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特開2024-80258メロン果汁入り飲料およびメロン果汁入り飲料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080258
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】メロン果汁入り飲料およびメロン果汁入り飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/02 20060101AFI20240606BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20240606BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240606BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20240606BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20240606BHJP
【FI】
A23L2/02 A
A23L2/56
A23L2/00 B
A23L27/00 Z
A23L27/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193305
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 春菜
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 徳子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 遼
【テーマコード(参考)】
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B047LB08
4B047LB09
4B047LF07
4B047LG05
4B047LG38
4B047LG51
4B047LP14
4B117LC03
4B117LE10
4B117LG05
4B117LK06
4B117LK18
4B117LL01
4B117LL02
4B117LP13
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】美味しさを保持しつつ瓜臭を抑制できるメロン果汁入り飲料およびメロン果汁入り飲料の瓜臭抑制に関する技術を提供する。
【解決手段】本発明のメロン果汁入り飲料は、メロン果汁と、イソ酪酸エチル、酪酸エチル、酢酸ヘキシル、および酢酸シス-3-ヘキセニルの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分と、を含有し、以下の要件(a)~(d)のいずれかを満たす;(a)イソ酪酸エチル濃度が20ppb以上120ppm以下であり、(b)酪酸エチル濃度が1.0ppm以上80ppm以下であり、(c)酢酸ヘキシル濃度が20ppb以上100ppm以下であり、(d)酢酸シス-3-ヘキセニル濃度が20ppb以上80ppm以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メロン果汁と、イソ酪酸エチル、酪酸エチル、酢酸ヘキシル、および酢酸シス-3-ヘキセニルの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分と、を含有し、以下の要件(a)~(d)のいずれかを満たす、メロン果汁入り飲料;
(a)イソ酪酸エチル濃度が20ppb以上120ppm以下であり、
(b)酪酸エチル濃度が1.0ppm以上80ppm以下であり、
(c)酢酸ヘキシル濃度が20ppb以上100ppm以下であり、
(d)酢酸シス-3-ヘキセニル濃度が20ppb以上80ppm以下である。
【請求項2】
乳をさらに含有する、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
メロン果汁の含有量が0.5~30質量%である、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
メロン風味飲料である、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項5】
無脂乳固形分量が0.1~5質量%以上である、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項6】
クエン酸酸度が0.25~0.45g/100mlである、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項7】
甘味料を含む、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項8】
