(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080246
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】積層デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240606BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240606BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240606BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240606BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20240606BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/78 B
H01L21/78 S
H01L21/78 Q
H01L21/304 631
H01L21/304 621B
H01L21/78 M
H01L25/08 C
H01L21/02 C
B23K26/364
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193280
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000108753
【氏名又は名称】タツモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山邊 浩
(72)【発明者】
【氏名】佐野 一郎
【テーマコード(参考)】
4E168
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AD02
4E168AD18
4E168HA01
5F057AA05
5F057BA15
5F057CA11
5F057CA14
5F057CA32
5F057CA36
5F057CA38
5F057DA01
5F057DA11
5F057DA14
5F057DA22
5F063AA05
5F063AA11
5F063AA36
5F063AA46
5F063BA27
5F063CA06
5F063CA08
5F063CB02
5F063CB06
5F063CB08
5F063CB24
5F063CC38
5F063DD37
5F063DD46
5F063DD59
5F063DD64
5F063DE01
5F063DE11
5F063DE20
5F063EE21
5F063EE38
5F063EE40
(57)【要約】
【課題】複数のチップが積層された積層デバイスの製造技術において、製造プロセスの顕著な簡略化を実現させる。
【解決手段】積層デバイスの製造方法では、第1接合対象に対して、これを第1支持体によって保持した状態で、複数のベース領域をそれぞれ個片化するための切断加工を施す前に、分離ステップにおいて、複数のチップ領域が設けられている第2接合対象を第2支持体によって保持した状態で、当該第2接合対象に対してプラズマ又はレーザ光を用いた切断加工を施すことにより、隣接するチップ領域を所定幅で分離させる分離部を形成し、接合ステップにおいて、第1接合対象を第1支持体によって保持した状態で、当該第1支持体に対して第2支持体を相対移動させることにより、ベース領域ごとに、そのベース領域に対応する少なくとも1つのチップ領域が所定の位置関係で積層されるように、第1接合対象に対して第2接合対象を接合する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のベース領域が設けられている第1接合対象に対して、これを第1支持体によって保持した状態で、前記複数のベース領域をそれぞれ個片化するための切断加工を施す前に、
複数のチップ領域が設けられている第2接合対象を第2支持体によって保持した状態で、当該第2接合対象に対してプラズマ又はレーザ光を用いた切断加工を施すことにより、隣接する前記チップ領域を所定幅で分離させる分離部を形成し、それによって前記複数のチップ領域をそれぞれ個片化する分離ステップと、
前記第1接合対象を前記第1支持体によって保持した状態で、当該第1支持体に対して前記第2支持体を相対移動させることにより、前記ベース領域ごとに、そのベース領域に対応する少なくとも1つの前記チップ領域が所定の位置関係で積層されるように、前記第1接合対象に対して前記第2接合対象を接合する接合ステップと、
を実行する、積層デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記接合ステップの後、前記第2接合対象から前記第2支持体を剥離し、当該第2接合対象に対して、複数のチップ領域が設けられている別の接合対象を更に接合する、請求項1に記載の積層デバイスの製造方法であって、
前記接合ステップにて前記第2接合対象が接合された前記第1接合対象を新たな第1接合対象とし、且つ、前記別の接合対象を新たな第2接合対象として、前記分離ステップ及び前記接合ステップを更に実行する、積層デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記分離ステップの前に前記第2接合対象を薄化する薄化ステップ
を更に実行する、請求項1又は2に記載の積層デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記分離ステップでは、平行に並んだ2本の切断線を形成し、当該2本の切断線の間の部分を取り除くことにより、前記分離部を形成する、請求項1又は2に記載の積層デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記分離ステップでは、前記2本の切断線を、当該2本の切断線の間にPCM(プロセスコントロールモニタ)が位置することとなるように形成する、請求項4に記載の積層デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記分離ステップでは、前記分離部として、プラズマでエッチングされた所定幅のエッチング領域を形成する、請求項1又は2に記載の積層デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記分離ステップの実行後、当該分離ステップにて個片化した前記チップ領域ごとに、そのチップ領域が不良品である否かを検査する検査ステップと、
前記検査ステップで不良品を検出した場合に当該不良品を良品に置き換える置換ステップと、
