(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008037
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】セラミックス粉末とそれによるセラミックス造形物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 1/30 20060101AFI20240112BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240112BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240112BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240112BHJP
【FI】
B28B1/30
B33Y70/00
B33Y80/00
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109539
(22)【出願日】2022-07-07
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】391063732
【氏名又は名称】大平洋ランダム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】古川 耕二
(72)【発明者】
【氏名】北 悟
(72)【発明者】
【氏名】釣 昌司
(72)【発明者】
【氏名】篠田 佳和
(72)【発明者】
【氏名】舩橋 修
(72)【発明者】
【氏名】小竹 伸幸
【テーマコード(参考)】
4G052
【Fターム(参考)】
4G052DA02
4G052DB12
4G052DC06
4G052DC09
(57)【要約】
【課題】バインダージェット方式の3Dプリンターによる成形に好適に用いられるセラミックス粉末とそれによるセラミックス造形物、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも3つの異なる中心径の粒度からなる粒子で構成されたセラミックス粉末である。前記セラミックス粉末は、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ、シリカ、又はジルコニアから成る。前記セラミックス粉末は、中心径が31~60μmの粒子を62%以上、中心径が11~20μmの粒子を7%以上、中心径が1.1~3.0μmの粒子を4%以上含有する。前記セラミックス粉末は、中心径:0.51~1.0μmの粒子を0.01~2.0%、又は中心径:0.05~0.30μmの粒子を0.01~0.4%、又は中心径:0.31~0.50μmの粒子を0.01~4.0%添加して成る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダージェット方式の3Dプリンターによるセラミックス造形物の形成に用いられるセラミックス粉末であって、
少なくとも3つの異なる中心径の粒度からなる粒子で構成されたことを特徴とするセラミックス粉末。
【請求項2】
前記セラミックス粉末は、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ、シリカ、又はジルコニアから成るものである請求項1記載のセラミックス粉末。
【請求項3】
前記セラミックス粉末は、中心径が31~60μmの粒子を62%以上、中心径が11~20μmの粒子を7%以上、中心径が1.1~3.0μmの粒子を4%以上含有するものである請求項2記載のセラミックス粉末。
【請求項4】
前記セラミックス粉末は、中心径:0.51~1.0μmの粒子を0.01~2.0%、又は中心径:0.05~0.30μmの粒子を0.01~0.4%、又は中心径:0.31~0.50μmの粒子を0.01~4.0%添加して成るものである請求項3記載のセラミックス粉末。
【請求項5】
請求項1、3又は4記載のセラミックス粉末により焼成されたセラミックス造形物であって、
前記セラミックスは炭化珪素から成り、前記セラミックス造形物の3点曲げ強度は、170MPa以上の値を有することを特徴とするセラミックス造形物。
【請求項6】
