(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080357
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】杖脚および多脚杖
(51)【国際特許分類】
A45B 3/00 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
A45B3/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193483
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 竜満
(72)【発明者】
【氏名】大成 仁太
(57)【要約】
【課題】軽さと強度とを兼ね備えた多脚杖用の杖脚を提供する。
【解決手段】多脚杖用の杖脚は、一端が把持部に接続されるシャフトの他端を保持する保持部と、各々が保持部から異なる方向に延びた3本以上の脚部とを備える。保持部と各脚部とは、マグネシウム合金で一体として形成されている。各脚部は、床面または地面に接する先ゴムが取り付けられる先端部と、保持部から先端部へと延びた本体部とを含む。本体部は、保持部に連続し、かつ、保持部から把持部に向かう第1の方向に凸状に湾曲した状態で保持部から先端部に向かう第2の方向に延びた第1の湾曲部を有する。少なくとも1本の脚部の第1の湾曲部には、把持部側において保持部に連続し、かつ、第1の方向に凸状に湾曲した状態で第2の方向に延びたリブ部が形成されている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多脚杖用の杖脚であって、
一端が把持部に接続されるシャフトの他端を保持する保持部と、
各々が前記保持部から異なる方向に延びた3本以上の脚部とを備え、
前記保持部と各前記脚部とは、マグネシウム合金で一体として形成されており、
各前記脚部は、
床面または地面に接する先ゴムが取り付けられる先端部と、
前記保持部から前記先端部へと延びた本体部とを含み、
前記本体部は、前記保持部に連続し、かつ、前記保持部から前記把持部に向かう第1の方向に凸状に湾曲した状態で前記保持部から前記先端部に向かう第2の方向に延びた第1の湾曲部を有し、
前記3本以上の脚部のうちの少なくとも1本の前記脚部の前記第1の湾曲部には、前記把持部側において前記保持部に連続し、かつ、前記第1の方向に凸状に湾曲した状態で前記第2の方向に延びたリブ部が形成されている、杖脚。
【請求項2】
前記第1の湾曲部は、前記把持部側の第1の外側湾曲面と、前記第1の外側湾曲面とは反対側の第1の内側湾曲面とを有し、
前記リブ部が形成された前記第1の湾曲部を有する前記本体部には、前記第2の方向において前記第1の内側湾曲面に連続し、かつ、前記第1の内側湾曲面に対して前記第1の方向とは反対の第3の方向に隆起した第1の隆起部が形成されており、
前記第1の隆起部は、前記第1の方向と前記第2の方向とに垂直な第4の方向に延びている、請求項1に記載の杖脚。
【請求項3】
前記第1の隆起部は、前記保持部よりも前記先端部側に形成されている、請求項2に記載の杖脚。
【請求項4】
前記第1の隆起部が形成された前記本体部は、前記第2の方向において前記第1の隆起部に連続し、かつ、前記第1の方向に凸状に湾曲した状態で前記第2の方向に延びた第2の湾曲部をさらに有し、
前記第2の湾曲部の前記第4の方向の肉厚は、前記第1の湾曲部の前記第4の方向の肉厚以上である、請求項3に記載の杖脚。
【請求項5】
前記先端部は、前記本体部から前記第3の方向に延設されており、
前記第2の湾曲部は、前記把持部側の第2の外側湾曲面と、前記第2の外側湾曲面とは反対側の第2の内側湾曲面とを有し、
前記第2の湾曲部を有する前記本体部には、前記第2の湾曲部と前記先端部とに連続し、かつ、前記第2の内側湾曲面に対して前記第3の方向に隆起した第2の隆起部がさらに形成されており、
前記第2の隆起部は、前記第4の方向に延びている、請求項4に記載の杖脚。
【請求項6】
前記3つ以上の脚部の各々は、前記リブ部と、前記第1の隆起部と、前記第2の湾曲部と、前記第2の隆起部とを有する、請求項5に記載の杖脚。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の杖脚と、前記シャフトと、前記把持部とを備える、多脚杖。
