(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080209
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】気化器、イオン源、半導体製造装置及び気化器の運転方法
(51)【国際特許分類】
H01J 27/16 20060101AFI20240606BHJP
H01J 37/08 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H01J27/16
H01J37/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193211
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】302054866
【氏名又は名称】日新イオン機器株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平井 裕也
(72)【発明者】
【氏名】岩波 悠太
(72)【発明者】
【氏名】糸井 駿
(72)【発明者】
【氏名】趙 維江
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101BB03
5C101BB05
5C101CC04
5C101CC14
5C101DD03
5C101DD18
5C101DD20
5C101DD23
5C101DD25
(57)【要約】
【課題】蒸気生成時には、気化器を熱的に安定させ、メンテナンス時には、気化器の温度を速やかに下げる。
【解決手段】気化器V1-V7は、坩堝1と、坩堝1を加熱する加熱器6と、坩堝1を支持する筒状の支持具3と、支持具3が取り付けられる真空隔壁5と、支持具3の内部Rを、坩堝1で蒸気を生成するときには真空にし、坩堝1の加熱を停止する制御装置Cを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
坩堝と、
前記坩堝を加熱する加熱器と、
前記坩堝を支持する筒状の支持具と、
前記支持具が取り付けられる真空隔壁と、
前記支持具の内部を、前記坩堝で蒸気を生成するときには真空にし、前記坩堝の加熱を停止するときには大気にする制御装置と、を有する気化器。
【請求項2】
前記坩堝は、
蒸気を放出する前部と、
前記前部と対向する底部を有し、
前記底部は、第1底蓋と第2底蓋とを備える二重底構造からなる、請求項1記載の気化器。
【請求項3】
前記坩堝にガスを導入するガス導入管を有し、
前記ガス導入管は、前記坩堝と前記真空隔壁との間で、前記支持具の内部に配置される、請求項1記載の気化器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の気化器と、
前記気化器から導入された蒸気をもとにプラズマを生成するプラズマ生成室と、
前記プラズマからイオンビームの引き出しを行う引出電極と、を有するイオン源。
【請求項5】
請求項4記載のイオン源から引き出された前記イオンビームを処理室内のターゲットに照射し、前記ターゲットを処理する、半導体製造装置。
【請求項6】
坩堝と、
前記坩堝を加熱する加熱器と、
前記坩堝を支持する筒状の支持具と、
前記支持具が取り付けられる真空隔壁とを有する気化器で、
前記坩堝で蒸気を生成するときには、前記支持具の内部を真空にすることと、
前記坩堝の加熱を停止するときには、前記支持具の内部を大気にすることを実施する、気化器の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体材料から蒸気を生成する気化器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置に使用されるイオン源では、プラズマをもとにイオンビームの引き出しが行われている。一般的に、プラズマの生成は、ガスをもとに行われるが、適当なガスがない場合には、気化器を用いて固体材料を蒸気化することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のイオン源では、昇華温度安定化時間を短縮することを目的にして、固体充填容器(坩堝)を真空隔壁に支持する支持部材の熱伝導率を、固体充填容器や真空隔壁の熱伝導率よりも低くすることと、固体充填容器の厚みを真空隔壁の厚みよりも薄くすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
気化器を取り外して、イオン源をメンテナンスする際、人が触れる程度に、気化器の温度を十分に下げておく必要がある。
