(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008028
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】口腔用組成物及びその製造方法、並びに口腔内バイオフィルム及び浮遊菌を抑制する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/21 20060101AFI20240112BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240112BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20240112BHJP
A61K 8/40 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
A61K8/21
A61Q11/00
A61K8/36
A61K8/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109519
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】391066490
【氏名又は名称】日本ゼトック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100218578
【弁理士】
【氏名又は名称】河井 愛美
(72)【発明者】
【氏名】大村 幸平
(72)【発明者】
【氏名】馬場(稲垣) みずき
(72)【発明者】
【氏名】森本 紋奈
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB172
4C083AB242
4C083AB282
4C083AB471
4C083AB472
4C083AC122
4C083AC231
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC662
4C083AC691
4C083AC692
4C083AC782
4C083AC792
4C083AD072
4C083AD272
4C083AD282
4C083AD302
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD532
4C083AD632
4C083BB45
4C083CC41
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD28
4C083DD41
4C083EE31
(57)【要約】
【課題】口腔内バイオフィルム及び浮遊菌を抑制可能な組成物を提供する。
【解決手段】(A)二価金属イオン源、(B)ベンゼン環を含む四級アンモニウム塩、及び(C)キレート剤を含有することを特徴とする口腔用組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)二価金属イオン源、(B)ベンゼン環を含む四級アンモニウム塩、及び(C)キレート剤を含有することを特徴とする口腔用組成物。
【請求項2】
前記(A)二価金属イオン源が、ハロゲン元素を配位子または対イオンとして有する二価金属イオン源である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
前記ハロゲン元素を配位子または対イオンとして有する二価金属イオン源が、フッ化第一スズである、請求項2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
前記(B)ベンゼン環を含む四級アンモニウム塩が、ベンザルコニウム塩化物又はベンゼトニウム塩化物である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
前記(C)キレート剤が、カルボン酸またはその塩である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項6】
前記カルボン酸またはその塩が、グルコン酸又は乳酸である、請求項5に記載の口腔用組成物。
【請求項7】
前記(A)二価金属イオン源が、フッ化第一スズであり、
前記(B)ベンゼン環を含む四級アンモニウム塩が、ベンザルコニウム塩化物又はベンゼトニウム塩化物であり、及び
前記(C)キレート剤が、グルコン酸又は乳酸である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項8】
前記(A)二価金属イオン源を、口腔用組成物の全質量を基準として0.01質量%~3質量%含有し、
前記(B)ベンゼン環を含む四級アンモニウム塩を、口腔用組成物の全質量を基準として0.0005質量%~1質量%含有し、及び
前記(C)キレート剤を、口腔用組成物の全質量を基準として0.01質量%~5質量%含有する、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項9】
前記(A)二価金属イオン源の含有量をA[質量%]、前記(C)キレート剤の含有量をC[質量%]としたとき、A:Cが1:0.0033~1:500の関係を満足する、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項10】
歯磨剤、洗口液、又は口腔保湿剤である、請求項1~9のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
【請求項11】
