(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080251
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】レーザ点火装置
(51)【国際特許分類】
F42B 3/113 20060101AFI20240606BHJP
F02K 9/95 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
F42B3/113
F02K9/95
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193290
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】松浦 芳樹
(57)【要約】
【課題】電気的外乱による点火薬の誤着火をより確実に防止できるレーザ点火装置を提供する。
【解決手段】レーザ点火装置10は、レーザ光案内部1、点火薬2、金属製のケース3、および絶縁構造5を備える。レーザ光案内部1は、レーザ光を案内する。点火薬2は、レーザ光案内部1からのレーザ光が前側から照射されることにより着火される。ケース3は、点火薬2を内部に収容し、着火された点火薬2からの燃焼ガスを後側に流す開口3cを有する。絶縁構造5は、点火薬2をケース3の内面から分離するようにケース3の内部に設けられ、絶縁材料で構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を案内するレーザ光案内部と、
前記レーザ光案内部に案内されたレーザ光が前側から照射されることにより着火される点火薬と、
前記点火薬を内部に収容し、着火された前記点火薬からの燃焼ガスを後側に流す開口を有する金属製のケースと、
前記点火薬を前記ケースの内面から分離するように前記ケースの内部に設けられ、絶縁材料で構成された絶縁構造と、を備える、レーザ点火装置。
【請求項2】
前記絶縁構造は、前記点火薬に前側からレーザ光を通すように、前記点火薬を内部に密封しており、
前記絶縁構造は、着火された前記点火薬の燃焼圧により、当該燃焼ガスが後側に流れるように破壊される後側部分を有する、請求項1に記載のレーザ点火装置。
【請求項3】
前記点火薬は、前側から後側へ延びる前記ケースの中心軸に対する周方向に延びる外周面を有し、前記ケースは、前記周方向に延びる内周面を有し、
前記絶縁構造は、前記点火薬の前記外周面と前記ケースの前記内周面との間に位置し、前記点火薬の外周面を覆う外周カバー部材を含む、請求項1に記載のレーザ点火装置。
【請求項4】
前記外周カバー部材は、前記中心軸に対する半径方向の内側を向く内周面を有し、
前記点火薬の前記外周面は、前記外周カバー部材の内周面に取り付けられている、請求項3に記載のレーザ点火装置。
【請求項5】
前記点火薬は、前側を向く前面と、後側を向く後面とを有し、
前記絶縁構造は、前記レーザ光案内部と前記点火薬の間に位置し、前記点火薬の前記前面が取り付けられ、当該点火薬を前側から覆う光透過部材を含み、
当該光透過部材は、前記レーザ光案内部からのレーザ光を透過させる絶縁材料で形成されている、請求項3に記載のレーザ点火装置。
【請求項6】
前記絶縁構造は、前記点火薬の前記後面を覆うように当該後面に取り付けられた後面カバー部材を備え、
当該後面カバー部材は、絶縁材料で形成されるとともに、着火された前記点火薬の燃焼圧により破壊されるように構成される、請求項5に記載のレーザ点火装置。
【請求項7】
前記外周カバー部材、前記光透過部材、および前記後面カバー部材により構成される前記絶縁構造の内部に、前記点火薬が密封されている、請求項6に記載のレーザ点火装置。
【請求項8】
前記レーザ光案内部は、光ファイバであり、
前記光透過部材は、前側を向く前面を有し、当該前面に、前記光ファイバの先端面が位置する、請求項5~7のいずれか一項に記載のレーザ点火装置。
【請求項9】
前記光透過部材は、板状に形成されている、請求項8に記載のレーザ点火装置。
【請求項10】
前記後面カバー部材を形成する前記絶縁材料は、マイカである、請求項6又は7に記載のレーザ点火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光により点火薬を着火させるレーザ点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
