(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080267
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】嵌合方法および嵌合装置
(51)【国際特許分類】
B23P 19/02 20060101AFI20240606BHJP
B25J 9/16 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
B23P19/02 Q
B25J9/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193316
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 貴幸
【テーマコード(参考)】
3C030
3C707
【Fターム(参考)】
3C030BC16
3C030BC22
3C030BC28
3C030BC35
3C707AS07
3C707BS03
3C707BS12
3C707HS26
3C707KS17
3C707LV17
(57)【要約】
【課題】力センサーを用いることなく嵌合作業を行うことができる嵌合方法および嵌合装置を提供すること。
【解決手段】被嵌合物が有する嵌合孔に嵌合物を嵌合する嵌合方法であって、前記嵌合物を前記嵌合孔に接触させる接触ステップと、前記嵌合物の前記嵌合孔との接触部に対して反対側に位置する部位を、嵌合方向に直交する面内で方向を変えながら振動させる加振ステップと、を含む。また、前記加振ステップでは、前記嵌合物に対して前記嵌合方向の荷重をかけつつ前記部位を振動させる。また、前記加振ステップでは、前記嵌合物を前記嵌合孔側に押さえ付けた押圧部材を振動させることにより、前記嵌合物が前記押圧部材に対して摺動しながら振動する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被嵌合物が有する嵌合孔に嵌合物を嵌合する嵌合方法であって、
前記嵌合物を前記嵌合孔に接触させる接触ステップと、
前記嵌合物の前記嵌合孔との接触部に対して反対側に位置する部位を、嵌合方向に直交する面内で方向を変えながら振動させる加振ステップと、を含むことを特徴とする嵌合方法。
【請求項2】
前記加振ステップでは、前記嵌合物に対して前記嵌合方向の荷重をかけつつ前記部位を振動させる請求項1に記載の嵌合方法。
【請求項3】
前記加振ステップでは、前記嵌合物を前記嵌合孔側に押さえ付けた押圧部材を振動させることにより、前記嵌合物が前記押圧部材に対して摺動しながら振動する請求項2に記載の嵌合方法。
【請求項4】
前記加振ステップでは、前記部位を振幅が増大する渦巻状に振動させる請求項1に記載の嵌合方法。
【請求項5】
前記加振ステップでは、前記嵌合物の前記嵌合方向への所定距離以上の移動を検知した場合、前記振動を停止する請求項4に記載の嵌合方法。
【請求項6】
前記加振ステップでは、前記停止後、前記停止位置を起点として前記部位を振幅が増大する渦巻状に振動させる請求項5に記載の嵌合方法。
【請求項7】
前記加振ステップでは、前記部位を円状に振動させる請求項1に記載の嵌合方法。
【請求項8】
前記加振ステップでは、前記部位を直線状に往復振動させつつ、往復振動の向きを変化させる請求項1に記載の嵌合方法。
【請求項9】
前記嵌合方向は、鉛直方向下側を向く請求項1に記載の嵌合方法。
【請求項10】
被嵌合物が有する嵌合孔に嵌合物を嵌合する嵌合装置であって、
前記嵌合孔に前記嵌合物を接触させた状態で、前記嵌合物の前記嵌合孔との接触部に対して反対側に位置する部位を、嵌合方向に直交する面内で方向を変えながら振動させる加振機構を有することを特徴とする嵌合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵌合方法および嵌合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、力センサーの検出結果に基づいて嵌合部材と被嵌合部材とを位置決めし、嵌合部材を被嵌合部材に嵌合させる嵌合用ロボットシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような嵌合方法では、嵌合部材を被嵌合部材に嵌合させるのに力センサーが必要となるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の嵌合方法は、被嵌合物が有する嵌合孔に嵌合物を嵌合する嵌合方法であって、
前記嵌合物を前記嵌合孔に接触させる接触ステップと、
前記嵌合物の前記嵌合孔との接触部に対して反対側に位置する部位を、嵌合方向に直交する面内で方向を変えながら振動させる加振ステップと、を含む。
【0006】
本発明の嵌合装置は、被嵌合物が有する嵌合孔に嵌合物を嵌合する嵌合装置であって、
前記嵌合孔に前記嵌合物を接触させた状態で、前記嵌合物の前記嵌合孔との接触部に対して反対側に位置する部位を、嵌合方向に直交する面内で方向を変えながら振動させる加振機構を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る嵌合装置を示す斜視図である。
【
図10】第2実施形態に係る嵌合方法における押圧部材の運動軌跡を示す図である。
【
図11】第3実施形態に係る嵌合方法における押圧部材の運動軌跡を示す図である。
【
図12】第4実施形態に係る嵌合方法を示すフローチャートである。
【
図13】第4実施形態に係る嵌合方法を示すフローチャートである。
【
図14】第5実施形態に係る嵌合装置を示す断面図である。
【
図15】第6実施形態の嵌合装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の嵌合方法および嵌合装置の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、以下では、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸とする。また、X軸に沿う方向を「X軸方向」、Y軸に沿う方向を「Y軸方向」、Z軸に沿う方向を「Z軸方向」とも言う。また、各軸の矢印側を「プラス」、反対側を「マイナス」とも言う。また、Z軸が鉛直方向に沿い、当該軸のプラス側を「上」、マイナス側を「下」とも言う。
