(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080336
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】放射線検出パネル及び放射線検出パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
G01T1/20 D
G01T1/20 E
G01T1/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193435
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和泉 崇
(72)【発明者】
【氏名】會田 博之
(72)【発明者】
【氏名】榛葉 勇一
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188BB02
2G188CC15
2G188CC22
2G188DD05
2G188DD44
(57)【要約】
【課題】 検出する画像の品質を向上できる放射線検出パネル及び放射線検出パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】複数の光電変換部を有している光電変換基板と、前記光電変換基板に設けられ、前記光電変換基板に対向している一方面と、前記一方面と反対側に位置している他方面とを有しているシンチレータ層と、前記他方面に設けられ、接着剤と光散乱粒子とで形成されている反射層と、を備え、前記反射層は、前記他方面に対向している対向面と、前記対向面とは反対側に位置している凹凸面と、を有し、前記凹凸面は、前記シンチレータ層から遠ざかる向きに突出している複数の凸部の表面と、前記複数の凸部よりも窪んでいる凹部の表面と、を含み、前記複数の凸部の各々は、前記複数の凸部の各々と隣り合う凸部を有し、前記複数の凸部の各々から前記隣り合う凸部までの間隔は、ランダムである、放射線検出パネル。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光を電気信号に変換する複数の光電変換部を有している光電変換基板と、
前記光電変換基板に設けられ、前記光電変換基板に対向している一方面と、前記一方面と反対側に位置している他方面とを有し、放射線を蛍光に変換するシンチレータ層と、
前記他方面に設けられ、接着剤と光散乱粒子とで形成され、前記シンチレータ層で生じた蛍光を前記複数の光電変換部に向かって反射する反射層と、を備え、
前記反射層は、前記他方面に対向している対向面と、前記対向面とは反対側に位置している凹凸面と、を有し、
前記凹凸面は、前記シンチレータ層から遠ざかる向きに突出している複数の凸部の表面と、前記複数の凸部よりも窪んでいる凹部の表面と、を含み、
前記複数の凸部の各々は、前記複数の凸部の各々と隣り合う凸部を有し、
前記複数の凸部の各々から前記隣り合う凸部までの間隔は、ランダムである、
放射線検出パネル。
【請求項2】
前記複数の凸部の各々における重心から前記隣り合う凸部における重心に向かう方向は、ランダムである、
請求項1に記載の放射線検出パネル。
【請求項3】
前記反射層は、複数の混合物で構成され、
前記複数の混合物の各々は、接着剤と光散乱粒子とで形成された粒である、
請求項1に記載の放射線検出パネル。
【請求項4】
前記複数の凸部の各々は、前記複数の混合物で形成されている、
請求項3に記載の放射線検出パネル。
【請求項5】
前記対向面は、前記他方面に接触し固定されている複数の接触面と、前記他方面に隙間を設けて対向する非接触面と、を含んでいる、
請求項1に記載の放射線検出パネル。
【請求項6】
入射される蛍光を電気信号に変換する複数の光電変換部を有している光電変換基板を用意し、
前記光電変換基板上に、前記光電変換基板に対向している一方面と、前記一方面と反対側に位置している他方面とを有し、放射線を蛍光に変換するシンチレータ層を形成し、
接着剤と、光散乱粒子と、前記接着剤を溶解する溶媒とで形成された第1混合材料を用意し、
前記第1混合材料を複数の粒に加工することで、各々が前記接着剤と前記光散乱粒子と前記溶媒とで形成された粒である複数の第2混合材料を形成し、
前記複数の第2混合材料を前記他方面に散布し、
前記他方面に散布された前記複数の第2混合材料を乾燥させることで、前記シンチレータ層で生じた蛍光を前記複数の光電変換部に向かって反射する反射層を形成する、
放射線検出パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線検出パネル及び放射線検出パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線検出器の一例に、X線検出器がある。X線検出器は、複数の光電変換素子が格子状に設けられた光電変換基板と、光電変換基板の上に設けられたシンチレータ層と、シンチレータ層の上に形成された反射層と、を有している。反射層は、樹脂系の接着剤と光散乱粒子と溶媒との混合材料をディスペンサでシンチレータ層に塗布し、塗布された混合材料を乾燥させることで形成されることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態は、検出する画像の品質を向上できる放射線検出パネル及び放射線検出パネルの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る放射線検出パネルは、蛍光を電気信号に変換する複数の光電変換部を有している光電変換基板と、前記光電変換基板に設けられ、前記光電変換基板に対向している一方面と、前記一方面と反対側に位置している他方面とを有し、放射線を蛍光に変換するシンチレータ層と、前記他方面に設けられ、接着剤と光散乱粒子とで形成され、前記シンチレータ層で生じた蛍光を前記複数の光電変換部に向かって反射する反射層と、を備え、前記反射層は、前記他方面に対向している対向面と、前記対向面とは反対側に位置している凹凸面と、を有し、前記凹凸面は、前記シンチレータ層から遠ざかる向きに突出している複数の凸部の表面と、前記複数の凸部よりも窪んでいる凹部の表面と、を含み、前記複数の凸部の各々は、前記複数の凸部の各々と隣り合う凸部を有し、前記複数の凸部の各々から前記隣り合う凸部までの間隔は、ランダムである。
