(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008029
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/02 20060101AFI20240112BHJP
E05F 3/22 20060101ALI20240112BHJP
E05F 1/16 20060101ALI20240112BHJP
A47F 3/04 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
F25D23/02 306Q
E05F3/22 Z
E05F1/16 B
F25D23/02 306Z
A47F3/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109522
(22)【出願日】2022-07-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.令和3年7月15日から16日、GALILEI EXPO2021に出展し公開 2.令和3年12月2日から3日、フードストアソリューションズフェア2021に出展し公開 3.令和4年2月16日から18日、スーパーマーケットトレードショー2022に出展し公開 4.令和3年9月30日~令和4年7月7日、別紙一覧表にある店舗等へ納品
(71)【出願人】
【識別番号】000239585
【氏名又は名称】フクシマガリレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏幸
【テーマコード(参考)】
3B110
3L102
【Fターム(参考)】
3B110AA07
3B110CA05
3L102JA03
3L102KA08
3L102KB19
3L102KB22
3L102KB23
(57)【要約】
【課題】スライド扉の自閉機能に加えてこれを全開位置に保持する機能を備える貯蔵庫において、スライド扉を全開位置から小さな力で閉じ操作することを可能とする。
【解決手段】スライド扉3を常に閉じ方向に付勢する自閉装置32と、スライド扉3を少なくとも全開位置で開き方向に付勢するアシスト装置37とを設ける。スライド扉3が全開位置にあるときに、アシスト装置37からスライド扉3に作用する開き方向の付勢力を、自閉装置32からスライド扉3に作用する閉じ方向の付勢力とつり合うか、それよりも大きく設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室(9)の前面の開口(2)がスライド扉(3)で開閉される貯蔵庫であって、
スライド扉(3)は、開口(2)を閉じる左右一側の全閉位置と、開口(2)を開く左右他側の全開位置との間で、左右方向にスライド自在に案内されており、
スライド扉(3)を常に閉じ方向に付勢する自閉装置(32)と、スライド扉(3)を少なくとも全開位置で開き方向に付勢するアシスト装置(37)とを備えており、
スライド扉(3)が全開位置にあるときに、アシスト装置(37)からスライド扉(3)に作用する開き方向の付勢力が、自閉装置(32)からスライド扉(3)に作用する閉じ方向の付勢力とつり合うか、それよりも大きく設定されていることを特徴とする貯蔵庫。
【請求項2】
全閉位置と全開位置の間に開きアシスト開始位置が設定されており、
アシスト装置(37)は、開きアシスト開始位置から全開位置にかけてスライド扉(3)を開き方向に付勢しており、
スライド扉(3)が開きアシスト開始位置から全開位置に到達するまでの間に、アシスト装置(37)からスライド扉(3)に作用する開き方向の付勢力が、自閉装置(32)からスライド扉(3)に作用する閉じ方向の付勢力よりも大きく設定されている請求項1に記載の貯蔵庫。
【請求項3】
アシスト装置(37)が、開きアシスト開始位置から全開位置にかけてスライド扉(3)を減速するダンパー(45)を備える請求項2に記載の貯蔵庫。
【請求項4】
全閉位置と開きアシスト開始位置との間に閉じアシスト開始位置が設定されており、