【0009】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る嵌合装置を示す斜視図である。
図2は、嵌合方法を示すフローチャートである。
図3ないし
図8は、それぞれ、嵌合方法を説明するための図である。
図9は、加振ステップを示すフローチャートである。
【0010】
図1に示す嵌合装置1は、棒状の嵌合物8を被嵌合物9に形成された嵌合孔91に挿入して嵌合させる作業に用いられる。このような嵌合装置1は、被嵌合物9を載置するステージ2と、嵌合物8を振動させる加振機構3と、加振機構3の駆動を制御する制御装置4と、を有する。なお、以下では、説明の便宜上、嵌合物8を円柱状の部材とする。ただし、嵌合物8の形状は、特に限定されない。
【0011】
≪ステージ2≫
ステージ2は、X-Y平面に平行な載置面21を有し、この載置面21に被嵌合物9が載置される。被嵌合物9が載置面21に載置された状態では、嵌合孔91が被嵌合物9の上面に開口し、嵌合孔91の中心軸J9がZ軸に沿う。
【0012】
≪加振機構3≫
加振機構3は、嵌合物8をZ軸方向に移動させるZ軸加振機構31と、嵌合物8をX軸方向に移動させるX軸加振機構32と、嵌合物8をY軸方向に移動させるY軸加振機構33と、嵌合物8に荷重を与えて被嵌合物9に押し付ける押圧部材34と、を有する。このような構成の加振機構3によれば、簡単な構成で、嵌合物8を被嵌合物9に押し付ける作業と嵌合物8を振動させる作業とを行うことができる。
【0013】
Z軸加振機構31は、Z軸方向に延在するガイドレール311と、ガイドレール311に対してZ軸方向に移動可能に接続されたリニアスライダー312と、リニアスライダー312をガイドレール311に対してZ軸方向に移動させる駆動源313と、リニアスライダー312の移動量を検出するエンコーダー314と、を有する。
【0014】
また、X軸加振機構32は、リニアスライダー312に固定され、X軸方向に延在するガイドレール321と、ガイドレール321に対してX軸方向に移動可能に接続されたリニアスライダー322と、リニアスライダー322をガイドレール321に対してX軸方向に移動させる駆動源323と、を有する。なお、リニアスライダー312がガイドレール321を兼ねていてもよい。
【0015】
また、Y軸加振機構33は、リニアスライダー322に固定され、Y軸方向に延在するガイドレール331と、ガイドレール331に対してY軸方向に移動可能に接続されたリニアスライダー332と、リニアスライダー332をガイドレール331に対してY軸方向に移動させる駆動源333と、を有する。なお、リニアスライダー322がガイドレール331を兼ねていてもよい。
【0016】
また、押圧部材34は、リニアスライダー332に固定されている。そのため、押圧部材34は、Z軸加振機構31の駆動によってZ軸方向に移動し、X軸加振機構32の駆動によってX軸方向に移動し、Y軸加振機構33の駆動によってY軸方向に移動する。また、押圧部材34は、板状をなし、その下面341がX-Y平面に沿っている。つまり、下面341は、嵌合孔91の中心軸J9に対して直交している。このような押圧部材34は、硬質であり、後述するように、下面341が嵌合物8と摺動する。そのため、下面341は、摩擦係数が十分に低いことが好ましい。このような押圧部材34としては、特に限定されないが、例えば、金属材料、セラミック材料、ガラス材料等により形成することができる。また、例えば、下面341に摩擦係数を低減する低摩擦層が成膜されていてもよい。
【0017】
駆動源313、323、333として、エアシリンダー、ステッピングモーター、圧電アクチュエーター、ロータリーバイブレーター等を用いることができる。これにより、駆動源313、323、333の制御が容易かつ緻密となる。
【0018】
以上、加振機構3について説明したが、加振機構3としては、特に限定されない。例えば、X軸加振機構32およびY軸加振機構33は、2軸の水平回転関節型いわゆるスカラ型にすることもでき、この場合は、各円弧の一部をリニア移動に近似すればよい。
【0019】
≪制御装置4≫
制御装置4は、加振機構3の駆動を制御する。具体的には、エンコーダー314の検出結果をフィードバックしつつリニアスライダー312が所望の位置に移動するように駆動源313の駆動を制御し、リニアスライダー322が所望の位置に移動するように駆動源323の駆動を制御し、リニアスライダー332が所望の位置に移動するように駆動源333の駆動を制御する。これにより、押圧部材34を所望の軌跡で移動させることができる。
【0020】
このような制御装置4は、例えば、コンピューターから構成され、情報を処理するプロセッサーと、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部インターフェースと、を有する。また、メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶された各種プログラム等を読み込んで実行することができる。特に、嵌合装置1では、加振機構3によって嵌合物8を振動させるというシンプルな制御方法を用いるため、FPGA(field-programmable gate array)、ASIC等のハードウェア回路が好適であるが、CPUであってもよい。FPGAであれば、1フレーム内に高速処理することが可能である。
【0021】
以上、嵌合装置1について説明した。次に、この嵌合装置1を用いた嵌合方法、具体的には嵌合物8を嵌合孔91に挿入して嵌合させる嵌合作業について説明する。
【0022】
嵌合作業は、
図2に示すように、嵌合物8を嵌合孔91に接触させる接触ステップS1と、嵌合物8を振動させて嵌合物8を嵌合孔91に挿入する加振ステップS2と、を含む。このように、嵌合物8を振動させることで、嵌合物8の姿勢が徐々に変化し、どこかのタイミングで瞬間的に嵌合孔91に対する嵌合物8の傾きθが十分に小さくなり、嵌合物8の嵌合孔91への挿入が進む。そのため、このような方法によれば、力センサーを用いることなく嵌合作業を行うことができる。また、力センサーを用いた嵌合作業よりも制御が単純で、かつ、短い時間で作業を行うことができる。また、加振機構3の絶対位置精度が悪くても、嵌合作業を精度よく行うことができ、嵌合装置1の低コスト化を図ることができる。以下、各ステップS1、S2について順に説明する。
