(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080260
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】冷却器及び冷却器の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20240606BHJP
F28F 21/06 20060101ALI20240606BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20240606BHJP
F28F 3/08 20060101ALI20240606BHJP
H05K 7/20 20060101ALN20240606BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
F28F21/06
F28F21/08
F28F3/08 311
H05K7/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193307
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】390039929
【氏名又は名称】三桜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100114270
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 朋也
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 伸司
(72)【発明者】
【氏名】冨倉 康治
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA05
5E322AB05
5E322FA04
5F136CB06
5F136CB21
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA51
5F136GA06
(57)【要約】
【課題】製造コストの増加を抑制しつつ金属製ベースと樹脂製カバーとの間の気密信頼性を高めることができる冷却器及び冷却器の製造方法を提供する。
【解決手段】冷却器1は、被冷却体を冷却するための金属製ベース2と、金属製ベース2に重ね合わされて、金属製ベース2との間に冷媒が流通する流路5を形成する樹脂製カバー3と、金属製ベース2と樹脂製カバー3との間に配置されるシール部材4と、を備える。金属製ベース2は、平板状に形成されたプレート部21と、プレート部21上に配置された熱交換部22と、プレート部21に形成された貫通穴24と、を有する。樹脂製カバー3は、貫通穴24に挿入されて金属製ベース2に対して樹脂製カバー3を固定するカシメ部34を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却体を冷却するための金属製ベースと、
前記金属製ベースに重ね合わされて、前記金属製ベースとの間に冷媒が流通する流路を形成する樹脂製カバーと、
前記金属製ベースと前記樹脂製カバーとの間に配置されるシール部材と、を備え、
前記金属製ベースは、平板状に形成されたプレート部と、前記プレート部上に配置された熱交換部と、前記プレート部に形成された貫通穴と、を有し、
前記樹脂製カバーは、前記貫通穴に挿入されて前記金属製ベースに対して前記樹脂製カバーを固定するカシメ部を有する、
冷却器。
【請求項2】
前記カシメ部は、前記貫通穴に挿入されるボス部と、前記ボス部の先端部から広がって前記プレート部に対する前記熱交換部の反対側から前記プレート部に係止されるハット部と、を有する、
請求項1に記載の冷却器。
【請求項3】
前記ハット部は、前記プレート部の前記熱交換部とは反対側の第一面に接触している、
請求項2に記載の冷却器。
【請求項4】
前記プレート部は、前記貫通穴に沿って前記プレート部の前記熱交換部とは反対側の第一面から前記プレート部の前記熱交換部側の第二面に向けて凹む凹部を有し、
前記ハット部は、前記凹部に埋まっている、
請求項2に記載の冷却器。
【請求項5】
前記樹脂製カバーは、前記熱交換部を収容する収容部を有し、
前記樹脂製カバーは、前記貫通穴で前記ボス部が移動しても前記熱交換部が前記収容部に接触しない形状を有する、
請求項2に記載の冷却器。
【請求項6】
前記樹脂製カバーは、前記熱交換部を収容する収容部を有し、
前記ボス部と前記貫通穴との最大隙間寸法は、前記ボス部の軸線と垂直な方向における前記熱交換部と前記収容部との最小隙間寸法よりも小さい、
請求項2に記載の冷却器。
【請求項7】
前記熱交換部は、フィンにより構成されている、
請求項1に記載の冷却器。
【請求項8】
被冷却体を冷却するための金属製ベースと、前記金属製ベースとの間に冷媒が流通する流路を形成する樹脂製カバーと、シール部材と、を用意する用意工程と、
前記金属製ベースと前記樹脂製カバーとの間に前記シール部材を配置し、前記金属製ベースと前記樹脂製カバーとで前記シール部材を押圧した状態で、前記金属製ベースに対して前記樹脂製カバーをカシメにより固定するカシメ工程と、を備える、
冷却器の製造方法。
【請求項9】
前記カシメ工程では、前記金属製ベースに対して前記樹脂製カバーを超音波カシメ又は熱カシメにより固定する、
請求項8に記載の冷却器の製造方法。
【請求項10】
前記用意工程で用意する前記金属製ベースは、平板状に形成されたプレート部と、前記プレート部上に配置された熱交換部と、前記プレート部に形成された貫通穴と、を有し、
前記用意工程で用意する前記樹脂製カバーは、前記貫通穴に挿入可能なボス部を有し、
前記カシメでは、前記ボス部を前記貫通穴に挿入し、前記プレート部から突出した前記ボス部の先端部を溶融して前記プレート部に対する前記熱交換部の反対側から前記プレート部に係止されるように広げる、
請求項8に記載の冷却器の製造方法。
【請求項11】
前記カシメ工程では、前記ボス部の先端部を溶融して前記プレート部の前記熱交換部とは反対側の第一面に接触させる、
請求項10に記載の冷却器の製造方法。
【請求項12】
前記用意工程で用意する前記金属製ベースは、前記プレート部が、前記貫通穴に沿って前記プレート部の前記熱交換部とは反対側の第一面から前記プレート部の前記熱交換部側の第二面に向けて凹む凹部を有し、
前記カシメ工程では、前記ボス部の先端部を溶融して前記凹部に埋める、
請求項10に記載の冷却器の製造方法。
【請求項13】
前記用意工程で用意する前記樹脂製カバーは、前記ボス部の長さが、前記ボス部が前記プレート部の前記樹脂製カバー側の第二面に接触した際に前記樹脂製カバーが前記熱交換部に接触しない長さである、
請求項10に記載の冷却器の製造方法。
【請求項14】
前記用意工程で用意する前記樹脂製カバーは、前記ボス部の長さが、前記プレート部に対する前記熱交換部の高さよりも長い、