練歯磨剤、ジェル状歯磨剤、及び液体歯磨剤から選択される歯磨剤である、請求項10に記載の口腔用組成物。
【請求項12】
口腔内バイオフィルム及び浮遊菌を抑制するための、請求項11に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関し、より具体的には、口腔内バイオフィルム及び浮遊菌を抑制する組成物、その製造方法、並びに口腔内バイオフィルム及び浮遊菌を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔疾患は、口腔内への病原菌定着により発症する感染症である場合が多く、口腔疾患の予防及び改善には感染した病原菌を排除することが重要である。そのため、各種殺菌剤や抗生剤が用いられているが、口腔疾患の原因となる病原菌は、バイオフィルムを形成しており、殺菌剤や抗生剤に抵抗性を示すことが知られている。通常の殺菌剤では、バイオフィルム表面に殺菌剤が吸着し内部まで浸透しないため、根本的な殺菌ができない。
そこで、歯周病の原因となる歯周病原性バイオフィルム抑制効果の高い技術として、非イオン性殺菌剤であるイソプロピルメチルフェノールを用いた技術が開発されている。イソプロピルメチルフェノールは、歯周病原性バイオフィルムの内部に浸透して殺菌効果を奏することが知られている(特許文献1及び2)。
【0003】
一方で、虫歯予防、プラーク防止又は歯肉炎の緩解のような臨床効果を達成するために、口腔用組成物にフッ化第一スズを配合することが多く提案されてきた(特許文献3など)。フッ化第一スズは、水と会合すると第一スズイオンを生じ得る化合物であり、この第一スズイオンが実際に口腔内浮遊細菌に対して活性を示すことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-131769号公報
【特許文献2】国際公開第2006/067967号
【特許文献3】特開平5-148125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
イソプロピルメチルフェノールは口腔バイオフィルムに対して殺菌効果を示すものの、その効果は持続的ではない。また、イソプロピルメチルフェノールは浮遊菌に対しては殺菌効果が弱いため、十分に口腔内の病原菌を除去できない。
浮遊菌に対する殺菌効果を得るために、歯磨剤には四級アンモニウム塩である塩化セチルピリジニウムが汎用されている。しかしながら、塩化セチルピリジニウムはバイオフィルムに対する持続的な殺菌効果は示さないという課題がある。
第一スズイオンは、一般に口腔内浮遊細菌に対して活性を示す一方で、フッ化第一スズによる口腔内浮遊細菌への殺菌効果は十分ではない。また、フッ化第一スズは、加水分解、酸化、及び口腔用組成物中の他の成分と反応により殺菌効果を失ってしまう。さらに、フッ化第一スズと塩化セチルピリジニウムを組み合わせると褐変するという問題が生じるため、口腔用組成物としては外観が望ましくないものであった。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであって、バイオフィルムに対して長時間にわたり浸透してこれを抑制すること、浮遊菌を抑制すること、及び良好な外観安定性を有すること、の少なくとも1つの特徴を有する口腔用組成物を提供することを目的としている。さらには、本発明は、バイオフィルムに対して長時間にわたり浸透してこれを抑制すること、浮遊菌を抑制すること、及び良好な外観安定性を有すること、のすべての特徴を有する口腔用組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、(A)二価金属イオン源、(B)ベンゼン環を含む四級アンモニウム塩、及び(C)キレート剤を含有する口腔用組成物が、口腔内バイオフィルム及び浮遊菌に対する高い抑制効果を発揮することを見出した。
より具体的な例としては、二価金属イオン源(A)であるフッ化第一スズを、キレート剤(C)であるグルコン酸又は乳酸により安定化させ、ベンゼン環を含む四級アンモニウム塩(B)であるベンザルコニウム塩化物又はベンゼトニウム塩化物とともに口腔用組成物に配合することにより、当該口腔用組成物が口腔内バイオフィルムに持続的に浸透してこれを抑制し、かつ浮遊菌を抑制することが明らかになった。さらに、当該口腔用組成物は、相溶性及び色調安定性に優れることもまた明らかとなった。
【0008】
本発明が取り得る態様としては、以下を挙げることができる。
〔1〕(A)二価金属イオン源、(B)ベンゼン環を含む四級アンモニウム塩、及び(C)キレート剤を含有することを特徴とする口腔用組成物。
〔2〕前記(A)二価金属イオン源が、ハロゲン元素を配位子または対イオンとして有する二価金属イオン源である、前記〔1〕に記載の口腔用組成物。
〔3〕前記ハロゲン元素を配位子または対イオンとして有する二価金属イオン源が、フッ化第一スズである、前記〔2〕に記載の口腔用組成物。
〔4〕前記(B)ベンゼン環を含む四級アンモニウム塩が、ベンザルコニウム塩化物又はベンゼトニウム塩化物である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
〔5〕前記(C)キレート剤が、カルボン酸またはその塩である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
〔6〕前記カルボン酸またはその塩が、グルコン酸又は乳酸である、前記〔5〕に記載の口腔用組成物。
〔7〕前記(A)二価金属イオン源を、口腔用組成物の全質量を基準として0.01質量%~3質量%含有する、前記〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