【0023】
[接触ステップS1]
接触ステップS1では、まず、
図3に示すように、ステージ2の載置面21に被嵌合物9を載置する。被嵌合物9を載置面21に載置した状態では嵌合孔91が被嵌合物9の上面に開口し、嵌合孔91の中心軸J9がZ軸方向つまり鉛直方向に沿う。次に、嵌合物8の姿勢を概ね嵌合孔91に合わせた状態、つまり、嵌合孔91に対する傾きθがある程度小さい姿勢で、嵌合物8の下端部81を嵌合孔91の開口に接触させる。このように、嵌合孔91に対する嵌合物8の姿勢の精度が求められないため、本ステップS1が容易となる。なお、本ステップS1は、作業者が行ってもよいし、嵌合装置1とは別の装置が行ってもよい。また、嵌合装置1がロボットアーム等の搬送手段を別途備える場合には、そのロボットアームを用いて行ってもよい。
【0024】
[加振ステップS2]
加振ステップS2では、まず、Z軸加振機構31を動かして押圧部材34を降下し、
図4に示すように、押圧部材34の下面341を嵌合物8の上端部82に押し付け、嵌合物8に荷重Nをかける。これにより、嵌合物8が被嵌合物9と押圧部材34との間に挟まれ、倒れることなく、その姿勢を維持する。なお、前述したように、押圧部材34の下面341は、X-Y平面に沿っている。
【0025】
次に、嵌合物8に荷重Nをかけたまま、X軸加振機構32およびY軸加振機構33を駆動して、
図5に示すように、矩形を描くようにして押圧部材34を円運動させる。さらに、X軸方向およびY軸方向の振幅をそれぞれ徐々に大きくする。これにより、押圧部材34は、X軸方向およびY軸方向の振幅が徐々に増大する渦巻状に螺旋運動する。このような押圧部材34の螺旋運動につられて嵌合物8の上端部82が変位する。つまり、嵌合方向であるZ軸方向に対して直交するX-Y面内で方向を変えながら嵌合物8の上端部82が振動する。
【0026】
加振される前の初期状態では、嵌合孔91に対して傾いた嵌合物8が嵌合孔91に引っ掛かっているため、押圧部材34によって嵌合物8に荷重Nをかけても、嵌合物8が嵌合孔91に引っ掛かって挿入が進まない。この状態で嵌合物8の上端部82を加振すると、嵌合物8は、傾きθが大きくなる方向へは嵌合孔91に引っかかって動けず、押圧部材34に対して摺動するだけで傾きθがほとんど変化しない。この際、嵌合物8が押圧部材34に対して摺動することで、嵌合物8に加わる力を逃がすことができ、嵌合物8に過度な力が加わり難くなる。そのため、加振ステップS2による嵌合物8の損傷、破壊を効果的に抑制することができる。
【0027】
一方で、嵌合物8は、傾きθが小さくなる方向へは嵌合孔91との引っ掛かりがないため動くことができ、傾きθが小さくなる。そのため、上端部82への加振を続けることにより、嵌合物8の傾きθが徐々に小さくなり、
図6に示すように、傾きθが十分に小さくなったタイミング(以下、「適正タイミング」とも言う。)で嵌合孔91との引っ掛かりが実質的に無くなり、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進む。なお、本実施形態では、嵌合物8の自重と押圧部材34からの荷重Nとにより、嵌合孔91への嵌合物8の挿入をより効果的に進めることができる。
【0028】
特に、渦巻状に加振することにより、上端部82をX軸方向およびY軸方向に加振することができるため、嵌合物8が嵌合孔91に対してどの方向に傾斜しているか分からない状態においても、傾きθを徐々に小さくすることができる。また、振幅を徐々に増大させることで、嵌合物8の急激な姿勢変化を抑制することができ、適正タイミングを逃し難くなる。また、より広い範囲の傾きθに対応することができる。
【0029】
ここで、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進むと押圧部材34がZ軸方向マイナス側に移動する。嵌合装置1は、エンコーダー314の出力に基づいて押圧部材34のZ軸方向マイナス側への移動を検出すると、押圧部材34の螺旋運動を速やかに停止する。これにより、適正タイミング時の姿勢(それに近い姿勢を含む。)が維持されるため、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が妨げられ難くなり、嵌合孔91への嵌合物8の挿入をより大きく進めることができる。
【0030】
そして、嵌合物8が嵌合孔91に引っ掛かり、それ以上の挿入ができなくなったら、
図7に示すように、停止した位置を起点として、再び、押圧部材34の螺旋運動を初めから開始する。つまり、螺旋運動を最も小さい振幅からやり直す。これにより、再び、嵌合物8の上端部82が加振され、嵌合孔91に対する傾きθが徐々に小さくなり、
図8に示すように、傾きθが十分に小さくなった適正タイミングで嵌合孔91との引っ掛かりが実質的に無くなり、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進む。
【0031】
このように、押圧部材34の螺旋運動を嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進む度に初めからやり直すことで、その都度、嵌合物8の加振を小さい振幅から開始して徐々に大きくすることができる。したがって、嵌合物8の急激な姿勢変化を抑制することができ、適正タイミングを逃し難くなる。そして、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が完了するまでこの作業を繰り返す。これにより、嵌合作業をスムーズに行うことができる。なお、嵌合作業が終了したか、つまり、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が完了したか否かは、押圧部材34のZ軸方向の位置、すなわち、エンコーダー314の出力から判断することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、螺旋運動が矩形の軌跡を描くが、これに限定されず、三角形の軌跡を描いてもよいし、五角形以上の多角形の軌跡を描いてもよいし、円の軌跡を描いてもよい。
【0033】
このような加振ステップS2について、
