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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080310
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】自走式ロボット装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/013 20060101AFI20240606BHJP
   B25J 5/00 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
G21C17/013
B25J5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193394
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】中島 悟
(72)【発明者】
【氏名】荻野 翔矢
【テーマコード(参考)】
2G075
3C707
【Fターム(参考)】
2G075AA20
2G075BA20
2G075CA50
2G075DA20
2G075FA20
3C707CS08
3C707CY12
3C707HS27
3C707JU12
3C707KS10
3C707KT01
3C707KT04
3C707WA16
(57)【要約】
【課題】複数の操作方式によって操作可能な自走式ロボット装置の運用を円滑にする。
【解決手段】自走式ロボット装置の制御装置は、第1通信部と、第2通信部と、駆動制御部と、測定制御部と、第1操作モードと、第2操作モードとが含まれる操作モードを示す操作モード情報を記憶する記憶部と、自装置の位置、駆動部による自装置の走行状態、第1通信部の通信状態のうち、少なくとも1つに基づいて、記憶部に記憶されている操作モードを更新する操作モード更新部と、記憶部に記憶された操作モード情報が示す操作モードが、第1操作モードの場合には、第1通信部を用いた無線通信による外部装置からの指示に基づいて駆動制御部及び測定制御部に制御指示を与え、第2操作モードの場合には、操作パネルを介した指示に基づいて駆動制御部及び測定制御部に制御指示を与える制御指示部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置と、制御装置と、バッテリと、操作パネルとが配置される台座部と、前記台座部の対角線に沿った回転軸によってオムニホイールを駆動する駆動部と、
を備え、
前記制御装置は、
自装置に対して動作指示を行う外部装置に対する通信を行う第1通信部と、
他の自走式ロボット装置に対する通信を行う第2通信部と、
前記駆動部を制御する駆動制御部と、
前記測定装置を制御する測定制御部と、
前記第1通信部による通信によって操作される第1操作モードと、前記操作パネルによって操作される第2操作モードとが含まれる操作モードを示す操作モード情報を記憶する記憶部と、
自装置の位置、前記駆動部による自装置の走行状態、前記第1通信部の通信状態のうち、少なくとも1つに基づいて、前記記憶部に記憶されている前記操作モード情報を更新する操作モード更新部と、
前記記憶部に記憶された前記操作モード情報が示す操作モードが、前記第1操作モードの場合には、前記第1通信部を用いた無線通信による前記外部装置からの指示に基づいて前記駆動制御部及び前記測定制御部に制御指示を与え、前記第2操作モードの場合には、前記操作パネルを介した指示に基づいて前記駆動制御部及び前記測定制御部に制御指示を与える制御指示部と、
を備える自走式ロボット装置。
【請求項2】
前記操作モード更新部は、自装置の位置が、前記第1通信部の通信相手である外部装置の位置から所定距離以上の場合に、操作モードを前記第1操作モードにする
請求項1に記載の自走式ロボット装置。
【請求項3】
前記操作モード更新部は、自装置の位置が、自装置の移動開始位置にある場合に、操作モードを前記第2操作モードにする
請求項1に記載の自走式ロボット装置。
【請求項4】
前記操作モード更新部は、前記駆動部による自装置の走行ができなくなった場合に、操作モードを前記第2操作モードにする
請求項1に記載の自走式ロボット装置。
【請求項5】
操作モードには、前記第2通信部によって他の自走式ロボット装置から受信した指示に基づいて操作される第3操作モードが含まれ、
前記操作モード更新部は、前記第1通信部による前記外部装置からの受信強度が所定値以下の場合に、操作モードを前記第3操作モードにする
請求項1に記載の自走式ロボット装置。
【請求項6】
測定装置と、制御装置と、バッテリと、操作パネルとが配置される台座部と、
前記台座部の対角線に沿った回転軸によってオムニホイールを駆動する駆動部と、
を備え、
前記制御装置は、
外部装置に対する通信を行う第1通信部と、
他の自走式ロボット装置に対する通信を行う第2通信部と、
前記駆動部を制御する駆動制御部と、
前記測定装置を制御する測定制御部と、
無線操作モードとパネル操作モードとを含む操作モードを示す操作モード情報を記憶する記憶部と、
を備える自走式ロボット装置のコンピュータに、
自装置の位置、前記駆動部による自装置の走行状態、前記第1通信部の通信状態のうち、少なくとも1つに基づいて、前記記憶部に記憶されている前記操作モード情報を更新することと、
前記記憶部に記憶された前記操作モード情報が示す操作モードが、前記無線操作モードの場合には、前記第1通信部を用いた無線通信による前記外部装置からの指示に基づいて前記駆動制御部及び前記測定制御部に制御指示を与えることと、
前記記憶部に記憶された前記操作モード情報が示す操作モードが、前記パネル操作モードの場合には、前記操作パネルを介した指示に基づいて前記駆動制御部及び前記測定制御部に制御指示を与えることと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式ロボット装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電所等の高線量区域において、作業員に代わって作業を行う自走式ロボット装置がある。特に、原子力発電所において事故が発生した際、放射性物質に汚染された環境で作業員に代わって撮影又は物理量の計測等の作業をする自走式ロボット装置が求められる。
【0003】
