(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008021
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】無人飛行体の制御方法、及び無人飛行体
(51)【国際特許分類】
B64C 17/02 20060101AFI20240112BHJP
B64D 27/40 20240101ALI20240112BHJP
B64D 9/00 20060101ALI20240112BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20240112BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B64C17/02
B64D27/26
B64D9/00
B64C27/08
B64C39/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109508
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】岩原 利夫
(72)【発明者】
【氏名】神谷 晴久
(57)【要約】
【課題】構造が複雑になること及び重量増加を抑制しつつ、荷物に起因した無人飛行体の傾きを抑制できる無人飛行体の制御方法及び無人飛行体を提供する。
【解決手段】無人飛行体1は、荷物の搭載部を含む機体2と、機体2から外側に延びる複数のアーム3と、各アーム3の先端に設けられるプロペラ4とを備える。各アーム3は互いに異なる位置で機体2に接続されるとともに、上下方向を向いた回転軸15の回りに回転可能に設けられる。飛行前に、荷物を搭載した状態の無人飛行体1の重心位置を取得し、複数のプロペラ4の位置から定まる揚力中心がその重心位置の方向に変位するように、各アーム3の回転軸15回りの角度を調整する。または、飛行中に、無人飛行体1の傾きを検出し、揚力中心がその傾きの方向に変位するように、各アーム3の回転軸15回りの角度を調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物の搭載部を含む機体と、一端が前記機体の互いに異なる位置に接続される複数のアームと、各々の前記アームの他端に接続されるプロペラとを備える無人飛行体の重心位置又は傾きを取得する取得ステップと、
複数の前記プロペラの位置から定まる揚力中心が前記重心位置又は前記傾きの方向に変位するように、前記アームの、前記一端に位置する上下方向を向いた軸線回りの角度を調整する調整ステップと、
を備える無人飛行体の制御方法。
【請求項2】
前記取得ステップは、前記無人飛行体の飛行前に前記重心位置を取得する重心位置取得ステップを含み、
前記調整ステップは、前記無人飛行体の飛行前に、前記揚力中心が前記重心位置に近づくように前記角度を調整する飛行前調整ステップを含む請求項1に記載の無人飛行体の制御方法。
【請求項3】
前記取得ステップは、前記無人飛行体の飛行中に前記傾きを取得する傾き取得ステップを含み、
前記調整ステップは、前記無人飛行体の飛行中に、前記揚力中心が前記傾きの方向に変位するように前記角度を調整する飛行中調整ステップを含む請求項1に記載の無人飛行体の制御方法。
【請求項4】
荷物の搭載部を含む機体と、
前記機体に接続される複数のアームと、
各々の前記アームに接続されるプロペラとを備える無人飛行体であって、
前記アームは上下方向に向いた回転軸の回りに回転可能に設けられ、
各々の前記アームの前記回転軸は、前記機体における互いに異なる位置に設けられており、
前記アームの前記回転軸の回りの角度を調整することで、複数の前記プロペラの位置から定まる揚力中心の位置が、前記無人飛行体の重心位置又は傾きに応じて変更可能である無人飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は荷物の搭載部を含んだ無人飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
荷物の搭載部を含んだ無人飛行体(ドローンともいう)においては、荷物に起因して飛行が不安定となるおそれがある。これに関して、例えば、特許文献1には、搭載物等に起因して移動体(無人飛行体)が傾く状況下においても移動体の傾きを抑制することを目的として、機体からプロペラの回転軸までの距離が移動体の傾きに応じて変化可能である移動体が開示されている。また、特許文献2には、機体と、機体の重心を通る中心軸を中心として互いに交差する複数のアーム部と、各アーム部の両端部に設けられるプロペラとを備え、アーム部が中心軸回りに回動可能な垂直離着陸飛行体(無人飛行体)が開示されている。また、特許文献2には、機体に搬送物が取り付けられた場合に機体の重心周りに発生するモーメントを緩和させるようにアーム部を回動させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-27742号公報
【特許文献2】特開2017-19455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の無人飛行体ではアームの伸縮機構が必要なので、構造が複雑になる。また、アームを伸ばす必要があるので、それに伴い重量が増加してしまう。また、特許文献2の無人飛行体では、各アーム部の回転軸が機体の中心軸に設定されるので、アーム部を回動させたとしても、複数のプロペラの位置から定まる揚力中心の位置変化が小さい。そのため、荷物も含めた機体の重心位置が中心軸からずれていた場合には、アーム部を回動させたとしても、無人飛行体の傾きの抑制効果が小さい。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みて、構造が複雑になること及び重量増加を抑制しつつ、荷物に起因した無人飛行体の傾きを抑制できる無人飛行体の制御方法及び無人飛行体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の無人飛行体の制御方法は、
荷物の搭載部を含む機体と、一端が前記機体の互いに異なる位置に接続される複数のアームと、各々の前記アームの他端に接続されるプロペラとを備える無人飛行体の重心位置又は傾きを取得する取得ステップと、
複数の前記プロペラの位置から定まる揚力中心が前記重心位置又は前記傾きの方向に変位するように、前記アームの、前記一端に位置する上下方向を向いた軸線回りの角度を調整する調整ステップと、
を備える。
【0007】
本開示によれば、複数のプロペラの位置から定まる揚力中心が無人飛行体の重心位置又は傾きの方向に変位するように、機体に対するアームの角度を調整するので、荷物に起因した(複数の各荷物の重量が異なることで機体の重心位置が変化した)無人飛行体の傾きを抑制できる。また、アームを伸縮させなくてもいいので、構造が複雑になること及び重量増加を抑制できる。また、各アームは機体の互いに異なる位置に接続されるので、アームの角度を調整する際の回転中心の位置をアーム間で異なる位置にできる。これにより、複数のプロペラの位置から定まる揚力中心の位置をきめ細やかに制御できる。
【0008】
本開示の無人飛行体は、
荷物の搭載部を含む機体と、
前記機体に接続される複数のアームと、
各々の前記アームに接続されるプロペラとを備える無人飛行体であって、
前記アームは上下方向に向いた回転軸の回りに回転可能に設けられ、
各々の前記アームの前記回転軸は、前記機体における互いに異なる位置に設けられており、
前記アームの前記回転軸の回りの角度を調整することで、複数の前記プロペラの位置から定まる揚力中心の位置が、前記無人飛行体の重心位置又は傾きに応じて変更可能である。これによれば、例えばアーム角度が上記無人飛行体の制御方法と同様に調整されることで、無人飛行体の傾きを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1、第2実施形態の無人飛行体の上面図である。
