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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080261
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】打ち込み工具
(51)【国際特許分類】
   B25C 1/06 20060101AFI20240606BHJP
   B25C 1/04 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
B25C1/06
B25C1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193308
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉兼 聖展
(72)【発明者】
【氏名】紙元 順平
【テーマコード(参考)】
3C068
【Fターム(参考)】
3C068AA01
3C068BB01
3C068CC02
3C068CC07
3C068GG03
3C068JJ13
(57)【要約】
【課題】ガス圧でドライバを移動させて打ち込み具を打ち込み、リフト機構のホイールを係合させてドライバを下動端から上動端位置に戻す打ち込み工具において、打ち込みノーズ部の打ち込み通路にはドライバの案内通路に加えて係合部を通過させるための逃がし通路が設けられる。本開示では打ち込みノーズ部の大形化を招くことなくステープル等のより幅広の打ち込み具を安定して打撃できるようにする。
【解決手段】ドライバ20は打撃部材21と係合部材22の2部材接合構造とする。これにより打撃部材21を案内する通路と係合部材22の係合部22aを通過させる逃がし通路がドライバの板厚方向にズレて配置される。このため逃がし通路を大きくすることなく案内通路幅を拡大してより幅広の打撃部材21を適用可能とする。2部材の接合構造であるので、ドライバ20の低コスト化が図られる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打ち込み工具であって、
ガス圧によって移動するピストンと、
前記ピストンに設けられて前記ピストンと一体で移動して打ち込み具を打撃するドライバと、
前記ドライバの移動方向に沿って前記ドライバに設けられる複数の係合部と、
前記複数の係合部に順次係合して前記ドライバを初期位置へ戻すリフタと、を備え、
前記ドライバは、前記打ち込み具を打撃する打撃部材と、前記複数の係合部を有しかつ前記打撃部材に対して前記ドライバの長手方向に直交する方向に接合される係合部材を有する打ち込み工具。
【請求項2】
請求項1記載の打ち込み工具であって、
前記打撃部材と前記係合部材の2部材の一方に形成された凸部と、前記2部材の他方に形成されかつ前記凸部が嵌入される凹部を有する打ち込み工具。
【請求項3】
請求項2記載の打ち込み工具であって、
前記凸部と前記凹部との凹凸篏合部が前記ドライバの長手方向に複数個所設けられる打ち込み工具。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記係合部材は、前記ピストンに結合される結合部を有する打ち込み工具。
【請求項5】
請求項4に記載の打ち込み工具であって、
前記打撃部材は、前記係合部材の打ち込み方向先端に当接するように前記係合部材側に張り出す当接部を有する打ち込み工具。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の打ち込み工具であって、
前記打撃部材は、前記係合部材の反接合面側に張り出して前記係合部材が離間することを規制する引掛部を有する打ち込み工具。
【請求項7】
請求項6に記載の打ち込み工具であって、
前記打撃部材は、前記ドライバの長手方向に相互に並ぶ複数の前記引掛部を有する打ち込み工具。
【請求項8】
請求項5に記載の打ち込み工具であって、
前記当接部には、前記係合部材の反接合面側に張り出して前記係合部材が離間することを規制する引掛部が設けられる打ち込み工具。
【請求項9】
請求項1~3の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記打撃部材は、前記ピストンに結合される結合部を有する打ち込み工具。
【請求項10】
請求項9記載の打ち込み工具であって、
