(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080205
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】電気コネクタおよび回路基板と電気コネクタとの接続体
(51)【国際特許分類】
H01R 12/51 20110101AFI20240606BHJP
【FI】
H01R12/51
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193201
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 正章
(72)【発明者】
【氏名】辻 淳也
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB21
5E223AB64
5E223AB67
5E223BA01
5E223BA07
5E223CB22
5E223CB31
5E223CB63
5E223CD01
5E223CD06
5E223CD15
5E223DA13
5E223EA06
(57)【要約】
【課題】信号コンタクトとグランドコンタクトのそれぞれの機能を確保しつつ、信号コンタクトとグランドコンタクトの位置ずれを防ぐことのできる電気コネクタを提供すること。
【解決手段】本発明の電気コネクタは、複数の信号コンタクト(13)、複数のグランドコンタクト(15)、複数の信号コンタクト(13)および複数のグランドコンタクト(15)を支持するウエハ(11)と、ウエハ(11)に装着され、複数の信号コンタクト(13)の位置決めを担う第1オーガナイザ(60)と、第1オーガナイザ(60)と互いに積層された状態でウエハ(11)に装着され、複数のグランドコンタクト(15)と導通し、かつグランドコンタクト(15)の位置決めを担う第2オーガナイザ(70)と、を備える。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号コンタクトと、
複数のグランドコンタクトと、
複数の前記信号コンタクトおよび複数のグランドコンタクトを支持するウエハと、
前記ウエハに装着され、複数の前記信号コンタクトの位置決めを担う第1オーガナイザと、
前記第1オーガナイザと互いに積層された状態で前記ウエハに装着され、複数の前記グランドコンタクトと導通し、かつ前記グランドコンタクトの位置決めを担う第2オーガナイザと、を備える、電気コネクタ。
【請求項2】
前記電気コネクタは、回路基板に接続され、
前記第1オーガナイザは、電気的な絶縁材料から構成され、
前記第2オーガナイザは、少なくとも前記回路基板との対向面の側が導電性材料から構成され、
前記グランドコンタクトと前記導電性材料とが接することで、前記導通がなされる、
請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記第2オーガナイザは、
前記対向面に形成される導電膜と、
前記導電膜を支持する電気的な絶縁材料からなる成形体と、を備える、
請求項2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記ウエハの側から前記第1オーガナイザおよび前記第2オーガナイザが順に積層され、
前記第1オーガナイザは、
複数の前記信号コンタクトを支持する複数の第1支持部が互いに間隔をあけて設けられ、
前記第2オーガナイザは、
複数の前記グランドコンタクトを支持する複数の第2支持部と、表裏が貫通する複数の配置スペースとを、平面方向に交互に備え、
前記第1オーガナイザの前記第1支持部が、前記第2オーガナイザの前記配置スペースに配置される、
請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
複数の前記信号コンタクトのそれぞれは、圧接型のコンタクトであり、
複数の前記グランドコンタクトのそれぞれは、圧入型のコンタクトである、
請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
回路基板と請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電気コネクタとの接続体であって、
前記回路基板は、
信号電極とグランド電極を備え、
前記電気コネクタの前記信号コンタクトが前記回路基板の前記信号電極と電気的に接続され、
前記電気コネクタの前記グランドコンタクトが前記回路基板の前記グランド電極と電気的に接続される、電気コネクタと回路基板との接続体。
【請求項7】
回路基板と請求項5に記載の電気コネクタとの接続体であって、