容器詰めされた、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項9】
常温用またはコールド用である、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項10】
メロン果汁と、イソ酪酸エチル、酪酸エチル、酢酸ヘキシル、および酢酸シス-3-ヘキセニルの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分と、を含有するメロン果汁入り飲料の製造方法であって、
以下の要件(a)~(d)のいずれかを満たすように飲料を調製する工程を含む、飲料の製造方法;
(a)イソ酪酸エチル濃度が20ppb以上120ppm以下であり、
(b)酪酸エチル濃度が1.0ppm以上80ppm以下であり、
(c)酢酸ヘキシル濃度が20ppb以上100ppm以下であり、
(d)酢酸シス-3-ヘキセニル濃度が20ppb以上80ppm以下である。
【請求項11】
イソ酪酸エチル、酪酸エチル、酢酸ヘキシル、および酢酸シス-3-ヘキセニルの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分を含み、メロン果汁入り飲料の瓜臭を抑制するための、瓜臭抑制剤。
【請求項12】
請求項11の瓜臭抑制剤を、メロン果汁入り飲料に添加する工程を含む、瓜臭抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メロン果汁入り飲料およびメロン果汁入り飲料の製造方法に関する。より詳細には、メロン果汁入り飲料、メロン果汁入り飲料の製造方法、瓜臭抑制剤および瓜臭抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な果実や野菜類の果汁を含有する飲料が知られている。なかでも、生果のメロンは、収穫後追熟することで食べ頃になり、上品な甘さと芳醇でまろやかな風味を有するものとして広く親しまれている。しかし、メロン果汁を使用して飲料にする場合、その属性から瓜臭さや青臭さを感じられやすくなり、生果の場合とは異なり、好ましくない風味の印象を生じることが知られている。
そこで、特許文献1には、メロン果汁を含む飲料に、所定量の食塩を配合し、クエン酸酸度を調節することにより、メロン果汁特有の瓜臭さや青臭さを低減し、酸味と甘みのバランスがとれたメロン生果本来の良好な風味を有するメロン果汁入り飲料が開示されている。
【0003】
一方、イソ酪酸エチル、酪酸エチル、酢酸ヘキシル等の香気成分は、柑橘系飲料やリンゴ飲料等の風味を改善するために用いられることがある(例えば、特許文献2~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-213469号公報
【特許文献2】特開2020-174605号公報
【特許文献3】特開2018-191601号公報
【特許文献4】特開2020-92611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、メロン果汁飲料に特有の瓜臭さを抑制する点から検討を行ったところ、特許文献1に記載される技術は、食塩を用いることで課題を解決しようとするものであり、香気成分に着目したものではなかった。また、特許文献1記載の飲料は、メロン果汁入り飲料としての美味しさを保持しつつ瓜臭を抑制する点で改善の余地があるものであった。
そこで、本発明者は、さらに検討を重ねた結果、メロン果汁入り飲料にイソ酪酸エチル、酪酸エチル、酢酸ヘキシル、および酢酸シス-3-ヘキセニルといった特定の香気成分を特定量用いることが有効であることを見出し、本発明を完成させた。
なお、特許文献2~4に開示される技術は、イソ酪酸エチル、酪酸エチル、および酢酸ヘキシルといった香気成分を柑橘果汁等と組み合わせるものであり、メロン果汁と組み合わせることについて検討したものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、メロン果汁入り飲料に、イソ酪酸エチル、酪酸エチル、酢酸ヘキシル、および酢酸シス-3-ヘキセニルといった香気成分を特定量用いることで、美味しさを保持しつつ瓜臭を抑制できる技術を提供するものである。また、イソ酪酸エチル、酪酸エチル、酢酸ヘキシル、および酢酸シス-3-ヘキセニルの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分を含む、メロン果汁入り飲料用の瓜臭抑制剤に関する技術を提供するものである。
本発明によれば、以下のメロン果汁入り飲料およびメロン果汁入り飲料の瓜臭抑制に技術が提供される。
【0007】
[1] メロン果汁と、イソ酪酸エチル、酪酸エチル、酢酸ヘキシル、および酢酸シス-3-ヘキセニルの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分と、を含有し、以下の要件(a)~(d)のいずれかを満たす、メロン果汁入り飲料;