【0006】
また、一実施形態に係る放射線検出パネルの製造方法は、入射される蛍光を電気信号に変換する複数の光電変換部を有している光電変換基板を用意し、前記光電変換基板上に、前記光電変換基板に対向している一方面と、前記一方面と反対側に位置している他方面とを有し、放射線を蛍光に変換するシンチレータ層を形成し、接着剤と、光散乱粒子と、前記接着剤を溶解する溶媒とで形成された第1混合材料を用意し、前記第1混合材料を複数の粒に加工することで、各々が前記接着剤と前記光散乱粒子と前記溶媒とで形成された粒である複数の第2混合材料を形成し、前記複数の第2混合材料を前記他方面に散布し、前記他方面に散布された前記複数の第2混合材料を乾燥させることで、前記シンチレータ層で生じた蛍光を前記複数の光電変換部に向かって反射する反射層を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るX線検出器を示す断面図である。
【
図2】
図2は、上記実施形態に係るX線検出器の支持基板、X線検出パネル、回路基板、及び複数のFPCを示す斜視図であり、画像伝送部を併せて示す図である。
【
図3】
図3は、上記実施形態に係るX線検出器のX線検出モジュールの一部を示す拡大断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す複数の混合物のうちの1つを示す拡大断面図である。
【
図5】
図5は、上記実施形態に係るX線検出器の反射層の一部を示す平面図であり、防湿カバー側から見た図である。
【
図8】
図8は、
図5の矢視Cの平面図であり、反射層における対向面の一部を示す図である。
【
図9】
図9は、上記実施形態に係るX線検出器のX線検出モジュールを示す平面図である。
【
図11】
図11は、上記実施形態に係るX線検出パネルにおいて反射層を形成する際の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の趣旨を保っての適宣変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面や説明をより明確にするため、実際の様態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宣省略することがある。
【0009】
始めに、本発明の実施形態の基本構想について説明する。
放射線検出器として、例えばX線検出器がある。X線検出器としてアクティブマトリクス方式を用いたX平面検出器が開発されている。X線検出器は、放射線検出パネルとしてのX線検出パネルを備えている。X線検出パネルは、シンチレータ層や光電変換基板など備えている。光電変換基板は、ガラスで形成された基板と、基板の上に形成された光電変換部や配線などを有する回路層とを有している。光電変換部は、アモルファスシリコン(a-Si)フォトダイオードやCCD(Charge Coupled Device)などの光電変換素子を有している。
【0010】
光電変換部の上方には、シンチレータ層が形成されている。
シンチレータ層の材料は、例えば、タリウム賦活ヨウ化セシウムである。シンチレータ層は、ダイシングによる溝の形成や真空蒸着法による堆積などにより、解像度特性を向上させることができる。
X線検出器は、照射されたX線を検出することにより、X線撮影像やリアルタイムのX線画像のデジタル信号を出力する。具体的には、X線検出器は、入射されるX線を蛍光変換体であるシンチレータ層で可視光である蛍光に変換し、光電変換素子で上記蛍光を電気信号に変換することで、X線画像をデジタル信号として取得する。
【0011】
シンチレータ層の周囲には封止部が設けられている。封止部は、ポリプロピレンを主成分とした熱可塑性樹脂から形成されている。更に、シンチレータ層は、防湿カバーによって覆われている。防湿カバーは、シンチレータ層が大気中の水分によって劣化することを防止することを目的として設けられている。防湿カバーは、例えば、アルミニウム等から成る金属層と、PET等から成る樹脂層との積層構造を有している。また、防湿カバーは、封止部と接合されている。シンチレータ層は、光電変換基板と、封止部と、防湿カバーとで密閉された空間に位置している。
【0012】
X線検出パネルは、反射層をさらに備えている。反射層は、シンチレータ層と防湿カバーとの間に位置している。反射層は、シンチレータ層からの蛍光の利用効率を高めてX線検出器の感度特性を改善するために設けられている。反射層は、光電変換部と反対側に向かう蛍光を反射して、光電変換部に到達する蛍光を増大させるものである。
反射層は、銀(Ag)合金やアルミニウムなどの蛍光反射率が高い金属をシンチレータ層上に成膜する方法や、接着剤や光散乱粒子などで形成された混合材料(ペースト材料)をディスペンサで塗布する方法で形成されることが知られている。上記の混合材料の粘度は、例えば、2000mPa・sである。混合材料を塗布して反射層を形成する場合、反射層は、塗布された混合材料を乾燥させることで形成される。この時、混合材料は圧縮し、シンチレータ層は、この圧縮による引張応力を受け剥離する場合がある。また、X線検出パネルが変形してしまう場合がある。
