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特開2024-80327媒体搬送装置、搬送状態判定方法及び媒体取扱装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080327
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】媒体搬送装置、搬送状態判定方法及び媒体取扱装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/237 20190101AFI20240606BHJP
   G07D 1/06 20060101ALI20240606BHJP
   G07G 1/00 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
G07D11/237
G07D1/06
G07G1/00 331A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193421
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲橋▼ 利直
【テーマコード(参考)】
3E141
3E142
【Fターム(参考)】
3E141AA08
3E141BA06
3E141DA08
3E141FG13
3E141GA01
3E141KA02
3E141LA01
3E141LA21
3E141LA31
3E141LA41
3E141LA51
3E142AA01
3E142AA03
3E142GA24
3E142KA08
(57)【要約】
【課題】媒体の搬送状態を高い精度で認識し得るようにする。
【解決手段】硬貨入出金部12の硬貨出金部40は、出金搬送ベルト46により搬送される硬貨CNにより、先検出信号S53及び後検出信号S54をそれぞれオン又はオフに変化させる。このとき釣銭制御部21は、各検出状態において2回のオンとなった部分において、中間オフ時間TMが硬貨間隔時間TP2よりも短く、且つ検出合計時間TAが基準時間TPSよりも短い場合、振動異常が発生していると判断し、検出状態を補正して1回の連続したオンとする。これにより硬貨入出金部12は、検出状態が異常と判断されることによる出金処理の停止を未然に防止でき、振動異常の影響を受けることなく硬貨CNに関する移動状況の認識や枚数の計数を精度良く行うことができる。
【選択図】図16

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を所定の搬送方向へ搬送する搬送処理を行う搬送部と、
前記搬送方向と直交する幅方向に関し前記媒体の移動を制限する案内部と、
前記媒体の有無を検出しオン又はオフに変化する先検出信号を生成する先検出部と、
前記搬送方向に関し前記先検出部よりも下流側において前記媒体の有無を検出しオン又はオフに変化する後検出信号を生成する後検出部と、
前記先検出信号及び前記後検出信号の遷移を基に、前記媒体の進行方向、及び前記搬送処理の正常又は異常を判定する制御部と
を具え、
前記制御部は、前記先検出信号又は前記後検出信号の少なくとも一方が、第1のオン、第1のオフ、第2のオン及び第2のオフに順次変化した状況において、
前記第1のオフから前記第2のオンまでの中間オフ時間が第1閾値未満であり、且つ、前記第1のオンから前記第2のオフまでの検出合計時間が第2閾値未満である場合に、前記中間オフ時間をオンと見なす補正処理を行い、
前記中間オフ時間が前記第1閾値以上である場合、若しくは前記検出合計時間が前記第2閾値以上である場合に、前記補正処理を行わない
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記第1閾値は、2個の前記媒体が前記搬送方向に沿って相互に当接して搬送される場合に、前記先検出信号及び前記後検出信号がオン又はオフに変化する際の前記中間オフ時間である最短中間オフ時間である
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記第2閾値は、2個の前記媒体が前記搬送方向に沿って相互に当接して搬送される場合に、前記先検出信号及び前記後検出信号がオン又はオフに変化する際の前記検出合計時間である最短検出合計時間よりも小さく、且つ前記第1のオンから前記第1のオフまでの最短検出時間と前記最短中間オフ時間とを加算した値よりも大きい値である
ことを特徴とする請求項2に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記先検出信号が前記第1のオン、前記第1のオフ、前記第2のオン及び前記第2のオフに順次変化し、且つ前記後検出信号が前記第1のオンと前記第1のオフの間にオンに変化し、前記第2のオフの後にオフに変化した状況において、
前記第1のオフから前記第2のオンまでの前記中間オフ時間が前記第1閾値未満であり、且つ、前記第1のオンから前記第2のオフまでの前記検出合計時間が前記第2閾値未満である場合に、前記補正処理を行い、
前記中間オフ時間が前記第1閾値以上である場合、若しくは前記検出合計時間が前記第2閾値以上である場合に、前記補正処理を行わない
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記後検出信号が前記第1のオン、前記第1のオフ、前記第2のオン及び前記第2のオフに順次変化し、且つ前記先検出信号が前記第1のオンよりも前にオンに変化し、前記第2のオンから前記第2のオフまでの間にオフに変化した状況において、
前記第1のオフから前記第2のオンまでの前記中間オフ時間が前記第1閾値未満であり、且つ、前記第1のオンから前記第2のオフまでの前記検出合計時間が前記第2閾値未満である場合に、前記補正処理を行い、
前記中間オフ時間が前記第1閾値以上である場合、若しくは前記検出合計時間が前記第2閾値以上である場合に、前記補正処理を行わない
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記中間オフ時間及び前記検出合計時間に基づき前記補正処理を行うか否かを判定し、当該補正処理を行うと判定した場合には当該補正処理を行った後、前記先検出信号及び前記後検出信号の遷移を基に、前記媒体進行方向、及び前記搬送処理の正常又は異常を判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項7】
前記先検出部及び前記後検出部は、
前記媒体の搬送時に、前記先検出部及び前記後検出部の双方で1の前記媒体を同時に検出する両検出状態と、前記先検出部により前記媒体を検出し前記後検出部により他の前記媒体を検出しない先検出状態と、前記後検出部により前記媒体を検出し前記先検出部により他の前記媒体を検出しない後検出状態と、前記搬送方向に沿って相互に当接して搬送される2個の前記媒体の間において又は前記媒体が近傍に存在しないときに前記先検出部及び前記後検出部の双方とも前記媒体を検出しない無検出状態との4種類の検出状態をとり得るよう配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記先検出部及び前記後検出部の検出結果を基に、前記無検出状態の次に前記両検出状態に遷移した場合、前記両検出状態の次に前記無検出状態に遷移した場合、前記先検出状態の次に前記後検出状態に遷移した場合、及び前記後検出状態の次に前記先検出状態に遷移した場合、異常であると判定する
ことを特徴とする請求項7に記載の媒体搬送装置。
【請求項9】
前記搬送部は、円板状の前記媒体を上側部分に載せて走行することにより前記搬送方向へ搬送する搬送ベルトを具え、
前記案内部は、前記幅方向に関し前記搬送ベルトの両側にそれぞれ設けられ、前記媒体の前記幅方向への移動範囲を、前記媒体の直径D及び厚さTの加算値よりも大きく且つ該直径Dの2倍未満である搬送路幅Wに制限し、
前記先検出部及び前記後検出部は、前記幅方向における前記案内部からの距離Sが以下の(1)式及び(2)式を満たすように配置されている
S<D ……(1)
W-S<D ……(2)
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項10】
所定の搬送方向と直交する幅方向に関し案内部により媒体の移動を制限しながら、搬送部の搬送処理により当該媒体を当該搬送方向へ搬送する搬送ステップと、
先検出部により前記媒体の有無を検出しオン又はオフに変化する先検出信号を生成する先検出ステップと、
前記搬送方向に関し前記先検出部よりも下流側に設けられた後検出部により、前記媒体の有無を検出しオン又はオフに変化する後検出信号を生成する後検出ステップと、
制御部により、前記先検出信号及び前記後検出信号の遷移を基に、前記媒体の進行方向、及び前記搬送処理の正常又は異常を判定する判定ステップと
を有し、
前記判定ステップは、前記先検出信号又は前記後検出信号の少なくとも一方が、第1のオン、第1のオフ、第2のオン及び第2のオフに順次変化した状況において、
前記第1のオフから前記第2のオンまでの中間オフ時間が第1閾値未満であり、且つ、前記第1のオンから前記第2のオフまでの検出合計時間が第2閾値未満である場合に、前記中間オフ時間をオンと見なす補正処理を行い、
前記中間オフ時間が前記第1閾値以上である場合、若しくは前記検出合計時間が前記第2閾値以上である場合に、前記補正処理を行わない
ことを特徴とする搬送状態判定方法。
【請求項11】
媒体を収納する収納部と、
前記収納部から前記媒体を搬送する請求項1乃至請求項9の何れかに記載の前記媒体搬送装置と、
前記媒体搬送装置により搬送された前記媒体を貯留する貯留部と
を具えることを特徴とする媒体取扱装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は媒体搬送装置、搬送状態判定方法及び媒体取扱装置に関し、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストア等のような小売店舗の精算所において使用されるレジ釣銭システムに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レジ釣銭システムにおいては、POS(Point Of Sales)システム等に接続されたPOSレジに、紙幣や硬貨の入出金処理を行う釣銭機が組み合わされたものが普及しつつある。この釣銭機には、例えば全体を統括的に制御する統括制御部の他、紙幣を処理する紙幣処理装置や硬貨を処理する硬貨処理装置等が組み込まれている。
【0003】