〔8〕前記(B)ベンゼン環を含む四級アンモニウム塩を、口腔用組成物の全質量を基準として0.0005質量%~1質量%含有する、前記〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
〔9〕前記(C)キレート剤を、口腔用組成物の全質量を基準として0.01質量%~5質量%含有する、前記〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
〔10〕前記(A)二価金属イオン源の含有量をA[質量%]、前記(C)キレート剤の含有量をC[質量%]としたとき、A:Cが1:0.0033~1:500の関係を満足する、前記〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
〔11〕歯磨剤、洗口液、又は口腔保湿剤である、前記〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
〔12〕練歯磨剤、ジェル状歯磨剤、及び液体歯磨剤から選択される歯磨剤である、前記〔11〕に記載の口腔用組成物。
〔13〕口腔内バイオフィルム及び浮遊菌を抑制するための、前記〔1〕~〔12〕のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従えば、バイオフィルムに対して長時間にわたり浸透してこれを抑制すること、浮遊菌を抑制すること、及び良好な外観安定性を有すること、といった特徴の少なくとも1つを達成した口腔用組成物を提供することができる。本発明に従えば、さらには、バイオフィルムに対して長時間にわたり浸透してこれを抑制すること、浮遊菌を抑制すること、及び良好な外観安定性を有すること、のすべてを達成した口腔用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下で例示する好ましい態様やより好ましい態様などは、「好ましい」や「より好ましい」などの表現にかかわらず適宜相互に組み合わせて使用することができる。また、数値範囲の記載は例示であって、各範囲の上限と下限並びに実施例の数値とを適宜組み合わせた範囲も好ましく使用することができる。さらに、「含有する」又は「含む」などの用語は、「本質的になる」や「のみからなる」と読み替えてもよい。
【0011】
[口腔用組成物]
本発明の口腔用組成物は、(A)二価金属イオン源、(B)ベンゼン環を含む四級アンモニウム塩、及び(C)キレート剤を含有することを特徴とする。口腔用組成物とは、ヒトや非ヒト哺乳動物の口腔内全体又は局所的に適用される組成物である。本発明の口腔用組成物は、好適には、口腔内バイオフィルム及び浮遊菌を抑制するために用いられる組成物である。
【0012】
本明細書における「バイオフィルム」とは、菌膜とも呼ばれ、微生物により形成される構造体である。微生物としては、例えば、虫歯菌(Streptococcus mutans)などの通性嫌気性グラム陽性球菌、歯周病菌(Porphyromonas gingivalis)などの偏性嫌気性グラム陰性細菌、カンジダ菌(Candida albicans)などの真菌が挙げられる。特に、虫歯菌は歯表面への強い付着能を持っており、バイオフィルムを形成して殺菌剤や抗生剤に抵抗性を示す。
本明細書における「浮遊菌」とは、口腔内に存在する微生物であって、バイオフィルムのような構造体を形成していない微生物を指す。微生物としては、例えば、虫歯菌などの通性嫌気性グラム陽性球菌、歯周病菌などの偏性嫌気性グラム陰性細菌、カンジダ菌などの真菌が挙げられる。
本明細書における「口腔内バイオフィルム及び浮遊菌を抑制する」とは、口腔内バイオフィルム及び浮遊菌の増殖を制限することに加え、付着したバイオフィルムの分解・除去すること、バイオフィルム中の微生物及び浮遊菌を死滅・除去することなどを指す。
【0013】
(A)二価金属イオン源
本明細書に記載の「二価金属イオン源」は、二価金属イオンを放出する化合物である。二価金属イオン源としては、フッ化第一スズ、塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、フッ化銅(II)、塩化銅(II)、臭化銅(II)、ヨウ化銅(II)、グルコン酸銅、銅クロロフィリンナトリウム、フッ化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酸化亜鉛、グリシン亜鉛などが挙げられる。その中でも、ハロゲン元素を配位子または対イオンとして有し、水に溶解して二価金属イオンを放出する化合物が好ましく、具体的にはフッ化第一スズ、塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、フッ化銅(II)、塩化銅(II)、臭化銅(II)、ヨウ化銅(II)、フッ化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛などが挙げられ、特に好ましくはフッ化第一スズである。フッ化第一スズは、常温(例えば、25℃±5℃)では白色の結晶で存在する、化学式SnF2で表される化合物である。
(A)成分は、バイオフィルムに対して長時間浸透殺菌するための殺菌成分として使用される。口腔用組成物は、(A)成分を、当該口腔用組成物の全質量を基準として、好ましくは0.01質量%~3質量%、より好ましくは0.04質量%~2質量%、特に好ましくは0.2質量%~1質量%で含有する。(A)成分は、1種類のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0014】