前記複数の係合部は、前記ドライバの移動方向の最先の最先係合部と、最後の最後係合部を含み、前記係合部材は、前記最先係合部の少なくとも一部に対応する位置にて前記打撃部材が篏合する第1篏合部と、前記最後係合部の少なくとも一部に対応する位置にて前記打撃部材が篏合する第2篏合部を有する打ち込み工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、打ち込み具を被打ち込み材に打ち込むための打ち込み工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、圧縮ガスの推力を打撃力として利用するガスバネ式の打ち込み工具が開示されている。ガスバネ式の打ち込み工具は、シリンダ内を上下動するピストンと、ピストンに結合されて一体で打ち込み通路内を移動して打ち込み具を打撃するドライバを有する。ピストンとドライバは蓄圧室のガス圧で打ち込み方向に下動する。ピストンとドライバはリフト機構により反打ち込み方向に戻される。
【0003】
リフト機構は、ドライバに設けた複数の係合部に順次係合されるホイールを有する。ホイールは電動モータにより回転する。打ち込み動作後にホイールが回転してドライバの係合部に順次係合されることでドライバが反打ち込み方向に戻される。ピストンが反打ち込み方向に戻されることで、蓄圧室のガス圧が高められる。ドライバが戻されるとともに打ち込み通路に打ち込み具が供給される。反打ち込み方向の移動端付近で、ドライバに対するリフト機構の係合状態が解除される。これによりドライバがガス圧により移動して打ち込み具の打撃動作がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6485544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
係る打ち込み工具では、ドライバが移動するための打ち込み通路には、ドライバに設けた複数の係合部を通過させるための逃がし通路が並設される。このため、例えばステープルのような幅広の打ち込み具を案内する幅広の打ち込み通路に逃がし通路が並設されると打ち込みノーズ部が大形化する問題がある。本開示では、打ち込みノーズ部の大形化を招くことなく幅広の打ち込み具を適用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの局面によれば、打ち込み工具は、例えばガス圧によって移動するピストンと、ピストンに設けられてピストンと一体で移動して打ち込み具を打撃するドライバを備える。打ち込み工具は、例えばドライバの移動方向に沿ってドライバに設けられる複数の係合部と、複数の係合部に順次係合してドライバを初期位置へ戻すリフタとを備える。ドライバは、打ち込み具を打撃する打撃部材と、複数の係合部を有しかつ打撃部材に対してドライバの長手方向に直交する方向に接合された係合部材を有する。
【0007】
従って、係合部材が打撃部材に対してドライバの長手方向に直交する方向にズレて接合される。このため打ち込み具の打ち込み通路に対して、複数の係合部を通過させる逃がし通路がドライバの長手方向に直交する方向にズレて配置される。これにより、打ち込みノーズ部の大形化を招くことなく打ち込み通路を例えばステープル等の幅広の打ち込み具を適用可能な幅に拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】打ち込み工具の全体側面図である。
図2】打ち込みノーズ部を図1中矢印II方向から見た前面図である。本図は、ドライバが上方の待機位置に位置する状態を示している。
図3】打ち込みノーズ部を図1中矢印II方向から見た前面図である。本図は、ドライバが下動端に位置する状態を示している。
図4】第1実施例のドライバの斜視図である。
図5】第1実施例のドライバの側面図である。
図6】第1実施例のドライバの一部断面図である。
図7】第1実施例のドライバの分解斜視図である。
図8図2中VIII-VIII線断面矢視図であって、打ち込み通路の横断面図である。
図9】第2実施例のドライバの斜視図である。
図10】第2実施例のドライバの側面図である。
図11】第2実施例のドライバの一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1つ又はそれ以上の実施態様において、打ち込み工具は、例えば打撃部材と係合部材の2部材の一方に形成された凸部と、2部材の他方に形成されかつ凸部が嵌入される凹部を有する。従って、凸部と凹部の凹凸篏合により打撃部材と係合部材が強固に接合されて、打ち込み時の衝撃に対する耐久性が高められる。