【
図2】第1、第2実施形態の無人飛行体の正面図である。
【
図3】第1、第2実施形態の無人飛行体の、
図1のIII-III線での断面図である。
【
図4】第1実施形態における、アーム角度を制御する制御装置の構成図である。
【
図5】無人飛行体の上面図であり、アーム角度の態様の一例を示す図である。
【
図6】無人飛行体の上面図であり、アーム角度の態様の一例を示す図である。
【
図7】無人飛行体の上面図であり、アーム角度の態様の一例を示す図である。
【
図8】無人飛行体の上面図であり、アーム角度の態様の一例を示す図である。
【
図9】無人飛行体の上面図であり、アーム角度の態様の一例を示す図である。
【
図10】無人飛行体の上面図であり、アーム角度の態様の一例を示す図である。
【
図11】無人飛行体の上面図であり、アーム角度の態様の一例を示す図である。
【
図12】第1実施形態における、アーム角度を調整する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】第2実施形態における、アーム角度を制御する制御装置の構成図である。
【
図14】無人飛行体が傾いた状態を側面方向から見た図である。
【
図15】無人飛行体が傾いた状態を正面方向から見た図である。
【
図16】第2実施形態における、アーム角度を調整する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図17】第3実施形態の無人飛行体の上面図である。
【
図18】第3実施形態の無人飛行体の上面図であり、アーム角度の態様の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本開示の第1実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1~
図3に第1実施形態における荷物輸送用(換言すれば物流用)の無人飛行体1(ドローン)を示す。
図1~
図3に示す無人飛行体1(以下、単に飛行体という場合がある)は、垂直離着陸型の飛行体として構成されている。飛行体1は機体2と複数のアーム3と各アーム3に接続されたプロペラ4と各プロペラ4を駆動するプロペラ駆動部17とを備えている。
【0011】
機体2は、
図3に示すように、荷室5とバッテリ8と機体カバー9とを備える。荷室5は、荷物搭載部として機能し、1つ又は複数の荷物100(
図3では3個の荷物100)を収容可能に形成される。具体的には、荷室5は、例えば、荷物100を載置するための載置部としての荷室トレー6と、その荷室トレー6を覆って荷室トレー6との間で荷物100の収容空間を形成する荷室カバー7とを有する。荷室トレー6は荷室カバー7に着脱可能に設けられる。荷物100は荷室トレー6上の任意の位置に配置可能である。荷室5は、複数の荷物100を例えば機体2の水平方向(例えば機体2の前後方向又は左右方向)に配列させるように収容する。また、荷室5は機体カバー9に着脱可能に設けられる。荷室カバー7は荷室トレー6を着脱可能に取り付ける取付部(図示外)を含む。
【0012】
なお、飛行体1の飛行に必要な部品(バッテリ8、各種センサ、制御部など)は荷物100に含まれない。荷物100は、例えば物流において輸送される物(商品など)である。
【0013】
バッテリ8は、飛行体1を駆動するためのバッテリであり、具体的には、各プロペラ駆動部17(
図2参照)、アーム駆動部16(
図2参照)、機体2に搭載される制御部、各種センサ(図示外)等の電気部品に電力を供給するためのバッテリである。バッテリ8は機体カバー9内に収容され、具体的には例えば機体カバー9内で荷室5(荷室カバー7)の上面に載せられた状態に設けられる。
【0014】
機体カバー9は、荷室5、バッテリ8等を覆う(収容する)ように形成される。機体カバー9は、例えば下方が開き、下方以外は閉じた収容空間10を形成して、その収容空間10に、バッテリ8を載せた荷室5を着脱可能に収容する。機体カバー9は、荷室5を着脱可能に取り付ける取付部(図示外)を含む。機体カバー9(機体2)は例えば前後方向及び左右方向が定められた形状に形成される。具体的には、機体カバー9は、
図1に示すように、前面11、後面12及び左右の側面13を有した、下方が開いた箱型形状に形成される。機体カバー9は、左右方向の幅よりも前後方向の幅のほうが長い形状に形成されてよい。
【0015】
機体2は、アーム3を支持する支持部14を有する(
図1、
図2参照)。支持部14はアーム3の個数分設けられ、本実施形態では4つ設けられる。各支持部14は、機体カバー9の例えば側面13に接続されている。具体的には、4つの支持部14のうちの2つは一方の側面13(右側面)に接続され、残りの2つは他方の側面13(左側面)に接続されている。また、複数の支持部14は、機体2の上下方向(高さ方向)における互いに同一の高さ位置に設けられてもよいし、異なる高さ位置にもうけられてもよい。
【0016】
各支持部14は、機体2の上下方向に向いた軸線L3(
図2参照)回りの、機体2に対するアーム3の角度(以下、アーム角度という場合がある)を変更可能に、各アーム3を支持する。具体的には、支持部14は、例えば軸線L3を規定する回転軸15(
図1参照)と、その回転軸15を軸線L3回りに回転させるアーム駆動部16(
図2参照)とを含む。アーム駆動部16は、軸線L3回りのいずれかの角度に位置決め可能な例えばサーボモータとしてよい。また、アーム駆動部16は、正方向及びその逆方向に回転するモータとしてよい。回転軸15にアーム3が接続される。なお、軸線L3は、飛行体1が水平面(鉛直方向に直角な面)に着地した状態で鉛直方向を向く。
【0017】
アーム3は、機体カバー9から外側(換言すれば軸線L3に交差する方向)に延びるように形成される。アーム3は複数(本実施形態では4つ)設けられる。複数のアーム3は、互いに独立に軸線L3回りの角度を変更可能に設けられる。また、複数のアーム3は互いに同じ長さに形成される。アーム3は直線状に延びるように形成される。アーム3の一方の端部には機体2の支持部14(換言すれば機体2の左右側面13)に接続される。アーム3の他方の端部にはプロペラ4及びプロペラ駆動部17が接続されている。なお、各アーム3の長さは一定であり、すなわち、機体2にはアーム3の長さを調整する機構は設けられない。
【0018】
複数のアーム3は互いに異なる位置で機体2に接続されている。言い換えれば、各アーム3の回転軸15は互いに異なる位置に設けられる。以下では、アーム3の、機体2(支持部14)に接続される端部を基端といい、プロペラ4が接続される端部を先端という。また、各アーム3の基端(換言すれば各回転軸15)を頂点とした図形の重心又は幾何中心を機体2の中心O(
図1参照)とする。その機体中心Oを通る、機体2の前後方向に延びた仮想直線L1(
図1参照)を前後方向中心線という。また、機体中心Oを通る、機体2の左右方向に延びた仮想直線L2(
図1参照)を左右方向中心線という。さらに、荷物100を搭載していない状態での機体2(アーム3、プロペラ4及びプロペラ駆動部17は含まない)の水平方向における重心位置G
0(
図1参照)を荷物無重心位置という。機体中心Oと荷物無重心位置G
0は一致してもよいし、異なっていてもよい。
図1では、機体中心Oと荷物無重心位置G
0とが一致している例を示している。なお、図形の幾何中心は、その図形の属する全ての点に亘ってとった算術平均の位置である。
【0019】
複数のアーム3は、例えば、機体中心O又は荷物無重心位置G0に関して対称となる位置で機体2に接続されてよい。具体的には、各アーム3の基端(支持部14、回転軸15の位置)は、例えば機体中心O又は荷物無重心位置G0を中心とした同一の円上に配置されてよい。換言すれば、アーム3の基端と機体中心O又は荷物無重心位置G0との距離は、複数のアーム3間で互いに同じ距離に設定されてよい。