前記回路基板は、
パッド型の複数の信号電極と、
表裏を貫通するスルーホールの周りに形成される複数のグランド電極と、を備え、
前記信号電極に前記信号コンタクトが圧接され、
前記グランド電極に前記グランドコンタクトが圧入される、
電気コネクタと回路基板との接続体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板と接続される電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
データセンタなどにおいてデータ通信の用途で用いられる接続システムにおけるサーバ、ルータでは、互いに90°の向きになった2枚の回路基板を接続することが要求される場合がある。この場合、2枚の回路基板のそれぞれに電気コネクタとしての雄コネクタおよび雌コネクタが接続され、雄コネクタと雌コネクタが接続されることにより2枚の回路基板が相互に接続される。この種の電気コネクタは、例えば特許文献1および特許文献2に開示されるが、信号を伝送するための信号コンタクトとグランド(GND)用のグランドコンタクトが高密度で配置されている。信号コンタクトおよびグランドコンタクトは、例えば圧入型のコンタクトとして構成される。そして、特許文献1および特許文献2の電気コネクタは、信号コンタクトおよびとグランドコンタクトを支持するウエハを必要な枚数だけ積層して構成されている。ウエハの一例について、例えば特許文献3に詳しい記載がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005-527068号公報
【特許文献2】特開2008-535185号公報
【特許文献3】特開2021-2465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高密度で信号コンタクトおよびグランドコンタクト(コンタクト等と総称することがある)を備える電気コネクタと回路基板とを接続する際に、コンタクト等が回路基板の導通部分に対して位置合わせされることが必要である。圧入型のコンタクト等であれば、回路基板に形成される貫通孔(スルーホール)に位置ずれすることなく挿入される必要がある。
そこで、本発明は、信号コンタクトとグランドコンタクトのそれぞれの機能を確保しつつ、信号コンタクトとグランドコンタクトの位置ずれを防ぐことのできる電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電気コネクタは、複数の信号コンタクト、複数のグランドコンタクト、複数の信号コンタクトおよび複数のグランドコンタクトを支持するウエハと、を備える。さらに電気コネクタは、ウエハに装着され、複数の信号コンタクトの位置決めを担う第1オーガナイザと、第1オーガナイザと互いに積層された状態で装着され、複数のグランドコンタクトと導通し、かつグランドコンタクトの位置決めを担う第2オーガナイザと、を備える。
【0006】
本発明の電気コネクタは、回路基板に接続される場合、好ましくは、第1オーガナイザは、電気的な絶縁材料から構成され、第2オーガナイザは、電気的な絶縁材料からなり、少なくとも回路基板との対向面の側が導電性材料から構成され、グランドコンタクトと導電性材料とが接することで、導通がなされる。
好ましい第2オーガナイザは、対向面に形成される導電膜と、導電膜を支持する電気的な絶縁材料からなる成形体と、を備える。
【0007】
本発明の電気コネクタにおいて、好ましくは、ハウジングの側から第1オーガナイザおよび第2オーガナイザが順に積層される。
第1オーガナイザは、複数の信号コンタクトを支持する複数の第1支持部が互いに間隔をあけて設けられる。
第2オーガナイザは、複数のグランドコンタクトを支持する複数の第2支持部と、表裏が貫通する複数の配置スペースとを、平面方向に交互に備える。
第第1オーガナイザの第1支持部が、第2オーガナイザの配置スペースに配置される。
【0008】
本発明の電気コネクタにおいて、好ましくは、複数の信号コンタクトのそれぞれは、圧接型のコンタクトであり、複数のグランドコンタクトのそれぞれは、圧入型のコンタクトである。
【0009】
本発明は、回路基板と以上のいずれかの電気コネクタとの接続体を提供する。この接続体において、回路基板は、信号電極とグランド電極を備え、電気コネクタの信号コンタクトが回路基板の信号電極と電気的に接続され、電気コネクタのグランドコンタクトが回路基板のグランド電極と電気的に接続される。
【0010】
本発明の接続体において、好ましくは、回路基板は、パッド型の複数の信号電極と、表裏を貫通するスルーホールの周りに形成される複数のグランド電極と、を備え、信号電極に信号コンタクトが圧接され、グランド電極にグランドコンタクトが圧入される。