この硬貨入出金部は、例えばレジ係員に硬貨を投入させる硬貨入金口、投入された硬貨の種類や真偽等を鑑別する鑑別部、硬貨を金種別に収納する収納庫、当該収納庫から釣銭用の硬貨を搬送する搬送部、及び搬送部により搬送された硬貨を貯留してレジ係員に取り出させる硬貨出金口等を有したものがある。
【0004】
例えば硬貨入出金部は、出金処理を行う場合、POSレジから釣銭として出金すべき金額(以下これを釣銭額と呼ぶ)の指示を受けると、合計金額がこの釣銭額となるよう金種毎に出金すべき硬貨の枚数を決定する。続いて硬貨入出金部は、各金種について、それぞれ決定された枚数の硬貨を搬送部により収納庫から搬送し釣銭として出金する。
【0005】
このうち硬貨入出金部(媒体搬送装置)としては、例えば搬送ベルトを有する搬送部や硬貨(媒体)を案内する案内部の他に、当該硬貨を検出する検出部を複数設け、各検出部による検出結果の遷移を基に、制御部(判断処理部)により硬貨の搬送状態を精度良く判定(判断)するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-52802号公報(図8等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで上述した硬貨入出金部では、例えば筐体の内外において発生した衝撃等の影響により、搬送中の硬貨が振動する振動異常が発生する場合がある。この場合、検出部において正常時と異なる検出結果が得られるものの、搬送中の硬貨が一時的に振動したに過ぎず、搬送部による硬貨の搬送や検出部による硬貨の検出を引き続き正常に行い得るため、1枚の硬貨が通過したものと判定して出金処理を継続することが望ましい。
【0008】
一方、硬貨入出金部では、例えば搬送される硬貨同士の間に異物が挟まれる異物異常が発生する場合がある。この場合、検出部において異物の影響により2枚の硬貨の通過を正常に検出できなくなっている可能性があるため、搬送状態を異常と判定して出金処理を停止させ、保守員等による保守作業が行われることが望ましい。
【0009】
しかし、各検出部から得られる検出結果は、振動異常が発生した場合及び異物異常が発生した場合の双方において、同様の遷移パターンで遷移することがある。このため硬貨入出金部では、各検出部による検出結果の遷移から振動異常の発生と異物異常の発生とを区別できないため、何れの場合であっても出金処理を停止させる必要がある、という問題があった。
【0010】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、媒体の搬送状態を高い精度で判定し得る媒体搬送装置、搬送状態判定方法及び媒体取扱装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため本発明の媒体搬送装置においては、媒体を所定の搬送方向へ搬送する搬送処理を行う搬送部と、搬送方向と直交する幅方向に関し媒体の移動を制限する案内部と、媒体の有無を検出しオン又はオフに変化する先検出信号を生成する先検出部と、搬送方向に関し先検出部よりも下流側において媒体の有無を検出しオン又はオフに変化する後検出信号を生成する後検出部と、先検出信号及び後検出信号の遷移を基に、媒体の進行方向、及び搬送処理の正常又は異常を判定する制御部とを設け、制御部は、先検出信号又は後検出信号の少なくとも一方が、第1のオン、第1のオフ、第2のオン及び第2のオフに順次変化した状況において、第1のオフから第2のオンまでの中間オフ時間が第1閾値未満であり、且つ、第1のオンから第2のオフまでの検出合計時間が第2閾値未満である場合に、中間オフ時間をオンと見なす補正処理を行い、中間オフ時間が第1閾値以上である場合、若しくは検出合計時間が第2閾値以上である場合に、補正処理を行わないようにした。
【0012】
また本発明の搬送状態判定方法においては、所定の搬送方向と直交する幅方向に関し案内部により媒体の移動を制限しながら、搬送部の搬送処理により当該媒体を当該搬送方向へ搬送する搬送ステップと、先検出部により媒体の有無を検出しオン又はオフに変化する先検出信号を生成する先検出ステップと、搬送方向に関し先検出部よりも下流側に設けられた後検出部により、媒体の有無を検出しオン又はオフに変化する後検出信号を生成する後検出ステップと、制御部により、先検出信号及び後検出信号の遷移を基に、媒体の進行方向、及び搬送処理の正常又は異常を判定する判定ステップとを有し、判定ステップは、先検出信号又は後検出信号の少なくとも一方が、第1のオン、第1のオフ、第2のオン及び第2のオフに順次変化した状況において、第1のオフから第2のオンまでの中間オフ時間が第1閾値未満であり、且つ、第1のオンから第2のオフまでの検出合計時間が第2閾値未満である場合に、中間オフ時間をオンと見なす補正処理を行い、中間オフ時間が第1閾値以上である場合、若しくは検出合計時間が第2閾値以上である場合に、補正処理を行わないようにした。
【0013】
さらに本発明の媒体取扱装置においては、媒体を収納する収納部と、上述した媒体搬送装置と、媒体搬送装置により搬送された媒体を貯留する貯留部とを設けるようにした。
【0014】
本発明は、振動異常が発生した場合及び異物異常が発生した場合の何れにおいても先検出信号又は後検出信号の波形に類似したパターンが表れるところ、当該パターンにおける各部の時間に関する条件を適切に設定した。このため本発明は、振動異常の有無を精度良く検出でき、当該振動異常であった場合に当該波形を適切に補正する一方、当該振動異常以外であった場合に不要な補正を行わない。これにより本発明は、保守作業等の対処を不必要に行わせること無く、搬送処理を円滑に継続できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、媒体の搬送状態を高い精度で判定し得る媒体搬送装置、搬送状態判定方法及び媒体取扱装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】レジ釣銭システムの外観構成を示す略線的斜視図である。
図2】レジ釣銭システムのブロック構成を示す略線的ブロック図である。
図3】硬貨入出金部の構成を示す略線図である。
図4】硬貨入金部の構成を示す略線図である。
図5】硬貨出金部の構成を示す略線図である。
図6】硬貨出金部の構成を示す略線図である。
図7】出金ゲートローラによる硬貨の詰まりを示す略線図である。
図8】検出孔の位置と各検出状態を示す略線図である。
図9】検出テーブルを示す略線図である。
図10】硬貨の位置及び検出状態の遷移を示す略線図である。
図11】検出状態遷移テーブルを示す略線図である。
図12】連接状態における検出信号の変化を示す略線図である。
図13】振動異常が発生した場合における検出信号の変化を示す略線図である。
図14】異物異常が発生した場合における硬貨の搬送の様子を示す略線図である。
図15】異物異常が発生した場合における検出信号の変化を示す略線図である。
図16】第1の実施の形態による振動異常補正処理手順を示すフローチャートである。
図17】先検出信号に振動異常が発生した場合における各検出信号の変化を示す略線図である。
図18】後検出信号に振動異常が発生した場合における各検出信号の変化を示す略線図である。
図19】異物異常が発生した場合における硬貨の搬送の様子を示す略線図である。
図20】異物異常が発生した場合における各検出信号の変化を示す略線図である。
図21】第2の実施の形態による振動異常補正処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0018】
[1.第1の実施の形態]
[1-1.レジ釣銭システムの構成]
図1に模式的な外観を示すように、レジ釣銭システム1は、それぞれ独立した装置である上側のPOSレジ2と下側の釣銭機3とにより構成されている。このレジ釣銭システム1は、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストアのような小売店舗の精算所(いわゆるレジ)において、顧客が購入したい商品を精算する際に、レジ係員により操作される。
【0019】
なお以下では、レジ係員が対峙する側面及びその反対面をそれぞれ前面及び後面とし、さらに当該レジ係員から見て左右及び上下を定義して説明する。
【0020】
POSレジ2は、内蔵されたレジ制御部5により全体を統括制御している。またPOSレジ2には、図示しないバーコードリーダが接続されており、商品に付されたバーコードをこのバーコードリーダで読み取ることにより、当該商品を認識する。
【0021】
表示操作部6は、例えば液晶ディスプレイ等でなる表示部と、当該液晶ディスプレイに重ねて配置されたタッチセンサ等でなる操作部とにより、タッチパネルとして構成されている。表示操作部6は、認識した商品の名称や金額等を液晶ディスプレイに表示する。また表示操作部6は、表示画面の一部に数字等の入力キーを表示しており、タッチセンサ上の入力キーに対応する箇所が押下操作されると、当該入力キーに対応した入力操作を受け付けてレジ制御部5へ送信する。これに応じてレジ制御部5は、商品の数量の増減や金額の修正等の各処理を行う。またPOSレジ2には、レシート処理部7が内蔵されている。レシート処理部7は、認識した商品の名称や金額等をレシートに印字し、これをレシート排出口7Aから排出する。
【0022】
一方、釣銭機3は、大きく分けて、左側の紙幣入出金部11と、右側の硬貨入出金部12と、前側上部の表示操作部13とにより構成されている。紙幣入出金部11は、レジ係員により紙幣入出金口14から入金された紙幣を取り込んで紙幣収納庫15に収納すると共に、レジ制御部5から指示された紙幣を紙幣収納庫15から取り出し、これを紙幣入出金口14から釣銭として出金する。
【0023】
媒体搬送装置としての硬貨入出金部12は、その前面における上段に硬貨入金口16が設けられ、その下方にリジェクト口17及び硬貨出金口18が設けられている。この硬貨入出金部12は、レジ係員により硬貨入金口16へ投入された硬貨CNを取り込んで内部の収納庫に収納すると共に、レジ制御部5から指示された金額に応じた金種及び枚数の硬貨CNを、貯留部としての硬貨出金口18から釣銭として出金する(詳しくは後述する)。
【0024】
表示操作部13は、所定の表示パネル及び所定の操作ボタンの組み合わせにより構成されている。表示操作部13の表示パネルは、紙幣入出金部11及び硬貨入出金部12における稼働状況として、例えば硬貨入出金部12において釣銭用の硬貨が不足していることや、所定のセンサにより異常を検出したこと、及びその箇所等を表示する。また表示操作部13の操作ボタンは、レジ係員等による押下操作を介して、例えば硬貨CNの搬送等に関する指示を受け付ける。
【0025】
