(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080266
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 29/377 20060101AFI20240606BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
B41J29/377 103
H05K7/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193315
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】別府 幸弥
(72)【発明者】
【氏名】酒井 伸明
【テーマコード(参考)】
2C061
5E322
【Fターム(参考)】
2C061AQ05
2C061BB35
2C061CN01
2C061CN10
5E322AA01
5E322AA03
5E322AA11
5E322AB01
5E322AB04
5E322AB08
5E322BA01
5E322FA04
(57)【要約】
【課題】送風ファンを備えることなく回路基板を冷却することが可能な記録装置を提供する。
【解決手段】記録装置は、媒体に記録を行う記録部と、記録部の動作に関与する制御基板60と、金属製の隔壁70を含み、制御基板60を覆う格納部と、を備え、制御基板60は、熱伝導性を有する弾性部材80を介して、隔壁70の一部を構成する凸状部材72と接触する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に記録を行う記録部と、
前記記録部の動作に関与する回路基板と、
金属製の隔壁を含み、前記回路基板を覆う格納部と、を備え、
前記回路基板は、熱伝導性を有する弾性部材を介して、前記隔壁の少なくとも一部を構成する伝熱部と接触することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置であって、
前記伝熱部は、前記隔壁のうち前記伝熱部以外の部分よりも熱伝導率が高い材料によって形成されることを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1に記載の記録装置であって、
前記媒体を支持する媒体支持部を移動させる移動部を備え、
前記伝熱部は、前記媒体支持部が移動する空間に面することを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の記録装置であって、
前記記録部を含む装置本体を収容する筐体を備え、
前記移動部は、前記筐体の内側と外側との間で前記媒体支持部を移動させることを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項3に記載の記録装置であって、
前記伝熱部は、前記空間に向けて突出する放熱部を有することを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に対して記録を行う記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置等の記録装置において、装置の動作に伴って高温になる回路基板を効果的に冷却することが求められている。特許文献1には、回路基板を覆う箱の内部を冷却するための送風ファンを備えた画像形成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、布帛等の媒体に記録を行う記録装置のように、記録前の媒体に塗布される前処理剤のミストや媒体から生じる毛羽等が浮遊している環境で使用されることが多い記録装置では、回路基板に対して周辺の空気を送風すると、浮遊物が回路基板に付着して、装置の誤動作や故障を引き起こす恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