を更に実行し、前記置換ステップの実行後に前記接合ステップを実行する、請求項1又は2に記載の積層デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記第1支持体及び前記第2支持体は何れも、少なくとも吸着力を持った樹脂又はゴムを主成分とする保持シートを含み、当該保持シートには、前記第1接合対象及び前記第2接合対象をそれぞれ保持する保持面に複数の凸部が設けられている、請求項2に記載の積層デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記保持面には、前記第2支持体に前記第2接合対象を保持させたときのそれらの接触面積が、前記第1支持体に前記第1接合対象を保持させたときのそれらの接触面積より小さくなるように前記凸部が形成されている、請求項8に記載の積層デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のチップが積層された積層デバイスの製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体技術の分野では、LSI(Large Scale Integration)などのチップを3次元的に積層する積層技術として、COW(Chip on Wafer)方式やWOW(Wafer on Wafer)方式といった様々な方式が提案されている。
【0003】
COW方式(例えば、特許文献1、3参照)では、先ず、半導体ウェハに切断加工を施すことによって当該半導体ウェハを複数のチップに個片化し、次に、当該複数のチップをベースウェハ上に1つずつ積層していく。そして、所望の積層数になるまでチップを積層した後、ベースウェハに切断加工を施すことによって当該ベースウェハを複数のベース(積層デバイスの土台となる部分)に個片化することにより、当該ベース上に複数のチップが積層された積層デバイスを完成させる。
【0004】
WOW方式(例えば、特許文献2、3参照)では、先ず、ベースウェハ上に半導体ウェハを積層していく。そして、所望の積層数になるまで半導体ウェハを積層した後、ウェハ積層体に対して切断加工を施すことにより、当該ウェハ積層体を複数の積層デバイスに個片化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5853754号公報
【特許文献2】特許第6391999号公報
【特許文献3】特許第6485897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のCOW方式やWOW方式においては、以下のように製造プロセスが煩雑になるという問題があった。
【0007】
ベースウェハに、積層デバイスのベースとなる領域(ベース領域)がN個設けられている場合を考えると、COW方式においては、当該N個のベース領域にチップを1つずつ積層していくことが必要になる。このため、ベースウェハ上に1層目のチップを積層する場合には、N回の積層操作が必要になる。そして、ベースウェハ上にM層目までチップを積層する場合には、N×M回の積層操作が必要になる。
【0008】
また、WOW方式においては、薄化された半導体ウェハをベースウェハ上に積層していく必要がある場合において、薄化後の半導体ウェハをベースウェハに積層しようとすると、そのためのハンドリングが技術的に難しくなる。そこで、従来は、薄化前の半導体ウェハをベースウェハ上に接合(積層)した後に、当該半導体ウェハを研磨によって薄化していた。その一方で、研磨時においては、ウェハどうしの接合面に剪断応力が発生するが故に、接合強度が弱いと、ウェハどうしの接合(積層)が破壊されるおそれがあった。このため、研磨前に、接合強度を高めておくべく、積層体全体に熱処理を施す必要があった。従って、薄化された半導体ウェハをベースウェハ上に所望の積層数になるまで積層する場合には、半導体ウェハを1層積層するごとに、接合強度を高めるための熱処理を研磨前に行う必要があった。
【0009】
そこで本発明の目的は、複数のチップが積層された積層デバイスの製造技術において、製造プロセスの顕著な簡略化を実現させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る積層デバイスの製造方法では、複数のベース領域が設けられている第1接合対象に対して、これを第1支持体によって保持した状態で、複数のベース領域をそれぞれ個片化するための切断加工を施す前に、分離ステップと、接合ステップと、を実行する。分離ステップでは、複数のチップ領域が設けられている第2接合対象を第2支持体によって保持した状態で、当該第2接合対象に対してプラズマ又はレーザ光を用いた切断加工を施すことにより、隣接するチップ領域を所定幅で分離させる分離部を形成し、それによって複数のチップ領域をそれぞれ個片化する。接合ステップでは、第1接合対象を第1支持体によって保持した状態で、当該第1支持体に対して第2支持体を相対移動させることにより、ベース領域ごとに、そのベース領域に対応する少なくとも1つのチップ領域が所定の位置関係で積層されるように、第1接合対象に対して第2接合対象を接合する。
【0011】
上記製造方法においては、従来のCOW方式と同様、個片化したチップ領域を複数のベース領域上に接合(積層)した後に、第1接合対象への切断加工(プラズマ又はレーザ光を用いた切断加工に限定されない)によって当該複数のベース領域をそれぞれ個片化することが必要になる。それが故に、このような製造方法においては、個片化したチップ領域の接合(積層)後における第1接合対象への切断加工が可能となるように、当該第1接合対象上にて隣接するチップ領域の間には、適度な隙間(第1接合対象への切断加工を可能にする隙間)を生じさせることが必要になる。
【0012】
このため、従来のCOW方式では、切断加工によってチップ領域を個片化する前から、当該チップ領域のサイズを、ベース領域のサイズよりも小さくなるように設計した上で、個片化したチップ領域を、1つずつ取り出してベース領域上に接合(積層)するか、或いは、それらを纏めて複数のベース領域に接合するために、ベース領域と対応した位置関係となるようにチップ領域を1つずつ取り出して支持体(保持シートなど)上に再配置していた。従って、このような従来のCOW方式では、ベース領域上への接合(積層)時において、個片化したチップ領域を1つずつ取り出すことが必要であった。
【0013】
一方、個片化したチップ領域を1つずつ取り出そうとすると、隣りのチップ領域に接触するおそれがあった。また、従来のCOW方式においてチップ領域の個片化のための切断加工にプラズマ又はレーザ光を用いたとすれば、切断線が極細(例えば、10μm以下)になるため、切断加工後の状態のままチップ領域を1つずつ取り出そうとすると、隣りのチップ領域に接触しやすくなる。そこで、そのような接触を避けるために、チップ領域を個片化するときに用いた支持体(保持シートなど)が伸縮性シートである場合には当該支持体を伸展させるか、或いは、そうでない場合には伸縮性シートへの転写後に当該伸縮性シートを伸展させることにより、隣接するチップ領域間の距離を拡げる必要があった。しかし、伸縮性シートを伸展させてチップ領域間の距離を拡げると、隣接するチップ領域間の距離にバラツキが生じるため、伸縮性シート上でのチップ領域の位置を把握するためには、それらの位置を改めて測定しなければならなくなる。
