(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080228
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】基板搬送装置および基板搬送方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20240606BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193251
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 孝
(72)【発明者】
【氏名】木村 吉希
(72)【発明者】
【氏名】實政 泰樹
【テーマコード(参考)】
3C707
5F131
【Fターム(参考)】
3C707AS24
3C707BS15
3C707KS02
3C707KS03
3C707KS05
3C707KS07
3C707KS09
3C707KS36
3C707KV11
3C707LT12
3C707LU05
3C707NS13
5F131AA02
5F131BA01
5F131BA03
5F131BA04
5F131CA07
5F131CA09
5F131DA22
5F131DA42
5F131DB02
5F131DB52
5F131DD03
5F131DD30
5F131DD33
5F131DD43
5F131DD72
5F131KA12
5F131KA43
5F131KA52
5F131KB42
(57)【要約】
【課題】基板の状態が変化した場合であっても接触による基板の破損を防止すること。
【解決手段】実施形態に係る基板搬送装置は、基板を上下方向に多段に収容するカセットに対し、上記基板を搬出入する基板搬送装置であって、上記基板を搬送するハンドと、上記ハンドを動作させる動作機構と、上記動作機構を制御するコントローラと、上記基板を検出可能な第1検出部とを備える。上記コントローラは、上記第1検出部によって検出した上記基板の厚みまたはたわみ量に応じて、上記ハンドが上記基板を上記カセットに対して搬出入する際の、上記カセットの基板支持高さから上記ハンドを上下動作させるオフセット量を変更するオフセット量変更部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を上下方向に多段に収容するカセットに対し、前記基板を搬出入する基板搬送装置であって、
前記基板を搬送するハンドと、
前記ハンドを動作させる動作機構と、
前記動作機構を制御するコントローラと、
前記基板を検出可能な第1検出部と、
を備え、
前記コントローラは、
前記第1検出部によって検出した前記基板の厚みまたはたわみ量に応じて、前記ハンドが前記基板を前記カセットに対して搬出入する際の、前記カセットの基板支持高さから前記ハンドを上下動作させるオフセット量を変更するオフセット量変更部を備える、
基板搬送装置。
【請求項2】
前記オフセット量は、
前記カセットからの前記基板の搬出時において、前記基板支持高さへの前記ハンドの上昇量である下方オフセット量と、前記基板支持高さからの前記ハンドの上昇量である上方オフセット量であり、
前記カセットへの前記基板の搬入時において、前記基板支持高さへの前記ハンドの下降量である上方オフセット量と、前記基板支持高さからの前記ハンドの下降量である下方オフセット量である、
請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項3】
前記第1検出部は、前記ハンドに設けられた反射型センサであって、
前記オフセット量変更部は、
前記ハンドを前記動作機構によって上下方向および左右方向のうち少なくともいずれか一方に動作させた際に前記反射型センサによって検出する前記基板の実際のたわみ量に基づいて前記オフセット量を変更する、
請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項4】
前記オフセット量変更部は、
前記第1検出部によって検出した前記基板の厚みから推定する前記基板の推定たわみ量に基づいて前記オフセット量を変更する、
請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記基板の種別ごとに、少なくとも前記基板の厚みと前記基板のたわみ量との関係性を定義した基板情報を予め記憶し、
前記オフセット量変更部は、
前記基板情報に基づいて前記推定たわみ量を推定する、
請求項4に記載の基板搬送装置。
【請求項6】
前記オフセット量変更部は、
前記第1検出部を用いた前記基板の実際のたわみ量と、前記推定たわみ量とのうち、大きい方の値に基づいて前記オフセット量を変更する、
請求項5に記載の基板搬送装置。
【請求項7】
前記オフセット量変更部は、
前記ハンドが搬出入する対象基板の直上にある直上基板のたわみ量、または、前記対象基板の直下にある直下基板のたわみ量の少なくともいずれかに基づいて、前記オフセット量を変更する、
請求項2に記載の基板搬送装置。
【請求項8】
前記オフセット量変更部は、
前記ハンドを上昇または下降させる場合の当該ハンドのたわみ量または振動幅の少なくともいずれかを含むハンド特性値に基づいて、前記オフセット量を変更する、
請求項2に記載の基板搬送装置。
【請求項9】
前記オフセット量変更部は、
前記ハンドを上昇または下降させる場合の当該ハンドのたわみ量または振動幅の少なくともいずれかを含むハンド特性値に基づいて、前記オフセット量を変更する、
請求項7に記載の基板搬送装置。
【請求項10】
前記オフセット量変更部は、
前記ハンドによって前記対象基板を当該対象基板の前記基板支持高さへ搬入する際、前記対象基板の前記基板支持高さと前記直上基板の前記基板支持高さとのクリアランスに対し前記ハンドが進入可能となるように、前記直上基板の実際のたわみ量と、前記ハンドの厚みと、前記ハンド特性値と、に基づいて前記上方オフセット量を変更する、
請求項9に記載の基板搬送装置。
【請求項11】
前記オフセット量変更部は、
前記ハンドによって前記対象基板を当該対象基板の前記基板支持高さから搬出する際、前記対象基板の前記基板支持高さと前記直下基板の前記基板支持高さとのクリアランスに対し前記ハンドが進入可能となるように、前記対象基板の実際のたわみ量と、前記ハンドの厚みと、前記ハンド特性値と、に基づいて前記下方オフセット量を変更する、
請求項9に記載の基板搬送装置。
【請求項12】
前記カセットは、
各段について当該カセットの正面から視て複数の箇所でそれぞれ前記基板を支持する複数の支持部を備え、
前記オフセット量変更部は、
前記直上基板の実際のたわみ量が当該直上基板を支持する前記支持部の厚みよりも小さい場合、当該直上基板の実際のたわみ量に代えて前記支持部の厚みに基づいて前記上方オフセット量を変更する、
請求項10に記載の基板搬送装置。
【請求項13】
前記コントローラは、
前記基板の厚みに応じて、前記ハンドによる前記基板の搬送速度を変更する搬送速度変更部を備える、
請求項1~12のいずれか一つに記載の基板搬送装置。
【請求項14】
基板を搬送するハンドと、前記ハンドを動作させる動作機構と、前記動作機構を制御するコントローラと、前記基板を検出可能な第1検出部と、を備え、前記基板を上下方向に多段に収容するカセットに対し、前記基板を搬出入する基板搬送装置が実行する基板搬送方法であって、
