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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080239
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】冷菓及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 9/32 20060101AFI20240606BHJP
   A23G 1/32 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
A23G9/32
A23G1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193266
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】307013857
【氏名又は名称】株式会社ロッテ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼松 寛之
(72)【発明者】
【氏名】安藤 晶子
(72)【発明者】
【氏名】小関 彬弘
(72)【発明者】
【氏名】矢内 祥子
(72)【発明者】
【氏名】山本 真実
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB18
4B014GB19
4B014GG06
4B014GG12
4B014GG14
4B014GL06
(57)【要約】
【課題】カカオ原料を含む冷菓(特にココアバターを含む冷菓)の増粘を抑制するための成分、及び前記成分を含む冷菓の提供。
【解決手段】ココアバターを含むカカオ原料と、ショ糖脂肪酸エステルと、カゼイン又はその塩と、を含む、冷菓。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ココアバターを含むカカオ原料と、
ショ糖脂肪酸エステルと、
カゼイン又はその塩と、
を含む、冷菓。
【請求項2】
前記カゼイン又はその塩の量が、前記ショ糖脂肪酸エステルと前記カゼイン又はその塩との合計質量を基準として、50~84質量%である、
請求項1に記載の冷菓。
【請求項3】
前記ショ糖脂肪酸エステルと前記カゼイン又はその塩との合計量が、前記冷菓の質量を基準として、0.64質量%以上である、
請求項1又は2に記載の冷菓。
【請求項4】
前記ココアバターの量が、前記冷菓の質量を基準として、3~22質量%である、
請求項1又は2に記載の冷菓。
【請求項5】
前記ショ糖脂肪酸エステルの親水性親油性バランスが、1~15である、
請求項1又は2に記載の冷菓。
【請求項6】
ココアバターを含むカカオ原料と、
ショ糖脂肪酸エステルと、
カゼイン又はその塩と、
を混合することを含む、冷菓の製造方法。
【請求項7】
前記カゼイン又はその塩の量が、前記ショ糖脂肪酸エステルと前記カゼイン又はその塩との合計質量を基準として、50~84質量%である、
請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ショ糖脂肪酸エステルと前記カゼイン又はその塩との合計量が、前記冷菓の質量を基準として、0.64質量%以上である、
請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ココアバターの量が、前記冷菓の質量を基準として、3~22質量%である、
請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ショ糖脂肪酸エステルの親水性親油性バランスが、1~15である、
請求項6又は7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷菓及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「アイスクリーム類及び氷菓の表示に関する公正競争規約・公正競争規約施行規則」によれば、チョコレートアイスは、「重量百分率でカカオ分を1.5%以上含むこと」が必要とされる。現在、この要件を満たすためにココアパウダーを主に使用することが多く、チョコレート生地を多く配合したチョコレートアイスはあまり流通していない。
【0003】
ココアバターを多く配合させると(例えば3質量%以上)、冷菓の製造工程(特に、冷菓ミックスを低温で長時間保持するエージング工程)において、冷菓の粘度が経時的に上昇し、取り扱い性に問題が生じることがある。
【0004】
このような冷菓の増粘を抑制するために、例えば、特許文献1は、「カカオバター、リン酸塩、ショ糖脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルを含む冷菓であって、該リン酸塩が、メタリン酸塩またはポリリン酸塩である、冷菓。」を開示している。
【0005】