点火装置は、点火薬を着火させることで、点火薬から生じる燃焼ガスまたは火炎により、ガスジェネレータなどの点火対象の装置を点火させる。点火対象の装置がガスジェネレータとしての固体ロケットモータである場合、小型の点火薬が、着火されることにより発生する燃焼ガスまたは火炎により、固体ロケットモータにおける大型の固体推進薬が点火される。その結果、固体推進薬から燃焼ガスが発生し、当該燃焼ガスがノズルから噴出されることにより、ロケットの推進力が得られる。
【0003】
電気式の点火装置では、点火薬に接触するようにブリッジワイヤが設けられている。このブリッジワイヤに着火用の電流を流すことで、ブリッジワイヤを発熱させ、この熱で点火薬を着火させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-303301号公報
【特許文献2】特開2013-57447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気式の点火装置においては、電気的外乱(静電気や雷)により急峻なエネルギーがブリッジワイヤを介して点火薬に伝わり、点火薬が誤って着火される可能性がある。そのため、このような電気的外乱による急峻なエネルギーの伝達を防ぐために、ブリッジワイヤを含む電気伝導路に誤着火防止手段(例えばコイルやローパスフィルタ)を設けることができる。
【0006】
一方、レーザ式の点火装置(以下でレーザ点火装置ともいう)では、点火薬に接触するブリッジワイヤなどの電気伝導路を無くすことができ、点火薬にレーザ光を照射することにより、点火薬を着火させる。したがって、上記のような誤着火防止手段を設けることなく、電気的外乱による点火薬の誤着火を防止できる。このようなレーザ点火装置は、例えば特許文献1、2に記載されている。
【0007】
しかし、レーザ点火装置の場合でも、以下のように、金属製のケースを用いているために、完全には、電気的外乱による点火薬の誤着火を排除できない可能性がある。
【0008】
電気式の点火装置だけでなくレーザ式の点火装置においても、点火薬が内部に配置されるケースは、通常、強度の高い金属で形成されている。点火薬から発生する高圧の燃焼ガスを点火対象の装置における点火対象部(例えば上記固体推進薬へ供給するために、所定の供給方向へは当該燃焼ガスをケース外へ流すが、それ以外の方向においては当該高圧の燃焼ガスをケース内で封止するためである。
【0009】
従来において、レーザ点火装置であっても、金属製のケースを通して、電気的外乱による急峻なエネルギーが点火薬に伝達し、その結果、点火薬が誤って着火される可能性がある。したがって、レーザ点火装置であっても、完全には、電気的外乱による点火薬の誤着火を排除できない可能性がある。
【0010】
そこで、本発明は、このような課題に着目してなされたものである。すなわち、本発明の目的は、電気的外乱による点火薬の誤着火をより確実に防止できるレーザ点火装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明によるとレーザ点火装置は、レーザ光案内部、点火薬、金属製のケース、および絶縁構造を備える。前記レーザ光案内部は、レーザ光を案内する。前記点火薬は、前記レーザ光案内部に案内されたレーザ光が前側から照射されることにより着火される。前記ケースは、前記点火薬を内部に収容し、着火された前記点火薬からの燃焼ガスを後側に流す開口を有する。前記絶縁構造は、前記点火薬を前記ケースの内面から分離するように前記ケースの内部に設けられ、絶縁材料で構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、電気的外乱による点火薬の誤着火をより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態によるレーザ点火装置の構成図である。
【
図3】
図2に対応するが、レーザ点火装置の他の構成例を示す。
【
図4】
図2に対応するが、レーザ点火装置の他の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態によるレーザ点火装置10の構成図である。なお、
図1は、後述するケース3の中心軸Cを含む仮想平面による断面図である。レーザ点火装置10は、前側から導入されるレーザ光により点火薬2を着火させ、これにより着火した点火薬2から生じる燃焼ガス又は火炎を後側に位置する点火対象の装置へ供給する。