さらに釣銭機3の内部には、釣銭制御部21が設けられている。制御部としての釣銭制御部21は、図2にブロック構成を示すように、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)22や、フラッシュメモリ等でなるメモリ23等を有している。この釣銭制御部21は、CPU22によってメモリ23から釣銭出金プログラムや振動異常補正プログラム等の各種プログラムを読み出して実行することにより、釣銭機3を統括制御する。またCPU22は、I/O(Input / Output)ポート24及び25を介して紙幣入出金部11及び硬貨入出金部12に組み込まれている複数のモータ、ソレノイド及びセンサとそれぞれ接続され、I/Oポート26を介して表示操作部13の操作スイッチ及び表示パネルとそれぞれ接続されている。さらにCPU22は、POSレジ2のレジ制御部5とも接続されており、互いに連携して各種処理を実行する。
【0026】
[1-2.硬貨入出金部の構成]
図3(A)及び(B)に平面図及び側面図を示すように、硬貨入出金部12は、大きく分けて、硬貨CNの入金処理を行う硬貨入金部30と、硬貨CNの出金処理を行う硬貨出金部40とにより構成されている。因みに硬貨CNは、一般的な硬貨と同様、ニッケル、銅、アルミニウム等の金属又はこれらの合金でなり、円形の底面を2面有する薄い円板状に形成されている。
【0027】
[1-2-1.硬貨入金部の構成]
硬貨入金部30は、図3(A)及び(B)とそれぞれ対応する図4(A)及び(B)に示すように、前方に配置された硬貨入金口16から硬貨入出金部12の左上側及び後上側を順次繋ぐように配置されている。硬貨入金口16は、すり鉢状にえぐられたような形状に形成され、その底部に硬貨CNを1枚ずつ排出する排出機構が組み込まれている。また硬貨入金口16には、所定箇所に硬貨CNの有無を検出するセンサ(図示せず)が組み込まれている。
【0028】
入金部搬送路31は、硬貨CNを案内しながら進行させる搬送路となっており、硬貨入出金部12の左上側部分を前後に結ぶ上搬送路31Aと、硬貨入出金部12の後上側部分を左右に結ぶ後搬送路31Bとにより構成されている。入金部搬送路31における硬貨入金口16の左後側には、受渡ローラ32が設けられている。
【0029】
受渡ローラ32は、入金部搬送路31の上搬送路31Aを上下から挟むように、円柱状でなり中心軸を左右方向に向けた2個のローラが配置されている。この受渡ローラ32は、図示しないモータからの駆動力によりそれぞれ回転すると、硬貨入金口16から送り出された硬貨CNを入金部搬送路31に沿って後方の硬貨判別搬送部33へ引き渡す。硬貨判別搬送部33は、2個の回転するローラ及び両ローラの周囲を周回するベルト等を有しており、当該ローラの回転によりベルトを走行させ、当該ベルトと入金部搬送路31との間に硬貨CNを挟み、当該硬貨CNを当該入金部搬送路31に沿って後方へ進行させる。
【0030】
硬貨判別搬送部33の後側には、入金部搬送路31の上搬送路31Aにおける後半部分から後搬送路31Bにかけて、硬貨選別搬送部34が配置されている。硬貨選別搬送部34は、複数箇所に配置されたローラの間にベルトが架け渡されており、当該ローラが回転されると、当該ベルトを周回させるように走行させ、これにより硬貨CNを上搬送路31Aに沿って後方向へ進行させた後、後搬送路31Bに沿って右方向へ進行させる。
【0031】
硬貨判別搬送部33の左側には、硬貨判別部35が配置されている。硬貨判別部35は、光学センサや磁気センサ等の各種センサを有しており、硬貨CNの光学特性や磁気特性等の各種特性を検出し、その検出結果を基に当該硬貨CNの金種及び真偽を判別して得られた判別結果を釣銭制御部21(図2)へ通知する。これに応じて釣銭制御部21は、各硬貨CNの金種及び真偽を認識し、それぞれの搬送先を決定する。
【0032】
上搬送路31Aにおける硬貨選別搬送部34の下側には、上下に貫通するリジェクト孔31HRが形成されると共に、薄板状のリジェクトブレード36が設けられている。このリジェクトブレード36は、釣銭制御部21の制御に基づいて回動し、リジェクト孔31HRを開放又は閉塞する。
【0033】
後搬送路31Bにおける硬貨選別搬送部34の下側には、上下に貫通する6箇所の金種別収納孔31HA~31HFが左右方向に並ぶように形成されている。因みに金種別収納孔31HA~31HFは、順に50円、5円、500円、100円、10円及び1円にそれぞれ対応しており、また金種別に設けられた収納庫(後述する)の真上に位置している。また金種別収納孔31HA~31HFの近傍には、薄板状の金種別ブレード37(37A~37F)がそれぞれ設けられている。各金種別ブレード37は、釣銭制御部21の制御に基づいて回動し、金種別収納孔31HA~31HFをそれぞれ開放又は閉塞する。
【0034】
実際の精算処理において、レジ係員等が顧客から商品の代金として硬貨CNを預かると、この硬貨CNは、レジ係員等によりまとめて硬貨入金口16へ投入される。硬貨入金口16は、センサにより硬貨CNが投入されたことを検出すると、釣銭制御部21の制御に基づき、硬貨CNを1枚ずつ入金部搬送路31へ送り出す。この硬貨CNは、受渡ローラ32、硬貨判別搬送部33及び硬貨選別搬送部34により入金部搬送路31に沿って順次搬送される。この搬送途中において硬貨判別部35は、搬送される硬貨CNの金種及び真偽等を1枚ずつ判別し、その判別結果を釣銭制御部21へ通知する。
【0035】
釣銭制御部21は、硬貨判別部35により硬貨CNが真正であると判別された場合、リジェクトブレード36によりリジェクト孔31HRを閉塞し、当該硬貨CNを上搬送路31A及び後搬送路31Bに沿って順次進行させる。続いて釣銭制御部21は、硬貨CNの金種に応じて各金種別ブレード37を適宜回動させ、硬貨CNの金種と対応する金種別収納孔のみを開放すると共に他の金種別収納孔を閉塞し、当該硬貨CNをその金種に応じた金種別収納孔から落下させ、その金種に応じた収納庫(後述する)へ収納させる。
【0036】
一方、釣銭制御部21は、硬貨判別部35により硬貨CNがリジェクト硬貨と判別された場合、リジェクトブレード36を回動させてリジェクト孔31HRを開放し、当該硬貨CNを下方のリジェクト搬送路(後述する)へ落下させる。
【0037】
因みに釣銭制御部21は、投入された全ての硬貨CNについての判別を終了した時点で、真正であると判別された全ての硬貨CNの金額を加算することにより預かり金額を算出し、これをPOSレジ2のレジ制御部5(図2)へ通知する。これ応じてレジ制御部5は、預かり金額から商品の代金を差し引くことにより釣銭額を算出し、これを釣銭制御部21へ通知する。
【0038】
[1-2-2.硬貨出金部の構成]
硬貨出金部40は、図3(A)及び(B)とそれぞれ対応する図5(A)及び(B)に示すように、リジェクト口17の後方に硬貨リジェクト搬送路41が設けられると共に、硬貨出金口18の後方に金種毎の収納庫42がそれぞれ設けられている。硬貨リジェクト搬送路41は、硬貨出金部40の左端に配置されており、リジェクト孔31HR(図4(A))の真下からリジェクト口17の真後までを結び、且つその底面が前方へ進むに連れて下降するよう傾斜されている。このため硬貨リジェクト搬送路41は、リジェクト孔31HRから落下されたリジェクト硬貨を前方へ滑降させ、リジェクト口17に到達させる。
【0039】
収納部としての収納庫42(42A~42F)は、左右方向に沿って6個に区切られることにより、それぞれ前後方向に細長い空間となっており、それぞれ金種別収納孔31HA~31HF(図4(A))と連接している。各収納庫42は、それぞれに異なる金種が割り当てられており、硬貨CNを金種毎に分別して収納する。図5(B)に示すように、各収納庫42の底部には、出金搬送部43が組み込まれている。搬送部としての出金搬送部43は、2個のローラ44及び45、出金搬送ベルト46、並びに案内壁47及び48等を有している。
【0040】
ローラ44は、出金搬送部43の前端近傍におけるやや高い位置に配置されている。またローラ45は、出金搬送部43の後端近傍におけるやや低い位置に配置されている。ローラ44及び45は、何れも中心軸を左右方向に向けた円柱状に形成され、当該中心軸を中心として回転可能に支持されている。
【0041】
出金搬送ベルト46は、可撓性を有する材料により構成された無端ベルトであり、ローラ44及び45の周囲を周回するように張架され、ある程度の張力を持っている。このため出金搬送ベルト46は、その上面部分が前方へ進むに連れて上昇するよう傾斜されており、またローラ44及び45の回転に伴って走行する。さらに出金搬送ベルト46は、硬貨CNに対する摩擦係数が比較的大きくなっている。
【0042】
また出金搬送ベルト46は、収納庫42の底部に位置しているため、当該収納庫42に収納された硬貨CNを上側部分(以下これを出金搬送ベルト上部46Uと呼ぶ)に載せている。この出金搬送ベルト46は、釣銭制御部21の制御に基づきローラ44及び45が回転駆動されると、ベルトの上側部分を前後へ走行させ、収納庫42に収納された硬貨CNを殆ど滑らせることなく、前後方向へ搬送する。以下では、出金すべき硬貨CNを搬送する方向である前方向を搬送方向とも呼び、これと直交する左右方向を幅方向とも呼ぶ。また以下では、前側を下流側とも呼び、その反対側である後側を上流側とも呼ぶ。
【0043】
案内部としての案内壁47及び48は、出金搬送ベルト上部46Uの左側及び右側にそれぞれ隣接若しくは極めて近接するように配置されている。図6(A)に模式的な断面図を示すように、案内壁47及び48は、出金搬送ベルト上部46Uの上面とほぼ連続する平面を形成する案内壁底面47A及び48Aに加えて、左右の内側壁を形成する案内壁側面47B及び48Bを有している。ここで図6(B)に断面図を示すように、硬貨CNの直径をD、厚さをTとすると、案内壁側面47B及び48Bの距離である搬送路幅Wは、次の(1)式及び(2)式を満たしている。
【0044】
W>D+T ……(1)
W<2D ……(2)
【0045】
実際の搬送路幅Wは、直径D及び厚さTの加算値に所定のマージンを加えた値に設定されている。このため出金搬送ベルト46は、仮にある硬貨CNが円板面を上下に向けて横たわった状態や、さらにその左右いずれかに隣接して他の硬貨CNが円板面を左右に向けて立った状態であっても、これらの硬貨CNを案内壁側面47B及び48Bの間に詰まらせることなく、前後方向に沿って搬送できる。また案内壁側面47B及び48Bは、左右方向に関する硬貨CNの枚数を2未満に抑えて、すなわち左右方向の列数を1列として、当該硬貨CNを搬送できる。
【0046】
また各収納庫42内の前側には、繰出部50がそれぞれ設けられている(図5)。この繰出部50は、出金ゲートローラ51、出金ゲート52、先検出部53及び後検出部54等を有している。出金ゲートローラ51は、中心軸を左右方向に向けた円柱状に構成されており、その下側面と出金搬送ベルト46の上側部分との間に、硬貨CNの厚さT(図6(B))よりも僅かに広い隙間を空けるように配置されている。