(a)イソ酪酸エチル濃度が20ppb以上120ppm以下であり、
(b)酪酸エチル濃度が1.0ppm以上80ppm以下であり、
(c)酢酸ヘキシル濃度が20ppb以上100ppm以下であり、
(d)酢酸シス-3-ヘキセニル濃度が20ppb以上80ppm以下である。
[2] 乳をさらに含有する、[1]に記載の飲料。
[3] メロン果汁の含有量が0.5~30質量%である、[1]または[2]に記載の飲料。
[4] メロン風味飲料である、[1]乃至[3]いずれか一つに記載の飲料。
[5] 無脂乳固形分量が0.1~5質量%以上である、[1]乃至[4]いずれか一つに記載の飲料。
[6] クエン酸酸度が0.25~0.45g/100mlである、[1]乃至[5]いずれか一つに記載の飲料。
[7] 甘味料を含む、[1]乃至[6]いずれか一つに記載の飲料。
[8] 容器詰めされた、[1]乃至[7]いずれか一つに記載の飲料。
[9] 常温用またはコールド用である、[1]乃至[8]いずれか一つに記載の飲料。
[10] メロン果汁と、イソ酪酸エチル、酪酸エチル、酢酸ヘキシル、および酢酸シス-3-ヘキセニルの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分と、を含有するメロン果汁入り飲料の製造方法であって、
以下の要件(a)~(d)のいずれかを満たすように飲料を調製する工程を含む、飲料の製造方法;
(a)イソ酪酸エチル濃度が20ppb以上120ppm以下であり、
(b)酪酸エチル濃度が1.0ppm以上80ppm以下であり、
(c)酢酸ヘキシル濃度が20ppb以上100ppm以下であり、
(d)酢酸シス-3-ヘキセニル濃度が20ppb以上80ppm以下である。
[11] イソ酪酸エチル、酪酸エチル、酢酸ヘキシル、および酢酸シス-3-ヘキセニルの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分を含み、メロン果汁入り飲料の瓜臭を抑制するための、瓜臭抑制剤。
[12] [11]の瓜臭抑制剤を、メロン果汁入り飲料に添加する工程を含む、瓜臭抑制方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、美味しさを保持しつつ瓜臭を抑制できるメロン果汁入り飲料、およびメロン果汁入り飲料の瓜臭抑制に関する技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。また、「ppm」は「mg/L」と同義であり、「ppb」は「μg/L」と同義である。
【0010】
<メロン果汁入り飲料>
本実施形態のメロン果汁入り飲料は、メロン果汁と、イソ酪酸エチル、酪酸エチル、酢酸ヘキシル、および酢酸シス-3-ヘキセニルの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分と、を含有し、以下の要件(a)~(d)のいずれかを満たす。
(a)イソ酪酸エチル濃度が20ppb以上120ppm以下であり、
(b)酪酸エチル濃度が1.0ppm以上80ppm以下であり、
(c)酢酸ヘキシル濃度が20ppb以上100ppm以下であり、
(d)酢酸シス-3-ヘキセニル濃度が20ppb以上80ppm以下である。
これにより、美味しさを保持しつつ瓜臭を抑制できる。かかる理由の詳細は明らかではないが、次のように推測される。イソ酪酸エチル、酪酸エチル、酢酸ヘキシル、および酢酸シス-3-ヘキセニルは、いずれもエステル化合物であり、一般に、甘い芳香を呈する傾向が知られている。そこで、メロン果汁による瓜臭がイソ酪酸エチル、酪酸エチル、酢酸ヘキシル、および酢酸シス-3-ヘキセニルによってマスキングされるとともに、これらエステル化合物を適量に制御することで得られる甘い芳香がメロン果汁の風味と相まって、メロンらしい美味しさが保持されると考えられる。
【0011】
また、さらに本発明者は、容器詰めメロン果汁飲料の殺菌処理によって、瓜臭がより顕著になる傾向を見出した。しかし、殺菌処理によって瓜臭が顕著になったとしても、本実施形態のメロン果汁入り飲料は、要件(a)~(d)のいずれかを満たすことで瓜臭を抑制することができる。
なお、要件(a)~(d)は、メロン果汁のほかに、イソ酪酸エチル、酪酸エチル、酢酸ヘキシル、および酢酸シス-3-ヘキセニルの香気成分を単体または混合物として飲料に添加することによって実現できる。
【0012】
以下、本実施形態のメロン果汁入り飲料(以下、単に「飲料」とも表記する)に含まれる各成分について説明する。
【0013】
[イソ酪酸エチル]
イソ酪酸エチルは、CAS番号.97-62-1の化合物である。本実施形態において、(a)イソ酪酸エチル濃度は20ppb以上120ppm以下である。