【請求項8】
前記杖脚と前記シャフトとが、マグネシウム合金で一体として形成された、請求項7に記載の多脚杖。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、杖脚および杖脚を備えた多脚杖に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高齢者等が歩行時に使用する各種の杖が知られている。
【0003】
たとえば、実用新案登録第3195836号公報(特許文献1)には、接地部と、棒状部と、握り部とを有する多点支持杖(多脚杖)が開示されている。当該多点支持杖は、接地部に少なくとも3点の滑り止め接地ゴムを備え、締め付けネジにより棒状部の下端部に接地部が着脱可能である。
【0004】
実用新案登録第3118121号公報(特許文献2)には、マグネシウム合金製のパイプ状の素材に段曲げ加工を施し、光源を装着することにより夜間の歩行が安全にできるようにする歩行補助ステッキ(1本脚の杖)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3195836号公報
【特許文献2】実用新案登録第3118121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多脚杖では、シャフト(棒状部、支柱部)のみならず、シャフトの床面側または地面側の端部に接続される杖脚の軽さと強度とが求められる。本開示の目的は、軽さと強度とを兼ね備えた多脚杖用の杖脚および当該杖脚を備えた多脚杖を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の多脚杖用の杖脚は、一端が把持部に接続されるシャフトの他端を保持する保持部と、各々が保持部から異なる方向に延びた3本以上の脚部とを備える。保持部と各脚部とは、マグネシウム合金で一体として形成されている。各脚部は、床面または地面に接する先ゴムが取り付けられる先端部と、保持部から先端部へと延びた本体部とを含む。本体部は、保持部に連続し、かつ、保持部から把持部に向かう第1の方向に凸状に湾曲した状態で保持部から先端部に向かう第2の方向に延びた第1の湾曲部を有している。3本以上の脚部のうちの少なくとも1本の脚部の第1の湾曲部には、把持部側において保持部に連続し、かつ、第1の方向に凸状に湾曲した状態で第2の方向に延びたリブ部が形成されている。
【0008】
本開示の他の局面に従うと、多脚杖は、上述した、杖脚と、シャフトと、把持部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、軽さと強度とを兼ね備えた杖脚および当該杖脚を備えた多脚杖を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図18】
図13のXVIII-XVIII線矢視端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態に係る杖脚および当該杖脚を備えた多脚杖(多点支持杖)について説明する。なお、多脚杖は、高齢者、身体障害者、リハビリ中の歩行訓練者等(以下、「ユーザ」とも称する)が歩行する際に使用される。以下では、多脚杖として、一般的に用いられている4点杖を例に挙げて説明する。
【0012】
さらに、以下では、3次元直交座標系(XYZ座標系)を用いて説明する。Z軸の正方向が、鉛直上向き方向であり、Z軸の負方向が、鉛直下向き方向である。また、以下では説明の便宜上、多脚杖が4点支持により立った状態で施設等の建物内の水平な床面(XY平面に平行な面)に置かれている状態に基づき、多脚杖を説明する。
【0013】
なお、以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0014】
<A.多脚杖および杖脚の概要>
図1は、多脚杖の斜視図である。
図2は、多脚杖用の杖脚の平面図である。
図3は、杖脚の底面図である。
図4は、杖脚の正面図である。
図5は、杖脚の背面図である。
図6は、杖脚の右側面図である。
図7は、杖脚の左側面図である。
【0015】
