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特開2024-80341液体口腔用組成物及び液体口腔用組成物におけるビタミンEの容器吸着抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080341
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】液体口腔用組成物及び液体口腔用組成物におけるビタミンEの容器吸着抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20240606BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240606BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240606BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20240606BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240606BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
A61K8/67
A61Q11/00
A61K8/44
A61K8/46
A61K8/86
A61K8/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193445
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 佐和
(72)【発明者】
【氏名】堀惠 亮介
(72)【発明者】
【氏名】内藤 香菜
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB282
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC302
4C083AC422
4C083AC431
4C083AC432
4C083AC472
4C083AC622
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC791
4C083AC792
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD112
4C083AD661
4C083AD662
4C083BB41
4C083CC41
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD47
4C083EE01
4C083EE33
(57)【要約】
【課題】ビタミンEである(A)成分の保存安定性に優れ、香味立ちもよい、容器に充填された液体口腔用組成物を提供する。
【解決手段】(A)トコフェロール、その有機酸とのエステル及びこれらの塩から選ばれる1種以上、(B)アシルアミノ酸、アシルタウリン及びこれらの塩から選ばれる1種以上、(C)特定E.Oのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、(D)ソルビット、グリセリン、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールから選ばれる1種以上を含有し、(B)/(C)比と(D)/(C)比とが特定範囲であり、容器最内層がポリエチレン又はポリプロピレンからなる容器に充填された液体口腔用組成物、並びに上記の(A)成分が配合され、特定容器に充填された液体口腔用組成物に(B)、(C)及び(D)成分を特定量比で配合する、前記液体口腔用組成物における(A)成分の容器吸着抑制方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)トコフェロール、その有機酸とのエステル及びこれらの塩から選ばれる1種以上と、
(B)アシルアミノ酸、アシルタウリン及びこれらの塩から選ばれる1種以上と、
(C)エチレンオキサイドの平均付加モル数が60以下であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、
(D)ソルビット、グリセリン、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールから選ばれる1種以上と
を含有し、(B)/(C)が質量比として0.01~0.8、かつ(D)/(C)が質量比として3~50であり、容器最内層がポリエチレン又はポリプロピレンからなる容器に充填された液体口腔用組成物。
【請求項2】
(A)成分を0.02~0.2質量%含有する請求項1記載の液体口腔用組成物。
【請求項3】
(C)成分を0.2~2質量%含有する請求項1記載の液体口腔用組成物。
【請求項4】
(B)成分を0.01~0.3質量%、(D)成分を2~20質量%含有する請求項1記載の液体口腔用組成物。
【請求項5】
(B)成分が、ラウロイルサルコシンナトリウム及び/又はラウロイルメチルタウリンナトリウムである請求項1記載の液体口腔用組成物。
【請求項6】
容器最内層が低密度ポリエチレンからなる容器に充填されたものである請求項1記載の液体口腔用組成物。
【請求項7】
更に、(E)香料を0.01~1質量%含有する請求項1記載の液体口腔用組成物。
【請求項8】
香料が、ペパーミント油、スペアミント油及び和種ハッカ油から選ばれる1種以上を含有するものである請求項7記載の液体口腔用組成物。
【請求項9】
水分含量が50~97.5質量%である請求項1記載の液体口腔用組成物。
【請求項10】
(A)トコフェロール、その有機酸とのエステル及びこれらの塩から選ばれる1種以上が配合され、容器最内層がポリエチレン又はポリプロピレンからなる容器に充填された液体口腔用組成物に、
(B)アシルアミノ酸、アシルタウリン及びこれらの塩から選ばれる1種以上と、
(C)エチレンオキサイドの平均付加モル数が60以下であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、
(D)ソルビット、グリセリン、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールから選ばれる1種以上と