イソ酪酸エチル濃度の下限値は、瓜臭の抑制効果を得る点から、好ましくは30ppb以上であり、より好ましくは60ppb以上であり、さらに好ましくは100ppb以上、ことさらに好ましくは500ppb以上、さらに一層好ましくは1.0ppm以上である。一方、イソ酪酸エチル濃度の上限値は、瓜臭の抑制効果を保持しつつ、美味しさを得る点から、好ましくは100ppm以下であり、さらに後味を良好にする点から、より好ましくは90ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。
【0014】
[酪酸エチル]
酪酸エチルは、CAS番号.105-54-4の化合物である。本実施形態において、(b)酪酸エチル濃度は1.0ppm以上80ppm以下である。
酪酸エチル濃度の下限値は、瓜臭の抑制効果を得る点から、好ましくは2.0ppm以上であり、より好ましくは3.0ppm以上であり、さらに好ましくは5.0ppm以上である。一方、酪酸エチル濃度の上限値は、瓜臭の抑制効果を保持しつつ、美味しさおよび良好な後味を得る点から、好ましくは60ppm以下であり、より好ましくは50ppm以下である。
【0015】
[酢酸ヘキシル]
酢酸ヘキシルは、CAS番号.142-92-7の化合物である。本実施形態において、(c)酢酸ヘキシル濃度が20ppb以上100ppm以下である。
酢酸ヘキシル濃度の下限値は、瓜臭の抑制効果を得る点から、好ましくは30ppb以上であり、より好ましくは60ppb以上であり、さらに好ましくは100ppb以上、ことさらに好ましくは500ppb以上、さらに一層好ましくは1.0ppm以上である。一方、酢酸ヘキシル濃度の上限値は、瓜臭の抑制効果を保持しつつ、美味しさを得る点から、好ましくは90ppm以下であり、さらに後味を良好にする点から、より好ましくは80ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。
【0016】
[酢酸シス-3-ヘキセニル]
酢酸シス-3-ヘキセニルは、CAS番号.3681-71-8の化合物である。本実施形態において、(d)酢酸シス-3-ヘキセニルが20ppb以上80ppm以下である。
酢酸シス-3-ヘキセニル濃度の下限値は、瓜臭の抑制効果および美味しさを得る点から、好ましくは30ppb以上であり、より好ましくは60ppb以上であり、さらに好ましくは100ppb以上、ことさらに好ましくは500ppb以上、さらに良好な後味を得る点から、さらに好ましくは1ppm以上である。一方、酢酸シス-3-ヘキセニル濃度の上限値は、瓜臭の抑制効果を保持しつつ、美味しさおよび良好な後味を得る点から、好ましくは50ppm以下である。くわえて、美味しさを向上させる点から、より好ましくは10ppm以下であり、さらに好ましくは8.0ppm以下である。
【0017】
各香気成分の濃度は、以下のようにして測定することができる。
以下に示す条件で、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いた固相マイクロ抽出法(SPME)法により行う。定量には、標準添加法または絶対検量線法を適宜選択して用いることができる。また内部標準物質としてシクロヘキサノールを用いる。測定に供する試料(飲料)は、必要に応じて予め水により希釈する。
分析対象である試料10mLと3.5gのNaClを20ml容バイアルに入れ、内標を添加し密栓し、各バイアルを50℃で5分間振盪し気相と試料を平衡状態にした後、気相部分をSPME法にてガスクロマトグラフに導入する。SPME-GC/MSは以下の分析条件で行うことができる。
【0018】
<SPME条件>
多機能オートサンプラー:MPS2(GERSTEL社製)、
ファイバー:50/30μm DVB/CAR/PDMS、Stableflex 23Ga(Gray)、
加温温度:50℃、
加温時間:5分間、
抽出時間:30分間、
脱着時間:300秒間。
<GC/MS条件>
GC:7890A(Agilent Technologies社製)、
MS:5975C MSD(Agilent Technologies社製)、
カラム:DB-WAX UI(30m×250μm×0.25μm、Agilent Technologies社製)
注入法:スプリットレス、
セプタムパージ流量:3mL/分、
キャリアガス:He、
注入口温度:240℃、
トランスファーライン:240℃、
オーブン温度:40℃(5分間)→5℃/分→240℃(0分間)、ポストラン240℃(5分間)。
MS条件:スキャンモード
定量イオン:
イソ酪酸エチルm/z=43
酪酸エチルm/z=71
酢酸ヘキシルm/z=56
酢酸シス-3-ヘキセニルm/z=82
IS(シクロヘキサノール)m/z=57
【0019】
[メロン果汁]
本実施形態の飲料は、メロン果汁を含む。
本実施形態においてメロン果汁とは、メロンの果肉部分を破砕して搾汁したり、あるいは裏ごししたりするなどして得られる液体成分を合わせていう。また、果汁には、当該液体成分を濃縮したものや、これらの希釈還元物も含まれてもよく、パルプ分を含むもの、または、ろ過や遠心分離等の処理によりパルプ分を除去したものあってもよい。