記録装置は、媒体に記録を行う記録部と、前記記録部の動作に関与する回路基板と、金属製の隔壁を含み、前記回路基板を覆う格納部と、を備え、前記回路基板は、熱伝導性を有する弾性部材を介して、前記隔壁の少なくとも一部を構成する伝熱部と接触する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図9】制御基板が筐体内に配置された状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態の記録装置1について、図面を参照して説明する。本実施形態の記録装置1は、例えば、記録対象である媒体に対して、液体の一例であるインクを吐出することにより、媒体に文字や写真等の画像を記録するインクジェット式のプリンターである。媒体の素材は、紙に限定されず、布や織物等のテキスタイル、塩化ビニル樹脂等、種々の素材が想定される。
【0008】
各図には、互いに交差するX軸、Y軸及びZ軸が示されている。典型的には、X軸、Y軸及びZ軸は、互いに直交する。X軸は、記録装置1の設置面に対して平行であり、記録装置1の幅方向に対応する。Y軸は、記録装置1の設置面に対して平行であり、記録装置1の奥行き方向に対応する。Z軸は、記録装置1の設置面に対して垂直であり、記録装置1の高さ方向に対応する。
【0009】
以降、Y軸に平行な+Y方向は、記録装置1の背面から正面に向かう方向であり、Y軸に平行な-Y方向は、+Y方向の反対の方向である。X軸に平行な+X方向は、記録装置1の正面に向かって左に向かう方向であり、X軸に平行な-X方向は、+X方向の反対の方向である。Z軸に平行な+Z方向は、上方に向かう方向であり、Z軸に平行な-Z方向は、+Z方向の反対の方向である。
【0010】
図1及び
図2は、本実施形態の記録装置1の正面側を示す斜視図であり、
図1は、後述する媒体支持部5が筐体2の内側に位置している状態を示す図、
図2は、媒体支持部5が筐体2の外側に位置している状態を示す図である。また、
図3及び
図4は、記録装置1の背面側を示す斜視図であり、
図3は、後述するリアカバー3が装着された状態を示す図、
図4は、リアカバー3が取り外された状態を示す図である。
【0011】
図1~
図4に示すように、記録装置1は、装置本体を収容する筐体2を備えている。筐体2には、前面から背面に貫通する貫通孔2tが設けられており、この貫通孔2tから+Y方向及び-Y方向に飛び出すように、±Y方向を長手方向とする媒体移動部4が配置されている。媒体移動部4は、媒体を支持する媒体支持部5を、±Y方向に移動可能に支持する。そして、媒体移動部4は、図示しない駆動機構の駆動により、筐体2の内側と外側の間で媒体支持部5を±Y方向に移動させる。媒体移動部4は、移動部に相当する。筐体2の背面側において、貫通孔2tは、箱状のリアカバー3によって覆われる。
【0012】
媒体支持部5は、媒体を支持するトレイ6と、トレイ6を支持する支持台としてのステージ7と、ステージ7を支持する基部8とを備えている。ステージ7及びトレイ6は、図示しない昇降機構により、基部8に対して鉛直方向、即ち±Z方向に移動可能である。つまり、媒体の高さ方向の位置は、昇降機構によって調整可能である。なお、ステージ7の移動方向である±Z方向は、鉛直方向から多少傾いた方向であっても構わない。また、記録装置1では、ステージ7がトレイ6を介して媒体を支持する構成であるが、ステージ7が直接媒体を支持する構成でもあってよい。
【0013】
筐体2の内部には、装置本体を構成する記録部10が配置されている。記録部10は、インクを吐出して媒体に記録を行う記録ヘッド11と、記録ヘッド11を保持するキャリッジ12と、キャリッジ12を±X方向に移動させる図示しない駆動機構とを含んでいる。そして、記録装置1は、キャリッジ12を±X方向に往復移動させながら、トレイ6に支持される媒体に向けて記録ヘッド11からインクを吐出させる。筐体2は、キャリッジ12の移動範囲の全体を覆うように構成されているため、±X方向に長い形状となっている。
【0014】
媒体は、媒体支持部5が筐体2の貫通孔2tよりも+Y方向に位置しているとき、即ち媒体支持部5が筐体2の外側に位置しているとき(
図2参照)にトレイ6上にセットされる。そして、媒体がトレイ6上にセットされた後、媒体支持部5は、媒体移動部4によって筐体2の内側、即ち貫通孔2tの内部に搬送され(
図1参照)、媒体移動部4の-Y方向の端部に位置する記録開始位置まで移動する。そして、記録装置1は、キャリッジ12を±X方向に移動させながら記録ヘッド11からインクを吐出させる動作と、媒体支持部5を+Y方向に所定量だけ移動させる動作とを交互に繰り返すことによって、媒体の広い範囲に画像を記録する。
【0015】