【発明の効果】
【0011】
複数の信号コンタクトの位置決めを担う第1オーガナイザと、複数のグランドコンタクトと導通し、かつグランドコンタクトの位置決めを担う第2オーガナイザと、を備える本発明によれば、信号コンタクトとグランドコンタクトのそれぞれの機能を確保しつつ、信号コンタクトとグランドコンタクトの位置ずれを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る電気コネクタの全体像を示す図である。
【
図2】実施形態に係る電気コネクタのコンタクト等と回路基板との関係を示す図である。
【
図3】実施形態に係る電気コネクタのコンタクト等が回路基板に接続される過程を示す図である。
【
図4】実施形態に係る回路基板の一部を平面視した図である。
【
図5】実施形態に係る回路基板との対向面の側から視た第2オーガナイザを示す図である。
【
図6】実施形態に係る電気コネクタであって、第1オーガナイザが装着された信号コンタクトおよびグランドコンタクトが保持されるウエハを示す図である。
【
図7】(a)は第1オーガナイザを単体で示す斜視図であり、(b)は互いに位置決めされる第1オーガナイザとウエハとを示す図である。
【
図8】実施形態に係る電気コネクタであって、第2オーガナイザが装着された信号コンタクトおよびグランドコンタクトが保持されるウエハを示す斜視図である。
【
図9】(a)は第2オーガナイザを単体で示す斜視図であり、(b)は互いに位置決めされる第2オーガナイザと第1オーガナイザが装着されるウエハとを示す図である。
【
図10】信号端子の動作を説明する図であり、(a)は自由状態にあるときの姿勢を示し、(b)は信号電極パッドに圧接された時の姿勢を示す図である。
【
図11】第1電気コネクタを示し、(a)は回路基板との対向面の側から視た図、(b)は(a)の11b-11b線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態に係る電気コネクタと回路基板との接続体を説明する。この接続とは、電気的な接続と機械的な接続とを伴うことを意味する。
本実施形態は、
図1に示されるように、第1電気コネクタ10と第1回路基板20との第1接続体1と、第2電気コネクタ30と第2回路基板40との第2接続体2と、を備える。なお、
図1に示される第1回路基板20および第2回路基板40は、第1電気コネクタ10および第2電気コネクタ30との接続が認識できる範囲でその一部のみが示されている。
図1は、一例として、第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ30とが互いに嵌合されることにより、第1回路基板20と第2回路基板40とが互いの向きが直交するDPO(Direct Plug Orthogonal)を構成する。DPOにおいて、第1接続体1の第1回路基板20と第2接続体2の第2回路基板40との間で送受信される電気信号が第1電気コネクタ10と第2電気コネクタ30との間で受け渡しされる。本実施形態における第1電気コネクタ10は、複数の信号コンタクト13および複数のグランドコンタクト15のそれぞれの位置決めを担う第1オーガナイザ60および第2オーガナイザ70と二つの位置決め部材を備える。
以下、第1接続体1、つまり第1電気コネクタ10および第1回路基板20について説明構成、効果を説明する。なお、第2電気コネクタ30および第2回路基板40を備える第2接続体2についても、第1接続体1と同様の構成を備えているため、第1接続体1の説明をもってその説明を省略する。
【0014】
[第1電気コネクタ10:
図2,
図3参照]
第1電気コネクタ10は、複数枚のウエハ11が積層されて構成されている。ウエハ11の概略の構成例を説明すると、2枚の配線板と2枚のシールド板を備えている。配線板とシールド板は、平面視して概ね矩形状をなしている。
2枚の配線板は、配列された複数の個別配線からなる金属配線が樹脂板にインサートモールドされた板状の部材である。金属配線を構成している各々の個別配線の一端部には、相手コネクタである第2電気コネクタ30のコンタクトと接するコンタクトが形成されている。また、これら各々の個別配線の他端部には、第1回路基板20に形成される複数の信号電極パッド23のそれぞれに電気的に接触される複数の圧接型の信号コンタクト13が配列されている(
図2)。
2枚のシールド板は、互いに重ねられた状態の2枚の配線板を両側から挟むように配置される。これら2枚のシールド板のそれぞれの1つの側面には、嵌合相手となる第2電気コネクタ30のグランドコンタクトと接続される複数のグランドコンタクトが配列されている。また、これら2枚のシールド板14(
