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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080305
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20240606BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20240606BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240606BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20240606BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20240606BHJP
   H01M 4/66 20060101ALN20240606BHJP
   H01M 4/70 20060101ALN20240606BHJP
【FI】
H01M4/04 A
H01M4/1391
H01M4/139
H01M4/1393
H01M4/1395
H01M4/66 A
H01M4/70 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193387
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石塚 正浩
(72)【発明者】
【氏名】蛭川 智史
(72)【発明者】
【氏名】増田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 剛司
(72)【発明者】
【氏名】阿部 友邦
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS03
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050FA03
5H050GA03
5H050HA04
5H050HA15
(57)【要約】
【課題】所望の厚さの活物質層を成形しつつ、活物質層の過剰な延伸を抑制する。
【解決手段】本開示に基づく電極の製造方法は、基材10Lと、基材10Lの第1面11に形成された第1活物質層20Lと、基材10Lの第1面11とは反対側に位置する第2面12に形成された第2活物質層30Lとを有する積層体1Lであって、第1活物質層20Lは、積層体1Lの積層方向D1に直交する直交方向D2において、第2活物質層30Lの両端縁31より内側に位置するように形成された、積層体1Lを準備する工程S1と、積層体1Lを直交方向D2に沿って搬送しつつ積層方向D1にロールプレスする工程S2とを備える。ロールプレス工程S1において、第1活物質層20Lの直交方向D2における端領域21がプレスされる際に受ける圧力は、第1活物質層20Lの直交方向D2における中央領域22がプレスされる際に受ける圧力より小さい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の第1面に形成された第1活物質層と、前記基材の前記第1面とは反対側に位置する第2面に形成された第2活物質層とを有する積層体であって、前記第1活物質層は、前記積層体の積層方向に直交する直交方向において、前記第2活物質層の両端縁より内側に位置するように形成された、前記積層体を準備する工程と、
前記積層体を前記直交方向に沿って搬送しつつ前記積層方向にロールプレスする工程とを備え、
前記ロールプレス工程において、前記第1活物質層の前記直交方向における端領域がプレスされる際に受ける圧力は、前記第1活物質層の前記直交方向における中央領域がプレスされる際に受ける圧力より小さい、電極の製造方法。
【請求項2】
前記ロールプレス工程において、前記第1活物質層のプレス後の平均厚さが100μm以上400μm以下、かつ、前記第2活物質層のプレス後の平均厚さが100μm以上400μm以下となるように前記積層体をプレスする、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記ロールプレス工程においては、前記第2活物質層の前記直交方向における端部がプレスされる、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
