IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビアメカニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-レーザ加工装置 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080367
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20240606BHJP
【FI】
B23K26/00 Q
B23K26/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193496
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 智
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD11
4E168CA00
4E168CB04
4E168DA23
4E168EA15
4E168EA19
4E168JB01
4E168KA15
(57)【要約】
【課題】ガルバノスキャナの異常を検出可能なレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】
レーザ加工装置(1)は、レーザ源(2)と、ミラー(13a,15a)と、ミラーを回転駆動させる駆動源(13b,15b)と、ミラーの回転角度を検出する角度検出手段(13d,15d)と、を有し、レーザ源から出射されたレーザビームを前記ミラーにより偏向可能なガルバノスキャナ(13,15)と、ガルバノスキャナを制御する制御手段(6)と、を備え、制御手段は、前記ガルバノスキャナのミラーを回転駆動させた際に前記ガルバノスキャナが整定するまでの整定時間を測定し、前記整定時間が所定時間よりも長い場合、前記ガルバノスキャナの異常を報知するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ源と、
ミラーと、前記ミラーを回転駆動させる駆動源と、前記ミラーの回転角度を検出する角度検出手段と、を有し、前記レーザ源から出射されたレーザビームを前記ミラーにより偏向可能なガルバノスキャナと、
前記ガルバノスキャナを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記ガルバノスキャナのミラーを回転駆動させた際に前記ガルバノスキャナが整定するまでの整定時間を測定し、前記整定時間が所定時間よりも長い場合、前記ガルバノスキャナの異常を報知するように構成されている、
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記制御手段は、所定の角度範囲において、一定角度毎に前記ガルバノスキャナのミラーを位置決めし、各位置に位置決めする際に必要とした整定時間を測定すると共に、測定された複数の整定時間の内、少なくとも1つの整定時間が前記所定時間よりも長い場合、前記ガルバノスキャナの異常を報知するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記測定された複数の整定時間の一部が前記所定時間よりも長い場合と、前記測定された複数の整定時間の全部が前記所定時間よりも長い場合と、で、前記ガルバノスキャナの異常を報知する報知の態様が異なる、
ことを特徴とする請求項2記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、レーザ発振器から出射されたレーザの照射位置を、ガルバノスキャナにより走査可能に構成されたレーザ加工装置が広く知られている。従来、このようなレーザ加工装置において、ガルバノミラーの回転異常による駆動モータの負荷トルクの変動を検知し、この負荷トルクの変動に基づいて、ボールベアリングの劣化等によるガルバノミラーの回転異常を検出するものが案出されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-191083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載のように、駆動モータの負荷トルクの変動を検知すれば、ガルバノミラーの回転異常を検出することは可能であるが、上記方法とは異なる方法によってガルバノスキャナの異常を検出することが求められていた。