請求項10に記載の冷却器の製造方法。
【請求項15】
前記用意工程で用意する前記樹脂製カバーは、前記熱交換部を収容する収容部を有し、前記ボス部を前記貫通穴に挿入した際に、前記貫通穴で前記ボス部が前記ボス部の軸線と垂直な方向に移動しても前記熱交換部が前記収容部に接触しない形状を有する、
請求項10に記載の冷却器の製造方法。
【請求項16】
前記用意工程で用意する前記樹脂製カバーは、前記熱交換部を収容する収容部を有し、
前記用意工程で用意する前記金属製ベースと前記樹脂製カバーとは、前記ボス部を前記貫通穴に挿入した際に、前記ボス部と前記貫通穴との最大隙間寸法が、前記ボス部の軸線と垂直な方向における前記熱交換部と前記収容部との最小隙間寸法よりも小さい関係を有する、
請求項10に記載の冷却器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、CPU等の被冷却体を冷却する冷却器及び冷却器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属製ベースと樹脂製カバーとを重ね合わせた冷却器が記載されている。特許文献1に記載された冷却器では、金属製ベースの表面に粗面化部が形成されており、この粗面化部に樹脂製カバーが融着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、HPC(High Performance Conputing)、基地局装置等のCPU(Central Processing Unit)に用いる場合は、気密信頼性が非常に重要な要素となる。しかしながら、特許文献1に記載された冷却器のように、金属製ベースの表面に樹脂製カバーが融着された構造では、金属製ベースと樹脂製カバーとの間の気密信頼性を十分に保持できない可能性がある。例えば、金属製ベースの熱膨張や樹脂製カバーの収縮等により金属製ベースと樹脂製カバーとの間の気密性が失われる可能性がある。また、金属製ベースと樹脂製カバーとの間の気密信頼性を高めるためには、金属製ベース及び樹脂製カバーの寸法精度を高くする必要があるため、製造コストが高くなるという問題もある。なお、金属製ベースと樹脂製カバーとをボルト締結により固定する方法もあるが、この方法では、重量化するとともに大型化するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の一側面は、製造コストの増加を抑制しつつ金属製ベースと樹脂製カバーとの間の気密信頼性を高めることができる冷却器及び冷却器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る冷却器は、以下の通りである。
【0007】
[1] 本発明の一側面に係る冷却器は、被冷却体を冷却するための金属製ベースと、金属製ベースに重ね合わされて、金属製ベースとの間に冷媒が流通する流路を形成する樹脂製カバーと、金属製ベースと樹脂製カバーとの間に配置されるシール部材と、を備え、金属製ベースは、平板状に形成されたプレート部と、プレート部上に配置された熱交換部と、プレート部に形成された貫通穴と、を有し、樹脂製カバーは、貫通穴に挿入されて金属製ベースに対して樹脂製カバーを固定するカシメ部を有する。
【0008】
この冷却器では、金属製ベースと樹脂製カバーとの間にシール部材が配置されて、金属製ベースのプレート部に形成された貫通穴に挿入された樹脂製カバーのカシメ部により金属製ベースに対して樹脂製カバーが固定されている。このため、金属製ベース及び樹脂製カバーの寸法精度を高くしなくても、金属製ベースと樹脂製カバーとの間の気密信頼性を十分に保持することができる。これにより、製造コストの増加を抑制しつつ金属製ベースと樹脂製カバーとの間の気密信頼性を高めることができる。
【0009】
[2] [1]に記載の冷却器において、カシメ部は、貫通穴に挿入されるボス部と、ボス部の先端部から広がってプレート部に対する熱交換部の反対側からプレート部に係止されるハット部と、を有してもよい。この冷却器では、カシメ部が、貫通穴に挿入されるボス部と、ボス部の先端部から広がってプレート部に対する熱交換部の反対側からプレート部に係止されるハット部と、を有することで、金属製ベースに対する樹脂製カバーの脱落を適切に抑制することができる。
【0010】
[3] [2]に記載の冷却器において、ハット部は、プレート部の熱交換部とは反対側の第一面に接触していてもよい。この冷却器では、ハット部がプレート部の熱交換部とは反対側の第一面に接触していることで、簡易な構成でプレート部に対してハット部を係止させることができる。
【0011】
[4] [2]に記載の冷却器において、プレート部は、貫通穴に沿ってプレート部の熱交換部とは反対側の第一面からプレート部の熱交換部側の第二面に向けて凹む凹部を有し、ハット部は、凹部に埋まっていてもよい。この冷却器では、ハット部がプレート部の凹部に埋まっていることで、プレート部の熱交換部とは反対側の第一面を平坦化することができる。これにより、プレート部を被冷却体に取り付けやすくなるとともに、プレート部と被冷却体との接触面積を増加することができる。
【0012】
[5] [2]~[4]の何れか一つに記載の冷却器において、樹脂製カバーは、熱交換部を収容する収容部を有し、樹脂製カバーは、貫通穴でボス部が移動しても熱交換部が収容部に接触しない形状を有してもよい。この冷却器では、樹脂製カバーが、貫通穴でボス部が移動しても熱交換部が収容部に接触しない形状を有することで、収容部が熱交換部に接触して熱交換部が変形するのを抑制することができる。
【0013】
[6] [2]~[5]の何れか一つに記載の冷却器において、樹脂製カバーは、熱交換部を収容する収容部を有し、ボス部と貫通穴との最大隙間寸法は、ボス部の軸線と垂直な方向における熱交換部と収容部との最小隙間寸法よりも小さくてもよい。この冷却器では、ボス部の軸線と垂直な方向において、ボス部と貫通穴との最大隙間寸法が熱交換部と収容部との最小隙間寸法よりも小さいことで、貫通穴でボス部が移動しても熱交換部が収容部に接触するのを抑制することができる。これにより、収容部が熱交換部に接触して熱交換部が変形するのを抑制することができる。
【0014】
[7] [1]~[6]の何れか一つに記載の冷却器において、熱交換部は、フィンにより構成されていてもよい。この冷却器では、熱交換部がフィンにより構成されていることで、高い熱交換性能を得ることができる。
【0015】
[8] 本発明の一側面に係る冷却器の製造方法は、被冷却体を冷却するための金属製ベースと、金属製ベースとの間に冷媒が流通する流路を形成する樹脂製カバーと、シール部材と、を用意する用意工程と、金属製ベースと樹脂製カバーとの間にシール部材を配置し、金属製ベースと樹脂製カバーとでシール部材を押圧した状態で、金属製ベースに対して樹脂製カバーをカシメにより固定するカシメ工程と、を備える。
【0016】