放射性物質汚染環境で作業する自走式ロボット装置として、特許文献1に記載のある遠隔制御作業車がある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-211343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような自走式ロボット装置は、例えば、放射性物質に汚染された原子力発電所の建屋の通路内など、作業員が無線通信で操作する場所から相当に離れた場所での作業を行うことも求められる。このように作業員が操作する場所から離れた場所での作業を行う場合には、無線通信の電波強度が低下して操作できなくなることを防ぐため、最前線で作業する自走式ロボット装置に加えて、操作のための無線通信を中継するための自走式ロボット装置が配置されることが望ましい。
また、自走式ロボット装置は、無線通信による操作に加え、自走式ロボット装置本体に備え付けられた操作パネルによる操作を受け付けるように構成されていると扱いやすい。このように複数の操作方式がある場合、自走式ロボット装置の状態や置かれた環境によっては、無線通信による操作と、操作パネルによる操作とのいずれかを優先させるべき状況があり得る。
しかしながら、従来技術においては、これら複数の操作方式のいずれを優先するかということまでは考慮されておらず、自走式ロボット装置の運用の円滑化が困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、複数の操作方式によって操作可能な自走式ロボット装置の運用を円滑にすることができる自走式ロボット装置およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、測定装置と、制御装置と、バッテリと、操作パネルとが配置される台座部と、前記台座部の対角線に沿った回転軸によってオムニホイールを駆動する駆動部と、を備え、前記制御装置は、自装置に対して動作指示を行う外部装置に対する通信を行う第1通信部と、他の自走式ロボット装置に対する通信を行う第2通信部と、前記駆動部を制御する駆動制御部と、前記測定装置を制御する測定制御部と、前記第1通信部による通信によって操作される第1操作モードと、前記操作パネルによって操作される第2操作モードとが含まれる操作モードを示す操作モード情報を記憶する記憶部と、自装置の位置、前記駆動部による自装置の走行状態、前記第1通信部の通信状態のうち、少なくとも1つに基づいて、前記記憶部に記憶されている前記操作モード情報を更新する操作モード更新部と、前記記憶部に記憶された前記操作モード情報が示す操作モードが、前記第1操作モードの場合には、前記第1通信部を用いた無線通信による前記外部装置からの指示に基づいて前記駆動制御部及び前記測定制御部に制御指示を与え、前記第2操作モードの場合には、前記操作パネルを介した指示に基づいて前記駆動制御部及び前記測定制御部に制御指示を与える制御指示部と、を備える自走式ロボット装置である。
【0008】
また、本発明の一実施形態は、上述の自走式ロボット装置において、前記操作モード更新部は、自装置の位置が、前記第1通信部の通信相手である外部装置の位置から所定距離以上の場合に、操作モードを前記第1操作モードにする。
【0009】
また、本発明の一実施形態は、上述の自走式ロボット装置において、前記操作モード更新部は、自装置の位置が、自装置の移動開始位置にある場合に、操作モードを前記第2操作モードにする。
【0010】
また、本発明の一実施形態は、上述の自走式ロボット装置において、前記操作モード更新部は、前記駆動部による自装置の走行ができなくなった場合に、操作モードを前記第2操作モードにする。
【0011】
また、本発明の一実施形態は、上述の自走式ロボット装置において、操作モードには、前記第2通信部によって他の自走式ロボット装置から受信した指示に基づいて操作される第3操作モードが含まれ、前記操作モード更新部は、前記第1通信部による前記外部装置からの受信強度が所定値以下の場合に、操作モードを前記第3操作モードにする。
【0012】
また、本発明の一実施形態は、測定装置と、制御装置と、バッテリと、操作パネルとが配置される台座部と、前記台座部の対角線に沿った回転軸によってオムニホイールを駆動する駆動部と、を備え、前記制御装置は、外部装置に対する通信を行う第1通信部と、他の自走式ロボット装置に対する通信を行う第2通信部と、前記駆動部を制御する駆動制御部と、前記測定装置を制御する測定制御部と、無線操作モードとパネル操作モードとを含む操作モードを示す操作モード情報を記憶する記憶部と、を備える自走式ロボット装置のコンピュータに、自装置の位置、前記駆動部による自装置の走行状態、前記第1通信部の通信状態のうち、少なくとも1つに基づいて、前記記憶部に記憶されている前記操作モード情報を更新することと、前記記憶部に記憶された前記操作モード情報が示す操作モードが、前記無線操作モードの場合には、前記第1通信部を用いた無線通信による前記外部装置からの指示に基づいて前記駆動制御部及び前記測定制御部に制御指示を与えることと、前記記憶部に記憶された前記操作モード情報が示す操作モードが、前記パネル操作モードの場合には、前記操作パネルを介した指示に基づいて前記駆動制御部及び前記測定制御部に制御指示を与えることと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、複数の操作方式によって操作可能な自走式ロボット装置の運用を円滑にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の自走式ロボット装置の斜視図である。
図2】自走式ロボット装置の分解斜視図である。
図3】本実施形態の操作パネル90の操作画面の構成の一例を示す図である。
図4】本実施形態の自走式ロボットシステム1の一例を示す図である。
図5】本実施形態の制御装置30の機能構成の一例を示す図である。
図6】本実施形態の通信設定情報321の一例を示す図である。
図7】本実施形態の操作モード情報322の一例を示す図である。
図8】本実施形態の操作モード情報322の更新後の一例を示す図である。
図9】本実施形態の無線操作モードにおける操作パネル90の操作画面の構成の一例を示す図である。
図10】本実施形態の制御部310の動作の流れの一例を示す図である。
図11】本実施形態の自走式ロボット装置の配置の第1の例を示す図である。
図12】本実施形態の自走式ロボット装置の配置の第2の例を示す図である。
図13】本実施形態の自走式ロボット装置の配置の第3の例を示す図である。
図14】本実施形態の操作モード情報322の更新後の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[自走式ロボット装置100の構成]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態の自走式ロボット装置100の斜視図である。
図2は、自走式ロボット装置100の分解斜視図である。