図4に示すように、記録装置1の背面側には、電源ボックス15が配置されている。電源ボックス15は、記録装置1の動作に必要な電源を生成し、記録装置1の各部に電源を供給する。
また、同図に示すように、記録装置1の底部には、記録装置1の全体を支持するベースフレーム20が配置されている。
【0016】
図5は、記録装置1のフレーム構造を示す斜視図である。
図5に示すように、ベースフレーム20は、全体として平板状の部材であり、XY平面に沿って配置される。つまり、ベースフレーム20は、±X方向及び±Y方向に沿って配置される。ベースフレーム20は、±X方向に長い筐体2に収容されている装置本体と、±Y方向に長い媒体移動部4とを支持することから、±Z方向から見て略十字型の形状となっている。具体的には、ベースフレーム20は、±X方向に延在する第1支持部20aと、第1支持部20aと交差して±Y方向に延在する第2支持部20bとを有する。第1支持部20aは、主に筐体2で覆われる装置本体を支持し、第2支持部20bは、主に媒体移動部4を支持する。ベースフレーム20には、記録装置1の重量に耐え得る強度が求められるとともに、媒体支持部5やキャリッジ12の移動動作の基準となることから、高精度な平坦性が求められる。
【0017】
ベースフレーム20の-X方向の端部25、即ち第1支持部20aの-X方向の端部25は、±Y方向に延在する。同様に、ベースフレーム20の+X方向の端部26、即ち第1支持部20aの+X方向の端部26も、±Y方向に延在する。また、ベースフレーム20の-Y方向の端部27、即ち第2支持部20bの-Y方向の端部27は、凹凸を含みつつ全体として±X方向に延在する。同様に、ベースフレーム20の+Y方向の端部28、即ち第2支持部20bの+Y方向の端部28も、凹凸を含みつつ全体として±X方向に延在する。
【0018】
ベースフレーム20は、略十字型の板材で形成される天面部材21と、同じく略十字型の板材で形成され、天面部材21と平行に配置される底面部材22と、複数の補強部材23とによって形成されている。補強部材23は、板材に曲げ加工を施すことによって形成される部材であり、天面部材21と底面部材22との間に配置されている。補強部材23は、強度や平坦性が要求される位置ほど、密に配置される。天面部材21、底面部材22、及び補強部材23は、いずれも鋼鉄製の板材、即ち鋼板によって形成されている。鋼板としては、例えば、亜鉛メッキ鋼板等が用いられる。ベースフレーム20は、天面部材21と補強部材23、及び底面部材22と補強部材23とを溶接により接合することによって形成される。
【0019】
ベースフレーム20上には、複数のフレーム部材が配置されている。具体的には、ベースフレーム20上には、第1サイドフレーム31と、第2サイドフレーム32と、第1ミドルフレーム33と、第2ミドルフレーム34と、メインフレーム35とが配置されている。これらの各フレームは、ベースフレーム20を構成する各部材と同様、いずれも鋼板によって形成されている。
【0020】
第1サイドフレーム31、第2サイドフレーム32、第1ミドルフレーム33、及び第2ミドルフレーム34は、YZ平面に沿う平板状の部材であり、具体的には、YZ平面に平行である。つまり、第1サイドフレーム31、第2サイドフレーム32、第1ミドルフレーム33、及び第2ミドルフレーム34は、ベースフレーム20に交差する姿勢で、±Y方向に沿って配置されている。第1サイドフレーム31、第2サイドフレーム32、第1ミドルフレーム33、及び第2ミドルフレーム34は、ねじ止め等によってベースフレーム20に固定され、ベースフレーム20によって支持されている。
【0021】
第1サイドフレーム31、第2サイドフレーム32、第1ミドルフレーム33、及び第2ミドルフレーム34は、互いに間隔を開けて、±X方向に並ぶように配置されている。具体的には、第1サイドフレーム31は、ベースフレーム20の-X方向の端部25に沿って配置され、第2サイドフレーム32は、ベースフレーム20の+X方向の端部26に沿って配置される。また、第1ミドルフレーム33は、ベースフレーム20の第2支持部20bの-X方向の端部に沿って配置され、第2ミドルフレーム34は、ベースフレーム20の第2支持部20bの+X方向の端部に沿って配置される。第1ミドルフレーム33及び第2ミドルフレーム34は、第1支持部20aと第2支持部20bとが交差する領域から、第2支持部20bの-Y方向の端部27に至る範囲に配置される。
【0022】