アシスト装置(37)は、閉じアシスト開始位置から全閉位置にかけて、スライド扉(3)を閉じ方向に付勢するとともに、ダンパー(45)でスライド扉(3)を減速する請求項3に記載の貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自閉するスライド扉を備える冷蔵ショーケースや冷蔵庫などの貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の貯蔵庫は、例えば特許文献1に開示されており公知である。特許文献1の貯蔵庫(低温ショーケース)は、貯蔵室の前後開口を開閉する引き違い式のスライド扉と、各スライド扉を閉じ方向に付勢する自閉装置とを備える。この自閉装置は、スライド扉に固定される外筒部材と、貯蔵庫本体に固定される内筒部材と、外筒部材の一端と内筒部材の他端との間に設けられるコイルバネなどで構成されている。スライド扉が完全に閉鎖された全閉位置にあるとき、内筒部材は外筒部材の内部に収納されている。この状態からスライド扉を開き方向に移動させると、外筒部材がスライド扉と同行移動して、内筒部材が外筒部材から抜け出し、それとともにコイルバネが伸張される。この伸張したコイルバネの復元力によって、外筒部材とスライド扉が閉じ方向に付勢される。
【0003】
また、特許文献1の貯蔵庫は、スライド扉を全開位置に保持するためのストッパーを備える。ストッパーは板バネからなり、貯蔵庫本体の開口枠の上面に取り付けられている。一方、スライド扉の上面には、上向きに突出するネジの操作頭部が配置されており、この操作頭部がストッパーに係合することにより、スライド扉が全開位置に保持される。ストッパーと操作頭部の係合は、その係合力を上回る力でスライド扉を閉じ操作することにより、解除することができる。解除以後は、コイルバネが発揮する復元力によって、スライド扉は閉じ方向へ自動的に移動する。このように、スライド扉を全開位置に保持するストッパーを設けると、例えばユーザーが貯蔵庫内に商品を補充する際に、スライド扉を手などで押さえておく必要がなく、これにより補充作業の効率を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1の貯蔵庫(低温ショーケース)では、自閉装置のコイルバネが発揮する復元力によって、スライド扉が閉じ方向へ自動的に移動する。通常この復元力は、スライド扉とレール部材の間の摩擦力を十分に上回る大きさに設定される。これにより、汚れの付着や経年劣化などの理由で摩擦力が増大した場合でも、スライド扉を確実に全閉位置まで移動させて、貯蔵室からの冷気漏れを防止することができる。
【0006】
しかし、コイルバネの復元力を大きくすると、それに比例して、スライド扉を全開位置に保持するのに必要な力も大きくなる。つまり、スライド扉(ネジの操作頭部)に対するストッパーの係合力を大きくする必要が生じる。この係合力が大きすぎると、係合を解除するのに大きな力が必要となり、スライド扉の閉じ操作を軽快に行えない。
【0007】
本発明の目的は、スライド扉の自閉機能に加えてこれを全開位置に保持する機能を備える貯蔵庫において、スライド扉を全開位置から小さな力で閉じ操作することを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、貯蔵室9の前面の開口2がスライド扉3で開閉される貯蔵庫を対象とする。スライド扉3は、開口2を閉じる左右一側の全閉位置と、開口2を開く左右他側の全開位置との間で、左右方向にスライド自在に案内される。スライド扉3を常に閉じ方向に付勢する自閉装置32と、スライド扉3を少なくとも全開位置で開き方向に付勢するアシスト装置37とを備えており、スライド扉3が全開位置にあるときに、アシスト装置37からスライド扉3に作用する開き方向の付勢力が、自閉装置32からスライド扉3に作用する閉じ方向の付勢力とつり合うか、それよりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0009】
全閉位置と全開位置の間に開きアシスト開始位置が設定されており、アシスト装置37は、開きアシスト開始位置から全開位置にかけてスライド扉3を開き方向に付勢しており、スライド扉3が開きアシスト開始位置から全開位置に到達するまでの間に、アシスト装置37からスライド扉3に作用する開き方向の付勢力が、自閉装置32からスライド扉3に作用する閉じ方向の付勢力よりも大きく設定されている形態を採ることができる。
【0010】
アシスト装置37が、開きアシスト開始位置から全開位置にかけてスライド扉3を減速するダンパー45を備える形態を採ることができる。
【0011】
全閉位置と開きアシスト開始位置との間に閉じアシスト開始位置が設定されており、アシスト装置37は、閉じアシスト開始位置から全閉位置にかけて、スライド扉3を閉じ方向に付勢するとともに、ダンパー45でスライド扉3を減速する形態を採ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る貯蔵庫は、スライド扉3を常に閉じ方向に付勢する自閉装置32と、スライド扉3を少なくとも全開位置で開き方向に付勢するアシスト装置37とを備える。そして、スライド扉3が全開位置にあるときに、アシスト装置37からスライド扉3に作用する開き方向の付勢力が、自閉装置32からスライド扉3に作用する閉じ方向の付勢力とつり合うか、それよりも大きく設定されている。これによれば、全開位置にあるスライド扉3に対して、アシスト装置37の付勢力から自閉装置32の付勢力を差し引いた、比較的小さな開き方向の付勢力が作用するか、または付勢力が作用しない(つり合う)ようにして、スライド扉3を全開位置で静止させることができる。また、全開位置で静止するスライド扉3に対し、上記のように比較的小さな開き方向の付勢力が作用するか、または付勢力が作用しない(つり合う)ようにすると、該スライド扉3を小さな力で軽快に閉じ操作することができる。