しかしながら、特許文献1は、固体充填容器からの熱の逃げを防止する構成を採用しているので、気化器の温度が下がるまでに長い待ち時間が発生する。
【0006】
そこで、気化器での蒸気生成時には、気化器を熱的に安定させ、気化器のメンテナンス時には、気化器の温度を速やかに下げることのできる気化器を提供することを主たる目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
気化器は、
坩堝と、
前記坩堝を加熱する加熱器と、
前記坩堝を支持する筒状の支持具と、
前記支持具が取り付けられる真空隔壁と、
前記支持具の内部を、前記坩堝で蒸気を生成するときには真空にし、前記坩堝の加熱を停止するときには大気にする制御装置と、を有する。
【0008】
気化器の運転方法は、
坩堝と、
前記坩堝を加熱する加熱器と、
前記坩堝を支持する筒状の支持具と、
前記支持具が取り付けられる真空隔壁を有する気化器で、
前記坩堝で蒸気を生成するときには、前記支持具の内部を真空にすることと、
前記坩堝の加熱を停止するときには、前記支持具の内部を大気にすることを実施する。
【発明の効果】
【0009】
支持具の内部を、坩堝で蒸気を生成するときには真空にし、坩堝の加熱を停止するときには大気にすることで、蒸気生成時には、気化器を熱的に安定にして、気化器のメンテナンス時には、気化器の温度を速やかに下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】気化器の運転方法についてのフローチャートである。
【
図10】他の気化器についての模式的断面図である。
【
図11】他の気化器についての模式的断面図である。
【
図12】気化器を備えたイオン源と同イオン源を備えた半導体製造装置の構成例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、気化器V1についての模式的断面図である。坩堝1には、固体材料7が配置されている。固体材料7は、例えば、三フッ化アルミニウム、ヨウ化インジウム、塩化インジウム、三フッ化アンチモン等である。固体材料7は、一塊のブロック状、ペレット状、または、粉末状といった種々の形態で使用される。
【0012】
坩堝1の内部空間は、前部F、側部S、底部Bからなる。側部Sの外周には、坩堝1を昇温する加熱器6が設けられている。加熱器6は、例えば、図示されるワイヤー状のコイルヒーターである。加熱器6により坩堝1を加熱することで、固体材料7が蒸気化される。
坩堝1で生成された蒸気は、坩堝1の前部Fに設けられたノズル2の開口2aを通して、不図示のプラズマ生成室へ供給される。
【0013】
坩堝1の底部Bは、支持具3で支持されている。支持具3は、例えば、
図2に図示される細長い筒状の部材である。支持具3は、真空隔壁5に取り付けられている。支持具3の両端部は、坩堝1と真空隔壁5で封鎖されていることから、支持具3の内部Rは密閉空間となる。
真空隔壁5は、例えば、イオン源やプラズマ源等の真空雰囲気内に配置される装置で、気化器V1の取り付けに使用されるフランジである。イオン源に、気化器V1を取り付けたとき、
図1において、真空隔壁5よりも左側の部位は真空内に配置され、右側の部位は大気に配置される。
【0014】
支持具3の内部Rには、配管4が導入されている。配管4には、三方弁21が取り付けられている。大気側において、三方弁21の流路は、空気供給部22と真空ポンプ23に接続されている。この構成により、配管4を通して、支持具3の内部Rを真空、大気に切り替えることが可能となる。
ここで言う大気とは、支持具3の内部Rにおける圧力が1atmもしくはその近傍の圧力であることを意味する。真空とは、支持具3の内部Rが大気のときの圧力よりも低い任意の圧力であることを意味する。
気化器V1の運転状態に応じて、制御装置Cからの指令信号Iによって三方弁21の切替を自動制御してもいいが、装置のオペレーターが手動操作してもよい。
以降、気化器V1の変形例を説明する際には、配管4に接続された三方弁21と空気供給部22と真空ポンプ23を、状態変更ユニットAとして図示する。
【0015】
図3は、気化器V1の運転例についてのフローチャートである。まず気化器V1の運転前に支持具3の内部Rを真空引きする(処理S1)。その後、加熱器6で坩堝1を昇温し、固体材料7の気化を行う(処理S2)。このとき、支持具3の内部Rが真空であるため、真空断熱効果によって、坩堝1から真空隔壁5側への熱伝達が低減される。結果として、気化器V1を運転し、固体材料7を蒸気化する際、坩堝1が熱的に安定する。
【0016】