【0020】
また、複数のアーム3のうちの一部(本実施形態では2つのアーム3A、3B(
図1参照))は、左右方向中心線L2よりも前側の位置で機体2に接続され、残部(本実施形態では2つのアーム3C、3D(
図1参照))は左右方向中心線L2よりも後側の位置で機体2に接続されてよい。この場合、アーム3の基端と、左右方向中心線L2との距離は複数のアーム3の間で互いに同じに距離に設定されてよい。
【0021】
また、複数のアーム3のうちの一部(本実施形態では2つのアーム3A、3C(
図1参照))は、前後方向中心線L1よりも右側の位置(右側面13)で機体2に接続され、残部(本実施形態では2つのアーム3B、3D)は前後方向中心線L1よりも左側の位置(左側面13)で機体2に接続されてよい。この場合、アーム3の基端と、前後方向中心線L1との距離は複数のアーム3の間で互いに同じに距離に設定されてよい。
【0022】
また、複数のアーム3は、互いに同一の上下方向位置で機体2に接続されてもよいし、異なる上下方向位置で機体2に接続されてもよい。また、アーム3は水平方向に平行に設けられてもよいし、水平方向に対して傾斜するように設けられてもよい。
【0023】
また、各アーム3は、支持部14によって、軸線L3回りの角度が変更可能に支持される。アーム3又はプロペラ4が機体2に干渉するのを抑制するために、例えばアーム3の先端(プロペラ4)が基端(回転軸15)よりも前後方向中心線L1に近い位置とならないように、アーム3の角度が調整されてよい。すなわち、アーム3は、その先端が基端よりも前後方向中心線L1から離れた位置(左右方向の外側の位置)となるように、又は前後方向中心線L1に平行となるように、設けられてよい。各アーム3の角度の態様は後述する。
【0024】
プロペラ4及びプロペラ駆動部17は、各アーム3の先端に設けられる。プロペラ4は、揚力発生部及び推進力発生部として機能し、機体2の上下方向に向いた軸線回りに回転することで、機体2を浮かせる揚力及び機体2を進行させる推進力を発生させる。プロペラ駆動部17はプロペラ4を回転させるモータ等である。なお、プロペラ4の回転軸線は飛行体1が水平面に着地した状態で鉛直方向を向く。
【0025】
また、飛行体1は、通信部、センサ部、記憶部、及び制御部を備えている(図示外)。通信部は、飛行中に外部の管理装置(図示外)との間で通信を行う部分であり、例えば、センサ部の検出値(例えば現在値情報など)を管理装置に送信したり、管理装置からの飛行制御信号を受信したりする。センサ部は、種々のセンサを含んでよく、例えば、カメラ、GPSセンサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、赤外線センサ、音声センサ、輝度センサ、風向風速センサ、地磁気センサ、高度センサ、変位センサ、温度センサ、熱検知センサ、又は感圧センサなどを含んでよい。記憶部は、荷物100の輸送に必要な各種データを記憶する。
【0026】
制御部は、センサ部の検出値、通信部で受信した飛行制御信号などに基づいて各プロペラ駆動部17を制御することで、各プロペラ4の回転を制御する。制御部は、飛行体1をホバリング(空中に浮いた状態にとどまらせること)させる場合には、例えば各プロペラ4を互いに同一の回転速度で回転させることで、各プロペラ4で生ずる揚力を互いに同じにする。また、制御部は、飛行体1を進行させる場合には、例えば、複数のプロペラ4のうち進行方向の後側に位置するプロペラ4を、前側に位置するプロペラ4よりも高速で回転させることで、後側のプロペラ4で生ずる揚力を前側のプロペラ4で生ずる揚力よりも大きくする。
【0027】
また、各アーム3のアーム角度を制御する制御装置50(
図4参照)が設けられている。制御装置50は、飛行体1の飛行前(つまり飛行体1が基地等に着地しているとき)にアーム角度を制御するように構成される。制御装置50は、飛行体1の基地に備えられてもよいし、飛行体1の機体2に備えられてもよい。また、制御装置50を構成する各部51~55は、基地と飛行体1とに分散して設けられてもよい。
【0028】
制御装置50は、重心位置検出部51と、重心位置推定部52と、記憶部53と、アーム角度演算部54と、アーム制御部55とを備える。なお、制御装置50は、重心位置検出部51と重心位置推定部52のいずれか一方のみを備えるとしてよい。すなわち、制御装置50が重心位置検出部51を備える場合には、重心位置推定部52は備えなくてもよい。反対に、制御装置50が重心位置推定部52を備える場合には、重心位置検出部51は備えなくてもよい。
【0029】
重心位置検出部51は、飛行前の飛行体1の水平方向における重心位置を検出する。重心位置検出部51は、荷物100及びバッテリ8を搭載した状態の飛行体1の重心位置を検出する。重心位置検出部51は飛行体1全体の重心位置(機体2(荷物100及びバッテリ8を含む)、アーム3、プロペラ4、及びプロペラ駆動部17を含んだ重心位置)を検出するように構成されてよい。重心位置検出部51は、例えば、飛行体1の水平方向における重量分布を検出する重量センサとしてよい。この場合、重量センサは、飛行体1の水平方向における3点以上の部分で重量を検出するように設けられる。
【0030】
重心位置検出部51は、基地側に設けられても良いし、飛行体1に設けられても良い。重心位置検出部51(例えば重量センサ)は、基地側に設けられる場合には、飛行体1の下面が接触する接地面に設けられてよい。重心位置検出部51(例えば重量センサ)は、飛行体1に設けられる場合には、飛行体1の、地面に接触する部位(例えば機体カバー9の下面)に設けられてよい。また、例えば飛行体1が脚部を有する場合にはその脚部の下面に重心位置検出部51としての重量センサが設けられてもよい。
【0031】
重心位置推定部52は、飛行前の飛行体1の水平方向における重心位置を演算により推定する。重心位置推定部52は、荷物100及びバッテリ8を搭載した状態の飛行体1の重心位置を推定する。具体的には、重心位置推定部52は、飛行体1を構成する各部(荷物100以外の部分、具体的には機体2、アーム3、プロペラ4、プロペラ駆動部17、バッテリ8等)の、飛行体1の重心位置に関連する情報である飛行体情報と、荷物100の、飛行体1の重心位置に関連する情報である荷物情報とに基づいて、重心位置を推定する。飛行体情報は、飛行体1を構成する各部の形状、位置、又は重量を含む。荷物情報は、各荷物100の重量又は機体2(荷室トレー6)での搭載位置を含む。
【0032】
飛行体情報は記憶部53に予め記憶されてよい。なお、バッテリ8の重量(容量)又はバッテリ8の機体2での搭載位置が荷物100の輸送距離等に応じて変わる場合には、飛行体1の重心位置に関連するバッテリ8の情報(重量又は搭載位置等)であるバッテリ情報は、機体2にバッテリ8を自動搭載するバッテリ搭載装置から取得してもよいし、飛行体1を取り扱う担当者による入力により取得してもよいし、センサ(重量センサ)で検出してもよい。
【0033】
また、荷物情報を構成する荷物100の重量は、重量センサで検出してもよいし、担当者による入力により取得してもよいし、予め記憶部53に記憶されてもよい。また、荷物搭載装置(ロボット)が荷物100を荷室トレー6に自動で搭載する場合には、その荷物搭載装置から、荷室トレー6での荷物100の搭載位置を取得してよい。または、荷物100の搭載位置は、カメラ等のセンサで検出してもよい。または、荷物100の搭載位置は、担当者による入力により取得してもよいし、予め記憶部53に記憶されてもよい。
【0034】