【0013】
更に、上記のように混合材料を塗布して形成した反射層は、光電変換基板と反対側に周期性のある凹凸面を有している。この場合、X線検出器は、凹凸に応じたムラを画像として検出するため、画像の品質が低下してしまう。
そこで、本発明の実施形態においては、かかる問題を改善するものであり、検出する画像の品質を向上できる放射線検出パネル及び放射線検出パネルの製造方法を得ることができるものである。上記問題を改善するための手段及び手法について説明する。
【0014】
図1は、一実施形態に係るX線検出器1を示す断面図である。X線検出器1は、X線画像検出器であり、放射線検出パネルとしてのX線検出パネルを利用するX線平面検出器である。
図1に示すように、X線検出器1は、X線検出モジュール10、支持基板12、回路基板11、スペーサ9a,9b,9c,9d、筐体51、FPC(フレキシブルプリント基板)2e1、入射窓52等を備えている。X線検出モジュール10は、X線検出パネルPNLを備えている。X線検出パネルPNLは、支持基板12と入射窓52との間に位置している。X線検出パネルPNLは、入射窓52と対向した防湿カバー7を備えている。
【0015】
入射窓52は、筐体51の開口に取付けられている。入射窓52は、X線を透過させる。そのため、X線は、入射窓52を透過してX線検出モジュール10に入射される。入射窓52は、板状に形成され、筐体51内部を保護する機能を有している。入射窓52は、X線吸収率の低い材料で薄く形成することが望ましい。これにより、入射窓52で生じる、X線の散乱と、X線量の減衰とを低減することができる。そして、薄くて軽いX線検出器1を実現することができる。本実施形態において、入射窓52は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon-Fiber-Reinforced Plastic)で形成されている。
X線検出モジュール10、支持基板12、回路基板11、FPC2e1等は、筐体51及び入射窓52で囲まれた空間の内部に収容されている。
【0016】
X線検出モジュール10は、薄い部材を積層して構成されているため、軽く機械的強度の低いものである。このため、X線検出パネルPNL(X線検出モジュール10)は、粘着シートを介して支持基板12の平坦な一面に固定されている。支持基板12は、例えば、アルミニウム合金で板状に形成され、X線検出パネルPNLを安定して保持するために必要な強度を有している。これにより、X線検出器1に外部から振動や衝撃が加わった際におけるX線検出パネルPNLの破損を抑制することができる。
【0017】
支持基板12の他面には、スペーサ9a,9bを介して回路基板11が固定されている。回路基板11は、X線検出パネルPNL(後述する光電変換基板2)に間隔を空けて位置している。スペーサ9a,9bを使用することで、主に金属から構成される支持基板12から回路基板11までの電気的絶縁距離を保持することができる。
筐体51の内面には、スペーサ9c,9dを介して回路基板11が固定されている。スペーサ9c,9dを使用することで、主に金属から構成される筐体51から回路基板11までの電気的絶縁距離を保持することができる。筐体51は、回路基板11及びスペーサ9a,9b,9c,9dを介して支持基板12等を支持している。
【0018】
回路基板11にはFPC2e1に対応するコネクタが実装され、FPC2e1はコネクタを介して回路基板11に電気的に接続されている。FPC2e1とX線検出パネルPNLとの接続には、ACF(異方性導電フィルム)を利用した熱圧着法が用いられる。この方法により、X線検出パネルPNLの複数の微細なパッドと、FPC2e1の複数の微細なパッドとの電気的接続が確保される。なお、X線検出パネルPNLのパッドに関しては後述する。
【0019】
上記のように、回路基板11は、上記コネクタ、FPC2e1等を介してX線検出パネルPNL(光電変換基板2)に電気的に接続されている。回路基板11は、X線検出パネルPNL(光電変換基板2)を電気的に駆動し、かつ、X線検出パネルPNL(光電変換基板2)からの出力信号を電気的に処理するものである。
【0020】
図2は、上記実施形態に係るX線検出器1の支持基板12、X線検出パネルPNL、回路基板11、及び複数のFPC2e1,2e2を示す斜視図であり、画像伝送部4を併せて示す図である。なお、
図2には、X線検出器1の全ての部材を示していない。後述する反射層等、X線検出器1のいくつかの部材の図示は、
図2において省略している。
【0021】
図2に示すように、X線検出パネルPNLは、光電変換基板2、シンチレータ層5等を備えている。光電変換基板2は、基板2a、光電変換部2b、複数の制御ライン(又はゲートライン)2c1、複数のデータライン(又はシグナルライン)2c2等を有している。なお、光電変換部2b、制御ライン2c1、及びデータライン2c2の数、配置等は、
図2の例に限定されるものではない。
複数の制御ライン2c1は、行方向Xに延在し、列方向Yに所定の間隔を空けて並べられている。複数のデータライン2c2は、列方向Yに延在し、複数の制御ライン2c1と交差し、行方向Xに所定の間隔を空けて並べられている。ここで、行方向X及び列方向Yに直交する方向を直交方向Zとする。
【0022】