請求項1、3又は4記載のセラミックス粉末を焼成して形成するセラミックス造形物の製造方法であって、
前記セラミックスは炭化珪素であり、前記3Dプリンターによりバインダー材料が噴射された部分に前記セラミックス粉末をリコートする工程を繰り返して、前記バインダー材料により前記セラミックス造形物の成形体を形成し、その後、前記成形体を焼成して、前記セラミックス造形物を形成することを特徴とするセラミックス造形物の製造方法。
【請求項7】
前記バインダー材料の添加率を、30~40%にして製造する請求項6記載のセラミックス造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バインダージェット方式の3Dプリンターによる成形に用いられるセラミックス粉末とそれによるセラミックス造形物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のCIP(冷間静水圧プレス)や鋳込成形によるセラミックス粉末の成形では、金型や石膏型に沿った形状が成形できるが、成形体内部の複雑な形状を再現した成形体は得られない。しかも、要求仕様の最終形状や寸法精度を満たすために焼成後に機械加工等による仕上げが必要である。
【0003】
これに対し、従来の方法では加工が難しい、時間がかかる、部品の接合に手間がかかる等の製品や多品種少量品を極力安価で作製したい製品の場合には、近年3Dプリンターによる造形法が有効に利用されている。(非特許文献1)3Dプリンターを利用した各種造形方式の内、レーザー光による光造形方式の3Dプリンターの場合、セラミックス原料に光硬化樹脂を添加して作製したスラリーを薄く敷いて、紫外線などのレーザー光により硬化させ造形させるため、複雑形状の緻密体の造形ができ、後工程の焼成により高密度の焼成体が得られる。
【0004】
しかしながら、光造形方式の3Dプリンターで造形した場合、造形後の未露光材料の除去作業(特許文献1参照:粒径の異なる2種配合無機粒子スラリー)や、バインダーとして用いられている樹脂の脱脂処理が必要である。
【0005】
また、光造形方式で用いられるセラミックス粉末を含むスラリーの調整が必要であり、セラミックス粉末の粒径が大きすぎると、スラリー中での安定性が低下し沈降し易くなるため、均一なスラリーが得られないおそれがある。さらに、セラミックス粉末の粒子径が(100μmを超えて)大きいと精密な寸法を要求される光造形体の造形が困難となる。(特許文献2:シリカ粉末にシラン化合物を配合)さらに、造形後の未露光材料の除去作業やバインダーとして用いられている樹脂の脱脂処理のプロセスで、割れや変形などが生じることがあるという課題もある。
【0006】
その他、光造形方式の3Dプリンターで用いられる短波長の可視光や紫外光に対して吸収率が非常に高いSiC(炭化珪素)のようなセラミックスの場合、光がSiCスラリー内で吸収され通過しにくく、造形が困難である。光の吸収率が低い酸化物系のアルミナの場合でも、光造形方式の場合、孔径約φ0.3mm以下、厚み6mm以上のサイズは製作困難であり、また、全閉の中空空間形状は製法上不可能であるなどの短所がある。(非特許文献1)
【0007】
上述した光造形方式の技術的課題に対し、3Dプリンターの造形方式の一つであるバインダージェット方式では、光を用いず、薄く塗布して敷き詰めたセラミックス粉末の層に成形用のバインダー樹脂層を噴射して積層し、これを繰り返して造形する為、短波長の可視光や紫外光の吸収率が高いSiCのようなセラミックスについても造形が可能である。さらに、複雑形状の多孔質体や大型形状品の製作に適している等の特長がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-023064号公報
【特許文献2】特開平8-25486号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】日本セラミックス協会 セラミックス 56 (2021) No.11 P747~P750
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の通り、従来のCIPや鋳込成形などの成形方法では、型に沿ったニアネット形状は成形できても、成形体内部の複雑な形状を再現した成形体は得られなかった。
【0011】