【0013】
スライド扉3が開きアシスト開始位置から全開位置に到達するまでの間に、アシスト装置37からスライド扉3に作用する開き方向の付勢力を、自閉装置32からスライド扉3に作用する閉じ方向の付勢力よりも大きく設定すると、スライド扉3をアシスト開始位置から全開位置まで開き方向に自動的に移動させることができる。つまりユーザーは、スライド扉3を全閉位置から全開位置まで開き操作する際に、これを全開位置の手前の開きアシスト開始位置まで移動させるだけで済むようになり、ユーザーの利便性を高めることができる。
【0014】
開きアシスト開始位置から全開位置にかけてスライド扉3を減速するダンパー45を設けると、スライド扉3を全開位置まで緩やかに移動させることができる。これにより、スライド扉3が全開位置で開口2の縁に激しく衝突することで生じる不快な騒音や、ユーザーがスライド扉3と開口2の縁との間に指を詰めてしまう事故などを防止することができる。
【0015】
アシスト装置37が閉じアシスト開始位置から全閉位置にかけてスライド扉3を閉じ方向に付勢するものであると、当該位置のスライド扉3を自閉装置32とアシスト装置37の両方で閉じ付勢することができる。これにより、スライド扉3の全閉位置までの移動および移動後の全閉位置の維持を確実なものとして、貯蔵室9からの冷気漏れを確実に防止することができる。また、全閉位置へ向かうスライド扉3をダンパー45で減速すると、これを全閉位置まで緩やかに移動させることができる。これにより、スライド扉3が全閉位置で開口2の縁に激しく衝突することで生じる不快な騒音や、ユーザーがスライド扉3と開口2の縁との間に指を詰めてしまう事故などを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る冷蔵ショーケースのスライド扉の上部の移動機構を示す正面図である。
【
図7】スライド扉の移動機構の動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態) 本発明を冷蔵ショーケースに適用した実施形態を
図1ないし
図7に示す。本実施形態における前後、左右、上下とは、
図2および
図3に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。両図において冷蔵ショーケースは、縦長の直方体状に形成されたケース本体1と、ケース本体1の前面の開口2を開閉する引き違い式のスライド扉3とを備える。各スライド扉3の外面すなわち前面の閉じ端側には、開閉操作用のハンドル4が設けられている。ケース本体1は、その大部分を占める断熱箱体5と、断熱箱体5の上部前端に連続して設けられる上枠6などで構成される。上枠6は左右方向に長く形成されて、ケース本体1の開口2の上縁を構成する。
【0018】
ケース本体1とスライド扉3に囲まれる貯蔵室9は、側面視コ字状の内ケース10で陳列部11と循環通路12に区画されている。開口2に臨む陳列部11には、商品(被冷蔵品)を載置するための棚板13が上下多段状に設置されている。陳列部11を三方から取り囲む側面視コ字状の循環通路12には、同通路12内に空気流を形成するための循環ファン14と、同通路12を流れる空気を冷却するための蒸発器15とが設けられている。循環通路12の上部前端には下向きの吹出口16が設けられており、下部前端には上向きの吸込口17が設けられている。
【0019】
冷蔵ショーケースの冷却運転時には、図外の冷凍ユニットから蒸発器15へ低温の液状冷媒が供給されるとともに、循環ファン14が駆動する。これにより、蒸発器15を通過する空気が冷却されて、吹出口16から吸込口17へ下向きに吹き出されて、陳列部11の前面に冷気のエアカーテンが形成される。このエアカーテンは、陳列部11内の空気を冷却するとともに、スライド扉3の開放時に陳列部11への外気の侵入を遮断する。
【0020】
冷蔵ショーケースの上部前端には、各スライド扉3の前面に向けて常温の外気を送り出す送風ユニット20が設けられている。
図3および