【0014】
上記製造方法によれば、分離ステップにおいて分離部の幅(所定幅)を適宜調整することにより、隣接するチップ領域の間に、第1接合対象への切断加工を可能にする適度な隙間を生じさせることができる。このため、接合ステップにおいては、分離ステップにて個片化したチップ領域をそのまま第1接合対象に接合するだけで、第1接合対象上においても、隣接するチップ領域の間に適度な隙間(第1接合対象への切断加工を可能にする隙間)をそのまま生じさせることができる。よって、従来のようにチップ領域を1つずつ取り出さずとも、第1接合対象上にて隣接するチップ領域の間に適度な隙間を形成することができる。従って、伸縮性シートの伸展や、伸展後における各チップ領域の位置測定などのプロセスが不要になる。また、チップ領域は、個片化後であっても、個片化前(即ち、分離ステップ前)の位置関係のままでハンドリングすることができ、その結果として、個片化されたチップ領域のハンドリングが容易になる。
【0015】
そして、第2接合対象において、ベース領域と対応した位置関係となるようにチップ領域を形成しておくことにより、接合ステップにおいては、分離ステップにて個片化したチップ領域を纏めて、第1接合対象に設けられている複数のベース領域とのそれぞれの位置関係が所定の位置関係となるように位置決めを行いつつ、当該複数のベース領域上への接合を行うことができる。即ち、接合ステップでは、分離ステップにて第2接合対象から個片化した複数のチップ領域を、1回の接合操作で、第1接合対象に設けられている複数のベース領域に対して纏めて接合(積層)することができる。
【0016】
これにより、第2接合対象から個片化されたチップ領域を、第1接合対象に設けられている複数のベース領域に1つずつ接合(積層)していく場合に比べて、製造プロセスを顕著に簡略化することができる。具体的には、第1接合対象にN個のベース領域が設けられ、第2接合対象にN個のチップ領域が設けられている場合において、N個のベース領域にチップ領域を1つずつ接合(積層)していく場合には、N回の接合(積層)が必要になるのに対し、上記製造方法によれば、1回の接合で済むため、製造プロセスを顕著に簡略化することができる。
【0017】
また、プラズマ又はレーザ光を用いた切断加工によれば、第2接合対象に対する高精度での切断加工が可能になり、且つ、第2接合対象に対して横方向の力(第2支持体の保持面に沿う方向の力)を殆ど発生させずに加工することが可能になるため、分離部の形成によって個片化されたチップ領域において、各チップ領域内の回路とそのチップ領域のエッジ(外縁)との位置関係について、チップ領域ごとのバラツキを小さくすることができる。また、切断面の抗折強度を高めることができ、更には欠損などがないクリーンなエッジを形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数のチップが積層された積層デバイスの製造技術において、製造プロセスの顕著な簡略化が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る製造方法で得られる積層デバイスを概念的に示した斜視図である。
【
図2】(A)ベース母材(第1接合対象)及び(B)チップ母材(第2接合対象)をそれぞれ示した平面図である。
【
図3】第1支持体によってベース母材(第1接合対象)を保持する前後の状態を示した概念図である。
【
図4】
図3の左上図に示されたYa領域の部分についての拡大斜視図である。
【
図6】
図5の左上図に示されたYb領域の部分についての拡大斜視図である。
【
図7】(A)分離ステップの実行後における第2接合対象G2の状態を概念的に示した平面図、及び(B)
図7(A)に示されたZa-Za線(
図5の左下図に示されたZa-Za線と同じ線)での縦断面図である。
【
図8】実施形態での分離ステップにて実行される分離部の形成方法を示した概念図である。
【
図9】(A)接合ステップを示した概念図、及び(B)
図9(A)の左上図に示されたZb-Zb線での縦断面図である。
【
図10】(A)繰返しのプロセスで実行される接合ステップを示した概念図、及び(B)
図10(A)に示されたZc-Zc線での縦断面図である。
【
図11】(A)ベース母材(第1接合対象)上にチップ母材(第2接合対象)を7層目まで接合(積層)したときの状態を示した概念図、及び(B)
図11(A)に示されたZd-Zd線での縦断面図である。
【
図12】第4変形例においてベース母材(第1接合対象)上にチップ母材(第2接合対象)を2層目まで接合(積層)したときの状態を例示した縦断面図である。
【
図13】薄化ステップ及び分離ステップに代えて実行可能なプロセスを示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[1]実施形態
[1-1]積層デバイスの構成
図1は、実施形態に係る製造方法で得られる積層デバイス10を概念的に示した斜視図である。
図1に示されるように、積層デバイス10は、ベース11と、チップ積層体12と、を備えている。ここで、ベース11は、積層デバイス10の土台となる部分であり、ベース11には、外部端子や配線などが形成されている。また、チップ積層体12は、ベース11上に3次元的に積層された複数のチップMcによって構成された部分である。
図1の例では、ベース11上にチップMcが1層目から7層目まで3次元的に積層された場合が示されている。チップMcは、特に限定されるものではないが、例えばLSIなどの半導体チップである。尚、チップMcの積層数は、7層以外の積層数(1層を含む)に適宜変更することができる。
【0021】
尚、ベース11には、端子や配線に限らず、チップMcと同じ又は別の回路が形成されていてもよい。また、チップ積層体12を構成するチップMcには、同じ回路を備えたものが含まれていてもよいし、別の回路を備えたものが含まれていてもよい。
【0022】
本実施形態では、全てのチップMcにおいて、形状が長方形(正方形を含む)であって同一であり、且つ、サイズも同一である。また、ベース11については、形状が長方形(正方形を含む)であり、サイズがチップMcより大きくなっている。尚、形状やサイズは、これに限らず、適宜変更することが可能である。ベース11及びチップMcの形状は、例えば円形に変更されてもよい。また、後述する第4変形例(
図12参照)のように、ベース11上にはサイズの異なるチップMcが積層されてもよいし、後述する第5変形例のように、ベース11上の複数箇所にチップMcが3次元的にされてもよい。
【0023】
[1-2]積層デバイスの製造方法
本実施形態の製造方法では、積層デバイス10を製造するための母材として、ベース母材Gbとチップ母材Gcとが用いられる。これらの母材は、特に限定されるものではないが、例えば半導体ウェハである。
【0024】
図2(A)及び
図2(B)は、ベース母材Gb及びチップ母材Gcをそれぞれ示した平面図である。
図2(A)において一点鎖線で示されるように、ベース母材Gbには、ベース11となる領域(ベース領域Rb)が複数設けられている。また、