図2)の他の側面には、第1回路基板20に形成されるグランド電極として機能する複数のスルーホール電極25に差し込まれる複数のグランドコンタクト15が配列されている。
【0015】
信号コンタクト13は、一例として、圧接型のコンタクトが適用されている。信号コンタクト13は、
図3に示されるように、U字状に塑性変形された屈曲部13Aと、第1回路基板20の信号電極パッド23に接する接点部13Bと、屈曲部13Aと接点部13Bとを繋ぐ梁部13Cと、を備える。信号コンタクト13において、接点部13Bのある側を先端とする。第1電気コネクタ10と第1回路基板20とを互いに組み付ける過程で、接点部13Bが信号電極パッド23に押し付けられると、剛性の高い屈曲部13Aよりも先端側が弾性変形することにより、接点部13Bは信号電極パッド23に圧接される。
信号コンタクト13は、例えば、導電性および弾性に優れた銅合金からなる板材を打ち抜き加工および曲げ加工することで形成される。グランドコンタクト15も同様である。
【0016】
グランドコンタクト15は、一例として、圧入型(Press Fit)のコンタクトが適用される。グランドコンタクト15は、ニードルアイ型とも称され、
図2に示すように、プレスフィット部15Aと、プレスフィット部15Aの一方に連なる案内部15Bと、プレスフィット部15Aの他方に連なる基部15Cと、から構成される。プレスフィット部15Aは、一対の弾性圧接片15A1,15A1と、弾性圧接片15A1,15A1の間に挟まれる空隙15A2と、を備える。弾性圧接片15A1,15A1は、各々、両持ち梁の構造をなしており、空隙15A2を挟んで外側へ弧状に湾曲して形成されている。したがって、弾性圧接片15A1,15A1は、空隙15A2を間に挟んで、内側又は外側へ撓み、弾性変形が可能とされる。したがって、グランドコンタクト15がスルーホール電極25に挿入されると、空隙15A2を撓み空隙として弾性圧接片15A1,15A1が内側へ弾性変形し、その反力により弾性圧接片15A1,15A1の各々の外周面がスルーホール電極25に押し付けられる。
【0017】
[第1回路基板20:
図2,
図3,
図4参照]
第1回路基板20は、おもて面21Aとうら面21Bを有する基板本体21と、基板本体21のおもて面21Aに形成される複数の信号電極パッド23と、基板本体21のおもて面21Aとうら面21Bとを貫通して形成される複数のスルーホール電極25と、を備える。
【0018】
基板本体21は、複数枚の基板素材を積層して構成される。基板素材にはおもて面21Aに形成される複数の信号電極パッド23に接続される図示が省略される信号経路が形成される。
【0019】
信号電極パッド23には第1回路基板20に組み付けられる第1電気コネクタ10の信号コンタクト13が圧接されることで、第1電気コネクタ10と第1回路基板20との間で電気信号の送受信が行われる。なお、
図2~
図4において、信号電極パッド23は基板本体21のおもて面21Aに記載されているが、基板本体21の内部には複数の信号電極パッド23のそれぞれに電気的に繋がる電気信号の送受信に関わる信号経路が基板本体21の平面方向に沿って形成されている。この信号経路は、スルーホール電極25を避けて形成される。
【0020】
なお、ここでは信号電極パッド23を用いて圧接型の信号コンタクト13と電気的に接続する例を示しているが、信号コンタクト13をグランドコンタクト15と同様に圧入型とし、第1回路基板20に形成されるスルーホール電極にこの圧入型の信号コンタクト13を挿入してもよい。ただし、信号電極パッド23であれば基板本体21に貫通孔を形成する必要がないので基板本体21の機械的な強度を確保する上で有利であるのに加えて、おもて面21Aに信号電極パッド23が形成されていたとしても基板本体21の内部には信号経路を形成できる。
【0021】
スルーホール電極25は、
図4に示すように、基板本体21に形成される貫通孔THと、貫通孔THを取り囲む基板本体21の厚さ方向の壁面に形成され例えばメッキによる導電膜CPと、から構成される。導電膜CPは、通常、おもて面21Aおよびうら面21Bにおけるスルーホール電極25の開口の周囲にも形成される。導電膜CPを構成するメッキは、金メッキ、銀メッキなどの公知のメッキが適用される。また、導電膜CPは、メッキに限るものではなく、他の手段、例えば蒸着、スパッタリングなどによる導電膜CPを適用することができる。信号電極パッド23も同様の導電膜から形成される。