この冷却器の製造方法では、金属製ベースと樹脂製カバーとの間にシール部材を配置し、金属製ベースと樹脂製カバーとでシール部材を押圧した状態で、金属製ベースに対して樹脂製カバーをカシメにより固定する。このため、金属製ベース及び樹脂製カバーの寸法精度を高くしなくても、金属製ベースと樹脂製カバーとの間の気密信頼性を十分に保持することができる。これにより、製造コストの増加を抑制しつつ金属製ベースと樹脂製カバーとの間の気密信頼性を高めることができる。
【0017】
[9] [8]に記載の冷却器の製造方法において、カシメ工程では、金属製ベースに対して樹脂製カバーを超音波カシメ又は熱カシメにより固定してもよい。この冷却器の製造方法では、金属製ベースに対して樹脂製カバーを超音波カシメ又は熱カシメにより固定することで、金属製ベースに対して樹脂製カバーを適切に固定することができる。
【0018】
[10] [8]又は[9]に記載の冷却器の製造方法において、用意工程で用意する金属製ベースは、平板状に形成されたプレート部と、プレート部上に配置された熱交換部と、プレート部に形成された貫通穴と、を有し、用意工程で用意する樹脂製カバーは、貫通穴に挿入可能なボス部を有し、カシメでは、ボス部を貫通穴に挿入し、プレート部から突出したボス部の先端部を溶融してプレート部に対する熱交換部の反対側からプレート部に係止されるように広げてもよい。この冷却器の製造方法では、樹脂製カバーのボス部を金属製ベースのプレート部の貫通穴に挿入し、プレート部から突出したボス部の先端部を溶融してプレート部に対する熱交換部の反対側からプレート部に係止されるように広げることで、金属製ベースに対して樹脂製カバーを強固に固定することができる。
【0019】
[11] [10]に記載の冷却器の製造方法において、カシメ工程では、ボス部の先端部を溶融してプレート部の熱交換部とは反対側の第一面に接触させてもよい。この冷却器の製造方法では、ボス部の先端部を溶融してプレート部の熱交換部とは反対側の第一面に接触させることで、簡易な構成でプレート部に係止させることができる。
【0020】
[12] [10]に記載の冷却器の製造方法において、用意工程で用意する金属製ベースは、プレート部が、貫通穴に沿ってプレート部の熱交換部とは反対側の第一面からプレート部の熱交換部側の第二面に向けて凹む凹部を有し、カシメ工程では、ボス部の先端部を溶融して凹部に埋めてもよい。この冷却器の製造方法では、カシメ工程においてボス部の先端部を溶融して凹部に埋めることで、プレート部の熱交換部とは反対側の第一面を平坦化することができる。これにより、プレート部を被冷却体に取り付けやすくなるとともに、プレート部と被冷却体との接触面積を増加することができる。
【0021】
[13] [10]~[12]の何れか一つに記載の冷却器の製造方法において、用意工程で用意する樹脂製カバーは、ボス部の長さが、ボス部がプレート部の樹脂製カバー側の第二面に接触した際に樹脂製カバーが熱交換部に接触しない長さであってもよい。この冷却器の製造方法では、用意工程で用意する樹脂製カバーが、ボス部の長さが、ボス部がプレート部の樹脂製カバー側の第二面に接触した際に樹脂製カバーが熱交換部に接触しない長さであることで、金属製ベースに対する樹脂製カバーの位置がずれてボス部が貫通穴に入らなかった際に、樹脂製カバーが熱交換部に接触して熱交換部が変形するのを防止することができる。
【0022】
[14] [10]~[13]の何れか一つに記載の冷却器の製造方法において、用意工程で用意する樹脂製カバーは、ボス部の長さが、プレート部に対する熱交換部の高さよりも長くてもよい。この冷却器の製造方法では、ボス部の長さがプレート部に対する熱交換部の高さよりも長いことで、金属製ベースに対する樹脂製カバーの位置がずれてボス部が貫通穴に入らなかった際に、ボス部がプレート部の樹脂製カバー側の第二面に接触しても、樹脂製カバーが熱交換部に接触するのを抑制することができる。これにより、金属製ベースに対する樹脂製カバーの位置がずれてボス部が貫通穴に入らなかった際に、樹脂製カバーが熱交換部に接触して熱交換部が変形するのを抑制することができる。
【0023】
[15] [10]~[14]の何れか一つに記載の冷却器の製造方法において、用意工程で用意する樹脂製カバーは、熱交換部を収容する収容部を有し、ボス部を貫通穴に挿入した際に、貫通穴でボス部がボス部の軸線と垂直な方向に移動しても熱交換部が収容部に接触しない形状を有してもよい。この冷却器の製造方法では、用意工程で用意する樹脂製カバーが、ボス部を貫通穴に挿入した際にボス部の軸線と垂直な方向に貫通穴でボス部が移動しても熱交換部が収容部に接触しない形状を有することで、ボス部を貫通穴に挿入した際に、収容部が熱交換部に接触して熱交換部が変形するのを抑制することができる。
【0024】
[16] [10]~[15]の何れか一つに記載の冷却器の製造方法において、用意工程で用意する樹脂製カバーは、熱交換部を収容する収容部を有し、用意工程で用意する金属製ベースと樹脂製カバーとは、ボス部を貫通穴に挿入した際に、ボス部と貫通穴との最大隙間寸法が、ボス部の軸線と垂直な方向における熱交換部と収容部との最小隙間寸法よりも小さい関係を有してもよい。この冷却器の製造方法では、用意工程で用意する金属製ベースと樹脂製カバーとが、ボス部を貫通穴に挿入した際に、ボス部と貫通穴との最大隙間寸法がボス部の軸線と垂直な方向における熱交換部と収容部との最小隙間寸法よりも小さい関係を有することで、ボス部を貫通穴に挿入した際に、貫通穴でボス部がボス部の軸線と垂直な方向に移動しても熱交換部が収容部に接触するのを抑制することができる。これにより、ボス部を貫通穴に挿入した際に、収容部が熱交換部に接触して熱交換部が変形するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一側面によれば、被製造コストの増加を抑制しつつ金属製ベースと樹脂製カバーとの間の気密信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図5】本実施形態の冷却器を示す分解斜視図である。
【
図6】
図1に示すVI-VI線における断面図である。
【
図7】
図1に示すVII-VII線における断面図である。
【
図8】
図1に示すVIII-VIII線における断面図である。
【
図9】
図2に示すIX-IX線における断面図である。
【
図11】本実施形態の冷却器の製造方法における準備工程を示す斜視図である。
【
図12】本実施形態の冷却器の製造方法におけるカシメ工程を示す平面図である。
【
図13】
図12に示すXIII-XIII線における断面図である。
【
図14】
図12に示すXIV-XIV線における断面図である。
【
図15】ボス部を貫通穴に挿入した状態を示す断面図である。
【
図16】
図16(a)は、ボス部の変形例を示す断面図であり、
図16(b)は、ボス部の他の変形例を示す断面図である。
【
図17】
図17(a)は、ボス部の他の変形例を示す断面図であり、