図9に示すフローチャートに基づいて説明する。加振ステップS2が開始されると、まず、ステップS201として、制御装置4は、移動量iをAに設定する。つまり、i=Aとする。Aは、押圧部材34の振幅の最小値を示す。Aは、任意の値であり、嵌合物8や嵌合孔91の寸法等から適宜設定することができる。次に、ステップS202として、制御装置4は、X軸加振機構32を駆動して押圧部材34をX軸方向に+iだけ移動させる。
【0034】
次に、ステップS203として、制御装置4は、エンコーダー314の出力に基づいて嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだかを判定する。なお、当該判定は、押圧部材34がZ軸方向マイナス側に所定距離以上移動したか否かで判定することができる。嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだ場合、制御装置4は、速やかに押圧部材34の螺旋運動を停止して、嵌合物8への加振を停止する。そして、制御装置4は、ステップS201から押圧部材34の螺旋運動をやり直す。反対に、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んでいない場合、ステップS204として、制御装置4は、Y軸加振機構33を駆動して押圧部材34をY軸方向に+iだけ移動させる。
【0035】
次に、ステップS205として、制御装置4は、エンコーダー314の出力に基づいて嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだかを判定する。嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだ場合、制御装置4は、速やかに押圧部材34の螺旋運動を停止して、嵌合物8への加振を停止する。そして、制御装置4は、ステップS201から押圧部材34の螺旋運動をやり直す。反対に、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んでいない場合、ステップS206として、移動量i=i+Bに設定する。つまり、押圧部材34の螺旋運動の移動量(振幅)を直前のAからB分だけ大きくする。なお、Bは、任意の値であり、嵌合物8や嵌合孔91の寸法等から適宜設定することができる。次に、ステップS207として、制御装置4は、X軸加振機構32を駆動して、押圧部材34をX軸方向に-iだけ移動させる。
【0036】
次に、ステップS208として、制御装置4は、エンコーダー314の出力に基づいて嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだかを判定する。嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだ場合、制御装置4は、速やかに押圧部材34の螺旋運動を停止して、嵌合物8への加振を停止する。そして、制御装置4は、ステップS201から押圧部材34の螺旋運動をやり直す。反対に、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んでいない場合、ステップS209として、Y軸加振機構33を駆動して、押圧部材34をY軸方向に-iだけ移動させる。
【0037】
次に、ステップS210として、制御装置4は、エンコーダー314の出力に基づいて嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだかを判定する。嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだ場合、制御装置4は、速やかに押圧部材34の螺旋運動を停止して、嵌合物8への加振を停止する。そして、制御装置4は、ステップS201から押圧部材34の螺旋運動をやり直す。反対に、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んでいない場合、ステップS211として、移動量i=i+Bに設定する。つまり、押圧部材34の螺旋運動の移動量(振幅)を直前の移動量(A+B)からB分だけ大きくする。
【0038】
次に、ステップS212として、制御装置4は、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が完了したかを判定する。なお、当該判定は、押圧部材34が所定位置に達したか否かで判定することができる。嵌合孔91への嵌合物8の挿入が完了した場合には、加振ステップS2が終了する。反対に、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が完了していない場合は、ステップS202に戻る。
【0039】
このようなフローチャートによれば、押圧部材34を半周させる毎にB分だけ移動量(振幅)が増大するため、押圧部材34を容易に螺旋運動させることができる。また、X軸方向またはY軸方向に動かす度に、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだか否かを判定するため、適正タイミングを逃し難い。また、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだ場合は、押圧部材34の螺旋運動を初めからやり直すため、嵌合孔91への嵌合物8の挿入をスムーズに進めることができる。
【0040】
以上、嵌合装置1について説明した。このような嵌合装置1を用いた嵌合方法は、前述したように、被嵌合物9が有する嵌合孔91に嵌合物8を嵌合する嵌合方法であって、嵌合物8を嵌合孔91に接触させる接触ステップS1と、嵌合物8の嵌合孔91との接触部である下端部81に対して反対側に位置する部位である上端部82を、嵌合方向であるZ軸方向に直交するX-Y面内で方向を変えながら振動させる加振ステップS2と、を含む。このような嵌合方法によれば、嵌合孔91に対する嵌合物8の傾きθが徐々に小さくなり、あるとき訪れる適正タイミングにおいて嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進む。そのため、このような方法によれば、力センサーを用いることなく嵌合物8の嵌合作業を行うことができる。また、力センサーを用いた嵌合作業よりも制御が単純で、かつ、短い時間で作業を行うことができる。また、加振機構3の絶対位置精度が悪くても、嵌合作業を精度よく行うことができ、嵌合装置1の低コスト化を図ることができる。