を、(B)/(C)が質量比として0.01~0.8、(D)/(C)が質量比として3~50となるように配合する、前記液体口腔用組成物における(A)成分の容器吸着抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンEの容器吸着が抑制されて保存安定性に優れる液体口腔用組成物及び液体口腔用組成物におけるビタミンEの容器吸着抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、環境意識の高まりから、口腔用組成物を充填する容器においても、樹脂削減が可能な詰め替え容器等への対応が求められている。多様な容器形状、材質への対応も求められ、特に、パウチ容器は、液体口腔用組成物の詰め替え用としてプラスチック削減にも有効な容器である。パウチ容器としては、最内層の素材がヒートシール性のあるポリエチレン(PE)、例えば直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が一般的に用いられている。
【0003】
ところで、ビタミンE(トコフェロール、その有機酸とのエステルやこれらの塩等)は、歯周病の予防又は抑制のために口腔用組成物に活用されている。ビタミンEは、油溶性であるため、口腔用組成物に有効成分等として配合する場合には、界面活性剤を用いて可溶化させることが広く行われているが、充填される容器最内層への吸着による残存率低下など、口腔用組成物中に経時でも安定に配合することに問題がある。
これまでに、ビタミンEの容器吸着を抑制する技術として、ビタミンEと共にアニオン性界面活性剤及び研磨剤が配合された歯磨剤組成物に、特定ポリオキシエチレンアルキルエーテルと特定ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とが混合分散された界面活性剤混合物を配合することで、ビタミンEの容器吸着促進の要因となるアニオン性界面活性剤の存在下でも、容器最内層の直鎖状低密度ポリエチレンへのビタミンE又はその誘導体の吸着を抑制し得ることが提案されている(特許文献1;特開2005-247786号公報)。また、難水溶性非イオン性薬効成分を配合した歯磨剤組成物に、特定ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とアニオン性界面活性剤とを組み合わせて配合すると、高い起泡力と共に、前記薬効成分のプラスチック容器への吸着を抑制して安定配合が可能となることが提案されている(特許文献2;特開2004-250381号公報)。
しかしながら、歯磨剤組成物よりも水分含量が比較的多い液体口腔用組成物、特に洗口剤では、ビタミンEの容器最内層への吸着性が高くなりやすく、また、特許文献1にも記載されているように、アニオン性界面活性剤が配合されていると、ビタミンEの容器への吸着が促進され、吸着の抑制が一層困難となる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-247786号公報
【特許文献2】特開2004-250381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ビタミンEの容器吸着が抑制されて保存安定性に優れ、香味立ちもよい、容器に充填された液体口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、ビタミンEとしてトコフェロール、その有機酸とのエステルやこれらの塩が配合され、容器最内層がポリエチレン又はポリプロピレンからなる容器に充填された液体口腔用組成物に、特定アニオン性界面活性剤と、特定ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、特定の糖アルコール及び/又は多価アルコールとを特定量比で配合すると、前記ビタミンEの容器吸着が抑制されて保存後も残存率低下が防止され、ビタミンEの保存安定性に優れ、また、香味立ちを良好に確保することもできることを知見した。即ち、本発明では、ビタミンEとして(A)トコフェロール、その有機酸とのエステル及びこれらの塩から選ばれる1種以上と、(B)アシルアミノ酸、アシルタウリン及びこれらの塩から選ばれる1種以上と、(C)エチレンオキサイドの平均付加モル数が60以下であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、(D)ソルビット、グリセリン、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールから選ばれる1種以上とを含有し、(B)/(C)が質量比として0.01~0.8、(D)/(C)が質量比として3~50であり、容器最内層がポリエチレン又はポリプロピレンからなる容器に充填された液体口腔用組成物が、(A)成分の容器吸着が抑制されて保存安定性に優れ、香味立ちもよいことを知見し、本発明をなすに至った。
【0007】
更に詳述すると、(A)成分を配合した液体口腔用組成物に、殺菌力も期待してアニオン性界面活性剤のうちの(B)成分を配合すると、可溶化剤としてノニオン性界面活性剤が配合されていても、上記容器最内層への(A)成分の吸着が顕著となり、経時で(A)成分の残存率が低下し、また更に、湿潤剤としても一般的である(D)成分を添加すると、(A)成分の容器最内層への吸着が促進され、(A)成分の保存安定性が一層悪くなるという問題が生じた。なお、この問題は、上記最内層がポリエチレン又はポリプロピレンからなる容器に充填した場合に特異かつ顕著なものであった。しかし、本発明では、(A)成分に(B)成分と共に(C)及び(D)成分を組み合わせて配合することで、(B)/(C)の質量比と(D)/(C)の質量比とがそれぞれ特定範囲において、上記問題が解消し、上記容器に充填された液体口腔用組成物であっても、(A)成分の容器吸着が抑制されて保存安定性に優れ、香味立ちも確保でき、また、殺菌力を与えることもできた。
【0008】
従って、本発明は、下記の液体口腔用組成物及び液体口腔用組成物における(A)成分の容器吸着抑制方法を提供する。
〔1〕
(A)トコフェロール、その有機酸とのエステル及びこれらの塩から選ばれる1種以上と、
(B)アシルアミノ酸、アシルタウリン及びこれらの塩から選ばれる1種以上と、
(C)エチレンオキサイドの平均付加モル数が60以下であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、
(D)ソルビット、グリセリン、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールから選ばれる1種以上と
を含有し、(B)/(C)が質量比として0.01~0.8、かつ(D)/(C)が質量比として3~50であり、容器最内層がポリエチレン又はポリプロピレンからなる容器に充填された液体口腔用組成物。