図4において送風ユニット20は、ケース本体1の上面との間に送風路21を区画するキャノピー22と、送風路21内に配置される送風ファン23と、送風ファン23を支持する支持枠24とを備える。送風路21は側面視で横臥L字状に形成されており、断熱箱体5の上面後部に臨む後向きの吸気口25と、スライド扉3の前面に臨む下向きの排気口26とを備える。送風路21(キャノピー22)はケース本体1の左右方向の略全長にわたって形成されており、送風ファン23は送風路21の左右方向の4個所に配置されている(
図2参照)。各送風ファン23を駆動させて、排気口26から各スライド扉3の前面に常温の外気を送り出すと、該前面の結露を抑制するとともに、スライド扉3の開放時に貯蔵室9への外気の侵入を抑制することができる。
【0021】
上枠6の前端部の下面には、スライド扉3を左右方向にスライド案内する前後一対のガイドレール29が固定されている。各ガイドレール29は左右に伸びる条材からなり、下向きに開口する断面C字状に形成されている。
図1に示すように、各スライド扉3の上端部には、ガイドレール29を走行する左右一対のランナー30・31が取り付けられており、このうち閉じ端側のランナー30には、スライド扉3を閉じ方向に付勢する自閉装置32が連結されている。自閉装置32はぜんまいユニットからなり、上枠6の前壁の内面(後面)に固定されるユニットケース33と、ユニットケース33内に巻回状態で収容されるワイヤー34と、ワイヤー34を巻き戻し方向に付勢する不図示のぜんまいばねなどで構成されている。ワイヤー34の引き出し端が閉じ端側のランナー30に連結されており、該ランナー30を介してスライド扉3は閉じ方向に付勢される。自閉装置32はスライド扉3の位置にかかわらず、これを常に閉じ方向に付勢する。なお自閉装置32は、開き端側のランナー31に連結してもよく、スライド扉3に直接連結してもよい。
【0022】
スライド扉3は、自閉装置32に加えてアシスト装置37で付勢される。アシスト装置37は、スライド扉3を全閉位置とその近傍で閉じ方向に付勢するとともに、同扉3を全開位置とその近傍で開き方向に付勢する。具体的にはアシスト装置37は、ランナー30・31と共にガイドレール29を走行する装置本体38と、ガイドレール29の上壁から下向きに突出する左右一対の切換具39・40とを備える。装置本体38の一端は開き端側のランナー31に連結されており、装置本体38の他端にはガイドレール29上を転動する走行ローラ41が取り付けられている。なお装置本体38は、閉じ端側のランナー30に連結されていてもよい。
【0023】
詳しくは装置本体38は、左右に長いケーシング44の内部に、シリンダー型のダンパー45、引張コイル型の蓄力ばね46、および左右一対のスライダー47・48などを収容して構成される。各スライダー47・48は、ケーシング44に対して個別に左右スライド可能であり、これらスライダー47・48の間にダンパー45と蓄力ばね46が配置されている。ダンパー45は、一方(ここでは閉じ端側)のスライダー47に連結されるシリンダーと、他方(ここでは開き端側)のスライダー48に連結されるロッドとを備える。蓄力ばね46の一端は一方のスライダー47に連結され、蓄力ばね46の他端は他方のスライダー48に連結されている。閉じ端側のスライダー47と開き端側のスライダー48はそれぞれ、同じ側の切換具39・40に対して係脱可能である。また、ケーシング44の両端部には、スライドストロークの端部に到達したスライダー47・48を保持する不図示のストッパーが設けられている。
【0024】
図5(a)は、スライド扉3が全閉位置にあるときのアシスト装置37を示しており、閉じ端側のスライダー47が同じ側の切換具39に係合している。一方、開き端側のスライダー48は、自身のスライドストロークの端部に位置して、ケーシング44に設けられたストッパーに保持されている。蓄力ばね46は、ガイドレール29に対して固定されている閉じ端側のスライダー47を基準として、開き端側のスライダー48を引き寄せる方向、すなわちスライド扉3の閉じ方向に付勢力を発揮する。この付勢力は、開き端側のスライダー48からケーシング44とランナー31を介してスライド扉3に作用する。このときの蓄力ばね46は自然長に近く、蓄力ばね46が発揮する付勢力は比較的小さい。なお、全閉位置におけるスライド扉3は、開口2の縁に設けられた開口2の側縁で受け止められる。
【0025】
図5(b)は、両スライダー47・48が切換具39・40から分離して、スライド扉3に対して付勢力を発揮していない状態のアシスト装置37を示す。この状態の各スライダー47・48は、スライドストロークの端部でケーシング44のストッパーに保持されている。両スライダー47・48の間で蓄力ばね46は引き伸ばされて蓄力状態にあり、ダンパー45のロッドはシリンダーに対して伸長している。