図1に示されるように、多脚杖1は、把持部2と、シャフト3と、杖脚4とを備える。なお、把持部2は、グリップとも称される。シャフト3は、支柱部または棒状部とも称される。
【0016】
シャフト3は、シャフト3の延伸方向(Z軸方向)において、上端部3aと、上端部3aよりZ軸の負方向側(床面側)の下端部3bとを備える。シャフト3の上端部3aは、把持部2に接続される。このようにして、シャフト3と把持部2とが接続されている。
【0017】
詳しくは、本例では、シャフト3は、外筒31と、内筒32と、回転部材33とを備える。回転部材33をシャフト3の延伸軸を中心に、第1の方向に回転させることにより、外筒31と内筒32との係合が弛む。外筒31を内筒32に対して、上方向または下方向に移動させ、かつ、回転部材33を第1の方向とは反対の第2の方向に回転させることにより、外筒31が内筒32に対し位置固定される。このようにして、把持部2の高さ調整が行われる。なお、外筒31にZ軸方向に沿って複数の高さ調整用の調整孔が所定間隔で形成されており、かつ、内筒32に当該調整孔から出没自在に構成された高さ調整用のピンが1つ設けられていてもよい。
【0018】
なお、シャフト3の構成は、このような構成に限定されるものではない。一般に知られている各種のシャフトを杖脚4に接続して用いることができる。
【0019】
把持部2は、ユーザが歩行時等において把持する部分である。把持部2は、本例では、内部が金属材で形成され、かつ、外部がゴム素材で形成されている。なお、シャフト3が、棒状(一直線状)ではなく、途中で屈曲することによって、たとえば把持部側の端部(上端部)がXY平面に平行かつY軸方向に延びているような構成の場合には、把持部2は、当該端部が挿入される筒状のゴム製部材であってもよい。
【0020】
このようにシャフト3がZ軸正方向に延びている限り、シャフト3の把持部2側の形状および把持部2の形状は特に限定されない。
【0021】
次に、
図1~
図7を参照して、杖脚4は、シャフト3の下端部3bを保持する保持部10と、各々が保持部10から異なる方向に延びた4本の脚部21,22,23,24とを備える。
【0022】
保持部10は、Z軸の方向に延びた中空円筒形状を有する。具体的には、保持部10には、開口部11(
図2参照)が形成されている。
図1に示すように、開口部11にシャフト3の下端部3b側が挿入され、かつ、杖脚4の背面側(
図3参照)に設けられた固定具(図示せず)にてシャフト3(詳しくは、内筒32)が杖脚4に固定される。
【0023】
保持部10と各脚部21~24とは、マグネシウム合金で一体として形成されている。すなわち、杖脚4は、複数の部品(保持部10および各脚部21~24)をまとめて1つの部品としたものである。
【0024】
杖脚4は、鋳造により製造される。本例では、杖脚4は、ダイカストにより製造される。すなわち、杖脚4は、金型に溶融したマグネシウム合金を圧入することにより製造される。マグネシウム合金は、重さが鉄の四分の一程度、アルミニウムの三分の二程度であり、鉄およびアルミニウムに比べて軽い。
【0025】
なお、杖脚4は、ダイカストの代わりに、重力を使ってマグネシウム合金を注入する金型鋳造で製造してもよい。ただし、ダイカストの方が当該金型鋳造よりも好ましい。ダイカストは、圧力をかけて成型するため、当該金型鋳造よりも製品の寸法精度を高めることができる。また、同様の理由で、ダイカストによれば、製品の表面が綺麗に仕上がり、かつ、製品の生産に係るリードタイムを短くできる。
【0026】
本例では、脚部21と脚部22とは、たとえば
図2に示されるように、XZ平面に平行であって、かつ、シャフト3の軸(Z軸方向の中心軸)を含む第1の仮想面に対して面対称となっている。同様に、脚部23と脚部24とについても、当該第1の仮想面に対して面対称となっている。
【0027】
一方、脚部21と脚部24とは、YZ平面に平行であって、かつ、シャフト3の軸(Z軸方向の中心軸)を含む第2の仮想面に対して非対称である。同様に、脚部22と脚部23とは、当該第2の仮想面に対して非対称である。
【0028】
なお、上述した保持部10が、本発明の「保持部」の一例である。上述した脚部21,22,23,24の各々が、本発明の「脚部」の一例である。
【0029】
<B.杖脚の詳細>