重心位置推定部52は、アーム3、プロペラ4、プロペラ駆動部17等も含んだ飛行体1全体の重心位置を推定して良い。また、重心位置推定部52は、飛行体1全体の重心位置に代えて、プロペラ4及びプロペラ駆動部17を除く、アーム3及び機体2(バッテリ8、荷物100を含む)からなる構造の重心位置を推定してもよい。または、重心位置推定部52は、アーム3、プロペラ4、及びプロペラ駆動部17を除く機体2(バッテリ8、荷物100を含む)の重心位置を推定してもよい。
【0035】
重心位置検出部51又は重心位置推定部52は、飛行体1の重心位置として、飛行体1の上下方向(鉛直方向)に直角な水平方向のうちの第1方向における重心位置である第1方向重心位置と、水平方向のうちの第1方向に直角な第2方向における重心位置である第2方向重心位置とを取得する。第1方向重心位置は、例えば機体2の前後方向(
図1の前後方向中心線L1に平行な方向)における位置としてよい。また、第2方向重心位置は、例えば機体2の左右方向(
図1の左右方向中心線L2に平行な方向)における位置としてよい。
【0036】
記憶部53(
図4参照)には、アーム3の角度調整に関する各種情報が記憶される。具体的には、記憶部53には、飛行体1の重心位置の取得に必要な情報として例えば上記飛行体情報又は荷物情報が記憶される。また、記憶部53には、飛行体1の重心位置と、各アーム3の軸線L3回りの角度(アーム角度)との対応関係が記憶される。この対応関係は、複数のプロペラ4の位置から定まる揚力中心と、飛行体1の重心位置とが一致する、飛行体1の重心位置に対する各アーム3の角度を示す。
【0037】
ここで、揚力中心Cは、例えば
図1の平面図で見て、各プロペラ4の中心位置を結んでできる多角形(各プロペラ4の中心位置を頂点とした多角形)内における、各プロペラ4で発生する揚力に基づくモーメントがつりあう位置(揚力のモーメントの総和が所定値以下(例えば0)となる位置)に定められてよい。すなわち、揚力中心Cは上記多角形の重心としてよい。または、揚力中心Cは、上記多角形の幾何中心(算術平均位置)としてもよい。
【0038】
アーム角度演算部54(
図4参照)は、揚力中心を飛行体1の重心位置に近づけさせる各アーム3の角度を演算し、具体的には、揚力中心と飛行体1の重心位置とが一致する各アーム3の角度を演算する。詳しくは、アーム角度演算部54は、重心位置検出部51又は重心位置推定部52が取得する重心位置と、記憶部53に記憶される上記対応関係とに基づいて、各アーム3の目標角度を取得する。そして、アーム角度演算部54は、各アーム3の現在の角度から目標角度への変化量である角度変化量を演算する。
【0039】
アーム制御部55(
図4参照)は、アーム角度演算部54が演算した目標角度となるように、各アーム3のアーム駆動部16(
図2参照)を制御する。アーム制御部55は、アーム角度演算部54が演算した上記角度変化量だけアーム3を回転させるよう各アーム駆動部16を制御する。なお、制御装置50が基地側に設けられる場合には、制御装置50は、飛行体1との間で通信を行う通信部(図示外)を備えて、アーム制御部55はその通信部を介してアーム駆動部16を制御する。
【0040】
ここで、アーム3の機体2に対する角度の態様として、例えば
図1の態様がある。
図1の態様では、揚力中心Cが機体中心O又は荷物無重心位置G
0に一致する態様である。また、
図1の態様では、複数のアーム3及びプロペラ4が前後方向中心線L1及び左右方向中心線L2に関して対称な位置に配置される。さらに、
図1の態様では、全てのアーム3が前後方向中心線L1に直角な方向(つまり左右方向)を向き、換言すれば左右方向中心線L2に平行な方向を向く。
【0041】
また、アーム3の機体2に対する角度の態様として、例えば
図5の態様がある。
図5の態様では、揚力中心Cが機体中心O又は荷物無重心位置G
0に一致する態様である。また、
図5の態様では、複数のアーム3及びプロペラ4が前後方向中心線L1及び左右方向中心線L2に関して対称な位置に配置される。さらに、
図5の態様では、全てのアーム3が、前後方向中心線L1又は左右方向中心線L2に対して斜めの方向を向く。具体的には、左右方向中心線L2よりも前側の位置で機体2に接続されたアーム3A、3Bの基端から先端に向かう方向は機体2に対する斜め前方を向く。左右方向中心線L2よりも後側の位置で機体2に接続されたアーム3C、3Dの基端から先端に向かう方向は機体2に対する斜め後方を向く。また、前側のアーム3A、3Bに接続されたプロペラ4A、4Bは回転軸15よりも前側に位置する。後側のアーム3C、3Dに接続されたプロペラ4C、4Dは回転軸15よりも後側に位置する。
【0042】
また、アーム3の角度の態様として、例えば
図6の態様がある。
図6の態様では、揚力中心Cが機体中心O又は荷物無重心位置G
0とは異なる位置にある態様である。具体的には、揚力中心Cは、前後方向中心線L1上の、機体中心O又は荷物無重心位置G
0よりも後側に位置する。また、
図6の態様では、複数のアーム3及びプロペラ4が前後方向中心線L1に関して対称な位置に配置されるが、左右方向中心線L2に関しては非対称な位置に配置される。また、全てのプロペラ4が回転軸15よりも後側に位置する。また、前側のプロペラ4A、4Bと左右方向中心線L2との距離よりも、後側のプロペラ4C、4Dと左右方向中心線L2との距離のほうが大きい。また、前側のアーム3A、3Bと、後側のアーム3C、3Dとで、前後方向中心線L1又は左右方向中心線L2に対する角度が異なっている。具体的には、前側のアーム3A、3Bは、前後方向中心線L1又は左右方向中心線L2に対して斜めの方向(具体的にはアーム3A、3Bの基端から先端に向かう方向が機体2に対する斜め後方)を向く。これに対して、後側のアーム3C、3Dの基端から先端に向かう方向は、前後方向中心線L1に平行な方向を向き、左右方向中心線L2に直角な方向を向く。
【0043】
図6のように、後側のプロペラ4C、4Dが前側のプロペラ4A、4Bよりも左右方向中心線L2から離れた位置にあり、かつ、右側のプロペラ4A、4Cと、左側のプロペラ4B、4Dとは前後方向中心線L1から等距離となる位置にあるという条件を満たせば、揚力中心Cは、前後方向中心線L1上の、機体中心O又は荷物無重心位置G
0よりも後側に位置する。揚力中心Cを、前後方向中心線L1上の、機体中心O又は荷物無重心位置G
0よりも後側に位置させる場合には、上記条件を満たしていれば、
図6における前側のアーム3A、3Bは斜め後方に向いていなくてもよく、前後方向中心線L1に直角な方向(換言すれば左右方向中心線L2に平行な方向)を向く場合もあってよいし、機体2の斜め前方を向く場合もあってよい。また、揚力中心Cを、前後方向中心線L1上の、機体中心O又は荷物無重心位置G
0よりも後側に位置させる場合には、上記条件を満たしていれば、
図6の後側のアーム3C、3Dは、前後方向中心線L1に平行な方向を向いていなくてもよく、前後方向中心線L1又は左右方向中心線L2に対して斜め方向(機体2の斜め後方又は斜め前方)を向く場合もあってよいし、前後方向中心線L1に直角な方向(換言すれば左右方向中心線L2に平行な方向)を向く場合もあってよい。
【0044】
また、アーム3の角度の態様として、例えば
図7の態様がある。
図7の態様では、揚力中心Cが機体中心O又は荷物無重心位置G
0とは異なる位置にある態様である。具体的には、揚力中心Cは、前後方向中心線L1上の、機体中心O又は荷物無重心位置G
0よりも前側に位置する。また、
図7の態様では、複数のアーム3及びプロペラ4が前後方向中心線L1に関して対称な位置に配置されるが、左右方向中心線L2に関しては非対称な位置に配置される。また、前側のプロペラ4A、4Bと左右方向中心線L2との距離のほうが、後側のプロペラ4C、4Dと左右方向中心線L2との距離よりも大きい。また、前側のアーム3A、3Bと、後側のアーム3C、3Dとで、前後方向中心線L1又は左右方向中心線L2に対する角度が異なっている。具体的には、前側のアーム3A、3Bは、前後方向中心線L1に平行な方向を向き、左右方向中心線L2に直角な方向を向く。これに対して、後側のアーム3C、3Dは、前後方向中心線L1に直角な方向を向き、左右方向中心線L2に平行な方向を向く。