前記第1検出部によって検出した前記基板の厚みまたはたわみ量に応じて、前記ハンドが前記基板を前記カセットに対して搬出入する際の、前記カセットの基板支持高さから前記ハンドを上下動作させるオフセット量を変更すること、
を含む、基板搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、基板搬送装置および基板搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウェハやパネルといった基板を搬送するハンドを有するロボットを用いて、基板を収容するカセットとの間で基板の搬出入を行う基板搬送装置が知られている。
【0003】
たとえば、ロボットと、カセットに収容済みのウェハとが接触する可能性の有無を、ウェハ搬送アームやカセットのセンサによって検出する技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来技術には、カセットに収容済みの基板が、積層処理等の各種の基板処理を経たりたわみが生じたりすることによって状態が変化した場合に、収容済みの基板と、ロボットや新たに搬入する基板とが接触する可能性がある。
【0006】
実施形態の一態様は、基板の状態が変化した場合であっても接触による基板の破損を防止することができる基板搬送装置および基板搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る基板搬送装置は、基板を上下方向に多段に収容するカセットに対し、前記基板を搬出入する基板搬送装置であって、前記基板を搬送するハンドと、前記ハンドを動作させる動作機構と、前記動作機構を制御するコントローラと、前記基板を検出可能な第1検出部とを備える。前記コントローラは、前記第1検出部によって検出した前記基板の厚みまたはたわみ量に応じて、前記ハンドが前記基板を前記カセットに対して搬出入する際の、前記カセットの基板支持高さから前記ハンドを上下動作させるオフセット量を変更するオフセット量変更部を備える。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様によれば、基板の状態が変化した場合であっても接触による基板の破損を防止することができる基板搬送装置および基板搬送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、基板搬送装置の概要を示す上面模式図である。
【
図2】
図2は、搬入時におけるオフセット量の説明図である。
【
図3】
図3は、搬出時におけるオフセット量の説明図である。
【
図7】
図7は、上下方向のマッピング動作の説明図である。
【
図8】
図8は、左右方向のマッピング動作の説明図である。
【
図11】
図11は、オフセット変更処理の説明図(その1)である。
【
図12】
図12は、オフセット変更処理の説明図(その2)である。
【
図13】
図13は、搬入処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、搬出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する基板搬送装置および基板搬送方法を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
また、以下に示す実施形態では、「鉛直」、「正面」、「平行」、「中間」といった表現を用いる場合があるが、厳密にこれらの状態を満たすことを要しない。すなわち、上記した各表現は、製造精度、設置精度、処理精度、検出精度などのずれを許容するものとする。
【0012】
(基板搬送装置1の概要)
まず、実施形態に係る基板搬送装置1の概要について、
図1を用いて説明する。
図1は、基板搬送装置1の概要を示す上面模式図である。なお、
図1には、説明を分かりやすくする観点から、鉛直上向きを正方向とするZ軸、基板500を載置するカセット200の正面に沿う左右方向に平行なX軸、カセット200の奥行き方向に平行なY軸からなる3次元の直交座標系を図示している。この直交座標系は、以下の説明で用いる他の図面においても示す場合がある。
【0013】
ここで、カセット200の正面とは、カセット200の側面のうち、基板500を搬送するハンド13を挿入可能な開口を有する面のことを指す。また、カセット200の奥行き方向とは、基板500の搬出入のために、カセット200の正面からハンド13を進入または退避させる方向のことを指す。
【0014】
カセット200は、ハンド13の挿入向き(Y軸方向)に延伸する複数の支持部を有する(カセット200内に示した破線参照)。なお、カセット200の構成例については、
図5および
図6を用いて後述する。
【0015】
また、
図1には、カセット200への搬入対象である対象基板500
nが、基板支持高さ(h
n)のスロットへ搬入される際の様子を、カセット200の正面側(Y軸負方向側)から視た正面模式図としてあわせて示している(ステップSt1参照)。
【0016】
なお、以下では、この正面模式図に示すように、搬出入の対象となる基板500を適宜「対象基板500n」(nは2以上の自然数)と言う。対象基板500nは、カセット200内で基板支持高さ(hn)のスロットに支持されるものとする。また、これに応じ、カセット200内で対象基板500nの直上段のスロット、すなわち基板支持高さ(hn+1)のスロットに収容されている基板500を適宜「直上基板500n+1」と言う。同様に、対象基板500nの直下段のスロット、すなわち基板支持高さ(hn-1)のスロットに収容されている基板500を適宜「直下基板500n-1」と言う。これらを区別する必要がない場合は、単に「基板500」と言う。
【0017】
この正面模式図は、基板500を波打つように描くことで、基板500がたわんでいる様子を模式的に表している。なお、後に示す
図1以外の他の図面でも、同様に基板500を図示する場合がある。また、図中の黒い丸印は、基板500を下方から支持する前述の支持部に相当する。
【0018】
また、本実施形態では、基板500の載置場所として、基板500を多段に収容するカセット200を主な例に挙げるが、基板500の載置場所は、基板500の向きを整えるアライナや、基板500へ各種の基板処理を施す各種の処理装置であってもよい。また、本実施形態では、基板500として、外形が矩形であるガラスエポキシのような樹脂材料の基板やガラス基板などのパネルを示すが、基板500は、外形が円形であるウェハや、任意の形状や任意の材料の薄板であってもよい。
【0019】
図1に示すように、基板搬送装置1は、ロボット10と、ロボット10の動作を制御するコントローラ20とを備える。ロボット10は、基板500を搬送するハンド13と、ハンド13を動作させる動作機構とを備える。
【0020】
また、ハンド13は、カセット200やカセット200内の基板500といった対象物を検出するセンサS(センサS
1およびセンサS
2)を備える。センサSは、たとえば反射型レーザセンサである。センサSは、
図1に示すカセット200の正面からの所定の検出可能距離Dにおいて、カセット200がある前方(Y軸方向)へ走査線o1,o2を照射する。また、センサSは、この走査線o1,o2がカセット200やカセット200内の基板500へ反射して戻ってくる反射線を検出することによって対象物の有無や位置などを検出する。