図8は、杖脚4の上面側の斜視図である。
図9は、杖脚4の底面側の斜視図である。
図10は、杖脚4の先端側の部位の要部拡大図である。
図11は、杖脚4の上面側の要部拡大図である。
図12は、杖脚4の底面側の要部拡大図である。
図13は、
図3と同様、杖脚4の底面図である。
【0030】
(b1.本体部および先端部)
図8および
図11を参照して、杖脚4は、上述したように、4つの脚部21~24を備える。脚部21は、床面に接する先ゴム(図示せず)が取り付けられる先端部110と、保持部10から先端部110へと延びた本体部120とを含む。先端部110は、本体部120からZ軸の負方向に延設されている。なお、先ゴムは、滑り止め接地ゴムとも称される。多脚杖1が屋外で用いられる場合には、先ゴムは地面に接する。
【0031】
同様に、脚部22は、床面に接する先ゴムが取り付けられる先端部210と、保持部10から先端部210へと延びた本体部220とを含む。脚部23は、床面に接する先ゴムが取り付けられる先端部310と、保持部10から先端部310へと延びた本体部320とを含む。脚部24は、床面に接する先ゴムが取り付けられる先端部410と、保持部10から先端部410へと延びた本体部420とを含む。先端部210,310,410は、それぞれ、本体部220,320,420からZ軸の負方向に延設されている。
【0032】
なお、上述した先端部110,210,310,410の各々が、本発明の「先端部」の一例である。上述した本体部120,220,320,420の各々が、本発明の「本体部」の一例である。
【0033】
(b2.第1の湾曲部)
引き続き
図8および
図11を参照して、本体部120は、保持部10に連続し、かつ、保持部10から把持部2(
図1参照)に向かう方向(本例では、Z軸正方向)に凸状に湾曲した状態で保持部10から先端部110に向かう矢印A1の方向に延びた湾曲部121(
図11)を有する。
【0034】
同様に、本体部220は、保持部10に連続し、かつ、Z軸正方向に凸状に湾曲した状態で保持部10から先端部210に向かう矢印A2の方向に延びた湾曲部221(
図11)を有する。本体部320は、保持部10に連続し、かつ、Z軸正方向に凸状に湾曲した状態で保持部10から先端部310に向かう矢印A3の方向に延びた湾曲部321(
図11)を有する。本体部420は、保持部10に連続し、かつ、Z軸正方向に凸状に湾曲した状態で保持部10から先端部410に向かう矢印A4の方向に延びた湾曲部421(
図11)を有する。
【0035】
なお、上述した湾曲部121,221,321,421の各々が、本発明の「第1の湾曲部」の一例である。Z軸の正方向が、本発明の「第1の方向」に対応する。矢印A1の方向、矢印A2の方向、矢印A3の方向、および矢印A4の方向の各々が、本発明の「第2の方向」に対応する。Z軸の負方向が、本発明の「第3の方向」に対応する。
【0036】
以下では、説明の便宜上、矢印A1の方向と、矢印A2の方向と、矢印A3の方向と、矢印A4の方向とを、それぞれ、「A1方向」、「A2方向」、「A3方向」、「A4方向」とも称する。また、後述する矢印B1~B4の各方向についても、それぞれ、「B1方向」、「B2方向」、「B3方向」、「B4方向」とも称する。
【0037】
(b3.リブ部)
図11および
図12を参照して、湾曲部121には、把持部2側において保持部10に連続し、かつ、Z軸の正方向に凸状に湾曲した状態でA1方向に延びたリブ部1201が形成されている。
【0038】
同様に、湾曲部221には、把持部2側において保持部10に連続し、かつ、Z軸の正方向に凸状に湾曲した状態でA2方向に延びたリブ部2201が形成されている。湾曲部321には、把持部2側において保持部10に連続し、かつ、Z軸の正方向に凸状に湾曲した状態でA3方向に延びたリブ部3201(
図11)が形成されている。湾曲部421には、把持部2側において保持部10に連続し、かつ、Z軸の正方向に凸状に湾曲した状態でA4方向に延びたリブ部4201が形成されている。
【0039】
各リブ部1201,2201,3201,4201は、保持部10の周囲に形成されている。各リブ部1201,2201,3201,4201は、把持部2側から視て、保持部10の外周に沿って、この順に形成されている。