【0041】
また、前述したように、加振ステップS2では、嵌合物8に対して嵌合方向つまりZ軸方向の荷重Nをかけつつ上端部82を振動させる。これにより、嵌合孔91への嵌合物8の挿入をより効果的に進めることができる。
【0042】
また、前述したように、加振ステップS2では、嵌合物8を嵌合孔91側に押さえ付けた押圧部材34を振動させることにより、嵌合物8が押圧部材34に対して摺動しながら振動する。このように、嵌合物8が押圧部材34に対して摺動することで、嵌合物8に加わる力を逃がすことができ、嵌合物8に過度な力が加わり難くなる。そのため、加振ステップS2による嵌合物8の損傷、破壊を効果的に抑制することができる。
【0043】
また、前述したように、加振ステップS2では、上端部82を振幅が増大する渦巻状に振動させる。これにより、上端部82をX軸方向およびY軸方向に加振することができるため、嵌合物8が嵌合孔91に対してどの方向に傾斜しているか分からない状態においても、傾きθを徐々に小さくすることができる。また、振幅を徐々に増大させることで、嵌合物8の急激な姿勢変化を抑制することができ、適正タイミングを逃し難くなる。また、より広い範囲の傾きθに対応することができ、加振ステップS2がより容易となる。
【0044】
また、前述したように、加振ステップS2では、嵌合物8のZ軸方向への所定距離以上の移動を検知した場合、嵌合物8の振動を停止する。これにより、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が妨げられ難くなり、嵌合孔91への嵌合物8の挿入をより大きく進めることができる。
【0045】
また、前述したように、加振ステップS2では、振動の停止後、停止位置を起点として嵌合物8の上端部82を振幅が増大する渦巻状に振動させる。これにより、再び、嵌合物8の上端部82の加振が行われ、嵌合孔91に対する傾きθが徐々に小さくなり、傾きθが十分に小さくなった適正タイミングで嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進む。そのため、嵌合作業をよりスムーズに行うことができる。
【0046】
また、前述したように、嵌合方向は、鉛直方向下側を向く。これにより、適正タイミングにおいて、嵌合物8が自らの自重で嵌合孔91内に挿入される。そのため、嵌合作業をよりスムーズに行うことができる。
【0047】
また、前述したように、嵌合装置1は、被嵌合物9が有する嵌合孔91に嵌合物8を嵌合する嵌合装置1であって、嵌合孔91に嵌合物8を接触させた状態で、嵌合物8の嵌合孔91との接触部である下端部81に対して反対側に位置する部位である上端部82を、嵌合方向であるZ軸方向に直交するX-Y面内で方向を変えながら振動させる加振機構3を有する。このような構成によれば、上端部82を加振することで、嵌合孔91に対する嵌合物8の傾きθが徐々に小さくなり、あるとき訪れる適正タイミングにおいて嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進む。そのため、力センサーを用いることなく嵌合物8の嵌合作業を行うことができる。また、力センサーを用いた嵌合作業よりも制御が単純で、かつ、短い時間で作業を行うことができる。また、加振機構3の絶対位置精度が悪くても、嵌合作業を精度よく行うことができ、嵌合装置1の低コスト化を図ることができる。
【0048】
<第2実施形態>
図10は、第2実施形態に係る嵌合方法における押圧部材の運動軌跡を示す図である。
【0049】
本実施形態の嵌合方法では、加振の方向が異なること以外は、前述した第1実施形態の嵌合方法と同様である。そのため、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態における図において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0050】
図10に示すように、本実施形態の嵌合方法では、X軸加振機構32およびY軸加振機構33を駆動して、矩形を描くようにして押圧部材34を円運動させる。つまり、上端部82を円状に振動させる。このように、押圧部材34を円運動させることにより、前述した第1実施形態と同様に、上端部82をX軸方向およびY軸方向に加振することができる。そのため、嵌合物8が嵌合孔91に対してどの方向に傾斜しているか分からない状態においても、傾きθを徐々に小さくすることができる。また、押圧部材34が同じ軌跡の運動を繰り返すため、適正タイミングを逃しても、再び適正タイミングが訪れる可能性が高まる。そのため、嵌合孔91への嵌合物8の挿入をより確実に、かつ、スムーズに行うことができる。
【0051】
なお、本実施形態では、円運動が矩形の軌跡を描くが、これに限定されず、三角形の軌跡を描いてもよいし、五角形以上の多角形の軌跡を描いてもよいし、円の軌跡を描いてもよい。
【0052】
また、押圧部材34の円運動の振幅は、特に限定されず、例えば、嵌合物8の半径、長さ等に応じて適宜設定することができる。また、円運動の振幅は、一定であってもよいし、変化してもよい。変化させる場合には、例えば、一定時間間隔または一定周毎に、振幅を徐々に大きくしてもよいし、小さくしてもよい。また、振幅を不規則に変化させてもよい。
【0053】
また、円運動の周期(1回転に要する時間)についても、特に限定されず、例えば、嵌合物8の半径、長さ等に応じて適宜設定することができる。また、円運動の周期は、一定であってもよいし、変化してもよい。変化させる場合には、例えば、一定時間間隔または一定周毎に、周期を徐々に長くしてもよいし、短くしてもよい。また、周期を不規則に変化させてもよい。
【0054】
以上のように、本実施形態の嵌合方法の加振ステップS2では、上端部82を円状に振動させる。これにより、上端部82をX軸方向およびY軸方向に加振することができるため、嵌合物8が嵌合孔91に対してどの方向に傾斜しているか分からない状態においても、傾きθを徐々に小さくすることができる。また、押圧部材34が同じ軌跡の運動を繰り返すため、適正タイミングを逃しても、再び適正タイミングが訪れる可能性が高まる。そのため、嵌合孔91への嵌合物8の挿入をより確実に、かつ、スムーズに行うことができる。