また、近年、開発が進みつつある光造形方式の3Dプリンターによる造形では厚みのある大型品の成形体は造形し難い。セラミックスの中でもとくに炭化珪素などの短波長の可視光や紫外光などを吸収し、反射・透過しにくい材料については炭化珪素などのスラリー内の光硬化樹脂の硬化深度が浅く、成形体の反りが発生し、厚肉品の造形が困難であった。
【0012】
一方、造形時に光を使用しないバインダージェット方式の3Dプリンターを用いた場合、単粒のセラミックス原料については造形できても、造形品や焼成品の強度が低く、触るだけで容易に破損する等の問題があり、ハンドリングが困難であった。
【0013】
また、ハンドリングできるように造形品の強度を上げようとして、噴霧するバインダー量を増やすと寸法精度が落ちてしまう。さらに、嵩密度や強度を上げるために粒径の異なる原料を複合化すると流動性が下がり、セラミックス粉末を均一に薄く振りかけて塗布するリコートがしにくくなるといった、互いに相反する課題があった。
【0014】
本発明は、上記背景技術の課題に鑑みて成されたものであり、バインダージェット方式の3Dプリンターによる成形に好適に用いられるセラミックス粉末とそれによるセラミックス造形物、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、バインダージェット方式の3Dプリンターによるセラミックス造形物の形成に用いられるセラミックス粉末であって、少なくとも3つの異なる中心径の粒度からなる粒子で構成されたセラミックス粉末である。前記セラミックス粉末は、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ、シリカ、又はジルコニアから成るものである。
【0016】
前記セラミックス粉末は少なくとも、中心径が31~60μmの粒子を62%以上(本発明における%は、質量%であり、以下単に%と記す。)中心径が11~20μmの粒子を7%以上、中心径が1.1~3.0μmの粒子を4%以上含有するものである。さらに、前記セラミックス粉末は、中心径:0.51~1.0μmの粒子を0.01~2.0%、又は中心径:0.05~0.30μmの粒子を0.01~0.4%、又は中心径:0.31~0.50μmの粒子を0.01~4.0%添加してあるものが好ましい。
【0017】
また本発明は、前記セラミックス粉末により焼成されたセラミックス造形物であって、前記セラミックスは炭化珪素から成り、前記セラミックス造形物の3点曲げ強度は、170MPa以上の値を有するセラミックス造形物である。
【0018】
また本発明は、前記セラミックス粉末を焼成して形成するセラミックス造形物の製造方法であって、前記セラミックスは炭化珪素であり、前記3Dプリンターによりバインダー材料が噴射された部分に前記セラミックス粉末をリコートする工程を繰り返して、前記バインダー材料により前記セラミックス造形物の成形体を形成し、その後、前記成形体を焼成して、前記セラミックス造形物を形成するセラミックス造形物の製造方法である。特に、前記バインダー材料の添加率を、30~40%にして製造することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、バインダージェット方式の3Dプリンターに適したセラミックス粉末原料の配合割合、そのセラミックス粉末によるセラミックス造形物、及びその製造方法を提供すのもので、これにより、CIPや鋳込み成形、及び光造形方式の3Dプリンターによって得られなかった複雑形状や、厚みのある造形物の成形が可能になる。さらに、本発明は、バインダージェット方式の3Dプリンターによる造形に適した流動性の良い原料配合を開発したものであり、ジョブボックスのプリントベッド上にムラなく均一に原料をリコートすることが可能となるものである。
【0020】
本発明では、造形時の温度と湿度の管理、及び、リコート時のセラミックス粉末の塗布における超音波出力の原料粉末の流動性を向上させる適正な設定が重要であることを見出したもので、これにより安定した一定のリコート速度と均一性を保持できるようになった。
【0021】
本発明によるセラミックス粉末による造形品や焼成品は、従来の配合の造形品では困難だったハンドリング可能な強度を有するものである。例えば炭化珪素の場合、成形強度や焼成強度が1.5MPa程度であり、ハンドリングが容易に可能で、Si含浸品は成形体、焼成体からの寸法変化が非常に少ないため加工精度が良く、耐荷重や耐熱性等が要求される用途でも使用できる強度(約170MPa以上)や耐熱性等も保持したものが得られた。