【0047】
この出金ゲートローラ51は、釣銭制御部21の制御に基づき、図5(B)における反時計回りに、すなわち下側面を後方へ進行させるよう回転する。これにより出金ゲートローラ51は、出金搬送ベルト46上に硬貨CNが積み重なること無く1枚ずつに分かれた状態で前方向へ搬送されていた場合、当該硬貨CNの搬送を妨げることなくそのまま前方へ進行させる。
【0048】
一方出金ゲートローラ51は、出金搬送ベルト46上に2枚以上の硬貨CNが積み重なった状態で前方向へ搬送されていた場合、最下層の硬貨CNを除いた上層の硬貨CNをせき止め、或いはその重なりを崩しながら、すなわち硬貨CNの重畳を排除しながら、最下層の硬貨CNのみを1枚ずつ通過させる。これにより出金ゲートローラ51は、上下方向に関する硬貨CNの枚数を2未満に抑えて、すなわち上下方向の列数も1列として、当該硬貨CNを前後方向に1列に並べるようにして搬送させることができる。
【0049】
出金ゲート52は、その下側に細長い円柱状の出金ゲートピン52Pを有しており、釣銭制御部21の制御に基づき、出金ゲートピン52Pを所定の移動範囲内で上下方向に移動させる。出金ゲートピン52Pは、最も上側に移動されると、出金搬送ベルト上部46Uとの間に硬貨CNの厚さTよりも大きい隙間を形成し、出金搬送部43により搬送されている硬貨CNと干渉することなく通過させる。一方出金ゲートピン52Pは、最も下側に移動されると、出金搬送ベルト上部46Uに近接若しくは当接し、硬貨CNの搬送を停止させると共に、収納庫42内からの硬貨CNの流出や不正行為等による硬貨CNの取り出しを防止する。
【0050】
先検出部53及び後検出部54は、いずれも出金ゲートローラ51よりも前方であって、且つ出金搬送ベルト46の前端よりも後方に配置されている。先検出部53は、所定の検出光L1を発光する発光器53Aと、当該検出光L1を受光する受光器53Bとにより構成されている。発光器53Aは、出金搬送ベルト上部46Uの下側に配置されている。受光器53Bは、当該出金搬送ベルト上部46Uの上側に配置されており、検出光L1の受光量に応じた先検出信号S53を生成し、これを釣銭制御部21へ送出する(図2)。
【0051】
後検出部54は、先検出部53と同様に構成されており、所定の検出光L2を発光する発光器54Aと、当該検出光L2を受光する受光器54Bとを有している。発光器54Aは、発光器53Aと同様、出金搬送ベルト上部46Uの下側に配置されている。受光器54Bは、受光器53Bと同様、当該出金搬送ベルト上部46Uの上側に配置されており、検出光L2の受光量に応じた後検出信号S54を生成し、これを釣銭制御部21へ送出する(図2)。
【0052】
説明の都合上、以下では先検出信号S53の信号レベルについて、検出光L1が硬貨CNにより遮光され受光器53Bによる受光量が所定の閾値未満であった状態、すなわち硬貨CNを検出した状態を、「オン」と呼ぶ。一方、検出光L1が遮られず受光器53Bによる受光量が所定の閾値以上であった状態、すなわち硬貨CNを検出しなかった状態を「オフ」と呼ぶ。後検出信号S54の信号レベルについても、同様に検出光L2の受光量に応じた検出の状態を「オン」又は「オフ」と呼ぶ。
【0053】
硬貨出金部40は、出金処理を行う場合、釣銭制御部21の制御に基づき、各収納庫42の出金搬送部43をそれぞれ動作させる。このとき各出金搬送部43により前方向へ(すなわち下流側へ)搬送される硬貨CNは、先検出部53及び後検出部54による検出光L1及びL2の照射箇所を通過した後、やがて出金搬送ベルト46の前端部分から落下して硬貨出金口18内に貯留される。
【0054】
ところで出金ゲートローラ51は、硬貨CNの重畳状況によっては図7に示すように当該硬貨CNを適切に切り崩すことができず、硬貨CNを詰まらせる場合がある。このとき出金搬送部43は、まずローラ44及び45を回転駆動させベルトの走行を継続しようとするものの、硬貨CNと出金搬送ベルト46との摩擦により当該出金搬送ベルト46を走行させ得なくなり、しばらく当該出金搬送ベルト46に張力を加えていく。
【0055】
やがて釣銭制御部21は、所定の検出部により出金搬送ベルト46ベルトが走行しておらずローラ44及び45が回転していないことを検出すると、ローラ44及び45の回転駆動を中止させる。すると出金搬送ベルト46上部Uは、加えられている張力の作用により僅かに後方へ走行し、載せられている硬貨CNを僅かに後方向へ進行させることになる。
【0056】
[1-2-3.先検出部及び後検出部の配置]
次に、硬貨出金部40における先検出部53及び後検出部54の詳細な配置について説明する。図5(A)の一部を拡大した図8(A)に示すように、先検出部53の発光器53A及び受光器53Bは、案内壁47に穿設された先検出孔H1を検出光L1が通過するよう、それぞれの取付位置が調整されている。また後検出部54の発光器54A及び受光器54Bは、案内壁48に穿設された後検出孔H2を検出光L2が通過するよう、それぞれの取付位置が調整されている。
【0057】
さらに先検出孔H1及び後検出孔H2は、案内壁側面47B及び案内壁側面48Bからそれぞれ所定の隙間Sだけ離れるよう、それぞれの位置が調整されている。この隙間Sは、硬貨CNの直径D及び搬送路幅W(図6)との間で、次の(3)式及び(4)式を満たすように設定されている。
【0058】
S<D ……(3)
W-S<D ……(4)
【0059】
これにより先検出部53及び後検出部54は、出金搬送ベルト46により搬送される硬貨CNが左右いずれかに偏り、案内壁側面47B又は案内壁側面48Bに当接しながら搬送されていたとしても、当該硬貨CNにより検出光L1及びL2を確実に遮光させ、その存在を検出することができる。また後検出孔H2は、先検出孔H1よりも距離Gだけ前側に位置している。このため、出金搬送ベルト46により前方向へ搬送される硬貨CNから見ると、先検出孔H1の後に後検出孔H2に到達することになる。
【0060】
さらに先検出孔H1及び後検出孔H2の位置、すなわち先検出部53及び後検出部54の位置は、出金搬送ベルト46により硬貨CNを前方向へ搬送する過程において、図8(A)、(B)、(C)及び(D)に示した各検出状態をいずれもとり得る。
【0061】
図8(A)は、2枚の硬貨CN1及びCN2が前後に連接した状態で出金搬送ベルト46により搬送されている際、先検出孔H1及び後検出孔H2がいずれも硬貨CN1の中心CN1Qよりも後側且つ硬貨CN2の中心CN2Qよりも前側に位置した状態である。また、前後方向に関し先検出孔H1及び後検出孔H2の間で硬貨CN1及びCN2が当接した状態である。このとき、先検出信号S53及び後検出信号S54は、いずれもオフとなっている。また先検出信号S53及び後検出信号S54は、先検出部53及び後検出部54の近傍に硬貨CNが存在しないときも、いずれもオフとなる。以下、これを無検出状態ST0と呼ぶ。
【0062】
図8(B)は、1枚の硬貨CN1が出金搬送ベルト46により搬送されている際、当該硬貨CNにより先検出孔H1が覆われる一方、後検出孔H2が覆われていない状態である。このとき、先検出信号S53はオンとなる一方、後検出信号S54はオフとなっている。以下、これを先検出状態ST1と呼ぶ。
【0063】
図8(C)は、1枚の硬貨CNが出金搬送ベルト46により搬送されている際、当該硬貨CNにより先検出孔H1及び後検出孔H2の双方が覆われている状態である。このとき、先検出信号S53及び後検出信号S54は、いずれもオンとなっている。以下、これを両検出状態ST2と呼ぶ。
【0064】
図8(D)は、1枚の硬貨CN1が出金搬送ベルト46により搬送されている際、当該硬貨CNにより先検出孔H1が覆われていない一方、後検出孔H2が覆われている状態である。このとき、先検出信号S53はオフとなる一方、後検出信号S54はオンとなっている。以下、これを後検出状態ST3と呼ぶ。
【0065】
このように先検出信号S53及び後検出信号S54は、信号レベル(すなわちオン又はオフ)に関して4種類の検出状態(無検出状態ST0、先検出状態ST1、両検出状態ST2及び後検出状態ST3)を取ることができる。ここで、各検出状態と先検出信号S53及び後検出信号S54の信号レベルとの関係をまとめると、図9に示す検出テーブルTBL1のように表すことができる。因みに硬貨出金部40は、硬貨CNの搬送時には、上述した4通りの検出状態以外の状態、例えば硬貨CN1により先検出孔H1が覆われる一方、他の硬貨CN2により後検出孔H2が覆われる、といった検出状態を取らないよう、距離Gが比較的小さい値に定められている。
【0066】
[1-3.硬貨の認識及び計数]
次に、先検出信号S53及び後検出信号S54の状態に基づいた硬貨CNの認識及び計数に関する処理について、基本的な処理と、精度を高めるための処理とに分けて、それぞれ説明する。
【0067】
[1-3-1.基本的な硬貨の認識処理]
まず、硬貨出金部40において、時間の経過と共に出金搬送ベルト46により1枚の硬貨CNが前方向へ搬送される場合を想定する。図10は、時刻t0、t1、t2、t3及びt4といった5の時点と対応付けて、硬貨CNと各検出孔との位置関係を簡略的に表した平面図と、先検出信号S53及び後検出信号S54における信号レベルの経時変化を表す信号波形とを示している。
【0068】
時刻t0は、先検出孔H1及び後検出孔H2が何れも硬貨CNにより覆われておらず、先検出信号S53及び後検出信号S54が何れもオフである。このとき検出状態は、無検出状態ST0となる。時刻t1は、硬貨CNが先検出孔H1を覆う一方、後検出孔H2を覆っていないため、先検出信号S53がオンであり後検出信号S54がオフである。このとき検出状態は、先検出状態ST1となる。
【0069】
時刻t2は、硬貨CNが先検出孔H1及び後検出孔H2を何れも覆っており、先検出信号S53及び後検出信号S54の双方がオンとなる。このとき検出状態は、両検出状態ST2となる。時刻t3は、硬貨CNが後検出孔H2を覆う一方、先検出孔H1を覆っていないため、先検出信号S53がオフとなり後検出信号S54がオンとなる。このとき検出状態は、後検出状態ST3となる。時刻t4は、硬貨CNが先検出孔H1及び後検出孔H2を何れも覆っていないため、先検出信号S53及び後検出信号S54が何れもオフとなる。このとき検出状態は、再び無検出状態ST0に戻る。
【0070】
このように、硬貨出金部40において1枚の硬貨CNが前方向へ搬送された場合、検出状態は、無検出状態ST0、先検出状態ST1、両検出状態ST2、後検出状態ST3及び無検出状態ST0の順に遷移する。これと反対に、仮に硬貨出金部40において1枚の硬貨CNが後方向へ搬送された場合、検出状態は、無検出状態ST0、後検出状態ST3、両検出状態ST2、先検出状態ST1及び無検出状態ST0の順に遷移する。