図17(b)は、ボス部の他の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、実施形態に係る冷却器及び冷却器の製造方法を説明する。本実施形態に係る冷却器は、被冷却体に重ね合わされることで被冷却体を冷却するものである。なお、本実施形態に係る冷却器は、被冷却体に直接的に重ね合わされるものであってもよく、他部材を介して被冷却体に間接的に重ね合わされるものであってもよい。被冷却体としては、特に限定されるものではなく、例えば、HPC、基地局装置等に用いられるCPUとすることができる。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0028】
図1は、本実施形態の冷却器を示す平面図である。
図2は、本実施形態の冷却器を示す正面図である。
図3は、本実施形態の冷却器を示す側面図である。
図4は、本実施形態の冷却器を示す底面図である。
図5は、本実施形態の冷却器を示す分解斜視図である。
図6は、
図1に示すVI-VI線における断面図である。
図7は、
図1に示すVII-VII線における断面図である。
図8は、
図1に示すVIII-VIII線における断面図である。
図9は、
図2に示すIX-IX線における断面図である。
図1~
図9に示すように、本実施形態に係る冷却器1は、被冷却体を冷却するための金属製ベース2と、金属製ベース2に重ね合わされて、金属製ベース2との間に冷媒が流通する流路5を形成する樹脂製カバー3と、金属製ベース2と樹脂製カバー3との間に配置されるシール部材4と、を備える。ここで、金属製ベース2に樹脂製カバー3が重ね合わされる方向を重ね合わせ方向D1という。重ね合わせ方向D1は、被冷却体に冷却器1が重ね合わされる方向でもある。また、重ね合わせ方向D1と交差する方向を幅方向D2といい、重ね合わせ方向D1及び幅方向D2と交差する方向を長さ方向D3という。本実施形態では、一例として、重ね合わせ方向D1と直交する方向を幅方向D2といい、重ね合わせ方向D1及び幅方向D2と直交する方向を長さ方向D3という。
【0029】
金属製ベース2は、被冷却体を冷却するために被冷却体に重ね合わされる金属製の部材である。金属製ベース2の素材としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の熱伝導率の高い金属が用いられる。金属製ベース2は、平板状に形成されたプレート部21と、プレート部21上に配置された熱交換部22と、を備える。
【0030】
プレート部21は、重ね合わせ方向D1に厚みを有して、幅方向D2及び長さ方向D3に沿う方向に延びている。プレート部21の表裏面のうち、熱交換部22とは反対側の面を第一面21aといい、熱交換部22側の面を第二面21bという。プレート部21には、プレート部21を被冷却体に固定するための複数の貫通穴23と、金属製ベース2に対して樹脂製カバー3を固定するための複数の貫通穴24と、が形成されている。複数の貫通穴23及び複数の貫通穴24は、第二面21bから第一面21aまでプレート部21の厚み方向である重ね合わせ方向D1に貫通している。
【0031】
熱交換部22は、プレート部21の中央部に配置されている。熱交換部22は、冷媒との間で熱交換を行うことで、被冷却体を冷却するための部位である。熱交換部22は、例えば、フィンにより構成されている。熱交換部22を構成するフィンとしては、例えば、屈曲された金属薄板からなるプレート型、波型に形成された複数の金属薄板からなるウェーブ型、複数の立設されたピンからなるピン型、複数の金属薄板が積層されてなる積層型のものが用いられる。熱交換部22は、全体として、矩形平板状に形成されている。熱交換部22は、全体として、重ね合わせ方向D1に厚みを有して、幅方向D2及び長さ方向D3に沿う方向に延びている。熱交換部22は、プレート部21と一体的に形成されたものであってもよく、プレート部21に対して固定されたものであってもよい。
【0032】
樹脂製カバー3は、金属製ベース2との間に流路5を形成するための樹脂製の部材である。樹脂製カバー3は、金属製ベース2に対して固定されている。樹脂製カバー3の素材としては、例えば、ポリアミド(PA)、芳香族ポリアミド樹脂、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、などの耐熱性及び強度の高い樹脂が用いられる。樹脂製カバー3は、カバー本体31と、供給パイプ部32と、排出パイプ部33と、カシメ部34と、を備える。
【0033】
カバー本体31は、金属製ベース2のプレート部21との間に流路5を形成する部分である。カバー本体31には、流路5に冷媒を供給するためのインレット35と、流路5から冷媒を排出するためのアウトレット36と、シール部材4が嵌め込まれるシール溝39と、が形成されている。
【0034】
インレット35及びアウトレット36は、円形(例えば、真円形)に形成されている。また、インレット35及びアウトレット36は、金属製ベース2から離間した位置に形成されている。流路5は、熱交換領域51と、入口領域52と、出口領域53と、供給側チャンバ領域54と、排出側チャンバ領域55と、を有する。流路5では、インレット35、供給側チャンバ領域54、入口領域52、熱交換領域51、出口領域53、排出側チャンバ領域55、及びアウトレット36が、この順で長さ方向D3に配置されている。
【0035】
熱交換領域51は、熱交換部22が配置される領域である。つまり、熱交換部22は、熱交換領域51において冷媒と接触するように、熱交換領域51に配置されている。カバー本体31は、プレート部21との間に熱交換領域51を形成して熱交換部22を収容する収容部31aを有する。収容部31aは、例えば、熱交換領域51を囲むカバー本体31の内壁面である。収容部31aは、熱交換領域51が重ね合わせ方向D1、幅方向D2、及び長さ方向D3の全てにおいて熱交換部22よりも大きくなるように、形成されている。そして、収容部31aは、熱交換部22から離間されて、熱交換部22との間に隙間が形成されている。つまり、熱交換領域51を囲むカバー本体31の内壁面は、熱交換部22から離間されており、熱交換部22との間に隙間が形成されている。
【0036】
入口領域52は、熱交換領域51のインレット35側に配置される領域である。つまり、入口領域52は、熱交換領域51に隣接して、熱交換領域51の入口となる領域である。入口領域52は、幅方向D2に延びている。重ね合わせ方向D1における入口領域52の高さは、重ね合わせ方向D1における熱交換部22の高さ以下、又は重ね合わせ方向D1における熱交換部22の高さ未満となっている。
【0037】
出口領域53は、熱交換領域51のアウトレット36側に配置される領域である。つまり、出口領域53は、熱交換領域51に隣接して、熱交換領域51の出口となる領域である。出口領域53は、幅方向D2に延びている。なお、出口領域53は、長さ方向D3において入口領域52と対称となるように形成されている。