図2(B)において一点鎖線で示されるように、チップ母材Gcには、チップMcとなる領域(チップ領域Rc)が複数設けられている。
【0025】
本実施形態では、ベース母材Gbとチップ母材Gcとにおいて、ベース領域Rbとチップ領域Rcとが同数設けられている。そして、それらの領域は、ベース領域Rbに対してチップ領域Rcが1つずつ対応するように形成されると共に、互いに対応する何れか1組のベース領域Rb及びチップ領域Rcの位置関係を所定の位置関係となるように調整した場合に、他の組の何れにおいてもベース領域Rb及びチップ領域Rcの位置関係が所定の位置関係となるように形成されている。ここで、所定の位置関係は、ベース領域Rb及びチップ領域Rcがそれぞれ備えている回路を、積層デバイス10において正常に機能させるための位置関係(回路どうしの接続位置などを考慮した位置関係)である。
【0026】
そして本実施形態では、詳細については後述するが、複数のベース領域Rbをそれぞれ個片化するための切断加工をベース母材Gbに対して施す前に、当該複数のベース領域Rb上に、チップ母材Gcに切断加工を施して個片化したチップ領域Rc(チップMc)を、所望の積層数になるまで3次元的に接合(積層)する。従って、本実施形態の製造方法においては、従来のCOW方式と同様、個片化したチップ領域Rcを複数のベース領域Rb上に接合(積層)した後に、ベース母材Gbへの切断加工(プラズマ又はレーザ光を用いた切断加工に限定されない)によって当該複数のベース領域Rbをそれぞれ個片化することが必要になる。それが故に、このような製造方法においては、個片化したチップ領域Rc(チップMc)の接合(積層)後におけるベース母材Gbへの切断加工が可能となるように、当該ベース母材Gb上にて隣接するチップ領域Rc(チップMc)の間には、適度な隙間(ベース母材Gbへの切断加工を可能にする隙間)を生じさせることが必要になる。
【0027】
このため、従来のCOW方式では、チップ母材Gcへの切断加工によってチップ領域Rcを個片化する前から、当該チップ領域Rcのサイズを、ベース領域Rbのサイズよりも小さくなるように設計した上で、個片化したチップ領域Rcを、1つずつ取り出してベース領域Rb上に接合(積層)するか、或いは、それらを纏めて複数のベース領域Rbに接合するために、ベース領域Rbと対応した位置関係となるようにチップ領域Rcを1つずつ取り出して支持体(保持シートなど)上に再配置していた。従って、このような従来のCOW方式では、ベース領域Rb上への接合(積層)時において、個片化したチップ領域Rcを1つずつ取り出すことが必要であった。
【0028】
一方、個片化したチップ領域Rcを1つずつ取り出そうとすると、隣りのチップ領域Rcに接触するおそれがあった。また、従来のCOW方式においてチップ領域Rcの個片化のための切断加工にプラズマ又はレーザ光を用いたとすれば、切断線が極細(例えば、10μm以下)になるため、切断加工後の状態のままチップ領域Rcを1つずつ取り出そうとすると、隣りのチップ領域Rcに接触しやすくなる。そこで、そのような接触を避けるために、チップ領域Rcを個片化するときに用いた支持体(保持シートなど)が伸縮性シートである場合には当該支持体を伸展させるか、或いは、そうでない場合には伸縮性シートへの転写後に当該伸縮性シートを伸展させることにより、隣接するチップ領域Rc間の距離を拡げる必要があった。しかし、伸縮性シートを伸展させてチップ領域Rc間の距離を拡げると、隣接するチップ領域Rc間の距離にバラツキが生じるため、伸縮性シート上でのチップ領域Rcの位置を把握するためには、それらの位置を改めて測定しなければならなくなる。
【0029】
そこで本実施形態では、積層デバイス10を製造するための製造プロセスにおいて、個片化されたチップ領域Rcのハンドリングを容易にし、それによって当該製造プロセスの顕著な簡略化を実現させる。そして、それを実現するためのプロセスとして、薄化ステップと、分離ステップと、接合ステップと、切断ステップと、が実行される。以下、製造プロセスの流れと各ステップの詳細とについて具体的に説明する。尚、これらのステップは、周知の各種装置を用いて実現することができる。また、以下に説明する製造方法は、チップMcの積層数が7層以外(1層を含む)の積層デバイス10を製造する場合にも適用できる。
【0030】
先ず、ベース母材Gbとチップ母材Gcとを1枚ずつ用意し、これらの2つの母材を対象として、薄化ステップ、分離ステップ、及び接合ステップを実行する。ここでは、ベース母材Gb及びチップ母材Gcを、それぞれ「第1接合対象G1」及び「第2接合対象G2」と称す。
【0031】
そして、第1接合対象G1(ベース母材Gb)については、これを第1支持体21によって保持する(
図3の左上図及び右図)。本実施形態では、第1支持体21は、少なくとも吸着力を持った樹脂(ポリオレフィンやシリコーンなど)又はゴム(フッ化ゴムなど)を主成分とする保持シートであり、当該主成分が持つ吸着力によって第1接合対象G1を保持することができる。そして、第1支持体21は、更に以下のような構成を有している。尚、第2接合対象G2(チップ母材Gc)については、後述する分離ステップにおいて第2支持体22によって保持する(
図5の左上図及び右図参照)。
【0032】
図4は、第1支持体21(保持シート)のうちの
図3の左上図に示されたYa領域の部分についての拡大斜視図である。この図に示されるように、第1支持体21には、第1接合対象G1を保持する保持面21aに複数の凸部21bが設けられている。また、凸部21bは、第1支持体21を構成する上記主成分と同じ成分で、且つ、当該第1支持体21と一体的に形成されている。そして、複数の凸部21bに第1接合対象G1が面接触することにより、当該凸部21bが持つ吸着力によって第1支持体21に第1接合対象G1が保持される。
【0033】
その一方で、保持面21aに第1接合対象G1を保持した場合、当該保持面21aのうちの凸部21bが設けられた部分にだけ第1接合対象G1が面接触することになる。
図4の例では、凸部21bは、第1接合対象G1との接触面21cが長方形(正方形を含む)となるように形成されている。尚、凸部21bの接触面21cの形状は、第1接合対象G1を保持できてるものであれば、長方形に限らず、多角形や円形などを含む種々の形状に適宜変更されてもよい。
【0034】
このような第1支持体21によれば、凸部21bの数や接触面21cの面積を調整することにより、第1接合対象G1との接触面積を調整することができ、その結果として、第1接合対象G1に対する第1支持体21の保持力(即ち、凸部21bが持つ吸着力の総和)を調整することができる。そして、第1支持体21の保持力を調整することにより、製造プロセスにて必要な保持力を維持しつつ、後述する切断ステップにて積層デバイス10を完成させた後においては、第1支持体21からの剥離を伴う積層デバイス10のピックアップを容易にすることができる。具体的には、ピックアップによる第1支持体21からの積層デバイス10の剥離時に当該積層デバイス10内の接合部分を破壊してしまうことがないように、第1支持体21の保持力を適度な大きさに調整することができる。従って、そのような第1支持体21を用いて第1接合対象G1を保持することにより、第1接合対象G1を強固に保持しつつ、第1支持体21からの積層デバイス10の剥離が必要になったときには、その剥離を、当該積層デバイス10内の接合部分などに悪影響(破壊など)を及ぼさずに容易に行うことが可能になる。