前記第1活物質層および前記第2活物質層の極性が互いに異なる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2021-82504号公報(特許文献1)には、電極の製造方法が開示されている。上記電極の製造方法は、第1金属箔の第1面に、第1電極のための第1活物質層を形成する工程と、第1金属箔の金属とは異なる種類の金属を含む第2金属箔の第1面が、第1金属箔の第1面とは反対側の第2面と対向した状態で、第1活物質層をプレスする工程と、第1活物質層をプレスした後、第2金属箔の前記第1面とは反対側の第2面に、第1電極とは異なる極性を有する第2電極のための第2活物質層を形成する工程と、第2活物質層をプレスする工程と、を含む。第1金属箔の第1面において第1活物質層が形成される領域の面積が、第2金属箔の前記第2面において第2活物質層が形成される領域の面積よりも大きい。第2活物質層は、一対のプレスロールを備えるプレス装置によってプレスされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-82504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基材と、基材の両側にそれぞれ積層された一方の活物質層および他方の活物質層とを備える積層体をロールプレスすることで、所望の厚さの活物質層を有する電極を製造することが考えられる。このとき、積層方向に直交する直交方向における長さが、他方の活物質層より短い活物質層の端領域がプレスされる際に、当該端領域が集中的に荷重を受ける。このため、当該端領域が上記直交方向に過剰に延伸される場合がある。活物質層の端領域が過剰に延伸されると、活物質層の剥がれ、活物質層の割れ、および、電極全体の反りが発生するおそれがある。
【0005】
本開示は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、所望の厚さの活物質層を成形しつつ、活物質層の過剰な延伸を抑制できる電極の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に基づく電極の製造方法は、基材と、基材の第1面に形成された第1活物質層と、基材の第1面とは反対側に位置する第2面に形成された第2活物質層とを有する積層体であって、第1活物質層は、積層体の積層方向に直交する直交方向において、第2活物質層の両端縁より内側に位置するように形成された、積層体を準備する工程と、積層体を直交方向に沿って搬送しつつ積層方向にロールプレスする工程とを備える。ロールプレス工程において、第1活物質層の直交方向における端領域がプレスされる際に受ける圧力は、第1活物質層の直交方向における中央領域がプレスされる際に受ける圧力より小さい。
【0007】
上記製造方法においては、第1活物質層の上記中央領域が、所定の圧力でプレスされることで、所望の厚さに成形されるとともに、第1活物質層の上記端領域がこれより小さい圧力でプレスされることで、上記端領域が集中的な荷重を受けることが抑制される。よって、当該端領域においては、第1活物質層の過剰な延伸が抑制される。
【0008】
本開示に基づく電極の製造方法では、ロールプレス工程において、第1活物質層のプレス後の平均厚さが100μm以上400μm以下、かつ、第2活物質層のプレス後の平均厚さが100μm以上400μm以下となるように積層体をプレスすることが好ましい。
【0009】
上記製造方法では、各物質層の厚さが比較的厚くなるようにプレスされるため、上記製造方法で製造された電極を電池に組み込むことで、電池容量を大きくすることができる。なお、各物質層の厚さが上記の厚さとなるように積層体をロールプレスする場合、積層体の段階で、各活物質層の厚さが比較的厚い積層体が準備される。そうすると、仮にロールプレスでの圧力が一定である場合には上記の端領域においてより一層の集中荷重が生じるおそれがある。しかしながら、上記製造方法では、端領域がプレスされる際に受ける圧力が、中央領域がプレスされる際に受ける圧力より小さい。よって端領域での集中荷重は抑制され、第1活物質層の過剰な延伸は抑制される。
【0010】
本開示に基づく電極の製造方法では、ロールプレス工程においては、第2活物質層の直交方向における端部がプレスされることが好ましい。
【0011】
上記製造方法では、第2活物質層の端部がプレスされることで、第2活物質層と基材との密着性が向上する。なお、上記製造方法では、中央領域のプレス時に比較的大きい圧力をかけることができるため、一対のプレスロール間の隙間寸法が大きくなることを抑制できる。よって、第2活物質層の端部のプレスが容易となる。
【0012】
本開示に基づく電極の製造方法では、第1活物質層および第2活物質層の極性が互いに異なることが好ましい。
【0013】
上記製造方法により製造された電極は、バイポーラ電極するとすることができる。当該電極は端領域での過剰な延伸が抑制されることで活物質層と基材との密着性が向上しているため、当該電極が組み込まれたバイポーラ電池の電池容量および急速充電性をより向上できる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、所望の厚さの活物質層を成形しつつ、活物質層の過剰な延伸を抑制できる電極の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の一実施形態に係る電極の製造方法によって製造される電極を示す模式的な断面図である。
図2】本開示の一実施形態の電極の製造方法を示すフロー図である。
図3】積層体およびロールプレス装置を示す概略図である。
図4】制御部が記憶する、圧力設定値情報を示す概念図である。
図5】ロールプレス工程において積層体がプレスされる過程を示す概略図である。