複数の光電変換部2bは、基板2aのシンチレータ層5側に設けられている。光電変換部2bは、制御ライン2c1とデータライン2c2とにより区画された四角形状の領域に設けられている。1つの光電変換部2bは、X線画像の1つの画素に対応する。複数の光電変換部2bは、マトリックス状に並べられている。上記のことから、光電変換基板2は、アレイ基板である。
【0023】
各々の光電変換部2bは、光電変換素子2b1と、スイッチング素子としてのTFT(薄膜トランジスタ)2b2と、を有している。TFT2b2は、対応する一の制御ライン2c1と、対応する一のデータライン2c2とに接続されている。光電変換素子2b1は、TFT2b2に電気的に接続されている。
【0024】
制御ライン2c1は、FPC2e1を介して回路基板11に電気的に接続されている。回路基板11は、FPC2e1を介して複数の制御ライン2c1に制御信号S1を与える。データライン2c2は、FPC2e2を介して回路基板11に電気的に接続されている。光電変換素子2b1によって変換された画像データ信号S2(光電変換部2bに蓄積された電荷)は、TFT2b2、データライン2c2、及びFPC2e2を介して回路基板11に伝送される。
【0025】
X線検出器1は、画像伝送部4をさらに備えている。画像伝送部4は、配線4aを介して回路基板11に接続されている。なお、画像伝送部4は、回路基板11に組み込まれてもよい。画像伝送部4は、図示しない複数のアナログ-デジタル変換器によりデジタル信号に変換された画像データの信号に基づいて、X線画像を生成する。生成されたX線画像のデータは、画像伝送部4から外部の機器に向けて出力される。
【0026】
図3は、上記実施形態に係るX線検出器1のX線検出モジュール10の一部を示す拡大断面図である。
図3に示すように、光電変換基板2は、基板2a、複数の光電変換部2b、及び絶縁層21,22,23,24,25を有している。複数の光電変換部2bは、検出領域DAに位置している。各々の光電変換部2bは、光電変換素子2b1と、TFT2b2と、を備え、入射される蛍光を電気信号(一例においては、画像データ信号)に変換する。検出領域DAは、シンチレータ層5にX線が入射し蛍光を発した場合に光電変換部2bへ蛍光が到達し得る領域である。
【0027】
TFT2b2は、ゲート電極GE、半導体層SC、ソース電極SE、及びドレイン電極DEを有している。光電変換素子2b1は、フォトダイオードで構成されている。なお、光電変換素子2b1は、CCD等で構成されてもよく、光を電荷に変換するように構成されていればよい。
【0028】
基板2aは、板状の形状を有し、絶縁材料で形成されている。上記絶縁材料としては、無アルカリガラスなどのガラスを挙げることができる。基板2aの平面形状は、例えば、四角形である。基板2aの厚みは、例えば、0.7mmである。絶縁層21は、基板2aの上に設けられている。
【0029】
絶縁層21の上に、ゲート電極GEが形成されている。ゲート電極GEは、上記制御ライン2c1に電気的に接続されている。絶縁層22は、絶縁層21及びゲート電極GEの上に設けられている。半導体層SCは、絶縁層22の上に設けられ、ゲート電極GEに対向している。半導体層SCは、非晶質半導体としての非晶質シリコン、多結晶半導体としての多結晶シリコン、酸化物半導体としての酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)等の半導体材料で形成されている。
【0030】
絶縁層22及び半導体層SCの上に、ソース電極SE及びドレイン電極DEが設けられている。ゲート電極GE、ソース電極SE、ドレイン電極DE、上記制御ライン2c1、及び上記データライン2c2は、アルミニウムやクロムなどの低抵抗金属を用いて形成されている。
ソース電極SEは、半導体層SCのソース領域に電気的に接続されている。また、ソース電極SEは、上記データライン2c2に電気的に接続されている。ドレイン電極DEは、半導体層SCのドレイン領域に電気的に接続されている。
【0031】
絶縁層23は、絶縁層22、半導体層SC、ソース電極SE、及びドレイン電極DEの上に設けられている。光電変換素子2b1は、ドレイン電極DEに電気的に接続されている。絶縁層24は、絶縁層23及び光電変換素子2b1の上に設けられている。バイアス線BLは、絶縁層24の上に設けられ、絶縁層24に形成されたコンタクトホールを通り光電変換素子2b1に接続されている。絶縁層25は、絶縁層24及びバイアス線BLの上に設けられている。
絶縁層21,22,23,24,25は、無機絶縁材料、有機絶縁材料等の絶縁材料で形成されている。無機絶縁材料としては、酸化物絶縁材料、窒化物絶縁材料、及び酸窒化物絶縁材料を挙げることができる。有機絶縁材料としては、樹脂を挙げることができる。
【0032】
シンチレータ層5は、複数の光電変換部2bの上に設けられている。シンチレータ層5は、少なくとも検出領域DAに位置し、複数の光電変換部2bの上方を覆っている。シンチレータ層5は、入射される放射線(一例では、X線)を蛍光に変換する。
なお、光電変換素子2b1は、シンチレータ層5から入射される蛍光を電荷に変換する。変換された電荷は、光電変換素子2b1に蓄積される。TFT2b2は、光電変換素子2b1への蓄電及び光電変換素子2b1からの放電を切り替えることができる。なお、光電変換素子2b1の自己容量が不十分である場合、光電変換基板2は、コンデンサ(蓄積キャパシタ)をさらに有し、光電変換素子2b1で変換された電荷をコンデンサに蓄積してもよい。
【0033】
シンチレータ層5は、光電変換基板2に設けられ、光電変換基板に対向している一方面5aと、一方面と反対側に位置している他方面5bとを有している。