【0005】
そこで、本発明は、ガルバノスキャナの異常を検出可能なレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、レーザ源と、ミラーと、前記ミラーを回転駆動させる駆動源と、前記ミラーの回転角度を検出する角度検出手段と、を有し、前記レーザ源から出射されたレーザビームを前記ミラーにより偏向可能なガルバノスキャナと、前記ガルバノスキャナを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ガルバノスキャナのミラーを回転駆動させた際に前記ガルバノスキャナが整定するまでの整定時間を測定し、前記整定時間が所定時間よりも長い場合、前記ガルバノスキャナの異常を報知するように構成されている、ことを特徴とするレーザ加工装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、ガルバノスキャナの異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係るレーザ走査装置及びレーザ加工装置について、図面に基づいて説明をする。なお、以下の説明において、X軸方向、Y軸方向とは、加工対象を平面視で視た際の状態を基準とする。
【0010】
<レーザ加工装置の概略構成>
図1に示すように、本実施の形態に係るレーザ加工装置1は、レーザ源2と、レーザ源2から出射されたレーザビームの照射位置を走査するためのレーザ走査機構(レーザ走査装置)4と、を備えている。また、レーザ走査機構4は、レーザ源2から出射されたレーザビームの位置決めを行う走査部3、走査部3によって位置決めされたレーザビームを目標位置へ集光させるFθレンズ5、制御部6などを備えて構成されている。上記レーザ源2は、例えば、炭酸ガス(CO)レーザ発振器などによって構成されており、後述するショット制御部7からショット信号が入力されることによって、レーザパルスを出射するようになっている。
【0011】
走査部3は、レーザビームの光路上において、レーザ源2の下流側に配置されており、
X軸方向の位置決めを行う第1ガルバノスキャナ13と、Y軸方向の位置決めを行う第2ガルバノスキャナ15と、を備えている。
【0012】
これらガルバノスキャナ13,15は、それぞれミラー(以下、スキャナミラー、ガルバノミラーとも言う)13a,15aの回転角度を、ミラー13a,15aを回転駆動させる駆動源としての軸回転用モータ13b,15bによって調整可能に構成されており、X軸方向の位置決めを行う第1ガルバノスキャナ13のミラー13aの回転軸と、Y軸方向の位置決めを行う第2ガルバノスキャナ15のミラー15aの回転軸とが直交するように配置されている。また、各ガルバノスキャナ13,15には、ミラー13a,15aの回転角度を検出する角度検出手段として、ロータリーエンコーダ13d,15dが設けられている。
【0013】
レーザ加工装置1の制御部(制御手段)6は、レーザビームの走査位置(照射位置)を指令する位置決め制御装置16と、ガルバノスキャナ13,15を制御するガルバノ制御装置18と、を備えて構成されている。また、ガルバノ制御装置18は、第1及び第2ガルバノスキャナ13,15のそれぞれに対応したフィードバック(FB)演算部19a,19bと、ガルバノ駆動アンプ20a,20bと、を備えている。なお、位置決め制御装置16には、レーザ源2を制御する上述のショット制御部7が設けられている。
【0014】
このため、レーザ加工装置1は、例えばプリント基板等のワークWの所定位置に対してレーザビームを照射して穴明け加工を行う場合、位置決め制御装置16によって第1及び第2ガルバノスキャナ13,15に対する指令値(CH1指令値、CH2指令値)がフィードバック演算部19a,19bへと出力される。フィードバック演算部19a,19bには、それぞれ第1及び第2ガルバノスキャナ13,15のロータリーエンコーダ13d,15dからミラー13a,15aの回転角度(軸回転用モータ13b,15bの回転角度)に対応した検出信号(CH1エンコーダ角度信号、CH2エンコーダ角度信号)が入力されており、フィードバック演算部19a,19bによって、位置決め制御装置16からの指令値(CH1指令値、CH2指令値)とロータリーエンコーダ13d,15dの検出値との偏差が演算される。そして、この偏差が0となるように、フィードバック演算部19a,19bによって、第1及び第2ガルバノスキャナ13,15がそれぞれ、フィードバック制御される。