【0026】
図5(c)は、スライド扉3が全開位置にあるときのアシスト装置37を示しており、開き端側のスライダー48が同じ側の切換具40に係合している。一方、閉じ端側のスライダー47は、自身のスライドストロークの端部に位置して、ケーシング44に設けられたストッパーに保持されている。蓄力ばね46は、ガイドレール29に対して固定されている開き端側のスライダー48を基準として、閉じ端側のスライダー47を引き寄せる方向、すなわちスライド扉3の開き方向に付勢力を発揮する。この付勢力は、閉じ端側のスライダー47からケーシング44とランナー31を介してスライド扉3に作用する。このときの蓄力ばね46は自然長に近く、蓄力ばね46が発揮する付勢力は比較的小さい。なお、スライド扉3が全開位置にあるときは、開き端側のランナー31が、ガイドレール29内に設けられたバンパーブロック52(
図6参照)で受け止められる。
【0027】
図7は、スライド扉3が全閉位置から全開位置まで移動するときの自閉装置32およびアシスト装置37の動作を示す。(a)に示す全閉位置におけるスライド扉3は、自閉装置32とアシスト装置37の両方で閉じ方向に付勢されている。この全閉位置からスライド扉3が開き方向に移動すると、閉じ端側のランナー30はワイヤー34を引き出しながら同行移動し、開き端側のランナー31もケーシング44を引き連れて同行移動する。閉じ端側のスライダー47は切換具39に係合しているため同行移動せず、換言すればケーシング44に対して閉じ方向に相対移動する。そしてスライダー47は、自身のスライドストロークの端部に到達すると、(b)のようにケーシング44に設けられたストッパーに保持される。
【0028】
(b)の位置からスライド扉3がさらに開き方向に移動すると、(c)のようにスライダー47と切換具39の係合が解除される。この状態ではアシスト装置37の付勢力は発揮されないが、自閉装置32の付勢力は依然として作用しているため、ユーザーがハンドル4から手を離せば、スライド扉3は全閉位置まで自動的に移動する。ただし、(c)の位置でスライド扉3に作用する閉じ方向の付勢力は、(b)の位置を経てからの同付勢力よりも小さい。
【0029】
スライド扉3が(c)の位置からさらに開き方向に移動すると、(d)のように開き端側のスライダー48が切換具40に係合する。このときのスライド扉3の位置を開きアシスト開始位置と規定する。この係合と同時に、スライダー48がケーシング44のストッパーから分離して、蓄力ばね46に蓄えられたばね力が開放される。このときの蓄力ばね46は、ガイドレール29に対して固定されている開き端側のスライダー48を基準として、閉じ端側のスライダー47を引き寄せる方向、すなわちスライド扉3の開き方向に付勢力を発揮する。この開き方向の付勢力は、自閉装置32からスライド扉3に作用する閉じ方向の付勢力よりも大きい。そのためスライド扉3は、(d)の開きアシスト開始位置から(e)に示す全開位置にかけて、アシスト装置37の開き方向の付勢力から自閉装置32の閉じ方向の付勢力を差し引いた力で開き付勢される。この過程で、蓄力ばね46に蓄えられたばね力は、ダンパー45が発揮する(ロッドがシリンダー内に退く際に発揮される)緩衝作用によって比較的ゆっくりと開放される。つまりダンパー45は、開きアシスト開始位置から全開位置にかけてスライド扉3を減速する。
【0030】
スライド扉3が(e)の全開位置に到達したとき、蓄力ばね46は自然長に近い長さまで縮んでおり、このときの蓄力ばね46からスライド扉3に作用する閉じ方向の付勢力は、スライダー48がケーシング44のストッパーから分離した直後の同付勢力よりは十分に小さい。ただし、自閉装置32からスライド扉3に作用する閉じ方向の付勢力と比較すると、それとつり合うか、あるいはそれを僅かに上回っており、そのためスライド扉3は全開位置で静止する。スライド扉3が全開位置で静止するようにしていると、ユーザーは貯蔵室9に商品を補充する際に、スライド扉3を手などで押さえておく必要がなく、これにより補充作業の効率を高めることができる。
【0031】
全開位置のスライド扉3を全閉位置まで閉じるには、スライド扉3を(d)の開きアシスト開始位置まで移動させて、開き端側のスライダー48と切換具40の係合を解除するだけでよく、それ以降のスライド扉3は全閉位置まで自動的に移動する。上記のように、(e)の全開位置にあるスライド扉3に対しては、アシスト装置37の付勢力から自閉装置32の付勢力を差し引いた、比較的小さな開き方向の付勢力が作用するか、または付勢力が作用しておらず(つり合っており)、従ってスライド扉3を小さな力で軽快に移動させることができる。