また、本実施形態で用いられる果汁としては、ストレート果汁、濃縮果汁、濃縮還元果汁などが挙げられる。
【0020】
本実施形態の飲料のメロン果汁の含有量(ストレート換算)は、好ましくは0.5~30質量%であり、より好ましくは0.6~15質量%である。
果汁率を、上記下限値以上とすることにより、メロン風味を高め、瓜臭を抑制しつつ、美味しさが得られる。一方、果汁率を、上記上限値以下とすることにより、瓜臭の抑制効果を高めつつ、美味しさが保持できる。
【0021】
なお、メロン果汁の含有率とは、果実を搾汁して得られるストレート果汁を100%としたときの相対濃度である。通常、JAS規格(果実飲料の日本農林規格)に示される糖用屈折計示度の基準(°Bx)に基づいて換算できる。メロンはJAS規格では基準糖度が規定されておらず搾汁の平均的な糖用屈折計示度が糖用屈折計示度の基準とされている。
【0022】
本実施形態のメロン果汁に用いられるメロン(和名:メロン、英名:Muskmelon、学名:Cucumis melo)は、ウリ科の一年生草本植物であり、飲料分野での多くは、果実、果物として扱われる。メロンの種類は特に限定はされず、赤肉種(夕張メロン、クインシーメロン、ルビアネットなど)、青肉種(アンデスメロン、プリンスメロン、タカミメロン、アールスメロン、アムスメロン、オトメロンなど)、白肉種(ホームランメロン、ハネデューメロン、キンショウメロンなど)のいずれであってもよい。上記のメロンは、単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
【0023】
なお、メロン果汁の調製に用いることのできるメロンの産地、熟度、大きさなどは特に限定されず、適宜設定することができる。
【0024】
[その他成分]
本実施形態の飲料は、本発明の効果が得られる限りにおいて、乳、および上記以外の種々の成分を含んでもよい。例えば、上記以外の果汁、甘味料、酸味料、香料、pH調整剤、各種栄養成分、着色料、希釈剤、酸化防止剤、および増粘安定剤等を含んでもよい。
【0025】
(乳)
本実施形態の乳としては、牛乳、羊乳、および馬乳などの獣乳、あるいは豆乳などの植物乳を用いることができる。また、乳の形態としては、生乳、脱脂乳、調整乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、濃縮乳、練乳および酸性乳等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
通常、乳を含む飲料であって、レトルト殺菌をする場合は、殺菌条件が厳しいため、メロン果汁入り飲料の瓜臭がより強くなる傾向がある。これに対し、本実施形態の飲料は、要件(a)~(d)を満たすことで、乳を含んでも瓜臭を効果的に抑制できる。
【0027】
本実施形態の飲料中の無脂乳固形分量(SNF)は、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは1~4質量%である。
当該無脂乳固形分量の含有量を上記下限値以上とすることにより、乳風味および美味しさを高めつつも、瓜臭抑制効果を保持できる。一方、当該無脂乳固形分量の含有量を上記上限値以下とすることにより、瓜臭を抑制しつつ、良好な後味を保持できる。
【0028】
無脂乳固形分(SNF)とは、乳から水分と脂肪分を取り除いたもので、乳タンパク質、炭水化物(主に糖質)、ミネラルなどの灰分およびビタミンを含むものを意図する。通常、牛乳100gに含まれる無脂乳固形分は8.3g程度であり、うち乳タンパク質は3.0g程度、糖質は4.6g程度、灰分は0.7g程度である。
【0029】
無脂乳固形分の含有量は、食品衛生関係法規集「乳および乳製品の成分規格等に関する省令」(昭和26年12月27日厚生省令第52号)に記載の発酵乳および乳酸菌飲料の無脂乳固形分の定量法によって、測定することができる。
【0030】
(その他果汁)
本実施形態の飲料は、上記のメロン以外の果汁を含んでもよい。例えば、オレンジ果汁、ミカン果汁、マンダリン果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、ライム果汁、リンゴ果汁、モモ果汁、イチゴ果汁、バナナ果汁、ブドウ果汁およびマンゴー果汁等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0031】
(甘味料)
上記の甘味料としては、公知のものを使用することができ、たとえば、ショ糖(砂糖)、ブドウ糖、グラニュー糖、果糖、乳糖、麦芽糖、果糖ブドウ糖液糖等の糖類、糖アルコール、ならびに、タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、サッカリンナトリウム、およびステビア等の高甘味度甘味料などが挙げられる。甘味料は1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0032】