加熱器6による坩堝1の加熱は、固体材料7が気化しない程度の温度に予め坩堝1を昇温させておいてもよい。室温から固体材料7が気化する温度になるまで坩堝1を昇温するよりも、坩堝1を予め昇温しておく方が、気化器V1の運転を開始するまでの時間を短縮することができる。
固体材料7が気化しない程度の温度に予め坩堝1を加熱する操作を予備加熱とし、固体材料7が気化する温度に坩堝1を加熱する操作を本加熱とするならば、
図2に記載の処理S2では、本加熱が実施される。
予備加熱を実施するタイミングについては、処理S1の前後いずれでもいいが、予備加熱においても坩堝1を熱的に安定させるには、処理S1での真空引きを先に実施しておくことが望ましい。
【0017】
次に、気化器V1をメンテナンスするため、気化器V1の運転を停止する(処理S3)。具体的には、加熱器6による坩堝1の加熱を停止する。
その後、支持具3の内部Rに空気を供給して、支持具3の内部Rを大気にすることで、坩堝1から真空隔壁5への熱伝達が促進される。これにより、気化器V1の運転停止時には、気化器V1の温度を速やかに下げることができる。
なお、真空から大気への変更にあたり、空気の他、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを使用してもよい。また、処理S4を実施するタイミングは、処理S3と同時でもよい。
【0018】
図4は、別の気化器V2についての模式的断面図である。
図4及び後述する他の図面において、
図1と符号が共通する部材は同じ部材であるため、詳細な説明は省略する。
気化器V2は、気化器V1と蒸気の生成方法が異なっている。
坩堝1に反応性ガスを供給することで、坩堝1内の固体材料7と反応性ガスとが反応して、反応生成物が生成される。反応生成物は、坩堝1を加熱器6で加熱することで、気化されて、ノズル2の開口2aを通して、不図示のプラズマ生成室へ供給される。
例えば、固体材料7は、純アルミニウム、窒化アルミニウム、または、酸化アルミニウムであり、反応性ガスは塩素ガスや塩酸ガスである。また、固体材料7と反応性ガスとの反応により生成される反応生成物は、塩化アルミニウムである。
【0019】
大気側に配置されたガス供給源24は、塩素ガスや塩酸ガスといった反応性ガスを供給する。坩堝1の底部Bには、ガス導入管8が取り付けられていて、坩堝1の内部に反応性ガスが供給される。
ガス導入管8は、真空隔壁5と坩堝1の底部Bとの間で、支持具3の内部Rに配置されている。この構成により、支持具3の外側に、ガス導入管8が配置される構成に比べ、気化器V2の構成をコンパクトにすることができる。
ガス導入管8からのガス漏れを防止するため、図示されるガス導入管8の外側を別の配管で覆っておき、二重配管構造としてもよい。
【0020】
気化器V1と同じく、気化器V2の運転時には、支持具3の内部Rを真空にする。また、気化器V2の運転を停止して、メンテナンスする時には、支持具3の内部Rを大気にする。これにより、気化器V2での蒸気生成時には、気化器V2を熱的に安定させ、気化器V2のメンテナンス時には、気化器V2の温度を速やかに下げることができる。
【0021】
気化器V2では、反応性ガスの坩堝1への供給がなければ、坩堝1の内部に反応生成物は生成されない。坩堝1の内部に反応生成物がない状態では、坩堝1を加熱しても、反応生成物にもとづく蒸気は生成されない。
このことから、反応性ガスの供給がなされていない間は、蒸気の生成が行われる本加熱の温度に、気化器V2を加熱しておくこともできる。もちろん、気化器V2の温度を本加熱よりも低い温度に設定し、反応性ガスが供給されるタイミングに合わせて坩堝1を本加熱の温度に加熱してもよい。
【0022】
一方、予め反応性ガスを坩堝1に流しておき、坩堝1の温度を制御することで、反応生成物を気化してもよい。
気化器V2での坩堝1の加熱時に、坩堝1の熱的安定性を高めるには、坩堝1の加熱前に、支持具3の内部Rを真空にする。支持具3の内部Rを真空にするタイミングは、遅くとも気化器V2での蒸気生成時であればいい。
ただし、状態変更ユニットAでの制御を簡便に行うには、気化器V2のメンテナンス時を除き、支持具3の内部Rは、常に真空であることが望ましい。この点については、気化器V2だけでなく、気化器V1や後述する他の気化器についても同じことが言える。
【0023】
図5は、他の気化器V3についての模式的断面図である。
図4に示す気化器V2との違いは、坩堝1の底部Bを二重底構造にしている点にある。二重底構造は、図示される第1底蓋10と第2底蓋9aで構成されている。第1底蓋10と第2底蓋9aの主面(図示されるXY平面上の面)は、Z方向に空間を隔てて配置されており、主面間の空間によって、第2底蓋9aから第1底蓋10への熱伝達が低減できる。