(B)ベンゼン環を含む四級アンモニウム塩
本明細書に記載の「ベンゼン環を含む四級アンモニウム塩」は、ベンゼン環を1つ又は複数含む四級アンモニウム塩であり、前記ベンゼン環は非置換であってもよく、任意の置換基で置換されていてもよい。ベンゼン環を含む四級アンモニウム塩としては、例えば、ベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物、デカリニウム塩化物などが挙げられ、好ましくはベンザルコニウム塩化物又はベンゼトニウム塩化物である。
【0015】
ベンザルコニウム塩化物は、化学式 C
6H
5CH
2N
+(CH
3)
2R・Cl
-(R=C
8H
17~C
18H
37)で表される化合物であり、以下の構造式を有する。
【化1】
【0016】
ベンゼトニウム塩化物は、化学式C
27H
42ClNO
2で表される化合物であり、以下の構造式を有する。
【化2】
【0017】
(B)成分は、口腔内の歯表面や口腔粘膜などに存在する浮遊菌を殺菌するための殺菌成分として使用される。口腔用組成物は、(B)成分を、当該口腔用組成物の全質量を基準として、好ましくは0.0005質量%~1質量%、より好ましくは0.001質量%~0.1質量%、特に好ましくは0.005質量%~0.01質量%で含有する。(B)成分は、1種類のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0018】
(C)キレート剤
本明細書に記載の「キレート剤」は、複数の配位座を持つ配位子によって金属イオンに結合(配位)し、錯体を形成できる化合物を意味する。より具体的には、キレート剤は、(A)成分からの二価金属イオンと結合して錯体を形成可能な化合物である。キレート剤としては、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、アジピン酸、エチドロン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、フィチン酸、シュウ酸、フタル酸、フマル酸、ピルビン酸、マレイン酸、マンデル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリコール酸、アスコルビン酸、カプロン酸、アニス酸、安息香酸、ソルビン酸、パントテン酸、クロトン酸、ケイ皮酸、ポリリン酸、ピロリン酸、及びメタリン酸並びにそれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩などが挙げられる。その中でもカルボン酸又はその塩が好適であり、カルボン酸またはその塩としては、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、アジピン酸、エチドロン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、シュウ酸、フタル酸、フマル酸、ピルビン酸、マレイン酸、マンデル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリコール酸、アスコルビン酸、カプロン酸、アニス酸、安息香酸、ソルビン酸、パントテン酸、クロトン酸、及びケイ皮酸、並びにそれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩などが挙げられ、特に好ましくはグルコン酸又は乳酸である。グルコン酸は化学式C6H12O7で表される化合物である。乳酸は、化学式C3H6O3で表される化合物である。
(C)成分は、(A)成分に由来する二価金属イオンに結合することで、二価金属イオンの殺菌・抗菌活性の維持及び外観安定性の向上のため使用され得る。口腔用組成物は、(C)成分を、当該口腔用組成物の全質量を基準として、好ましくは0.01質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~3質量%、特に好ましくは1質量%~2質量%で含有する。(C)成分は、1種類のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0019】
口腔用組成物中の(A)成分の含有量及び(C)成分の含有量は、(A)成分の含有量をA[質量%]、(C)成分の含有量をC[質量%]としたとき、A:Cが1:0.0033~1:500の関係を満足するのが好ましく、1:0.05~1:77の関係を満足するのがより好ましく、1:1~1:10の関係を満足するのが特に好ましく、1:1.25~1:6.25の関係を満足するのが最も好ましい。このような比率で含有することで、キレート剤が二価金属イオンを効果的に安定化させ、上記した二価金属イオンの殺菌・抗菌活性の維持及び外観安定性の向上などの効果が得られる。
【0020】
その他の殺菌・抗菌成分
本発明の口腔用組成物には、上記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分に加え、必要に応じてその他の殺菌・抗菌成分を含有させることができる。