図6図5に続いて、ロールプレス工程において積層体がプレスされる過程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の一実施形態に係る電極の製造方法について図を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0017】
[電極]
まず、本開示の一実施形態に係る電極の製造方法によって製造される電極について説明する。図1は、本開示の一実施形態に係る電極の製造方法によって製造される電極を示す模式的な断面図である。
【0018】
図1に示すように、本開示の一実施形態に係る電極の製造方法によって製造される電極1は、基材10と、第1活物質層20と、第2活物質層30とを備える。電極1は、具体的にはバイポーラ電極であって、たとえば、リチウムイオン二次電池の電極として用いることができる。このリチウムイオン二次電池は、全固体電池でもよいし、液系電池でもよい。このリチウムイオン二次電池は、たとえば、電気自動車(EV)などの電動車両の電源として用いることができる。
【0019】
基材10は、第1面11と、第2面12とを有する。第2面12は、第1面11とは反対側に位置する。基材10は、導電性を有する。基材10は、金属で構成されている。基材10の厚さは、たとえば5μm以上150μm以下である。
【0020】
基材10は、第1金属箔15と第2金属箔16とを有する。第1金属箔15が、第1面11を構成する。第2金属箔16が、第2面を構成する。第2金属箔16は、第1金属箔15との間に位置する接着層(図示せず)によって第1金属箔15と接合されている。
【0021】
本実施形態において、第1金属箔15は正極集電板であり、第2金属箔16が負極集電板である。ただし、第1金属箔15が負極集電板であり、第2金属箔16が正極集電板であってもよい。
【0022】
正極集電板は、アルミニウム(Al)、ステンレス鋼、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、白金(Pt)、ニオブ(Nb)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、および亜鉛(Zn)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。正極集電板は、たとえば、Al箔等の金属部材によって形成されている。
【0023】
負極集電板は、ステンレス、銅(Cu)、Ni、Fe、Ti、コバルト(Co)、およびZnからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。負極集電板は、たとえば、銅箔等の金属部材によって形成されている。
【0024】
第1活物質層20は、基材10の第1面11に形成されている。第2活物質層30は、基材10の第2面12に形成されている。
【0025】
本実施形態において、第1活物質層20は、正極活物質層であり、第2活物質層30は、負極活物質層である。ただし、第1活物質層20が負極活物質層であり、第2活物質層30が正極活物質層であってもよい。
【0026】
このように、本実施形態に係る電極の製造方法によって製造される電極1は、第1活物質層20および第2活物質層30の極性が互いに異なる。これにより、当該電極1は、バイポーラ電極とすることができる。また、当該電極1は、後述する製造方法により、第1活物質層20と基材10との密着性が向上している。よって、電池が当該電極1を有することで、電池の性能がより向上する。
【0027】
正極活物質層は、正極活物質と、導電材とを含む。正極活物質は、たとえば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等)、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム、およびリン酸鉄リチウムからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0028】
導電材は、たとえば、カーボンブラック(アセチレンブラック等)、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)およびグラフェンフレークからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0029】
正極活物質層の密度は、たとえば3.3g/cm程度である。このような密度とすることにより、電極1が組み込まれた電池の高容量化が可能となる。正極活物質層の密度は、負極活物質層の密度より大きい。
【0030】
負極活物質層は、負極活物質とバインダとを含む。負極活物質は、たとえば、黒鉛、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素等の炭素系負極活物質でもよいし、珪素(Si)、錫(Sn)等を含有する合金系負極活物質でもよい。
【0031】