シンチレータ層5は、タリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)で形成されている。真空蒸着法を用いてシンチレータ層5を形成すれば、複数の柱状結晶の集合体からなるシンチレータ層5が得られる。複数の柱状結晶の各々は、径が次第に細くなるテーパ形状の上端部5b1を有している。他方面5bは、複数の上端部5b1の表面で構成されている。
シンチレータ層5の厚みは、例えば、600μmである。シンチレータ層5最表面において、シンチレータ層5の柱状結晶の太さは、3乃至10μmである。
【0034】
シンチレータ層5を形成する材料は、タリウム賦活ヨウ化セシウムに限定されるものではない。シンチレータ層5は、タリウム賦活ヨウ化ナトリウム(NaI:Tl)、ナトリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Na)、ユーロピウム賦活臭化セシウム(CsBr:Eu)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、酸硫化ガドリニウム(Gd2O2S)等で形成されてもよい。
【0035】
防湿カバー7は、シンチレータ層5の上方に設けられ、シンチレータ層5を覆っている。なお、シンチレータ層5は、吸湿性を有している。防湿カバー7は、大気中に含まれる水分により、シンチレータ層5の特性の劣化を抑制するために設けられている。防湿カバー7は、シンチレータ層5の露出部分を完全に覆っている。
防湿カバー7は、金属を含むシートで形成されている。上記金属としては、アルミニウムを含む金属、銅を含む金属、マグネシウムを含む金属、タングステンを含む金属、ステンレス、コバール等を挙げることができる。防湿カバー7が金属を含んでいる場合、防湿カバー7は、水分の透過を、防止したり、大幅に抑制したりすることができる。
【0036】
X線検出パネルPNLは、反射層6をさらに備えている。反射層6は、シンチレータ層の他方面5bに設けられている。つまり、シンチレータ層5のX線の入射側に設けられている。反射層6は、シンチレータ層5と防湿カバー7との間に位置している。反射層6は、少なくとも検出領域DAに位置し、シンチレータ層5の上面を覆っている。反射層6は、蛍光の利用効率を高めて感度特性の向上を図るために設けられている。すなわち、反射層6は、シンチレータ層5で生じた蛍光のうち、複数の光電変換部2bが設けられた側とは反対側に向かう蛍光を複数の光電変換部2bに向かって反射する。反射層6は、複数の混合物6aで構成されている。反射層6は、シンチレータ層5の他方面5bに対向している対向面63と、対向面63とは反対側に位置している凹凸面64とを有している。
【0037】
図4は、
図3に示す複数の混合物6aのうちの1つを示す拡大断面図である。
図4に示すように、複数の混合物6aの各々は、接着剤(バインダ材)61と光散乱粒子62とで形成された粒である。つまり、反射層6は、接着剤61と光散乱粒子62とで形成されている。接着剤61は、例えば、樹脂である。接着剤61は、光散乱粒子62同士を接着し、光散乱粒子をシンチレータ層5に接着する。光散乱粒子62は、例えば、酸化チタン(TiO
2)である。一例において、混合物6aは、3つの光散乱粒子62を有している。なお、光散乱粒子62の数量は、3つに限定されず、3つよりも多くてもよいし、3つより少なくともよい。例えば、光散乱粒子62の数量は、2つや4つであってもよい。一例において、光散乱粒子62は、四角形状に形成されているが、四角形状に限定されない。
図4に示す混合物6aは、球体の形状を有している。なお、混合物6aの形状は、球体であることに限定されない。例えば、各々の混合物6aは、シンチレータ層5の他方面5bや他の混合物6aと接触している箇所において、窪んでいてもよい。混合物6aの大きさは、0.1乃至1μm程度である。
【0038】
図5乃至
図7を参照して反射層6の詳細を説明する。
図5は、上記実施形態に係るX線検出器1の反射層6の一部を示す平面図であり、防湿カバー7側から見た図である。
図5において、後述する反射層6の凸部64aには、右上がりの斜線を付している。また、各凸部における重心G及び頂上部TPを記載している。
図6は、
図4の線A-Aに沿った断面図である。
図7は、
図5の線B-Bに沿った断面図である。
図6及び
図7は、各凸部64aの頂上部TPを含み、反射層6及びシンチレータ層5を拡大して示す図である。また、直交方向Zにおいて、
図6に示す仮想面Sの位置は、
図7に示す仮想面Sの位置と同一である。
【0039】
図5に示すように、凹凸面64は、複数の凸部64aの表面と、凹部64bの表面と、を含んでいる。複数の凸部64aは隣り合う凸部64aを有している。例えば、第1凸部64aは、第2凸部64a2、第3凸部64a3、第4凸部64a4などと隣り合っている。上記のように、複数の凸部64aの各々は、3つ以上の凸部64aと隣り合っている。なお、複数の凸部64aの各々は、2つ以下の凸部と隣り合っていてもよい。複数の凸部64aは、一直線上に位置してもよい。
【0040】
複数の凸部64aの各々から隣り合う凸部64aに向かう方向は、ランダムである。具体的には、複数の凸部64aの各々における重心Gから隣り合う凸部64aの重心Gに向かう方向は、ランダムである。例えば、第1凸部64a1の重心G1から第2凸部64a2の重心G2に向かう方向d1は、第2凸部64a2の重心G2から第3凸部64a3の重心G3に向かう方向d2と異なっている。また、複数の凸部64aの各々が複数の凸部64aと隣り合っている場合、複数の凸部64aの各々からそれぞれの隣り合う凸部64aに向かう方向は、ランダムである。例えば、第1凸部64a1の重心G1から第2凸部64a2の重心G2に向かう方向d1は、第1凸部64a1の重心G1から第3凸部64a3の重心G3に向かう方向d2と異なっている。