グランドコンタクト15がスルーホール電極25に挿入されると、プレスフィット部15Aの弾性圧接片15A1,15A1が内側の空隙に向けて弾性変形する。その反力により弾性圧接片15A1,15A1の各々の外周面がスルーホール電極25の導電膜CPに押し付けられることで、第1電気コネクタ10と第1回路基板20の間でグランド(GND)が図られる。
【0022】
[オーガナイザ50:
図5参照]
第1電気コネクタ10は、信号コンタクト13およびグランドコンタクト15の位置決めを担うオーガナイザ50を備える。オーガナイザ50は、
図5に示されるように、信号コンタクト13を位置決めする第1オーガナイザ60と、グランドコンタクト15を位置決めする第2オーガナイザ70と、を備える。つまり、オーガナイザ50は、第1オーガナイザ60と第2オーガナイザ70のそれぞれに信号コンタクト13の位置決め機能とグランドコンタクト15の位置決め機能を分離して対応させる。第1オーガナイザ60と第2オーガナイザ70は、別体として形成されるが、互いに積層された状態で第1電気コネクタ10を構成するウエハ11に装着される。以下、第1オーガナイザ60、第2オーガナイザ70の順に説明する。
【0023】
[第1オーガナイザ60:
図6,
図7参照]
第1オーガナイザ60は、
図6に示されるように、複数のウエハ11に対して装着されることで、信号コンタクト13を位置決めする。なお、
図6~
図8において、ウエハ11は第1オーガナイザ60および第2オーガナイザ70の装着を説明するのに必要な範囲のみが記載されている。
第1オーガナイザ60は、一例として、電気的な絶縁材料である樹脂材料を射出成形することにより一体として形成される。第1オーガナイザ60は、隣接して並ぶ一対の信号コンタクト13,13を単位として位置決めする。このことを位置決め単位60Uということにすると、第1オーガナイザ60は、一対の信号コンタクト13,13に対応する数の位置決め単位60Uを備える。第1オーガナイザ60において、複数の位置決め単位60Uが、横方向Wおよび縦方向Dに並んで配置される。なお、説明の便宜上、
図5などに示すように、横方向W、縦方向Dおよび高さ方向Hを定義する。位置決め単位60Uは、本発明の第1支持部の一例である。
【0024】
位置決め単位60Uは、
図7(a)に示すように、複数のウエハ11に第1オーガナイザ60が装着されると、一対の信号コンタクト13,13の間に設けられる中央ガイド61と、中央ガイド61を間に挟み、かつ、中央ガイド61とそれぞれが間隔を隔てて設けられる側方ガイド63A,63Bと、を備える。中央ガイド61および側方ガイド63A,63Bは、横方向Wに側方ガイド63A、中央ガイド61および側方ガイド63Bの順に並んでいる。中央ガイド61と側方ガイド63Aの間および中央ガイド61と側方ガイド63Bの間は、それぞれが高さ方向Hに貫通する空隙となっており、位置決め単位60Uにおいてこの二つの空隙は一対の信号コンタクト13,13のそれぞれの収容スペース64,64を構成する。収容スペース64,64は、収容される一対の信号コンタクト13,13のそれぞれが横方向Wおよび縦方向Dに位置ずれしないように、横方向Wおよび縦方向Dの寸法が定められる。ここで位置ずれするか否かは、第1電気コネクタ10と第1回路基板20とを接続する際および接続して接続体となった後の少なくとも一方において、信号コンタクト13の接点部13Bが対応する信号電極パッド23に定位置で圧接されるか否かで判断される。複数のウエハ11(第1電気コネクタ10)と第1オーガナイザ60は、
図7(b)に示すように、互いに位置合わせした後に、
図6に示されるように、一対の信号コンタクト13,13が収容スペース64,64に収容されるように、互いに装着される。ウエハ11に対して第1オーガナイザ60が装着されると、次に、第2オーガナイザ70が装着される。
【0025】
[第2オーガナイザ70:
図5,
図8,
図9参照]
第2オーガナイザ70は、第1オーガナイザ60が装着された複数のウエハ11に対して装着されることで、グランドコンタクト15を位置決めする。また、第2オーガナイザ70は、グランドコンタクト15との間でグランド(GND)として機能し、両者が同電位とされる。
【0026】
第2オーガナイザ70は、一例として、電気的な絶縁材料である樹脂材料を射出成形することにより一体として形成される。ただし、第2オーガナイザ70は、グランドとして機能するために、
図5に示されるように、第1回路基板20との対向面70Sに例えばメッキによる導電膜CPが形成される。
第2オーガナイザ70には、
図5および