自走式ロボット装置100は、台座部10と、接続機構10aと、測定装置20と、制御装置30と、メインバッテリ40と、モータ用バッテリ50と、下部構造体60と、操作パネル90とを備える。
【0016】
本実施形態では、図1に示すように、自走式ロボット装置100における鉛直方向を「上下方向V」、鉛直上向きを上下方向Vにおける「上方UP」、鉛直下向きを上下方向Vにおける「下方LO」と定義する。また、上下方向Vと垂直な方向、かつ、自走式ロボット装置100が主に走行する方向を「前後方向D」、測定装置20が配置された向きを前後方向Dにおける「前方FR」、反対向きを前後方向Dにおける「後方RR」と定義する。また、上下方向Vおよび前後方向Dと垂直な方向を「水平方向H」、自走式ロボット装置100を正面(前方FR)から見たときの左向きを水平方向Hにおける「左方LT」、反対向きを水平方向Hにおける「右方RT」と定義する。
【0017】
台座部10は、上方UPから見たときに円形状をした平板である。台座部10として、例えば、樹脂で形成された平板、木材の平板、アルミニウム又はステンレス等の金属系の平板、それらを組み合わせた複合材の平板等を採用できる。台座部10は、表面に付着した汚染物質を容易に除去できるアクリル樹脂又はポリカーボネート樹脂等によって形成されるのが望ましい。また、台座部10の上面10tの形状は円形状に限定されず、八角形等の多角形でもよい。
【0018】
測定装置20は、台座部10の上面10tに設けられている。また、測定装置20は、台座部10の前方FRの外縁近傍に配置されている。測定装置20は、周囲の情報を検出可能であり、例えば、USB(Universal Serial Bus)カメラ、3次元レーザスキャナ又は線量計等の計測装置(計測ユニット)である。測定装置20として、複数の計測装置を組み合わせて配置してもよい。自走式ロボット装置100は、測定装置20によって周囲の動画像情報、点群情報又は線量等を検出することができる。
【0019】
測定装置20は、接続機構10aを介して台座部10に着脱可能に接続されている。図2に示すように、本実施形態において、接続機構10aは、三角形の平板状をしており、三角形の各頂点に厚さ方向(上下方向V)に貫通した貫通孔を有する。接続機構10aは、樹脂又は金属等の任意の材質で形成されている。
【0020】
制御装置30は、台座部10の上面10tに設けられている。また、制御装置30は、台座部10の後方RRの外縁近傍に配置されている。制御装置30は、測定装置20に接続されており、測定装置20の動作を制御可能である。
【0021】
制御装置30は、接続部材を介さないスナップフィット等の構造により台座部10へ接続されるのが望ましい。スナップフィット等の接続部材を介さない着脱構造を用いることで、制御装置30を台座部10から取り外す際に工具を使用する必要が無いため、自走式ロボット装置100に付着した汚染物質が工具へ付着する虞が無い。
【0022】
操作パネル90は、液晶ディスプレイ等の表示装置と、液晶ディスプレイ面への操作を検出する検出装置とが組み合わされた、いわゆるタッチパネルディスプレイである。
【0023】
図3は、本実施形態の操作パネル90の操作画面の構成の一例を示す図である。操作パネル90には、走行操作ボタン91、測定操作ボタン92、通信設定ボタン93などの操作用ボタン画像が表示される。走行操作ボタン91は、各方向への移動と停止を操作するボタン画像である。測定操作ボタン92は、測定装置20による測定の開始および終了を操作するボタン画像である。通信設定ボタン93は、自走式ロボット装置100と外部の装置との間の通信設定のメニューを表示するためのボタン画像である。
【0024】
なお、図示した操作用ボタン画像は一例であって、一部の操作用ボタン画像がなくてもよく、図示した以外の操作用ボタン画像があってもよい。
また、操作パネル90がタッチパネルディスプレイであることは一例であって、例えば、機械式スイッチによって操作者の操作を受け付けるものであってもよい。
【0025】
操作用ボタン画像には、操作パネル90によって操作可能な状態の場合に表示されるものと、操作パネル90によって操作不可能な場合に表示されるものとがある。同図の一例では、操作可能な状態の場合に表示される走行操作ボタン91A、測定操作ボタン92A、通信設定ボタン93Aの一例を示す。
自走式ロボット装置100は、外部の装置(例えば、遠隔操作用コンピュータ装置。以下の説明において、遠隔操作装置200とも記載する。)から無線通信によって動作指示を受信することで動作することもできる。自走式ロボット装置100は、操作パネル90を備えることで、遠隔操作装置200がなくても、制御装置30へ動作指示を直接入力することができる。
【0026】
メインバッテリ40は、台座部10の上面10tに設けられている。また、メインバッテリ40は、台座部10の右方RTの外縁近傍に配置されている。メインバッテリ40は、測定装置20および制御装置30と接続されており、測定装置20および制御装置30へ給電する電源装置である。メインバッテリ40は、制御装置30によって制御されてもよく、例えば、メインバッテリ40は、制御装置30からの指令により、測定装置20への給電を行う。
メインバッテリ40は、台座部10に着脱可能に接続されている。メインバッテリ40を台座部10に着脱可能に接続することで、メインバッテリ40が汚染物質によって汚染された際、メインバッテリ40のみを台座部10から取り外して効率的に汚染物質を除去できる。
【0027】
モータ用バッテリ50は、台座部10の上面10tに設けられている。また、モータ用バッテリ50は、台座部10の左方RTの外縁近傍に配置されている。モータ用バッテリ50は、後述する駆動部61と接続されており、駆動部61へ給電する電源装置である。モータ用バッテリ50は、制御装置30によって制御されてもよく、例えば、モータ用バッテリ50は、制御装置30からの指令により、駆動部61への給電を行う。
また、モータ用バッテリ50は、台座部10に着脱可能に接続されている。モータ用バッテリ50を台座部10に着脱可能に接続することで、モータ用バッテリ50が汚染物質によって汚染された際、モータ用バッテリ50のみを台座部10から取り外して効率的に汚染物質を除去できる。
【0028】
また、制御装置30、メインバッテリ40およびモータ用バッテリ50は、測定装置20が有する共通接続インターフェース20aを有してもよい。制御装置30、メインバッテリ40およびモータ用バッテリ50が測定装置20と同様に共通接続インターフェース20aを有することで、測定装置20、制御装置30、メインバッテリ40およびモータ用バッテリ50と、台座部10とを共通の接続方法で接続できる。その結果、台座部10の上面10tにおいて、測定装置20、制御装置30、メインバッテリ40およびモータ用バッテリ50の位置を入れ替えて配置することができる。