図5に示す二重底構造を、他の実施形態と組み合わせることで、坩堝1から真空隔壁5への熱伝達がさらに低減でき、坩堝1の熱的安定性がさらに向上する。
【0024】
図6と
図7は、第1底蓋10と第2底蓋9aの具体的な構成例についての平面図である。ここで、坩堝1は、円筒状の部材であることを想定している。
図6に示すように、第1底蓋10は、平面視で円板状の部材であり、同心円状の段差を有している。第1底蓋10の中央には、反応性ガスが通過する第1ガス導入口H1が形成されている。第1底蓋10の段差部位11には、
図7に示す第2底蓋9aが配置される。第2底蓋9aは、円板の一部に切り欠きが設けられた部材で、切り欠き部位が、反応性ガスが通過する第2ガス導入口H2となる。
【0025】
反応性ガスは、第1ガス導入口H1と第2ガス導入口H2を通り、坩堝1の側部S側から坩堝1の内部に導入される。側部Sの近傍は、加熱器6により加熱されているため、比較的温度は高く、反応生成物の気化が促進される。一方、坩堝1の中心位置(
図5に示すY方向で対向する側部S間の中央付近)では、側部Sの近傍に比べて温度が低くなることから、気化した反応生成物が固着することが懸念される。
【0026】
Y方向において、第2ガス導入口H2が、第1ガス導入口H1の位置にあれば、第2ガス導入口H2付近に反応生成物が固着し、反応性ガスの坩堝1への導入を妨げることが懸念される。
しかしながら、
図5に示すように、坩堝1側に設けられた第2ガス導入口H2の位置を、坩堝1の中心から偏心した側部S近傍に配置しているため、上記懸念事項を解消することができる。
【0027】
図5乃至
図7に示す第1底蓋10と第2底蓋9aの構成は、一例にすぎず、種々の変形が可能である。例えば、第1底蓋10を、段差を有さない円板状の部材とし、これを坩堝1に内嵌めしてもよい。また、坩堝1と支持具3との間に第1底蓋10を挟持してもよい。
第2底蓋9aの切り欠きは、
図7に示す直線状である必要はなく、曲線状にしてもよい。また、
図7に記載の切り欠き部位は、図の上側だけでなく、下側にも形成する等、坩堝1の中心から偏心した位置で、反応性ガスが供給でき、第2底蓋9aの取り付けに支障がない範囲で、適宜変更してもよい。
【0028】
図5乃至
図7に挙げた二重底構造の坩堝1を有する気化器V3の変形例として、
図8に示す気化器V4を採用してもよい。気化器V4では、坩堝1の一部を第2底蓋9bとしている。
第2底蓋9bは、第2ガス導入口H2から、坩堝1の前部Fへ向けて広がる傾斜部位12を有している。傾斜部位12により、固体材料7が第2ガス導入口H2から物理的に離間するので、気化した反応生成物が固着することによって、第2ガス導入口H2が塞がれてしまうリスクが低減できる。
なお、傾斜部位12に代えて、側部Sから第2ガス導入口H2へ続く段差部位を設ける等して、固体材料7と第2ガス導入口H2との物理的な距離を離してもよい。
【0029】
気化器のメンテナンスにあたり、支持具3の内部Rを大気にすることに加えて、
図9、
図10に示す構成を採用することで、気化器の温度を効率的に下げることができる。
図9に示す気化器V5と
図10に示す気化器V6で、真空隔壁5には、大気側から支持具3の内部Rにつながる通路25が設けられている。真空隔壁5において、通路25の設けられる場所は、配管4やガス導入管8とは異なっている。
【0030】
図9の気化器V5には、通路25の大気側出口にノブ26が設けられている。ノブ26は、通路25の大気側出口を開け閉めするための部材である。例えば、ローレット付きボルトや配管と配管を開閉するバルブからなる部材である。
支持具3の内部Rを大気にする際、ノブ26は通路25の大気側出口を開放する。これにより、支持具3の内部Rで坩堝1からの熱で暖められた気体を、通路25を通して、大気側に排出することが可能となる。その結果、暖かい気体と冷たい気体とが循環されて、坩堝1の温度を効率的に下げることができる。
【0031】
支持具3の内部Rを大気にする際、通路25を常に開放してもいいが、配管4を通して流す気体の供給時間、坩堝1の温度、または、支持具3の内部Rでの圧力変動等に応じて、ノブ26による通路25の開放と閉鎖を切替えてもよい。なお、坩堝1の温度以外に、支持具3や支持具3の内部Rでの温度を温度計で測定し、これらの測定値に応じて、ノブ26の開閉操作を行ってもよい。また、制御装置Cを用いて、ノブ26の開閉操作を自動制御してもよい。
【0032】
図10の気化器V6では、ノブ26に代えて、ポンプ27が設けられている。ポンプ27を用いて、支持具3の内部Rで暖まった気体を外部に排出してもよい。
【0033】