【0035】
尚、第1支持体21は、何らかの基板(ウェハやガラス基板など)の表面に上記の保持シートが形成されたものに適宜変更されてもよい。一例として、吸着力を持った樹脂又はゴムを上記基板の表面に塗布し、その後に型押しなどで成形することにより、凸部21bを持った保持シートを、当該基板の表面に形成することができる。また、第1支持体21は、積層デバイス10を剥離できるものであれば、接着剤などで第1接合対象G1を保持する基板(ウェハやガラス基板など)に適宜変更されてもよい。
【0036】
<薄化ステップ>
薄化ステップでは、第2接合対象G2(チップ母材Gc)を、これに研磨処理を施すことによって薄化する。一例として、第2接合対象G2を、150μm以下の厚さまで薄化する。本実施形態では、第2接合対象G2の薄化は、後述する分離ステップの前(即ち、接合ステップの前)に実行される。
【0037】
尚、この薄化ステップでは、第2接合対象G2を薄化するだけなく、第1接合対象G1(ベース母材Gb)を所望の厚さ(第2接合対象G2と異なる厚さであってもよい)まで薄化してもよい。第1接合対象G1を薄化する場合には、第1支持体21による第1接合対象G1の保持は、当該第1接合対象G1の薄化後に行われてもよい。上述したように、第1支持体21によれば、第1接合対象G1を強固に保持しつつ、剥離が必要になったときには、接合部分などに悪影響(破壊など)を及ぼさずに剥離を容易に行うことができる。よって、そのような第1支持体21を用いて第1接合対象G1を保持することにより、薄化された第1接合対象G1であってもハンドリングしやすくなる。
【0038】
このように本実施形態においては、ベース母材Gb及びチップ母材Gcの何れにおいても、それらの薄化は、後述する接合ステップでの接合(積層)前に実行される。ここで、従来のように接合(積層)後にベース母材Gbやチップ母材Gcを薄化しようとすると、研磨時において、母材どうしの接合面に剪断応力が発生するが故に、接合強度が弱いと、母材どうしの接合(積層)が破壊されるおそれがある。このため、従来の方法で薄化するためには、研磨前に積層体全体に熱処理を施すことにより、接合強度を高めておくことが必要になる。そして、ベース母材Gb上にチップ母材Gcを2枚以上接合(積層)する場合には、2回以上の接合(積層)が必要になり、接合の都度、接合強度を高めるための熱処理を研磨前に行うことが必要になる。一方、本実施形態のように接合(積層)前に上記薄化ステップを実行することにより、接合のたびに熱処理を行う必要がなく、製造プロセスが簡略化されることになる。
【0039】
<分離ステップ>
図5は、分離ステップを示した概念図である。分離ステップでは、薄化ステップで薄化した第2接合対象G2(チップ母材Gc)を第2支持体22によって保持する(
図5の左上図及び右図)。本実施形態では、第2支持体22は、第1支持体21と同様、少なくとも吸着力を持った樹脂(ポリオレフィンやシリコーンなど)又はゴム(フッ化ゴムなど)を主成分とする保持シートであり、当該主成分が持つ吸着力によって第2接合対象G2を保持することができる。そして、第2支持体22は、更に以下のような構成を有している。
【0040】
図6は、第2支持体22(保持シート)のうちの
図5の左上図に示されたYb領域の部分についての拡大斜視図である。この図に示されるように、第2支持体22には、第2接合対象G2を保持する保持面22aに複数の凸部22bが設けられている。また、凸部22bは、第2支持体22を構成する上記主成分と同じ成分で、且つ、当該第2支持体22と一体的に形成されている。そして、複数の凸部22bに第2接合対象G2が面接触することにより、当該凸部22bが持つ吸着力によって第2支持体22に第2接合対象G2が保持される。
【0041】
その一方で、保持面22aに第2接合対象G2を保持した場合、当該保持面22aのうちの凸部22bが設けられた部分にだけ第2接合対象G2が面接触することになる。
図6の例では、凸部22bは、第2接合対象G2との接触面22cが長方形(正方形を含む)となるように形成されている。尚、凸部22bの接触面22cの形状は、第2接合対象G2を保持できてるものであれば、長方形に限らず、多角形や円形などを含む種々の形状に適宜変更されてもよい。
【0042】
このような第2支持体22によれば、凸部22bの数や接触面22cの面積を調整することにより、第2接合対象G2との接触面積を調整することができ、その結果として、第2接合対象G2に対する第2支持体22の保持力(即ち、凸部22bが持つ吸着力の総和)を調整することができる。そして、第2支持体22の保持力を調整することにより、製造プロセスにて必要な保持力を維持しつつ、後述する接合ステップにて第2接合対象G2を第1接合対象G1に対して接合(積層)した後においては、第2接合対象G2からの第2支持体22の剥離を容易にすることができる。具体的には、第2接合対象G2からの第2支持体22の剥離時に接合部分を破壊してしまうことがないように、第2支持体22の保持力を適度な大きさに調整することができる。従って、そのような第2支持体22を用いて第2接合対象G2を保持することにより、第2接合対象G2を強固に保持しつつ、当該第2接合対象G2からの第2支持体22の剥離が必要になったときには、その剥離を、母材どうしの接合部分などに悪影響(破壊など)を及ぼさずに容易に行うことが可能になる。よって、薄化された第2接合対象G2であってもハンドリングしやすくなる。
【0043】
尚、第2支持体22は、何らかの基板(ウェハやガラス基板など)の表面に上記の保持シートが形成されたものに適宜変更されてもよい。一例として、吸着力を持った樹脂又はゴムを上記基板の表面に塗布し、その後に型押しなどで成形することにより、凸部22bを持った保持シートを、当該基板の表面に形成することができる。また、第2支持体22は、第2接合対象G2から剥離できるものであれば、接着剤などで第2接合対象G2を保持する基板(ウェハやガラス基板など)に適宜変更されてもよい。
【0044】
更に本実施形態では、第1支持体21及び第2支持体22(
図4及び
図6参照)において、それらの保持面21a及び22aには、第2支持体22に第2接合対象G2を保持させたときのそれらの接触面積が、第1支持体21に第1接合対象G1を保持させたときのそれらの接触面積より小さくなるように凸部21b及び22bが形成されている。このような構成によれば、接触面積の大きさに差を設けることで、保持力に差を生じさせ、その結果として剥離強度にも差を生じさせることができる(具体的には、接触面積が小さいほど剥離しやすくなる)。従って、後述する接合ステップにて第1接合対象G1に対して第2接合対象G2を接合(積層)した後に、第2支持体22だけを剥離したい場合には、上記の保持力の差(ここでは、剥離強度の差)を利用して第2支持体22だけを容易に剥離することができる。