【0038】
供給側チャンバ領域54は、インレット35と入口領域52との間に配置される領域である。供給側チャンバ領域54は、インレット35及び入口領域52と隣接して、インレット35から供給された冷媒を一旦貯留して入口領域52に供給する領域である。供給側チャンバ領域54は、重ね合わせ方向D1に延びている。そして、インレット35は、入口領域52よりも重ね合わせ方向D1における金属製ベース2とは反対側に位置している。つまり、重ね合わせ方向D1において、インレット35は、入口領域52よりも高い位置に配置されている。
【0039】
排出側チャンバ領域55は、出口領域53とアウトレット36との間に配置される領域である。排出側チャンバ領域55は、出口領域53及びアウトレット36と隣接して、出口領域53から排出された冷媒を一旦貯留してアウトレット36に排出する領域である。なお、排出側チャンバ領域55は、長さ方向D3において供給側チャンバ領域54と対称となるように形成されている。
【0040】
シール溝39は、カバー本体31のプレート部21側の端面31bに形成されている。端面31bは、カバー本体31の第二面21bと対向する面である。シール溝39は、端面31bにおいて流路5を囲むように形成されている。カバー本体31の端面31bは、プレート部21の第二面21bに接触していることが好ましい。しかしながら、カバー本体31とプレート部21との間の気密性が保持されていれば、カバー本体31の端面31bは、プレート部21の第二面21bに接触していなくてもよい。
【0041】
供給パイプ部32は、カバー本体31から長さ方向D3に延びる部分である。供給パイプ部32は、冷媒を流通させる供給側冷媒パイプ(不図示)を接続できるように、筒状(パイプ状)に形成されて、直線状に延びている。なお、供給パイプ部32には、供給パイプ部32に接続された供給側冷媒パイプが供給パイプ部32から容易に抜けないように、一つのバルジ(供給パイプ部32の周方向に延びる膨出部)が形成されている。供給パイプ部32には、インレット35に連通される供給流路37が形成されている。供給流路37は、供給パイプ部32の内周面により形成される。
【0042】
排出パイプ部33は、カバー本体31から長さ方向D3における供給パイプ部32とは反対方向に延びる部分である。排出パイプ部33は、冷媒を流通させる排出側冷媒パイプ(不図示)を接続できるように、筒状(パイプ状)に形成されて、直線状に延びている。なお、排出パイプ部33には、排出パイプ部33に接続された排出側冷媒パイプが排出パイプ部33から容易に抜けないように、一つのバルジが形成されている。排出パイプ部33には、アウトレット36に連通される排出流路38が形成されている。排出流路38は、排出パイプ部33の内周面により形成される。
【0043】
図10は、
図7及び
図8の一部を拡大した断面図である。
図1~
図10に示すように、カシメ部34は、金属製ベース2のプレート部21に形成された貫通穴24に挿入されて、金属製ベース2に対して樹脂製カバー3を固定する部分である。つまり、樹脂製カバー3は、カシメ部34により金属製ベース2に対して固定されている。カシメ部34は、貫通穴24に挿入されるボス部34aと、ボス部34aの先端部から広がってプレート部21に対する熱交換部22の反対側からプレート部21に係止されるハット部34bと、を有する。
【0044】
ボス部34aは、棒状に形成されており、カバー本体31の端面31bから重ね合わせ方向D1におけるプレート部21側に延びている。ボス部34aの外径は、貫通穴24の穴径(内径)以下である。ハット部34bは、ボス部34aの先端部から、プレート部21の第一面21aに沿って広がっている。ハット部34bが広がる方向は、ボス部34aの軸線と直交する方向、又は幅方向D2及び長さ方向D3に沿う方向でもある。ハット部34bは、プレート部21の第二面21bに接触することで、プレート部21に対する熱交換部22の反対側からプレート部21に係止されている。ハット部34bは、例えば、丸ネジの頭部のようなドーム状(略半球状)に形成されている。
【0045】
そして、カシメ部34は、ボス部34aが貫通穴24に挿入されていることで、金属製ベース2に対する樹脂製カバー3の幅方向D2及び長さ方向D3への移動を規制する。また、カシメ部34は、プレート部21に対する熱交換部22の反対側からプレート部21に係止されることで、金属製ベース2に対して樹脂製カバー3を固定する。カシメ部34は、例えば、超音波カシメ、熱カシメ等のカシメ手法により形成される。
【0046】
図1~
図9に示すように、シール部材4は、カバー本体31とプレート部21との間をシールするための部材である。シール部材4は、無端状に形成されている。シール部材4は、例えば、弾性材からなる矩形リングである。シール部材4は、カバー本体31に形成されたシール溝39に嵌め込まれて、カバー本体31の端面31bにおいて流路5を囲んでいる。そして、シール部材4は、シール溝39の深さよりも大きい外径を有しており、カシメ部34により金属製ベース2に対して樹脂製カバー3が固定されていることで、カバー本体31とプレート部21とに圧縮された状態となっている。
【0047】
このように構成される冷却器1では、供給パイプ部32に供給側冷媒パイプが接続されるとともに、排出パイプ部33に排出側冷媒パイプが接続される。そして、供給側冷媒パイプから供給パイプ部32の供給流路37に冷媒が供給されて、排出パイプ部33の排出流路38から排出側冷媒パイプに冷媒が排出される。供給パイプ部32の供給流路37に供給された冷媒は、インレット35から流路5に供給される。インレット35から流路5に供給された冷媒は、インレット35、供給側チャンバ領域54、入口領域52、熱交換領域51、出口領域53、排出側チャンバ領域55、及びアウトレット36の順に流れて行き、アウトレット36から排出パイプ部33の排出流路38に排出される。このとき、インレット35から流路5に供給された冷媒は、一旦供給側チャンバ領域54に溜まることで幅方向D2における流れの不均一が抑制され、その後、入口領域52から熱交換領域51に供給される。そして、熱交換領域51において冷媒が熱交換部22と熱交換することで、被冷却体が冷却される。
【0048】