【0021】
なお、
図1には、先端側が2つに分岐したハンド13の各分岐部分にそれぞれセンサSが設けられた場合(センサSの個数が2つである場合)を示したが、センサSの個数は1つであってもよい。また、ハンド13の先端側が3つ以上に分岐する場合には、各分岐部分にそれぞれセンサSを設けることとしてもよい。つまり、分岐部の数と同数のセンサSをハンド13に設けることとしてもよい。
【0022】
コントローラ20は、基板500の載置位置(XY座標)における基板支持高さ(Z座標)を含む教示情報を記憶する。また、コントローラ20は、かかる基板支持高さでの基板500の搬出入に際し、ハンド13やハンド13に保持された基板500がカセット200内の基板500へ接触することなくハンド13をカセット200へ進入できるか否かあるいは退避できるか否かを判定するためのマッピング処理を行う。
【0023】
マッピング処理では、コントローラ20は、ロボット10に所定のマッピング動作を行わせ、センサSによってカセット200内の各スロットにおける基板500の有無や、実際の厚みや、実際のたわみ量を検出する。マッピング動作の具体例については、
図7および
図8を用いた説明で後述する。
【0024】
そのうえで、コントローラ20は、マッピング処理によって取得した基板500の厚みまたはたわみ量に応じて基板支持高さ(h)からのオフセット量を変更する(ステップSt1)。
【0025】
具体的には、ステップSt1の正面模式図に示すように、対象基板500nを基板支持高さ(hn)へ搬入する場合、コントローラ20はまず、対象基板500nを保持したハンド13を基板支持高さ(hn+1)と基板支持高さ(hn)とのクリアランスCL1へ進入させる。このとき、コントローラ20は、たとえば進入予定高さz1でハンド13を進入させる。進入予定高さz1は、基板支持高さ(hn)からの上方オフセット量UOから算出される。
【0026】
コントローラ20は、搬送する基板500の種別ごとに、少なくとも基板500の厚みと基板500のたわみ量との関係性を定義した基板情報を予め記憶しており、上方オフセット量UOの規定値は、たとえばこの基板情報に基づいて算出される。
【0027】
また、コントローラ20は、クリアランスCL1への進入後、ハンド13を下降させてハンド13に対象基板500nを基板支持高さ(hn)のスロットへ載置させる。載置後、コントローラ20は、ハンド13を基板支持高さ(hn)と基板支持高さ(hn-1)とのクリアランスCL2へ下降させる。
【0028】
このとき、コントローラ20は、たとえば退避予定高さz2までハンド13を下降させる。退避予定高さz2は、基板支持高さ(hn)からの下方オフセット量DOから算出される。下方オフセット量DOの規定値は、上方オフセット量UOと同様に、たとえば上記した基板情報に基づいて算出される。そして、コントローラ20は、退避予定高さz2までハンド13を下降させた後、ハンド13をカセット200から退避させる。
【0029】
ただし、上方オフセット量UOや下方オフセット量DOが固定値のままだと、カセット200に収容済みの基板500が、各種の基板処理を経て厚みtが変化していたり、たわみ量dが大きくなっていたりした場合に、ハンド13を進入予定高さz1で進入させたり、退避予定高さz2まで下降させたりできなくなるおそれがある。
【0030】
そこで、実施形態に係る基板搬送方法では、コントローラ20が、マッピング処理によって取得した基板500の厚みまたはたわみ量に応じて基板支持高さ(h)からのオフセット量を変更する。
【0031】
図2は、搬入時におけるオフセット量の説明図である。また、
図3は、搬出時におけるオフセット量の説明図である。
【0032】
オフセット量について整理すると、まず
図2に示すように、カセット200への対象基板500
nの搬入時においては、オフセット量は、基板支持高さ(h
n)へのハンド13の下降量である上方オフセット量UO(図中の矢印a2参照)と、基板支持高さ(h
n)からのハンド13の下降量である下方オフセット量DO(図中の矢印a3参照)である。
【0033】
この搬入時においては、コントローラ20は、基板500の厚みまたはたわみ量に応じて基板支持高さ(hn)からの上方オフセット量UOまたは下方オフセット量DOを変更し、変更した上方オフセット量UOによってクリアランスCL1における進入予定高さz1を定める。また、変更した下方オフセット量DOによってクリアランスCL2における退避予定高さz2を定める。
【0034】
また、
図3に示すように、カセット200からの対象基板500
nの搬出時においては、オフセット量は、基板支持高さ(h
n)へのハンド13の上昇量である下方オフセット量DO(図中の矢印a4参照)と、基板支持高さ(h
n)からのハンド13の上昇量である上方オフセット量UO(図中の矢印a5参照)である。
【0035】
この搬出時においては、コントローラ20は、基板500の厚みまたはたわみ量に応じて基板支持高さ(hn)からの下方オフセット量DOまたは上方オフセット量UOを変更し、変更した下方オフセット量DOによってクリアランスCL2における進入予定高さz1を定める。また、変更した上方オフセット量UOによってクリアランスCL1における退避予定高さz2を定める。
【0036】
なお、コントローラ20は、マッピング処理によって取得した基板500の実際の厚みまたは実際のたわみ量に限らず、たとえば予め設定された基板500の種別ごとの厚みまたはたわみ量、ハンド13の厚み、ハンド13のたわみ量、ハンド13の振動幅、上記した支持部の厚みなどをさらに加味してオフセット量を変更することができる。この点については、
図11および
図12を用いた説明で後述する。
【0037】
このように、実施形態に係る基板搬送装置1は、センサSによって検出した基板500の厚みまたはたわみ量に応じて、ハンド13が基板500をカセット200に対して搬出入する際の、カセット200の基板支持高さ(h)からハンド13を上下動作させるオフセット量を変更する。
【0038】
したがって、実施形態に係る基板搬送装置1によれば、基板500の状態が変化した場合であっても接触による基板500の破損を防止することができる。
【0039】
(ロボット10の構成例)
次に、
図1に示したロボット10の構成例について、
図4を用いて説明する。
図4は、ロボット10の構成例を示す図である。なお、
図4は、ロボット10を斜め上方から視た斜視模式図に相当する。
【0040】
図4に示すように、ロボット10は、たとえば、水平多関節型のスカラ型アームと、昇降機構とを有する水平多関節ロボットである。ロボット10は、本体部10aと、昇降部10bと、第1アーム11と、第2アーム12と、ハンド13とを備える。本体部10aは、たとえば、基板500の搬送室の床面などに固定され、昇降部10bを昇降させる昇降機構を内蔵する。
【0041】
昇降部10bは、昇降軸A0に沿って昇降するとともに、第1アーム11の基端側を第1軸A1まわりに回転可能に支持する。なお、昇降部10b自体を第1軸A1まわりに回転させることとしてもよい。また、第1軸A1を、昇降部10bの上面におけるY軸負方向に寄せて配置することとしてもよい。第1軸A1を同図のY軸負方向に寄せて配置することで、第1アーム11を長くすることができる。
【0042】