【0010】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば凸部と凹部との凹凸篏合部がドライバの長手方向に複数個所設けられる。従って、打撃部材と係合部材がドライバの長手方向に沿ってより強固に接合されてドライバの耐衝撃性が高められる。
【0011】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば係合部材はピストンに結合される結合部を有する。従って、複雑な形状を有する打撃部材が占める割合を最小限とすることでドライバのコスト低減を図ることができる。
【0012】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば打撃部材は、係合部材の打ち込み方向先端に当接するように係合部材側に張り出す当接部を有する。従って、打ち込み具の打撃時におけるドライバの耐衝撃性が高まる。
【0013】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば打撃部材は、係合部材の反接合面側に張り出して係合部材が離間することを規制する引掛部を有する。従って、引掛部により係合部材の接合離間方向(剥離方向)の力が受けられることで、打撃部材と係合部材の接合強度が高められる。
【0014】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば打撃部材はドライバの長手方向に相互に並ぶ複数の引掛部を有する。従って、打撃部材と係合部材の接合強度がより高められる。
【0015】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば当接部には、係合部材の反接合面側に張り出して係合部材が離間することを規制する引掛部が設けられる。従って、当接部に係合部材の打ち込み方向の先端が当接されると、引掛部により係合部材の接合離間方向へ変位が規制される状態となる。これにより、ドライバの耐衝撃性が高められるとともに、引掛部により打撃部材と係合部材の接合強度が高められる。
【0016】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば打撃部材はピストンに結合される結合部を有する。従って、打撃部材がピストンに直接結合されることでドライバの打撃力が効率よく発揮される。打ち込み具の打撃時に係合部材に剥離方向の力が付加されないことから接合構造の簡素化が図られる。
【0017】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば複数の係合部は、ドライバの移動方向の最先の最先係合部と、最後の最後係合部を含む。係合部材は最先係合部の少なくとも一部に対応する位置にて打撃部材が篏合する第1篏合部と、最後係合部の少なくとも一部に対応する位置にて打撃部材が篏合する第2篏合部を有する。従って、複数の係合部のドライバ移動方向の全領域について打撃部材に対する係合部材の接合強度が高められる。
【実施例0018】
次に本開示の第1実施例を図1~8に基づいて説明する。打ち込み工具1の一例として、シリンダ上方の蓄圧室のガス圧を打ち込み具tを打ち込むための推力として利用するガスばね式の打ち込み工具を例示する。打ち込み具tには例えばU字形のステープルが適用される。以下の説明では、打ち込み具tの打ち込み方向を下方向とし、反打ち込み方向を上方向とする。打ち込み工具1の使用者は、図1において概ね打ち込み工具1の右側に位置する。使用者の手前側を後方向(使用者側)、手前側と反対側の奥側を前方向とする。左右方向については使用者を基準とする。
【0019】
図1~3に示すように打ち込み工具1は、工具本体10を有する。工具本体10は、概ね円筒形の本体ハウジング11にシリンダ12を収容した構成を有する。シリンダ12内にはピストン13が上下に往復動可能に収容される。ピストン13よりも上方のシリンダ12の上部は、蓄圧室14に連通される。蓄圧室14には、例えば空気等の圧縮ガスが封入される。蓄圧室14のガス圧は、ピストン13の上面に下動させる推力として作用する。
【0020】
工具本体10の下部に打ち込みノーズ部15が設けられている。打ち込みノーズ部15はドライバガイド16を備える。ドライバガイド16の内周側が打ち込み通路17となっている。打ち込み通路17はシリンダ12の内周側に連通されている。打ち込み通路17内を後述するドライバ20が上下に往復動可能に進入される。
【0021】