ここで、上述したように、熱交換部22を収容する樹脂製カバー3の収容部31aは、熱交換部22から離間されて、熱交換部22との間に隙間が形成されている。しかしながら、貫通穴24とボス部34aとの間に隙間があると、貫通穴24でボス部34aが移動して、収容部31aと熱交換部22との位置関係が変わる可能性がある。このような移動としては、例えば、樹脂製カバー3が金属製ベース2に対して一軸方向にスライドする移動、樹脂製カバー3が金属製ベース2に対して回転する移動、このようなスライド及び回転が組み合わされた移動等がある。一軸方向のスライドは、例えば、幅方向D2へのスライド、長さ方向D3へのスライド、幅方向D2及び長さ方向D3に対して傾斜する方向へのスライドである。回転は、例えば、重ね合わせ方向D1と平行な軸線を中心とした回転である。そして、貫通穴24とボス部34aとの間の隙間が大きいと、冷却器1を製造する際に、貫通穴24でのボス部34aの移動により収容部31aが熱交換部22に接触して、熱交換部22が変形する可能性がある。また、製造された冷却器1においても、貫通穴24とボス部34aとの間の隙間が大きいと、貫通穴24でのボス部34aの移動により収容部31aが熱交換部22に接触して、熱交換部22が変形する可能性がある。熱交換部22は、効率的に冷媒と熱交換できるように設計されているが、熱交換部22が変形すると、冷媒との熱交換効率が低下して、被冷却体の冷却効率が低下する可能性がある。
【0049】
そこで、
図7及び
図8に示すように、樹脂製カバー3は、貫通穴24でボス部34aが移動しても熱交換部22が収容部31aに接触しない形状を有している。また、ボス部34aと貫通穴24との最大隙間寸法Aは、ボス部34aの軸線と垂直な方向である幅方向D2及び長さ方向D3における熱交換部22と収容部31aとの最小隙間寸法Bよりも小さくなっている。ボス部34aと貫通穴24との最大隙間寸法Aは、例えば、貫通穴24の穴径からボス部34aの外径を引いた値とすることができる。
図9に示すように熱交換部22と収容部31aとの隙間が場所により異なる場合、熱交換部22と収容部31aとの最小隙間寸法Bは、例えば、熱交換部22と収容部31aとが最も近接する位置における熱交換部22と収容部31aとの隙間の寸法(距離)である。
【0050】
次に、本実施形態に係る冷却器の製造方法について説明する。本実施形態に係る冷却器の製造方法は、上述した冷却器1を製造する方法である。
【0051】
本実施形態に係る冷却器の製造方法では、まず、準備工程を行う。
図11は、本実施形態の冷却器の製造方法における準備工程を示す斜視図である。
図11に示すように、準備工程では、被冷却体を冷却するための金属製ベース2と、金属製ベース2との間に冷媒が流通する流路5を形成する樹脂製カバー103と、シール部材4と、を用意する。
【0052】
用意工程で用意する金属製ベース2は、上述した冷却器1の金属製ベース2と同じであり、平板状に形成されたプレート部21と、プレート部21上に配置された熱交換部22と、を有する。そして、プレート部21には、プレート部21を被冷却体に固定するための複数の貫通穴23と、金属製ベース2に対して樹脂製カバー103を固定するための複数の貫通穴24と、が形成されている。
【0053】
用意工程で用意する樹脂製カバー103は、上述した冷却器1の樹脂製カバー3と基本的に同じであるが、複数のカシメ部34の代わりに、複数の貫通穴24に挿入可能な複数のボス部134を有する点のみ、上述した冷却器1の樹脂製カバー3と相違する。
【0054】
ボス部134は、冷却器1のカシメ部34となる部位である。ボス部134は、カシメ部34のボス部34aと基本的に同じであるが、カシメ部34のボス部34aよりも長い点のみ、カシメ部34のボス部34aと相違する。つまり、ボス部134は、ボス部34aと同様に、カバー本体31の端面31bから棒状に延びている。また、ボス部134の外径は、ボス部34aと同様に、貫通穴24の穴径(内径)以下である。
【0055】
用意工程で用意するシール部材4は、上述した冷却器1のシール部材4と同じであり、無端状に形成されている。
【0056】
本実施形態に係る冷却器の製造方法では、次に、カシメ工程を行う。
図12は、本実施形態の冷却器の製造方法におけるカシメ工程を示す平面図である。
図13は、
図12に示すXIII-XIII線における断面図である。
図14は、
図12に示すXIV-XIV線における断面図である。
図12~
図14に示すように、カシメ工程では、まず、樹脂製カバー103のシール溝39にシール部材4を嵌め込む。そして、樹脂製カバー103の端面31bと金属製ベース2の第二面21bとを対向させて、樹脂製カバー103の複数のボス部134のそれぞれを金属製ベース2の複数の貫通穴24のそれぞれに挿入する。これにより、金属製ベース2と樹脂製カバー103との間にシール部材4が配置された状態となる。
【0057】
カシメ工程では、次に、金属製ベース2と樹脂製カバー103とでシール部材4を押圧する。金属製ベース2と樹脂製カバー103とによるシール部材4の押圧は、例えば、押圧治具(不図示)により金属製ベース2と樹脂製カバー103とを、重ね合わせ方向D1において互いに近づく方向に押圧することにより行うことができる。このとき、金属製ベース2の第二面21bと樹脂製カバー103の端面31bとが接触するまで、金属製ベース2と樹脂製カバー103とを、重ね合わせ方向D1において互いに近づく方向に押圧することが好ましい。
【0058】
カシメ工程では、次に、金属製ベース2と樹脂製カバー103とでシール部材4を押圧した状態で、金属製ベース2に対して樹脂製カバー103をカシメにより固定する。
図15は、ボス部を貫通穴に挿入した状態を示す断面図である。
図15に示すように、ボス部134を貫通穴24に挿入すると、ボス部134の先端部134aがプレート部21の第一面21aから突出する。そこで、カシメでは、プレート部21の第一面21aから突出したボス部134の先端部134aを、溶融してプレート部21に対する第一面21aとは反対側からプレート部21に係止されるように広げる。つまり、プレート部21の先端部134aを溶融することにより、先端部13をプレート部21の第一面21aに接触するように幅方向D2及び長さ方向D3に広げる。これにより、冷却器1のカシメ部34が形成される。つまり、ボス部134の貫通穴24に挿入されている部分が冷却器1のボス部34aとなり、ボス部134のプレート部21の第一面21aから突出して広がっている部分が冷却器1のハット部34bとなる。このようなカシメとしては、例えば、超音波カシメ、熱カシメ等により行うことができる。なお、金属製ベース2に対する樹脂製カバー103のカシメによる固定は、金属製ベース2と樹脂製カバー103とによるシール部材4の押圧の後に行ってもよく、金属製ベース2と樹脂製カバー103とによるシール部材4の押圧と一緒に行ってもよい。
【0059】
ここで、ボス部134を貫通穴24に挿入しようとする際に、金属製ベース2に対する樹脂製カバー103の位置がずれていると、ボス部134が貫通穴24に挿入されずにプレート部21の第一面21a上に乗ってしまう。このとき、ボス部134が短いと、ボス部134がプレート部21の第一面21a上に乗った際に、収容部31aが熱交換部22に接触して、熱交換部22が変形する可能性がある。
【0060】
そこで、
図13及び