【0045】
図7のように、前側のプロペラ4A、4Bが後側のプロペラ4C、4Dよりも左右方向中心線L2から離れた位置にあり、かつ、右側のプロペラ4A、4Cと、左側のプロペラ4B、4Dとは前後方向中心線L1から等距離となる位置にあるという条件を満たせば、揚力中心Cは、前後方向中心線L1上の、機体中心O又は荷物無重心位置G
0よりも前側に位置する。揚力中心Cを、前後方向中心線L1上の、機体中心O又は荷物無重心位置G
0よりも前側に位置させる場合には、上記条件を満たしていれば、
図7における前側のアーム3A、3Bは前後方向中心線L1に平行な方向を向いていなくてもよく、前後方向中心線L1に対して斜め方向(斜め前方又は斜め後方)を向く場合もあってよいし、前後方向中心線L1に直角な方向を向く場合もあってよい。また、揚力中心Cを、前後方向中心線L1上の、機体中心O又は荷物無重心位置G
0よりも前側に位置させる場合には、上記条件を満たしていれば、
図7の後側のアーム3C、3Dは、前後方向中心線L1に直角な方向を向いていなくてもよく、前後方向中心線L1に対して斜め方向(斜め前方又は斜め後方)を向く場合もあってよい。
図8には、
図7の態様の変形例として、前側のアーム3A、3Bが前後方向中心線L1に平行な方向を向き、後側のアーム3C、3Dが前後方向中心線L1に対して斜め前方を向く例を示している。
図8の例でも、揚力中心Cが前後方向中心線L1上の、機体中心O又は荷物無重心位置G
0よりも前側に位置する。
【0046】
また、アーム3の角度の態様として、例えば
図9の態様がある。
図9の態様では、揚力中心Cが機体中心O又は荷物無重心位置G
0とは異なる位置にある態様である。具体的には、揚力中心Cは、左右方向中心線L2上の、機体中心O又は荷物無重心位置G
0よりも左側に位置する。また、
図9の態様では、複数のアーム3及びプロペラ4が左右方向中心線L2に関して対称な位置に配置されるが、前後方向中心線L1に関しては非対称な位置に配置される。また、左側のプロペラ4B、4Dと前後方向中心線L1との距離のほうが、右側のプロペラ4A、4Cと前後方向中心線L1との距離よりも大きい。また、左側のアーム3B、3Dと、右側のアーム3A、3Cとで、前後方向中心線L1又は左右方向中心線L2に対する角度が異なっている。具体的には、左側のアーム3B、3Dは、前後方向中心線L1に直角な方向を向き、左右方向中心線L2に平行な方向を向く。これに対して、右側のアーム3A、3Cは、前後方向中心線L1又は左右方向中心線L2に対して斜め方向を向き、具体的にいえば右前側のアーム3Aは斜め前方を向き、右後側のアーム3Cは斜め後方を向く。
【0047】
図9のように、左側のプロペラ4B、4Dが右側のプロペラ4A、4Cよりも前後方向中心線L1から離れた位置にあり、かつ、前側のプロペラ4A、4Bと、後側のプロペラ4C、4Dとは左右方向中心線L2から等距離となる位置にあるという条件を満たせば、揚力中心Cは、左右方向中心線L2上の、機体中心O又は荷物無重心位置G
0よりも左側に位置する。揚力中心Cを、左右方向中心線L2上の、機体中心O又は荷物無重心位置G
0よりも左側に位置させる場合には、上記条件を満たしていれば、
図9における左側のアーム3B、3Dは前後方向中心線L1に直角な方向を向いていなくてもよく、前後方向中心線L1に対して斜め方向(斜め前方又は斜め後方)を向く場合もあってよい。また、揚力中心Cを、左右方向中心線L2上の、機体中心O又は荷物無重心位置G
0よりも左側に位置させる場合には、上記条件を満たしていれば、
図9の右側のアーム3A、3Cは、前後方向中心線L1に対して斜め方向を向いていなくてもよく、前後方向中心線L1に平行な方向を向く場合もあってよい。
【0048】
また、アーム3の角度の態様として、例えば
図10の態様がある。
図10の態様では、揚力中心Cが機体中心O又は荷物無重心位置G
0とは異なる位置にある態様である。具体的には、揚力中心Cは、左右方向中心線L2上の、機体中心O又は荷物無重心位置G
0よりも右側に位置する。また、
図10の態様では、複数のアーム3及びプロペラ4が左右方向中心線L2に関して対称な位置に配置されるが、前後方向中心線L1に関しては非対称な位置に配置される。また、右側のプロペラ4A、4Cと前後方向中心線L1との距離のほうが、左側のプロペラ4B、4Dと前後方向中心線L1との距離よりも大きい。また、左側のアーム3B、3Dと、右側のアーム3A、3Cとで、前後方向中心線L1又は左右方向中心線L2に対する角度が異なっている。具体的には、左側のアーム3B、3Dは、前後方向中心線L1に平行な方向を向き、左右方向中心線L2に直角な方向を向く。これに対して、右側のアーム3A、3Cは、前後方向中心線L1に直角な方向を向き、左右方向中心線L2に平行な方向を向く。
【0049】
図10のように、右側のプロペラ4A、4Cが左側のプロペラ4B、4Dよりも前後方向中心線L1から離れた位置にあり、かつ、前側のプロペラ4A、4Bと、後側のプロペラ4C、4Dとは左右方向中心線L2から等距離となる位置にあるという条件を満たせば、揚力中心Cは、左右方向中心線L2上の、機体中心O又は荷物無重心位置G
0よりも右側に位置する。揚力中心Cを、左右方向中心線L2上の、機体中心O又は荷物無重心位置G
0よりも右側に位置させる場合には、上記条件を満たしていれば、
図10における右側のアーム3A、3Cは前後方向中心線L1に直角な方向を向いていなくてもよく、前後方向中心線L1に対して斜め方向(斜め前方又は斜め後方)を向く場合もあってよい。また、揚力中心Cを、左右方向中心線L2上の、機体中心O又は荷物無重心位置G
0よりも右側に位置させる場合には、上記条件を満たしていれば、
図10の左側のアーム3B、3Dは、前後方向中心線L1に平行な方向を向いていなくてもよく、前後方向中心線L1に対して斜め方向(斜め前方又は斜め後方)を向く場合もあってよい。
【0050】
また、アーム3の角度の態様として、例えば
図11の態様がある。
図11の態様では、揚力中心Cは機体中心O又は荷物無重心位置G
0とは異なる位置にある。具体的には、揚力中心Cは、前後方向中心線L1と左右方向中心線L2の双方に対してずれた位置にあり、より具体的には、前後方向中心線L1よりも左側に位置し、かつ、左右方向中心線L2よりも後側に位置する。また、
図11の態様では、複数のアーム3及びプロペラ4が前後方向中心線L1と左右方向中心線L2の双方に関して非対称な位置に配置される。
【0051】
また、
図11では、左前側のプロペラ4Bと前後方向中心線L1との距離と、左後側のプロペラ4Dと前後方向中心線L1との距離との平均値のほうが、右前側のプロペラ4Aと前後方向中心線L1との距離と、右後側のプロペラ4Cと前後方向中心線L1との距離との平均値よりも大きい。また、右後側のプロペラ4Cと左右方向中心線L2との距離と、左後側のプロペラ4Dと左右方向中心線L2との距離との平均値のほうが、右前側のプロペラ4Aと左右方向中心線L2との距離と、左前側のプロペラ4Bと左右方向中心線L2との距離との平均値よりも大きい。また、右前側のアーム3Aは前後方向中心線L1に平行な方向を向く。左前側のアーム3Bは前後方向中心線L1に対して斜め後方を向く。後側のアーム3C、3Dは前後方向中心線L1に対して斜め後方を向く。また、
図11では、アーム3の、前後方向中心線L1又は左右方向中心線L2に対する角度が、複数のアーム3の間で互いに異なっている。
【0052】