【0022】
また本発明においては、バインダージェット方式の3Dプリンター造形による炭化珪素成形体の製作を可能にしただけでなく、焼成(及びSi含浸)の最適な条件の選定により、従来の半導体製造装置治具で用いられている製品と同等以上(170MPa以上、好ましくは配合条件を調整することにより200MPa以上)のSi含浸後の強度を持つものが得られるようになった。
【0023】
さらに、所定の比率で3種から6種の中心径の原料の配合を行なったものに、流動性を改善する為、例えば、炭化珪素原料の場合、中心径(D50)がサブミクロン(本発明では0.05μm~1.0μm)のものを、一定量加えることにより嵩密度が向上し、流動性がさらに改善された。これにより、バインダージェット方式でリコート時に必要な粉末の流動性が改善され、場所による偏析も少なく、安定して均一なリコートを実現できるようになった。
【0024】
また本発明では、バインダーの添加率を一定の範囲に保持することで、ハンドリングできる強度を保持しつつ、寸法精度として、狙い値+10質量%以内に維持できることを見出した。例えば、炭化珪素の場合、バインダーの添加率は、30~40%が適しており、寸法精度を狙い値+10%以内に維持でき、成形強度もハンドリングできる程度以上に保持できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明のヒートシンクの造形物の平面図である。
【
図2】本発明のヒートシンクの造形物の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施携帯について説明する。本発明は、バインダージェット方式の3Dプリンターによるセラミックス造形物の形成に用いられるセラミックス粉末であって、少なくとも3つの異なる中心径の粒度からなる粒子で構成されたセラミックス粉末である。
【0027】
前記セラミックス粉末は、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ、シリカ、又はジルコニアから成るものである。特に、前記セラミックス粉末は、少なくとも、中心径が31~60μmの粒子を62%以上、中心径が11~20μmの粒子を7%以上、中心径が1.1~3.0μmの粒子を4%以上含有するものである。さらに、前記セラミックス粉末は、中心径:0.51~1.0μmの粒子を0.01~2.0%、又は中心径:0.05~0.30μmの粒子を0.01~0.4%、又は中心径:0.31~0.50μmの粒子を0.01~4.0%添加して成るものが好ましく、少なくとも3種から6種の前記中心径を持つ粉体から成るものである。
【0028】
本発明のセラミックス粉末を焼成して形成するセラミックス造形物の製造方法は、例えば前記セラミックスは炭化珪素であり、前記3Dプリンターによりバインダー材料が噴射された部分に前記セラミックス粉末をリコートする工程を繰り返して、前記バインダー材料により前記セラミックス造形物の成形体を形成し、その後、前記成形体を焼成して、前記セラミックス造形物を形成するものである。ここで、前記バインダー材料の添加率は、30~40%が好ましい。尚、バインダージェット方式では、リコート、バインダー噴射、加熱を繰り返し、薄い層を積層して造形する。
【0029】
次に本発明のセラミックス粉末により形成したセラミックス造形物の実施形態について、図面を基にして説明する。
【0030】
図1,
図2は、鼓状の柱がいくつも立っているヒートシンクのセラミックス造形物10の例である。セラミックス造形物10は、従来の型を使用した成形法では脱型ができないため成形できないが、本発明の実施例の配合で調整した炭化珪素原料のセラミックス粉末を用いて、バインダージェット方式の3Dプリンターにより、鼓状の柱の凹凸状部12を持つヒートシンクのセラミックス造形物10の造形が可能となった。
【0031】
また、
図3、
図4にタービンモデルの成形体20とセラミックス造形物30の例を示す。
図3の成形体20のように、バインダージェット方式の3Dプリンターにより、窓枠24内に入っているタービン形状の羽根と軸である可動造形部22を一体で造形することができる。さらに、