第1アーム11は、先端側において第2アーム12の基端側を第2軸A2まわりに回転可能に支持する。第2アーム12は、先端側においてハンド13の基端側を第3軸A3まわりに回転可能に支持する。
【0043】
このように、ロボット10は、第1アーム11、第2アーム12およびハンド13の3リンクを含んだ水平多関節ロボットである。これにより、ロボット10は、基板500を水平方向に自在に搬送することができる。
【0044】
また、ロボット10は、上記したように、昇降部10bと、昇降部10bを昇降させる本体部10aとを有している。これにより、カセット200へ多段に収容される基板500のそれぞれに対してアクセスしたり、ハンド13を下降させる動作によってカセット200に収容された各基板500の有無やたわみ量を取得したりすることができる。なお、本体部10a、昇降部10b、第1アーム11および第2アーム12は、ハンド13を水平方向と上下方向に動作させる「動作機構」の一例に相当する。
【0045】
ハンド13は、第1フォーク部13aと、第2フォーク部13bと、基部13cとを備える。第1フォーク部13aおよび第2フォーク部13bは、基部13cから分岐して間隔を空けて対向するように延伸する。
【0046】
この第1フォーク部13aおよび第2フォーク部13bは、基板500を搬送する際、基板500を下方から支持する。なお、第1フォーク部13aおよび第2フォーク部13bは、たとえば接触吸着方式や非接触吸着方式、把持方式等による図示略の保持機構を有しており、この保持機構によって基板500を保持しつつ支持する。
【0047】
また、
図4に示すように、第1フォーク部13aおよび第2フォーク部13bにおける上面の先端側には、それぞれセンサS
1、センサS
2が設けられる。
【0048】
(カセット200の構成例)
次に、
図1に示したカセット200の構成例について、
図5および
図6を用いて説明する。
図5は、カセット200の正面模式図である。また、
図6は、カセット200の上面模式図である。なお、
図6には、カセット200における基板500の受け渡し位置にあるハンド13を二点鎖線で示している。
【0049】
図5に示すように、カセット200の正面は開口しており、カセット200の内部における天面201と底面202との間には、基板500をそれぞれ収容可能なmax段のスロットを有する。maxは2以上の自然数である。各スロットには、カセット200の奥行きに沿う向き(Y軸方向)にそれぞれ延伸する第1支持部211、第2支持部212および第3支持部213が設けられる。
【0050】
ここで、各スロットは、基板500を基板支持高さ(h)でそれぞれ支持する。底面202側から数えて1段目では、基板500は基板支持高さ(h1)で支持される。2段目では、基板500は基板支持高さ(h2)で支持される。max-1段目では、基板500は基板支持高さ(hmax-1)で支持される。max段目では、基板500は基板支持高さ(hmax)で支持される。また、スロット間のピッチ(P)は等間隔であるとする。
【0051】
第1支持部211および第2支持部212は、カセット200の内部における側面205に設けられる。また、第3支持部213は、カセット200の左右方向(X軸方向)について、第1支持部211および第2支持部212の中間位置に設けられる。すなわち、カセット200は、正面視において基板500を3箇所で支持する。なお、
図5では、第3支持部213が1つである場合を示したが、たとえば、第3支持部213を各支持部の間隔が等間隔となるように2つ以上設けることとしてもよい。
【0052】
ここで、
図6に示すように、第3支持部213は、カセット200の背面203から正面204へ向けて延伸する棒状(バー状)の部材であり、第1支持部211および第2支持部212の最前端よりも、最前端がカセット200の背面203寄りにある。つまり、第3支持部213の奥行き方向(Y軸方向)の延伸長さは、第1支持部211および第2支持部212の延伸長さよりも短い。
【0053】
このように、第3支持部213の最前端が短いと、第3支持部213によって支持される基板500の正面側が前垂れする可能性があるが、センサSは、かかる前垂れを含めた基板500のたわみ量を検出する。
【0054】
また、
図6に示したように、ハンド13は、カセット200における第1支持部211と第3支持部213との間に挿入可能な第1フォーク部13aと、第2支持部212と第3支持部213との間に挿入可能な第2フォーク部13bとを備える。なお、上記したように、第3支持部213を2つ以上設ける場合には、各支持部の間にそれぞれ挿入可能な数の延伸部をハンド13に設けることとしてもよい。
【0055】
このように、カセット200は、カセット200の正面204から視て基板500の両端をそれぞれ支持する第1支持部211および第2支持部212を備える。また、カセット200は、第1支持部211および第2支持部212の中間位置で基板500を支持する第3支持部213を備える。
【0056】
また、ハンド13は、カセット200における第1支持部211と第3支持部213との間に挿入可能な第1フォーク部13aと、第2支持部212と第3支持部213との間に挿入可能な第2フォーク部13bとを少なくとも備える。そして、センサS(センサS1およびセンサS2)は、ハンド13における第1フォーク部13aおよび第2フォーク部13bの先端側にそれぞれ設けられる。
【0057】
(上下方向のマッピング動作の説明)
次に、基板500の厚みおよびたわみ量を検出するためのマッピング動作のうち、上下方向のマッピング動作について、
図7を用いて説明する。
図7は、上下方向のマッピング動作の説明図である。
【0058】
上下方向のマッピング動作では、コントローラ20(
図1参照)は、
図7に示すように、カセット200に対し、センサSの検出可能距離Dまでハンド13を近づけるとともに、ハンド13をカセット200の正面204の上方へ位置づける。
【0059】
そして、コントローラ20は、ハンド13を下降させる。このとき、コントローラ20は、ハンド13をZ軸方向に沿って移動させ(図中の矢印a6参照)、センサSに軌跡VSに沿った垂直走査を行わせる。また、コントローラ20は、この垂直走査によるセンサSの走査範囲がたとえばカセット200の底面202へ到達するまでハンド13を移動させる。なお、必ずしも底面202へ到達するまでハンド13を移動させる必要はない。たとえば、後述する左右方向のマッピング動作との組み合わせにより、この底面202へ到達するまでのハンド13の移動は不要となりうる。
【0060】
そして、コントローラ20は、センサSの走査結果に基づき、カセット200の各スロットにおける基板500の有無を検出して記録する。
【0061】
また、コントローラ20は、センサSの走査結果に基づき、基板500が存在する各スロットにおける各基板500の厚みを検出して記録する。
【0062】
また、コントローラ20は、センサSの走査結果に基づき、基板500が存在する各スロットにおける各基板500のたわみ量を検出して記録する。たわみ量は、各基板支持高さ(h)と各基板500の最下端位置との差分として検出することができる。軌跡VS1上と軌跡VS2上とでたわみ量が異なる場合、大きい方の値を該当する基板500のたわみ量として検出する。
【0063】
なお、