【0045】
分離ステップでは、第2支持体22による第2接合対象G2の保持後、その状態で、当該第2接合対象G2に対してプラズマ又はレーザ光を用いた切断加工を施すことにより、隣接するチップ領域Rcを所定幅Wtで分離させる分離部Edを形成し、それによって複数のチップ領域Rcをそれぞれ個片化する(
図5の左下図、
図7(A)、
図7(B)参照)。以下、分離部Edの形成方法について具体的に説明する。
【0046】
図8(A)~
図8(C)は、本実施形態での分離部Edの形成方法を示した概念図である。ここで、
図8(A)は、
図7(A)と同様に第2接合対象G2を平面視した概念図であり、
図8(B)は、
図8(A)に示されたZa-Za線(
図5の左下図に示されたZa-Za線と同じ線)での縦断面の一部を拡大して示した部分拡大図である。また、
図8(C)は、分離部Edが完成した状態を、
図8(B)と同じ部分について示した概念図である。
【0047】
本実施形態では、先ず、
図8(A)及び
図8(B)に示されるように、プラズマ又はレーザ光を用いた切断加工により、平行に並んだ2本の切断線Ldを第2接合対象G2に形成する。具体的には、プラズマを用いて切断箇所(切断線Ldの形成箇所)をエッチングすること(プラズマエッチング)により、切断線Ldを形成する。このとき、第2接合対象G2の表面のうちの切断箇所以外の領域は、レジストによってプラズマから保護される。或いは、プラズマエッチングに代えて、レーザ光を用いて切断箇所にアブレーションを生じさせること(レーザアブレーション)により、切断線Ldを形成してもよい。
【0048】
その後、
図8(C)に示されるように、当該2本の切断線Ldの間の不要な部分を取り除くことにより、分離部Edを完成させる。一例として、第2支持体22を反転させることにより、2本の切断線Ldの間の不要な部分だけを落下させて取り除くことができる。他の例として、プラズマエッチングで用いたレジストを取り除くための洗浄プロセスにおいて、レジストと共に、2本の切断線Ldの間の不要な部分も一緒に洗い流して取り除くことができる。
【0049】
このような分離部Edの形成方法によれば、分離部Edの縁となる切断線Ldの形成箇所にのみプラズマ又はレーザ光を用いた切断加工(具体的には、プラズマエッチング又はレーザアブレーション)を施せばよいため、分離部Edの形成領域全体にプラズマエッチングやレーザアブレーションを施す場合に比べて短時間で分離部Edを形成することが可能になる。
【0050】
しかも、2本の切断線Ldの幅を調整することにより、形成される分離部Edの幅(所定幅Wt)を適宜調整することができる。そして、分離部Edの幅を適宜調整することにより、隣接するチップ領域Rcの間に、第1接合対象G1への切断加工を可能にする適度な隙間を生じさせることができる。
【0051】
また、プラズマ又はレーザ光を用いた切断加工によれば、第2接合対象G2に対する高精度での切断加工が可能になり、且つ、第2接合対象G2に対して横方向の力(第2支持体22の保持面22aに沿う方向の力)を殆ど発生させずに加工することが可能になるため、分離部Edの形成によって個片化されたチップ領域Rcにおいて、各チップ領域Rc内の回路とそのチップ領域Rcのエッジ(外縁)との位置関係について、チップ領域Rcごとのバラツキを小さくすることができる。また、切断面の抗折強度を高めることができ、更には欠損などがないクリーンなエッジを形成することができる。
【0052】
<接合ステップ>
分離ステップの後であって、且つ、第1接合対象G1を第1支持体21によって保持した後に、接合ステップを実行する。
図9(A)は、接合ステップを示した概念図であり、9(B)は、
図9(A)の左上図に示されたZb-Zb線での縦断面図である。接合ステップでは、
図9(A)に示されるように、第1支持体21に対して第2支持体22を相対移動させることにより、第1接合対象G1に対して第2接合対象G2を接合する。具体的には、
図9(B)に示されるように、ベース領域Rbごとに、そのベース領域Rbに対応するチップ領域Rcが所定の位置関係で積層されるように、第1接合対象G1に対して第2接合対象G2を接合する。ここで、所定の位置関係は、ベース領域Rb及びチップ領域Rcがそれぞれ備えている回路を、積層デバイス10において正常に機能させるための位置関係(回路どうしの接続位置などを考慮した位置関係)である。
【0053】
本実施形態では、上述したように、ベース領域Rb及びチップ領域Rcは、ベース領域Rbに対してチップ領域Rcが1つずつ対応するように形成されると共に、互いに対応する何れか1組のベース領域Rb及びチップ領域Rcの位置関係を所定の位置関係となるように調整した場合に、他の組の何れにおいてもベース領域Rb及びチップ領域Rcの位置関係が所定の位置関係となるように形成されている。従って、接合ステップにおいては、分離ステップにて個片化したチップ領域Rcを纏めて、第1接合対象G1に設けられている複数のベース領域Rbとのそれぞれの位置関係が所定の位置関係となるように位置決めを行うことができる。そして、そのような位置決めの手段として、本実施形態では、第1接合対象G1及び第2接合対象G2にそれぞれ設けた位置決めマークPt(
図9(A)参照)が用いられている。尚、第1接合対象G1側の位置決めマークPtの形状と、第2接合対象G2側の位置決めマークPtの形状との組合せは、
図9(A)などに示されるように十字形どうしの組合せであってもよいし、十字形と四角形の組合せなど、異なる形状の組合せであってもよい。
【0054】
また、上述した分離ステップでは、分離部Edの幅を適宜調整することにより、隣接するチップ領域Rcの間に、第1接合対象G1への切断加工を可能にする適度な隙間を生じさせることができる。このため、接合ステップにおいては、分離ステップにて個片化したチップ領域Rcをそのまま第1接合対象G1に接合するだけで、第1接合対象G1上においても、隣接するチップ領域Rcの間に適度な隙間(第1接合対象G1への切断加工を可能にする隙間)をそのまま生じさせることができる。よって、従来のようにチップ領域Rcを1つずつ取り出さずとも、第1接合対象G1上にて隣接するチップ領域Rcの間に適度な隙間を形成することができる。従って、伸縮性シートの伸展や、伸展後における各チップ領域Rcの位置測定などのプロセスが不要になる。また、チップ領域Rcは、個片化後であっても、個片化前(即ち、分離ステップ前)の位置関係のままでハンドリングすることができ、その結果として、個片化されたチップ領域Rcのハンドリングが容易になる。
【0055】