【0016】
なお、本明細書において、前側は、後述するケース3の軸方向の一方側(
図1の右側)を意味し、後側は、ケース3の軸方向の他方側(
図1の左側)を意味し、周方向は、ケース3の中心軸Cに対する周方向を意味し、半径方向は、中心軸Cに対する半径方向を意味する。
【0017】
レーザ点火装置10は、上述のように後側へ供給された燃焼ガス又は火炎によりガスジェネレータなどの点火対象の装置を点火させる。当該点火対象の装置は、一例では、ガスジェネレータとしての固体ロケットモータであってよい。この場合、固体ロケットモータにおいて、レーザ点火装置10から上述のように後側へ供給された燃焼ガス又は火炎により、直接又は別の火工品を介して固体推進薬が着火され、その結果、固体推進薬から燃焼ガスが生じる。この燃焼ガスがノズルから外部へ噴出されることで、推進力が得られる。ただし、上記点火対象の装置は、固体ロケットモータに限定されず、レーザ点火装置10から後側に供給される燃焼ガスにより点火される装置であればよい。
【0018】
レーザ点火装置10は、レーザ光案内部1、点火薬2、ケース3、および絶縁構造5を備える。
【0019】
レーザ光案内部1は、レーザ光生成装置(図示せず)が生成したレーザ光を、前側から後側へ点火薬2に向けて案内する。これにより、レーザ光は、レーザ光案内部1を通って点火薬2に照射される。
【0020】
レーザ光案内部1は、例えば光ファイバであってよい。光ファイバ1は、上記レーザ光生成装置からレーザ点火装置10(ケース3の内部)まで細長く延びていてよい。
図2は、
図1の部分拡大図である。光ファイバ1は、レーザ点火装置10において、レーザ光を出射する先端面1aを有する。光ファイバ1の内部を伝播して来たレーザ光は、その先端面1aから出射されて点火薬2に照射される。
【0021】
点火薬2は、レーザ光案内部1に案内されたレーザ光が前側から照射されることにより着火される火工品である。点火薬2は、着火されると、燃焼して燃焼ガス(および火炎)を発生する。点火薬2は、例えばボロン硝酸カリウム系火薬(BKNO3)であってよいが、これに限定されない。点火薬2は、前側を向く前面2aと、後側を向く後面2bと、周方向に延び半径方向外側を向く外周面2cを有する。
【0022】
ケース3は、点火薬2を内部に収容する。ケース3は、周方向に延びて半径方向内側を向く内周面3aを有する。この内周面3aにより、ケース3の内部である内部空間3bが区画されている。この内部空間3bは、後側に開口している。すなわち、ケース3は、着火された点火薬からの燃焼ガスを後側に流す開口3cを有する。
図1の例では、内部空間3bは、中心軸C方向にケース3を貫通している。
【0023】
内部空間3bにおいて、点火薬2の前側には、レーザ光を点火薬2に照射するためのレーザ光案内部1(光ファイバ1の先端部)が配置され、点火薬2の後側へは、点火薬2が発生する燃焼ガス又は火炎がケース3の外部へ供給されるようになっている。ケース3の外部において、ケース3の後側には、点火対象の装置における点火対象部(例えば上記固体推進薬などの火工品)が位置する。この点火対象部は、点火薬2からの燃焼ガス又は火炎により着火される。
【0024】
なお、ケース3の内部空間3bに配置される火工品は、上述の点火薬2のみであってよく、点火薬2からの燃焼ガス又は火炎により着火される他の火工品は、ケース3の内部空間3bに配置されていなくてよい。
【0025】
ケース3は、金属製である。すなわち、ケース3は、強度の高い金属で形成されている。これにより、ケース3は、その半径方向の厚みを特に大きくしなくても、点火薬2が発生する高温で高圧の燃焼ガスを、半径方向外側および前側へはケース3の内部に封止可能である。当該燃焼ガスは、後側に、ケース3の内部から外部へ供給される。
【0026】
絶縁構造5は、導電性を有するケース3の内面から点火薬2を分離する。この場合、
図1のように、絶縁構造5は、ケース3の内面から点火薬2を分離しつつ、点火薬2に前側からレーザ光を通し、当該レーザ光により着火された点火薬2からの燃焼ガスが後側へ流れるように、絶縁材料で構成されている。絶縁構造5の全体が絶縁材料で構成されていてよい。ケース3の内面は、ケースの内部空間3bを区画する面であり、上述の内周面3aを含む。絶縁構造5により、点火薬2は、電気的に及び物理的にケース3から分離している。