バインダは、例えば、PVdF、およびフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0032】
負極活物質層の密度は、たとえば、1.2g/cm程度である。このような密度とすることにより、電極1が組み込まれた電池の急速充電性能を向上させることができる。
【0033】
電極1の積層方向D1に直交する直交方向D2において、第1活物質層20は、第2活物質層30の両端縁31より内側に位置するように形成されている。これにより、第1活物質層20が正極活物質層であり、第2活物質層30が負極活物質層である場合には、第2活物質層30側でのデンドライトの形成が抑制され、電極1が組み込まれた電池の性能低下が抑制される。なお、電極1の積層方向D1とは、第1活物質層20、基材10および第2活物質層30が互いに積層する方向である。
【0034】
第1活物質層20の平均厚さは、たとえば100μm以上400μm以下である。第2活物質層30の平均厚さは、たとえば100μm以上400μm以下である。
【0035】
[電極の製造方法]
次に、本開示の一実施形態に係る電極の製造方法について説明する。図2は、本開示の一実施形態の電極の製造方法を示すフロー図である。図2に示すよう、本開示の一実施形態に係る電極の製造方法は、積層体を準備する工程S1と、ロールプレス工程S2とを備える。
【0036】
図3は、積層体およびロールプレス装置を示す概略図である。図3に示すように、積層体を準備する工程S1において準備される積層体1Lは、基材10Lと、第1活物質層20Lと、第2活物質層30Lとを有している。以下、積層体1Lの構成のうち、電極1と同様の構成については、説明を繰り返さない。
【0037】
第1活物質層20Lは、1対の端領域21と、中央領域22とを有する。これらの領域は、後述するロールプレス工程S2におけるプレス圧の制御のために、区分される。
【0038】
1対の端領域21は、第1端領域21Aと、第2端領域21Bとからなる。1対の端領域21は、直交方向D2において第1活物質層20Lの両端に位置している。すなわち、第1端領域21Aは、直交方向D2において第1活物質層20Lの一方端に位置し、第2端領域21Bは、直交方向D2において第1活物質層20Lの他方端に位置する。なお、本明細書において、単に「端領域」という場合、「端領域」は第1端領域であってもよいし、第2端領域であってもよい。
【0039】
積層体1Lにおける第1活物質層20Lの平均厚さ(積層方向D1の平均長さ)は、たとえば200μm以上800μm以下である。第1端領域21A、第2端領域21Bおよび中央領域22のそれぞれの平均厚さは、たとえば200μm以上800μm以下である。
【0040】
一対の端領域21の直交方向D2におけるそれぞれの長さは特に限定されないが、少なくとも、端領域21の厚さ(積層方向D1長さ)より長い。
【0041】
積層体1Lにおける第2活物質層30Lは、1対の端部32と、中央部33とを有している。1対の端部32は、第1端部32Aと、第2端部32Bとからなる。1対の端部32は、直交方向D2において第2活物質層30Lの両端に位置しており、それぞれ端縁31を構成している。すなわち、第1端部32Aは、直交方向D2において第2活物質層30Lの一方端に位置し、第2端部32Bは、直交方向D2において第2活物質層30Lの他方端に位置する。
【0042】
基材10Lから見て、端部32の反対側に、第1活物質層20Lは位置していない。基材10Lから見て、中央部33の反対側には、第1活物質層20Lが位置している。なお、本明細書において、単に「端部」という場合、「端部」は第1端部であってもよいし、第2端部であってもよい。
【0043】
ロールプレス工程S2においては、積層体1Lを、直交方向D2に沿って搬送しつつ積層方向D1にロールプレスする。ロールプレス工程S2で用いるプレス機50について説明する。
【0044】
プレス機50は、第1ローラ51、第2ローラ52、圧力検出部53、圧力調節部54、侵入長さ検出部55、ローラ駆動部56、および、制御部57を備える。
【0045】
第1ローラ51および第2ローラ52は、互いに対向するように配置されている。第1ローラ51および第2ローラ52は、これらの間に積層体1Lを挟み込むことにより、積層体1Lを積層方向D1にプレスする。
【0046】
圧力検出部53は、第1ローラ51および第2ローラ52によって積層体1Lをプレスする圧力を検出する。制御部57は、圧力検出部53から入力された圧力値と、予め設定された所定の圧力設定値(詳細は後述する)とに基づき、圧力調節部54を制御することで、第1ローラ51および第2ローラ52によって積層体1Lをプレスする圧力を調節する。圧力調節部54は、たとえばサーボモータなどであり、ローラの対向方向における第1ローラ51の位置を制御することで、積層体1Lをプレスする圧力を調節する。
【0047】
なお、圧力調節部54による圧力調節方法は上記に限定されない。たとえば、圧力調節部54は、第2ローラ52を駆動させるローラ駆動部56であってもよい。この場合、制御部57が第2ローラ52の回転速度を制御することで、上記圧力を調節してもよい。
【0048】