【0071】
このため、無検出状態ST0から先検出状態ST1、先検出状態ST1から両検出状態ST2、両検出状態ST2から後検出状態ST3、及び後検出状態ST3から無検出状態ST0の順序でそれぞれ遷移する場合には、硬貨CNが前方向へ、すなわち下流側へ移動していると判断できる。一方、無検出状態ST0から後検出状態ST3、後検出状態ST3から両検出状態ST2、両検出状態ST2から先検出状態ST1、及び先検出状態ST1から無検出状態ST0の順序でそれぞれ遷移する場合には、硬貨CNが後方向へ、すなわち上流側へ移動していると判断できる。
【0072】
さらに、同一の検出状態が継続している場合には、検出周期に相当する時間中、硬貨CNが停止している、或いは非常に低速で前後いずれかの方向へ移動している、若しくは硬貨CNが搬送されていない(無検出状態ST0の場合のみ)と判断できる。
【0073】
これに対し、無検出状態ST0から両検出状態ST2、及び先検出状態ST1から後検出状態ST3の順序で遷移する場合、並びにそれぞれの反対順序で遷移する場合には、硬貨CNを正しく検出できていない、すなわち先検出部53及び後検出部54の少なくとも一方が異常であると判断できる。
【0074】
これらの遷移前の検出状態と遷移後の検出状態との関係を整理すると、図11に示す検出状態遷移テーブルTBL2のように表すことができる。すなわち、この検出状態遷移テーブルTBL2から、遷移前後の検出状態を基に、硬貨CNが前方向へ移動しているか、後方向へ移動しているか、停滞しているか、或いは先検出部53及び後検出部54の少なくとも一方が異常であるか、といった硬貨CNの移動状況を判断できる。
【0075】
そこで釣銭制御部21(図2)は、メモリ23に予め検出テーブルTBL1(図9)及び検出状態遷移テーブルTBL2(図11)を記憶させている。釣銭制御部21は、硬貨出金部40において硬貨CNを出金する際、まず先検出部53及び後検出部54から所定の検出周期(例えば50Hz)でそれぞれの検出信号(先検出信号S53及び後検出信号S54)を取得し、検出テーブルTBL1を参照して検出周期毎の検出状態を決定する。続いて釣銭制御部21は、検出状態遷移テーブルTBL2を参照し、連続する2の検出周期における検出状態の遷移を基に、進行している場合の進行方向(前方向又は後方向)、或いは停滞といった硬貨CNの移動状況を認識する。
【0076】
ここで釣銭制御部21は、無検出状態ST0から始まり先検出状態ST1、両検出状態ST2及び後検出状態ST3を順次経て再び無検出状態ST0に戻るよう遷移した段階で、1枚の硬貨CNが出金されたものと判断し、出金済の硬貨CNの枚数を1増加させる。また釣銭制御部21は、無検出状態ST0から始まり後検出状態ST3、両検出状態ST2及び先検出状態ST1を順次経て再び無検出状態ST0に戻るよう遷移した場合には、何らかの理由で1枚の硬貨CNが後方向へ進行し硬貨出金口18側から収納庫42側に戻ったものと判断し、出金済の硬貨CNの枚数を1減少させる。
【0077】
一方、釣銭制御部21は、無検出状態ST0、先検出状態ST1及び無検出状態ST0の順に遷移した場合、並びに無検出状態ST0、先検出状態ST1、両検出状態ST2、先検出状態ST1及び無検出状態ST0の順に遷移した場合、前方向へ移動していた硬貨CNが途中で移動方向を切り換えて後方向へ戻ったと判断する。このとき釣銭制御部21は、出金済の硬貨CNの枚数について増減しない。
【0078】
これと同様に釣銭制御部21は、無検出状態ST0、後検出状態ST3及び無検出状態ST0の順に遷移した場合、並びに無検出状態ST0、後検出状態ST3、両検出状態ST2、後検出状態ST3及び無検出状態ST0の順に遷移した場合、後方向へ移動していた硬貨CNが途中で移動方向を切り換えて前方向へ戻ったと判断する。このときにも釣銭制御部21は、出金済の硬貨CNの枚数について増減しない。
【0079】
このように釣銭制御部21は、基本的な硬貨の認識及び計数の処理により、先検出部53及び後検出部54から周期的に得られる検出信号を基に各周期の検出状態を決定し、その遷移から硬貨CNの移動状況を認識して、さらに出金済の硬貨CNの枚数も計数する。
【0080】
[1-3-2.検出部における検出状態の変化時間]
次に、硬貨出金部40の先検出部53及び後検出部54において、先検出信号S53及び後検出信号S54それぞれが「オン」又は「オフ」に変化する場合における、硬貨CNの搬送状態と時間の間隔との関係について説明する。
【0081】
ここでは、硬貨出金部40において2枚の硬貨CNが互いの周側面を当接させた状態(以下これを連接した状態と呼ぶ)で正常に搬送されており、且つ先検出部53及び後検出部54により当該硬貨CNを適切に検知できている場合(以下このような検出を連接正常検出と呼ぶ)を想定する。このとき先検出信号S53は、図12に示すように、1枚の硬貨CNごとに、オフからオンに変化して再びオフに戻る、といった変化をする。また後検出信号S54は、先検出信号S53に対しやや遅れながら、同様に変化する。
【0082】
ここで、図12において、先検出信号S53が1回目にオンに変化する時刻t10を基準として、当該先検出信号S53がオン又はオフに変化するタイミングをそれぞれ時刻t11~t13とし、さらに単硬貨時間TP1、硬貨間隔時間TP2及び連接硬貨時間TP3をそれぞれ定義する。すなわち先検出信号S53は、時刻t10に第1のオンとなり、時刻t11に第1のオフとなり、時刻t12に第2のオンとなり、時刻t13に第2のオフとなっている。
【0083】
単硬貨時間TP1は、時刻t10からt11までの時間、及び時刻t12から時刻t13までの時間をそれぞれ表しており、1枚の硬貨CNが先検出孔H1(すなわち先検出部53の位置)を通過し始めてから通過し終わるまでの時間に相当する。この単硬貨時間TP1は、1枚の硬貨CNが正常に搬送される場合において、先検出信号S53がオンの状態を維持する最短の時間となる。以下では、単硬貨時間TP1を最短検出時間とも呼ぶ。
【0084】
硬貨間隔時間TP2は、時刻t11からt12までの時間を表しており、先検出孔H1を1枚目の硬貨CN1が通過し終えた後に2枚目の硬貨CN2が通過し始めるまでの時間に相当する。この硬貨間隔時間TP2は、連接した2枚の硬貨CNが正常に搬送される場合において、先検出信号S53がオフの状態を継続する最短の時間となる。以下では、硬貨間隔時間TP2を最短中間オフ時間とも呼ぶ。
【0085】
連接硬貨時間TP3は、時刻t10からt13までの時間を表しており、1枚目の硬貨CN1が先検出孔H1を通過し始めてから2枚目の硬貨CN2が該先検出孔H1を通過し終わるまでの時間に相当する。この硬貨間隔時間TP2は、連接した2枚の硬貨CNが正常に搬送される場合において、先検出信号S53がオン、オフ、オン及びオフと変化する最短の時間となる。以下では、連接硬貨時間TP3を最短検出合計時間とも呼ぶ。
【0086】
[1-3-3.異常の検出及び対処]
次に、硬貨出金部40の先検出部53及び後検出部54において、硬貨CNの搬送状態と先検出信号S53及び後検出信号S54に基づいた検出状態とが一致しない場合や、硬貨CNの搬送状態を正常に検出できない場合、すなわち異常が発生する場合について説明する。以下では、先検出部53を例に説明するが、後検出部54についても同様である。
【0087】
硬貨出金部40では、例えば硬貨入出金部12の内外において発生した衝撃等の影響により、出金搬送ベルト46により搬送中の硬貨CNが振動する場合がある。このとき先検出部53では、硬貨CNによって遮られていた検出光L1及び検出光L2が一時的に遮られなくなり、先検出信号S53においてオンから一時的にオフに切り替わり、直ちにオンに戻る、といった変動を生じることがある。以下、これを振動異常と呼ぶ。
【0088】
この振動異常が発生した場合、先検出信号S53は、図13に示すように、連接正常検出の場合(図12)と同様にオフから始まり、オン、オフ、オン及びオフへと順次変化しており、オンが2回出現するパターンとなっている。ここで、先検出信号S53が1回目にオンに変化するタイミングを時刻t20とし、以降に変化が生じるタイミングをそれぞれ時刻t21~t23とする。すなわち先検出信号S53は、時刻t20に第1のオンとなり、時刻t21に第1のオフとなり、時刻t22に第2のオンとなり、時刻t23に第2のオフとなっている。
【0089】
ここで、図13における検出合計時間TA及び中間オフ時間TMに着目する。振動異常が発生した場合、検出合計時間TAは、単硬貨時間TP1と同程度であり、誤差等を考慮したとしても、連接硬貨時間TP3よりも十分に短い時間となるはずである。一方、中間オフ時間TMは、1枚の硬貨CNが振動する際の周期等を考慮すると、硬貨間隔時間TP2よりも十分に短い時間になると予想される。
【0090】
一方、硬貨出金部40では、例えば図8(A)と対応する図14に模式図を示すように、2枚目の硬貨CN2の前側に異物OBJが付着する場合がある。以下、これを異物異常と呼ぶ。このとき先検出信号S53は、例えば図15に示すように、オフからオン、オフ、オン及びオフへと順次変化しており、オンが2回出現するパターンとなっている。ここで、先検出信号S53が1回目にオンに変化するタイミングを時刻t30とし、以降に変化が生じるタイミングをそれぞれ時刻t31~t33とする。すなわち先検出信号S53は、時刻t30に第1のオンとなり、時刻t31に第1のオフとなり、時刻t32に第2のオンとなり、時刻t33に第2のオフとなっている。
【0091】
この異物異常が発生した場合、先検出信号S53では、連接正常検出の場合(図12)と比較して、異物OBJの影響により時刻t32が時刻t12よりも早くなっており、中間オフ時間TMが硬貨間隔時間TP2よりも短くなっている。またこの場合、検出合計時間TAは、検出誤差等を考慮すると、連接硬貨時間TP3と同等又はそれ以上であると予想される。
【0092】
このように、連接正常検出の場合(図12)、1枚の硬貨CNに振動異常が発生した場合(図13)、及び2枚の硬貨CNの搬送時に異物異常が発生した場合(図15)には、何れも先検出信号S53にオンが2回出現する。しかし、振動異常が発生した場合は、先検出信号S53に出現するオンの回数が2回であるものの、搬送された硬貨CNの枚数を1枚と認識する必要がある。またこの場合、硬貨CNの搬送処理は正常に行われており、出金処理の停止や保守作業の実施は不要である。一方、異物異常が発生した場合は、異常が発生したと判定した上で、出金処理を停止させると共に、保守員等により適切な保守作業を行わせる必要がある。
【0093】
