2のX-X矢印から見た場合の検出部の概略構造を示す図である。
図4は、
図3のY-Y矢印から見た場合の検出部の概略構造を示す図である。
図2に記載のように、検出部ユニット61は第一ハウジング11の側面の非中央領域A2にてハウジングの外部に露出するように設けられている。一方、信号発信部76は取付ロッド70によりフィードバック部材43に取り付けられている。取付ロッド70は取付ロッド本体部71と取付ロッド軸部72と抜止部73を備えている。信号発信部76は
図3に示すように、取付ロッド本体部71の一方の端部に露出するように固定されており、取付ロッド本体部71の他方の端部は細く伸びて取付ロッド軸部72となっており、その他端部を抜止部73とすることでフィードバック部材43に固定されている。取付ロッド70はフィードバック部材43の並進運動の方向と略直交する方向から第一ハウジング11に向かって延設されている。ここで、「並進運動の方向と略直交」という用語の意味は、並進運動の方向と平行方向に取付ロッド70を設けてしまうと、並進運動の方向のポンプの全長が延びてしまう不都合があるため、そのような不都合が生じない効果が得られる方向という意味であり、別の言い方をすれば、取付ロッド70の先端が駆動軸13と直交する方向のハウジング面ではなくて、駆動軸13と平行となる方向のハウジング面(その一例としては、ハウジングの側面であり、
図2で見えている面)を向く方向ともいえる。最も好ましい実施形態は本実施形態のように取付ロッド70の延設方向が、その並進運動の方向と直交する方向であって、かつフィードバック部材43と第一ハウジング11との最短距離となる向きとなっていることが好ましいが、第一ハウジング11の構造上、前記最短距離の位置に検出部ユニット61を取付けにくいような場合には、検出部ユニット61を前記最短距離の位置からずらして配置したうえで、取付ロッド70の向く方向を並進運動の方向と直交する方向から若干だけ傾斜させた方向としたり、ハウジング11の内面に平行に伸びるアーム追加してL字形状の取付ロッド本体部71とするなどして、信号発信部76も前記最短距離の位置からオフセット配置するようにしてもよい。なお、本実施形態では、信号発信部76に磁石を用いて磁気センサーとしているが、他にもレーザーセンサーとするなど、非接触センサーであることが好ましい。接触タイプのセンサーとすることも可能であるが、接触部分でのリンク機構や振動対策などを設ける工数が増えるなどの面から非接触センサーであることが好ましい。
【0023】
図2、
図3に示すように、検出部ユニット61は検出部取付板62に固定されており、検出部取付板62は中間取付板63にネジで固定されており、中間取付板63はネジなどの固定手段によって第一ハウジング11に固定されている。検出部ユニット61は制御基板を備えており、信号発信部76からの信号を受信して、適宜の電気的処理をしたうえで、その電気的な信号を電気配線コード65により外部に出力できるようになっている。電気配線コード65は配線結束部66(実際は長尺のため部分省略して図示している)を介して配線接続部67で適宜の全体制御ユニット機能部品に接続できるようになっている。あるいは、電気配線に代えて、検出部ユニット61が無線信号交信部を備えていてもよい。
【0024】
以上のような構成を備えることにより、斜板18の回転軸19周りの回転運動を駆動軸13と平行な方向の並進運動に変換するフィードバック部材43の位置を検出することができる。なお、本実施形態においては、サーボ弁50によるフィードバック制御機能を付加したピストンポンプ10というより好ましい実施形態として説明しているため、サーボ弁50の配置レイアウトの都合上の理由から、フィードバック部材43の並進方向は駆動軸13と平行な方向(より厳密にいえば、駆動軸13の回転軸線と平行方向)として説明しているが、サーボ弁50を設けないでフィードバック部材43の並進運動を検出する実施形態とする場合であれば、フィードバック部材43の並進運動の方向は駆動軸13と平行な方向ではなく、駆動軸13と平行な方向に対して上下方向に傾斜角度を有する直線方向であってもよい。
【0025】
ここで、フィードバック部材43と、その位置を検出するための信号発信部76や検出部ユニット61が可変容量型ピストンポンプ10の中央領域A1ではなく、非中央領域A2に配置されているということは、油圧ポンプ全体をコンパクトにできる面において特に重要である。一般的に、可変容量型ピストンポンプ10は中央領域A1には駆動軸13やプランジャ15やシリンダバレル14のようなポンプ全体の大きさを規定する基本部品が配置されているため、この中央領域A1にさらに斜板18の傾転角度の検出機構を設けると、ポンプがもともと備えていた最大幅寸法(