その他の殺菌・抗菌成分としては、例えば、カチオン性殺菌剤、ノニオン性殺菌剤、両性殺菌剤などを使用することができる。カチオン性殺菌剤としては、塩化セチルピリジニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルピリジニウムなどの第四級アンモニウム塩;グルコン酸アレキシジン、塩酸アレキシジン、酢酸アレキシジン、塩酸クロルヘキシジン、酢酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジンなどのビグアニド系殺菌剤などのカチオン性殺菌剤などを挙げることができる。ノニオン性殺菌剤としては、例えば、フェノール系殺菌剤であるイソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、ヒノキチオール、フェノール、チモール、オイゲノール、ビスフェノールなどを挙げることができる。両性殺菌剤としては、ドデシルジアミノエチルグリシンなどをあげることができる。これらの抗菌成分は、1種類のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。その配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.001質量%~10質量%である。
【0021】
任意成分
本発明の口腔用組成物には、上記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分に加え、必要に応じて任意成分を含有させることができる。任意成分は、例えば、界面活性剤、研磨剤、増粘剤、湿潤剤、溶剤、甘味剤、香料、冷感剤、pH調整剤、防腐剤、着色剤、懸濁剤、機能成分、矯味成分などが挙げられる。なお、研磨剤無配合の口腔用組成物に調製することもできる。これらの任意成分は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができ、また、適当な配合量で配合することができる。これらの任意成分は、1つの化合物が複数の特徴(例えば、香料と冷感剤)を有していても良い。
【0022】
界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、N-アシルグルタミン酸塩、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、アルキルグリコシド類、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルジメチルアミンオキシド、ラウリルエタノールアマイド、ココイルサルコシン酸ナトリウム、N-ラウロイルメチルタウリンナトリウム液などが挙げられる。その配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.01質量%~10質量%である。
【0023】
研磨剤としては、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、第2リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、不溶性メタリン酸カルシウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸、二酸化チタン、非晶質シリカ、結晶質シリカ、アルミノシリケケート、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、レジンなどが挙げられる。その配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.01質量%~50質量%である。
増粘剤としては、例えば、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウムなどのアルカリ金属アルギネート、アルギン酸プロピレングリコール、キサンタンガム、トラガカントガム、アラビアガムなどのガム類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンなどの合成増粘剤、シリカゲル、アルミニウムシリカゲル、ビーガムなどの無機増粘剤などが挙げられる。その配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.01質量%~30質量%である。
湿潤剤としては、例えば、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクチトールなどの多価アルコールが挙げられる。その配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.01質量%~99質量%である。
【0024】
溶剤としては、例えば、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどの有機溶剤、水などが挙げられる。その配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.01質量%~99質量%である。
甘味剤としては、例えば、パラチニット、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルミン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、ρ-メトキシシンナミックアルデヒド、スクラロース、キシリトール、ステビアなどが挙げられる。その配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.001質量%~10質量%である。
香料としては、例えば、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバーなどの調合香料、テルペノイド系精油、フェニルプロパノイド系精油などが挙げられる。