【0029】
下部構造体60は、台座部10の下面10bに設けられ、台座部10に対して着脱可能に接続されている。例えば、下部構造体60が有する貫通孔と、台座部10が有する貫通孔とを六角穴付きボルト等の接続部材で締結して接続されている。下部構造体60を台座部10に着脱可能に接続することで、下部構造体60が汚染物質によって汚染された際、下部構造体60のみを台座部10から取り外して効率的に汚染物質を除去できる。特に、放射性物質汚染環境で走行する自走式ロボット装置100において、床面(地面)に近い位置に配置されている下部構造体60は汚染物質が付着しやすい。そのため、台座部10に対して、下部構造体60を着脱可能に接続することで、自走式ロボット装置100における汚染物質の除去をより効率的に行うことができる。
【0030】
下部構造体60は、駆動部61と、車輪部62と、リブ部63とを備える。駆動部61は、回転軸Rを有するモータ61aと、モータ固定部61bとを備える。
【0031】
モータ61a(不図示)は、公知の電動モータである。モータ61aは、制御装置30およびモータ用バッテリ50に接続されている。モータ61aは、モータ用バッテリ50によって給電され、制御装置30によって動作を制御される。
【0032】
モータ固定部61b(不図示)は、開口を回転軸R方向に向けた略U字形状の平板である。モータ固定部61bにおいて、略U字形状の開口側にモータ61aが接続部材を介して着脱可能に接続されている。また、モータ固定部61bの上側UPの面は、台座部10と接続部材を介して着脱可能に接続されている。すなわち、駆動部61は、台座部10と着脱可能に接続されている。
【0033】
駆動部61において、モータ61aおよびモータ固定部61bは、自走式ロボット装置100から独立して取り外すことができるため、モータ61a又はモータ固定部61bが汚染物質によって汚染された際、汚染された部品のみを取り外して効率的に汚染物質を除去できる。
【0034】
車輪部62は、駆動部61のモータ61aに着脱可能に接続され、モータ61aが有する回転軸Rを回転中心として回転可能である。本実施形態において、下部構造体60は、1つの駆動部61と、1つの車輪部62とを1組として、4組の駆動部61および車輪部62を有する。
【0035】
駆動部61における回転軸Rは、互いに交差する第一回転軸R1と、第二回転軸R2とを有する。また、下部構造体60は、台座部10を挟んで第一回転軸R1の両端に接続された一対の駆動部61および車輪部62と、台座部10を挟んで第二回転軸R2の両端に接続された一対の駆動部61および車輪部62とを有する。
【0036】
車輪部62は、接地面62sを有した公知のオムニホイールである。オムニホイールは、台座部10の対角線に沿った回転軸(第一回転軸R1、第二回転軸R2)によって駆動される。自走式ロボット装置100において、制御装置30およびモータ用バッテリ50と接続された駆動部61のモータ61aが、制御装置30によって制御されて駆動する。モータ61aが駆動すると、モータ61aが有する回転軸Rを回転中心として、車輪部62が回転する。車輪部62は接地面62sを有するため、車輪部62がモータ61aによって回転されると、車輪部62の回転によって自走式ロボット装置100が床面(地面)に対して移動する。
【0037】
また、車輪部62は、第一回転軸R1および第二回転軸R2の両端に接続された4つのオムニホイールである。モータ61aを制御装置30によって制御し、オムニホイール(車輪部62)を任意の回転方向および回転速度等で回転させることで、自走式ロボット装置100は、任意の方向へ回転および移動することができる。そのため、自走式ロボット装置100は、原子力発電所内等の狭い空間でも走行して作業できる。
【0038】
また、車輪部62は、モータ61aと着脱可能に接続されているため、車輪部62が汚染物質によって汚染された際、車輪部62のみを取り外して効率的に汚染物質を除去できる。
【0039】
[自走式ロボット装置100の制御]
次に、自走式ロボット装置100の制御について説明する。
【0040】
図4は、本実施形態の自走式ロボットシステム1の一例を示す図である。
本実施形態において、自走式ロボットシステム1は、複数の自走式ロボット装置100と、遠隔操作装置200とによって構成される。同図に示す一例では、自走式ロボットシステム1は、自走式ロボット装置100-1と、自走式ロボット装置100-2との2台の自走式ロボット装置100を含む。
【0041】
遠隔操作装置200は、自走式ロボット装置100との間で無線通信(以下、単に通信ともいう。)を行う。遠隔操作装置200は、自走式ロボット装置100から情報を取得する情報取得装置として構成されていてもよく、自走式ロボット装置100を操縦する指示装置として構成されていてもよく、それら両方を兼ね備えた装置であってもよい。遠隔操作装置200は、外部装置の一例である。
【0042】
なお、自走式ロボット装置100は、遠隔操作装置200によって常時、動作指示を与えて動作する他律型装置として構成されていてもよく、遠隔操作装置200が与えた目標動作に基づいて自装置の判断で所定の動作をする自律型装置として構成されていてもよい。自律型装置として構成される場合、例えば、遠隔操作装置200は、自走式ロボット装置100が進むべき目標のエリアを動作指示として与える。この場合、自走式ロボット装置100は、カメラや各種のセンサによる測定結果に基づいて壁や障害物を避けつつ、自装置の位置を認識して、目標のエリアに向けて自律移動する。
【0043】
同図に示す一例において、エリア2-1からエリア2-nは、例えば、原子力発電所の建屋の通路である。自走式ロボット装置100-1は、エリア2-1からエリア2-n(nは自然数)の範囲を移動する。この一例では、自走式ロボット装置100-1は、エリア2-2にあり、自走式ロボット装置100-2は、エリア2-1にあり、遠隔操作装置200は、エリア2-1にある。
この一例において、自走式ロボット装置100は、エリア2-2からさらに奥方向のエリアに向けて移動しながら、測定装置20が測定した結果を保存し、あるいは、遠隔操作装置200に向けて送信する。
【0044】
本実施形態の自走式ロボットシステム1においては、複数の自走式ロボット装置100のうち、遠隔操作装置200から距離(あるいは道のり。以下の説明において同じ。)が近い自走式ロボット装置100が、遠隔操作装置200から距離が遠い自走式ロボット装置100と、遠隔操作装置200との間の通信を中継する。
複数の自走式ロボット装置100のうち、遠隔操作装置200から距離が遠い自走式ロボット装置100を先行機とも称し、遠隔操作装置200から距離が近い自走式ロボット装置100を中継機とも称する。