図9に示されるように、互いに積層される第1オーガナイザ60の位置決め単位60Uが配置される複数の配置スペース75が横方向Wおよび縦方向Dに格子状またはマトリックス状に配列されている。配置スペース75と配置スペース75の間は、位置決めブロック71で横方向Wが区切られており、仕切パネル74で縦方向Dが区切られている。位置決めブロック71は、本発明の第2支持部の一例である。
【0027】
それぞれの位置決めブロック71には、第2オーガナイザ70の表裏を貫通しグランドコンタクト15が挿通される開口形状が矩形の挿通孔72が二つずつ設けられている。二つの挿通孔72は、縦方向Dに間隔をあけて設けられている。したがって、全体として、複数の挿通孔72は縦方向Dおよび横方向Wに並んでいる。また、挿通孔72よりも奥には、
図10に示すように、グランドコンタクト15の基部15Cが圧入される圧入支持部76を備えている。圧入支持部76は、基部15Cが圧入されると、基部15Cを機械的に拘束することにより、グランドコンタクト15を位置決めする。
【0028】
図9(b)に示すように、第1オーガナイザ60が装着された複数のウエハ11と第2オーガナイザ70とを互いに位置合わせした後に、それぞれのグランドコンタクト15が対応する挿通孔72に挿通させながら組み付ける。そうすると、
図8に示すように、第1接続体1が構成される。
【0029】
[第1オーガナイザ60と第2オーガナイザ70の積層構造:
図8,
図10,
図11参照]
第1オーガナイザ60と第2オーガナイザ70は、
図8に示されるように、複数のウエハ11からなる電気コネクタ中間体に対して第1オーガナイザ60、第2オーガナイザ70の順で組付けられる。したがって、第1オーガナイザ60と第2オーガナイザ70は、電気コネクタ中間体に対して第1オーガナイザ60、第2オーガナイザ70の順に積層される。ただし、この積層は、第1オーガナイザ60と第2オーガナイザ70とが平面方向において全体が直に接していることを意味するものではない。第1オーガナイザ60と第2オーガナイザ70とは、高さ方向Hに直に接している部分もあれば、高さ方向Hに隙間がある部分もある。特に、第1オーガナイザ60の位置決め単位60Uの部分が第2オーガナイザ70の配置スペース75の中に配置されることで、位置決め単位60Uに位置される信号コンタクト13の接点部13Bは配置スペース75を介して外部に露出する。この構造により、接点部13Bを第1回路基板20の信号電極パッド23に圧接させることができる。
【0030】
第2オーガナイザ70まで組付けられた電気コネクタ中間体において、
図10(a)に示すように、信号電極パッド23に圧接される前の信号コンタクト13は配置スペース75から外部に突出している。しかし、電気コネクタ中間体が第1回路基板20に組み付けられると、
図10(b)に示すように、信号電極パッド23に接点部13Bが圧接されると、信号コンタクト13,13は第1オーガナイザ60(位置決め単位60U)の中央ガイド61と側方ガイド63A,63Bの間の収容スペース64,64に入り込む。そうすると、一方の信号コンタクト13は中央ガイド61と側方ガイド63Aとの間に挟まれることにより横方向Wの位置決めがなされ、他方の信号コンタクト13は中央ガイド61と側方ガイド63Bとの間に挟まれることにより横方向Wの位置決めがなされる。位置決めされる信号コンタクト13は、中央ガイド61および側方ガイド63A,63Bと接触することで位置決めされてもよいが、中央ガイド61および側方ガイド63A,63Bとの間に微小な隙間を有していてもよい。後者の場合、信号コンタクト13は横方向Wに変位し得るが、その距離が微小であれば位置決めとして機能し得る。
【0031】
次に、グランドコンタクト15は、
図11に示すように、第2オーガナイザ70の挿通孔72を貫通して第2オーガナイザ70の対向面70Sから突出する。グランドコンタクト15は、基部15Cが第2オーガナイザ70の圧入支持部76に支持される。圧入支持部76の表面には対向面70Sから連なる導電膜CPが形成されており、グランドコンタクト15は基部15Cを通じて導電膜CPと電気的に接続される。
【0032】
[第1電気コネクタ10が奏する効果]
以上説明した第1電気コネクタ10は以下の効果を奏する。
第1電気コネクタ10は、第1オーガナイザ60と第2オーガナイザ70を備え、第1オーガナイザ60により信号コンタクト13を位置決めし、第2オーガナイザ70によりグランドコンタクト15を位置決めする。
【0033】