よって、接合ステップにおいては、分離ステップにて個片化したチップ領域Rcを纏めて、第1接合対象G1に設けられている複数のベース領域Rbとのそれぞれの位置関係が所定の位置関係となるように位置決めを行いつつ、当該複数のベース領域Rb上への接合を行うことができる。即ち、接合ステップでは、分離ステップにて第2接合対象G2から個片化した複数のチップ領域Rcを、1回の接合操作で、第1接合対象G1に設けられている複数のベース領域Rbに対して纏めて接合(積層)することができる。
【0056】
これにより、第2接合対象G2から個片化されたチップ領域Rcを、第1接合対象G1に設けられている複数のベース領域Rbに1つずつ接合(積層)していく場合に比べて、製造プロセスを顕著に簡略化することができる。具体的には、第1接合対象G1にN個のベース領域Rbが設けられ、第2接合対象G2にN個のチップ領域Rcが設けられている場合において、N個のベース領域Rbにチップ領域Rcを1つずつ接合(積層)していく場合には、N回の接合(積層)が必要になるのに対し、上記製造方法によれば、1回の接合で済むため、製造プロセスを顕著に簡略化することができる。
【0057】
尚、分離ステップでのプラズマ又はレーザ光を用いた切断加工によれば、高精度での切断加工が可能になるため、分離部Edの形成によって個片化されたチップ領域Rcにおいて、各チップ領域Rc内の回路とそのチップ領域Rcのエッジ(外縁)との位置関係について、チップ領域Rcごとのバラツキが小さくすることができる。従って、接合ステップでのベース領域Rbとチップ領域Rcとの接合(積層)時においては、第2接合対象G2側の位置決めの基準として、位置決めマークPtに代えて、チップ領域Rcのエッジを用いてもよい。
【0058】
<薄化ステップ~接合ステップの繰返し>
本実施形態のように、製造しようとする積層デバイス10が、ベース11上にチップMcを2層以上積層したものである場合(
図1参照)には、ベース母材Gbに対してチップ母材Gcを2枚以上接合する必要がある。この場合、後述する切断ステップへ移行する前に、上述した薄化ステップ、分離ステップ、及び接合ステップが、ベース母材Gbに対して接合するチップ母材Gcの枚数に応じて繰り返し実行される。即ち、本実施形態では、複数のベース領域Rbが設けられているベース母材Gb(第1接合対象G1)に対して、当該複数のベース領域Rbをそれぞれ個片化するための切断加工を施す前に(後述する切断ステップを実行する前に)、上述した薄化ステップ、分離ステップ、及び接合ステップを繰り返し実行することにより、ベース母材Gbに設けられている各ベース領域RbへのチップMc(チップ領域Rc)の積層を実行する。以下、薄化ステップ~接合ステップの繰返しのプロセスについて、具体的に説明する。
【0059】
上述した接合ステップの後、第2接合対象G2から第2支持体22を剥離する(
図10(A)の左上図参照)。本実施形態では、上述したように、第2支持体22の保持力は、そのシートの剥離時に第1接合対象G1と第2接合対象G2との接合部分を破壊してしまうことのない大きさに調整されている。従って、上記接合部分には、第2支持体22の剥離に起因した破壊は殆ど生じることがない。また、第1支持体21及び第2支持体22において、それらの保持面21a及び22aには、第2支持体22に第2接合対象G2を保持させたときのそれらの接触面積が、第1支持体21に第1接合対象G1を保持させたときのそれらの接触面積より小さくなるように凸部21b及び22bが形成されている。従って、第1支持体21と第2支持体22とには、接合対象に対する保持力に差が生じており、その結果として剥離強度にも差が生じている(具体的には、接触面積が小さい第2支持体22のほうが剥離しやすくなっている)。よって本実施形態では、そのような保持力の差(ここでは、剥離強度の差)を利用して第2支持体22だけを容易に剥離することが可能になっている。
【0060】
その後、第2接合対象G2上に、別のチップ母材Gcを更に接合する。具体的には、上述した接合ステップ(
図9(A)及び
図9(B)参照)にて第2接合対象G2が接合された第1接合対象G1を新たな第1接合対象G1とし、且つ、上記別のチップ母材Gcを新たな第2接合対象G2として、当該第2接合対象G2の薄化、並びに、上述した分離ステップ(
図5、
図7(A)、及び
図7(B)参照)及び接合ステップ(
図10(A)及び
図10(B)参照)を更に実行する。
【0061】
そして、接合するチップ母材Gcの枚数に応じて、第2支持体22の剥離、第2接合対象G2の薄化、分離ステップ(
図5参照)、及び接合ステップ(
図10(A)参照)を繰り返し実行する。本実施形態では、チップ母材Gcを7枚接合する必要があるため、1回目の接合ステップ(
図9(A)参照)の後、2層目から7層目までのチップ母材Gcを更に接合するために、上述した繰返しが6回行われることになる。
図11(A)は、ベース母材Gb上にチップ母材Gcを7層目まで接合(積層)したときの状態を示した概念図であり、
図11(B)は、
図11(A)に示されたZd-Zd線での縦断面図である。
【0062】
尚、この繰返しのプロセスで実行される接合ステップにおいては、新たな第1接合対象G1に対する新たな第2接合対象G2の位置決めの基準のとして、位置決めマークPtに代えて、新たな第1接合対象G1側に含まれているチップ領域Rcのエッジと、そのチップ領域Rc上に積層される新たな第2接合対象G2側のチップ領域Rcのエッジとを用いることができる。
【0063】
このような繰返しのプロセスによれば、第1接合対象G1(ベース母材Gb)に対して、チップ母材Gcを第2接合対象G2として複数接合(積層)していく場合でも、当該チップ母材Gcごとに、1回の接合操作で、そのチップ母材Gcに設けられている全てのチップ領域Rcを纏めて接合(積層)することができる。具体的には、第1接合対象G1(ベース母材Gb)にN個のベース領域Rbが設けられ、第2接合対象G2(チップ母材Gc)にN個のチップ領域Rcが設けられている場合において、N個のベース領域Rbにチップ領域Rcを1つずつ且つ3次元的にM回積層していく場合には、N×M回の積層操作が必要になるのに対し、上記繰返しのプロセスによれば、M回の接合で済むため、積層デバイス10の製造プロセスを顕著に簡略化することができる。
【0064】
そして、このような繰返しのプロセスを実行することにより、
図11(B)に示されるように、ベース母材Gbに設けられている各ベース領域Rb上には、1層目から7層目までチップ領域Rc(チップMc)が3次元的に積層され、それによってチップ積層体12が形成されることになる。また、隣接するチップ積層体12の間には、分離部Edによって生じた適度な隙間(即ち、ベース母材Gbへの切断加工を可能にする隙間)が形成されることになる。
【0065】
<切断ステップ>
切断プロセスでは、チップ積層体12の間に形成された隙間を利用してベース母材Gbに切断加工を施すことにより(
図11(B)の例では、一点鎖線の位置でベース母材Gbを切断することにより)、複数のベース領域Rbをそれぞれ個片化する。これにより、積層デバイス10(
図1参照)が完成する。
【0066】
[2]変形例
[2-1]第1変形例