〔2〕
(A)成分を0.02~0.2質量%含有する〔1〕記載の液体口腔用組成物。
〔3〕
(C)成分を0.2~2質量%含有する〔1〕又は〔2〕記載の液体口腔用組成物。
〔4〕
(B)成分を0.01~0.3質量%、(D)成分を2~20質量%含有する〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の液体口腔用組成物。
〔5〕
(B)成分が、ラウロイルサルコシンナトリウム及び/又はラウロイルメチルタウリンナトリウムである〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の液体口腔用組成物。
〔6〕
容器最内層が低密度ポリエチレンからなる容器に充填されたものである〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の液体口腔用組成物。
〔7〕
更に、(E)香料を0.01~1質量%含有する〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の液体口腔用組成物。
〔8〕
香料が、ペパーミント油、スペアミント油及び和種ハッカ油から選ばれる1種以上を含有するものである〔7〕記載の液体口腔用組成物。
〔9〕
水分含量が50~97.5質量%である〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の液体口腔用組成物。
〔10〕
(A)トコフェロール、その有機酸とのエステル及びこれらの塩から選ばれる1種以上が配合され、容器最内層がポリエチレン又はポリプロピレンからなる容器に充填された液体口腔用組成物に、
(B)アシルアミノ酸、アシルタウリン及びこれらの塩から選ばれる1種以上と、
(C)エチレンオキサイドの平均付加モル数が60以下であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、
(D)ソルビット、グリセリン、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールから選ばれる1種以上と
を、(B)/(C)が質量比として0.01~0.8、(D)/(C)が質量比として3~50となるように配合する、前記液体口腔用組成物における(A)成分の容器吸着抑制方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、(A)成分の容器吸着が抑制され、保存安定性に優れ、香味立ちもよい、容器に充填された液体口腔用組成物を提供できる。この液体口腔用組成物は、(A)成分の薬効が効果的に発揮され、殺菌力も有することから、歯周疾患の予防又は抑制に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき更に詳述する。
本発明の液体口腔用組成物は、(A)トコフェロール、その有機酸とのエステル及びこれらの塩から選ばれる1種以上と、(B)アシルアミノ酸、アシルタウリン及びこれらの塩から選ばれる1種以上と、(C)エチレンオキサイドの平均付加モル数が60以下であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、(D)ソルビット、グリセリン、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールから選ばれる1種以上とを含有する。
【0011】
(A)成分は、ビタミンEとして一般的に用いられるトコフェロール又はその誘導体であり、前記誘導体としては、トコフェロールの有機酸とのエステル又はこれらの塩を用いることができる。これらは、血行促進による歯茎細胞の活性化促進、歯茎組織の修復、歯肉上皮の強化作用等を有し、歯肉炎等の歯周病の予防又は抑制に有効な成分である。
トコフェロールは、例えば、d-α-トコフェロール、dl-α-トコフェロール、d-β-トコフェロール、d-γ-トコフェロール、d-δ-トコフェロール等が挙げられる。また、トコフェロールの有機酸とのエステルは、上記トコフェロールの酢酸、ニコチン酸、コハク酸、リノレン酸等の有機酸とのエステル又はこれらの塩を使用できる。具体的には、酢酸d-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、酢酸dl-β-トコフェロール、酢酸dl-γ-トコフェロール、酢酸dl-δ-トコフェロール等のトコフェロール酢酸エステル、ニコチン酸d-α-トコフェロール、ニコチン酸dl-α-トコフェロール等のトコフェロールニコチン酸エステル、コハク酸d-α-トコフェロール、コハク酸dl-α-トコフェロール等のトコフェロールコハク酸エステル、リノレン酸d-α-トコフェロール、リノレン酸dl-α-トコフェロール等のトコフェロールリノレン酸エステル、コハク酸トコフェロールカルシウムが挙げられる。中でも、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、とりわけ酢酸dl-α-トコフェロール、ニコチン酸dl-α-トコフェロールが好ましい。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらは、医薬部外品原料規格2021(外原規)又は、第18改正日本薬局方(日局)に適合した市販品を使用可能であり、DSM(株)製、三菱ケミカル(株)製、BASFジャパン(株)製等を使用し得る。
【0012】
(A)成分の配合量は、組成物全体の0.02~0.2%(質量%、以下同様)が好ましく、より好ましくは0.02~0.1%、更に好ましくは0.03~0.08%、特に好ましくは0.04~0.05%である。配合量が多いほど歯周病予防等の効果が十分に得られるが、0.2%以下であることが、保存安定性を確保する点で好ましい。
【0013】
(B)成分は、アシルアミノ酸、アシルタウリン及びこれらの塩から選ばれる1種以上である。これらは、殺菌力を有し、歯周病予防効果を奏する。
アシルアミノ酸、アシルタウリンは、好ましくは炭素数8~18、特に12~14の飽和又は不飽和のアシル基を有するものを使用できる。アシル基としては、例えば、オクチル基、デシル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアリル基等が挙げられる。また、アシルアミノ酸、アシルタウリンは、塩の形態で使用することもでき、塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩が挙げられ、特にナトリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