【0015】
ガルバノスキャナにてレーザビームを位置決めする場合、レーザビームの照射位置は目標位置に向かって移動し、目標位置に到達したところで、許容範囲内の残留振動を伴って整定する。第1及び第2ガルバノスキャナ13,15は、それぞれ、位置決め制御装置16からの角度指令値を中心に所定の整定範囲は設定されており、上記フィードバック演算部19a,19bは、ミラー13a,15aの回転角度が上記整定範囲内に収束したことに基づいて、第1及び第2ガルバノスキャナ13,15の位置決めが完了したと判断し、ショットOK信号をショット制御部7へ出力する。
【0016】
なお、以下の説明において、ミラー13a,15aの回転角度が上記整定範囲内に収束することをガルバノスキャナ13,15が整定したという。また、位置決め制御装置16からの指令値が出力されてからガルバノスキャナ13,15が整定するまでの時間(例えば、本実施の形態では、位置決め制御装置16からの指令値が出力されてからショットOK信号を受信するまでの時間)を整定時間というものとする。
【0017】
ショット制御部7は、フィードバック演算部19a,19bの両方からショットOK信号を受信すると、レーザビームを出射する。レーザ源2から出射されたレーザビームは、不図示のコリメータやアパチャーなどで構成される光学処理部によってビームの外形が整形された後、第1ガルバノスキャナ13によってX軸方向に、第2ガルバノスキャナ15によってY軸方向に偏向され、Fθレンズ5に入射する。そして、ワークW上の所定位置にて集光され、ワークWに穴明け加工が行われる。
【0018】
<異常検出モード>
ついで、レーザ加工装置1の異常検出モードについて説明をする。例えば、レーザ加工機を長期間使用すると、ボールベアリングの劣化等によりガルバノスキャナが円滑に回動しなくなる回動異常状態になることがある。即ち、長期間使用されると例えばボールベアリング内のボールが削れたり滑油が減少したりして摩擦係数が大きくなる。そうすると、ガルバノスキャナの回動動作ががたついたり、時には回動しなくなったりすることがあり、品質の良い穴あけ加工が行えなくなってしまう。このため、上記位置決め制御装置16は、異常検出部30を備えており、ガルバノスキャナ13,15の異常を検出する異常検出モードを実行可能に構成されている。
【0019】
具体的には、異常検出部30は、例えば、レーザ加工装置1の電源ON時や、レーザ加工の開始前に上記異常検出モードを実行するように構成されており、異常検出モードが開始されると、まず、第1及び第2ガルバノスキャナ13,15のそれぞれのミラー13a,15aを所定角度範囲において一定角度毎(例えば、本実施の形態では、最大振れ幅±10度で1度毎)に位置決めし、各位置に位置決めする際に必要とした整定時間を測定する。
【0020】
次に、異常検出部30は、これら測定された複数の整定時間のそれぞれを、予め定められた所定時間と比較し、上記測定された複数の整定時間の一つでも所定時間よりも長い場合には、ガルバノスキャナ13,15に異常が発生したと判断して、警告を報知する。より詳しくは、本実施の形態では、異常検出部30は、上記測定された複数の整定時間の内の一部について、所定時間に対する遅延が計測された場合、ミラー13a,15aの回転軸のボールベアリングの劣化などの部分的な劣化であると判定し、上記警告を報知する際にガルバノスキャナ13,15の部分的な劣化の虞れがある旨をユーザに対して報知する。例えば、測定結果と共にボールベアリングの劣化が疑われる旨を不図示の画面上に表示する。
【0021】
一方で、異常検出部30は、上記測定された複数の整定時間の内の全てについて、所定時間に対する遅延が計測された場合、ガルバノ駆動アンプ20a,20bなどのハード面の故障であると判定し、上記警告を報知する際にその旨をユーザに対して報知する。例えば、測定結果と共にガルバノ駆動アンプ20a,20bの故障が疑われる旨を不図示の画面上に表示する。なお、本実施の形態において、上記所定時間は、実験などによって予め求められた、正常状態のガルバノスキャナ13,15を上記一定角度、駆動させた際にガルバノスキャナ13,15を整定可能な時間(以下、理想整定時間ともいう)である。
【0022】