【0055】
以上のような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0056】
<第3実施形態>
図11は、第3実施形態に係る嵌合方法における押圧部材の運動軌跡を示す図である。
【0057】
本実施形態の嵌合方法では、加振の方向が異なること以外は、前述した第1実施形態の嵌合方法と同様である。そのため、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態における図において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0058】
図11に示すように、本実施形態の嵌合方法では、X軸加振機構32およびY軸加振機構33を駆動して、押圧部材34を直線状に往復振動させつつ、その振動方向を変化させる。特に、図示の例では、X軸方向の往復運動から開始し、その振動方向を時計回りに徐々に回転させている。このように、往復振動させつつ、その振動方向を変化させることにより、前述した第1実施形態と同様に、上端部82をX軸方向およびY軸方向に加振することができる。そのため、嵌合物8が嵌合孔91に対してどの方向に傾斜しているか分からない状態においても、傾きθを徐々に小さくすることができる。
【0059】
なお、往復運動の振幅は、特に限定されず、例えば、嵌合物8の半径、長さ等に応じて適宜設定することができる。また、往復運動の振幅は、一定であってもよいし、変化してもよい。変化させる場合には、例えば、一定周回毎に振幅を徐々に大きくしてもよいし、小さくしてもよい。また、振幅を不規則に変化させてもよい。
【0060】
また、往復振動が時計回りに1回転する周期についても、特に限定されず、例えば、嵌合物8の半径、長さ等に応じて適宜設定することができる。また、円運動の周期は、一定であってもよいし、変化してもよい。変化させる場合には、例えば、一定時間間隔または一定周毎に、周期を徐々に長くしてもよいし、短くしてもよい。また、周期を不規則に変化させてもよい。
【0061】
以上のように、本実施形態の嵌合方法の加振ステップS2では、上端部82を直線状に往復振動させつつ、往復振動の向きを変化させる。これにより、上端部82をX軸方向およびY軸方向に加振することができるため、嵌合物8が嵌合孔91に対してどの方向に傾斜しているか分からない状態においても、傾きθを徐々に小さくすることができる。
【0062】
以上のような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0063】
<第4実施形態>
図12および
図13は、それぞれ、第4実施形態に係る嵌合方法を示すフローチャートである。
【0064】
本実施形態の嵌合方法では、加振の方向が異なること以外は、前述した第1実施形態の嵌合方法と同様である。そのため、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態における各図において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0065】
本実施形態の嵌合方法は、前述した第1実施形態の螺旋運動と、第2実施形態の円運動と、を組み合わせている。これにより、より広い範囲の傾きθに対応することができ、かかつ、適正タイミングを逃し難くなる。そのため、嵌合孔91への嵌合物8の挿入をより確実に、かつ、スムーズに行うことができる。以下、
図12および
図13に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、
図13に示すフローチャートは、
図12に示すフローチャートの続きである。
【0066】
図12および
図13に示すように、加振ステップS2は、一定の振幅で押圧部材34を所定周回だけ円運動させる一定振幅円運動ループS3と、円運動の振幅を拡大する振幅拡大ループS4と、を嵌合作業が終了するまで繰り返す構成となっている。このような構成によれば、押圧部材34が同じ軌跡の運動を繰り返しながら徐々にその振幅を増していくため、適正タイミングを逃しても、再び適正タイミングが訪れる可能性が高まる。また、より広い範囲の傾きθに対応することができる。そのため、嵌合孔91への嵌合物8の挿入をより確実に、かつ、スムーズに行うことができる。つまり、前述した第1実施形態の効果と第2実施形態の効果とを合わせて発揮することができる。
【0067】
加振ステップS2が開始されると、一定振幅円運動ループS3が開始される。一定振幅円運動ループS3では、
図12に示すように、まず、ステップS301として、制御装置4は、移動量iをAに設定する。つまり、移動量i=Aとする。次に、ステップS302として、制御装置4は、繰り返し回数nを0に設定する(ただし、nは、0以上の整数である。)。つまり、n=0とする。次に、ステップS303として、制御装置4は、X軸加振機構32を駆動して、押圧部材34をX軸方向に+iだけ移動させる。
【0068】
次に、ステップS304として、制御装置4は、エンコーダー314の出力に基づいて嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだかを判定する。嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだ場合、制御装置4は、速やかに押圧部材34の円運動を停止して、嵌合物8への加振を停止する。そして、制御装置4は、ステップS301から押圧部材34の円運動をやり直す。反対に、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んでいない場合、ステップS305として、制御装置4は、Y軸加振機構33を駆動して、押圧部材34をY軸方向に+iだけ移動させる。
【0069】
次に、ステップS306として、制御装置4は、エンコーダー314の出力に基づいて嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだかを判定する。嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだ場合、制御装置4は、速やかに押圧部材34の円運動を停止して、嵌合物8への加振を停止する。そして、制御装置4は、ステップS301から押圧部材34の円運動をやり直す。反対に、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んでいない場合、ステップS307として、制御装置4は、X軸加振機構32を駆動して、押圧部材34をX軸方向に-iだけ移動させる。