【0014】
(B)成分として具体的には、ラウロイルサルコシン、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシントリエタノールアミン等のアシルサルコシン又はその塩;ラウロイルメチル-β-アラニン、ラウロイルメチル-β-アラニンナトリウム、パルミトイルメチル-β-アラニンナトリウム等のアシルアラニン又はその塩;ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルグルタミン酸、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸トリエタノールアミン等のアシルグルタミン酸又はその塩;ミリストイルグルタミン、ココイルグルタミン、ラウロイルグルタミン等のアシルグルタミン;ラウロイルメチルタウリン、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリン、パルミトイルメチルタウリンナトリウム等のアシルタウリン又はその塩等が挙げられる。これらの中でも、効果発現性の点、更には安全性や、口腔粘膜への刺激性が低い点からも、ラウロイルサルコシン、ラウロイルメチルタウリン、ラウロイルグルタミン酸やこれらの塩が好ましく、より好ましくはラウロイルサルコシン、ラウロイルメチルタウリンやこれらの塩であり、更に好ましくはラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウムである。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらは、市販品、具体的にラウロイルサルコシンナトリウムは、川研ファインケミカル(株)製のソイポンSLP等、ラウロイルメチルタウリンナトリウムは、日光ケミカルズ(株)製のNIKKOL LMT等、ラウロイルグルタミン酸ナトリウムは、旭化成ファインケム(株)製のアミノサーファクト ALMS-P1等を使用できる。
【0015】
(B)成分の配合量は、組成物全体の0.01~0.3%が好ましく、より好ましくは0.02~0.25%、更に好ましくは0.05~0.2%、特に好ましくは0.1~0.15%である。配合量が多いほど殺菌力、歯周病予防効果が得られるが、0.3%以下であることが、(A)成分の容器吸着を抑制し、保存安定性を確保する点で好ましい。
【0016】
(C)成分は、エチレンオキサイドの平均付加モル数(E.O.)が60以下のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である。(C)成分は、(A)成分の容器吸着を抑制して保存安定性の確保に寄与する。
なお、(C)成分に代えて、例えばポリオキシエチレンセチルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテルを使用した場合は、(A)成分の保存安定性が劣る。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のE.O.は、60以下であり、好ましくは20~60、より好ましくは20である。E.O.が上記範囲内であると、(A)成分の容器吸着が抑制され、十分な保存安定性が得られる。
上記ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、市販品、具体的には日光ケミカルズ(株)製のNIKKOL HCO-20、40、60等を使用できる。
【0017】
(C)成分の配合量は、組成物全体の0.2~2%が好ましく、より好ましくは0.3~1%、更に好ましくは0.35~0.6%である。配合量が0.2%以上であると、(A)成分の容器吸着が抑制され、保存安定性が十分に得られる。2%以下であることが、殺菌力や異味発現の抑制と共に香味立ち確保の点で好ましい。
【0018】
(D)成分は、ソルビット、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールから選ばれる1種以上である。これらは、(A)、(B)及び(C)成分と組み合わせることで、香味立ちを改善する作用を奏する。具体的には、香味の発現を補助し、味全体のボリュームを出して優れた香味立ちを与える。また、これらは湿潤剤としても用いられる。
【0019】
(D)成分としては、ソルビット、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールのうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、ソルビット、グリセリン、プロピレングリコールが好ましく、少なくともグリセリン、プロピレングリコールを含むことがより好ましく、ソルビット、グリセリン、プロピレングリコールを組み合わせて用いることが更に好ましい。
ソルビット、グリセリン、プロピレングリコールは、市販品を使用し得る。
ポリエチレングリコールは、平均分子量(医薬部外品原料規格2006(外原規)記載の平均分子量)400のものが好ましく、例えば、外原規に適合したポリエチレングリコール400(平均分子量380~420)を用いることができ、市販品を使用し得る。
【0020】
(D)成分の配合量は、組成物全体の2~20%が好ましく、より好ましくは5~16%、更に好ましくは7~12%である。配合量が2%以上であると、香味立ちが十分に得られる。20%以下であることが、(A)成分の容器吸着を抑制し、保存安定性を確保する点で好ましい。
(D)成分は、好ましくは総配合量を上記範囲内とし、ソルビットを配合する場合、その配合量は組成物全体の0.1%以上、特に1%以上、とりわけ2%以上とし、また、グリセリンの配合量は組成物全体の0.1%以上、特に1%以上、とりわけ2%以上、プロピレングリコールの配合量は組成物全体の0.1%以上、特に1%以上、とりわけ2%以上とすることが、香味発現性の観点から、より好ましい。
【0021】
本発明の液体口腔用組成物は、(B)成分と(C)成分との量比(質量比)を示す(B)/(C)と、(D)成分と(C)成分との量比(質量比)を示す(D)/(C)とが、それぞれ特定範囲において、(A)成分の容器吸着が抑制されて保存安定性に優れ、かつ良好な香味立ちを与え、また、殺菌力を与えることもできる。
【0022】