図2,3,8に示すように打ち込み通路17には後述するドライバ20の打撃部材21を案内する左右の案内壁部17aと係合部22aを通過させるための逃がし通路17bが設けられている。左右の案内壁部17aと逃がし通路17bは前後方向(ドライバ20の板厚方向)にズレて配置されている。図2ではドライバ20の打撃部材21が左右の案内壁部17aに案内される状態が示されている。図3ではドライバ20の係合部22aが逃がし通路17b内に進入した状態が示されている。打ち込み動作時にドライバ20が下動すると係合部22aが逃がし通路17b内に進入する。
【0022】
図1に示すように打ち込みノーズ部15の後面側にマガジン2が結合されている。マガジン2に多数本の打ち込み具tが装填される。工具本体10の打ち込み動作に連動して打ち込みノーズ部15の打ち込み通路17に、マガジン2内から打ち込み具tが1つずつ供給される。打ち込み通路17内に供給された1つの打ち込み具tが下動するドライバ20で打撃される。
【0023】
工具本体10の後部に使用者が把持するグリップ3が設けられる。グリップ3の前部下面には、使用者が指先で引いて操作する起動用のスイッチレバー4が設けられる。グリップ3の後部にバッテリ取付部5が設けられている。バッテリ取付部5の後面に、バッテリパック6が装着される。バッテリパック6は上下にスライドさせることでバッテリ取付部5に対して着脱できる。バッテリパック6は、バッテリ取付部5から取り外して別途用意した充電器で充電することで繰り返し使用できる。バッテリパック6は、他の電動工具の電源としても利用できる汎用性を有する。バッテリパック6の電力を電源として後述するリフト機構30の電動モータ31が動作する。
【0024】
図2,3に示すようにシリンダ12の下部に、ピストン13の下動端での衝撃を吸収するための下動端ダンパ19が配置される。ピストン13の下面に、第1実施例のドライバ20が結合されている。ドライバ20はピストン13の下面から下方へ長く延びている。ドライバ20の打ち込み方向の先端側(下部側)は下動端ダンパ19の内周側を経て打ち込み通路17内に進入している。ドライバ20は、ピストン13の上面に作用する蓄圧室14のガス圧によって打ち込み通路17内を下動する。打ち込み通路17内を下動するドライバ20の先端(下端)20aが打ち込み通路17内に供給された1本の打ち込み具tを打撃する。打撃された打ち込み具tが射出口18から射出される。射出された打ち込み具tは被打ち込み材Wに打ち込まれる。
【0025】
バッテリ取付部5の下部と工具本体10との間にリフト機構30が設けられている。リフト機構30は駆動源として電動モータ31を有する。電動モータ31の前方に減速ギア列32を介して1つのリフトホイール33が支持されている。下動端に至ったドライバ20及びピストン13がリフト機構30により上方の待機位置に戻される。
【0026】
ドライバ20の右側部に、複数(図では6個)の係合部22aが設けられている。各係合部22aは、右方に突き出すラック歯形状を有している。複数の係合部22aはドライバ20の長手方向(上下方向)に一定の間隔で配置される。複数の係合部22aに、リフト機構30のリフトホイール33が順次係合される。
【0027】
ドライバ20の右側方にリフトホイール33が配置されている。リフトホイール33は、ドライバ20の係合部22aに順次係合される複数(例えば6個)の係合部33aを有する。各係合部33aには、円柱形の軸部材(ピン)が用いられている。複数の係合部33aは、リフトホイール33の外周縁に沿って一定間隔をおいて配置されている。回転方向の最初の係合部33aと最終の係合部33aとの間には回転方向の大きな間隔が設けられている。この間隔がドライバ20側に向けられると、ドライバ20の係合部22aに対するリフトホイール33の係合状態が解除される。図2は、係合状態が解除される直前の待機状態を示している。図3は係合状態が解除された打ち込み状態を示している。
【0028】
電動モータ31の起動によりリフトホイール33が矢印Rの方向(図2,3において反時計回り方向)に回転する。図3は、ドライバ20が下動端に至って打ち込み具tの打ち込みがなされた直後の状態を示している。ドライバ20が下動端に至った後、リフトホイール33の矢印R方向の回転により、係合部33aが順次ドライバ20の係合部22aに下方から係合されることでドライバ20が上方へ戻される。リフト機構30によりピストン13が上方へ戻されることで、蓄圧室14のガス圧が高められる。ドライバ20が図2に示す初期位置に戻されると、電動モータ31が停止して一連の打ち込み動作が終了する。