図4に示すように、Siが溶解する温度以上でSi含浸を実施し、平面研削を施したセラミックス造形物30を形成することができる。このセラミックス造形物30は、成形体20の可動造形部22にもSi含浸を実施したもので、窓枠34内に高強度の可動造形部32を形成することができる。
【0032】
本発明は、バインダージェット方式の3Dプリンターに好適に用いられるセラミックス原料粉末、造形物及びその製造方法を提供するもので、従来のCIPや鋳込み成形方法ではできなかった成形体内部の複雑な形状を再現した成形体を、バインダージェット方式の3Dプリンターで造形することを可能にしたものである。さらに、本発明は、従来の光造形方式の3Dプリンターではできなかった成形体内部の複雑形状や厚みのある大型品や、光造形方式で用いる光を吸収して反りを発生してしまうセラミックス材料について、バインダージェット方式3Dプリンターを利用可能な、セラミックス粉末と、それによる造形物、及びその製造方法を提供するものである。これにより、反りもなくニアネットで大型品の造形を可能にしたものである。
【0033】
さらに、本発明では、所定の比率で3種から6種配合を行なった原料に、流動性を改善する為、中心径が1μm以下のサブミクロンの微粉を一定量加えることにより、嵩密度が向上し、流動性がさらに改善された。
【0034】
また本発明では、噴射するバインダーの添加率を所定の範囲に保持することで、バインダージェット方式3Dプリンターを利用した成形体について、ハンドリング可能な成形強度を保持しつつ、3DCADで設計された寸法に近い寸法精度を維持できるようになった。
【0035】
その他、本発明によれば、バインダージェット方式の3Dプリンターによる造形に適した流動性の良いセラミックス粉末の配合を開発したものであり、造形時に使用するジョブボックスのプリントベッド上にムラなく均一に、セラミックス粉末を薄い層でリコートすることが可能となった。
【0036】
また本発明の製造方法では、造形時の温度と湿度の管理、及び、リコート時の超音波出力の原料粉末の流動性に対応した適正な設定が重要であることを見出しており、これにより安定した一定のリコート速度と均一性を保持できるようになった。
【0037】
さらに本発明においては、バインダージェット方式の3Dプリンター造形によるセラミックス(炭化珪素等)の成形体の製作を可能にしただけでなく、原料の配合条件や、造形後の焼成(及びSi含浸)の最適な条件の選定により、従来の半導体製造装置治具で用いられている製品と同等以上のSi含浸後の強度を持つものが得られるようになった。
【実施例0038】
次に、本発明のセラミックス粉末の実施例について以下に説明する。セラミックス粉末である原料は、例えば炭化珪素、窒化珪素、アルミナ、ジルコニア等であり、原料配合の例として、例えば、炭化珪素粉末で、平板のテストピース(狙い値:6.6x12x33mm)を造形した実施例と比較例を、表1~表3に示す。
【0039】
(実施例1~8)
これらの原料粉末については、外部機関において流動性評価を実施した。実施例1~8についてはいずれも流動性の総合評価は、良好(総合評価56点以上:○良い)であった。総合評価は、56点以上:○良い、46~55点:△普通、45点以下:×悪いとした。(外部機関評価:せん断力、応力伝達率、応力緩和率、圧縮率の各25点満点の合計点数100点満点で評価)
【0040】
本発明の実施例1~8では、3Dプリンターによる造形時のジョブボックスのプリントベッド上にムラなく均一に原料をリコートすることが可能となり、41.3kPa加圧時の嵩密度が1.7(x1000kg/m3)以上と高いものも得られた。これらの造形品は、ハンドリングにも耐え、焼成炉にて1500℃以上で焼成しても形状を保持できた。これらを、さらにSiが溶解する温度以上でSi含浸を実施し、平面研削を施し、3点曲げ試験を実施した結果、3点曲げ強度が170MPa以上と高く、実施例3及び実施例4のように、200MPa以上のものも得られた。
【0041】
表1~表3に示した本発明の実施例から、嵩密度、及び流動性を向上するセラミックス粉末G(中心径:0.51~1.0μm)を0~2.0%、セラミックス粉末H(中心径:0.05~0.30μm)を0~0.4%、又はセラミックス粉末I(中心径:0.31~0.50μm)を0~4.0%添加することがより好ましいことが判明した。