同図に示す一例の場合、自走式ロボット装置100-1が先行機であり、自走式ロボット装置100-2が中継機である。
【0045】
一例として、遠隔操作装置200が情報取得機能を備えている場合、先行機である自走式ロボット装置100-1が取得した情報は、中継機である自走式ロボット装置100-2を介して、遠隔操作装置200に伝達される。
なお、この場合において、自走式ロボット装置100-1が取得した情報には、中継機である自走式ロボット装置100-2に対する情報と、遠隔操作装置200に対する情報とが含まれていてもよい。この場合、中継機である自走式ロボット装置100-2に対する情報は、自走式ロボット装置100-1から自走式ロボット装置100-2に対して直接的に(すなわち中継されずに)伝達される。遠隔操作装置200に対する情報は、自走式ロボット装置100-2が中継することにより、自走式ロボット装置100-1から遠隔操作装置200に対して間接的に(すなわち中継されて)伝達される。
【0046】
遠隔操作装置200からの指示情報は、中継機である自走式ロボット装置100-2を介して、先行機である自走式ロボット装置100-1に伝達される。
なお、遠隔操作装置200からの指示情報には、中継機である自走式ロボット装置100-2に対する情報と、先行機である自走式ロボット装置100-1に対する情報とが含まれていてもよい。この場合、中継機である自走式ロボット装置100-2に対する情報は、遠隔操作装置200から自走式ロボット装置100-2に対して直接的に(すなわち中継されずに)伝達される。先行機である自走式ロボット装置100-1に対する情報は、自走式ロボット装置100-2が中継することにより、遠隔操作装置200から自走式ロボット装置100-1に対して間接的に(すなわち中継されて)伝達される。
【0047】
なお、上述したように、遠隔操作装置200は、情報取得装置と指示装置とを兼ね備えた装置であってもよい。この場合、自走式ロボットシステム1において、上述の2つの例に示した通信方式が組み合わされていてもよい。
【0048】
以下の説明では、自走式ロボット装置100が先行機として動作する場合には、通信モードが「先行機モード」であると称する。また、自走式ロボット装置100が中継機として動作する場合には、通信モードが「中継機モード」であると称する。
自走式ロボット装置100は、状況に応じて通信モードを「先行機モード」または「中継機モード」のいずれかに切り替える。
【0049】
ここで、自走式ロボット装置100の状態によっては、上述した操作パネル90に対して操作者が直接操作することが適する場合と、遠隔操作装置200によって遠隔操作することが適する場合とがある。
例えば、自走式ロボット装置100が操作者の手が届く位置にある場合、遠隔操作装置200によって遠隔操作するよりも、操作パネル90を直接操作したほうが、操作しやすい場合がある。
また、例えば、自走式ロボット装置100が操作者から離れた位置にある場合、遠隔操作することになる。この場合において、操作パネル90による直接操作を有効にしておくと、自走式ロボット装置100に触れることができる位置に、操作者以外の第三者がいると、第三者によって操作パネル90を勝手に操作されてしまう場合もあり得る。
また、例えば、遠隔操縦されている自走式ロボット装置100が障害物などによって走行できなくなった場合に、自走式ロボット装置100の近くにいる第三者が障害物を取り除いて自走式ロボット装置100の動作を直接操作で復旧させることができれば便利である場合もある。
また、例えば、複数の自走式ロボット装置100を使用している場合に、自走式ロボット装置100どうしの相対的な位置関係によっては、操作方式を互いに入れ替えることができれば便利である場合もある。
【0050】
以下の説明において、操作者による自走式ロボット装置100の操作方式の種類のことを操作モードとも称する。操作モードには、例えば、パネル操作モードと、無線操作モードとがある。以下、この操作モードに基づいて自走式ロボット装置100を制御する制御装置30の機能構成について説明する。
【0051】
[制御装置30の機能構成]
図5は、本実施形態の制御装置30の機能構成の一例を示す図である。
制御装置30は、例えば、プロセッサ及び記憶装置等を備えており、プログラム実行可能な装置(コンピュータ)である。制御装置30は、制御部310と、記憶部320とを備える。
【0052】
制御装置30の各機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit;中央処理装置)のような1つ以上のプロセッサが記憶部320に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。ただし、これら機能の全部又は一部は、LSI(Large Scale Integration;大規模集積回路)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、PLD(Programmable Logic Device)等のハードウェア(例えば回路部;circuity)により実現されてもよい。また、上記機能の全部又は一部は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせで実現されてもよい。記憶部320は、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory;読み出し専用メモリ)、又はRAM(Random Access Memory;読み書き可能なメモリ)等により実現される。
【0053】
記憶部320には、制御部310の各機能が動作するためのプログラムやデータが記憶されている。一例として、記憶部320には、通信設定情報321と操作モード情報322とが記憶されている。通信設定情報321とは、自走式ロボット装置100が先行機として動作する場合の通信先と、中継機として動作する場合の通信先とを示す情報である。操作モード情報322とは、操作モードを示す情報である。
【0054】
[通信モード及び通信設定情報321について]
図6は、本実施形態の通信設定情報321の一例を示す図である。同図(A)は、自走式ロボット装置100-1の記憶部320に記憶されている通信設定情報321を示す。同図(B)は、自走式ロボット装置100-2の記憶部320に記憶されている通信設定情報321を示す。
【0055】
通信設定情報321において、「通信先」とは、自走式ロボット装置100が無線通信による情報の送信、受信あるいは送受信を行う相手装置の通信IDを示す。