図14に示すように、用意工程で用意する樹脂製カバー103は、ボス部134の長さCが、ボス部134がプレート部21の第二面21bに接触した際に樹脂製カバー103が熱交換部22に接触しない長さとなっている。また、用意工程で用意する樹脂製カバー103は、ボス部134の長さCが、プレート部21に対する熱交換部22の高さDよりも長くなっている。プレート部21に対する熱交換部22の高さDは、プレート部21の第二面21bから熱交換部22の最大高さ位置までの重ね合わせ方向D1における寸法(高さ)である。
【0061】
また、冷却器1と同様に、用意工程で用意する樹脂製カバー103は、ボス部34aを貫通穴24に挿入した際に、貫通穴24でボス部34aがボス部の軸線と垂直な方向に移動しても熱交換部22が収容部31aに接触しない形状を有している。また、冷却器1と同様に、用意工程で用意する金属製ベース2と樹脂製カバー103とは、ボス部134と貫通穴24との最大隙間寸法Eが、ボス部134の軸線と垂直な方向である幅方向D2及び長さ方向D3における熱交換部22と収容部31aとの最小隙間寸法Fよりも小さい関係を有している。
【0062】
以上説明したように、本実施形態に係る冷却器1では、金属製ベース2と樹脂製カバー3との間にシール部材4が配置されて、金属製ベース2のプレート部21に形成された貫通穴24に挿入された樹脂製カバー3のカシメ部34により金属製ベース2に対して樹脂製カバー3が固定されている。このため、金属製ベース2及び樹脂製カバー3の寸法精度を高くしなくても、金属製ベース2と樹脂製カバー3との間の気密信頼性を十分に保持することができる。これにより、製造コストの増加を抑制しつつ金属製ベース2と樹脂製カバー3との間の気密信頼性を高めることができる。
【0063】
また、この冷却器1では、カシメ部34が、貫通穴24に挿入されるボス部34aと、ボス部34aの先端部から広がってプレート部21に対する熱交換部22の反対側からプレート部21に係止されるハット部34bと、を有することで、金属製ベース2に対する樹脂製カバー3の脱落を適切に抑制することができる。
【0064】
また、この冷却器1では、ハット部34bがプレート部21の熱交換部22とは反対側の第一面21aに接触していることで、簡易な構成でプレート部21に対してハット部34bを係止させることができる。
【0065】
また、この冷却器1では、樹脂製カバー3が、貫通穴24でボス部34aが移動しても熱交換部22が収容部31aに接触しない形状を有することで、収容部31aが熱交換部22に接触して熱交換部22が変形するのを抑制することができる。このため、例えば、樹脂製カバー3が金属製ベース2に対して一軸方向にスライドする移動、樹脂製カバー3が金属製ベース2に対して回転する移動、このようなスライド及び回転が組み合わされた移動等が生じても、収容部31aが熱交換部22に接触して熱交換部22が変形するのを抑制することができる。
【0066】
また、この冷却器1では、ボス部34aの軸線と垂直な方向である幅方向D2及び長さ方向D3において、ボス部34aと貫通穴24との最大隙間寸法Aが熱交換部22と収容部31aとの最小隙間寸法Bよりも小さいことで、貫通穴24でボス部34aが移動しても熱交換部22が収容部31aに接触するのを抑制することができる。これにより、収容部31aが熱交換部22に接触して熱交換部22が変形するのを抑制することができる。
【0067】
また、この冷却器1では、熱交換部22がフィンにより構成されていることで、高い熱交換性能を得ることができる。
【0068】
本実施形態に係る冷却器の製造方法では、金属製ベース2と樹脂製カバー103との間にシール部材4を配置し、金属製ベース2と樹脂製カバー103とでシール部材4を押圧した状態で、金属製ベース2に対して樹脂製カバー103をカシメにより固定する。このため、金属製ベース2及び樹脂製カバー103の寸法精度を高くしなくても、金属製ベース2と樹脂製カバー103との間の気密信頼性を十分に保持することができる。これにより、製造コストの増加を抑制しつつ金属製ベース2と樹脂製カバー103との間の気密信頼性を高めることができる。
【0069】
また、この冷却器の製造方法では、金属製ベース2に対して樹脂製カバー103を超音波カシメ又は熱カシメにより固定することで、金属製ベース2に対して樹脂製カバー103を適切に固定することができる。
【0070】
また、この冷却器の製造方法では、樹脂製カバー103のボス部134を金属製ベース2のプレート部21の貫通穴24に挿入し、プレート部21から突出したボス部134の先端部134aを溶融してプレート部21に対する熱交換部22の反対側からプレート部21に係止されるように広げることで、金属製ベース2に対して樹脂製カバー103を強固に固定することができる。
【0071】
また、この冷却器の製造方法では、ボス部134の先端部134aを溶融してプレート部21の熱交換部22とは反対側の第一面21aに接触させることで、簡易な構成でプレート部21に係止させることができる。
【0072】
また、この冷却器の製造方法では、用意工程で用意する樹脂製カバー103が、ボス部134の長さCが、ボス部134がプレート部21の樹脂製カバー103側の第二面21bに接触した際に樹脂製カバー103が熱交換部22に接触しない長さであることで、金属製ベース2に対する樹脂製カバー3の位置がずれてボス部134が貫通穴24に入らなかった際に、樹脂製カバー103が熱交換部22に接触して熱交換部22が変形するのを防止することができる。
【0073】
また、この冷却器の製造方法では、ボス部134の長さCがプレート部21に対する熱交換部22の高さDよりも長いことで、金属製ベース2に対する樹脂製カバー3の位置がずれてボス部134が貫通穴24に入らなかった際に、ボス部134がプレート部21の樹脂製カバー3側の第二面21bに接触しても、樹脂製カバー103が熱交換部22に接触するのを抑制することができる。これにより、金属製ベース2に対する樹脂製カバー3の位置がずれてボス部134が貫通穴24に入らなかった際に、樹脂製カバー103が熱交換部22に接触して熱交換部22が変形するのを抑制することができる。
【0074】
また、この冷却器の製造方法では、用意工程で用意する樹脂製カバー103が、ボス部134を貫通穴24に挿入した際に貫通穴24でボス部134がボス部134の軸線と垂直な方向に移動しても熱交換部22が収容部31aに接触しない形状を有することで、ボス部134を貫通穴24に挿入した際に、収容部31aが熱交換部22に接触して熱交換部22が変形するのを抑制することができる。このため、例えば、樹脂製カバー103が金属製ベース2に対して一軸方向にスライドする移動、樹脂製カバー103が金属製ベース2に対して回転する移動、このようなスライド及び回転が組み合わされた移動等が生じても、ボス部134を貫通穴24に挿入した際に、収容部31aが熱交換部22に接触して熱交換部22が変形するのを抑制することができる。
【0075】