メインフレーム35は、XZ平面に沿う平板状の部材であり、±X方向に細長い形状を有している。メインフレーム35は、第1サイドフレーム31から第2サイドフレーム32に至る範囲に配置され、第1サイドフレーム31、第2サイドフレーム32、第1ミドルフレーム33、及び第2ミドルフレーム34によって支持される。つまり、メインフレーム35は、第1サイドフレーム31、第2サイドフレーム32、第1ミドルフレーム33、及び第2ミドルフレーム34を介してベースフレーム20に支持される。
【0023】
記録装置1を組み立てる際に、記録装置1を構成する他の構成部品、即ち様々な構造部品や機構部品、電子部品等は、上述したフレーム構造の内部に配置され、フレーム構造によって支持される。例えば、媒体移動部4は、±X方向において、第1ミドルフレーム33と第2ミドルフレーム34との間で、ベースフレーム20の第2支持部20b上に配置される。媒体移動部4は、貫通孔2tから+Y方向及び-Y方向に飛び出すように配置されており、貫通孔2tには、第1ミドルフレーム33と第2ミドルフレーム34とで挟まれた空間の一部が含まれる。また、記録部10は、メインフレーム35によって支持されており、キャリッジ12は、メインフレーム35に沿って±X方向に移動する。言い換えれば、記録部10は、メインフレーム35を介して、第1サイドフレーム31、第2サイドフレーム32、第1ミドルフレーム33、及び第2ミドルフレーム34によって支持される。また、
図4に示すように、上述した電源ボックス15は、第1ミドルフレーム33に固定されている。
【0024】
図6は、記録装置1の背面側を示す斜視図であり、
図4に示す状態から、さらに筐体2を構成する上面パネル2aを取り外した状態を示す図である。
図6に示すように、筐体2の内部には、制御基板60が配置されている。制御基板60は、配線基板61と、配線基板61上に実装された様々な回路部品とを含む回路基板である。制御基板60は、記録部10を含む装置本体の動作を制御する。つまり、制御基板60は、記録部10の動作に関与する。
【0025】
制御基板60は、±X方向において、第1ミドルフレーム33と第2ミドルフレーム34との間に配置されている。また、制御基板60は、第1ミドルフレーム33と第2ミドルフレーム34との間において、+Y側の前面、-Y側の背面、及び-Z側の底面の3つの面を仕切る金属製の隔壁70によって覆われている。つまり、筐体2の内部において、制御基板60は、隔壁70と、第1ミドルフレーム33と、第2ミドルフレーム34と、上面パネル2aとによって全体が覆われている。このため、記録装置1の周辺に浮遊しているミストや塵埃等が制御基板60に付着することが抑制される。制御基板60を覆う隔壁70、第1ミドルフレーム33、第2ミドルフレーム34、及び上面パネル2aは、格納部に相当する。
【0026】
図7は、隔壁70を示す分解斜視図である。
図7に示すように、隔壁70は、隔壁本体71と、凸状部材72と、放熱部材73とを含む。隔壁本体71は、±X方向から見た側面視で、+Z方向に開口する略コの字型の部材である。隔壁本体71は、金属製の平板が折り曲げられて形成された部材であり、底面部71aと、前面部71bと、背面部71cとを含む。底面部71aは、XY平面に沿う平板状の部位であり、制御基板60の-Z側を覆う。前面部71bは、底面部71aの+Y側の端部が+Z方向に折り曲げられることにより形成され、制御基板60の+Y側を覆う。背面部71cは、底面部71aの-Y側の端部が+Z方向に折り曲げられることにより形成され、制御基板60の-Y側を覆う。隔壁本体71の底面部71aの略中央には、略矩形の貫通孔71dが形成されている。隔壁本体71は、フレームを構成する各部材と同様、鋼板によって形成されている。
【0027】
凸状部材72は、金属製の平板が折り曲げられて形成された部材であり、突出部72aと、3つの接続部72bとを含む。突出部72aは、XY平面に沿う平板状の部位であり、±Z方向から見て、略矩形の形状になっている。3つの接続部72bは、XY平面に沿う共通の仮想平面上に位置しており、放熱部材73に接続される。突出部72aは、3つの接続部72bよりも+Z方向に突出するように形成されている。凸状部材72は、例えば、アルミニウム板によって形成されている。アルミニウム板は、隔壁本体71の材料である鋼板よりも熱伝導率が高い材料である。
【0028】