侵入長さ検出部55は、直交方向D2において、積層体1Lが第1ローラ51と第2ローラ52との間に侵入した長さ(すなわち、積層体1Lのうち、プレス機50によってプレスされた部分およびプレスされている部分の、直交方向D2における合計長さ)を検出する。侵入長さ検出部55は、たとえば第2ローラ52に設けられたエンコーダなどである。なお、制御部57は、圧力検出部53によって所定の値以上の圧力が検出されたときに、積層体1Lが第1ローラ51と第2ローラ52との間へ侵入を開始したと判断可能に構成されてもよい。
【0049】
制御部57は、圧力調節部54を制御するための所定の圧力値を記憶するための記憶装置を有する。図4は、制御部が記憶する、圧力設定値情報を示す概念図である。図4に示すように、プレス圧の圧力値は、侵入長さ検出部55によって検出された積層体1Lの侵入長さに応じて変化するように設定されている。以下、ロールプレス工程S2において積層体1Lがプレスされる過程を示しつつ、当該圧力設定値について説明する。
【0050】
図5は、ロールプレス工程において積層体がプレスされる過程を示す概略図である。図5(A)から図5(C)においては、ロールプレス工程S2で積層体1Lがプレスされる過程が経時的に表されている。
【0051】
図5(A)には、積層体1Lが第1ローラ51と第2ローラ52との間に侵入を開始したときの状態が示されている。このとき、積層体1Lの侵入長さは0である(図4参照)。本実施形態においては、最初に第2活物質層30Lの第1端部32Aが、基材10Lとともに圧縮される。しかしながら、最初に、第1活物質層20Lの第1端領域21Aが圧縮され、その後、第2活物質層30Lの第1端部32Aが、基材10Lとともに圧縮されてもよい。
【0052】
図5(B)には、第2活物質層30Lと、第1活物質層20Lのうち第1端領域21Aのみがプレスされている状態が示されている。このとき、積層体1Lの侵入長さは、L1未満である(図4参照)。制御部57は、第1活物質層20Lのうち第1端領域21Aのみがプレスされている間(すなわち、積層体1Lの侵入長さがL1になるまでの間)、圧力調節部54によってプレス圧力を一定に制御する(図4参照)。本実施形態においては、この状態のときに、第2活物質層30Lの中央部33とともに、第1端部32Aもプレスされる。
【0053】
第1活物質層20Lのうち第1端領域21Aのみがプレスされると、第1端領域21Aに荷重が集中する。第1端領域21Aは、積層方向D1に圧縮されるとともに、直交方向D2に沿って、第1端領域21Aから見て中央領域22とは反対側に引き延ばされる。しかしながら、本実施形態においては、侵入長さがL1になるまでの間、プレス圧力が比較的小さくなるように制御される。このため、第1端領域21Aの厚さが過剰に薄くなることが抑制される。
【0054】
図5(C)には、第2活物質層30Lと、第1活物質層20Lのうち第1端領域21Aおよび中央領域22とが同時にプレスされている状態が示されている。このとき、積層体1Lの侵入長さは、L1からL2の間の長さである(図4参照)。制御部57は、第1活物質層20Lのうち、第1端領域21Aおよび中央領域22の両方がプレスされている間(すなわち、積層体1Lの侵入長さがL1からL2になるまでの間)、積層体1Lの侵入長さが長くなるにしたがって、徐々に圧力を増加させる(図4参照)。
【0055】
第1端領域21Aおよび中央領域22の両方がプレスされている間、積層体1Lの侵入長さが長くなるにしたがって、プレス圧力のうち第1端領域21Aが受ける荷重の比率は徐々に小さくなり、中央領域22が受ける荷重の比率が大きくなる。このため、侵入長さが長くなるにしたがって徐々に圧力を増加させることで、第1端領域21Aが直交方向D2に引き延ばされるのを抑制しつつ、中央領域22を所望の厚さとなるようにプレスすることができる。
【0056】
図6は、図5に続いて、ロールプレス工程において積層体がプレスされる過程を示す概略図である。図6(A)から図6(C)には、ロールプレス工程S2において、図5(C)に続いて積層体1Lがプレスされる過程が経時的に表されている。
【0057】
図6(A)には、第2活物質層30Lと、第1活物質層20Lのうち中央領域22のみとがプレスされている状態が示されている。このとき、積層体1Lの侵入長さは、L2からL3の間の長さである(図4参照)。制御部57は、第1活物質層20Lにおいて中央領域22のみがプレスされている間(すなわち、積層体1Lの侵入長さがL2からL3になるまでの間)、圧力調節部54によってプレス圧力を一定に制御する(図4参照)。
【0058】
上記のように積層体1Lの侵入長さが0からL3になるまでの間、プレス圧力が上記のように調節されるため、第1端領域21Aがプレスされる際に受ける圧力は、中央領域22がプレスされる際に受ける圧力より小さくなる。
【0059】
図6(B)には、第2活物質層30Lと、第1活物質層20Lのうち中央領域22および第2端領域21Bとが同時にプレスされている状態が示されている。このとき、積層体1Lの侵入長さは、L3からL4の間の長さである(図4参照)。制御部57は、第1活物質層20Lのうち中央領域22と第2端領域21Bの両方がプレスされている間(すなわち、侵入長さがL3からL4になるまでの間)、積層体1Lの侵入長さが長くなるにしたがって、徐々に圧力を減少させる(図4参照)。