また、特許文献2は、「カカオ油脂分を含有する冷菓において、該冷菓中に、以下の(1)~(3)の要件を満たすショ糖脂肪酸エステルを含有することを特徴とする冷菓;(1)HLB5以上である、(2)構成脂肪酸が飽和脂肪酸70%以上から構成される、(3)モノエステル含量が30%以上である。」を開示している。
【0006】
さらに、特許文献3は、「カゼインナトリウムを重量比で0.5%乃至2.0%含有させて成る低粘稠度の高脂肪アイスクリームミックス及びチョコレートアイスクリームミックス。」を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-301814号公報
【特許文献2】特許第5225912号公報
【特許文献3】特開昭63-287446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、カカオ原料を含む冷菓(特にココアバターを含む冷菓)の増粘を抑制するための成分、及び前記成分を含む冷菓を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等が鋭意検討した結果、ショ糖脂肪酸エステルとカゼイン又はその塩とを組み合わせて使用することにより、カカオ原料を含む冷菓(特にココアバターを含む冷菓)の増粘を抑制できることを見出した。
【0010】
なお、特許文献1~3には、ショ糖脂肪酸エステルとカゼイン又はその塩とを組み合わせて使用することは開示されていない。
【0011】
本発明は以下の実施形態を含む。
[1]
ココアバターを含むカカオ原料と、
ショ糖脂肪酸エステルと、
カゼイン又はその塩と、
を含む、冷菓。
[2]
前記カゼイン又はその塩の量が、前記ショ糖脂肪酸エステルと前記カゼイン又はその塩との合計質量を基準として、50~84質量%である、[1]に記載の冷菓。
[3]
前記ショ糖脂肪酸エステルと前記カゼイン又はその塩との合計量が、前記冷菓の質量を基準として、0.64質量%以上である、[1]又は[2]に記載の冷菓。
[4]
前記ココアバターの量が、前記冷菓の質量を基準として、3~22質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の冷菓。
[5]
前記ショ糖脂肪酸エステルの親水性親油性バランスが、1~15である、[1]~[4]のいずれかに記載の冷菓。
[6]
ココアバターを含むカカオ原料と、
ショ糖脂肪酸エステルと、
カゼイン又はその塩と、
を混合することを含む、冷菓の製造方法。
[7]
前記カゼイン又はその塩の量が、前記ショ糖脂肪酸エステルと前記カゼイン又はその塩との合計質量を基準として、50~84質量%である、[6]に記載の製造方法。
[8]
前記ショ糖脂肪酸エステルと前記カゼイン又はその塩との合計量が、前記冷菓の質量を基準として、0.64質量%以上である、[6]又は[7]に記載の製造方法。
[9]
前記ココアバターの量が、前記冷菓の質量を基準として、3~22質量%である、[6]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]
前記ショ糖脂肪酸エステルの親水性親油性バランスが、1~15である、[6]~[19]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カカオ原料を含む冷菓(特にココアバターを含む冷菓)の増粘を抑制するための成分、及び前記成分を含む冷菓を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、ココアバターの量を変化させた各種冷菓の経時的な粘度変化を示す。
図2図2は、乳化剤の成分を変化させた各種冷菓の経時的な粘度変化を示す。
図3図3は、カゼインナトリウムの割合と冷菓の粘度との関係を示す。
図4図4は、乳化剤の総量と冷菓の粘度との関係を示す。
図5-1】図5-1は、乳化剤の成分を変化させた各種冷菓の経時的な粘度変化を示す。
図5-2】図5-2は、乳化剤の成分を変化させた各種冷菓の経時的な粘度変化を示す。
図6図6は、乳化剤の成分を変化させた各種冷菓の経時的な粘度変化を示す。
図7図7は、ショ糖脂肪酸エステルのHLBを変化させた各種冷菓の経時的な粘度変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0015】
<冷菓>
本発明の一実施形態は、ココアバターを含むカカオ原料と、ショ糖脂肪酸エステルと、カゼイン又はその塩と、を含む、冷菓に関する。
【0016】
本実施形態に係る冷菓は、ココアバターを含むにも関わらず、ショ糖脂肪酸エステルとカゼイン又はその塩との組み合わせを含むことにより、製造過程における冷菓の増粘を抑制することができる。また、好ましくは、本実施形態に係る冷菓は、ショ糖脂肪酸エステルとカゼイン又はその塩との組み合わせを含むことにより、口どけが良く、また、チョコレートの風味に優れている。
【0017】
本明細書における「冷菓」は、アイスクリーム類、氷菓等の冷凍下で保管する菓子であり、プリン等のチルド温度帯で保管する菓子は含まない。