【0042】
(比較例1)
表1の比較例1の単粒(A 100%)の流動性の総合評価は○(60点)であり造形ができたが、ハンドリングが困難で、容易に破損し、造形品が破損しない場合でも焼成後に破損しハンドリング不可であった。
【0043】
(比較例2)
表1の実施例2では、粉末A,C,D、Fの粉末に、中心径:0.05~0.30μmの粉末Hを0.4%添加配合しているが、比較例2では、粉末A,C,D、Fの粉末の比率を実施例2とほぼ同等レベルに維持しながら、粉末Hを5.0%添加し配合した。
比較例2の原料の外部機関の流動性総合評価は△(51点)で、嵩密度は1.64(x1000kg/m3)であった。比較例2については粉末Hを5.0%添加配合しているが、流動性総合評価が良くなかったため造形は実施しなかった。
【0044】
(比較例3)
比較例3では、実施例1及び実施例2の粉末Gや粉末Hを添加せず、シラン剤Sを5.0%添加した。比較例3の原料の流動性の総合評価は×(35点)で悪く、しかも造形不可であった。
【0045】
比較例4では、粉末Aと粉末Cの2種配合の事例で、流動性の総合評価は○(65点)と良く、加圧時の嵩密度も1.70(x1000kg.m3)で造形できた。しかしながら、焼成後の強度が1.73MPaと低く、ハンドリングが困難であった。
【0046】
【0047】
(実施例9~12)
表2の本発明の実施例9~12では、添加するバインダー率をそれぞれ、30%又は40%とし、6.6x12mmx33mmのテストピースの造形を行なった。バインダーの添加率が多くなると寸法の狙い値に対しての寸法増加が見られるが、本発明のバインダーの添加率が30%及び40%では、増加率αは10%以下に抑えられる。
【0048】
(比較例4~7)
比較例4~7では添加するバインダーの添加率をそれぞれ55%、60%、65%とした。バインダーの添加率が55%になると、加熱乾燥時に狙った寸法外へのバインダーの拡散が見られ、造形されたテストピースの寸法増加が見られた。その結果、寸法精度の指標の厚み増加率αは、10%を超えて、比較例4~比較例7で、各々の厚み増加率αは11%、32%、41%、38%となった。
【0049】
【0050】
(実施例13~32)
A、C、D、E、Fから成る5種配合に、中心径がサブミクロンのセラミックス原料G(中心径:0.51~1.0μm)や、原料I(中心径:0.31~0.50μm)の添加率を0%から一定の割合で増やしていった場合の粉末のJIS嵩密度(加圧無、JIS K5101に準拠し、2回測定平均値)の推移を表3の実施例13~32に示す。
【0051】
実施例13では無添加で、無添加のJIS嵩密度は1.24(x1000kg/m3)と比較例8~11のJIS嵩密度の1.20~1.23(x1000kg/m3)に比べて高い。
【0052】
これに対し、実施例14~20では、セラミックス原料Gを0.01~2.0%まで添加することにより、JIS嵩密度は1.24~1.30(x1000kg/m3)と同等かそれ以上に向上する。また、実施例21~29では、セラミックス原料Iを0.01~4.0%まで添加することにより、JIS嵩密度は1.24~1.31(x1000kg/m3)と同等かそれ以上に向上する。さらに、実施例30~32では、炭化珪素の原料Hを0.01~0.4%まで添加することにより、JIS嵩密度は1.24~1.31(x1000kg/m3)と同等かそれ以上に向上した。
【0053】
(比較例8~11)
セラミックス原料Gの添加率を3.0~4.0%、又はセラミックス原料Hの添加率を0.001%、又はセラミックス原料Iの添加率を5.0%とした場合の粉末のJIS嵩密度の値を表3の比較例8~11に示す。セラミックス原料Gの添加率を3.0~4.0%とした比較例8~9では、JIS嵩密度は、1.21、1.20(x1000kg/m3)であった。
【0054】
一方、比較例10では、原料Iの添加率が5.0%と多く、JIS嵩密度は1.23(x1000kg/m3)と実施例13の1.24よりも低く、流動性総合評価は△(55点)と普通で良くなく、造形には適さなかった。原料Hの添加率を0.001%とした比較例11では、JIS嵩密度は、1.23(x1000kg/m3)と、実施例14~実施例32よりも低く、JIS嵩密度が最も低い実施例13の無添加の1.24(x1000kg/m3)に比べても低かった。
【0055】