(酸味料)
上記の酸味料としては、例えば、クエン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、フィチン酸、アスコルビン酸、リン酸又はそれらの塩類等が挙げられる。なかでも、メロン果実らしい風味を得る観点から、乳酸またはクエン酸ならびにその塩が好ましい。
【0033】
(香料)
上記の香料としては、天然香料および合成香料が挙げられ、メロン果実風味を呈する香料、その他果実風味を呈する香料が挙げられる。
【0034】
[メロン風味]
本実施形態の飲料は、瓜臭を抑制しつつおいしさを向上させる観点から、メロン風味を呈することが好ましい。メロン風味は、上述のメロン果汁およびメロン果肉、メロン風味フレーバー等を用いることによって得られる。
【0035】
[酸度]
本実施形態の飲料は、クエン酸酸度が0.25g/100ml以上、0.45g/100ml以下であることが好ましく、0.29g/100ml以上、0.35g/100ml以下であることがより好ましい。
酸度を、上記下限値以上とすることにより、美味しさを保持しつつ、適度な酸味があり、瓜臭を効果的に抑制できる。一方、酸度を、上記上限値以下とすることにより、過度な酸味を抑制し、美味しさを保持できる。
【0036】
クエン酸酸度は、100ml中に含まれる酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100ml)で表すことができる。酸度もまた、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
【0037】
[pH]
本実施形態の飲料の20℃におけるpHは、3.5以上4.5以下であることが好ましく、3.7以上4.4以下であることがより好ましく、3.9以上4.3以下であることがさらに好ましい。
当該pHを上記数値範囲内とすることにより、美味しさを保持しつつ瓜臭を抑制できる
【0038】
なお、pHの測定は、市販のpH測定器を用いるなどして行うことができる。pHの調整は、例えば、特定酸の量を変えることや、クエン酸三ナトリウム等のpH調整剤を用いることなどにより行うことができる。
【0039】
[ブリックス値]
本実施形態の飲料のブリックス値(Bx)は、おいしさ、および果汁感が得られる観点から、好ましくは、8以上20以下であり、より好ましくは、10以上18以下であり、さらに好ましくは、12以上17以下である。
ブリックス値は、たとえば、デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社製)を用いて、20℃における糖用屈折計の示度を測定することができる。
ブリックス値は、例えば、後述の甘味料の量、その他の各種成分の量などにより調整することができる。
【0040】
[炭酸ガス、アルコール]
また、本実施形態の飲料は、炭酸ガスを含有する炭酸飲料としてもよく、炭酸ガスを含まない飲料としてもよい。メロン果汁入り飲料らしいおいしさを保持する点から、炭酸ガスを含まない飲料とすることが好ましい。
炭酸ガスを飲料中に含有させる方法は特に限定されず、当業者が適宜設定できる。
【0041】
また、本実施形態の飲料は、非アルコール飲料であることが好ましい。非アルコール飲料とは、アルコールを実質的に含有しない飲料をいい、具体的にはエタノールなどのアルコールの含有量が1.0体積/体積%未満である飲料を意味する。
【0042】
[容器]
本実施形態の飲料は、容器に詰められた状態の容器詰め飲料としてもよい。このときの容器としては、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。
【0043】
容器の容量としては、特に限定されないが、100~2000mlが好ましく、飲み切りやすい点からは、100~500mlがより好ましい。
【0044】
容器詰めされた飲料の加熱滅菌処理の方法は、特に限定されないが、日本国内においては食品衛生法の規定に従って、加熱滅菌処理される。具体的には、高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)と、調合液を缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行うレトルト殺菌法が挙げられる。また、乳を含む場合、「保存性のある容器に入れ、かつ、摂氏百二十度で四分間加熱殺菌する方法又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法により加熱殺菌したもの」(乳等省令)とすることが挙げられる。
【0045】
[販売温度]
本実施形態の飲料は、常温用またはコールド用とすることが好ましい。コールド用とは、飲料の液温を常温よりも低くしたものであり、4~15℃程度に冷却したものを意図する。
【0046】
<飲料の製造方法>