ここで、高いグランド性能を確保するために、第2オーガナイザ70の対向面70Sには導電膜CPが形成されている。したがって、仮に第2オーガナイザ70だけでグランドコンタクト15の位置決めに加えて信号コンタクト13の位置決めの機能を持たせたとすると、信号コンタクト13が導電膜CPに接触してしまうおそれがある。このことは、導電膜CPが形成されているオーガナイザには信号コンタクト13の位置決めの機能を持たせることが難しく、そうすると信号コンタクト13は第1回路基板20と組み付ける際には位置決めがなされていないことになる。一方で、仮に第1オーガナイザ60だけで信号コンタクト13の位置決めに加えてグランドコンタクト15の位置決めの機能を持たせたとすると、導電膜CPが形成されていないため、高いグランド性能を確保することができない。
【0034】
したがって、第1オーガナイザ60および第2オーガナイザ70を備える第1電気コネクタ10によれば、信号コンタクト13およびグランドコンタクト15のそれぞれを確実に位置決めできるのに加えて、信号コンタクト13による確実な信号伝送およびグランドコンタクト15による高いグランド性能を確保できる。
【0035】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
本発明は第1電気コネクタ10と第1回路基板20との第1接続体1だけを対象にできる。つまり、第1電気コネクタ10の嵌合相手は第2回路基板40と組み付けられる第2電気コネクタ30に限るものではなく、回路基板と接続されない電気コネクタを第1電気コネクタ10の嵌合相手にできる。
【0036】
信号コンタクト13は、圧接型のコンタクトを例示したが、本発明はこれに限るものではなく、グランドコンタクト15と同様の圧入型のコンタクトを用いることができる。
【0037】
第1オーガナイザ60と第2オーガナイザ70は、ウエハ11に対して第1オーガナイザ60、第2オーガナイザ70の順に積層する例を示したが、本発明はこれに限らず、ウエハ11に対して第2オーガナイザ70、第1オーガナイザ60の順に積層することもできる。
ただし、本実施形態で示したように第1オーガナイザ60、第2オーガナイザ70の順に積層すると、第2オーガナイザ70の導電膜CPが第1回路基板20に近接して配置される。そうだとすると、第1回路基板20の第2オーガナイザ70との対向面にグランド面があれば、グランド性能の点で有利である。
逆に、第2オーガナイザ70、第1オーガナイザ60の順に積層すると、全体が絶縁材料からなる第1オーガナイザ60が第1回路基板20に近接して配置される。そうだとすると、第1回路基板20の第1オーガナイザ60との対向面に信号パターンを形成する領域を広くとることができる。
【0038】
また、複数のウエハ11に対して一体をなす第1オーガナイザ60および第2オーガナイザ70の例を示したが、本発明はこれに限らず、複数のウエハ11のそれぞれに対して装着される第1オーガナイザおよび第2オーガナイザとすることもできる。つまり、本発明は、単一のウエハ11に対してそれぞれが単一の第1オーガナイザおよび第2オーガナイザを装着することができる。複数のウエハ11に対して一体をなす第1オーガナイザ60および第2オーガナイザ70は、コスト的に有利である。一方で、単一のウエハ11に対してそれぞれが単一の第1オーガナイザおよび第2オーガナイザは、それぞれのオーガナイザとしての機能を発揮するためにより好ましい形態を実現できる。
【0039】
第2オーガナイザ70について、樹脂材料からなる成形体の対向面70Sに導電膜CPを形成する複合体から構成される例を示したが、本発明は第2オーガナイザ70の全体を導電性材料から構成することもできる。この場合、導電性の樹脂材料を射出成形することにより第2オーガナイザ70を得ることができるし、導電性の金属粉末をMIMにより第2オーガナイザ70を得ることができる。導電性の樹脂材料は、樹枝材料自体が導電性を備えているものではなく、導電性を備える粉末、繊維などを樹脂材料に分散させることにより得ることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 第1接続体
2 第2接続体
10 第1電気コネクタ
11 ウエハ
13 信号コンタクト
13A 屈曲部
13B 接点部
13C 梁部
15 グランドコンタクト
15A プレスフィット部
15A1 弾性圧接片
15A2 空隙
15B 案内部
15C 基部
20 第1回路基板
21 基板本体
21A おもて面
21B うら面
23 信号電極パッド
25 スルーホール電極
30 第2電気コネクタ
40 第2回路基板
50 オーガナイザ
60 第1オーガナイザ
60U 位置決め単位
61 中央ガイド
63A,63B 側方ガイド
64 収容スペース
70 第2オーガナイザ
70S 対向面
71 位置決めブロック
72 挿通孔
74 仕切パネル
75 配置スペース
76 圧入支持部
CP 導電膜
TH 貫通孔
D 縦方向
H 高さ方向
W 横方向