(B)/(C)は、質量比として0.01~0.8であり、好ましくは0.1~0.5、より好ましくは0.15~0.4、更に好ましくは0.2~0.3である。(B)/(C)の質量比が上記範囲内において、(A)成分の保存安定性が優れる。0.01に満たないと、殺菌力が低下し、0.8を超えると、(A)成分の保存安定性が劣る。
【0023】
また、(D)/(C)は、質量比として3~50であり、好ましくは8~45、より好ましくは10~35、更に好ましくは15~30である。(D)/(C)の質量比が上記範囲内において、(A)成分の保存安定性及び香味立ちが優れる。3に満たないと、香味立ちが劣り、50を超えると、(A)成分の保存安定性が劣る。
【0024】
本発明の液体口腔用組成物には、(E)香料を配合することが好ましい。
香料としては、香味立ちの点から、ペパーミント油、スペアミント油、和種ハッカ油から選ばれる1種以上の精油を含有するものが好ましく、これら精油を主成分とする香料がより好ましい。香料中の上記精油の含有量は5%以上が好ましく、より好ましくは25~50%である。
また、液体口腔用組成物中の上記精油の含有量は0.01~0.2%が好ましく、より好ましくは0.05~0.1%である。
これら精油は、精製油として、減圧蒸留を行うことによって得られ、モノテルペンやセスキテルペンのようなテルペンから主に構成されるオイルのヘッド(揮発しやすい主に分子量の小さい成分)及びテール(揮発しにくい主に分子量の小さい成分)を除去したものに相当する。なお、精製油を得る方法は特に制限されず、公知の方法を採用できる。
【0025】
香料としては、上記精油に加えて、口腔用香料として公知のその他の任意の香料を配合でき、具体的には下記香料が挙げられる。
その他の任意の香料:
ユーカリ油、ウィンターグリーン油、クローブ油、タイム油、セージ油、カルダモン油、ローズマリー油、マジョラム油、レモン油、ナツメグ油、ラベンダー油、パラクレス油等の天然精油、l-カルボン、1,8-シネオール、メチルサリシレート、オイゲノール、チモール、リナロール、リモネン、メントール、メントン、メンチルアセテート、シトラール、カンファー、ボルネオール、ピネン、スピラントール等の上記天然精油中に含まれる香料成分や、エチルアセテート、エチルブチレート、イソアミルアセテート、ヘキサナール、ヘキセナール、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、ベンツアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、フラネオール、マルトール、エチルマルトール、ガンマ/デルタデカラクトン、ガンマ/デルタウンデカラクトン、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、メンチルラクテート、エチレングリコール-l-メンチルカーボネート等、更には、いくつかの香料成分や天然精油を組み合わせてなる、アップル、バナナ、ストロベリー、ブルーベリー、メロン、ピーチ、パイナップル、グレープ、マスカット、ワイン、チェリー、スカッシュ、コーヒー、ブランデー、ヨーグルト等の調合フレーバーが挙げられる。
【0026】
(E)香料の配合量は、組成物全体の0.01~1%が好ましく、より好ましくは0.1~0.5%、更に好ましくは0.2~0.4%である。
【0027】
本発明の液体口腔用組成物は、水分含量が好ましくは組成物全体の50%以上、特に65~97.5%、とりわけ70~97%である。
【0028】
本発明の液体口腔用組成物は、洗口剤、口中清涼剤、濃縮タイプ洗口剤等の剤型、特に洗口剤として調製、適用することができる。また、剤型に応じて、上記成分以外の公知成分を必要に応じて配合できる。例えば、増粘剤、界面活性剤、懸濁剤、防腐剤、甘味剤、着色剤、有効成分、pH調整剤、溶剤等を配合することができる。
なお、後述の配合量を示す数値は、組成物全体に対する量である。
【0029】
増粘剤:
キサンタンガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
増粘剤の配合量は、通常、0~5%である。
【0030】
任意の界面活性剤:
(B)成分以外のアニオン性界面活性剤、(C)成分以外の非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤を配合でき、例えば下記に示すものを使用できる。
任意のアニオン性界面活性剤
ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α-スルホ脂肪酸アルキルエステル・ナトリウム、アルキルリン酸エステル塩が挙げられる。
任意の非イオン性界面活性剤
ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル型、ラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミドが挙げられる。
両性界面活性剤
アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型、N-脂肪酸アシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩等のイミダゾリン型が挙げられる。
上記任意の界面活性剤の配合量は、0~1%がよく、配合する場合は0.01~1%、特に0.01~0.5%がよい。
なお、これら任意の界面活性剤は、本発明の効果を妨げない範囲で配合し得るが、中でもアニオン性界面活性剤、特にラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩は、(A)成分の保存安定性や香味立ちに影響する可能性があるため、配合しないほうが好ましく、配合する場合、その配合量は0.5%以下、特に0.05~0.2%がよい。
【0031】
懸濁剤:
オリーブ油、ツバキ油、ヒマシ油、脂肪酸の炭素数が6~12であるトリ脂肪酸グリセリル等の油脂や、これら油脂を含むエマルションが挙げられる。
【0032】
防腐剤:
安息香酸ナトリウムや、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等の安息香酸又はその塩、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、ソルビン酸カリウムが挙げられる。
甘味剤:
サッカリンナトリウム、ステビオサイド、スクラロース、還元パラチノース、エリスリトール、キシリット、マルチット、ラクチットが挙げられる。
着色剤:
青色1号、緑色3号、黄色4号、赤色105号等の安全性の高い水溶性色素が挙げられる。
【0033】
任意の有効成分:
(A)成分以外の有効成分、例えば、タイム、オウゴン、チョウジ、ハマメリス等の植物抽出物、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ等のフッ素含有化合物、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン等の殺菌剤、トラネキサム酸、イプシロン-アミノカプロン酸等の抗炎症剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素、リテックエンザイム等の酵素、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、アラントイン、アズレン、塩化リゾチーム、アスコルビン酸等のビタミンCやその誘導体、ジヒドロコレステロール、グリチルレチン塩類、グリチルレチン酸類、ヒドロコレステロール、クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、グルコン酸銅、カロペプタイド、ポリリン酸ナトリウム、水溶性無機リン酸化合物、ポリビニルピロリドン、歯石防止剤、歯垢防止剤、硝酸カリウム、乳酸アルミニウムが挙げられる。
【0034】
pH調整剤:
クエン酸、リン酸、乳酸、フタル酸、酢酸、フマル酸、炭酸やそれらのカリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩等の塩類、リボ核酸及びその塩類が挙げられる。
なお、組成物のpH(25℃)は特に限定されないが、pH5~9が好ましく、より好ましくは5~8、更に好ましくは5~7である。
【0035】
溶剤:
精製水、エタノール等の炭素数2~4の低級一価アルコールが挙げられる。
精製水は、上記水分含量の範囲内で配合することができる。
また、エタノールは、ビタミンEの容器吸着に影響を与えることがあるため、配合しない(配合量0%)ほうが好ましいが、配合する場合は、その配合量が20%以下、特に4%以下、更に2%以下、とりわけ1%以下が好ましい。
【0036】
本発明の液体口腔用組成物は、容器最内層がポリエチレン又はポリプロピレンからなる容器に充填され、非エアゾール型の一般的な液体口腔用製剤として用いることができ、例えば洗口剤等として好適に使用し得る。
上記容器において、充填された内容物と接する容器最内層の全部又は一部には、主に直鎖状ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン又はポリプロピレンが用いられ、特に柔軟性、ヒートシール性に優れ、機械的強度、耐熱性等にも優れる低密度ポリエチレンが好適である。
液体口腔用組成物が充填される容器は、液体口腔用組成物用として通常使用される一般的な容器、例えばパウチ容器、ボトル容器等を用いることができ、例えば、主にポリエチレンテレフタレート等のプラスチック素材で構成された上記容器を使用し得るが、特に本発明の効果発現の点で、パウチ容器が好ましい。液体口腔用組成物をパウチ容器に充填すると、必要に応じて、一般的に用いられるボトル容器等の樹脂製容器に詰め替えて使用することもでき、前記ボトル容器等の容器の再利用を促進し、廃棄量を減らして地球環境の負荷低減にも寄与できる。
【0037】
パウチ容器は、従来から公知のものを使用でき、形状等は特に限定されず、例えば、内容物が充填される収容部に、その内容物を排出させるスパウト(筒口部)が設けられているものでも、設けられていないものでもよい。
【0038】
パウチ容器の素材は、容器最内層の一部又は全部がポリエチレン又はポリプロピレンであれば、他の構成素材は特に制限されず、公知のものを使用できる。素材としては、例えば、ポリエチレン(直鎖状ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、ナイロン等のポリアミド類といった熱可塑性樹脂を用いることができる。
なお、パウチ容器がスパウトを備える場合、スパウトの素材は、ポリエチレンやポリプロピレン等の熱融着性樹脂が好ましい。
パウチ容器は、上記の素材を適用したプラスチックフィルムを単層で、あるいは二種以上を積層して構成することができ、単層フィルムで形成されていても積層フィルムで形成されていてもよく、充填される液体口腔用組成物の種類に応じて適宜選択できる。
積層フィルムとしては、例えば、熱融着可能なシーラント層と基材層とを備える積層フィルム等が挙げられる。積層フィルムには、印刷層、接着層が設けられていてもよい。また、積層フィルムとして、バリア性フィルムであるアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート等のアルミニウム蒸着フィルムや各種蒸着フィルム、アルミニウムラミネートフィルム等を用いてもよく、更に、バリア性フィルムとして、エチレンビニルアルコール共重合体、酸化ケイ素等の無機物を蒸着したフィルムを用いることもできる。パウチ容器としては、充填された内容物(液体口腔用組成物)の変性抑制及び外観の長期安定性に優れることから、バリア性フィルムで構成されたものが好ましい。
積層フィルムの具体的な積層構造としては、延伸ナイロン(ONy)/アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート(VM-PET)/直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ONy/LLDPE、ポリエチレンテレフタレート(PET)/アルミニウム(AL)/PET/LLDPE、PET/VM-PET/PET/LLDPE、ONy/AL/LLDPE、ONy/無延伸ポリプロピレン(CPP)、ONy/VM-PET/CPP、ONy/AL/CPP等が挙げられる(外層から内層の材質を順次示すものであり、「/」は、積層構造の境界を意味する。)。
【0039】
更に、パウチ容器の収容部における容量としては、100~3,000mL、特に200~2,000mLのものを使用し得るが、特に(A)成分の容器吸着抑制の点で、500~2,000mLのものが好ましく、より好ましくは600~1,800mL、更に好ましくは700~1,500mLのものである。容量が小さくなるほど、単位液体積あたりの包材接触面積が増えるため、(A)成分の容器吸着がより進行しやすくなる傾向があるが、容量が100mL以上、特に500mL以上であると、(A)成分の容器吸着が抑制され、(A)成分の保存安定性が十分に得られる。3,000mL以下、特に2,000mL以下であることが、詰め替え等の作業性の点で好ましい。