【0070】
次に、ステップS308として、制御装置4は、エンコーダー314の出力に基づいて嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだかを判定する。嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだ場合、制御装置4は、速やかに押圧部材34の円運動を停止して、嵌合物8への加振を停止する。そして、制御装置4は、ステップS301から押圧部材34の円運動をやり直す。反対に、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んでいない場合、ステップS309として、制御装置4は、Y軸加振機構33を駆動して、押圧部材34をY軸方向に-iだけ移動させる。
【0071】
次に、ステップS310として、制御装置4は、エンコーダー314の出力に基づいて嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだかを判定する。嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだ場合、制御装置4は、速やかに押圧部材34の円運動を停止して、嵌合物8への加振を停止する。そして、制御装置4は、ステップS301から押圧部材34の円運動をやり直す。反対に、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んでいない場合、ステップS311として、制御装置4は、n=n+1に設定する。つまり、押圧部材34の周回を1周プラスする。
【0072】
次に、ステップS312として、制御装置4は、nが所定数に達したかを判定する。nが所定数に達していない場合は、制御装置4は、ステップS303に戻る。反対に、nが所定数に達した場合は、振幅拡大ループS4に移行する。
【0073】
振幅拡大ループS4では、
図13に示すように、まず、ステップS401として、制御装置4は、n=0にリセットする。次に、ステップS402として、制御装置4は、移動量i=i+Bに設定する。つまり、振幅を直前の一定振幅円運動ループS3に対してB分だけ大きくする。なお、Bは、任意の値であり、嵌合物8や嵌合孔91の寸法等から適宜設定することができる。次に、ステップS403として、制御装置4は、X軸加振機構32を駆動して、押圧部材34をX軸方向に+iだけ移動させる。
【0074】
次に、ステップS404として、制御装置4は、エンコーダー314の出力に基づいて嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだかを判定する。嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだ場合、制御装置4は、速やかに押圧部材34の円運動を停止して、嵌合物8への加振を停止する。そして、制御装置4は、ステップS301から加振をやり直す。反対に、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んでいない場合、ステップS405として、制御装置4は、Y軸加振機構33を駆動して、押圧部材34をY軸方向に+iだけ移動させる。
【0075】
次に、ステップS406として、制御装置4は、エンコーダー314の出力に基づいて嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだかを判定する。嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだ場合、制御装置4は、速やかに押圧部材34の円運動を停止して、嵌合物8への加振を停止する。そして、制御装置4は、ステップS301から加振をやり直す。反対に、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んでいない場合、ステップS407として、制御装置4は、移動量i=i+Bに設定する。つまり、振幅を直前の状態からB分だけ大きくする。次に、ステップS408として、制御装置4は、X軸加振機構32を駆動して、押圧部材34をX軸方向に-iだけ移動させる。
【0076】
次に、ステップS409として、制御装置4は、エンコーダー314の出力に基づいて嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだかを判定する。嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだ場合、制御装置4は、速やかに押圧部材34の円運動を停止して、嵌合物8への加振を停止する。そして、制御装置4は、ステップS301から加振をやり直す。反対に、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んでいない場合、ステップS410として、制御装置4は、Y軸加振機構33を駆動して、押圧部材34をY軸方向に-iだけ移動させる。
【0077】
次に、ステップS411として、制御装置4は、エンコーダー314の出力に基づいて嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだかを判定する。嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んだ場合、制御装置4は、速やかに押圧部材34の円運動を停止して、嵌合物8への加振を停止する。そして、制御装置4は、ステップS301から加振をやり直す。反対に、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が進んでいない場合、ステップS412として、制御装置4は、嵌合孔91への嵌合物8の挿入が完了したかを判定する。挿入が完了した場合には、加振ステップS2が終了する。反対に、挿入が完了していない場合、制御装置4は、ステップS303に戻る。