図7では、ハンド13をカセット200の正面204の上方から下降させる例を挙げたが、ハンド13を正面204の下方から上昇させることによってセンサSに軌跡VSに沿った垂直走査を行わせるようにしてもよい。
【0064】
(左右方向のマッピング動作の説明)
次に、基板500の厚みおよびたわみ量を検出するためのマッピング動作のうち、左右方向のマッピング動作について、
図8を用いて説明する。
図8は、左右方向のマッピング動作の説明図である。
【0065】
左右方向のマッピング動作では、コントローラ20は、
図8に示すように、カセット200に対し、センサSの検出可能距離Dまでハンド13を近づけるとともに、各スロットにつき、ハンド13をたとえば各スロットの基板支持高さ(h)へ合わせる。
【0066】
そして、コントローラ20は、ハンド13を水平移動させ(図中の矢印a7参照)、センサSに軌跡HSに沿った水平走査を行わせる。このとき、コントローラ20は、各スロットにつき、この水平走査をたとえば各スロットの基板支持高さ(h)から所定の走査範囲分(図中の塗りつぶし部分参照)繰り返すよう、ハンド13を適宜下降させつつ水平移動させる(図中の軌跡HSm~軌跡HSm+2(mは1以上の自然数)参照)。
【0067】
また、コントローラ20は、この水平走査によるセンサSの走査範囲がたとえばカセット200の底面202へ到達するまでハンド13を移動させる。なお、この水平走査によるセンサSの走査範囲が、必ずしも底面202へ到達するまでハンド13を移動させる必要はない。たとえば、センサSが基板500を検出しなくなればたわみ量は検出完了となる。クリアランスについては、たとえば後述する記憶部21に記憶されるカセット200の外形等に関する情報から判断可能である。
【0068】
そして、コントローラ20は、センサSの走査結果に基づき、カセット200の各スロットにおける基板500の有無を検出して記録する。
【0069】
また、コントローラ20は、センサSの走査結果に基づき、基板500が存在する各スロットにおける各基板500の厚みを検出して記録する。
【0070】
また、コントローラ20は、センサSの走査結果に基づき、基板500が存在する各スロットにおける各基板500のたわみ量を検出して記録する。たわみ量については、上下方向のマッピング動作の場合と同様に検出することができる。
【0071】
なお、マッピング動作は、
図7に示した上下方向についてのみ行われてもよいし、
図8に示した左右方向についてのみ行われてもよいし、双方を組み合わせて行うようにしてもよい。
【0072】
(コントローラ20の構成例)
次に、
図1に示した基板搬送装置1の構成について
図9を用いて説明する。
図9は、基板搬送装置1のブロック図である。上記したように、基板搬送装置1は、ロボット10と、ロボット10の動作を制御するコントローラ20とを備える。なお、ロボット10の構成例については
図4を用いて既に説明したため、ここでは、コントローラ20の構成例について主に説明することとする。
【0073】
図9に示すように、コントローラ20は、記憶部21と、制御部22とを備える。記憶部21は、たとえば、RAM(Random Access Memory)やHDD(Hard Disk Drive)に対応する。記憶部21は、教示情報21aと、基板情報21bとを記憶する。
【0074】
教示情報21aは、ロボット10へ動作を教示するティーチング段階で生成され、ハンド13の移動軌跡をはじめとするロボット10の動作を規定する「ジョブ」を含んだ情報である。なお、有線や無線のネットワークで接続された他のコンピュータで生成された教示情報21aを記憶部21に記憶させることとしてもよい。
【0075】
また、教示情報21aは、搬送する基板500の種別を特定する情報や、カセット200の外形に関する情報、このカセット200における教示位置に関する情報(たとえば、各基板500の載置位置(XY座標)における基板支持高さ(Z座標)など)等を含んでいてもよい。
【0076】
基板情報21bは既に述べた、基板500の種別ごとに、基板500の厚みと基板500のたわみ量との関係性を定義した情報である。
図10は、基板情報21bの説明図である。
【0077】
図10に示すように、基板情報21bは、基板500の「種別」ごとに、少なくとも基板500の「厚み」と「たわみ量」との関係性を定義したテーブルである。「たわみ量」は、たとえば基板500が「カセット」で支持されている場合や、「ハンド」で支持されている場合などの各たわみ量を定義することができる。
【0078】
「厚み」は、たとえば基板500の厚みに関するカタログ値に基づいて定義される。「たわみ量」は、たとえば基板500のたわみに関するカタログ値や、実験等によって得られた測定値などに基づいて定義される。
【0079】
図9の説明に戻る。制御部22は、動作制御部22aと、オフセット量変更部22bと、検出部22cと、搬送速度変更部22dとを備える。また、コントローラ20は、ロボット10に接続される。
【0080】
ここで、コントローラ20は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM、HDD、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0081】
コンピュータのCPUは、たとえば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部22の動作制御部22a、オフセット量変更部22b、検出部22cおよび搬送速度変更部22dとして機能する。また、制御部22の動作制御部22a、オフセット量変更部22b、検出部22cおよび搬送速度変更部22dの少なくともいずれか一つまたは全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0082】
なお、コントローラ20は、有線や無線のネットワークで接続された他のコンピュータや可搬型記録媒体を介して上記したプログラムや各種情報を取得することとしてもよい。
【0083】
動作制御部22aは、教示情報21a、オフセット量変更部22bによって変更されたオフセット量、搬送速度変更部22dによって変更された搬送速度等に基づいてロボット10の動作制御を行う。
【0084】
具体的には、動作制御部22aは、記憶部21に記憶された教示情報21aに基づいてロボット10の各軸に対応するアクチュエータに指示することで、ロボット10にマッピング動作を行わせたり、基板500を搬送する動作を行わせたりする。また、動作制御部22aは、アクチュエータにおけるエンコーダ値を用いたフィードバック制御などを行うことによってロボット10の動作精度を向上させる。
【0085】
また、動作制御部22aは、オフセット量変更部22bによって変更されたオフセット量に基づいてハンド13をカセット200へ進入させたり、カセット200から退避させたりする。また、動作制御部22aは、搬送速度変更部22dによって変更された搬送速度でハンド13を動作させる。
【0086】
オフセット量変更部22bは、基板情報21b、検出部22cによる検出結果等に基づいてオフセット量を変更する。オフセット量変更部22bは、マッピング動作が行われる前に、たとえば基板情報21bに基づいてオフセット量の規定値を算出する。
【0087】
また、オフセット量変更部22bは、検出部22cによって検出された各基板500の実際の厚みtや実際のたわみ量d等に基づいて、オフセット量を変更する。