また、この冷却器の製造方法では、用意工程で用意する金属製ベース2と樹脂製カバー103とが、ボス部134を貫通穴24に挿入した際に、ボス部134と貫通穴24との最大隙間寸法Eがボス部134の軸線と垂直な方向における熱交換部22と収容部31aとの最小隙間寸法Fよりも小さい関係を有することで、ボス部134を貫通穴24に挿入した際に、貫通穴24でボス部134がボス部の軸線と垂直な方向に移動しても熱交換部22が収容部31aに接触するのを抑制することができる。これにより、ボス部134を貫通穴24に挿入した際に、収容部31aが熱交換部22に接触して熱交換部22が変形するのを抑制することができる。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0077】
例えば、上記実施形態では、一例としてカシメ部のハット部がドーム状に形成されているものとして説明した。しかしながら、カシメ部のハット部は、ボス部の先端部から広がってプレート部の熱交換部とは反対側の第一面に接触するものであれば、如何なる形状に形成されていてもよい。例えば、
図16(a)に示すハット部34bのように、中央部が凹んだドーム状に形成されていてもよく、
図16(b)に示すハット部34bのように、円板状に形成されていてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、一例として、カシメ部のハット部がプレート部の熱交換部とは反対側の第一面に接触することで、ハット部がプレート部に対する熱交換部の反対側からプレート部に係止されるものとして説明した。しかしながら、ハット部がプレート部に対する熱交換部の反対側からプレート部に係止さるものであれば、金属製ベース及び樹脂製カバーの形状、ハット部とプレート部との接触位置などは特に限定されるものではない。例えば、
図17(a)及び
図17(b)に示すように、金属製ベース2のプレート部21は、貫通穴24に沿ってプレート部21の熱交換部22とは反対側の第一面21aからプレート部21の熱交換部22側の第二面21bに向けて凹む凹部21cを有し、カシメ部34のハット部34bは、凹部21cに埋まっていてもよい。
図17(a)に示す凹部21cは、重ね合わせ方向D1に同じ径で凹む円板状の凹部となっている。この場合、ハット部34bは、凹部21cの底面に接触することで、プレート部21に対する熱交換部22の反対側からプレート部21に係止される。
図17(b)に示す凹部21cは、重ね合わせ方向D1に縮径しながら凹む円錐状(テーパー状)の凹部となっている。この場合、ハット部34bは、凹部21cの円錐面(テーパー面)に接触することで、プレート部21に対する熱交換部22の反対側からプレート部21に係止される。
【0079】
このような冷却器の製造方法において、用意工程で用意する金属製ベース2は、プレート部21が、貫通穴24に沿ってプレート部21の熱交換部22とは反対側の第一面21aからプレート部21の熱交換部22側の第二面21bに向けて凹む凹部21cを有するものとする。そして、カシメ工程では、ボス部134の先端部134aを溶融して凹部21cに埋める。
【0080】
このような冷却器では、ハット部34bがプレート部21の凹部21cに埋まっていることで、プレート部21の熱交換部22とは反対側の第一面21aを平坦化することができる。これにより、プレート部21を被冷却体に取り付けやすくなるとともに、プレート部21と被冷却体との接触面積を増加することができる。同様に、このような冷却器の製造方法では、カシメ工程においてボス部134の先端部134aを溶融して凹部21cに埋めることで、プレート部21の熱交換部22とは反対側の第一面21aを平坦化することができる。これにより、プレート部21を被冷却体に取り付けやすくなるとともに、プレート部21と被冷却体との接触面積を増加することができる。
【0081】
また、供給パイプ部及び排出パイプ部は、接続される冷媒パイプの形状や冷媒パイプとの接続構造等に応じて、適宜変更してもよい。
【0082】
図18は、変形例の冷却器を示す平面図である。
図18に示す変形例の冷却器1Aは、上記実施形態の樹脂製カバー3の代わりに樹脂製カバー3Aを備えている。樹脂製カバー3Aには、上記実施形態の供給パイプ部32及び排出パイプ部33の代わりに、供給パイプ部32A及び排出パイプ部33Aが設けられている。供給パイプ部32A及び排出パイプ部33Aは、上記実施形態の供給パイプ部32及び排出パイプ部33と同様に、筒状(パイプ状)に形成されて、直線状に延びている。また、供給パイプ部32A及び排出パイプ部33Aには、上記実施形態の供給パイプ部32及び排出パイプ部33と同様に、インレット35に連通される供給流路37及びアウトレット36に連通される排出流路38が形成されている。そして、供給パイプ部32A及び排出パイプ部33Aの先端部は、供給側冷媒パイプ及び排出側冷媒パイプを接続しやすくするために、テーパ状に形成されている。また、供給パイプ部32A及び排出パイプ部33Aには、接続された供給側冷媒パイプ及び排出側冷媒パイプが容易に抜けないように、二つのバルジが形成されている。
【0083】
図19は、他の変形例の冷却器を示す平面図である。
図19に示す他の変形例の冷却器1Bは、上記実施形態の樹脂製カバー3の代わりに樹脂製カバー3Bを備えている。樹脂製カバー3Bには、上記実施形態の供給パイプ部32と同様の供給パイプ部32Bと、
図18に示す冷却器1Aの排出パイプ部33Aと同様の排出パイプ部33Bと、が設けられている。
【0084】
また、上記実施形態では、供給パイプ部32と排出パイプ部33とが長さ方向D3に互いに反対側に延びるように配置されるものとして説明したが、供給パイプ部及び排出パイプ部は如何なる方向に向くように配置されていてもよい。例えば、供給パイプ部及び排出パイプ部は、幅方向の同じ方向を向くように並列して配置されていてもよく、幅方向及び長さ方向に対して傾斜した方向を向くように配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1…冷却器、1A…冷却器、1B…冷却器、2…金属製ベース、3,3A,3B…樹脂製カバー、103…樹脂製カバー、4…シール部材、5…流路、21…プレート部、21a…第一面、21b…第二面、21c…凹部、22…熱交換部、23…貫通穴、24…貫通穴、31…カバー本体、31a…収容部、31b…端面、32…供給パイプ部、32A…供給パイプ部、32B…供給パイプ部、33…排出パイプ部、33A…排出パイプ部、33B…排出パイプ部、34…カシメ部、34a…ボス部、34b…ハット部、35…インレット、36…アウトレット、37…供給流路、38…排出流路、39…シール溝、51…熱交換領域、52…入口領域、53…出口領域、54…供給側チャンバ領域、54…供給側チャンバ領域、55…排出側チャンバ領域、134…ボス部、134a…先端部、D1…重ね合わせ方向、D2…幅方向、D3…長さ方向、A…最大隙間寸法、B…最小隙間寸法、C…ボス部の長さ、D…熱交換部の高さ、E…最大隙間寸法、F…最小隙間寸法。