本実施形態の飲料の製造方法は、
メロン果汁と、イソ酪酸エチル、酪酸エチル、酢酸ヘキシル、および酢酸シス-3-ヘキセニルの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分と、を含有するメロン果汁入り飲料の製造方法であって、
以下の要件(a)~(d)のいずれかを満たすように飲料を調製する工程を含む。
(a)イソ酪酸エチル濃度が20ppb以上120ppm以下であり、
(b)酪酸エチル濃度が1.0ppm以上80ppm以下であり、
(c)酢酸ヘキシル濃度が20ppb以上100ppm以下であり、
(d)酢酸シス-3-ヘキセニル濃度が20ppb以上80ppm以下である。
これにより、美味しさを保持しつつ瓜臭を抑制できるメロン果汁入り飲料が得られる。調製方法、混合方法等は公知の方法を用いることができる。また、得られる飲料の物性、成分等は上述の飲料と同じである。
【0047】
<瓜臭抑制剤>
本実施形態の瓜臭抑制剤は、イソ酪酸エチル、酪酸エチル、酢酸ヘキシル、および酢酸シス-3-ヘキセニルの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分を含み、メロン果汁入り飲料の瓜臭を抑制するために用いられる。これにより、メロン果汁入り飲料の瓜臭を効果的に抑制できる。
瓜臭抑制剤は、飲料に用いられる他の成分とともに製剤化したものであってもよい。また、イソ酪酸エチル、酪酸エチル、酢酸ヘキシル、および酢酸シス-3-ヘキセニルは、飲料中で所望の濃度となるように調整されるものであってもよい。
【0048】
<瓜臭抑制方法>
本実施形態の瓜臭抑制方法は、上述の瓜臭抑制剤を、メロン果汁入り飲料に添加する工程を含むものである。調製方法、混合方法等は公知の方法を用いることができる。また、得られる飲料の物性、成分等は上述の飲料と同じである。
【0049】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0050】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
(1)測定
・pH;pH測定器(東亜ディーケーケー社製)を用いて、20℃におけるpHを測定した。
・ブリックス;デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社製)を用いて、20℃における糖用屈折計の示度を測定した。
【0052】
(2)官能評価
熟練した5名の開発者が各飲料を試飲し、以下の評価基準(7段階;1~7点)従い、「瓜臭の強さ」、「おいしさ」、「後味の良さ」それぞれについて評価を実施し、その平均値を求めた。対照は、各ベース液とし、「瓜臭の強さ」を7点、「おいしさ」および「後味の良さ」を4点とした。
【0053】
・評価基準
「瓜臭の強さ」(瓜臭)
7点・・・瓜臭が非常に認められる。
6点・・・瓜臭がかなり認められる。
5点・・・瓜臭がとても認められる。
4点・・・瓜臭が比較的認められる。
3点・・・瓜臭が少し認められる。
2点・・・瓜臭がわずかに認められる。
1点・・・瓜臭が全く認められない。
【0054】
「おいしさ」
7点・・・香味バランスがとても良く、良好な風味である。
6点・・・香味バランスが良く、良好な風味である。
5点・・・香味バランスがやや良く、良好な風味である。
4点・・・対照と同程度に感じる。
3点・・・香味バランスがやや劣り、風味がやや良好ではない。
2点・・・香味バランスが劣り、良好な風味ではない。
1点・・・香味バランスがとても劣り、良好な風味ではない。
【0055】
「後味の良さ」
7点・・・対照と比較して、非常に良く感じる。
6点・・・対照と比較して、良く感じる。
5点・・・対照と比較して、やや良く感じる。
4点・・・対照と同程度に感じる。
3点・・・対照と比較して、やや劣るように感じる。
2点・・・対照と比較して、劣るように感じる。
1点・・・対照と比較して、非常に劣るように感じる。
【0056】
(3)ベース液の調製
以下の表1に示す含有量となるように各原料を混合して調合液を調合し、レトルト殺菌にて殺菌し、これを容器詰めし、各ベース液1~4を調製した。ベース液1~4の各物性を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
(4)実施例および比較例(試験例)
ベース液1~4を用いて、以下の表2~5に示す含有量となるようにイソ酪酸エチル、酪酸エチル、酢酸ヘキシル、および酢酸シス-3-ヘキセニルをそれぞれ混合して、各飲料を得た。得られた飲料について上記(2)官能評価の測定・評価を行った。結果を表2~5にそれぞれ示す。
なお、イソ酪酸エチル、酪酸エチル、酢酸ヘキシル、および酢酸シス-3-ヘキセニルを混合した後にレトルト殺菌を行った場合であっても同様の評価が得られることを確認した。
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】