【0029】
再度スイッチレバー4が引き操作されると、リフト機構30が起動する。これによりリフトホイール33が矢印R方向に回転してドライバ20の係合部22aに対するリフトホイール33の係合が外れる。これによりドライバ20がピストン13に作用する蓄圧室14のガス圧により下動する。ドライバ20が打ち込み通路17を下動することで、打ち込み具tが打撃されて被打ち込み材Wに打ち込まれる。
【0030】
図4~7に示すように第1実施例のドライバ20は、打撃部材21と係合部材22を接合して一体化した2部材接合構造を有する。打撃部材21と係合部材22はそれぞれ帯板形状を有する。第1実施例では打撃部材21と係合部材22は同じ材質の鋼材を素材として同じ熱処理及び表面処理が施されて一定の耐摩耗性や靭性が確保されている。
【0031】
第1実施例のドライバ20では、打撃部材21の前面と係合部材22の後面が相互に接合される。打撃部材21の上側ほぼ半分の領域と係合部材22の下側ほぼ半分の領域が接合部Jとされる。打撃部材21と係合部材22は例えば銅ロウ接や溶接により強固に接合されている。
【0032】
第1実施例では係合部材22の上部にピストン13に対する結合部22bが設けられている。ピストン13の下面中央に二股状の連結部13aが設けられている。連結部13aに結合部22bが挿入されて連結ピン13bが差し込まれることで係合部材22がピストン13の下面に結合されている。これによりピストン13の中心軸線上に係合部材22が連結される。
【0033】
係合部材22の右側部に前記した6つの係合部22aが設けられている。係合部材22には2つの凹部22c,22dが設けられている。2つの凹部22c,22dは、それぞれ板厚方向に貫通する長溝孔形状を有している。2つの凹部22c,22dは、相互にドライバ20の長手方向(打ち込み方向)に一定の間隔をおいてそれぞれ直線状に延びている。
【0034】
打撃部材21の前面に突条21jが全長にわたって設けられている。突条21jは、打撃部材21の左右幅方向の中央に沿って一定の幅で前方へ突き出す状態に設けられている。突条21jの前面が係合部材22の後面に接合されている。打撃部材21は係合部材22の長手方向中程から打ち込み方向の先端側に突き出す長さを有している。打撃部材21は、係合部材22の係合部22aを除く幅とほぼ同じ幅の帯板形状を有する。打撃部材21の先端20aで打ち込み具tが打撃される。
【0035】
打撃部材21には1つの当接部21aが設けられている。当接部21aは突条21jの前面に、突条21jと同じ幅で設けられている。当接部21aは前方(係合部材22側)に突き出している。当接部21aに係合部材22の打ち込み方向の先端22eが当接されている。これにより係合部材22に対する打撃部材21の上方への位置ズレが規制されて、ドライバ20の打ち込み時の高い耐衝撃性が確保されている。当接部21aの基部に逃がし凹部21bが設けられている。逃がし凹部21bにより係合部材22の先端22eが当接部21aに対して上方から確実に当接される。
【0036】
当接部21aの前端には上方へ張り出す引掛部21cが設けられている。引掛部21cは係合部材22の反接合面側(前面側)に張り出す。引掛部21cにより係合部材22の接合離間方向(剥離方向)の力が受けられることで、打撃部材21と係合部材22の接合強度が高められる。
【0037】
打撃部材21の前面であって当接部21aの上方に2つの凸部21d,21eが設けられている。2つの凸部21d,21eは突条21jの前面に、突条21jと同じ幅で設けられている。2つの凸部21d,21eは前方(係合部材22側)に突き出している。2つの凸部21d,21eはそれぞれ係合部材22の凹部22c,22dに挿入されている。2つの凸部21d,21eの前端にそれぞれ上方に張り出す引掛部21f,21gが設けられている。引掛部21f,21gは係合部材22の反接合面側(前面側)に張り出している。引掛部21f,21gによっても係合部材22の接合離間方向(剥離方向)の力が受けられる。これにより打撃部材21と係合部材22の接合強度が一層高められている。
【0038】
2つの凸部21d,21eの基部に逃がし凹部21h,21iが設けられている。逃がし凹部21h,21iにより係合部材22の凹部22c,22dの上端部がそれぞれ凸部21d,21eの上方に十分に接近して配置される。これにより凹部22c,22dの上端部がそれぞれ引掛部21f,21gの後方に進入して剥離方向に確実に引き掛けられた状態となる。
【0039】