【0088】
たとえば、オフセット量変更部22bは、マッピング動作が行われることにより、センサSによって検出した基板500の実際の厚みtから基板500のたわみ量を推定し、この推定した推定たわみ量に基づいてオフセット量を変更する。
【0089】
また、たとえば、オフセット量変更部22bは、検出部22cによって検出された基板500の実際の厚みtを基板情報21bに照らし、対応するたわみ量を推定たわみ量として推定する。
【0090】
また、たとえば、オフセット量変更部22bは、マッピング動作が行われることにより、センサSによって基板500の実際のたわみ量dが検出された場合に、この実際のたわみ量dと推定たわみ量とのうち、大きい方の値に基づいてオフセット量を変更する。
【0091】
また、たとえば、オフセット量変更部22bは、マッピング動作が行われることにより検出される、直上基板500n+1の実際のたわみ量、または、直下基板500n-1の実際のたわみ量の少なくともいずれかに基づいて、オフセット量を変更する。
【0092】
また、たとえば、オフセット量変更部22bは、ハンド13を上昇または下降させる場合のハンド13のたわみ量または振動幅の少なくともいずれかを含むハンド特性値に基づいて、オフセット量を変更する。
【0093】
検出部22cは、ロボット10がマッピング動作を行った際のセンサSの走査結果に基づいて、カセット200における各基板500の実際の厚みtや実際のたわみ量dを検出する。
【0094】
オフセット変更処理について、
図11および
図12を用いて具体的に説明する。
図11および
図12は、オフセット変更処理の説明図(その1)および(その2)である。なお、
図11は、搬入の際の進入時または搬出の際の退避時を示すものとなっている。一方、
図12は、搬入の際の退避時または搬出の際の進入時を示すものとなっている。
【0095】
図11では、搬入の場合を例に挙げて説明する。対象基板500
nをカセット200の基板支持高さ(h
n)へ搬入する場合、
図11に示すように、対象基板500
nをハンド13が支持した状態でのクリアランスCL1への進入が想定される。
【0096】
この場合、オフセット量変更部22bは、検出部22cによって検出された直上基板500n+1のたわみ量dn+1と、ハンド13の厚みhtと、ハンド特性値avとに基づいて上方オフセット量UOを算出する。ハンド特性値は、ハンド13のたわみ量または振動幅の少なくともいずれかを含む。
【0097】
ここで、ハンド13に支持された対象基板500nのたわみ量をたわみ量hdとする。たわみ量hdは、たとえば基板情報21bから取得される。このとき、クリアランスCL1への進入予定高さz1は、式(基板支持高さ(hn)+上方オフセット量UO+たわみ量hd)によって導かれる。
【0098】
また、第1支持部211、第2支持部212、第3支持部213の各支持部の厚みは、厚みstであるとする。すると、(直上基板500n+1の実際のたわみ量dn+1>支持部の厚みst)のとき、条件((基板支持高さ(hn+1)-(たわみ量dn+1))-基板支持高さ(hn)-基板500の厚みt-上方オフセット量UO-ハンド特性値av>0)を満たすか否かによって、ハンド13のクリアランスCL1への進入の可否を判定することができる。
【0099】
また、(直上基板500n+1のたわみ量dn+1≦支持部の厚みst)のとき、条件(基板支持高さ(hn+1)-基板支持高さ(hn)-支持部の厚みst-基板500の厚みt-上方オフセット量UO-ハンド特性値av>0)を満たすか否かによって、ハンド13のクリアランスCL1への進入の可否を判定することができる。
【0100】
また、条件(上方オフセット量UO-対象基板500nのたわみ量hd-ハンド特性値av>0)を満たすか否かによって、ハンド13のクリアランスCL1への進入の可否を判定することができる。
【0101】
このように、オフセット量変更部22bは、ハンド13によって対象基板500nをこの対象基板500nの基板支持高さ(hn)へ搬入する際、対象基板500nの基板支持高さ(hn)と直上基板500n+1の基板支持高さ(hn+1)とのクリアランスCL1に対しハンド13が進入可能となるように、直上基板500n+1の実際のたわみ量dn+1と、ハンド13の厚みhtと、ハンド特性値avと、に基づいて上方オフセット量UOを変更する。
【0102】
なお、これを搬出の場合について言い換えれば、オフセット量変更部22bは、ハンド13によって対象基板500nをこの対象基板500nの基板支持高さ(hn)から搬出する際、対象基板500nの基板支持高さ(hn)と直上基板500n+1の基板支持高さ(hn+1)とのクリアランスCL1からハンド13が退避可能となるように、直上基板500n+1の実際のたわみ量dn+1と、ハンド13の厚みhtと、ハンド特性値avと、に基づいて上方オフセット量UOを変更する、こととなる。
【0103】
次に、
図12では、この搬出の場合を例に挙げて説明する。対象基板500
nをカセット200の基板支持高さ(h
n)から搬出する場合、
図12に示すように、ハンド13が基板500を支持していない状態でのクリアランスCL2への進入が想定される。
【0104】
この場合、オフセット量変更部22bは、検出部22cによって検出された対象基板500nのたわみ量dnと、ハンド13の厚みhtと、ハンド特性値avとに基づいて下方オフセット量DOを算出する。
【0105】
これに基づき、クリアランスCL2への進入予定高さz1は、式(基板支持高さ(hn)-下方オフセット量DO-対象基板500nの実際のたわみ量dn)によって導かれる。
【0106】
すると、条件((基板支持高さ(hn)-たわみ量dn)-(基板支持高さ(hn-1)-基板500の厚みt)-ハンド13の厚みht-ハンド特性値av>0)を満たすか否かによって、ハンド13のクリアランスCL2への進入の可否を判定することができる。
【0107】
このように、オフセット量変更部22bは、ハンド13によって対象基板500nをこの対象基板500nの基板支持高さ(hn)から搬出する際、対象基板500nの基板支持高さ(hn)と直下基板500n-1の基板支持高さ(hn-1)とのクリアランスCL2に対しハンド13が進入可能となるように、対象基板500nの実際のたわみ量dnと、ハンド13の厚みhtと、ハンド特性値avと、に基づいて下方オフセット量DOを変更する。
【0108】
なお、これを搬入の場合について言い換えれば、オフセット量変更部22bは、ハンド13によって対象基板500nをこの対象基板500nの基板支持高さ(hn)へ搬入する際、対象基板500nの基板支持高さ(hn)と直下基板500n-1の基板支持高さ(hn-1)とのクリアランスCL2からハンド13が退避可能となるように、対象基板500nの実際のたわみ量dnと、ハンド13の厚みhtと、ハンド特性値avと、に基づいて下方オフセット量DOを変更する、こととなる。
【0109】
なお、
図12では、説明の便宜上、基板支持高さ(h
n)のスロットと基板支持高さ(h
n-1)のスロットとのクリアランスCL2を例に挙げたが、下方オフセット量DOの変更に際しては、基板支持高さ(h
n)のスロットに対して必ずしも基板支持高さ(h
n-1)のスロットが考慮すべき対象になるとは限らない。たとえば、基板支持高さ(h