自走式ロボット装置100及び遠隔操作装置200には、それぞれ通信IDが予め付されている。同図の一例において、遠隔操作装置200の通信IDはID0、自走式ロボット装置100-1の通信IDはID1、自走式ロボット装置100-2の通信IDはID2である。
【0056】
なお、以下の説明では、無線通信による情報の送信、受信あるいは双方向の送受信のことを、単に送受信あるいは通信とも記載する。すなわち、送受信あるいは通信と記載する場合、情報が装置間で一方向に授受されてもよく、双方向に授受されてもよい。
例えば、「通信先」が「ID0、ID2」である場合には、当該自走式ロボット装置100は、「ID0」(すなわち、遠隔操作装置200)との間、および「ID2」(すなわち、自走式ロボット装置100-2)との間において情報の送受信を行う。
【0057】
通信設定情報321において、「中継対象」とは、自走式ロボット装置100が無線通信による情報の中継を行う対象である装置の通信IDを示す。情報の中継とは、無線通信によって第1の装置から受信した情報をそのまま、あるいは加工して、第2の装置に送信することをいう。
【0058】
同図(A)に示す一例では、自走式ロボット装置100-1(通信ID:ID1)について、通信モードが「先行機モード」である場合には、通信先が「ID2」(すなわち、自走式ロボット装置100-2)であり、中継対象は「なし」である。また、通信モードが「中継機モード」である場合には、通信先が「ID0」(すなわち、遠隔操作装置200)および「ID2」(すなわち、自走式ロボット装置100-2)であり、中継対象は「ID2」(すなわち、自走式ロボット装置100-2)である。
同図(B)に示す一例では、自走式ロボット装置100-2(通信ID:ID2)について、通信モードが「先行機モード」である場合には、通信先が「ID1」(すなわち、自走式ロボット装置100-1)であり、中継対象は「なし」である。また、通信モードが「中継機モード」である場合には、通信先が「ID0」(すなわち、遠隔操作装置200)および「ID1」(すなわち、自走式ロボット装置100-1)であり、中継対象は「ID1」(すなわち、自走式ロボット装置100-1)である。
【0059】
通信設定情報321において、「通信モード選択」とは、先行機モードと中継機モードとのいずれが選択されているかを示す情報である。同図に示す一例の場合、自走式ロボット装置100-1の通信モードは「先行機モード」が選択され、自走式ロボット装置100-2の通信モードは「中継機モード」が選択されている。
【0060】
(1)中継機モードの場合には、自走式ロボット装置100は、遠隔操作装置200と他の自走式ロボット装置100との間の通信を中継する。
(2)先行機モードの場合には、遠隔操作装置200との間で通信すべき情報を、他の自走式ロボット装置100との間で通信する。
【0061】
図4に示した一例の場合、自走式ロボット装置100-1は、「先行機モード」が選択されている。自走式ロボット装置100-2は、「中継機モード」が選択されている。
この場合、自走式ロボット装置100-1は、遠隔操作装置200との間で通信すべき情報を、他の自走式ロボット装置100(つまり、自走式ロボット装置100-2)との間で通信する。
また、自走式ロボット装置100-2は、遠隔操作装置200と他の自走式ロボット装置100(つまり、自走式ロボット装置100-1)との間の通信を中継する。
【0062】
[操作モード及び操作モード情報322について]
図7は、本実施形態の操作モード情報322の一例を示す図である。同図(A)は、自走式ロボット装置100-1の記憶部320に記憶されている操作モード情報322を示す。同図(B)は、自走式ロボット装置100-2の記憶部320に記憶されている操作モード情報322を示す。
【0063】
操作モード情報322は、自走式ロボット装置100の操作モードを示す情報である。自走式ロボット装置100は、操作モード情報322によって示される操作モードによって操作される。
操作モードには、第1通信部311による通信によって操作される無線操作モード(第1操作モード)と、操作パネル90によって操作されるパネル操作モード(第2操作モード)とが含まれる。記憶部320は、操作モードを示す操作モード情報322を記憶する。
【0064】
同図(A)の一例では、自走式ロボット装置100-1は、無線操作モードに設定されている。同図(B)の一例では、自走式ロボット装置100-2は、パネル操作モードに設定されている。
操作モード情報は、制御部310によって設定の更新が可能である。
【0065】
[制御部310の機能構成]
図5に戻り、制御部310は、第1通信部311と、第2通信部312と、操作モード更新部313と、通信状態判定部314と、測定制御部315と、駆動制御部316と、制御指示部317を、その機能部として備える。
【0066】
制御指示部317は、制御部310が備える各機能部を統合制御する。
第1通信部311は、自装置に対して動作指示を行う遠隔操作装置200(外部装置)に対する通信を行う。
第2通信部312は、他の自走式ロボット装置100に対する通信を行う。本実施形態の一例において、自走式ロボット装置100-1から見た他の自走式ロボット装置100とは、自走式ロボット装置100-2であり、自走式ロボット装置100-2から見た他の自走式ロボット装置100とは、自走式ロボット装置100-1である。
【0067】
測定制御部315は、測定装置20を制御する。駆動制御部316は、駆動部61を制御する。
【0068】
操作モード更新部313は、自装置の位置、駆動部61による自装置の走行状態、第1通信部311の通信状態のうち、少なくとも1つに基づいて、記憶部320に記憶されている操作モードを更新する。
【0069】
制御指示部317は、記憶部320に記憶されている操作モードに基づいて、操作者からの動作指示を受け付け、受け付けた操作に基づく制御指示を、制御部310が備える各機能部に与える。
具体的には、制御指示部317は、記憶部320に記憶された操作モード情報322が示す操作モードが、第1操作モードの場合には、第1通信部311を用いた無線通信による遠隔操作装置200(外部装置)からの指示に基づいて駆動制御部316及び測定制御部315に制御指示を与え、第2操作モードの場合には、操作パネル90を介した指示に基づいて駆動制御部316及び測定制御部315に制御指示を与える。
【0070】
[操作モードの更新機能]
ここで、操作モード更新部313による操作モードの更新機能の例について説明する。
【0071】
(1)現在位置に基づく更新(無線操作モードへの自動更新)
操作モード更新部313は、自装置の位置が、第1通信部311の通信相手である外部装置の位置から所定距離以上の場合に、操作モードを第1操作モード(つまり、無線操作モード)にする。