冷感剤としては、例えば、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、エチル-3-(p-メンタン-カルボキサミド)アセテート、N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミドなどが挙げられる。その配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.001質量%~5質量%である。
pH調整剤としては、リン酸、パントテン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、ケイ酸、クエン酸、メタリン酸、ポリリン酸及びこれらの化学的に可能な塩、並びに水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。その配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.001質量%~20質量%である。
【0025】
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、安息香酸及びその塩、サリチル酸及びその塩、ソルビン酸及びその塩、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシンなどが挙げられる。その配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.001質量%~10質量%である。
着色剤としては、例えば、青色1号、緑色3号、黄色4号、赤色105号などの色素、二酸化チタン、酸化亜鉛、グンジョウなどの顔料が挙げられる。その配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.01質量%~10質量%である。
懸濁剤としては、例えば、オリーブ油、ツバキ油、ヒマシ油などの油脂、及びこれらの油脂を含むエマルションなどが挙げられる。その配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.001質量%~5質量%である。
機能成分としては、例えば、グリチルリチン酸及びその塩、グリチルレチン酸、ピリドキシン塩酸塩、ε-アミノカプロン酸、アラントイン、塩化ナトリウム、アスコルビン酸及びその塩、アスコルビン酸誘導体、トコフェロール酢酸エステル、ゼオライト、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、硝酸カリウム、アズレンスルホン酸及びその塩、乳酸アルミニウム、並びにトラネキサム酸などが挙げられる。その配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.001質量%~10質量%である。
矯味成分としては、例えば、チャエキス、チャ乾留液、グルタミン酸ナトリウムなどが挙げられる。その配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.001質量%~5質量%である。
【0026】
本発明の口腔用組成物は、常温(例えば、25℃±5℃)でペースト状、ジェル状、液体状などの種々の形態とすることができる。本発明の口腔用組成物は、具体的には、歯磨剤、洗口液、又は口腔保湿剤などに調製することができる。本発明の口腔用組成物が歯磨剤の場合、練歯磨剤、ジェル状歯磨剤、又は液体歯磨剤であり得る。本発明の口腔用組成物は、褐変しておらず、均一な白色、微濁、又は透明な外観を有する。また、着色剤により任意の色調に着色されていてもよい。
【0027】
[製造方法]
本発明の口腔用組成物を、(A)二価金属イオン源、(B)ベンゼン環を含む四級アンモニウム塩、及び(C)キレート剤を混合するステップを含む方法により、製造することができる。(A)~(C)成分の混合の順序は特に限定されず、1成分ずつ順に混合してもよいし、3成分を同時に混合しても良い。
本発明の口腔用組成物は、前記混合するステップのほか、口腔用組成物の製造において通常用いられる方法に従ってその他の殺菌・抗菌成分や任意成分を配合させ、かつ任意の形態に製剤化することができる。
【0028】
[口腔内バイオフィルム及び浮遊菌を抑制する方法]
本発明の口腔用組成物を用いて、口腔内バイオフィルム及び浮遊菌を抑制する方法が提供される。
前記方法は、本発明の口腔用組成物を口腔内バイオフィルム及び浮遊菌に適用するステップを含む。前記適用するステップは、本発明の口腔用組成物を歯磨き、洗口、洗浄などによりヒト及び/又は非ヒト哺乳動物の口腔内に適用するものであってもよい。このように適用された口腔用組成物は、歯の表面や歯間に付着形成されたバイオフィルムの奥深くまで浸透してバイオフィルムを形成する微生物を抑制し、及び/又は口腔内の浮遊菌を抑制する効果を発揮する。本発明の口腔用組成物は、通常の歯磨きと同様の頻度で使用することができる。本発明の口腔用組成物は、例えば1日当たり3回の頻度で使用することができ、例えば3時間以上、好ましくは5時間以上、より好ましくは8時間以上の間隔をおいて使用することができる。例えば就寝前に本発明の口腔用組成物を使用した場合、就寝中(例えば、8時間以上)にわたり口腔内バイオフィルム及び浮遊菌の抑制効果を持続させることが可能である。
また、前記適用するステップは、in vitroで形成された口腔内バイオフィルム及び浮遊菌に対して、本発明の口腔用組成物を適用するものであってもよい。
【実施例0029】
以下、本発明の口腔用組成物の具体的な実施例について説明するが、当該実施例は本発明の範囲を限定する意図ではないことを確認的に明記しておく。なお、以下の実施例及び比較例において、特に断りがない限り、配合量の単位は質量%である。
【0030】