そこで、振動異常が発生した場合を、2枚の硬貨CNが正常に搬送及び検出されている場合や異物異常が発生した場合と区別するための条件を検討する。まず、中間オフ時間TMが硬貨間隔時間TP2よりも短い場合、少なくとも連接正常検出の場合(図12)では無いものの、振動異常(図13)である可能性に加えて、異物異常(図15)である可能性もある。
【0094】
次に検出合計時間TAに着目すると、該検出合計時間TAが連接硬貨時間TP3よりも短い場合、硬貨CNが2枚である可能性が排除されるため振動異常(図13)と判断でき、該検出合計時間TAが連接硬貨時間TP3以上である場合、異物異常(図15)と判断できる。
【0095】
これらを踏まえて、硬貨出金部40を制御する釣銭制御部21(図2)では、検出状態の時間に関する判断処理を行うための基準として、基準時間TPSを予め規定している。この基準時間TPSは、図12に示すように、単硬貨時間TP1、硬貨間隔時間TP2及び連接硬貨時間TP3との間に、次の(5)式の関係を満たすような時間に設定されている。
【0096】
TP1+TP2<TPS<TP3 ……(5)
【0097】
その上で釣銭制御部21は、先検出部53における検出状態の波形に2回のオンが出現した場合、中間オフ時間TM及び検出合計時間TAに関し、硬貨間隔時間TP2及び基準時間TPSとの間で、次の(6)式及び(7)式のような比較処理を行うようにした。以下では、硬貨間隔時間TP2を第1閾値とも呼び、また基準時間TPSを第2閾値とも呼ぶ。
【0098】
TM<TP2 ……(6)
TA<TPS ……(7)
【0099】
釣銭制御部21は、(6)式及び(7)式が何れも満たされる場合、振動異常(図13)が発生しており、硬貨CNを正常に搬送できているものの、先検出信号S53に異常が表れていると判断する。このとき釣銭制御部21は、硬貨CNの搬送処理が正常であると判定し、中間オフ時間TMの期間において検出状態が継続的にオンであったと見なすべく、検出合計時間TAの全期間における検出状態をオンに補正する補正処理を行い、その後に検出状態遷移テーブルTBL2(図11)に基づいた認識処理を行う。また釣銭制御部21は、(6)式及び(7)式のうち少なくとも一方が満たされない場合、振動異常ではなく異物異常が発生している、若しくは正常に2枚の硬貨が通過していると判定する。このとき釣銭制御部21は、上述した中間オフ時間TMをオンに補正する補正処理を行わずに、検出状態遷移テーブルTBL2(図11)に基づいた認識処理を行う。
【0100】
[1-3-4.振動異常補正処理]
次に、釣銭制御部21において振動異常の判断及び検出状態の補正を行う振動異常補正処理について、図16のフローチャートを参照しながら説明する。なお、釣銭制御部21のメモリ23(図2)には、硬貨間隔時間TP2及び基準時間TPS(図12)が予め記憶されている。またここでは、上記と同様に先検出部53を例に説明するが、後検出部54についても同様の処理が行われる。
【0101】
釣銭制御部21(図2)は、硬貨出金部40から硬貨CNを出金する場合、CPU22によってメモリ23から振動異常補正プログラムを読み出して実行することにより、振動異常補正処理手順RT1(図16)を開始し、最初のステップSP1に移る。ステップSP1において釣銭制御部21は、先検出部53から得られる先検出信号S53を基に、信号レベル(すなわちオン又はオフ)を確認し、次のステップSP2に移る。
【0102】
ステップSP2において釣銭制御部21は、先検出信号S53がオンからオフへ変化したか否か、すなわちいわゆる立ち下がりとなりオンの期間が終了した時点であるか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、釣銭制御部221は再びステップSP1へ戻ることにより、信号レベルがオンからオフへ変化するタイミングを待ち受ける。
【0103】
一方、ステップSP2において肯定結果が得られると、このことは先検出信号S53がオンからオフへ変化したため、振動異常が発生したか否かを確認する必要があることを表している。このとき釣銭制御部21は、次のステップSP3に移る。
【0104】
ステップSP3において釣銭制御部21は、先検出信号S53において直近の2回のオンとなった部分に着目し、中間オフ時間TM及び検出合計時間TA(図13)をそれぞれ算出して、次のステップSP4に移る。
【0105】
ステップSP4において釣銭制御部21は、中間オフ時間TMが硬貨間隔時間TP2よりも短く(小さく)、且つ検出合計時間TAが基準時間TPSよりも短い(小さい)か否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは先検出信号S53において現在着目している2回のオンの部分が、異常振動に起因したものである可能性が高いことを表している。このとき釣銭制御部21は、次のステップSP5に移る。
【0106】
ステップSP5において釣銭制御部21は、先検出信号S53において現在着目している2回のオンの部分について、中間オフ時間TMの期間における信号レベルを継続的にオンと見なすような、すなわち検出合計時間TAの全期間をオンとするような補正処理を行い、次のステップSP6に移る。
【0107】
ステップSP6において釣銭制御部21は、振動異常補正処理手順RT1を終了し、補正後の先検出信号S53及び後検出信号S54に基づき、検出状態の遷移を判断した上で検出状態遷移テーブルTBL2(図11)に従った認識処理を行う。因みに釣銭制御部21は、出金処理が行われ出金搬送ベルト46が走行している間、振動異常補正処理手順RT1を繰り返し実行する。
【0108】
一方、ステップSP4において否定結果が得られると、このことは検出状態において現在着目している2回のオンの部分が異常振動に起因したものでは無く、正常な2枚の硬貨の通過若しくは異物異常に起因したものである可能性が高いことを表している。このとき釣銭制御部21は、ステップSP5の処理を行わずに次のステップSP6に移り、振動異常補正処理手順RT1を終了する。その後、釣銭制御部21は、先検出信号S53及び後検出信号S54に基づき検出状態の遷移を判断した上で、検出状態遷移テーブルTBL2(図11)に従った認識処理を行う。因みに釣銭制御部21は、所定の異常判定処理を行うことにより、異物異常が発生したと判定した場合には、出金処理の停止や異常発生の通知等の異常対応処理を行うようになっている。
【0109】
[1-4.効果等]
以上の構成において、第1の実施の形態によるレジ釣銭システム1の硬貨入出金部12は、硬貨出金部40の出金搬送ベルト46により搬送される硬貨CNの位置に応じて、先検出部53及び後検出部54により生成される先検出信号S53及び後検出信号S54をそれぞれオン又はオフに変化させる。また釣銭制御部21は、先検出信号S53及び後検出信号S54の信号レベルを基に定まる4通りの検出状態の遷移(図11)を基に、硬貨CNの移動状況を認識し、さらに硬貨CNの枚数を計数する。
【0110】
このとき釣銭制御部21は、先検出信号S53及び後検出信号S54において、直近の2回のオンとなった部分を基に振動異常の有無を判定し、該振動異常が発生していた場合に、1回の連続したオンと見なすよう検出状態を補正する(図16)。これにより釣銭制御部21は、先検出信号S53及び後検出信号S54において、振動異常の発生に起因して1枚の硬貨CNに相当する部分に2回のオンが出現したとしても(図13)、これを1回のオンに補正した上で、当該硬貨CNに関する移動状況の認識や枚数の計数を継続することができる。
【0111】
この結果、釣銭制御部21は、硬貨出金部40において出金される硬貨CNの枚数を精度良く検出でき、硬貨CNを正常に搬送しているにも関わらず検出状態の異常により出金処理を停止する、といった事態の発生を未然に防止できる。
【0112】
特に釣銭制御部21は、振動異常であるか否かを判断するための条件として、(6)式のように中間オフ時間TMが硬貨間隔時間TP2よりも短いことに加えて、(7)式のように検出合計時間TAが基準時間TPSよりも短いことを設定した(図16)。このため釣銭制御部21は、異物異常(図14及び図15)であるために中間オフ時間TMが比較的短くなった場合であっても、これを誤って振動異常と判断する恐れが無く、当該振動異常を精度良く判定することができる。
【0113】
また硬貨入出金部12では、特許文献1に記載されている硬貨出金部と比較して、硬貨出金部40においてセンサの追加や構造の変更等を行うことなく、既存の先検出部53及び後検出部54から得られる先検出信号S53及び後検出信号S54を基に、釣銭制御部21において振動異常補正処理手順RT1(図16)を実行するようにした。このため硬貨入出金部12は、特許文献1に記載されている硬貨出金部のハードウェア構成を変更する必要が無く、プログラムの追加や変更のような比較的低廉なコストにより、振動異常への対処を実現できる。
【0114】
これに加えて硬貨入出金部12は、振動異常と判断した場合にのみ先検出信号S53及び後検出信号S54を補正し、その他の場合は該先検出信号S53及び該後検出信号S54をそのまま維持するようにした。このため硬貨入出金部12は、特許文献1と同様の手法により、先検出信号S53及び後検出信号S54における状態の遷移を基に、検出状態遷移テーブルTBL2(図11)に基づいた硬貨CNの移動状況の認識や枚数の計数を行うことができる。
【0115】
以上の構成によれば、硬貨入出金部12の硬貨出金部40は、出金搬送ベルト46により搬送される硬貨CNにより、先検出信号S53及び後検出信号S54をそれぞれオン又はオフに変化させる。このとき釣銭制御部21は、各検出状態において2回のオンとなった部分において、中間オフ時間TMが硬貨間隔時間TP2よりも短く、且つ検出合計時間TAが基準時間TPSよりも短い場合、振動異常が発生していると判断し、検出状態を補正して1回の連続したオンとする。これにより硬貨入出金部12は、検出状態が異常と判断されることによる出金処理の停止を未然に防止でき、振動異常の影響を受けることなく硬貨CNに関する移動状況の認識や枚数の計数を精度良く行うことができる。
【0116】
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態によるレジ釣銭システム201(図1)は、第1の実施の形態によるレジ釣銭システム1と比較して、釣銭機3に代わる釣銭機203を有している点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。釣銭機203は、第1の実施の形態による釣銭機3と比較して、釣銭制御部21に代わる釣銭制御部221を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0117】