【0041】
図6及び
図7に示すように、対向面63は、他方面5bに接触し固定されている複数の接触面63aと、他方面5bに隙間を設けて対向する非接触面63bと、を含んでいる。つまり、反射層6は、シンチレータ層5の他方面5bに対向する対向面63において、他方面5bに接触し且つ他方面5bに固定されている接触面63aと、他方面5bから離れて位置している非接触面63bと、を有している。対向面63の詳細については、
図8の説明で後述する。
【0042】
凹凸面64は、シンチレータ層5から遠ざかる向きに突出している複数の凸部64aの表面と、複数の凸部64aよりも窪んでいる凹部64bの表面と、を含んでいる。一例において、凸部64aが突出する方向は、直交方向Zと一致している。複数の凸部64aの各々は、複数の混合物6aで形成されている。凸部64aは、基準となる仮想面Sの直交方向Zにおける上側(シンチレータ層5と反対側)に位置している。凹部64bは、仮想面Sの直交方向Zにおける下側(シンチレータ層5側)に位置している。
【0043】
なお、仮想面Sは、複数の凸部64aが突出する方向(一例では、直交方向Z)に直交する平面である。仮想面Sは、直交方向Zにおいて、凹凸面64の高さが最大となる最大位置と、凹凸面64の高さが最小となる最小位置と間の任意の位置に設定可能である。仮想面Sは、例えば、最大位置と最小位置との間の中間位置に設定可能である。
複数の凸部64aの各々から隣り合う凸部64aまでの間隔は、ランダムである。つまり、複数の凸部64aの各々から隣り合う凸部64aまでの間隔は、均一でない。
【0044】
具体的には、複数の凸部64aの各々における重心Gから隣り合う凸部64aにおける重心Gまでの間隔は、ランダムである。例えば、第1凸部64a1の重心G1から第2凸部64a2の重心G2までの間隔SG1は、第2凸部64a2の重心G2から第3凸部64a3の重心G3までの間隔SG2と異なっている(
図5参照)。なお、本実施形態では、複数の凸部64aの各々における頂上部TPから隣り合う凸部64aにおける頂上部TPまでの間隔についても、ランダムである。例えば、第1凸部64a1の頂上部TP1から第2凸部64a2の頂上部TP2までの間隔ST1は、第2凸部64a2の頂上部TP2から第3凸部64a3までの間隔ST2と異なっている(
図6及び
図7参照)。
【0045】
複数の凸部64aの高さは、ランダムである。より詳細には、複数の凸部64aにおいて、直交方向Zにおける位置が同一である仮想面S(以下、単に「同一の仮想面S」と称する。)からそれぞれの頂上部TPまでの高さは、ランダムである。言い換えると、複数の凸部64aにおいて、同一の仮想面Sからそれぞれの頂上部までの高さは、均一でない。例えば、仮想面Sから頂上部TP1までの高さT1は、仮想面Sから頂上部TP2までの高さT2、及び仮想面Sから頂上部TP3までの高さT3と異なっている。
【0046】
複数の凸部64aは、複数の凸部64aが突出する方向に平行な第1断面において、ランダムな形状を有している。つまり、第1断面において、複数の凸部64aの形状は均一でない。例えば、
図6において、第1凸部64a1の形状は、第2凸部64a2の形状と異なっている。また、
図7において、第2凸部64a2の形状は、第3凸部64a3の形状と異なっている。なお、
図6及び
図7に示す断面は、頂上部TPを含む断面であるが、第1断面は、頂上部TPを含むことに限定されない。つまり、複数の凸部64aが突出する方向に平行、且つ、頂上部TPを含まない断面においても、複数の凸部64aは、ランダムな形状を有している。
【0047】
凹部64bの表面である凹面CSは、第1凸部64a1と第2凸部64a2との間に位置している第1凹面CS1と、第2凸部64a2と第3凸部64a3との間に位置している第2凹面CS2と、を有している。凹面CSの深さは、ランダムである。より詳細には、第1断面において、同一の仮想面Sから凹面CSまでの深さは、ランダムである。つまり、第1断面において、同一の仮想面Sから凹面CSまでの深さは、均一でない。例えば、第1断面において、同一の仮想面Sから第1凹面CS1の底部B1までの深さD1は、同一の仮想面Sから第2凹面CS2の底部B2までの深さD2と異なっている。
【0048】
図5に示すように、複数の凸部64aは、防湿カバー7側から見た平面視において、ランダムな形状に形成されている。言い換えると、複数の凸部64aが突出する方向に対して直交する断面を第2断面とした場合、複数の凸部64aの形状は、直交方向Zにおける位置が同一である第2断面(以下、単に「同一の第2断面」と称する。)において、ランダムである。なお、第2断面は、直交方向Zにおいて、凹凸面64の高さが最大となる位置と、凹凸面64の高さが最小となる位置との間における断面である。
【0049】
つまり、複数の凸部64aの形状は、同一の第2断面において、均一でない。例えば、同一の第2断面において、第1凸部64a1の形状は、第2凸部64a2の形状、及び第3凸部64a3の形状と異なっている。まとめると、複数の凸部64aの形状は、第1断面(
図6及び
図7参照)及び第2断面において、ランダムである。
複数の凸部64aは、枠状の第4凸部64a4を含んでいる。第4凸部64aの内部には、凹部64b4が位置している。凹部64b4は、他の凹部64bから独立している。上記のように凹凸面64は、複数の凹部64bの表面を含んでもよい。
【0050】