打撃部材21の当接部21aの引掛部21cに係合部材22の先端22eが引き掛けられる。且つ打撃部材21の凸部21d,21eの引掛部21f,21gに係合部材22の凹部22c,22dの上端部が引き掛けられる。係合部材22が打ち込み方向の3か所で打撃部材21に対して接合離間方向に引き掛けられることで、打撃部材21と係合部材22の高い接合強度が確保される。
【0040】
図6に示すように係合部材22の2つの凹部22c,22dの上下方向の長さは、打撃部材21の引掛部21f,21gを含めた2つの凸部21d,21eの上下方向の長さよりわずかに大きくなっている。これにより、打撃部材21と係合部材22の接合工程において、打撃部材21と係合部材22を相互に打ち込み方向に直交する前後方向(接合方向)に接近させて、凹部22c,22dに対して凸部21d,21eを真っ直ぐに挿入させることができる。従って、ドライバ20の良好な組立性(接合作業性)が確保される。
【0041】
係合部材22の凹部22c,22dに打撃部材21の凸部21d,21eを挿入させて、打撃部材21と係合部材22を板厚方向に当接させた後、例えば打撃部材21を上方へ変位させ、あるいは係合部材22を下方へ変位させることで、係合部材22の先端22eが打撃部材21の当接部21aに当接される。この当接状態では、2つの凹部22c,22dの上端がそれぞれ引掛部21f,21gの後方に進入した引掛状態となる。この当接状態で、打撃部材21と係合部材22が接合部Jにおいて例えば銅ロウ接により相互に接合される。
【0042】
以上説明した第1実施例によれば、打ち込み工具1は、係合部材22が打撃部材21に対してドライバ20の長手方向に直交する前後方向(板厚方向)にズレて接合される。このため図8に示すように打撃部材21の案内壁部17aに対して、係合部材22の係合部22aを通過させる逃がし通路17bがドライバ20の長手方向に直交する方向(前後方向)にズレて配置される。これにより、打撃部材21を案内するための案内通路幅L1と、係合部22aを通過させるための逃がし通路幅L2を独自に設定可能となる。このため、逃がし通路17bについては側方(右方)への拡大を招くことなく、左右の案内壁部17a間の案内通路幅L1を拡大してより幅広の打撃部材21を案内させることができる。より幅広の打撃部材21を用いることで例えばステープル等の幅広の打ち込み具tを打ち込み可能とすることができる。
【0043】
第1実施例によれば、打撃部材21の凸部21d,21eが係合部材22の凹部22c,22d内に嵌入される。従って、凸部21d,21eと凹部22c,22dの凹凸篏合により打撃部材21と係合部材22が強固に接合されて、打ち込み時の衝撃に対するドライバ20の耐衝撃性が高められる。
【0044】
第1実施例によれば、凸部21d,21eと凹部22c,22dとの凹凸篏合部がドライバ20の長手方向に2個所設けられる。従って、打撃部材21と係合部材22がドライバ20の長手方向に沿ってより強固に接合されてドライバ20の耐衝撃性が高められる。
【0045】
第1実施例によれば、係合部材22はピストン13に結合される連結部13aを有する。従って、当接部21aや凸部21d,21e等を有する点で複雑な形状を有する打撃部材21が占める割合を最小限とすることでドライバ20のコスト低減を図ることができる。
【0046】
第1実施例によれば、打撃部材21は、係合部材22の打ち込み方向の先端22eに当接するように係合部材22側に張り出す当接部21aを有する。従って、打ち込み具tの打撃時におけるドライバ20の耐衝撃性が高まる。
【0047】
第1実施例によれば、打撃部材21は、係合部材22の反接合面側(前面側)に張り出して係合部材22が離間することを規制する引掛部21c,21f,21gを有する。ドライバ20の長手方向に並んだ3箇所の引掛部21c,21f,21gにより係合部材22の接合離間方向(剥離方向)の力が受けられることで、打撃部材21と係合部材22の接合強度が高められる。
【0048】
第1実施例によれば、打撃部材21の当接部21aに引掛部21cが設けられる。従って、当接部21aに係合部材22の打ち込み方向の先端22eが当接されると、引掛部21cにより係合部材22の接合離間方向へ変位が規制される状態となる。これにより、構成の簡略化を図りつつドライバ20の耐衝撃性が高められるとともに、引掛部21cにより打撃部材21と係合部材22の接合強度が高められる。
【0049】
第1実施例には変更を加えることができる。図9~11には第2実施例のドライバ25が示されている。第2実施例のドライバ25は打撃部材26と係合部材27を相互に接合して一体化した2部材接合構造を有する。