アイスクリーム類には、アイスクリーム、アイスミルク、及びラクトアイスが包含される。本明細書における「アイスクリーム類」、「アイスクリーム」、「アイスミルク」、及び「ラクトアイス」は、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(平成30年8月8日厚生労働省令第106号)における定めに従う。
【0018】
具体的には、アイスクリーム類は、乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであつて、乳固形分3.0%以上を含むもの(発酵乳を除く。)である。
アイスクリームは、乳固形分が15.0%以上であって、乳脂肪分が8.0%以上のものである。
アイスミルクは、乳固形分が10.0%以上であって、乳脂肪分が3.0%以上のもの(アイスクリームを除く。)である。
ラクトアイスは、乳固形分が3.0%以上のもの(アイスクリーム及びアイスミルクを除く。)である。
【0019】
氷菓は、糖液若しくはこれに他の食品を混和した液体を凍結したもの、又は、食用氷を粉砕し、これに糖液若しくは他の食品を混和し再凍結したものであって、凍結状のまま食用に供されるものである。
【0020】
[ショ糖脂肪酸エステル]
本実施形態に係る冷菓は、ショ糖脂肪酸エステルを含む。ショ糖脂肪酸エステルは、後述するカゼイン又はその塩と組み合わせて使用することにより、製造過程における冷菓の増粘を抑制することができる。
【0021】
本明細書における「ショ糖脂肪酸エステル」とは、ショ糖と脂肪酸とがエステル結合している化合物を意味する。
【0022】
ショ糖脂肪酸エステルにおける脂肪酸としては、例えば、炭素数4~30、炭素数6~28、炭素数8~26、炭素数10~24、炭素数12~22、炭素数14~20、又は炭素数16~18の脂肪酸が挙げられる。脂肪酸は、飽和脂肪酸でもよいし、不飽和脂肪酸でもよい。
【0023】
ショ糖脂肪酸エステルの親水性親油性バランス(HLB)は、特に限定されないが、好ましくは1~15であり、より好ましくは8~13であり、更に好ましくは11~13である。HLBが前記範囲のショ糖脂肪酸エステルを使用することにより、増粘抑制効果を更に向上させることができる。HLBは、例えば、ショ糖と結合する脂肪酸の種類及び量を変更することにより調節することができる。
【0024】
HLBは、グリフィン法で求めることができる。具体的には、下記式にしたがってHLBを求めることができる。
HLB値=20×(M/M)
:ショ糖脂肪酸エステルの親水基の分子量
M:ショ糖脂肪酸エステルの全体の分子量
【0025】
ショ糖脂肪酸エステルの量は、冷菓の質量を基準として、好ましくは0.1~2.0質量%であり、より好ましくは0.1~1.0質量%であり、更に好ましくは0.2~0.6質量%である。前記の量でショ糖脂肪酸エステルを使用することにより、増粘抑制効果を更に向上させることができる。
【0026】
[カゼイン又はその塩]
本実施形態に係る冷菓は、カゼイン又はその塩を含む。カゼイン又はその塩は、上述のショ糖脂肪酸エステルと組み合わせて使用することにより、製造過程における冷菓の増粘を抑制することができる。
【0027】
カゼインの塩としては、例えば、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインカルシウム、及びカゼインマグネシウムが挙げられる。
【0028】
カゼイン又はその塩の量は、冷菓の質量を基準として、好ましくは0.3~7.0質量%であり、より好ましくは0.3~1.7質量%であり、更に好ましくは0.6~1.0質量%である。前記の量でカゼイン又はその塩を使用することにより、増粘抑制効果を更に向上させることができる。
【0029】
ショ糖脂肪酸エステルとカゼイン又はその塩との合計量は、冷菓の質量を基準として、好ましくは0.54~9.0質量%であり、より好ましくは0.6~2.0質量%であり、更に好ましくは0.64~1.2質量%である。前記の量でショ糖脂肪酸エステルとカゼイン又はその塩とを使用することにより、増粘抑制効果を更に向上させることができる。
【0030】
カゼイン又はその塩の量は、ショ糖脂肪酸エステルとカゼイン又はその塩との合計質量を基準として、好ましくは50~84質量%であり、より好ましくは55~80質量%であり、更に好ましくは60~75質量%である。前記の量でカゼイン又はその塩を使用することにより、増粘抑制効果を更に向上させることができる。
【0031】
[ココアバター]
本実施形態に係る冷菓は、ココアバターを含むカカオ原料を含む。ココアバターを含むカカオ原料を使用することにより、冷菓にチョコレートの濃厚な風味を付与することができる。
【0032】
カカオ原料としては、例えば、カカオマス、カカオビーンズ、ココアバター、ココアケーキ、及びココアパウダーが挙げられる。
【0033】