複数の凸部64aは、防湿カバー7側から見た平面視において、ランダムな面積を有している。言い換えると、同一の第2断面において、複数の凸部64aの面積は、ランダムである。つまり、複数の凸部64aの面積は、同一の第2断面において、均一でない。例えば、同一の第2断面において、第1凸部64a1の面積は、第2凸部64a2の面積、第3凸部64a3の面積、及び第4凸部64a4の面積と異なっている。複数の凸部64aの頂上部まで高さがランダムであり(
図6及び
図7参照)、第2断面における複数の凸部64aの面積がランダムであることから、複数の凸部64aの大きさは、ランダムである。
【0051】
図8は、
図5の矢視Cの平面図であり、反射層6における対向面63の一部を示す図である。
図8において、接触面63aには、右下がりの斜線を付している。
図8に示すように、複数の接触面63aの大きさは、ランダムである。つまり、複数の接触面63aの大きさは、均一でない。例えば、第1接触面63a1の大きさは、第2接触面63a2の大きさと異なっている。混合物6aが窪みのない球体の形状を有し、他方面5bに点接触している場合、対向面63は、混合物6aが他方面5bに接触している点を含む。
【0052】
複数の接触面63aは、第1接触面63a1や第2接触面63a2のように1つの混合物6aの表面からなる接触面63aと、第3接触面63a3や第4接触面63a4のように複数の混合物6aの表面からなる接触面63aと、を含んでいる。複数の混合物6aの表面からなる接触面63aの形状は、ランダムである。例えば、第3接触面63a3の形状は、第4接触面63a4の形状と異なっている。
第4接触面63a4は、枠状に形成され、内部に非接触面63b4が位置している。非接触面63b4は、他の非接触面63bから独立している。上記のように、対向面63は、複数の非接触面63bを含んでもよい。
【0053】
図9は、上記実施形態に係るX線検出器1のX線検出モジュール10を示す平面図である。
図9において、シンチレータ層5には右上がりの斜線を付し、封止部8には右下がりの斜線を付している。
図10は、
図9の線D-Dに沿ったX線検出モジュール10の断面図である。
図9及び
図10に示すように、光電変換基板2は、検出領域DAと、検出領域DAの外側の非検出領域と、を有している。検出領域DAは、四角形の領域である。光電変換基板2の非検出領域は、検出領域DAの周囲に位置する枠状の第1非検出領域NDA1と、第1非検出領域NDA1の外側の第2非検出領域NDA2と、を有している。本実施形態において、第2非検出領域NDA2は枠上の形状を有している。
【0054】
シンチレータ層5は、少なくとも検出領域DAに位置している。シンチレータ層5は、一方面5a、他方面5b、及び側面5cを有している。側面5cは、第1非検出領域NDA1に位置している。側面5cは、順テーパ面である。
光電変換基板2は、さらに複数のパッド2d1及び複数のパッド2d2を有している。パッド2d1及びパッド2d2は、第2非検出領域NDA2に位置している。本実施形態において、複数のパッド2d1は、基板2aの左辺に沿って並べられ、複数のパッド2d2は、基板2aの下辺に沿って並べられている。例えば、パッド2d1,2d2は、絶縁層23の上に設けられ、絶縁層24及び絶縁層25で覆われていない。
【0055】
X線検出モジュール10は、封止部8をさらに備えている。封止部8は、第1非検出領域NDA1に位置し、シンチレータ層5を囲んでいる。封止部8は、枠状の形状を有し、シンチレータ層5の周囲を連続的に延在している。封止部8は、光電変換基板2(例えば、絶縁層25)に接着されている。
封止部8の外面8aの形状が外側に突出する曲面となっていれば、防湿カバー7の周縁近傍を封止部8の外面8aに倣わせ易くなる。
【0056】
反射層6及び防湿カバー7は、検出領域DA及び第1非検出領域NDA1に位置している。防湿カバー7は、
図9に示す平面図において、シンチレータ層5を完全に覆っている。防湿カバー7は、封止部8の少なくとも一部を覆っている。
シンチレータ層5には、その体積の10乃至40%程度の空隙が存在する。そのため、空隙にガスが含まれていると、X線検出器1を航空機などで輸送した場合や、X線検出器1を高地で使用した場合にガスが膨張して防湿カバー7が破損する恐れがある。大気圧よりも減圧された環境において防湿カバー7と封止部8とを接合すれば、X線検出器1が航空機等で輸送された場合であっても防湿カバー7の破損を抑制することができる。上記のことから、光電変換基板2、封止部8、及び防湿カバー7で囲まれた空間の圧力は、大気圧よりも低くした方が好ましい。
本実施形態のX線検出器1は、上記のように構成されている。
【0057】
次に、上記実施形態に係るX線検出パネルPNLの製造方法について説明する。
図11は、上記実施形態に係るX線検出パネルPNLにおいて反射層6を形成する際の一例を示す断面図である。
図11に示すように、X線検出パネルPNLの製造が開始されると、まず、光電変換基板2を用意し、光電変換基板2上にシンチレータ層5を形成する。次に、接着剤61、光散乱粒子62、及び接着剤61を溶解する溶媒で形成された第1混合材料6bを用意する。一例において、第1混合材料6bは、接着剤61、光散乱粒子62、及び溶媒を混ぜ合わせて形成されている。
【0058】
溶媒は、例えば、シクロヘキサノンなどの有機溶剤であり、接着剤61を溶かす。溶媒は、第1混合材料6bに流動性を付与し、塗布(散布)性を向上させる。例えば、第1混合材料6bが接着剤61と光散乱粒子62のみで形成されている場合、粘度が高すぎて塗布(散布)性が良くない。第1混合材料6bの粘度は、例えば、2000mPa・s程度である。また、第1混合材料6bは、噴霧器40の容器41内に収納されている。