【0040】
なお、上述したリブ部1201,2201,3201,4201の各々が、本発明の「リブ部」の一例である。
【0041】
(b4.第1の隆起部)
図9、
図10、および
図13を参照して、湾曲部121は、把持部2側の外側湾曲面1211と、外側湾曲面1211とは反対側の内側湾曲面1212とを有する。同様に、湾曲部221は、把持部2側の外側湾曲面2211と、外側湾曲面2211とは反対側の内側湾曲面2212とを有する。湾曲部321は、把持部2側の外側湾曲面3211と、外側湾曲面3211とは反対側の内側湾曲面3212とを有する。湾曲部421は、把持部2側の外側湾曲面4211(
図12)と、外側湾曲面4211とは反対側の内側湾曲面4212とを有する。
【0042】
本体部120には、A1方向において内側湾曲面1212に連続し、かつ、内側湾曲面1212に対してZ軸の負方向に隆起した隆起部122が形成されている。隆起部122は、Z軸の正方向とA1方向とに垂直なB1方向(
図13)に延びている。隆起部122は、保持部10よりも先端部110側に形成されている。
【0043】
同様に、本体部220には、A2方向において内側湾曲面2212に連続し、かつ、内側湾曲面2212に対してZ軸の負方向に隆起した隆起部222が形成されている。隆起部222は、Z軸の正方向とA2方向とに垂直なB2方向(
図13)に延びている。隆起部222は、保持部10よりも先端部210側に形成されている。
【0044】
同様に、本体部320には、A3方向において内側湾曲面3212に連続し、かつ、内側湾曲面3212に対してZ軸の負方向に隆起した隆起部322が形成されている。隆起部322は、Z軸の正方向とA3方向とに垂直なB3方向(
図13)に延びている。隆起部322は、保持部10よりも先端部310側に形成されている。
【0045】
同様に、本体部420には、A4方向において内側湾曲面4212に連続し、かつ、内側湾曲面4212に対してZ軸の負方向に隆起した隆起部422が形成されている。隆起部422は、Z軸の正方向とA4方向とに垂直なB4方向(
図13)に延びている。隆起部422は、保持部10よりも先端部410側に形成されている。
【0046】
なお、上述した隆起部122,222,322,422の各々が、本発明の「第1の隆起部」の一例である。外側湾曲面1211,2211,3211,4211が、本発明の「第1の外側湾曲面」の一例である。内側湾曲面1212,2212,3212,4212が、本発明の「第1の内側湾曲面」の一例である。B1方向、B2方向、B3方向、およびB4の方向の各々が、本発明の「第4の方向」に対応する。
【0047】
(b5.第2の湾曲部)
引き続き
図9、
図10、および
図13を参照して、本体部120は、A1方向において隆起部122に連続し、かつ、Z軸の正方向に凸状に湾曲した状態でA1方向に延びた湾曲部123をさらに有する。湾曲部123のB1方向(
図13)の肉厚は、湾曲部121のB1方向の肉厚以上である。
【0048】
同様に、本体部220は、A2方向において隆起部222に連続し、かつ、Z軸の正方向に凸状に湾曲した状態でA2方向に延びた湾曲部223をさらに有する。湾曲部223のB2方向の肉厚は、湾曲部221のB2方向の肉厚以上である。
【0049】
同様に、本体部320は、A3方向において隆起部322に連続し、かつ、Z軸の正方向に凸状に湾曲した状態でA3方向に延びた湾曲部323をさらに有する。湾曲部323のB3方向の肉厚は、湾曲部321のB3方向の肉厚以上である。
【0050】
同様に、本体部420は、A4方向において隆起部422に連続し、かつ、Z軸の正方向に凸状に湾曲した状態でA4方向に延びた湾曲部423をさらに有する。湾曲部423のB4方向の肉厚は、湾曲部421のB4方向の肉厚以上である。
【0051】
なお、上述した湾曲部123,223,323,423の各々が、本発明の「第2の湾曲部」の一例である。
【0052】
(b6.第2の隆起部)
引き続き
図9、
図10、および
図13を参照して、湾曲部123は、把持部2側の外側湾曲面1231(
図18)と、外側湾曲面1231とは反対側の内側湾曲面1232(