[試験例1]バイオフィルムに対する持続浸透殺菌力
表1に記載の各実施例及び表2に記載の各比較例の口腔用組成物2gに対し、水5gで希釈した被験試料を作製した。
ストレプトコッカス ミュータンス(Streptococcus mutans JCM5705;S.mutans JCM5705)を、1%スクロースを加えたSCD培地(富士フィルム和光純薬株式会社、SCD培地「ダイゴ」)にて37℃嫌気条件下で48時間前培養し、バイオフィルムを作製した。
バイオフィルムの上清液を除き、残ったバイオフィルムをPBS(-)溶液で洗浄した後、被験試料を添加した。10分間経過後、被験試料を除き、バイオフィルムをPBS(-)溶液で洗浄した後、PBS(-)溶液2mLを加え、37℃好気条件下で3時間培養した。PBS(-)溶液を除去し、LP希釈液2mLを加えバイオフィルムを超音波破砕して得られた溶液1mLを、LP希釈液9mLにて段階希釈した。得られた希釈液1mLを、TSA培地(ベクトン・ディッキンソン社、DifcoTM Microbial Content Test Agar)で混釈培養法にて生菌数を求めた。
ここで、混釈培養法においては、希釈液と寒天培地とをシャーレの中で混和凝固させ、32.5℃、好気条件下で培養し、培養後発生したコロニー数を目視により測定して乗数をかけて生菌数とした。生菌数より、下記の評価基準に従い評価した。
◎(最良) :1.0×104CFU/mL以下
○(良) :1.0×104CFU/mL超~1.0×105CFU/mL
×(不良) :1.0×105CFU/mLより多い
【0031】
[試験例2]浮遊菌に対する殺菌力
表1に記載の各実施例及び表2に記載の各比較例の口腔用組成物2gに対し、水20gで希釈して被験試料を作製した。
S.mutans JCM5705を、SCD培地(富士フィルム和光純薬株式会社、SCD培地「ダイゴ」)にて32.5℃好気条件で24時間前培養し、培養液を得た。得られた培養液を菌数が1.0×108CFU/mLになるように生理食塩水で希釈した。
被験試料に、調製した培養液を、被験試料の体積に対する当該培養液の体積が1/100となる量で加えて混合した。3分間経過後、培養液を混合した各実施例及び各比較例の口腔用組成物1mLをLP希釈液9mLにて段階希釈した。得られた希釈液1mLを、TSA培地(ベクトン・ディッキンソン社、DifcoTM Microbial Content Test Agar)で混釈培養法にて生菌数を求めた。
ここで、混釈培養法においては、希釈液と寒天培地とをシャーレの中で混和凝固させ、32.5℃、好気条件下で培養し、培養後発生したコロニー数を目視により測定して乗数をかけて生菌数とした。生菌数より、下記の評価基準に従い評価した。
◎(最良) :1.0×101CFU/mL以下
○(良) :1.0×101CFU/mL超~2.0×101CFU/mL
×(不良) :2.0×101CFU/mLより多い
【0032】
[試験例3]相溶性
各実施例及び各比較例の口腔用組成物を調製した直後に、目視判定により下記の基準で評価を行った。
◎(最良) :沈殿がなく、かつ透明又は微濁である。
○(良) :沈殿はないが、白濁している。
×(不良) :目視可能な沈殿を生じ、かつ白濁している。
【0033】
[試験例4]色調安定性
各実施例及び各比較例の口腔用組成物を60℃で1週間保管後、目視判定により下記の基準で評価を行った。なお、60℃で1週間の保管は、常温で1年間の保管に相当する。
◎(最良) :沈殿がなく、かつ透明又は微濁している。
○(良) :沈殿はないが、白濁している。
×(不良) :目視可能な沈殿を生じ、かつ/又は口腔用組成物の一部又は全部が褐色に変化している。
【0034】
[総合評価]
試験例1~4における評価に基づき、以下の評価基準に従い総合評価を行った。
◎(最良) :すべて◎である。
○(良) :×が1つもなく◎が3つある。
△(可) :×が1つもなく◎が2つ以下である。
×(不良) :×が1つ以上ある。
【0035】
各実施例及び各比較例に対する評価結果を、表1及び表2に示す。
なお、表1及び表2に記載の水酸化ナトリウムを、pHを中性にそろえるためのpH調整剤として使用した。ヒドロキシエチルセルロースを、増粘剤として使用した。
また、表1おける「A:C」は、(A)成分の含有量A[質量%]と(C)成分の含有量C[質量%]の比率を示す。
【0036】
【0037】
実施例1~3、並びに比較例1~4より、口腔用組成物は二価金属イオン源としてフッ化第一スズを含むことで、バイオフィルムに対する持続殺菌力を示すことが明らかになった。
実施例1及び比較例8より、口腔用組成物はフッ化ナトリウムを含む場合と比較して、二価金属イオン源としてのフッ化第一スズを含有する場合には、バイオフィルムに対する高い持続殺菌力を発揮することが示された。
実施例1、4、及び5、並びに比較例4より、口腔用組成物中のフッ化第一スズの含有量は、0.2質量%~1質量%が特に好ましいことが明らかになった。
【0038】
実施例1及び3、並びに比較例1、6、及び9より、口腔用組成物は(C)成分としてグルコン酸又は乳酸を含むことで、相溶性及び色調安定性が良好となることが明らかとなった。実施例1及び比較例9より、口腔用組成物は(C)成分の代わりにグルコン酸クロルヘキシジンを含有する場合には、相溶性が低いものとなった。これは、クロルヘキシジンが二価金属イオンと反応することが一因と考えられる。
実施例1、7、及び8、並びに比較例6より、口腔用組成物中の(C)成分の含有量は、1質量%~2質量%が特に好ましいことが明らかとなった。実施例1~8より、(A)成分の含有量A[質量%]と(C)成分の含有量C[質量%]が、A:C=1:1.25~1:6.25の関係を満足することが好ましいことが明らかとなった。