上述した積層デバイス10の製造方法において、分離ステップでは、2本の切断線Ldを、当該2本の切断線Ldの間にPCM(プロセスコントロールモニタ)が位置することとなるように形成してもよい。或いは、PCMを、分離ステップで形成する2本の切断線Ldの間に位置することとなるように形成してもよい。
【0067】
第1変形例の構成によれば、2本の切断線Ldの間の不要な部分を取り除いたときに、PCM(具体的には、PCMを構成する回路素子)も一緒に取り除くことができる。よって、PCMを予め取り除いておくためのプロセス(レーザ光の照射による除去など)を別途設ける必要がなく、積層デバイス10の製造プロセスを簡略化することができる。
【0068】
[2-2]第2変形例
上述した積層デバイス10の製造方法において、分離ステップでは、分離部Edの形成領域全体にプラズマエッチングを施すことにより、分離部Edとして、プラズマでエッチングされた所定幅Wtのエッチング領域を形成してもよい。
【0069】
[2-3]第3変形例
上述した積層デバイス10の製造方法において、検査ステップと、置換ステップと、が更に実行されてもよい。ここで、検査ステップ及び置換ステップは、分離ステップの後であって、且つ、接合ステップの前に実行される。検査ステップでは、分離ステップにて個片化したチップ領域Rcごとに、そのチップ領域Rcが不良品である否かを検査する。そして、検査ステップで不良品を検出した場合、置換ステップにおいて、当該不良品を良品に置き換える。
【0070】
上記実施形態で説明したように、分離ステップでは、チップ母材Gcに設けられている複数のチップ領域Rcが、隣接するチップ領域Rcの間に適度な隙間が設けられた状態で個片化される。従って、分離ステップにて個片化された複数のチップ領域Rcからは、そのままの状態で(即ち、隣接するチップ領域Rcの間の距離を、伸縮性シートなどを用いて拡げることなく)、チップ領域Rcの1つだけを、隣りのチップ領域Rcに接触させずに容易に取り出すことができる。そこで、第3変形例の構成においては、そのことを利用して不良品を良品に置き換えることにより、積層デバイス10の歩留まり(良品率)を高めることを可能にしている。
【0071】
[2-4]第4変形例
上述した積層デバイス10の製造方法において、製造しようとする積層デバイス10を、サイズが異なるチップMcをベース11上に積層したものに適宜変更してもよい。この場合、繰返しのプロセスにおいて2層目以降のチップ母材Gc(第2接合対象G2)を接合(積層)する際に、分離ステップにて当該チップ母材Gcに形成する分離部Edの幅(所定幅Wt)を層ごとに適宜変更することにより、積層するチップMcのサイズを異ならせることができる。
【0072】
図12は、第4変形例においてベース母材Gb(第1接合対象G1)上にチップ母材Gc(第2接合対象G2)を2層目まで接合(積層)したときの状態を概念的に例示した縦断面図である。
図12の例では、2層目のチップ母材Gcから得られるチップMc(個片化されたチップ領域Rc)のサイズが、1層目のチップ母材Gcから得られるチップMc(個片化されたチップ領域Rc)のサイズより小さくなるように、2層目のチップ母材Gcに形成する分離部Edの幅(所定幅Wt=Wt2)を、1層目のチップ母材Gcに形成する分離部Edの幅(所定幅Wt=Wt1)よりも大きくした場合が示されている。
【0073】
[2-5]第5変形例
上述した積層デバイス10の製造方法において、製造しようとする積層デバイス10を、ベース11上の1箇所にだけチップMcを3次元的に積層したもの(
図1参照)に限らず、ベース11上の複数箇所にチップMcを3次元的に積層したものに適宜変更してもよい。この場合、ベース母材Gb(第1接合対象G1)に設けられるベース領域Rbと、チップ母材Gc(第2接合対象G2)に設けられるチップ領域Rcとは、ベース領域Rbに対してチップ領域Rcが複数ずつ所定の位置関係で対応するように形成されることになる。
【0074】
[2-6]第6変形例
上述した積層デバイス10の製造方法において、分離ステップでは、薄化ステップで薄化した第2接合対象G2(チップ母材Gc)を何らかの基板(ウェハやガラス基板など)に保持し、その状態で、プラズマ又はレーザ光を用いて分離部Edを形成してもよい。そして、分離部Edの形成後、次の接合ステップへ移行する前に、当該分離部Edの形成によって個片化されたチップ領域Rcをそのまま、上記基板から第2支持体22へ転写してもよい。
【0075】
[2-7]第7変形例
上述した積層デバイス10の製造方法において、上述した薄化ステップ及び分離ステップに代えて、以下のようなプロセスによって第2接合対象G2(チップ母材Gc)の薄化と分離部Edの形成とを実現してもよい。
【0076】
図13(A)~
図13(C)は、上述した薄化ステップ及び分離ステップに代えて実行可能なプロセスを示した概念図である。
図13(A)に示されるように、第2接合対象G2(チップ母材Gc)を薄化する前に、当該第2接合対象G2に対してプラズマ又はレーザ光を用いた切断加工を施すことにより、薄化によって露出することになる深さまで、分離部Edを形成するための2本の切断線Ldとなる溝Qdを形成する。次に、
図13(B)に示されるように、第2接合対象G2を何からの基板又は保持シートへ転写してから、当該第2接合対象G2を、上記溝Qdを形成した面とは反対側の面から薄化する。そして、
図13(C)に示されるように、当該反対側の面に上記溝Qdを露出させることにより、当該溝Qdを切断線Ldに変化させる。その後、このようにして形成した2本の切断線Ldの間の不要な部分を取り除くことにより、分離部Edを完成させる(
図8(C)参照)。尚、プラズマ又はレーザ光を用いた切断加工によって溝Qdを形成するステップ(
図13(A)参照)では、2本の切断線Ldとなる溝Qdに代えて、第2変形例で説明したエッチング領域となる溝を形成してもよい。
【0077】
[2-8]他の変形例
上述した積層デバイス10の製造方法において、第1支持体21や第2支持体22には、ダイシングテープが適宜用いられてもよい。
【0078】
上述の実施形態及び変形例の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態や変形例ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0079】
また、上述の実施形態や変形例からは、発明の対象として、積層デバイス10の製造方法を構成する幾つかのステップが部分的に抽出されてもよいし、各ステップが個々に抽出されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 積層デバイス
11 ベース
12 チップ積層体
21 第1支持体
22 第2支持体
21a、22a 保持面
21b、22b 凸部
21c、22c 接触面
Ed 分離部
G1 第1接合対象
G2 第2接合対象
Gb ベース母材
Gc チップ母材
Ld 切断線
Mc チップ
Pt 位置決めマーク
Qd 溝
Rb ベース領域
Rc チップ領域
Wt 所定幅