【0027】
本実施形態では、絶縁構造5は、外周カバー部材51、光透過部材52、後面カバー部材53を備える。
【0028】
外周カバー部材51は、絶縁材料(すなわち絶縁体)により形成されている。当該絶縁材料は、例えばベークライトであってよいが、これに限定されない。
【0029】
外周カバー部材51は、ケース3の内部においてケース3の内面と点火薬2との間に位置する。ケース3の当該内面は、上述の内周面3aを含む。外周カバー部材51は、周方向に延びて半径方向内側を向く内周面51aと、周方向に延びて半径方向外側を向く外周面51bとを有する。外周カバー部材51の内周面51aには、点火薬2の外周面2cが取り付けられる。外周カバー部材51の外周面51bは、ケース3の内周面3aに取り付けられる。
【0030】
なお、
図2の例では、外周カバー部材51は、その内周面51aにより区画され自身を軸方向に貫通する貫通穴を有する。この貫通穴における前側端部に点火薬2が配置されている。また、この貫通穴における、点火薬2よりも後側部分は、後側へケース3の外部に連通するガス供給路51cになっている。すなわち、点火薬2が発生する燃焼ガス又は火炎は、後側へガス供給路51cを通ってケース3の外部へ流れるようになっている。
【0031】
このような外周カバー部材51により、点火薬2はケース3から電気的に分離される。すなわち、外周カバー部材51により、点火薬2がケース3に接触しないようになっている。
【0032】
光透過部材52は、レーザ光案内部1と点火薬2との間に位置する。光透過部材52には、点火薬2が後側から取り付けられている。光透過部材52は、点火薬2の全体を前側から覆う。
【0033】
詳しくは、光透過部材52は、前側を向く前面52aと、後側を向く後面52bを有する。光透過部材52の前面52aには、光ファイバ1の先端面1aが位置してよい。すなわち、光ファイバ1の先端面1aは、光透過部材52の前面52aに接触していてよい。光透過部材52の後面52bには、点火薬2が取り付けられていてよい。この場合、光透過部材52の後面52bには、点火薬2の前面2aが接触してよい。
【0034】
このように、光透過部材52は、レーザ光案内部1(光ファイバ1)と点火薬2との間に位置する。また、光透過部材52は、点火薬2の全体を前側から覆う。このような光透過部材52は、軸方向に厚みを有する板状に(例えば薄膜状)形成されていてよい。板状の光透過部材52の厚み方向は、レーザ光案内部1からのレーザ光が通過する方向である。
【0035】
光透過部材52は、レーザ光案内部1からのレーザ光を透過させる透明な絶縁材料で形成されている。当該絶縁材料は、例えばアクリルであるが、これに限定されない。
【0036】
光透過部材52の後面52bにおける中央部に点火薬2が取り付けられてよい。また、
図2のように、外周カバー部材51は、前側を向く前面51dを有し、光透過部材52の後面52bの半径方向外側部分が、外周カバー部材51の前面51dに、例えば接着剤などにより接合されていてよい。
【0037】
後面カバー部材53は、点火薬2の後面2bを覆うように当該後面2bに取り付けられる。後面カバー部材53は、絶縁材料で形成される。当該絶縁材料は、例えばマイカ(雲母)であるが、これに限定されない。
【0038】
後面カバー部材53は、着火された点火薬2の燃焼圧により破壊されるように構成される。例えば、後面カバー部材53は、点火薬2の燃焼圧により破壊される程度に小さい厚みを有する。当該厚みは、中心軸C方向の厚みである。このような後面カバー部材53は、当該厚みを有する板状(例えば薄膜状)に形成されたものであってよい。
【0039】
後面カバー部材53と光透過部材52とで点火薬2を挟み込むように、後面カバー部材53における半径方向外側の端部が、外周カバー部材51の内周面51aに、接着剤などにより接合されていてよい。これにより、点火薬2の前面2aが光透過部材52の後面52bに密着している状態が保持される。
【0040】
本実施形態によると、絶縁構造5は、点火薬2に前側からレーザ光を通すように、点火薬2を内部に密封してよい。すなわち、外周カバー部材51、光透過部材52、および後面カバー部材53により構成される絶縁構造5の内部に、点火薬2が密封されてよい。この場合、外周カバー部材51、光透過部材52、および後面カバー部材53同士の間は、接着剤などの封止剤により気密に閉じられていてよい。