図18)とを有する。本体部120には、湾曲部123と先端部110とに連続し、かつ、内側湾曲面1232に対してZ軸の負方向に隆起した隆起部124がさらに形成されている。隆起部124は、隆起部122と同様に、B1方向に延びている。なお、隆起部122と、湾曲部123と、隆起部124とにより、凹部190が形成されている。
【0053】
同様に、湾曲部223は、把持部2側の外側湾曲面(図示せず)と、当該外側湾曲面とは反対側の内側湾曲面(図示せず)とを有する。本体部220には、湾曲部223と先端部210とに連続し、かつ、当該内側湾曲面に対してZ軸の負方向に隆起した隆起部224がさらに形成されている。隆起部224は、隆起部222と同様に、B2方向に延びている。
【0054】
同様に、湾曲部323は、把持部2側の外側湾曲面(図示せず)と、当該外側湾曲面とは反対側の内側湾曲面(図示せず)とを有する。本体部320には、湾曲部323と先端部310とに連続し、かつ、当該内側湾曲面に対してZ軸の負方向に隆起した隆起部324がさらに形成されている。隆起部324は、隆起部322と同様に、B3方向に延びている。
【0055】
同様に、湾曲部423は、把持部2側の外側湾曲面(図示せず)と、当該外側湾曲面とは反対側の内側湾曲面(図示せず)とを有する。本体部420には、湾曲部423と先端部410とに連続し、かつ、当該内側湾曲面に対してZ軸の負方向に隆起した隆起部424がさらに形成されている。隆起部424は、隆起部422と同様に、B4方向に延びている。
【0056】
なお、上述した隆起部124,224,324,424の各々が、本発明の「第2の隆起部」の一例である。各湾曲部123,223,323,423に含まれる上記外側湾曲面が、本発明の「第2の外側湾曲面」の一例である。各湾曲部123,223,323,423に含まれる上記内側湾曲面が、本発明の「第2の内側湾曲面」の一例である。
【0057】
(b7.切断面形状)
図14は、
図13のXIV-XIV線矢視端面図である。
図15は、
図13のXV-XV線矢視端面図である。
図16は、
図13のXVI-XVI線矢視端面図である。
図17は、
図13のXVII-XVII線矢視端面図である。
図18は、
図13のXVIII-XVIII線矢視端面図である。
図19は、
図13のXIX-XIX線矢視端面図である。以下、上述した説明と一部が重複するが、杖脚4の構成を、杖脚4の断面を用いて説明する。
【0058】
図14に示されるように、杖脚4では、保持部10から先端部110に向かって、湾曲部121と、隆起部122と、湾曲部123と、隆起部124とが、この順に連続して形成されている。湾曲部121には、リブ部1201が形成されている。
【0059】
湾曲部121は、外側湾曲面1211と、内側湾曲面1212とを有する。湾曲部123は、外側湾曲面1231と、内側湾曲面1232とを有する。
【0060】
隆起部122は、内側湾曲面1212に対してZ軸の負方向(床面方向)に隆起している。隆起部124は、内側湾曲面1232に対してZ軸の負方向に隆起している。先端部110の内部は、空洞になっている。
【0061】
図15に示されるように、湾曲部121には、Z軸の正方向に凸状に湾曲した状態でA1方向(
図13参照)に延びたリブ部1201が形成されている。
図15における断面視におけるリブ部1201の曲率(内側面と外側面との各曲率)は、リブ部1201の割損防止の観点から、大きい方向が好ましい。
【0062】
図16に示されるように、本体部120は、Z軸正方向に凸状に湾曲した状態でA1方向に延びた湾曲部121を有する。湾曲部121は、上述したように、外側湾曲面1211と、内側湾曲面1212とを有する。
【0063】
このように、本体部120は、リブ部1201を含む湾曲部121の箇所において、肉抜きがなされたような形状を有している。
【0064】
図17に示されるように、本体部120は、内側湾曲面1212からZ軸の負方向に隆起した隆起部122を備える。本体部120は、隆起部122の形状により、湾曲形状の内部にマグネシウム合金が詰められたような形状となっている。
【0065】
図18に示されるように、本体部120は、Z軸正方向に凸状に湾曲した状態でA1方向に延びた湾曲部123を有する。湾曲部123は、上述したように、外側湾曲面1231と、内側湾曲面1232とを有する。本体部120は、湾曲部123の箇所において、肉抜きがなされたような形状を有している。