【0050】
第2実施例では打撃部材26の上部にピストン13に対する結合部26aが設けられている。結合部26aがピストン13の連結部13aに挿入されて連結ピン13bが差し込まれることで打撃部材26がピストン13の下面に結合されている。
【0051】
打撃部材26の前面には2つの段差部26b,26cが長手方向に沿って設けられている。上側の上段差部26bは、上下に短い領域に設けられている。上段差部26b内に係合部材27の上部が接合されている。下側の下段差部26cは、上段差部26bの下部から打撃部材26の先端25dに至る長い領域に設けられている。下段差部26cの前面に突条26dが設けられている。突条26dは、下段差部26cの全領域にわたって設けられている。突条26dは下段差部26cの幅方向の中央に沿って一定の幅で前方に突き出している。
【0052】
係合部材27は、上段差部26bの全領域と下段差部26cの上側ほぼ半分の領域に跨って接合されている(接合部J)。下段差部26cでは突条26dの前面が接合されている。第1実施例と同じく例えば銅ロウ接により打撃部材26と係合部材27が相互に接合されている。これにより係合部材27がピストン13の中心軸線上に連結される。
【0053】
打撃部材26の前面に同じ形状を有する3つの凸部26e,26f,26gが設けれている。3つの凸部26e,26f,26gは突条26dの前面に同じ幅で前方へ突き出す状態に設けられている。3つの凸部26e,26f,26gは上下に長く設けられている。3つの凸部26e,26f,26gがそれぞれ係合部材27の凹部27b,27c,27dに挿入されている。
【0054】
係合部材27の右側部に、複数(図では7個)の係合部27aが設けられている。各係合部27aは、右方に突き出すラック歯形状を有している。複数の係合部27aはドライバ25の長手方向(上下方向)に一定の間隔で配置される。複数の係合部27aに、リフト機構30のリフトホイール33が順次係合される。複数の係合部27aは、ドライバ25の移動方向(上下方向)の最先(下端)の最先係合部27aaと、最後(上端)の最後係合部27abを含む。
【0055】
係合部材27は板厚方向に貫通する3つの凹部27b,27c,27dを有する。3つの凹部27b,27c,27dは、それぞれ上下に長い溝孔形状を有している。下側の凹部27bは最先係合部27aaの側方に位置している。上側の凹部27dは最後係合部27abの側方に位置している。下側の凹部27bに打撃部材26の凸部26eが篏合されて第1篏合部25aを構成する。上側の凹部27dに打撃部材26の凸部26gが篏合されて第2篏合部25bを構成する。上下方向中央の凹部27cに打撃部材26の凸部26fが篏合されて第3篏合部25cを構成する。
【0056】
係合部材27の最先係合部27aaの上下方向の少なくとも一部の領域に対応する位置にて打撃部材26の凸部26eが篏合する第1篏合部25aを有し、最後係合部27abの上下方向の少なくとも一部の領域に対応する位置にて打撃部材26の凸部26gが篏合する第2篏合部25bを有する。これにより、複数の係合部27aのドライバ移動方向の全領域について打撃部材26に対する係合部材27の接合強度が高められる。
【0057】
第2実施例によれば、係合部材27が打撃部材26に対してドライバ25の長手方向に直交する前後方向(板厚方向)にズレて接合される。このため第1実施例と同じく打撃部材26の案内壁部17aに対して、係合部材27の係合部27aを通過させる逃がし通路17bがドライバ25の長手方向に直交する前後方向(板厚方向)にズレて配置される。これにより、逃がし通路17bについては側方(右方)への拡大を招くことなく、左右の案内壁部17a間の間隔を拡大してより幅広の打撃部材26を案内させることができる。より幅広の打撃部材26を用いることで例えばステープル等の幅広の打ち込み具tを打ち込み可能とすることができる。
【0058】
第2実施例によれば、打撃部材26がピストン13に結合される結合部26aを有する。従って、打撃部材26がピストン13に直接結合されることでドライバ25の打撃力が効率よく発揮される。打ち込み具tの打撃時に係合部材27に剥離方向の力が付加されないことから接合構造の簡素化が図られる。
【0059】
第2実施例によれば、複数の係合部27aは、ドライバ25の移動方向の最先の最先係合部27aaと、最後の最後係合部27abを含む。係合部材27は最先係合部27aaに対応する位置にて打撃部材26が篏合する第1篏合部25aと、最後係合部27abに対応する位置にて打撃部材26が篏合する第2篏合部25bを有する。従って、複数の係合部27aのドライバ移動方向の全領域について打撃部材26に対する係合部材27の接合強度が高められる。