【0041】
また、絶縁構造5は、着火された点火薬2の燃焼圧により、当該燃焼ガスが後側に流れるように破壊される後側部分を有する。絶縁構造5における当該後側部分は、本実施形態では、後面カバー部材53である。
【0042】
なお、レーザ点火装置10は、
図1のように、ファイバ保持部材6やコネクタ7などを更に有していてよい。
【0043】
ファイバ保持部材6は、ケース3の内周面3aに取り付けられる。ファイバ保持部材6は、自身の内部を貫通するように延びる光ファイバ1の先端部を気密に保持する。すなわち、ファイバ保持部材6の内部において、光ファイバ1の外周面は、ファイバ保持部材6の内面に隙間なく密着又は接合されている。これにより、ファイバ保持部材6において、光ファイバ1とファイバ保持部材6との間をガスが通過できないようになっている。ファイバ保持部材6は、絶縁材料(例えば樹脂)により形成されてよい。
【0044】
コネクタ7は、光ファイバ1の中間部が内部に取り付けられており、ファイバ保持部材6に結合されている。これにより、コネクタ7は、ファイバ保持部材6を介してケース3に取り付けられている。なお、コネクタ7は、他の部材を介して又は直接ケース3に取り付けられてもよい。
【0045】
なお、
図1のように、ケース3の内周面3aとファイバ保持部材6の外周面6aとの間には、シール部材8が設けられてよい。シール部材8により、当該内周面3aと当該外周面6aとの間が密閉される。なお、当該内周面3aと当該外周面6aとの間を密閉するシール構造は、複数のシール部材8を備えて冗長性を有するように構成されてもよい。また、ケース3の前側の端部には、ケース3における内部空間3bの前側の開口を密閉する封止部材9が設けられてよい。封止部材9は、ケース3の内周面3aの前端部に接着剤などにより接合されており、その中央部をコネクタ7が気密に貫通している。封止部材9は、例えば樹脂により形成されている。
図1のように、ケース3の外周面3dには、シール部材11が設けられてもよい。このシール部材11は、上記点火対象の装置の構造体(図示せず)と外周面3dとの間を密閉する。
【0046】
(実施形態の効果)
絶縁構造5は、金属製のケース3から点火薬2を電気的に及び物理的に分離するように絶縁材料で構成されている。したがって、電気的外乱による急峻なエネルギーが金属製のケース3を通して点火薬2に伝達することを防止できる。これにより、電気的外乱による点火薬2の誤着火を防止できるので、レーザ点火装置10の電気的外乱に対する耐性を高めることができる。
【0047】
絶縁構造5は、点火薬2の外周面2cとケース3の内周面3aとの間に位置し、点火薬2の外周面2cを覆う外周カバー部材51を含む。したがって、点火薬2の外周面2cが、ケース3の内周面3aに接触することを防止できる。これにより、電気的外乱による急峻なエネルギーが、半径方向に点火薬2の外周面2cに伝達することを防止できる。
【0048】
この場合に、点火薬2の外周面2cを、外周カバー部材51の内周面51aに取り付けることで、点火薬2の外周面2cを、外周カバー部材51で安定して覆うことができる。
【0049】
光透過部材52は、レーザ光案内部1と点火薬2の間に位置し、点火薬2の前面2aが取り付けられ、点火薬2を前側から覆う。したがって、点火薬2の前面2aが、光透過部材52に覆われるので、点火薬2の前面2aが、導電性の物に接触することを防止できる。これにより、電気的外乱による急峻なエネルギーが、前側から点火薬2に伝達することを防止できる。
【0050】
絶縁材料で形成された後面カバー部材53は、点火薬2の後面2bを覆うように当該後面2bに取り付けられる。したがって、点火薬2の後面2bが、後面カバー部材53に覆われるので、点火薬2の後面2bが、導電性の物に接触することを防止できる。これにより、電気的外乱による急峻なエネルギーが、後側から点火薬2に伝達することを確実に防止できる。
また、後面カバー部材53は、着火された点火薬2により破壊されるように構成される。したがって、点火薬2が着火されることにより発生する高温高圧の燃焼ガスを、作動対象の所定の装置が配置された後側へ供給することができる。
【0051】