坩堝1の昇温を効率的に行うため、加熱器6の周りにシールドを配置してもよい。
図11は、加熱器6の周りにシールドを設けた気化器V7の模式的断面図である。
図示されるシールド29は、筒状の部材である。シールド29の端部には、ノズル2と第1底蓋10が、シールド29の内外に突出可能な開口が形成されている。シールド29は、締結具30(例えば、スタッド)により、ノズル2の大径部に隣接配置されたキャップ28に取り付けられている。
図11のシールド29を使用することで、坩堝1の反対側へ逃げる熱を遮蔽することができるため、坩堝1の昇温を効率的に行うことができる。また、シールド29で加熱器6を坩堝1に押し付けて、加熱器6の坩堝1への密着性を高めてもよい。
【0034】
図12は、半導体製造装置Mの構成例を示す模式的断面図である。
イオン源ISは、先の実施形態で挙げたいずれかの気化器V1-V7を有している。気化器V1-V7から供給された蒸気は、プラズマ生成室31に導入される。不図示のカソードから放出される電離電子や不図示のアンテナで生成されるマイクロ波によって、プラズマ生成室31に導入された蒸気は、プラズマ化される。
プラズマ生成室31の一面には、イオン引出し口35が形成されている。プラズマ生成室31で生成されたプラズマPは、イオン引出し口35を通して、引出電極EによってイオンビームIBとしてプラズマ生成室31の外部に引き出される。
【0035】
引出電極Eは、例えば、プラズマ生成室31への電子の流入を抑制するための抑制電極32と接地電位に固定された接地電極33で構成されている。プラズマ生成室31と抑制電極32には、不図示の電源により、所定の電圧が印加されている。イオンビームIBは、正の電荷を有するイオンビームIBとして引き出されることを想定している。
【0036】
イオン源ISから引き出されたイオンビームIBが、処理室34に配置されたターゲットTに照射されることで、ターゲットTの処理が行われる。ターゲットTは、処理室34の特定位置に固定されていてもいいが、姿勢が固定された状態でイオンビームIBを横切る方向へ移動されてもよい。
半導体製造装置Mの構成によっては、イオン源ISと処理室34との間に、質量分析電磁石や加減速管等の種々の構成要素を配置してもよい。
【0037】
上記実施形態で、支持具3を構成する材料は、坩堝1を構成する材料に比べて、熱伝導率が低い材料とし、支持具3を介した熱伝達を低減してもよい。例えば、坩堝1の材料を等方性黒鉛とし、支持具3の材料をステンレスとする。
坩堝1と第1底蓋10と第2底蓋9aの材料を同一の材料にすれば、加熱器6による坩堝1の加熱により、各部材に熱膨張が生じたとしても部材間での位置ずれを軽減することができる。なお、必ずしも各部材を同一の材料で構成する必要はなく、熱膨張率の差が少ない材料で構成することで、同様の効果を得ることができる。
【0038】
加熱器6は、ワイヤー状のコイルヒーターとしていたが、ワイヤー状に代えてシート状のコイルヒーターを使用してもよい。また、フレキシブな加熱面を備えたパネルヒーターを使用してもよい。さらに、坩堝1の周囲を囲むように配置されたプレートヒーターを使用してもよい。
そのうえ、各ヒーターを組み合わせて、加熱器6を構成してもよい。
【0039】
部材の取り付けについては、篏合、螺合、溶接等の種々の方法を利用することができる。また、取付用の部材を新たに用意してもよい。
支持具3の内部Rにおける密閉性を向上する上で、支持具3の取り付けにあたっては、溶接を用いることが望ましい。なお、支持具3は、1つまたは複数の部材の組み合わせで構成されてもよい。
【0040】
図示される固体材料7は、坩堝1の容積の半分を占めるものであるが、坩堝1の全体を占める程度の大きさとしてもよい。反応性ガスと接触する固体材料7の面積が大きいほど、反応生成物の生成量が増加し、坩堝1で生成される蒸気量も増加する。
固体材料7を大きくする場合、ガス導入管8から坩堝1に供給される反応性ガスの供給路を塞ぐことがないよう、固体材料7の形状や寸法などを適宜設定する。例えば、固体材料7を1つの大きな塊とし、坩堝1の全体を占める程度の大きさとした場合、固体材料7に複数の孔を形成しておき、反応性ガスの流路を確保することが考えられる。
【0041】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
1 坩堝
3 支持具
5 真空隔壁
6 加熱器
8 ガス導入管
9a、9b 第2底蓋
10 第1底蓋
32 プラズマ生成室
34 処理室
R 支持具の内部
H1 第1ガス導入口
H2 第2ガス導入口
IS イオン源
IB イオンビーム
M 半導体製造装置
T ターゲット