図1でいえば、駆動軸13と直交する面と水平面との交線のなす方向の幅の最大寸法)をさらに大きくしなければならないことになる。しかしながら、非中央領域A2は中央領域A1の幅寸法よりも小さい幅となっているため、その幅の差によってできるスペースに斜板18の傾転角度の検出機構やその配線部材などを設けることで、ポンプ全体の最大幅寸法がさらに大きくなりにくい。さらには、並進運動部材であるフィードバック部材43と信号発信部76を配置するための取付ロッド70がハウジング11、12の内部収容空間内に配置されており、ハウジング11、12と部品的な干渉がないように配置されている構成は、ピストンポンプ10がもともと有していた空きスペースを有効に活用することでコンパクト性が維持することに有効である。また、中央領域A1には駆動軸13やプランジャ15やシリンダバレル14のような耐久性の面でも重要な部品が配置されているため、この部分に斜板18の傾転角度の検出機構を設けると、その取付などのための穴や溝を設けなければならず、ポンプ全体の耐久性などの品質も考慮しながら設計や加工をしなければならず、その改良のための設計工程や製造工程が複雑になってしまうが、本発明であれば、そのような複雑性を排除した、より効率的な改良の設計と製造ラインの改変で済むという大きなメリットがある。
【0026】
また、本発明によれば、特許文献1に記載されていたような従来から既に多機能コンパクト化されたポンプを前提としたうえで、さらに電気信号で操作が可能なサーボ弁と、斜板18のリアルタイムでの傾転角度を電気信号として数値的に検出する機構を加えたことで、油圧制御機器のシステム全体を電気制御化することを欲しているユーザーにとって特に有益な可変容量型油圧ポンプを新たに提案できる。
【0027】
なお、本発明は、上記で開示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の実施形態で説明した各技術事項と実質的に同一な技術または同様な効果を奏する技術として当業者に認識される技術を適宜利用したり、代替技術として使用したり、追加で付加したりすることも可能である。
例えば、他の実施形態として、フィードバック部材43に検出装置を取付ける「並進運動部材」としての役割担わせるのではなく、コントロールシリンダ31に軸孔74を設けて取付ロッド70を取付けることで「並進運動部材」の機能を担わせるようにしてもよい。
【0028】
また、他の実施形態としては、コントロールシリンダ31とフィードバック部材43とは駆動軸13を間に挟んで反対側になるように配置されてさえいればよく、コントロールシリンダ31を駆動軸13よりも下側(
図1で見て下側)において斜板18の傾転角度を増大する向きで配置し、フィードバック部材43を駆動軸13よりも上側に配置する実施形態としてもよい。
【0029】
あるいは、
図1の実施形態ではコントロールシリンダ31とフィードバック部材43の部品全体部が非中央領域A2に配置される形態として記載されているが、必ずしも部品全体部が非中央領域A2にある必要はなく、非中央領域A2において斜板18と当接するようにコントロールシリンダ31とフィードバック部材43が配置されていれば、部品の一部分が中央領域A1に入り込むように配置されている実施形態としてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 可変容量型ピストンポンプ、 11 第1ハウジング、 12 第2ハウジング、 13 駆動軸、 14 シリンダバレル、 15 プランジャ、 16 シュー、 17 吐出ポート、 18 斜板、 19 斜板の回転軸、 20 プランジャ室、 23 弁板、 31 コントロールシリンダ(並進運動部材)、 32 シリンダ、 33 コントロールピストン、 34 減圧弁、 36 調整圧力入口流路、 37 調整圧力出口流路、 38 タンク流路、 39 コントロールシリンダ入口室、 41 フィードバックピストン、 42 フィードバックシリンダ、 43 フィードバック部材(並進運動部材) 、 44 フィードバックばね、 45 ばね受座、 50 サーボ弁、 51 スプール、 52 ソレノイドカバー、 53 ソレノイドコイル、 54 可動鉄心、 55 固定鉄心、 56 転動部材、 61 検出部ユニット、 62 検出部取付板、 63 中間取付板、 65 電気配線コード、 66 配線結束部、 67 配線接続部、 70 取付ロッド、 71 取付ロッド本体部、 72 取付ロッド軸部、73 抜止部、 74 軸孔、 76 信号発信部(磁石)、 A1 中央領域、 A2 非中央領域