n-1)のスロットに基板500が存在せず、その1段下の基板支持高さ(h
n-2)のスロットに基板500が存在すれば、そちらが考慮すべき対象となる。言い換えれば、下方オフセット量DOの場合、基板支持高さ(h
n)のスロットに対して基板500が存在しているという意味での直下のスロット、すなわち基板支持高さ(h
n-p)(pは1以上の自然数)のスロットが対象となり、「直下基板」は直下基板500
n-pと表せる。また、クリアランスCL2は、基板支持高さ(h
n)のスロットと基板支持高さ(h
n-p)のスロットとのクリアランスとなる。
【0110】
図9の説明に戻る。搬送速度変更部22dは、検出部22cによって検出された各基板500の厚みtやたわみ量dに基づいてハンド13による搬送速度を変更する。搬送速度変更部22dは、たとえば基板500の厚みが所定の閾値よりも小さい場合、一例として搬送速度を遅くする。また、搬送速度変更部22dは、たとえば基板500のたわみ量が所定の閾値よりも大きい場合、一例として搬送速度を遅くする。
【0111】
(処理手順)
次に、基板搬送装置1が実行する搬入処理および搬出処理の各処理手順について、
図13および
図14を用いて説明する。
【0112】
搬入処理から説明する。
図13は、搬入処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、
図13には、カセット200のn段目のスロットへ対象基板500
nを搬入する場合の処理手順を示している。
【0113】
図13に示すように、まずロボット10は、コントローラ20の動作制御部22aの制御に基づき、マッピング動作を実行する(ステップSt101)。そして、動作制御部22aは、ロボット10にアライナ等から今回n段目へ搬入する対象基板500
nを取得させる(ステップSt102)。
【0114】
そして、コントローラ20のオフセット量変更部22bは、ステップSt101のマッピング動作の結果に基づき、n+1段目の直上基板500n+1の厚みまたはたわみ量等に基づいて上方オフセット量UOを変更する(ステップSt103)。
【0115】
このとき、オフセット量変更部22bは、上方オフセット量UOの変更によって、n+1段目とn段目とのクリアランスCL1へハンド13の進入が可であるか否かを判定する(ステップSt104)。
【0116】
クリアランスCL1へハンド13の進入が可であると判定された場合(ステップSt104,Yes)、つづいてオフセット量変更部22bは、対象基板500nの厚みまたはたわみ量等に基づいて下方オフセット量DOを変更する(ステップSt105)。
【0117】
そして、このとき、オフセット量変更部22bは、下方オフセット量DOの変更によって、n段目とn-1段目とのクリアランスCL2からハンド13の退避が可であるか否かを判定する(ステップSt106)。
【0118】
クリアランスCL2からハンド13の退避が可であると判定された場合(ステップSt106,Yes)、動作制御部22aは、ハンド13が、ステップSt103で変更された上方オフセット量UOに基づいてカセット200へ進入し、対象基板500nをn段目へ搬入するようにロボット10を制御する(ステップSt107)。
【0119】
また、動作制御部22aは、ハンド13が、ステップSt105で変更された下方オフセット量DOに基づいてカセット200から退避するようにロボット10を制御する(ステップSt108)。そして、処理を終了する。
【0120】
また、ステップSt104でクリアランスCL1へハンド13の進入が不可であると判定された場合(ステップSt104,No)、あるいは、ステップSt106でクリアランスCL2からハンド13の退避が不可であると判定された場合(ステップSt106,No)、動作制御部22aは、対象基板500nのn段目への搬入は不可であると判定する(ステップSt109)。そして、動作制御部22aは対象基板500nの搬入を中止し(ステップSt110)、処理を終了する。
【0121】
次に、搬出処理について説明する。
図14は、搬出処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、
図14には、カセット200のn段目のスロットから対象基板500
nを搬出する場合の処理手順を示している。
【0122】
図14に示すように、まずロボット10は、コントローラ20の動作制御部22aの制御に基づき、マッピング動作を実行する(ステップSt201)。そして、動作制御部22aは、ハンド13をn段目のスロットへ近づけるようにロボット10を制御する(ステップSt202)。
【0123】
そして、コントローラ20のオフセット量変更部22bは、ステップSt201のマッピング動作の結果に基づき、n段目の対象基板500nの厚みまたはたわみ量等に基づいて下方オフセット量DOを変更する(ステップSt203)。
【0124】
このとき、オフセット量変更部22bは、下方オフセット量DOの変更によって、n段目とn-1段目とのクリアランスCL2へハンド13の進入が可であるか否かを判定する(ステップSt204)。
【0125】
クリアランスCL2へハンド13の進入が可であると判定された場合(ステップSt204,Yes)、つづいてオフセット量変更部22bは、n+1段目の直上基板500n+1の厚みまたはたわみ量等に基づいて上方オフセット量UOを変更する(ステップSt205)。
【0126】
そして、このとき、オフセット量変更部22bは、上方オフセット量UOの変更によって、n+1段目とn段目とのクリアランスCL1からハンド13の退避が可であるか否かを判定する(ステップSt206)。
【0127】
クリアランスCL1からハンド13の退避が可であると判定された場合(ステップSt206,Yes)、動作制御部22aは、ハンド13が、ステップSt203で変更された下方オフセット量DOに基づいてカセット200へ進入し、対象基板500nをn段目から取得するようにロボット10を制御する(ステップSt207)。
【0128】
また、動作制御部22aは、ハンド13が、ステップSt105で変更された上方オフセット量UOに基づいてカセット200から退避するようにロボット10を制御する(ステップSt208)。そして、処理を終了する。
【0129】
また、ステップSt204でクリアランスCL2へハンド13の進入が不可であると判定された場合(ステップSt204,No)、あるいは、ステップSt206でクリアランスCL1からハンド13の退避が不可であると判定された場合(ステップSt206,No)、動作制御部22aは、対象基板500nのn段目からの搬出は不可であると判定する(ステップSt209)。そして、動作制御部22aは対象基板500nの搬出を中止し(ステップSt210)、処理を終了する。
【0130】
なお、
図13および
図14では、ステップSt101,St201に示したように、各スロットにアクセスする直前にマッピング動作を実行する例を挙げたが、マッピング動作は必ずしもアクセスごとの直前に実行する必要はない。たとえば、まとめて最初に1回実行し、その1回分の結果に基づいて各スロットにアクセスすることも可能である。
【0131】
(まとめ)