外周カバー部材51、光透過部材52、および後面カバー部材53により構成される絶縁構造5の内部に、点火薬2が密封されている。したがって、電気的外乱による急峻なエネルギーが点火薬2に伝達されることを更に確実に防止できる。例えば、いずれの方向からも、静電気による火花が点火薬2に達してしまうことを防止できる。このように、電気的外乱による点火薬2の誤着火を確実に防止できる。
【0052】
レーザ光案内部1は、光ファイバであり、光透過部材52の前面52aに、光ファイバ1の先端面1aが位置する。したがって、光ファイバ1の先端面1aから出射されたレーザ光は、光透過部材52を通して直ぐに点火薬2に至るので、その断面積が広がる前に点火薬2に照射される。すなわち、光ファイバ1の先端面1aから出射されたレーザ光は、集光された状態で点火薬2に照射される。この照射により、点火薬2を加熱して着火させることができる。そのため、光ファイバ1の先端面1aから出射されたレーザ光を、点火薬2上に集光させるレンズなどを設けることが不要となる。このようなレンズをケース3内に設けない
図1の構成例により、点火薬2を着火できることは、実験により確認済みである。
【0053】
また、光透過部材52は、板状に形成されているので、光ファイバ1の先端面1aから点火薬2までの距離を僅かな距離にすることができる。
【0054】
後面カバー部材53を形成する絶縁材料がマイカである場合には、マイカの性質により、高い耐熱性と電気を通し難い性質(絶縁性)の両方を有する後面カバー部材53を形成することができる。
【0055】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、本発明の実施形態によるレーザ点火装置10は、上述した複数の事項の全て有していなくてもよく、上述した複数の事項のうち一部のみを有していてもよい。
【0056】
また、以下の変更例を採用してもよい。この場合、以下で述べない点は、上述と同じである。
【0057】
(変更例)
上述の実施形態では、外周カバー部材51、光透過部材52、および後面カバー部材53により構成される絶縁構造5の内部に、点火薬2が密封されている。しかし、本発明によると、絶縁構造5は、点火薬2を内部に密封する他の構成を有していてもよい。例えば、絶縁構造5は、
図3または
図4に示すような構成を有していてもよいが、これらに限定されない。
図3と
図4は、
図2に対応する図であるが、それぞれ絶縁構造5の他の構成例1、2を示す。
【0058】
<他の構成例1>
図3のように、絶縁構造5は、光透過部材52を有していなくてもよい。この場合、絶縁構造5は、外周カバー部材51、後面カバー部材53、ファイバ保持部材6、および光ファイバ1の先端部により、点火薬2を内部に密封する構造であってよい。すなわち、絶縁構造5は、外周カバー部材51、後面カバー部材53、ファイバ保持部材6、および光ファイバ1の先端部により構成されていてもよい。
【0059】
また、点火薬2の前面2aは、ファイバ保持部材6の後面6bおよび光ファイバ1の先端面1aに密着していてよい。
【0060】
<他の構成例2>
図4のように、絶縁構造5を構成する後面カバー部材53は、点火薬2の後面2bから後側にずれた位置で、点火薬2の後面2bを覆うように外周カバー部材51に取り付けられてもよい。
【0061】
例えば、以下のように、後面カバー部材53が外周カバー部材51に接合されてよい。外周カバー部材51は、後側を向く後面51eを有し、この後面51eには、上述のガス供給路51cを後側へ開放する開口51fが形成されている。後面カバー部材53は、この開口51fを塞ぐように外周カバー部材51の後面51eに、接着剤などにより接合されていてもよい。
【0062】
このような構成により、外周カバー部材51、光透過部材52、および後面カバー部材53により構成される絶縁構造5の内部に、点火薬2が密封されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 レーザ光案内部(光ファイバ)、1a 先端面、2 点火薬、2a 前面、2b 後面、2c 外周面、3 ケース、3a 内周面、3b 内部空間、3c 開口、3d 外周面、5 絶縁構造、6 ファイバ保持部材、6a 外周面、6b 後面、7 コネクタ、8 シール部材、9 封止部材、10 レーザ点火装置、11 シール部材、51 外周カバー部材、51a 内周面、51b 外周面、51c ガス供給路、51d 前面、51e 後面、51f 開口、52 光透過部材、52a 前面、52b 後面、53 後面カバー部材、C 中心軸