図11のように、左側のプロペラ4B、4Dと前後方向中心線L1との距離との平均値のほうが、右側のプロペラ4A、4Cのその平均値よりも大きく、かつ、後側のプロペラ4C、4Dと左右方向中心線L2との距離の平均値のほうが、前側のプロペラ4A、4Bのその平均値よりも大きいという条件を満たせば、揚力中心Cは前後方向中心線L1よりも左側に位置し、かつ、左右方向中心線L2よりも後側に位置する。揚力中心Cを、前後方向中心線L1よりも左側、かつ、左右方向中心線L2よりも後側に位置させる場合には、上記条件を満たしていれば、各アーム3の角度は
図11に示す角度以外の角度でもよい。
【0053】
また、アーム3の角度の態様として、
図1、
図5~
図11に示す態様以外に例えば以下の態様があってよい。すなわち、揚力中心Cが、前後方向中心線L1よりも右側に位置し、かつ、左右方向中心線L2よりも後側に位置するように、各アーム3の角度が調整される場合もあってよい。この場合、右側のプロペラ4A、4Cと前後方向中心線L1との距離の平均値が、左側のプロペラ4B、4Dのその平均値よりも大きく、かつ、後側のプロペラ4C、4Dと左右方向中心線L2との距離の平均値が、前側のプロペラ4A、4Bのその平均値よりも大きくなるように、各アーム3の角度が調整される。
【0054】
また、揚力中心Cが、前後方向中心線L1よりも右側に位置し、かつ、左右方向中心線L2よりも前側に位置するように、各アーム3の角度が調整される場合もあってよい。この場合、右側のプロペラ4A、4Cと前後方向中心線L1との距離の平均値が、左側のプロペラ4B、4Dのその平均値よりも大きく、かつ、前側のプロペラ4A、4Bと左右方向中心線L2との距離の平均値が、後側のプロペラ4C、4Dのその平均値よりも大きくなるように、各アーム3の角度が調整される。
【0055】
また、揚力中心Cが、前後方向中心線L1よりも左側に位置し、かつ、左右方向中心線L2よりも前側に位置するように、各アーム3の角度が調整される場合もあってよい。この場合、左側のプロペラ4B、4Dと前後方向中心線L1との距離の平均値が、右側のプロペラ4A、4Cのその平均値よりも大きく、かつ、前側のプロペラ4A、4Bと左右方向中心線L2との距離の平均値が、後側のプロペラ4C、4Dのその平均値よりも大きくなるように、各アーム3の角度が調整される。
【0056】
以上のように、各アーム3の角度は以下の態様がある。
【0057】
(1)揚力中心Cが機体中心O又は荷物無重心位置G
0に一致する態様(
図1、
図5の態様)。
(2)揚力中心Cが前後方向中心線L1上の、機体中心O又は荷物無重心位置G
0よりも後側に位置する態様(
図6の態様)。
(3)揚力中心Cが前後方向中心線L1上の、機体中心O又は荷物無重心位置G
0よりも前側に位置する態様(
図7、
図8の態様)。
(4)揚力中心Cが左右方向中心線L2上の、機体中心O又は荷物無重心位置G
0よりも左側に位置する態様(
図9の態様)。
(5)揚力中心Cが左右方向中心線L2上の、機体中心O又は荷物無重心位置G
0よりも右側に位置する態様(
図10の態様)。
(6)揚力中心Cが前後方向中心線L1よりも左側に位置し、かつ、左右方向中心線L2よりも後側に位置する態様(
図11の態様)。
(7)揚力中心Cが前後方向中心線L1よりも右側に位置し、かつ、左右方向中心線L2よりも後側に位置する態様(図示外)。
(8)揚力中心Cが前後方向中心線L1よりも右側に位置し、かつ、左右方向中心線L2よりも前側に位置する態様(図示外)。
(9)揚力中心Cが前後方向中心線L1よりも左側に位置し、かつ、左右方向中心線L2よりも前側に位置する態様(図示外)。
【0058】
また、上記(1)~(9)とは言い方を換えれば、各アーム3の角度は例えば以下の態様もある。
(10)全てのアーム3が前後方向中心線L1に直角な方向を向く態様(
図1の態様)。
(11)全てのアーム3が前後方向中心線L1に平行な方向を向く態様(図示外)。
(12)全てのプロペラ4が回転軸15よりも前側に位置する態様(
図8の態様)。
(13)全てのプロペラ4が回転軸15よりも後側に位置する態様(
図6の態様)。
(14)前側のプロペラ4A、4Bが回転軸15よりも前側に位置し、後側のプロペラ4C、4Dが回転軸15よりも後側に位置する態様(
図1の態様)。
(15)一部のアーム3が前後方向中心線L1に平行な方向を向き、残りのアーム3が前後方向中心線L1に平行な方向を向く態様(
図7、
図10の態様)。
(16)全てのアーム3が前後方向中心線L1に対して斜め方向を向く態様(
図1の態様)。
(17)各アーム3の、前後方向中心線L1に対する角度が互いに異なる態様(
図11の態様)。
(18)一部のアーム3が前後方向中心線L1に平行又は直角な方向を向き、残りのアーム3が前後方向中心線L1に対して斜め方向を向く態様(
図6、
図8、
図9、
図11の態様)。
【0059】
さらに、上記(1)~(9)、(12)~(18)の各態様においては、揚力中心Cの、機体中心O又は荷物無重心位置G0に対する距離又は方向が異なる複数の態様がある。なお、上記(1)~(18)の各態様は飛行体1の飛行時のアーム3の角度の態様である。
【0060】
次に、各アーム3の角度を調整する処理を説明する。
図12はその処理の一例を示すフローチャートである。
図12の処理は飛行体1の飛行前に飛行体基地にて実施される。
図12では、先ず、機体2に荷物100及びバッテリ8を搭載する(S1)。具体的には、機体2から分離された荷室トレー6及び荷室カバー7を準備して、その荷室トレー6の上に1又は複数の荷物100を載せる。その後、荷物100が載った荷室トレー6と荷室カバー7とを合体させて、荷室5とする。その後、荷室5(荷室カバー7)の上面にバッテリ8を載せる。このとき、荷物100の重量又は輸送距離等に応じて、搭載するバッテリ8の種類(容量等)を変えてもよい。その後、荷物100及びバッテリ8を搭載した荷室5と機体カバー9とを合体させる。なお、荷物100及びバッテリ8の機体2への搭載はロボットが行ってもよいし、人間が行ってもよい。
【0061】
次に、荷物100及びバッテリ8を搭載した状態の飛行体1の水平方向における重心位置を取得する(S2)。重心位置は、
図4の重心位置検出部51又は重心位置推定部52が取得すればよい。また、重心位置として、飛行体1全体(機体2、アーム3、プロペラ4、及びプロペラ駆動部17を含む)の重心位置を取得してもよいし、アーム3、プロペラ4及びプロペラ駆動部17を除いた機体2の重心位置を取得してもよいし、機体2及びアーム3からなる構造の重心位置を取得してもよい。また、重心位置推定部52が、荷物情報(荷物100の重量、搭載位置)及びバッテリ情報(バッテリ8の重量、搭載位置)に基づいて重心位置を推定する場合には、これら荷物情報、バッテリ情報は、ステップS1において荷物100及びバッテリ8を機体2に搭載する際に取得してよい。なお、ステップS2が本開示の取得ステップ及び重心位置取得ステップに相当する。
【0062】
次に、揚力中心が、ステップS3で取得した重心位置の方向に変位する、各アーム3の角度を演算する(S3)。具体的には、
図4のアーム角度演算部54は、揚力中心とステップS3で取得した重心位置とが一致する各アーム3の目標角度を演算する。そして、アーム角度演算部54は、アーム3毎に、アーム3の現在の角度から目標角度への変化量である角度変化量を演算する。
【0063】
次に、各アーム3の角度がステップS3で演算した目標角度となるように、換言すれば、ステップS3で演算した角度変化量だけ各アーム3を回転させるように、各アーム駆動部16を制御する(S4)。この制御は
図4のアーム制御部55が行えばよい。なお、ステップS3、S4が本開示の調整ステップ及び飛行前調整ステップに相当する。
【0064】
以上により、揚力中心が飛行体1の重心位置に一致する。例えば、ステップS2の実行時のアーム角度の態様が
図5の態様であり、ステップS2で取得する重心位置が
図5の「G1」で示す位置であるとする。この場合、揚力中心Cの左右方向における位置は重心位置G1のそれと一致するものの、揚力中心Cの前後方向における位置は重心位置G1のそれとずれており、具体的には、揚力中心Cは重心位置G1よりも前側に位置している。そこで、ステップS3、S4では例えば