釣銭制御部221は、第1の実施の形態と比較して、メモリ23に代わるメモリ223を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。メモリ223は、第1の実施の形態によるメモリ23と一部異なる振動異常補正プログラム等を記憶している。
【0118】
この第2の実施の形態において、釣銭制御部221は、第1の実施の形態と異なり、先検出信号S53及び後検出信号S54の双方における信号レベルの変化を組み合わせて振動異常の有無を判断し、該振動異常に起因した信号波形の変化を補正するようになっている。
【0119】
図10に示したように、硬貨出金部40では、出金搬送ベルト46により1枚の硬貨CNが前方向へ正常に搬送されている場合、すなわち振動異常が無い状態で搬送されている場合、それぞれの検出状態は、無検出状態ST0、先検出状態ST1、両検出状態ST2、後検出状態ST3及び無検出状態ST0の順に遷移する。以下、このような検出状態の遷移パターンを正常遷移パターンと呼ぶ。
【0120】
ここで、出金搬送ベルト46により前方向へ搬送されている1枚の硬貨CNに異常振動が発生した場合を想定する。まず図17は、異常振動により先検出信号S53が一時的にオフに変化した場合の波形及び検出状態の遷移を表している。この図17では、先検出信号S53が1回目にオンに変化する時刻t50を基準として、当該先検出信号S53又は後検出信号S54がオン又はオフに変化するタイミングをそれぞれ時刻t51~t55とする。すなわち先検出信号S53は、時刻t50に第1のオンとなり、時刻t52に第1のオフとなり、時刻t53に第2のオンとなり、時刻t54に第2のオフとなっている。またこの場合、検出状態は、無検出状態ST0、先検出状態ST1、両検出状態ST2、後検出状態ST3、両検出状態ST2、後検出状態ST3及び無検出状態ST0の順に遷移することになる。以下、このような検出状態の遷移パターンを先振動異常遷移パターンと呼ぶ。
【0121】
次に図18は、異常振動により後検出信号S54が一時的にオフに変化した場合の波形及び検出状態の遷移を表している。この図18では、先検出信号S53が1回目にオンに変化する時刻t60を基準として、当該先検出信号S53又は後検出信号S54がオン又はオフに変化するタイミングをそれぞれ時刻t61~t65とする。すなわち後検出信号S54は、時刻t61に第1のオンとなり、時刻t62に第1のオフとなり、時刻t63に第2のオンとなり、時刻t65に第2のオフとなっている。またこの場合、検出状態は、無検出状態ST0、先検出状態ST1、両検出状態ST2、先検出状態ST1、両検出状態ST2、後検出状態ST3及び無検出状態ST0の順に遷移することになる。以下、このような検出状態の遷移パターンを後振動異常遷移パターンと呼ぶ。
【0122】
一方、硬貨出金部40では、例えば図14と対応する図19に模式図を示すように、2枚の硬貨CN1及びCN2が連接した状態で搬送される状況において、1枚目の硬貨CN1及び2枚目の硬貨CN2の間を埋めるように異物OBJが挟まる場合、すなわち異物異常が発生する場合がある。このとき後検出信号S54は、例えば図20に示すように、硬貨間隔時間TP2(図12)に相当する部分がオンのままとなる。この図20では、先検出信号S53が1回目にオンに変化する時刻t70を基準として、当該先検出信号S53又は後検出信号S54がオン又はオフに変化するタイミングをそれぞれ時刻t71~t75とする。すなわち先検出信号S53は、時刻t70に第1のオンとなり、時刻t72に第1のオフとなり、時刻t73に第2のオンとなり、時刻t74に第2のオフとなっている。
【0123】
ここで図20図17と比較すると、検出状態が何れも先振動異常遷移パターンであり、「無検出状態ST0、先検出状態ST1、両検出状態ST2、後検出状態ST3、両検出状態ST2、後検出状態ST3及び無検出状態ST0」の順に遷移している。このため釣銭制御部221は、先検出信号S53及び後検出信号S54における検出状態の遷移パターンから振動異常と異物異常とを区別することができない。
【0124】
そこで第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、検出合計時間TA及び中間オフ時間TMを用いた判定処理を行う。図17及び図18の何れの場合も、検出合計時間TA及び中間オフ時間TMについては、第1の実施の形態(図13)と同様の関係が当てはまる。すなわち検出合計時間TAは、図12に示した単硬貨時間TP1と同程度であり、誤差等を考慮したとしても、連接硬貨時間TP3よりも十分に短い時間となる。また中間オフ時間TMは、1枚の硬貨CNが振動する際の周期等を考慮すると、図12に示した硬貨間隔時間TP2よりも十分に短い時間になると予想される。
【0125】
一方、図19のように異物異常が発生した場合、図20の先検出信号S53及び後検出信号S54は、連接正常検出の場合(図12)と比較して、中間オフ時間TMが硬貨間隔時間TP2と同等となり、また検出合計時間TAが連接硬貨時間TP3と同等又はそれ以上となると予想される。
【0126】
そこで釣銭制御部221では、第1の実施の形態による釣銭制御部21と同様に、単硬貨時間TP1、硬貨間隔時間TP2及び連接硬貨時間TP3との間で(5)式を満たすような基準時間TPSを設定した。また釣銭制御部221では、やはり釣銭制御部21と同様に、中間オフ時間TM及び検出合計時間TAと、硬貨間隔時間TP2及び基準時間TPSとの間で、(6)式及び(7)式のような条件を設定した。
【0127】
TP1+TP2<TPS<TP3 ……(5)
TM<TP2 ……(6)
TA<TPS ……(7)
【0128】
釣銭制御部221は、先検出信号S53及び後検出信号S54における検出状態が先振動異常遷移パターン(図17)又は後振動異常遷移パターン(図18)であり、且つ(6)式及び(7)式が何れも満たされる場合、振動異常が発生したと判断する。このとき釣銭制御部221は、中間オフ時間TMの期間において検出状態が継続的にオンであったものと見なし、すなわち検出合計時間TAの全期間における検出状態をオンに補正する処理を行い、その後に検出状態遷移テーブルTBL2(図11)に基づいた認識処理を行う。
【0129】
また釣銭制御部221は、先振動異常遷移パターン(図17)又は後振動異常遷移パターン(図18)であるものの、(6)式及び(7)式のうち少なくとも一方が満たされない場合、振動異常ではなく異物異常が発生していると判断し、出金処理を停止する等の異常対応処理を行う。
【0130】
次に、釣銭制御部221において振動異常の判断及び検出状態の補正を行う振動異常補正処理について、図16と対応する図21のフローチャートを参照しながら説明する。なお、釣銭制御部221のメモリ223(図2)には、第1の実施の形態と同様に、硬貨間隔時間TP2及び基準時間TPS(図12)が予め記憶されている。
【0131】
釣銭制御部221(図2)は、硬貨出金部40から硬貨CNを出金する場合、CPU22によってメモリ223から振動異常補正プログラムを読み出して実行することにより、振動異常補正処理手順RT2(図21)を開始し、最初のステップSP21に移る。ステップSP21において釣銭制御部221は、先検出部53及び後検出部54から得られる先検出信号S53及び後検出信号S54の変化を基に、直近の検出状態の遷移パターンを確認し、次のステップSP22に移る。
【0132】
ステップSP22において釣銭制御部221は、直近の検出状態の遷移パターンが先振動異常遷移パターン(図17)又は後振動異常遷移パターン(図18)の何れかであるか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、釣銭制御部221は再びステップSP1へ戻ることにより、先振動異常遷移パターン又は後振動異常遷移パターンが出現するのを待ち受ける。
【0133】
一方、ステップSP22において肯定結果が得られると、このことは振動異常が発生したか否かを確認する必要があることを表している。このとき釣銭制御部21は、次のステップSP23に移る。ステップSP23において釣銭制御部221は、先振動異常遷移パターン(図17)であれば先検出信号S53において、後振動異常遷移パターン(図18)であれば後検出信号S54において、直近の2回のオンとなった部分に着目し、中間オフ時間TM及び検出合計時間TAをそれぞれ算出して、次のステップSP24に移る。
【0134】
その後、釣銭制御部221は、ステップSP24~SP26において、ステップSP4~SP6(図16)とそれぞれ同様の処理を行う。すなわち釣銭制御部221は、中間オフ時間TMが硬貨間隔時間TP2よりも短く、且つ検出合計時間TAが基準時間TPSよりも短い場合、振動異常が発生したと判定し、中間オフ時間TMの信号レベルをオンとするように補正し、振動異常補正処理手順RT2を終了する。因みに釣銭制御部221は、第1の実施の形態と同様に、出金処理が行われ出金搬送ベルト46が走行している間、振動異常補正処理手順RT2を繰り返し実行する。
【0135】
以上の構成において、第2の実施の形態によるレジ釣銭システム201の釣銭制御部221は、先振動異常遷移パターン(図17)又は後振動異常遷移パターン(図18)が出現し、且つ中間オフ時間TMが硬貨間隔時間TP2よりも短く、検出合計時間TAが基準時間TPSよりも短い場合、振動異常が発生したと判定して検出信号を補正する。これにより釣銭制御部221は、第1の実施の形態と同様、硬貨出金部40において出金される硬貨CNの枚数を精度良く検出でき、硬貨CNを正常に搬送しているにも関わらず検出状態の異常により出金処理を停止する、といった事態の発生を未然に防止できる。
【0136】
特に釣銭制御部221は、先検出信号S53及び後検出信号S54の双方を基に決定される検出状態の遷移パターンが先振動異常遷移パターン(図17)又は後振動異常遷移パターン(図18)であることを条件に加えた。このため釣銭制御部221は、先検出信号S53及び後検出信号S54の何れか一方のみを用いる第1の実施の形態と比較して、振動異常の有無をより高い精度で判定することができる。
【0137】
その他の点においても、第2の実施の形態によるレジ釣銭システム201は、第1の実施の形態によるレジ釣銭システム1と同様の作用効果を奏し得る。
【0138】
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、先検出信号S53及び後検出信号S54に基づく検出状態の判定や振動異常補正処理手順RT1(図16)の実行を、釣銭制御部21(図2)において行う形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば硬貨入出金部12内に演算処理を行う硬貨制御部を設け、先検出信号S53及び後検出信号S54に基づく検出状態の判定や振動異常補正処理手順RT1の実行を当該硬貨制御部において行うようにしても良く、或いは釣銭制御部21及び当該硬貨制御部が協働して行うようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0139】