【0039】
実施例1及び2、並びに比較例5より、口腔用組成物は(B)成分としてベンザルコニウム塩化物又はベンゼトニウム塩化物を含有することで、浮遊菌に対する殺菌力を示すことが明らかとなった。
実施例1及び2より、口腔用組成物は(B)成分としてベンザルコニウム塩化物又はベンゼトニウム塩化物を含有することで、色調安定性に優れることが明らかとなった。一方で、比較例7のように、口腔用組成物が(B)成分の類似成分として塩化セチルピリジニウムを含有する場合には、色調安定性を欠き、褐変した。
実施例1、2、及び6、並びに比較例5より、口腔用組成物中の(B)成分の含有量は、0.005~0.01質量%が特に好ましいことが明らかとなった。
【0040】
[処方例]
(A)二価金属イオン源、(B)ベンゼン環を含む四級アンモニウム塩、及び(C)キレート剤とともに、任意成分を混合して調製した本発明の口腔用組成物の処方例を示す。配合量の単位は、処方剤全体を100質量%とした場合の質量%である。
【0041】
以下に示すジェル状歯磨剤、練歯磨剤、及び非水練歯磨剤は、歯ブラシ、デンタルフロス、歯間ブラシなどの口腔ケア用具によって歯の表面や歯間に塗布して使用することにより、バイオフィルムに対する長期間浸透抑制効果、浮遊菌の抑制効果、及び高い色調安定性、との特徴を有することが確認された。
以下に示す液体歯磨剤は、使用者が適量を口腔内に含ませて使用することが可能であり、あるいはスプレー容器に収容して口腔内へスプレーして使用することにより、バイオフィルムに対する長期間浸透抑制効果、浮遊菌の抑制効果、及び高い色調安定性、との特徴を有することが確認された。
【0042】
[処方例1]ジェル状歯磨剤
フッ化第一スズ 0.4
グルコン酸 1.25
乳酸 1.25
ベンザルコニウム塩化物 0.01
ベンゼトニウム塩化物 0.01
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
ヒドロキシエチルセルロース 1.0
水酸化ナトリウム 0.40
フッ化ナトリウム 0.1
アルギン酸プロピレングリコール 0.3
70%ソルビット液 10
濃グリセリン 30
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
イソプロピルメチルフェノール 0.1
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
グリセリン脂肪酸エステル 0.5
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
香料 1.0
精製水 残
合計 100%
【0043】
[処方例2]練歯磨剤
フッ化第一スズ 0.4
グルコン酸 1.25
乳酸 1.25
ベンザルコニウム塩化物 0.01
ベンゼトニウム塩化物 0.01
無水ケイ酸 7
含水ケイ酸 3
リン酸水素カルシウム 1
酸化チタン 0.3
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.5
水酸化ナトリウム 0.3
フッ化ナトリウム 0.1
サッカリンナトリウム 0.1
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
ラウロイルメチルタウリンナトリウム 0.5
イソプロピルメチルフェノール 0.1
ピリドキシン塩酸塩 0.1
70%ソルビット液 10
濃グリセリン 20
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.0
香料 1.0
精製水 残
合計 100%
【0044】
[処方例3]液体歯磨剤
フッ化第一スズ 0.4
グルコン酸 1.25
乳酸 1.25
ベンザルコニウム塩化物 0.01
ベンゼトニウム塩化物 0.01
キサンタンガム 0.5
水酸化ナトリウム 0.42
キシリトール 1
アルギン酸プロピレングリコール 0.1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
ソルビット 7
濃グリセリン 30
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
香料 1.0
精製水 残
合計 100%
【0045】
[処方例4]非水練歯磨剤
フッ化第一スズ 0.4
グルコン酸 1.25
乳酸 1.25
ベンザルコニウム塩化物 0.01
ベンゼトニウム塩化物 0.01
無水ケイ酸 10
含水ケイ酸 5
リン酸水素カルシウム 1
酸化チタン 1
アルギン酸プロピレングリコール 0.1
ヒドロキシエチルセルロース 1
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1
ヒドロキシプロピルセルロース 1
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 1
ポリビニルピロリドン 1
水酸化ナトリウム 0.3
フッ化ナトリウム 0.1
サッカリンナトリウム 0.1
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
ラウロイルメチルタウリンナトリウム 0.5
イソプロピルメチルフェノール 0.1
ピリドキシン塩酸塩 0.1
濃グリセリン 20
グリセリン脂肪酸エステル 0.5
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.0
香料 1.0
プロピレングリコール 残
合計 100%