例えば、自走式ロボット装置100-2の場合、操作モード更新部313は、自装置(つまり、自走式ロボット装置100-2)が、第1通信部311の通信相手である遠隔操作装置200の位置から所定距離以上離れた場合に、操作モードを第2操作モード(パネル操作モード)から第1操作モード(無線操作モード)に切り替える。
このように構成することにより、自走式ロボット装置100の位置が、遠隔操作装置200から離れて、操作者が直接操作できなくなった場合に、自動的に無線操作モードに切り替えることができる。また、自走式ロボット装置100の位置が、操作者から離れた場合に、自走式ロボット装置100の近くにいる第三者に、自走式ロボット装置100を勝手に操作されないようにすることができる。
【0072】
(2)現在位置に基づく更新(パネル操作モードへの自動更新)
操作モード更新部313は、自装置の位置が、自装置の移動開始位置にある場合に、操作モードを第2操作モードにする。
例えば、自走式ロボット装置100-2の場合、操作モード更新部313は、自装置(つまり、自走式ロボット装置100-2)の位置が、自装置のにある場合に、操作モードを第1操作モード(無線操作モード)から、第2操作モード(パネル操作モード)に切り替える。
【0073】
ここで、移動開始位置とは、自走式ロボット装置100-2のホームポジションのことであり、図4に示す一例の場合、エリア2-1である。なお、移動開始位置は、自走式ロボット装置100-2の電源が投入された位置、自走式ロボット装置100-2の電源投入後に設定された位置、または、自走式ロボット装置100-2の記憶部320に予め記憶された位置、などのいずれであってもよい。
このように構成することにより、自走式ロボット装置100が、移動開始位置(ホームポジション)に戻ってきた場合に、自動的にパネル操作モードに切り替えることができる。
【0074】
(3)走行状態に基づく更新
操作モード更新部313は、駆動部61による自装置の走行ができなくなった場合に、操作モードを第2操作モード(パネル操作モード)にする。
このように構成することにより、自走式ロボット装置100が障害物などによって走行不可能な状態になった場合に、自走式ロボット装置100の近くにいる作業者に障害物を取り除くなどの復旧作業してもらい、直接操作によって、走行を再開してもらえるようにすることができる。
【0075】
(4)遠隔操作装置200からの電波強度に基づく更新
操作モードには、中継操作モードが含まれていてもよい。この中継操作モードとは、第2通信部312によって他の自走式ロボット装置100から受信した指示に基づいて操作される操作モードである。中継操作モードのことを第3操作モードともいう。
すなわち、上述した無線操作モードには、自走式ロボット装置100が、遠隔操作装置200が送信する動作指示を他の自走式ロボット装置100を介さずに受信する操作モード(直接受信操作モード)と、自走式ロボット装置100が、遠隔操作装置200が送信する動作指示を他の自走式ロボット装置100を介して受信する(つまり、動作指示を中継する)操作モード(中継操作モード)とがある。
【0076】
なお、以下の説明において、中継操作モードのことを第3操作モードと、直接受信操作モードのことを第4操作モードともいう。すなわち、上述した無線操作モード(第1操作モード)には、中継操作モード(第3操作モード)と、直接受信操作モード(第4操作モード)とが含まれる。
【0077】
操作モード更新部313は、第1通信部311による遠隔操作装置200(外部装置)からの受信強度が所定値以下の場合に、操作モードを中継操作モード(第3操作モード)にする。
このように構成することで、自走式ロボット装置100の位置が遠隔操作装置200から離れて、動作指示の無線電波の受信強度が弱くなった場合に、遠隔操作装置200により近い位置にある他の自走式ロボット装置100によって動作指示を中継する操作モードに自動的に切り替えることができる。
【0078】
図8は、本実施形態の操作モード情報322の更新後の一例を示す図である。同図の一例では、自走式ロボット装置100-1及び自走式ロボット装置100-2がいずれも無線操作モードに更新されている。より具体的には、同図(A)に示すように、自走式ロボット装置100-1の操作モードが中継操作モード(第3操作モード)に更新されている。同図(B)に示すように、自走式ロボット装置100-2の操作モードが直接受信操作モード(第1操作モード)に更新されている。
【0079】
図9は、本実施形態の無線操作モードにおける操作パネル90の操作画面の構成の一例を示す図である。上述した図3には、パネル操作モードにおける操作パネル90の操作画面の構成の一例を示した。無線操作モードにおける操作パネル90の操作画面では、走行操作ボタン91A、測定操作ボタン92A、通信設定ボタン93Aがいずれも操作できない態様で表示される。
なお、無線操作モードの場合、自走式ロボット装置100は、操作パネル90への操作画面の表示を行わずに、操作者に対して、操作パネル90による操作ができないことを示してもよい。
【0080】
[制御部310の動作]
図10は、本実施形態の制御部310の動作の流れの一例を示す図である。なお同図では、上述した(1)現在位置に基づく更新を行う場合を一例にして、図4に示した自走式ロボット装置100-2が備える制御部310の動作を示す。
【0081】
(ステップS21)自走式ロボット装置100-2は、パネル操作モードが設定されている。パネル操作モードにおいて、操作者は、自走式ロボット装置100-2の操作パネル90に対して操作を行う。例えば、自走式ロボット装置100-2の操作パネル90には、図3に示した通信設定ボタン93Aを操作して通信設定を行う。操作者は、測定操作ボタン92Aの「測定開始」ボタンを操作する。次に操作者は、走行操作ボタン91Aの「先行機追従」ボタンを操作して、自走式ロボット装置100-2の移動を開始させる。
この操作の結果、自走式ロボット装置100-2は、自走式ロボット装置100-1を追いかけるように、エリア2-1からエリア2-2に移動する。
【0082】
(ステップS22)自走式ロボット装置100-2は、既知の手段によって、自装置(自走式ロボット装置100-2)の走行位置を検出する。
(ステップS23)自走式ロボット装置100-2は、ステップS22において検出した自装置の走行位置が、遠隔操作装置200の位置から所定距離以上離れているか否かを判定する。
(ステップS24)自走式ロボット装置100-2は、自装置の走行位置が、遠隔操作装置200の位置から所定距離以上離れていると判定した場合に、操作モードを第2操作モード(パネル操作モード)から第1操作モード(無線操作モード)に切り替える。
【0083】
ここで図11から図13を参照して、自走式ロボット装置100の走行位置の変化による操作モードの切り替え動作の具体例について説明する。