【0060】
中央領域22および第2端領域21Bの両方がプレスされている間、積層体1Lの侵入長さが長くなるにしたがって、プレス圧力のうち中央領域22が受ける荷重の比率は徐々に小さくなり、第2端領域21Bが受ける荷重の比率が大きくなる。このため、侵入長さが長くなるにしたがって徐々に圧力を減少させることで、中央領域22を所望の厚さとなるようにプレスし続けつつ、第2端領域21Bが直交方向D2に引き延ばされることを抑制できる。
【0061】
図6(C)には、第2活物質層30Lと、第1活物質層20Lのうち第2端領域21Bのみとがプレスされている状態が示されている。このとき、積層体1Lの侵入長さは、L4を越えた長さである(図4参照)。制御部57は、第1活物質層20Lのうち、第2端領域のみがプレスされている間(すなわち、侵入長さがL4以上となっている間)、圧力調節部54によってプレス圧力を一定に制御する(図4参照)。
【0062】
積層体1Lの侵入長さがL2からL4以上となるまでの間、プレス圧力が上記のように調節されるため、第2端領域21Bがプレスされる際に受ける圧力は、中央領域22がプレスされる際に受ける圧力より小さくなる。本実施形態においては、この状態のときに、第2活物質層30Lの第2端部32Bもプレスされる。
【0063】
さらに積層体1Lの侵入長さが長くなり、第1活物質層20Lがプレスされなくなった後は、第2活物質層30Lの第2端部32Bのみが基材10Lとともにプレスされてもよいし、第1活物質層20Lのプレスが完了するとともに積層体1L全体のプレスが完了してもよい。以上の工程により、電極1が製造される。
【0064】
上述したように、ロールプレス工程S2において、端領域21がプレスされる際に受ける圧力は、中央領域22がプレスされる際に受ける圧力より小さい。これにより、中央領域22を所望の厚さに圧縮することができるとともに、第1活物質層20Lの端領域21はこれより小さい圧力でプレスされることで、集中的な荷重を受けることが抑制される。よって、当該端領域21においては、直交方向D2における過剰な延伸が抑制され、中央領域22の厚さと近い厚さとなるように第1活物質層20Lが圧縮される。
【0065】
また、ロールプレス工程においては、第1活物質層20Lのプレス後の平均厚さが100μm以上400μm以下、かつ、第2活物質層30Lのプレス後の平均厚さが100μm以上400μm以下となるように、積層体1Lがプレスされる。換言すると、得られる電極1の第1活物質層20の平均厚さが100μm以上400μm以下、第2活物質層30の平均厚さが100μm以上400μm以下となるように、積層体1Lがプレスされる。
【0066】
上記の構成により、上記製造方法で製造された電極1を電池に用いることで、電池容量を大きくすることができる。なお、第1活物質層20の厚さおよび第2活物質層30の厚さがそれぞれ上記の厚さとなるように積層体1Lをロールプレスする場合、積層体1Lの段階で、各活物質層の厚さも比較的厚い積層体1Lが準備される。そうすると、仮にロールプレスでの圧力が一定であると、上記の端領域21においてより一層の集中荷重が生じるおそれがある。しかしながら、上記製造方法では、端領域21がプレスされる際に受ける圧力が、中央領域22がプレスされる際に受ける圧力より小さい。よって端領域21での集中荷重は抑制され、端領域21での第1活物質層20Lの過剰な延伸が抑制される。
【0067】
また、ロールプレス工程S2においては、第2活物質層30Lの直交方向D2における端部32がプレスされる。第2活物質層30Lの端部32がプレスされることで、電極1においては第2活物質層30と基材10との密着性が向上し、第2活物質層30の剥がれが抑制される。なお、本実施形態に係る製造方法では、中央領域22のプレス時に比較的大きい圧力をかけることができるため、第1ローラ51と第2ローラ52との間の隙間寸法が大きくなることを抑制できる。よって、第2活物質層30Lの端部32のプレスが容易となる。
【0068】
上述した実施形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【0069】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0070】
1 電極、1L 積層体、10,10L 基材、11 第1面、12 第2面、15 第1金属箔、16 第2金属箔、20,20L 第1活物質層、21 端領域、21A 第1端領域、21B 第2端領域、22 中央領域、30,30L 第2活物質層、31 端縁、32 端部、32A 第1端部、32B 第2端部、33 中央部、50 プレス機、51 第1ローラ、52 第2ローラ、53 圧力検出部、54 圧力調節部、55 侵入長さ検出部、56 ローラ駆動部、57 制御部、D1 積層方向、D2 直交方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6