放熱部材73は、金属製の平板が折り曲げられて形成された部材であり、上面部73aと、第1放熱部73cと、第2放熱部73dとを含む。上面部73aは、XY平面に沿う平板状の部位であり、その略中央には、-Z方向に凹んだ凹部73bが絞り加工によって形成されている。凹部73bの底面は、略平面であり、凹部73bの深さは、凸状部材72の接続部72bの厚さよりもやや深い。この底面には、凸状部材72の接続部72bが配置される。
【0029】
第1放熱部73c及び第2放熱部73dは、上面部73aから-Z方向に突出する部位である。具体的には、第1放熱部73cは、上面部73aの+Y側の端部が-Z方向に折り曲げられることにより形成され、第2放熱部73dは、上面部73aの-Y側の端部が-Z方向に折り曲げられることにより形成されている。第1放熱部73c及び第2放熱部73dは、放熱部に相当する。放熱部材73は、凸状部材72と同じ材料、即ちアルミニウム板によって形成されている。アルミニウム板で形成された凸状部材72及び放熱部材73は、伝熱部に相当する。つまり、鋼板で形成された隔壁本体71は、隔壁70のうち伝熱部以外の部分に相当する。
【0030】
隔壁70を組み立てる際には、まず、放熱部材73の凹部73bに凸状部材72が配置され、その接続部72bが凹部73bにねじ止めされる。次に、凸状部材72の突出部72aが隔壁本体71の貫通孔71dから+Z方向に突出するように、隔壁本体71の底面部71aに放熱部材73がねじ止めされる。これにより、隔壁本体71の底面部71aと放熱部材73の上面部73aとが接触し、隔壁70が完成する。
【0031】
図8は、制御基板60と隔壁70とを示す分解斜視図であり、
図9は、制御基板60が筐体2内に配置された状態を示す断面図である。
図8に示すように、制御基板60は、隔壁70の底面部71a上に配置される。このとき、制御基板60のうち、動作に伴って特に高温となる部位、即ち冷却を要する部位である高温部が凸状部材72と対向するように配置される。言い換えれば、凸状部材72を配置すべき位置は、制御基板60のうち、冷却すべき高温部の位置に応じて定められる。凸状部材72に対向する配線基板61の-Z側の面のうち、高温部に対応する部位では、金属配線がソルダーレジスト等で覆われることなく露出しており、凸状部材72に効率的に伝熱されるようになっている。
【0032】
制御基板60は、高温部が凸状部材72の突出部72aと、熱伝導性を有するシート状の弾性部材80を介して対向するように配置され、その後、ねじ止めによって隔壁70に固定される。つまり、制御基板60の高温部は、弾性部材80を介して凸状部材72の突出部72aと接触する。この弾性部材80は、高い熱伝導率を有するとともに、凹凸追従性、即ち密着性に優れた部材である。このため、制御基板60と突出部72aとの間に隙間が生じにくく、効率的な伝熱が可能となっている。また、弾性部材80は、電気絶縁性にも優れた部材であり、電位が異なる複数の配線が高温部に含まれている場合でも、それらが短絡することはない。
【0033】
弾性部材80は、例えば、シリコーン製のゴムによって形成され得る。また、弾性部材80は、シート状の部材に限定されず、例えば、シリコーンゲル等によって形成されてもよい。弾性部材80の熱伝導率は、少なくとも常温常湿における空気の熱伝導率よりも高く、弾性部材80の電気絶縁性を表す絶縁破壊電圧は、少なくとも常温常湿における空気の絶縁破壊電圧よりも高い。弾性部材80としては、富士高分子工業株式会社製のサーコン(登録商標)が好適である。
【0034】
制御基板60が固定された隔壁70は、筐体2の内部において、第1ミドルフレーム33と第2ミドルフレーム34との間に配置され、その後、上方の開口が上面パネル2aによって閉塞される(
図9参照)。この結果、制御基板60の高温部から発せられる熱は、弾性部材80を介して凸状部材72に伝えられ、さらに、凸状部材72を介して放熱部材73に伝えられる。そして、放熱部材73の熱は、隔壁本体71に伝わるとともに、第1放熱部73c及び第2放熱部73dから下方の空間に放射される。
【0035】
図10は、記録装置1を+X方向に見た断面図である。