本明細書における「ココアバター」の定義は、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(令和3年12月10日一部変更)(以下「チョコレート規約」という。)に従う。具体的には、「ココアバター」とは、カカオビーンズ、カカオニブ又はカカオマスから得られた油脂であって、シェル又はジャームの脂肪分を天然に含んでいる量以上に含まないものを意味する。なお、ココアバターの定義において記載されている用語の定義も前記チョコレート規約に従う(上述又は後述のカカオマス、カカオビーンズ、ココアケーキ、ココアパウダー、チョコレート生地、及びカカオ分についても同様である。)。
【0034】
ココアバターは、冷菓に、それ自体として含まれていてもよいし、ココアバターを含有するチョコレート生地等として含まれていてもよい。
【0035】
ココアバターの量は、冷菓の質量を基準として、好ましくは3~22質量%であり、より好ましくは5~20質量%であり、更に好ましくは10~18質量%である。前記の量でココアバターを使用することにより、チョコレートの風味を更に向上させることができ、かつ、冷菓の増粘を抑制することができる。
【0036】
[カカオ分]
本実施形態に係る冷菓のカカオ分は、冷菓の質量を基準として、好ましくは0.6質量%以上であり、より好ましくは1.5質量%以上である。カカオ分が前記の量であることにより、「アイスクリーム類及び氷菓の表示に関する公正競争規約・公正競争規約施行規則」に従い、冷菓に「チョコレート又はチョコの名称」を使用することができる。カカオ分の上限は、特に限定されないが、冷菓の質量を基準として、例えば、40質量%、30質量%、又は20質量%としてもよい。
【0037】
本明細書における「カカオ分」とは、カカオニブ、カカオマス、ココアバター、ココアケーキ及びココアパウダー(香料その他のものを含まないもの)の水分を除いた合計量を意味する。
【0038】
[その他の成分]
本実施形態に係る冷菓は、その他の成分を更に含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、糖質(糖類及び多糖類を含む。)、果汁、油脂、乳製品、乳化剤、安定剤、香料、着色料、酸味料、pH調整剤、水、卵、及び塩を挙げることができる。
【0039】
本実施形態に係る冷菓は、リン酸塩(具体的には、メタリン酸塩及び/又はポリリン酸塩)を更に含んでいてもよいし、含んでいなくともよい。
本実施形態に係る冷菓は、ソルビタン脂肪酸エステルを更に含んでいてもよいし、含んでいなくともよい。
本実施形態に係る冷菓は、モノグリセリン脂肪酸エステルを更に含んでいてもよいし、含んでいなくともよい。
【0040】
<冷菓の製造方法>
本発明の一実施形態は、ココアバターを含むカカオ原料と、ショ糖脂肪酸エステルと、カゼイン又はその塩と、を混合することを含む、冷菓の製造方法に関する。
【0041】
本実施形態に係る製造方法では、冷菓がココアバターを含むにも関わらず、ショ糖脂肪酸エステルとカゼイン又はその塩との組み合わせを使用することにより、製造過程における冷菓の増粘を抑制することができる。そのため、本実施形態は、ココアバターを含むカカオ原料と、ショ糖脂肪酸エステルと、カゼイン又はその塩と、を混合することを含む、冷菓の増粘を抑制する方法、と表現することもできる。
【0042】
本実施形態における冷菓の成分の詳細は、上記<冷菓>の欄に記載したとおりである。
【0043】
冷菓の製造工程としては、例えば、原料の混合、ろ過、均質化、殺菌、エージング、フリージングが挙げられる。本実施形態に係る製造方法又は増粘抑制方法も、これらの工程を含むことが好ましい。
【実施例0044】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。なお、特段明記しない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0045】
後述する実施例及び比較例の冷菓の粘度は、下記の測定方法及び測定条件にしたがって測定した。なお、冷菓は、経時的な粘度測定のために、5℃の状態で保持した。
(測定方法)
1.200ml(内径67mm)のビーカーに測定液である冷菓ミックスを準備した。
2.測定液を10℃に温調した。
3.粘度計のガード・ローターを取り付けた。
4.温調したビーカー内を20回攪拌した後に粘度を測定した。
(測定条件)
装置:TVB-10型粘度計(東機産業株式会社製)
ローター:No.21(M2)又はローターNo.22(M3)
回転数:30rpm
時間:30秒
【0046】
2日後(48時間後)の冷菓の粘度が3000mPa・s以下であることが好ましい。前記粘度を超えている場合には、例えば、ショ糖脂肪酸エステル及び/又はカゼイン若しくはその塩の量を適宜調節して対応することができる。
【0047】
<カカオ脂肪分の検討>
[冷菓の製造]
表1に記載の成分を混合し、フリージングして、各種の冷菓を製造した。乳化剤の成分は表2に示すとおりである。なお、表中の「合計カカオ脂肪分」とは、チョコレート生地に含まれるココアバターの量を意味する。
【表1】
【表2】
【0048】