図6のように各アーム3の角度が調整される。これにより、揚力中心Cを重心位置G1に近づけることができ、具体的には揚力中心Cを重心位置G1に一致させることができる。
【0065】
また例えば、ステップS2の実行時のアーム角度の態様が
図5の態様であり、ステップS2で取得する重心位置が
図5の「G2」で示す位置であるとする。この場合、揚力中心Cの前後方向における位置は重心位置G2のそれと一致するものの、揚力中心Cの左右方向における位置は重心位置G2のそれとずれており、具体的には、揚力中心Cは重心位置G2よりも右側に位置している。そこで、ステップS3、S4では例えば
図9のように各アーム3の角度が調整される。これにより、揚力中心Cを重心位置G2に近づけることができ、具体的には揚力中心Cを重心位置G2に一致させることができる。
【0066】
また例えば、ステップS2の実行時のアーム角度の態様が
図5の態様であり、ステップS2で取得する重心位置が
図5の「G3」で示す位置であるとする。この場合、揚力中心Cは、前後方向及び左右方向の双方で重心位置G3とずれており、具体的には、揚力中心Cは重心位置G3よりも前側かつ右側に位置している。そこで、ステップS3、S4では例えば
図11のように各アーム3の角度が調整される。これにより、揚力中心Cを重心位置G3に近づけることができ、具体的には揚力中心Cを重心位置G3に一致させることができる。
【0067】
飛行体1は、ステップS4でアーム3の角度が調整された後に飛行を開始する。このように、本実施形態では、飛行前に、荷物100を搭載した飛行体1の重心位置に近づくように揚力中心が調整されるので、飛行中における荷物100に起因した飛行体1の傾きを抑制できる。これにより、飛行体1の飛行を安定させることができる。また、飛行体1の飛行(姿勢)が安定することで、飛行体1の姿勢制御のためにプロペラ4が無駄に回転するのを抑制でき、飛行時の燃費(バッテリ8の電力消費)を抑制でき、ひいては飛行距離を延ばすことができる。また、機体2の外側に位置するアーム3の角度を可変とする構造であるので、機体2の中央部に設けられる荷物搭載スペースを最大限確保できる。
【0068】
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態を第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。本実施形態では、飛行中にアームの角度を調整する例を説明する。本実施形態の飛行体の構造は第1実施形態と同様であり、
図1~
図3で示される。また、本実施形態の飛行体1は、
図13に示す制御装置60を備える。制御装置60は機体2に備えられてよい。制御装置60は、アーム3の角度を制御する装置であり、傾き検出部61と記憶部62とアーム角度演算部63とアーム制御部64とプロペラ制御部65とを備えている。
【0069】
傾き検出部61は、飛行中の飛行体1の傾きを検出し、具体的には飛行体1の傾き方向及び傾き量を検出する。傾き検出部61は例えばジャイロセンサ等である。ここで、機体2の上下方向に直角な面を機体水平面H1(
図14、
図15参照)とし、鉛直方向(重力方向)に直角な面を外界水平面H2(
図14、
図15参照)とする。傾き検出部61は、飛行中において外界水平面H2に対する機体水平面H1の傾き方向及び傾き量を検出するように、例えば機体2に設けられる。より具体的には、傾き検出部61は、例えば、機体2の上下方向に直角な第1方向に延びた第1軸線(例えば
図1の前後方向中心線L1に平行な軸線)回りの角度θ1(
図14参照)を検出し、かつ、機体2の上下方向に直角な、上記第1方向とは異なる第2方向に延びた第2軸線(例えば
図1の左右方向中心線L2に平行な軸線)回りの角度θ2(
図15参照)を検出する。なお、第2方向は第1方向に直角な方向としてよい。また、角度θ1、θ2が正の値の場合は例えば第1軸線又は第2軸線回りの時計回りの方向に傾いていることを示し、負の値の場合には例えば第1軸線又は第2軸線回りの反時計回りの方向に傾いていることを示すとしてよい。
【0070】
記憶部62には、アーム3の角度調整に関する各種情報が記憶される。具体的には、例えば、傾き検出部61が検出する飛行体1の傾き方向及び傾き量と、各アーム3の、現在の角度から目標角度への角度変化量との対応関係が記憶される。その対応関係は、複数のプロペラ4の位置から定まる揚力中心が、飛行体1の傾きの方向に変位する、飛行体1の傾き方向及び傾き量に対する各アーム3の角度変化量を示す。言い換えれば、対応関係は、機体水平面H1と外界水平面H2との傾き差を小さくする、飛行体1の傾き方向及び傾き量に対する各アーム3の角度変化量を示す。対応関係は、機体水平面H1が外界水平面H2に一致するように定められてよい。また、対応関係は、上記角度θ1、θ2と各アーム3の角度変化量との関係としてよい。
【0071】
対応関係についてさらに説明する。例えば、飛行体1が、機体2の後部よりも前部のほうが下方に位置する形態で傾いている場合、飛行体1の傾き方向は前方向となる。この場合の上記対応関係は、揚力中心が前方向に変位する、各アーム3の角度変化量を示す。また、例えば、飛行体1が、機体2の前部よりも後部のほうが下方に位置する形態で傾いている場合、飛行体1の傾き方向は後方向となる。この場合の上記対応関係は、揚力中心が後方向に変位する、各アーム3の角度変化量を示す。また、例えば、飛行体1が、機体2の左部よりも右部のほうが下方に位置する形態で傾いている場合、飛行体1の傾き方向は右方向となる。この場合の上記対応関係は、揚力中心が右方向に変位する、各アーム3の角度変化量を示す。また、例えば、飛行体1が、機体2の右部よりも左部のほうが下方に位置する形態で傾いている場合、飛行体1の傾き方向は左方向となる。この場合の上記対応関係は、揚力中心が左方向に変位する、各アーム3の角度変化量を示す。
【0072】
また、上記対応関係は、飛行体1の傾き量(
図14、
図15の角度θ1、θ2)が大きいほど、揚力中心の変位量が大きくなるように定められる。すなわち、対応関係は、飛行体1の傾き量が大きいほど、アーム3の角度変化量が大きくなるように定められる。なお、揚力中心は、第1実施形態と同様に、各プロペラ4の位置を頂点とした図形の重心又は幾何中心としてよい。
【0073】
なお、飛行体1は、揚力中心に対する重心位置のずれ方向に傾き、そのずれ量が大きい程、傾き量も大きくなると考えることができる。この考えによれば、上記対応関係は、揚力中心を飛行体1の重心位置に接近させる、飛行体1の傾き(傾き方向、傾き量)と各アーム3の角度変化量との関係であると考えることもできる。
【0074】
アーム角度演算部63は、飛行体1の飛行中に、機体水平面H1と外界水平面H2との傾き差を小さくする、各アーム3の角度変化量を演算する。この角度変化量は、アーム3毎に個別に演算される角度変化量である。アーム角度演算部63は、機体水平面H1が外界水平面H2に一致する各アーム3の角度変化量を演算してよい。アーム角度演算部63は、具体的には、傾き検出部61が検出する傾き方向及び傾き量と、記憶部62に記憶された上記対応関係とに基づいて、各アーム3の角度変化量を取得する。
【0075】
アーム制御部64は、アーム角度演算部63が演算した角度変化量だけ各アーム3を回転軸15回りに回転させるよう各アーム駆動部16を制御する。なお、アーム3の角度の態様としては、第1実施形態と同様に、例えば上記(1)~(18)の態様がある。
【0076】
プロペラ制御部65は、各プロペラ駆動部17(