図10に示すように、制御基板60は、媒体支持部5が±Y方向に移動する経路の上方に配置されている。そして、放熱部材73は、媒体支持部5が移動する空間に面しており、放熱部材73の第1放熱部73c及び第2放熱部73dは、この空間に向けて突出する。このため、放熱部材73から発せられる熱は、媒体支持部5が移動する空間、即ち貫通孔2t内の空間に放射される。放射された熱は、媒体支持部5の移動に伴って拡散され、貫通孔2tの前方から記録装置1の外部に放出される。さらに、媒体支持部5が筐体2の内側と外側との間で移動することにより、外部への放熱が促進されるとともに、記録装置1の外部の空気が貫通孔2t内に取り込まれやすくなるため、制御基板60が効率的に冷却される。
【0036】
以上、説明したように、本実施形態の記録装置1によれば、以下の効果を得ることができる。
【0037】
本実施形態によれば、制御基板60が、熱伝導性を有する弾性部材80を介して、金属製の隔壁70を構成する凸状部材72と接触するため、制御基板60の熱を効果的に隔壁70に放熱させることが可能となる。この結果、制御基板60を冷却するための送風ファンを備える必要がなくなる。さらに、制御基板60の全体が隔壁70、第1ミドルフレーム33、第2ミドルフレーム34、及び上面パネル2aで覆われる構成であるため、ミストや毛羽等、浮遊物の影響を抑制することができる。
【0038】
本実施形態によれば、隔壁70のうち、熱伝導率が高い材料で形成されている凸状部材72に制御基板60の熱が放熱されるため、制御基板60を効果的に冷却することができる。
【0039】
本実施形態によれば、凸状部材72を介して制御基板60の熱を受ける放熱部材73が、媒体支持部5が移動する空間に面しているため、放熱部材73から放射される熱を媒体支持部5の移動に伴って拡散し、筐体2の外に放出することが可能となる。
【0040】
本実施形態によれば、媒体移動部4が筐体2の内側と外側との間で媒体支持部5を移動させるため、媒体支持部5の移動に伴って、放熱部材73から放射される熱を効率的に筐体2の外に放出するとともに、筐体2の外から比較的低温の空気を取り込むことが可能となる。
【0041】
本実施形態によれば、放熱部材73が、媒体支持部5が移動する空間に突出する第1放熱部73c及び第2放熱部73dを有しているため、放熱部材73が受けた熱を、効果的に放射することが可能となる。
【0042】
上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0043】
上記実施形態では、制御基板60が隔壁70に覆われる構成を示したが、この構成に限定されない。例えば、電源用の回路基板や、通信用の回路基板が隔壁70に覆われる構成であってもよい。
【0044】
上記実施形態では、凸状部材72及び放熱部材73の2つの部材で伝熱部を構成しているが、伝熱部を1つの部材で構成してもよい。また、隔壁本体71を凸状部材72及び放熱部材73と同じ材料で形成してもよいし、隔壁70の全体を1つの部材で構成してもよい。これらの場合には、隔壁70の全体が伝熱部に相当する。つまり、伝熱部は、隔壁70の少なくとも一部を構成していればよい。
【0045】
上記実施形態において、記録部10が吐出する液体はインクに限定されない。例えば、記録部10は、各種ディスプレイの製造に用いられる電極材または色材等の材料が、分散または溶解した状態で含有されている液状体を吐出してもよい。
【0046】
上記実施形態において、記録装置1は、媒体に記録を行う装置であって、シリアルプリンター、ラテラル式プリンター、ラインプリンター、ページプリンター等であってもよい。また、記録方式は、インクジェット式に限定されず、サーマル式、ドットインパクト式、レーザー式等であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…記録装置、2…筐体、2a…上面パネル、2t…貫通孔、3…リアカバー、4…媒体移動部、5…媒体支持部、6…トレイ、7…ステージ、8…基部、10…記録部、11…記録ヘッド、12…キャリッジ、15…電源ボックス、20…ベースフレーム、20a…第1支持部、20b…第2支持部、21…天面部材、22…底面部材、23…補強部材、25,26,27,28…端部、31…第1サイドフレーム、32…第2サイドフレーム、33…第1ミドルフレーム、34…第2ミドルフレーム、35…メインフレーム、60…制御基板、61…配線基板、70…隔壁、71…隔壁本体、71a…底面部、71b…前面部、71c…背面部、71d…貫通孔、72…凸状部材、72a…突出部、72b…接続部、73…放熱部材、73a…上面部、73b…凹部、73c…第1放熱部、73d…第2放熱部、80…弾性部材。