このように、本実施の形態では、ガルバノスキャナ13,15の整定時間を実測し、実測した整定時間が理想整定時間に対して時間遅延しているか否かを判断することによって、ガルバノスキャナ13,15の異常を検出することができる。また、所定の角度範囲内で、一定角度毎にガルバノスキャナ13,15のミラー13a,15aを回動させ、各位置決めに要した整定時間のそれぞれについて、理想整定時間に対する時間遅延を生じているか否かを検出することによって、ガルバノスキャナ13,15の故障内容の判定を行うことができる。
【0023】
なお、上述した位置決め制御装置16、FB演算部19a,19b、AMP20a・20b、ショット制御部7は、それぞれ、レーザ加工装置1の制御プログラムの一つの機能(処理)として実現されても、独立した回路として実現されても良い。このため、制御部6は、上記制御プログラムが格納された少なくとも1つの記憶部と、当該制御プログラムを実行する少なくとも1つのCPUを備えている。
【0024】
また、走査部3は、ガルバノスキャナ13,15のみならず、例えば、圧電素子など、レーザ光を偏向可能な他の偏向手段を備えても良い。なお、この場合、異常検出モードの実行時には、他の偏向手段はレーザ光を偏向させないように構成されることが望ましい。
【0025】
<まとめ>
[構成1]
レーザ源(2)と、
ミラー(13a,15a)と、前記ミラーを回転駆動させる駆動源(13b,15b)と、前記ミラーの回転角度を検出する角度検出手段(13d,15d)と、を有し、前記レーザ源から出射されたレーザビームを前記ミラーにより偏向可能なガルバノスキャナ(13,15)と、
前記ガルバノスキャナを制御する制御手段(6)と、を備え、
前記制御手段は、前記ガルバノスキャナのミラーを回転駆動させた際に前記ガルバノスキャナが整定するまでの整定時間を測定し、前記整定時間が所定時間よりも長い場合、前記ガルバノスキャナの異常を報知するように構成されている、
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【0026】
このように、実測したガルバノスキャナの整定時間を所定時間と比較し、整定時間の所定時間に対する時間遅れに基づいてガルバノスキャナの異常を検出することができる。なお、上述した実施の形態では、異常検出モード中の整定時間に基づいて、ガルバノスキャナの異常を検出していたが、例えば、レーザ加工動作中の整定時間が所定時間に対する時間遅れが発生しているか否かに基づいて、ガルバノスキャナの異常を検出するようにしても良い。また、上述した実施の形態では、所定時間を理想整定時間として実験などによって予め求める例を説明したが、例えば、ガルバノスキャナの異常検出前のレーザ加工時の整定時間などを基に所定時間を算出するようにしても良い。
【0027】
[構成2]
前記制御手段は、所定の角度範囲において、一定角度毎に前記ガルバノスキャナのミラーを位置決めし、各位置に位置決めする際に必要とした整定時間を測定すると共に、測定された複数の整定時間の内、少なくとも1つの整定時間が前記所定時間よりも長い場合、前記ガルバノスキャナの異常を報知するように構成されている、
ことを特徴とする構成1記載のレーザ加工装置。
【0028】
所定の角度範囲において、一定角度毎に前記ガルバノスキャナのミラーを位置決めし、各位置に位置決めする際に必要とした整定時間と、所定時間とを比較してガルバノスキャナの異常を検出するため、より、高精度にガルバノスキャナの異常を検出することができる。
【0029】
[構成3]
前記制御手段は、前記測定された複数の整定時間の一部が前記所定時間よりも長い場合と、前記測定された複数の整定時間の全部が前記所定時間よりも長い場合と、で、前記ガルバノスキャナの異常を報知する報知の態様が異なる、
ことを特徴とする構成2記載のレーザ加工装置。
【0030】
測定された複数の整定時間の一部が所定時間よりも長いか、測定された複数の整定時間の全部が前記所定時間よりも長いか、を判別することによって、レーザ加工装置の異常の種類を判別することができる。そして、当該レーザ加工装置の異常の種類に応じて警告の報知の態様を異ならせることによって、異常の種類をユーザに対して報知することができる。
【符号の説明】
【0031】
1:レーザ加工装置
2:レーザ源
6:制御手段
13/15:ガルバノスキャナ
13a/15a:ミラー
13b/15b:駆動源(モータ)
13d/15d:角度検出手段(ロータリーエンコーダ)
図1