上述してきたように、実施形態の一態様に係る基板搬送装置1は、基板500を上下方向に多段に収容するカセット200に対し、基板500を搬出入する基板搬送装置であって、基板500を搬送するハンド13と、ハンド13を動作させる動作機構と、上記動作機構を制御するコントローラ20と、基板500を検出可能なセンサS(「第1検出部」の一例に相当)と、を備える。コントローラ20は、センサSによって検出した基板500の厚みまたはたわみ量に応じて、ハンド13が基板500をカセット200に対して搬出入する際の、カセット200の基板支持高さ(h)からハンド13を上下動作させるオフセット量を変更するオフセット量変更部22bを備える。
【0132】
これにより、検出した基板500の厚みまたはたわみ量に応じてオフセット量を変更することで、基板500の状態が変化した場合であっても接触による基板500の破損を防止することができる。
【0133】
また、上記オフセット量は、カセット200からの基板500の搬出時において、基板支持高さ(h)へのハンド13の上昇量である下方オフセット量DOと、基板支持高さ(h)からのハンド13の上昇量である上方オフセット量UOである。また、上記オフセット量は、カセット200への基板500の搬入時において、基板支持高さ(h)へのハンド13の下降量である上方オフセット量UOと、基板支持高さ(h)からのハンド13の下降量である下方オフセット量DOである。
【0134】
これにより、下方オフセットおよび上方オフセットのそれぞれの場合について、各オフセット量を変更することができる。
【0135】
また、センサSは、ハンド13に設けられた反射型センサであって、オフセット量変更部22bは、ハンド13を上記動作機構によって上下方向および左右方向のうちの少なくともいずれか一方に動作させた際に上記反射型センサによって検出する基板500の実際のたわみ量に基づいて上記オフセット量を変更する。
【0136】
これにより、上下方向および/または左右方向から検出した実際のたわみ量に応じて接触による基板500の破損を防止することができる。
【0137】
また、オフセット量変更部22bは、センサSによって検出した基板500の厚みから推定する基板500の推定たわみ量に基づいて上記オフセット量を変更する。
【0138】
これにより、実際の厚みから推定する推定たわみ量に基づいて接触による基板500の破損を防止することができる。
【0139】
また、コントローラ20は、基板500の種別ごとに、少なくとも基板500の厚みと基板500のたわみ量との関係性を定義した基板情報21bを予め記憶し、オフセット量変更部22bは、基板情報21bに基づいて上記推定たわみ量を推定する。
【0140】
これにより、実験などに基づくテーブルデータから推定する推定たわみ量に基づいて接触による基板500の破損を防止することができる。
【0141】
また、オフセット量変更部22bは、センサSを用いた基板500の実際のたわみ量と、上記推定たわみ量とのうち、大きい方の値に基づいて上記オフセット量を変更する。
【0142】
これにより、実験などに基づくテーブルデータと実際の測定値との比較結果に基づいて値が大きい方を採用することで、より安全に基板500を搬送することが可能となる。
【0143】
また、オフセット量変更部22bは、ハンド13が搬出入する対象基板500nの直上にある直上基板500n+1のたわみ量dn+1、または、対象基板500nの直下にある直下基板500n-1のたわみ量dn-1の少なくともいずれかに基づいて、上記オフセット量を変更する。
【0144】
これにより、処理対象段の上下段の状態までも考慮してオフセット量を変更することで、より安全に基板500を搬送することが可能となる。
【0145】
また、オフセット量変更部22bは、ハンド13を上昇または下降させる場合のハンド13のたわみ量hdまたは振動幅の少なくともいずれかを含むハンド特性値avに基づいて、上記オフセット量を変更する。
【0146】
これにより、ハンド13を上昇または下降させる場合のハンド13自体の特性までも考慮してオフセット量を変更することで、より安全に基板500を搬送することが可能となる。
【0147】
また、オフセット量変更部22bは、ハンド13によって対象基板500nをこの対象基板500nの基板支持高さ(hn)へ搬入する際、対象基板500nの基板支持高さ(hn)と直上基板500n+1の基板支持高さ(hn+1)とのクリアランスCL1に対しハンド13が進入可能となるように、直上基板500n+1の実際のたわみ量dn+1と、ハンド13の厚みhtと、ハンド特性値avと、に基づいて上方オフセット量UOを変更する。
【0148】
これにより、上方オフセット量UOについては、処理対象段と直上の段とのクリアランスCL1に対し、直上基板500n+1の実際のたわみ量dn+1、ハンド13の厚みht、ハンド特性値avを考慮してハンド13を進入可能となるように変更することで、より安全に基板500を搬送することが可能となる。
【0149】
また、オフセット量変更部22bは、ハンド13によって対象基板500nをこの対象基板500nの基板支持高さ(hn)から搬出する際、対象基板500nの基板支持高さ(hn)と直下基板500n-1の基板支持高さ(hn-1)とのクリアランスCL2に対しハンド13が進入可能となるように、対象基板500nの実際のたわみ量dnと、ハンド13の厚みhtと、ハンド特性値avと、に基づいて下方オフセット量DOを変更する。
【0150】
これにより、下方オフセット量DOについては、処理対象段と直下の段とのクリアランスCL2に対し、対象基板500nの実際のたわみ量dn、ハンド13の厚みht、ハンド特性値avを考慮してハンド13を進入可能となるように変更することで、より安全に基板500を搬送することが可能となる。
【0151】
また、カセット200は、各段についてカセット200の正面204から視て複数の箇所でそれぞれ基板500を支持する複数の支持部を備え、オフセット量変更部22bは、直上基板500n+1の実際のたわみ量dn+1が直上基板500n+1を支持する上記支持部の厚みstよりも小さい場合、直上基板500n+1の実際のたわみ量dn+1に代えて上記支持部の厚みstに基づいて上方オフセット量UOを変更する。
【0152】
これにより、上方オフセット量UOについてはさらに、直上の段における支持部の厚みstを考慮してハンド13を進入可能となるように変更することで、より安全に基板500を搬送することが可能となる。
【0153】
また、コントローラ20は、基板500の厚みに応じて、ハンド13による基板500の搬送速度を変更する搬送速度変更部22dを備える。
【0154】
これにより、基板500の厚みに応じてオフセット量だけでなく搬送速度を変更することで、より安全に基板500を搬送することが可能となる。
【0155】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0156】
1 基板搬送装置
10 ロボット
10a 本体部
10b 昇降部
11 第1アーム
12 第2アーム
13 ハンド
13a 第1フォーク部
13b 第2フォーク部
13c 基部
20 コントローラ
21 記憶部
21a 教示情報
21b 基板情報
22 制御部
22a 動作制御部
22b オフセット量変更部
22c 検出部
22d 搬送速度変更部
200 カセット
201 天面
202 底面
203 背面
204 正面
205 側面
211 第1支持部
212 第2支持部
213 第3支持部
500 基板
S センサ