また上述した第1の実施の形態においては、硬貨間隔時間TP2を1種類のみメモリ23(図2)に予め記憶させておき、振動異常補正処理手順RT1(図16)の実行時にこれを読み出して使用する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば硬貨CNの金種ごとに硬貨間隔時間TP2をそれぞれ計測してメモリ23に予め記憶させておき、振動異常補正処理手順RT1(図16)の実行時に、収納庫42の金種に応じた硬貨間隔時間TP2を読み出して使用しても良い。これにより、例えば金種ごとに硬貨の直径が大きく異なる場合に、振動異常の判定精度を高めることができる。第2の実施の形態についても同様である。
【0140】
さらに上述した第1の実施の形態においては、基準時間TPSを1種類のみメモリ23(図2)に予め記憶させておき、振動異常補正処理手順RT1(図16)の実行時にこれを読み出して使用する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば硬貨CNの金種ごとに、(5)式を満たす範囲内で基準時間TPSをそれぞれ設定しておき、振動異常補正処理手順RT1(図16)の実行時に、収納庫42の金種に応じた基準時間TPSを読み出して使用しても良い。これにより、例えば金種ごとに硬貨の直径が大きく異なる場合に、振動異常の判定精度を高めることができる。第2の実施の形態についても同様である。
【0141】
さらに第1の上述した実施の形態においては、先検出部53の検出光L1が通過する先検出孔H1を案内壁47に穿設し、後検出部54の検出光L2が通過する後検出孔H2を案内壁48に穿設するように、すなわち出金搬送ベルト46の左右にそれぞれ配置する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば先検出孔H1及び後検出孔H2をいずれも案内壁47に、すなわち出金搬送ベルト46の左側に配置する等、それぞれを出金搬送ベルト46の左右いずれに配置するようにしても良く、或いは例えば出金搬送ベルト46が複数本のベルトを走行させる構成の場合にベルト同士の間に配置するようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0142】
さらに上述した第1の実施の形態においては、案内壁側面47Bから先検出孔H1までの距離及び案内壁側面48Bから後検出孔H2までの距離を、同一の隙間Sとする形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば案内壁側面47Bから先検出孔H1までの距離を隙間S1とし、案内壁側面48Bから後検出孔H2までの距離を隙間S2としたときに、隙間S1と隙間S2とを相違させるようにしても良い。この場合、隙間S1及び隙間S2のいずれも上述した(3)式及び(4)式を満たせば良い。また、前後方向に関する先検出孔H1と後検出孔H2との距離Gについても、硬貨CNの搬送時に4通りの検出状態、すなわち無検出状態ST0、先検出状態ST1、両検出状態ST2及び後検出状態ST3(図8)を全て取ることができ、且つ他の検出状態を取らない範囲で任意の値とすることができる。さらに、搬送路幅W(図6)については、少なくとも硬貨CNの直径Dよりも大きければ良く、且つ出金搬送ベルト46上において硬貨CNを左右方向に2列以上に広げなければ良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0143】
さらに上述した第1の実施の形態においては、前後に配置した2個のローラの間にベルトを架け渡した出金搬送ベルト46により硬貨CNを搬送する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば複数のローラやローラ及びベルトの組み合わせ等、種々の搬送手法により硬貨CNを前後に搬送するようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0144】
さらに上述した第1の実施の形態においては、硬貨CNの搬送路を前後方向のみ傾斜させ左右方向には傾斜させない形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば硬貨CNの搬送路を左右方向に傾斜させることにより硬貨CNを左右いずれかの側面に当接させながら搬送するようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0145】
さらに上述した第1の実施の形態においては、検出状態遷移テーブルTBL2(図11)において、異常な検出状態の遷移を「異常」として認識し、これに応じた出金処理の停止や異常の通知等を行う形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば異常な検出状態の遷移が所定回数以上検出されてから出金処理の停止や異常の通知等を行うようにしても良く、或いは異常な検出状態の遷移を無視して出金処理を継続するようにしても良い。また、「停滞」が所定回数以上継続した場合にも「異常」と判断するようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0146】
さらに上述した第1の実施の形態においては、検出状態遷移テーブルTBL2(図11)に基づき、連続する2つの検出状態の遷移から前方向、後方向、停滞、或いは異常と判断する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、種々の遷移パターンから前方向及び後方向を判断するようにしても良い。例えば、無検出状態ST0及び両検出状態ST2の2つの状態を区切りとして、無検出状態ST0、先検出状態ST1及び両検出状態ST2の順に遷移した場合、並びに両検出状態ST2、後検出状態ST3及び無検出状態ST0の順に遷移した場合をそれぞれ前方向と判断しても良い。また、無検出状態ST0、後検出状態ST3及び両検出状態ST2の順に遷移した場合、並びに両検出状態ST2、先検出状態ST1及び無検出状態ST0の順に遷移した場合をそれぞれ後方向と判断しても良い。これらの場合、それ以外の遷移を異常と判断することができる。第2の実施の形態についても同様である。
【0147】
さらに上述した第1の実施の形態においては、硬貨出金部40により媒体としての薄い円板状でなる硬貨CNを搬送する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば球形や円柱形等、種々の形状でなる媒体を搬送路に沿って搬送する場合に本発明を適用しても良い。この場合媒体の形状としては、硬貨CNの搬送時に4通りの検出状態を全て取ることができ、且つ他の検出状態を取らないような形状であれば良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0148】
さらに上述した第1の実施の形態においては、レジ係員により操作される精算機であるレジ釣銭システム1に本発明を適用する形態について述べた。しかし、これに限らず、例えば顧客自身により操作されるセルフ精算機やセミセルフ精算機として構成されたレジ釣銭システムに本発明を適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0149】
さらに上述した第1の実施の形態においては、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等のレジ精算場において使用されるPOSレジに接続されたレジ釣銭システム1に本発明を適用する形態について述べた。しかしこれに限らず、例えば銀行内において使用される自動テラー現金預払機(窓口端末)等の銀行員が使用する端末や各種自動販売機等、硬貨を取り扱う種々の装置に本発明を適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0150】
さらに上述した第1の実施の形態においては、媒体としての硬貨を取り扱うレジ釣銭システム1に本発明を適用する形態について述べた。しかし、これに限らず、例えば遊技場において使用されるメダル等、種々の媒体を搬送する媒体搬送装置に本発明を適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0151】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態にも本発明の適用範囲が及ぶものである。また本発明は、上述した各実施の形態及び上述した他の実施の形態のうち任意の実施の形態に記載された構成の一部を抽出し、上述した実施の形態及び他の実施の形態のうちの任意の実施の形態の構成の一部と置換・転用する場合や、該抽出された構成の一部を任意の実施の形態に追加する場合にも本発明の適用範囲が及ぶものである。
【0152】
さらに上述した第1の実施の形態においては、搬送部としての出金搬送部43と、案内部としての案内壁47及び48と、先検出部としての先検出部53と、後検出部としての後検出部54と、制御部としての釣銭制御部21とによって媒体搬送装置としての硬貨入出金部12を構成する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる搬送部と、案内部と、先検出部と、後検出部と、制御部とによって媒体搬送装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明は、硬貨等の媒体を搬送すると共にその数量を計数する種々の搬送装置でも利用できる。
【符号の説明】
【0154】
1、201……レジ釣銭システム、3、203……釣銭機、12……硬貨入出金部、16……硬貨入金口、18……硬貨出金口、21、221……釣銭制御部、40……硬貨出金部、42……収納庫、46……出金搬送ベルト、47、48……案内壁、47B、48B……案内壁側面、53……先検出部、54……後検出部、L1、L2……検出光、H1……先通過孔、H2……後通過孔、CN……硬貨、S53……先検出信号、S54……後検出信号、ST0……無検出状態、ST1……先検出状態、ST2……両検出状態、ST3……後検出状態、TA……検出合計時間、TM……中間オフ時間、TP1……単硬貨時間、TP2……硬貨間隔時間、TP3……連接硬貨時間、TPS……基準時間、TBL1……検出テーブル、TBL2……検出状態遷移テーブル。

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