【0066】
湾曲部123のB1方向の肉厚は、湾曲部121のB1方向の肉厚以上である。詳しくは、湾曲部123のB1方向の肉厚は、少なくともZ軸の正方向の中央部において、湾曲部121のB1方向の肉厚以上である。
【0067】
なお、本例では、湾曲部123のZ軸の正方向の肉厚は、湾曲部121のZ軸の正方向の肉厚と略同じである。また、湾曲部123のZ軸の負方向の下端部においては、湾曲部123のB1方向の肉厚は、湾曲部121のB1方向の肉厚と略同じである。
【0068】
図19に示されるように、本体部120は、内側湾曲面1232からZ軸の負方向に隆起した隆起部124を備える。本体部120は、隆起部124の形状により、隆起部122と同様に、湾曲形状の内部にマグネシウム合金が詰められたような形状となっている。
【0069】
<C.杖脚の利点>
上述したように、杖脚4を構成する保持部10と各脚部21~24とは、マグネシウム合金で一体として形成されている。それゆえ、杖脚4は、鉄製の杖脚に比べて、軽量で、かつ、強度が高い。
【0070】
さらに、杖脚4は、以下の利点を有する。なお、多脚杖1は、4つの脚部21~24を含む杖脚4を備え、かつ、各脚部21~24は、上述したように同じような構成を有する。それゆえ、以下では、説明の便宜上、1つの脚部21に着目して、杖脚4で得られる利点を説明する。
【0071】
(c1.リブ部1201による利点)
脚部21は、
図8等に示すように、保持部10に連続したリブ部1201を有する。したがって、杖脚4は、リブ部1201を有しない杖脚に比べて、強度が高い。たとえば、多脚杖1の使用中に、多脚杖1の上面視においてシャフト3の上端部3a側をA1方向にひずませる大きな力が作用したとしても、リブ部1201が形成されているため、たとえば、保持部10と脚部21~24との境界付近で亀裂あるいは割損が生じることを抑制できる。このように、リブ部1201は、杖脚4における補強部として機能する。
【0072】
また、リブ部1201は、Z軸の正方向に凸状に湾曲した状態でA1方向に延びている。このため、
図15に示したように、湾曲部121は、リブ部1201においても、Z軸の正方向側に肉抜きされたような形状を有することになる。仮に、リブ部1201を肉抜きされていないような形状に形成しようとすると、杖脚4の製造過程において杖脚4を冷ます際に、リブ部1201の根元側(
図15においてZ軸の負方向側)において熱間割れが生じる虞が高くなる。しかしながら、本例のリブ部1201によれば、このような熱間割れが生じる虞を低減することができる。
【0073】
(c2.隆起部122による利点)
脚部21は、
図9等に示すように、湾曲部121の内側湾曲面1212に対して隆起した隆起部122を有する。それゆえ、先端部110がグレーチング(側溝の蓋)の開口部(水が溝へと流れるための格子状の貫通孔)に嵌ってしまった場合、先端部110を当該開口部から抜き取ろうとしたときに、脚部21に対して、たとえばB1方向(
図13)またはB1方向とは反対に大きな力が加わっても、脚部21が変形してしまうことを抑制できる。このように、隆起部122も、杖脚4における補強部として機能する。
【0074】
また、隆起部122は、保持部10よりも先端部110側に形成されている。したがって、隆起部122が、先端部110側よりも保持部10側に形成される場合に比べて、上記のような開口部からの先端部110の抜き取りの際において、脚部21が変形してしまうことを抑制できる。
【0075】
(c3.湾曲部123による利点)
脚部21は、
図9等に示すように、隆起部122に連続し、かつ、Z軸の正方向に凸状に湾曲した状態でA1方向に延びた湾曲部123をさらに有する。湾曲部123のB1方向(
図13)の肉厚は、湾曲部121のB1方向の肉厚以上である。
【0076】
湾曲部123のB1方向の肉厚が、湾曲部121のB1方向の肉厚以上であるため、湾曲部123のB1方向の肉厚を湾曲部121のB1方向の肉厚と同じにした場合に比べて、強度を高くすることができる。このように、湾曲部123も、杖脚4における補強部として機能する。
【0077】
また、湾曲部123を備えておらず、湾曲部123の箇所も隆起部122が連続して形成されるような構成(すなわち、