【0078】
このような方法によれば、n周回毎に押圧部材34の振幅が拡大していくため、適正タイミングを逃し難くなる。したがって、嵌合作業をより確実にかつ迅速に行うことができる。
【0079】
以上のような第4実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0080】
<第5実施形態>
図14は、第5実施形態に係る嵌合装置を示す断面図である。
【0081】
本実施形態では、押圧部材34の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の嵌合装置1と同様である。そのため、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態における図において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0082】
本実施形態の嵌合装置1では、押圧部材34が軟質であり、
図14に示すように、加振ステップS2中、嵌合物8との接触により柔軟に変形する。前述した第1実施形態では、硬質な押圧部材34が嵌合物8と摺動することにより、嵌合物8のスムーズな嵌合作業を実現しつつ、嵌合物8の破損を抑制していた。これに対して、本実施形態では、押圧部材34が変形することにより、嵌合物8のスムーズな嵌合作業を実現しつつ、嵌合物8の破損を抑制している。なお、押圧部材34としては、特に限定されないが、例えば、樹脂材料、その中でも特に、スポンジ状の材料で形成することができる。
【0083】
以上のような第5実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0084】
<第6実施形態>
図15は、第6実施形態の嵌合装置を示す斜視図である。
【0085】
本実施形態では、嵌合装置1の構成が異なることと、嵌合装置1がエンドエフェクターとしてロボット5に装着されていること以外は、前述した第1実施形態の嵌合装置1と同様である。そのため、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態における図において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0086】
図15に示すように、本実施形態の嵌合装置1では、前述した第1実施形態の構成からZ軸加振機構31とステージ2とが省略されている。つまり、嵌合装置1は、X軸加振機構32およびY軸加振機構33を有する加振機構3で構成されている。そして、このような嵌合装置1は、エンドエフェクターとしてロボット5に装着されている。
【0087】
ロボット5は、床に固定された基台51と、基台51に接続されたロボットアーム52と、を有する。また、ロボットアーム52は、複数のアーム521、522、523、524、525、526が回動自在に連結された構成であり、6つの関節J1~J6を有する。このうち、関節J2、J3、J5は、曲げ関節であり、関節J1、J4、J6は、ねじり関節である。そして、アーム526の先端部にエンドエフェクターとしての嵌合装置1が接続されている。
【0088】
このような構成によれば、ロボットアーム52によって嵌合装置1を移動させることができる。そのため、例えば、
図15に示すように、被嵌合物9に嵌合物8をセットした状態を予め複数組準備しておき、ロボット5によって嵌合装置1を移動させながらこれらに対して順番に嵌合作業を行うことができる。したがって、嵌合作業を効率よく行うことができる。なお、嵌合作業中は、ロボットアーム52で嵌合装置1を嵌合物8に押し付けることで嵌合物8に荷重を与えることができる。つまり、ロボット5が前述した第1実施形態のZ軸加振機構31を兼ねている。
【0089】
以上のような第6実施形態によっても前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0090】
以上、本発明の嵌合方法および嵌合装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。また、任意の目的の工程が付加されたものであってもよい。
【0091】
また、前述した実施形態では、嵌合孔91への嵌合方向がZ軸方向マイナス側つまり鉛直方向下側を向いていたが、これに限定されず、例えば、X軸方向プラス側すなわち水平方向を向いていてもよいし、Z軸方向プラス側つまり鉛直方向上側を向いていてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…嵌合装置、2…ステージ、21…載置面、3…加振機構、31…Z軸加振機構、311…ガイドレール、312…リニアスライダー、313…駆動源、314…エンコーダー、32…X軸加振機構、321…ガイドレール、322…リニアスライダー、323…駆動源、33…Y軸加振機構、331…ガイドレール、332…リニアスライダー、333…駆動源、34…押圧部材、341…下面、4…制御装置、5…ロボット、51…基台、52…ロボットアーム、521…アーム、522…アーム、523…アーム、524…アーム、525…アーム、526…アーム、8…嵌合物、81…下端部、82…上端部、9…被嵌合物、91…嵌合孔、J1…関節、J2…関節、J3…関節、J4…関節、J5…関節、J6…関節、J9…中心軸、N…荷重、S1…接触ステップ、S2…加振ステップ、S201…ステップ、S202…ステップ、S203…ステップ、S204…ステップ、S205…ステップ、S206…ステップ、S207…ステップ、S208…ステップ、S209…ステップ、S210…ステップ、S211…ステップ、S212…ステップ、S3…一定振幅円運動ループ、S301…ステップ、S302…ステップ、S303…ステップ、S304…ステップ、S305…ステップ、S306…ステップ、S307…ステップ、S308…ステップ、S309…ステップ、S310…ステップ、S311…ステップ、S312…ステップ、S4…振幅拡大ループ、S401…ステップ、S402…ステップ、S403…ステップ、S404…ステップ、S405…ステップ、S406…ステップ、S407…ステップ、S408…ステップ、S409…ステップ、S410…ステップ、S411…ステップ、S412…ステップ、θ…傾き