パウチ容器の収容部の内部表面積、特に接液する内部表面積は、300~800cm2が好ましく、340~720cm2がより好ましく、360~650cm2が更に好ましい。
【0040】
パウチ容器の厚みは、特に限定されないが、容器自体の耐久性と使いやすさの観点から、プラスチックフィルムの厚みとして5~500μmが好ましく、より好ましくは10~400μm、更に好ましくは20~300μmである。パウチ容器の厚みが上記範囲内であると、容器自体の耐久性、使い易さ、地球環境への負荷低減の点で好ましい。
【0041】
また、本発明は、(A)トコフェロール、その有機酸とのエステル及びこれらの塩から選ばれる1種以上が配合され、容器最内層がポリエチレン又はポリプロピレンからなる容器に充填された液体口腔用組成物に、(B)アシルアミノ酸、アシルタウリン及びこれらの塩から選ばれる1種以上と、(C)エチレンオキサイドの平均付加モル数が60以下であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、(D)ソルビット、グリセリン、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールから選ばれる1種以上とを、(B)/(C)が質量比として0.01~0.8、(D)/(C)が質量比として3~50となるように配合する、前記液体口腔用組成物における(A)成分の容器吸着抑制方法を提供する。
この方法によれば、(A)成分の容器吸着が抑制されて、(A)成分の残存率低下が保存後も防止され、(A)成分の保存安定性を改善することができ、また、香味立ちを良好に確保することもできる。
なお、配合成分やその配合量、比率、容器等についての詳細は、いずれも上記記載と同じである。
【実施例0042】
以下、実施例及び比較例、処方例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0043】
[実施例、比較例]
表1~4に示す組成の液体口腔用組成物(洗口剤)を常法によって調製し、これらをサンプルとして使用し、下記(1)、(2)に示す方法で評価した。結果を表に併記した。
なお、実施例の液体口腔用組成物は、殺菌力を有するものであった。
【0044】
(1)ビタミンEの保存安定性(ビタミンEのパウチ容器への吸着抑制効果)の評価
調製直後の液体口腔用組成物(洗口剤)700gを、パウチ容器((株)フジシール製、パウチ容器仕様は後述の通り)に充填し、50℃の恒温槽(ヤマト科学(株)製、DVS402/602型)に正立で1ヶ月間保存した。その後、パウチ容器から液体口腔用組成物を取り出し、保存後の液体口腔用組成物中に含まれる(A)成分量(ビタミンE量(サンプル値、%))を定量した。下記式によって、調製直後の液体口腔用組成物中に含まれる(A)成分量(ビタミンE量(製造初期値、%))に対するサンプル値の割合から、ビタミンEの残存率を計算した。
なお、ビタミンEの定量は、シリカゲル基剤にオクタデシル基を化学結合させたカラムを用い、液体クロマグラフィー((株)島津製作所製、Nexera、PDA検出器)で行った。
ビタミンEの残存率(%)=
{サンプル値(%)/製造初期値(%)}×100
ビタミンEの残存率から、下記の評価基準でビタミンEの保存安定性を判定した。
評価基準
◎◎:95%以上
◎ :90%以上95%未満
〇 :85%以上90%未満
△ :80%以上85%未満
× :80%未満
ビタミンEの残存率は85%以上(〇)が好ましく、90%以上(◎)がより好ましく、95%以上(◎◎)が更に好ましい。
【0045】
パウチ容器仕様
積層フィルムの層構成
胴材:ONy 15μm/VM-PET 12μm/LLDPE 150μm
(最内層がLLDPE)
底材:ONy 25μm/LLDPE 150μm
なお、ONyは延伸ナイロン、VM-PETはアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート、LLDPEは直鎖状(リニア)低密度ポリエチレンの略記である。
寸法
幅180mm×高さ231mm×マチ55mm、
容量:750mL、胴材の積層フィルムの厚み:177μm
接液部分の表面積:380cm2
【0046】
(2)香味立ちのよさの評価
10名の被験者パネラーが、サンプル20mLを口に含み、20秒間すすいで洗口した。吐き出した時(使用直後)の口に残る香味立ちを下記の4段階の評点基準で評価した。10名の平均点を算出し、下記の評価基準で香味立ちのよさを判定した。
評点基準
4点:香味立ちが非常に感じられる
3点:香味立ちがとても感じられる
2点:香味立ちがわずかに感じられる
1点:香味立ちがほとんど感じられない
評価基準
◎:平均点3.5点以上
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点2.0点未満
【0047】
使用原料の詳細は下記の通りである。
(A)成分
トコフェロール酢酸エステル:DSM(株)製、酢酸dl-α-トコフェロール
(B)成分
ラウロイルサルコシンナトリウム:川研ファインケミカル(株)製、ソイポンSLP
ラウロイルメチルタウリンナトリウム:日光ケミカルズ(株)製、NIKKOL LMT
(C)成分
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油:日光ケミカルズ(株)製、HCO-60
ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油:日光ケミカルズ(株)製、HCO-40
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油:日光ケミカルズ(株)製、HCO-20
ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油(比較成分):
日光ケミカルズ(株)製、HCO-100
なお、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の( )内の数値はエチレンオキサイドの平均付加モル数)である。
(D)成分
グリセリン:坂本薬品工業(株)製、化粧用グリセリン(85%水溶液)
プロピレングリコール:(株)ADEKA製、化粧用プロピレングリコール
ソルビット:三菱商事ライフサイエンス(株)製、D-ソルビトール液
(70%水溶液)
ポリエチレングリコール400:三洋化成工業(株)製、PEG-400
(E)成分
香料組成物A:組成の詳細は表5~13に示す通りである。
【0048】