図10に示した凹部190が形成されていない構成)に比べて、脚部21を軽量化することができる。さらに、当該構成に比べて、杖脚4の製造時における熱間割れを抑制できる。
【0078】
このように、湾曲部123によれば、脚部21の強度を高めるとともに、脚部21の軽量化を図ることができる。引いては、湾曲部123によれば、杖脚4の強度を高めるとともに、杖脚4の量化を図ることができる。さらには、杖脚4の歩留まり率を高めることができる。
【0079】
(c4.隆起部124による利点)
脚部21は、
図9等に示すように、湾曲部123の内側湾曲面1232に対して隆起した隆起部124をさらに有する。それゆえ、先端部110がグレーチングの開口部に嵌ってしまった場合、先端部110を当該開口部から抜き取ろうとしたときに、脚部21に対して、たとえばB1方向(
図13)またはB1方向とは反対に大きな力が加わっても、脚部21が変形してしまうことをさらに抑制できる。このように、隆起部124も、杖脚4における補強部として機能する。
【0080】
特に、隆起部124は、先端部110に連続しているため、先端部110に大きな力が加わった場合であっても、本体部120の変形を抑制することができる。また、隆起部124は、肉厚な湾曲部123に連続しており、かつ湾曲部123は、隆起部122に連続している。したがって、このような連続性を有していない構成に比べて、脚部21(詳しくは本体部120)の先端部110側の箇所の強度を高めることができる。
【0081】
<D.変形例>
(1)上記においては、多脚杖1のうち、杖脚4のみがマグネシウム合金で一体的に形成されている構成を例に挙げて説明した。詳しくは、保持部10と各脚部21~24とがマグネシウム合金で一体として形成されている構成を例に挙げて説明した。しかしながら、これに限定されるものではない。
【0082】
保持部10と各脚部21~24とシャフト3(詳しくは、下側の内筒32)とを、マグネシウム合金で一体的に形成してもよい。この場合には、シャフト3を保持部10に固定する固定具が不要となる。また、固定具が不要となるため、固定具を有する構成に比べて、多脚杖1の耐久性を増すことが可能となる。なお、把持部2の高さ調整機能を有していない多脚杖1では、各脚部21~24とシャフト全体とを、マグネシウム合金で一体的に形成することができる。
【0083】
(2)上記においては、4本の脚部21~24の各々において、補強部として、リブ部(1201,2201,3201,4201)と、第1の隆起部(122,222,322,422)と、厚肉の第2の湾曲部(123,223,323,423)と、第2の隆起部(124,224,324,424)とが形成されている構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
【0084】
4本の脚部21~24の各々が、上記4つの補強部(リブ部,第1の隆起部,肉厚の第2の湾曲部,第2の隆起部)のうちの少なくとも任意の1つを備える構成であれば、従来よりも杖脚4の強度を上げることができる。4本の脚部21~24のうち少なくとも1本の脚部が上記4つの補強部を備える構成であれば、従来よりも杖脚4の強度を上げることができる。4本の脚部21~24のうち少なくとも1本の脚部が上記4つの補強部の少なくとも1つを備える構成であれば、従来よりも杖脚4の強度を上げることができる。
【0085】
今回開示された実施の形態は例示であって、上記内容のみに制限されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
1 多脚杖、2 把持部、3 シャフト、3a 上端部、3b 下端部、4 杖脚、10 保持部、11 開口部、21,22,23,24 脚部、31 外筒、32 内筒、33 回転部材、110,210,310,410 先端部、120,220,320,420 本体部、121,123,221,223,321,323,421,423 湾曲部、122,124,222,224,322,324,422,424 隆起部、190 凹部、1201,2201,3201,4201 リブ部、1211,1231,2211,3211,4211 外側湾曲面、1212,1232,2212,3212,4212 内側湾曲面。