【0032】
開き端側のスライダー48が切換具40から分離すると、(c)のように自閉装置32の閉じ方向の付勢力のみがスライド扉3に作用する状態となる。そのためスライド扉3は閉じ方向へ自動的に移動し、やがて(b)のように閉じ端側のスライダー47が切換具39に係合する。このときのスライド扉3の位置を閉じアシスト開始位置と規定する。この係合と同時に、スライダー47がケーシング44のストッパーから分離して、蓄力ばね46に蓄えられたばね力が開放される。このときの蓄力ばね46は、ガイドレール29に対して固定されている閉じ端側のスライダー47を基準として、開き端側のスライダー48を引き寄せる方向、すなわちスライド扉3の閉じ方向に付勢力を発揮する。つまりスライド扉3は、閉じアシスト開始位置から全閉位置にかけて、自閉装置32とアシスト装置37の両方で閉じ付勢される。この過程で、蓄力ばね46に蓄えられたばね力は、ダンパー45が発揮する緩衝作用によって比較的ゆっくりと開放される。つまりダンパー45は、閉じアシスト開始位置から全閉位置にかけてもスライド扉3を減速する。
【0033】
以上のように、本実施形態に係る冷蔵ショーケースは、スライド扉3を常に閉じ方向に付勢する自閉装置32と、スライド扉3を全開位置とその近傍で開き方向に付勢するアシスト装置37とを備える。そして、スライド扉3が全開位置にあるときに、アシスト装置37からスライド扉3に作用する開き方向の付勢力が、自閉装置32からスライド扉3に作用する閉じ方向の付勢力とつり合うか、それよりも大きく設定されている。これによれば、全開位置にあるスライド扉3に対して、アシスト装置37の付勢力から自閉装置32の付勢力を差し引いた、比較的小さな開き方向の付勢力が作用するか、または付勢力が作用しない(つり合う)ようにして、スライド扉3を全開位置で静止させることができる。また、全開位置で静止するスライド扉3に対し、上記のように比較的小さな開き方向の付勢力が作用するか、または付勢力が作用しない(つり合う)ようにすると、該スライド扉3を小さな力で軽快に閉じ操作することができる。
【0034】
スライド扉3が開きアシスト開始位置から全開位置に到達するまでの間に、アシスト装置37からスライド扉3に作用する開き方向の付勢力を、自閉装置32からスライド扉3に作用する閉じ方向の付勢力よりも大きく設定すると、スライド扉3をアシスト開始位置から全開位置まで開き方向に自動的に移動させることができる。つまりユーザーは、スライド扉3を全閉位置から全開位置まで開き操作する際に、これを全開位置の手前の開きアシスト開始位置まで移動させるだけで済むようになり、ユーザーの利便性を高めることができる。
【0035】
開きアシスト開始位置から全開位置にかけてスライド扉3を減速するダンパー45を設けると、スライド扉3を全開位置まで緩やかに移動させることができる。これにより、スライド扉3が全開位置で開口2の縁に激しく衝突することで生じる不快な騒音や、ユーザーがスライド扉3と開口2の縁との間に指を詰めてしまう事故などを防止することができる。
【0036】
アシスト装置37が閉じアシスト開始位置から全閉位置にかけてスライド扉3を閉じ方向に付勢するものであると、当該位置のスライド扉3を自閉装置32とアシスト装置37の両方で閉じ付勢することができる。これにより、スライド扉3の全閉位置までの移動および移動後の全閉位置の維持を確実なものとして、貯蔵室9からの冷気漏れを確実に防止することができる。また、全閉位置へ向かうスライド扉3をダンパー45で減速すると、これを全閉位置まで緩やかに移動させることができる。これにより、スライド扉3が全閉位置で開口2の側縁に激しく衝突することで生じる不快な騒音や、ユーザーがスライド扉3と開口2の側縁との間に指を詰めてしまう事故などを防止することができる。
【0037】
自閉装置32はぜんまいユニット以外に、特許文献1のようにコイルバネを利用したものや、閉じ方向に緩やかに下り傾斜するガイドレール29などであってもよい。特に、開口2の左右寸法が比較的大きい場合は、定荷重バネ(コンストンバネ)を利用した自閉装置32を用いることが望ましく、これにより、全開位置やその近傍でスライド扉3が閉じ方向へ必要以上に強く付勢されることを防止することができる。本発明においてスライド扉3の形態は引き違い式に限られず、開口2を例えば1枚のスライド扉3で開閉する貯蔵庫にも適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
2 開口
3 スライド扉
9 貯蔵室
29 ガイドレール
30・31 ランナー
32 自閉装置
37 アシスト装置
38 装置本体
39・40 切換具
45 ダンパー
46 蓄力ばね
47・48 スライダー