[冷菓の評価]
実施例A1~A6の冷菓について、上記の測定方法及び測定条件にしたがって、粘度を測定した。結果を図1に示す。ショ糖脂肪酸エステル及びカゼインナトリウムを使用することにより、これらを使用しない場合と比較して、増粘抑制効果が見られ、特にカカオ脂肪分が18質量%以下の場合に高い増粘抑制効果が見られた。
【0049】
<乳化剤(種類)の検討1>
[冷菓の製造]
実施例A3における乳化剤を、表3に示すものに変更したこと以外は、実施例A3と同様に合計カカオ脂肪分が18質量%である冷菓を製造した。
【表3】
【0050】
[冷菓の評価]
実施例B1~B3並びに比較例B1及びB2の冷菓について、上記の測定方法及び測定条件にしたがって、粘度を測定した。結果を図2に示す。この結果から、ショ糖脂肪酸エステルが最も増粘抑制効果に寄与し、次にカゼインナトリウムが増粘抑制効果に寄与していることが理解できる。
【0051】
<乳化剤(量)の検討1>
[冷菓の製造]
実施例A3における乳化剤を、表4に示すものに変更し、かつ、冷菓全体が100質量%となるように水の量を変更したこと以外は、実施例A3と同様に合計カカオ脂肪分が18質量%である冷菓を製造した。なお、表中の「カゼインナトリウムの割合」とは、ショ糖脂肪酸エステルとカゼインナトリウムとの合計質量を基準とした、カゼインナトリウムの割合を意味する。
【表4】
【0052】
[冷菓の評価]
実施例C1~C4及び比較例C1の冷菓について、上記の測定方法及び測定条件にしたがって、粘度を測定した。2日後の結果を図3に示す。カゼインナトリウムの割合が50~84質量%の場合に、より高い増粘抑制効果が見られた。
図2の結果からは、ショ糖脂肪酸エステルが増粘抑制効果に最も寄与すると思われたが、ショ糖脂肪酸エステルを単に多く使用すればよいというわけではなく、カゼインナトリウムとのバランスが重要であることが示された。
【0053】
<乳化剤(量)の検討2>
[冷菓の製造]
実施例C3における乳化剤(カゼインナトリウムの割合:67質量%)の総量を、表5に示すように変更し、かつ、冷菓全体が100質量%となるように水の量を変更したこと以外は、実施例C3と同様に合計カカオ脂肪分が18質量%である冷菓を製造した。なお、表中の「乳化剤総量」とは、冷菓の質量を基準とした、ショ糖脂肪酸エステルとカゼインナトリウムとの合計の割合を意味する。
【表5】
【0054】
[冷菓の評価]
実施例D1~D7の冷菓について、上記の測定方法及び測定条件にしたがって、粘度を測定した。2日後の結果を図4に示す。乳化剤総量が0.64質量%以上の場合に、より高い増粘抑制効果が見られた。
【0055】
<乳化剤(種類)の検討2>
[冷菓の製造]
表6に記載の成分を混合し、フリージングして、各種の冷菓を製造した。なお、表中の「合計カカオ脂肪分」とは、チョコレート生地に含まれるココアバターの量を意味する。
【表6】
【0056】
[冷菓の評価]
実施例E1及びE2並びに比較例E1~E4の冷菓について、上記の測定方法及び測定条件にしたがって、粘度を測定した。実施例E1並びに比較例E1及びE2の結果を図5-1に示す。実施例E2並びに比較例E3及びE4の結果を図5-2に示す。比較例E3及びE4の冷菓の粘度は、実施例E2と比較して大幅に上昇し、3日後には粘度が高すぎて測定不可能であった。
【0057】
4人の官能評価パネリストが、実施例E2並びに比較例E3及びE4の冷菓を、-18℃の冷凍庫から取り出して直ぐに試食し、チョコレート感及び口どけについて評価を行った。各評価項目の評価基準は以下のとおりであり、平均点を評価結果として表7に示す。
【0058】
[チョコレート感]
5点:とても良い
4点:良い
3点:どちらでもない
2点:悪い
1点:とても悪い
【0059】
[口どけ]
5点:とても良い
4点:良い
3点:どちらでもない
2点:悪い
1点:とても悪い
【0060】
【表7】
【0061】
<乳化剤(種類)の検討3>
[冷菓の製造]
表8に記載の成分を混合し、フリージングして、各種の冷菓を製造した。なお、表中の「カカオ脂肪分」とは、チョコレート生地に含まれるココアバターの量を意味する。
【表8】
【0062】
[冷菓の評価]
実施例F1及びF2の冷菓について、上記の測定方法及び測定条件にしたがって、粘度を測定した。結果を図6に示す。乳化剤としてモノグリセリン脂肪酸エステルを含めないことにより、増粘抑制効果が更に向上した。
【0063】
<乳化剤(種類)の検討4>
[冷菓の製造]
表9に記載の成分を混合し、フリージングして、各種の冷菓を製造した。なお、表中の「合計カカオ脂肪分」とは、チョコレート生地に含まれるココアバターの量を意味する。
【表9】
【0064】
[冷菓の評価]
実施例G1~G3の冷菓について、上記の測定方法及び測定条件にしたがって、粘度を測定した。結果を図7に示す。HLBが11~13であるショ糖脂肪酸エステルを使用することにより、増粘抑制効果が更に向上した。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7