【0060】
以上説明した実施例にはさらに変更を加えることができる。例えば第1、第2実施例では、打撃部材21,26の前面側に係合部材22,27を接合する構成を例示したが、打撃部材を係合部材の前面側に接合する構成としてもよい。この場合には打撃部材の当接部と例えば2箇所の凸部が打撃部材の後面側に設けられる。
【0061】
第1、第2実施例では、ピストン13の中心軸線上に係合部材22,27を位置させる構成を例示したが、打撃部材を位置させる構成としてもよい。
【0062】
第1実施例では、打撃部材21に設けた凸部21d,21eを係合部材22の凹部22c,22dに篏合する構成を例示したが、逆に係合部材に設けた凸部を打撃部材の凹部に篏合する構成としてもよい。
【0063】
第1実施例では、凸部21d,21eの上部に引掛部21f,21gを設ける構成を例示したが、係る引掛部は凸部21d,21eの他の部位に設けてもよい。また、係る引掛部は省略してもよい。
【0064】
第2実施例では、打撃部材26に設けた凸部26e,26f,26gを係合部材27の凹部27b,27c,27dに篏合する構成を例示したが、逆に係合部材に設けた凸部を打撃部材の凹部に篏合する構成としてもよい。
【0065】
打撃部材と係合部材との間の複数個所の凹凸篏合部について、第1実施例では2箇所の凹凸篏合部を例示し、第2実施例では3箇所の凹凸篏合部を例示したが、それぞれ適宜増減し、若しくは省略してもよい。
【0066】
第1実施例の打撃部材21の突条21j、第2実施例の打撃部材26の突条26dは省略してもよい。
【0067】
第1実施例では、打撃部材21と係合部材22を同じ材質の鋼材を素材とする構成を例示したが、両者は異なる材質の部材を素材としてもよい。第2実施例でも同様で、打撃部材26と係合部材27を同じ素材で形成し、若しくは異なる素材で形成してもよい。異なる材質とする場合には、打撃部材の材質を係合部材の材質よりも高強度な材質にすることが望ましい。
【0068】
第1、第2実施例の打ち込み工具1が本開示の1つの局面における打ち込み工具の一例である。第1、第2実施例のピストン13が本開示の1つの局面におけるピストンの一例である。第1、第2実施例の打ち込み具tが本開示の1つの局面における打ち込み具の一例である。
【0069】
第1実施例のドライバ20、第2実施例のドライバ25が本開示の1つの局面におけるドライバの一例である。第1実施例の係合部22a、第2実施例の係合部27aが本開示の1つの局面における係合部の一例である。第1、第2実施例のリフトホイール33が本開示の1つの局面におけるリフタの一例である。
【0070】
第1実施例の打撃部材21、第2実施例の打撃部材26が本開示の1つの局面における打撃部材の一例である。第1実施例の係合部材22、第2実施例の係合部材27が本開示の1つの局面における係合部材の一例である。
【符号の説明】
【0071】
W…被打ち込み材
t…打ち込み具
1…打ち込み工具
2…マガジン
3…グリップ
4…スイッチレバー
5…バッテリ取付部
6…バッテリパック
10…工具本体
11…本体ハウジング
12…シリンダ
13…ピストン
13a…連結部、13b…連結ピン
14…蓄圧室
15…打ち込みノーズ部
16…ドライバガイド
17…打ち込み通路
17a…案内壁部、17b…逃がし通路
L1…案内通路幅、L2…逃がし通路幅
18…射出口
19…下動端ダンパ
20…ドライバ(第1実施例)
20a…先端
21…打撃部材
21a…当接部、21b…逃がし凹部、21c…引掛部、21d,21e…凸部
21f,21g…引掛部、21h,21i…逃がし凹部、21j…突条
22…係合部材
22a…係合部、22b…結合部、22c,22d…凹部、22e…先端
J…接合部
25…ドライバ(第2実施例)
25a…第1篏合部、25b…第2篏合部、25c…第3篏合部、25d…先端
26…打撃部材
26a…結合部、26b…上段差部、26c…下段差部、26d…突条
26e,26f,26g…凸部
27…係合部材
27a…係合部、27aa…最先係合部、27ab…最後係合部
27b,27c,27d…凹部
30…リフト機構
31…電動モータ
32…減速ギア列
33…リフトホイール
33a…係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11