【0084】
図11は、本実施形態の自走式ロボット装置の配置の第1の例を示す図である。同図は、図4に示した状態から、各自走式ロボット装置100がより奥のエリアに走行した状態を示している。具体的には、自走式ロボット装置100-1は、エリア2-3からエリア2-4を経由してエリア2-5に移動した。自走式ロボット装置100-2は、エリア2-2からエリア2-3に移動した。
【0085】
自走式ロボット装置100-1は、自装置の位置がエリア2-5にあることを検出する。自走式ロボット装置100-2は、ホームポジション(遠隔操作装置200があるエリア2-1)から見た自装置の位置が、エリア2-3よりも遠い位置にある場合に、第4操作モード(直接受信操作モード)から、第3操作モード(中継操作モード)に切り替える。
この結果、自走式ロボット装置100-1は、遠隔操作装置200による動作指示を、自走式ロボット装置100-2を介して間接的に受信する。
【0086】
自走式ロボット装置100-2は、自装置の位置がエリア2-2からエリア2-3に移動したことを検出する。自走式ロボット装置100-2は、自装置の位置がエリア2-2からエリア2-3に移動した場合に、遠隔操作装置200の位置から所定距離以上離れたと判定して、操作モードを第2操作モード(パネル操作モード)から第4操作モード(直接受信操作モード)に切り替える。
この結果、自走式ロボット装置100-2は、遠隔操作装置200による動作指示を、遠隔操作装置200から直接的に受信する。
【0087】
図12は、本実施形態の自走式ロボット装置の配置の第2の例を示す図である。同図は、図11に示した状態から、各自走式ロボット装置100がさらに奥のエリアに走行した状態を示している。具体的には、自走式ロボット装置100-1は、エリア2-5に移動して進行方向をエリア2-4の方向に変更した。自走式ロボット装置100-2は、エリア2-3からエリア2-4に移動した。
【0088】
図13は、本実施形態の自走式ロボット装置の配置の第3の例を示す図である。同図は、図12に示した状態から、自走式ロボット装置100-2がさらに奥のエリアに走行した状態を示している。具体的には、自走式ロボット装置100-1は、エリア2-5からエリア2-4に移動した。自走式ロボット装置100-2は、エリア2-4からエリア2-6に移動した。その結果、自走式ロボット装置100-2よりも、自走式ロボット装置100-1の方が、遠隔操作装置200に距離が近い配置になる。
【0089】
この場合、先行機として動作していた自走式ロボット装置100-1と、中継機として動作していた自走式ロボット装置100-2の役割を入れ替える。
具体的には、自走式ロボット装置100-1が、エリア2-5からエリア2-4に移動した場合、自走式ロボット装置100-1は、自装置の位置が、先行機として動作可能な範囲ではないと判定する。自走式ロボット装置100-2が、エリア2-4からエリア2-6に移動した場合、自走式ロボット装置100-2は、自装置の位置が、中継機として動作可能な範囲ではないと判定する。自走式ロボット装置100-1と、自走式ロボット装置100-2とは、互いにモード交換の通信を行い、通信モードを切り替える。
この結果、自走式ロボット装置100-1が中継機として動作し、自走式ロボット装置100-2が先行機として動作する。
【0090】
図14は、本実施形態の操作モード情報322の更新後の他の一例を示す図である。同図の一例では、自走式ロボット装置100-1が直接受信操作モード(第1操作モード)に更新され、自走式ロボット装置100-2が中継操作モード(第3操作モード)に更新される。
このように構成された自走式ロボットシステム1によれば、自走式ロボット装置100どうしの相対的な位置関係が変化して、先行機と中継機の役割が入れ替わった場合でも、操作モードを円滑に更新することができる。
【0091】
以上説明したように、本実施形態の自走式ロボット装置100は、自走式ロボット装置100の状態に応じて、パネル操作モードと無線操作モードとを自動的に切り替えることができる。このため、自走式ロボット装置100の運用を円滑化することができる。
【0092】
なお、本実施形態において、無線操作モードと、パネル操作モードとを排他的に切り替える場合を一例として説明したが、これに限られない。例えば、無線操作モードと、パネル操作モードとの優先度に基づいて、一方の操作モードによる操作を、他方の操作モードによる操作が上書きできるように構成されていてもよい。例えば、上述した無線操作モードにおいては、無線操作がパネル操作に優先され、パネル操作で行った動作指示を、無線操作が取り消し(または上書き)することができるように構成されていてもよい。また、上述したパネル操作モードにおいては、パネル操作が無線操作に優先され、無線操作で行った動作指示を、パネル操作が取り消し(または上書き)することができるように構成されていてもよい。
【0093】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。上述した各実施形態に記載の構成を組み合わせてもよい。
【0094】
なお、上記の実施形態における各装置が備える各部は、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、メモリおよびマイクロプロセッサにより実現させるものであってもよい。
【0095】
なお、各装置が備える各部は、メモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、各装置が備える各部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0096】
また、各装置が備える各部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、制御部が備える各部による処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0097】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 自走式ロボットシステム
100 自走式ロボット装置
10 台座部
20 測定装置
30 制御装置
40 メインバッテリ
50 モータ用バッテリ
60 下部構造体
61 駆動部
62 車輪部
200 遠隔操作装置
310 制御部
311 第1通信部
312 第2通信部
313 操作モード更新部
314 通信状態判定部
315 測定制御部
316 駆動制御部
317 制御指示部
320 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14