【0059】
その後、第1混合材料6bを複数の粒に加工することで、各々が接着剤61と光散乱粒子62と溶媒とで形成された粒である複数の第2混合材料6cを形成し、複数の第2混合材料6cをシンチレータ層5の他方面5bに散布する。具体的には、噴霧器40の噴霧ノズル42で第1混合材料6bを粒状(霧状)の第2混合材料6cに変換し、噴霧器40の噴霧口43からシンチレータ層5に向かって複数の第2混合材料6cを散布する。一例において、複数の第2混合材料6cが散布される方向は、重力方向GDと一致している。なお、複数の第2混合材料6cが散布される方向は、重力方向GDと一致していることに限られず、例えば、重力方向GDに直交する方向であってもよい。
【0060】
この時、シンチレータ層5から噴霧口43までの距離Lが長い状態で散布することが好ましい。例えば、距離Lを50cm程度とすることで、反射層6にランダムな間隔で設けられた複数の凸部64aを形成しやすくなる。
なお、第1混合材料6bから複数の第2混合材料6cを形成し、複数の第2混合材料6cを散布する方法は、噴霧器40を使用する方法に限定されない。
【0061】
続いて、他方面に散布された複数の第2混合材料6cを乾燥させることで、反射層6を形成する。詳細には、複数の第2混合材料6cにおける溶媒が揮発することで、複数の第2混合材料6cが複数の混合物6aになり、反射層6が形成される。これにより、X線検出パネルPNLの製造が終了する。
乾燥は、例えば、乾燥エアを流したデシケータ内で行うことができる。乾燥温度は、例えば、室温とすることができる。乾燥時間は、溶媒の比率、散布された複数の第2混合材料6cによる層の厚み、乾燥条件などにより適宜変更することができる。
【0062】
上記のように複数の第2混合材料6cを散布した場合、噴霧口43からシンチレータ層5の他方面5bまでの間においても溶媒は揮発する。このため、第1混合材料6bをディスペンサでシンチレータ層5に塗布する場合と比較して、第2混合材料6cが乾燥する際にシンチレータ層が受ける引張応力を抑制することができる。また、第1混合材料6bをディスペンサでシンチレータ層5に塗布する場合と比較して、乾燥時間を1/10以下にすることができる。本実施形態における乾燥時間は、例えば、30分程度である。
【0063】
本実施形態の効果について説明する。
上記のように構成された本実施形態に係る放射線検出パネル及び放射線検出パネルの製造方法によれば、放射線検出パネルは、複数の凸部64aの表面を含む凹凸面64を有している反射層64を備えている。複数の凸部64aの各々から隣り合う凸部64aまでの間隔は、ランダムである。
周期的な間隔で位置する複数の凸部の表面を含む凹凸面を有している反射層6を備えている放射線検出器では、X線画像を取得した場合に、反射層6の凹凸に応じたムラを検出する。一方、各々の凸部から隣り合う凸部までの間隔がランダムな複数の凸部の表面を含む凹凸面を有する反射層を備えている放射線検出器では、X線画像を取得した場合、凹凸に応じたムラを検出しない。つまり、検出する画像の品質を向上できる放射線検出パネルを得ることができる。
【0064】
複数の凸部64aの各々から隣り合う凸部64aに向かう方向は、ランダムである。
複数の凸部64aの大きさは、ランダムである。
第1断面及び第2断面において、複数の凸部64aの形状は、ランダムである。
第1断面において、凹部の表面までの深さがランダムである。
複数の凸部64aの各々は、複数の混合物6aで形成されている。
【0065】
これにより、周期性のある凹凸面を有している反射層を有している放射線検出器よりも、シンチレータ層5で生じた形状の反射を複雑化でき、反射層を透過する蛍光の量を抑制することができる。つまり、感度が高い放射線検出パネルを得ることができる。
なお、上記周期性のある凹凸面とは、例えば、周期的な間隔で位置する複数の凸部の表面を含む凹凸面、一定の方向に位置している複数の凸部の表面を含む凹凸面、一定の大きさで形成された複数の凸部の表面を含む凹凸面、一定の形状で形成された複数の凸部の表面を含む凹凸面、深さが一定である凹部の表面を含む凹凸面である。
【0066】
反射層6は、シンチレータ層5の他方面5bと対向する対向面63を有している。対向面63は、他方面5bと接触し固定されている複数の接触面63aと、他方面に隙間を設けて対向する非接触面63bと、を有している。
反射層6は、各々が接着剤と光散乱粒子とで形成された粒である複数の混合物6aで構成されている。
他方面5bに付着した反射層6の混合材料(一例では、複数の第2混合材料6c)が圧縮(乾燥)することでシンチレータ層5が受ける引張応力は、混合材料とシンチレータ層5とが接触する面積が大きいほど大きくなる。上記の面積を小さくすることで、シンチレータ層5が受ける引張応力を小さくすることができるため、混合材料の圧縮に応じたシンチレータ層5の剥離やX線検出パネルPNLの変形を抑制することができる。
【0067】
本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1…X線検出器、2…光電変換基板、2a…基板、2b…光電変換部、2b1…光電変換素子、2b2…TFT、5…シンチレータ層、5a…一方面、5b…他方面、6…反射層、6a…混合物、6b…第1混合材料、6c…第2混合材料、10…X線検出モジュール、61…接着剤、62…光散乱粒子、63…対向面、63a…接触面、63b…非接触面、64…凹凸面、64a…凸部、64b…凹部、PNL…X線検出パネル、Z…直交方向。