なお、表に示す実施例で使用した香料組成物Aに代えて、表5~13に示す組成の香料組成物B~Pを使用し、同様に評価したところ、結果はいずれも同じで良好であった。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】
【表9】
【0058】
【表10】
【0059】
【表11】
【0060】
【表12】

【0061】
【表13】
【0062】
以下に処方例を示す。下記組成の液体口腔用組成物(洗口剤)を上記と同じ原料を使用して常法で調製し、上記と同じ仕様のパウチ容器に充填した。上記方法で評価したところ、いずれもビタミンEの保存安定性に優れ、香味立ちのよさも良好であった。
【0063】
[処方例1]
(A)トコフェロール酢酸エステル 0.05
(B)ラウロイルメチルタウリンナトリウム 0.15
(C)ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.25
(D)グリセリン(85%水溶液) 3.5
(グリセリン純分量 2.975)
(D)プロピレングリコール 4
(D)ソルビット(70%水溶液) 3
(ソルビット純分量 2.1)
(D)ポリエチレングリコール400 5
(E)香料組成物A 0.2
エマルション* 0.5
(エマルションに含まれる(C)ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油
0.1)
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.25
水 残
合計 100%
(B)/(C)の質量比 0.4
(D)/(C)の質量比 40.2
*:エマルションの組成(以下同様)
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 20
トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 20
ジプロピレングリコール 7.0
精製水 53
合計 100%
【0064】
[処方例2]
(A)トコフェロール酢酸エステル 0.05
(B)ラウロイルメチルタウリンナトリウム 0.15
(C)ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.25
(D)グリセリン(85%水溶液) 5
(グリセリン純分量 4.25)
(D)プロピレングリコール 3
(D)ソルビット(70%水溶液) 5
(ソルビット純分量 3.5)
(E)香料組成物A 0.2
エマルション* 0.5
(エマルションに含まれる(C)ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油
0.1)
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.25
水 残
合計 100%
(B)/(C)の質量比 0.4
(D)/(C)の質量比 30.7
【0065】
[処方例3]
(A)トコフェロール酢酸エステル 0.05
(B)ラウロイルメチルタウリンナトリウム 0.15
(C)ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.25
(D)グリセリン(85%水溶液) 3.5
(グリセリン純分量 2.975)
(D)プロピレングリコール 4
(D)ソルビット(70%水溶液) 3
(ソルビット純分量 2.1)
(D)ポリエチレングリコール400 5
(E)香料組成物A 0.2
エマルション* 0.3
(エマルションに含まれる(C)ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油
0.06)
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.25
水 残
合計 100%
(B)/(C)の質量比 0.5
(D)/(C)の質量比 45.4
【0066】
[処方例4]
(A)トコフェロール酢酸エステル 0.05
(B)ラウロイルメチルタウリンナトリウム 0.15
(C)ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.25
(D)グリセリン(85%水溶液) 3.5
(グリセリン純分量 2.975)
(D)プロピレングリコール 4
(D)ソルビット(70%水溶液) 3
(ソルビット純分量 2.1)
(D)ポリエチレングリコール400 5
(E)香料組成物A 0.2
イソプロピルメチルフェノール 0.05
トラネキサム酸 0.05
エマルション* 0.5
(エマルションに含まれる(C)ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油
0.1)
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.25
水 残
合計 100%
(B)/(C)の質量比 0.4
(D)/(C)の質量比 40.2
【0067】
[処方例5]
(A)トコフェロール酢酸エステル 0.05
(B)ラウロイルメチルタウリンナトリウム 0.15
(C)ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.6
(D)グリセリン(85%水溶液) 5
(グリセリン純分量 4.25)
(D)プロピレングリコール 4
(D)ソルビット(70%水溶液) 3
(ソルビット純分量 2.1)
(E)香料組成物A 0.2
イソプロピルメチルフェノール 0.05
トラネキサム酸 0.05
トリポリリン酸 0.3
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.25
水 残
合計 100%
(B)/(C)の質量比 0.3
(D)/(C)の質量比 17.3
【0068】
[処方例6]
(A)トコフェロール酢酸エステル 0.05
(B)ラウロイルメチルタウリンナトリウム 0.15
(C)ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.6
(D)グリセリン(85%水溶液) 5
(グリセリン純分量 4.25)
(D)プロピレングリコール 4
(D)ソルビット(70%水溶液) 3
(ソルビット純分量 2.1)
(E)香料組成物A 0.2
イソプロピルメチルフェノール 0.1
トラネキサム酸 0.05
トリポリリン酸 0.5
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.25
水 残
合計 100%
(B)/(C)の質量比 0.3
(D)/(C)の質量比 17.3