図2参照)を制御することで、各プロペラ4の回転を制御する。プロペラ制御部65は、例えば、飛行体1がホバリングするように各プロペラ4の回転を制御したり、飛行体1が鉛直方向に交差する方向に進行するように各プロペラ4の回転を制御したり、飛行体1の姿勢(傾き)を安定させるように各プロペラ4の回転を制御したりする。プロペラ制御部65は、例えばホバリング時には各プロペラ4の回転速度を互いに同じ速度に制御する。プロペラ制御部65は、例えば飛行体1を進行させる時には進行方向の後側に位置するプロペラ4の回転速度を、前側に位置するプロペラ4の回転速度よりも大きくする。なお、飛行体1は、機体2の前面11(
図1参照)が前方を向くように進行するとしてよい。
【0077】
次に、各アーム3の角度を調整する処理を説明する。
図16はその処理の一例を示すフローチャートである。
図16の処理は飛行体1の飛行中に
図13の制御装置60が実行する。なお、機体2には荷物100が搭載されているとしてよい。また、
図16の処理は、飛行体1のホバリング中に実行されてもよいし、飛行体1の進行中に実行されてもよい。また、
図16の処理は、プロペラ制御部65(
図13参照)により、各プロペラ4が同じ回転速度で制御されている時に実行されてもよいし、各プロペラ4が異なる回転速度で制御されている時に実行されてもよい。また、飛行前に
図12の処理が実行されてもよいし、実行されなくてもよい。
【0078】
図16の処理では、先ず、
図13の傾き検出部61が飛行体1の傾き方向及び傾き量を検出する(S10)。次に、アーム角度演算部63が、ステップS1で検出した傾き方向及び傾き量に基づいて、機体水平面H1と外界水平面H2との傾き差を小さくする、各アーム3の角度変化量を演算する(S11)。次に、アーム制御部64が、ステップS11で演算した角度変化量だけ各アーム3を回転軸15回りに回転させる。
【0079】
なお、制御装置60は、機体水平面H1が目標の傾きになるまで(例えば外界水平面H2に一致するまで)、
図16の処理を繰り返し実行してもよい。なお、ステップS10が本開示の取得ステップ及び傾き取得ステップに相当する。ステップS11、S12が調整ステップ及び飛行中調整ステップに相当する。
【0080】
このように、本実施形態では、飛行中に、揚力中心が飛行体1の傾き方向に変位するよう、各アーム3の角度が調整されるので、飛行体1の傾きを抑えることができる。換言すれば、荷物100に起因して、又は飛行中の環境(例えば風速)に起因して、飛行体1の姿勢が不安定になるのを抑制できる。飛行体1の飛行(姿勢)が安定することで、バッテリ8の電力消費を抑制できる。
【0081】
(第3実施形態)
次に、本開示の第3実施形態を第1、第2実施形態と異なる部分を中心に説明する。
図17に本実施形態の無人飛行体20の上面図を示す。なお、
図17において、第1、第2実施形態の無人飛行体1と同様の構成には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0082】
図17の飛行体20は、機体2と、機体2から側方に延び出す複数(4つ)のアーム21、22と、各アーム21、22の先端に設けられるプロペラ4とを備える。機体2、アーム支持部14及びプロペラ4は第1、第2実施形態のそれと同じである。アーム21、22が第1、第2実施形態のアーム3と異なっている。具体的には、後側の2つのアーム22は前側の2つのアーム21よりも長い。前側の2つのアーム21は互いに同じ長さである。後側の2つのアーム22は互いに同じ長さである。各アーム21、22は、上下方向に延びた回転軸15回りの角度が調整可能に設けられる。
【0083】
各アーム21、22の角度は、
図12と同様の処理により飛行前に調整されてもよいし、
図16と同様の処理により飛行中に調整されてもよい。例えば、
図12のステップS2の実行時のアーム角度の態様が
図16の態様であり、ステップS2で取得する重心位置が
図16の「G」で示す位置であるとする。揚力中心Cは、前後方向及び左右方向の双方で重心位置Gとずれている。この場合、ステップS3、S4では例えば
図18のように各アーム21、22の角度が調整される。これにより、揚力中心Cを重心位置Gに近づけることができ、具体的には揚力中心Cを重心位置Gに一致させることができる。
【0084】
本実施形態では、第1、第2実施形態の効果に加えて、後側のアーム22が前側のアーム21よりも長いので、揚力中心Cをより後側に位置させることが可能となる。
【0085】
(変形例)
なお、本開示は上記実施形態に限定されず種々の変更が可能である。上記実施形態では、機体重心と揚力中心とを近づけて機体の傾きを抑えるよう、アーム角度を調整する例を示した。しかし、これに限定されず、アーム角度を調整することで、機体を所定方向に所定量だけ傾いた状態に制御してもよい。この場合、例えば、飛行体を進行させようとする方向(機体進行方向)に機体が前傾姿勢となるように、各アーム角度を調整してもよい。この場合、アーム角度の調整は飛行中に行ってもよいし、飛行前に行ってもよい。飛行中に行う場合には、飛行中の機体の傾き方向及び傾き量を検出し、その傾き方向が機体進行方向に一致し、かつ、その傾き量が所定量となるように、各アーム角度を調整すればよい。また、アーム角度調整を飛行前に行う場合には、荷物搭載後の機体重心を取得し、揚力中心が、その機体重心を通る、機体の前後方向に延びた線上における、機体重心よりも所定量だけ後側に位置するように、各アーム角度を調整すればよい。揚力中心が機体重心よりも後側に位置することで、飛行させたときの機体の姿勢を前傾姿勢にしやすくできる。このように、アーム角度の調整により機体を進行方向に前傾させることで、進行方向の反対側(後側)に位置するプロペラの回転速度を、進行方向側(前側)に位置するプロペラの回転速度よりも大きくすることなく飛行体を進行させることが可能となり、バッテリの電力消費を抑制することが可能となる。
【0086】
上記変形例も想定して、本開示の無人飛行体の制御方法は以下のように構成されてもよい。
荷物の搭載部を含む機体と、一端が前記機体の互いに異なる位置に接続される複数のアームと、各々の前記アームの他端に接続されるプロペラとを備える無人飛行体における、前記アームの、前記一端に位置する上下方向を向いた軸線回りの角度を調整することで、前記機体の傾きを制御する、
無人飛行体の制御方法。
【0087】
また、上記実施形態では、アームの個数が4つの例を示したが、3つ以上であれば4つ以外の個数でもよい。また、上記実施形態では、全てのアームの角度が調整可能な例を示したが、一部のアームの角度は固定の角度とし、残部のアームの角度のみを調整してもよい。この場合、例えば機体の後側に接続されたアームは固定として、前側に接続されたアームの角度を調整してもよい。
【0088】
また、上記第1実施形態では、各アームが、飛行体自体の動力(
図2に示すアーム駆動部16の動力)で動かされる例を示したが、外部動力(例えば基地側に設けられるロボットの力、又は人間の力)で動かされてもよい。
【0089】
また、第3実施形態では、後側のアームが前側のアームより長い例を示したが、反対に前側のアームが後側のアームより長い場合もあってよい。これによれば、揚力中心をより前側に位置させることが可能となる。
【0090】
また、上記実施形態では、プロペラがバッテリの電力で駆動する飛行体を例示したが、プロペラはエンジンで駆動されてもよいし、バッテリとエンジンの両方で駆動されてもよい。
【0091】
上記実施形態では、飛行体に搭載した荷物を目的地に配送する前の飛行体に対してアーム角度を調整する例を示したが、飛行体に搭載した荷物の一部又は全部を配送した後に、基地に帰還する際又は別の目的地に向けて飛行する際の飛行体に対してアーム角度を調整してもよい。これによって、荷物の配送前後で機体の重量バランスが変わったとしても、飛行体の飛行が不安定になるのを抑制できる。
【符号の説明】
【0092】
1、20 無人飛行体
2 機体
5 荷室
3 アーム
4 プロペラ
15 回転軸
100 荷物