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特開2024-80370乗物用シート及び乗物用バックフレームの製造方法
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  • 特開-乗物用シート及び乗物用バックフレームの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080370
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】乗物用シート及び乗物用バックフレームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
B60N2/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193499
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】今城 卓
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DB02
(57)【要約】
【課題】バックフレームのバックボードを2つのサイドフレームと一体成形できる乗物用シートを提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、シートクッションと、シートバックと、シートバックを支持するバックフレームと、を備える乗物用シートである。バックフレームは、バックボードと、バックボードのシート幅方向の第1端部からシート前方に延伸する第1サイドフレームと、バックボードのシート幅方向の第2端部からシート前方に延伸する第2サイドフレームと、を有する。バックボードは、主領域と、主領域に隣接すると共に主領域よりも厚みが大きく、かつ、シート幅方向に延伸する少なくとも1つのパス領域とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、
シートバックと、
前記シートバックを支持するバックフレームと、
を備え、
前記バックフレームは、
バックボードと、
前記バックボードのシート幅方向の第1端部からシート前方に延伸する第1サイドフレームと、
前記バックボードのシート幅方向の第2端部からシート前方に延伸する第2サイドフレームと、
を有し、
前記バックボードは、
主領域と、
前記主領域に隣接すると共に前記主領域よりも厚みが大きく、かつ、シート幅方向に延伸する少なくとも1つのパス領域と、
を有する、乗物用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物用シートであって、
前記バックボードは、前記少なくとも1つのパス領域として、上下方向に並んで配置された複数のパス領域を有する、乗物用シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の乗物用シートであって、
前記少なくとも1つのパス領域の上端部及び下端部の厚みは、前記少なくとも1つのパス領域の中央部の厚みよりも大きい、乗物用シート。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の乗物用シートであって、
前記バックボードは、前記パス領域に隣接すると共に、角部の厚みが前記パス領域の厚みよりも大きい矩形状の開口部を有する、乗物用シート。
【請求項5】
バックボードと、前記バックボードのシート幅方向の第1端部からシート前方に延伸する第1サイドフレームと、前記バックボードのシート幅方向の第2端部からシート前方に延伸する第2サイドフレームと、を有する乗物用バックフレームの製造方法であって、
溶融金属を鋳型に流し込む工程を備え、
前記鋳型は、
前記バックボードの主領域を形成する主部と、
前記主領域に隣接すると共に前記主領域よりも厚みが大きく、かつ、前記バックフレームにおける幅方向に延伸する少なくとも1つのパス領域を形成する少なくとも1つのパス部と、
前記第1サイドフレームを形成する第1サイド部と、
前記第2サイドフレームを形成する第2サイド部と、
を有し、
前記流し込む工程では、前記少なくとも1つのパス部から前記主部に溶融金属を供給する、乗物用バックフレームの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の乗物用バックフレームの製造方法であって、
前記鋳型は、前記少なくとも1つのパス部として、前記バックフレームにおける上下方向に並んで配置された複数のパス部を有する、乗物用バックフレームの製造方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の乗物用バックフレームの製造方法であって、
前記少なくとも1つのパス部は、上端部及び下端部の厚みが中央部の厚みよりも大きい前記少なくとも1つのパス領域を形成する、乗物用バックフレームの製造方法。
【請求項8】
請求項5又は請求項6に記載の乗物用バックフレームの製造方法であって、
前記鋳型は、前記パス領域に隣接すると共に、角部の厚みが前記パス領域の厚みよりも大きい矩形状の開口部を形成する開口形成部を有する、乗物用バックフレームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物用シート及び乗物用バックフレームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートのバックフレームにおいて、2つのサイドフレーム及びアッパーパネルが一体成形されたものが知られている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-270961号公報
【特許文献2】特開2021-846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなバックフレームにおいて、肉厚の小さい部位を設けると、鋳造時に金属が十分に流動しないおそれがある。そのため、任意の厚みを有するバックボードをサイドフレームと共に一体成形することは容易ではない。
【0005】
本開示の一局面は、バックフレームのバックボードを2つのサイドフレームと一体成形できる乗物用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、シートクッション(2)と、シートバック(3)と、シートバック(3)を支持するバックフレーム(4)と、を備える乗物用シート(1)である。バックフレーム(4)は、バックボード(41)と、バックボード(41)のシート幅方向の第1端部からシート前方に延伸する第1サイドフレーム(42)と、バックボード(41)のシート幅方向の第2端部からシート前方に延伸する第2サイドフレーム(43)と、を有する。バックボード(41)は、主領域(411A)と、主領域(411A)に隣接すると共に主領域(411A)よりも厚みが大きく、かつ、シート幅方向に延伸する少なくとも1つのパス領域(412A)と、を有する。
【0007】
このような構成によれば、バックフレーム(4)の成型時にパス領域(412A)によって溶融金属をシート幅方向に供給することができる。そのため、バックボード(41)の厚みをコントロールして軽量化しつつ、バックボード(41)を第1サイドフレーム(42)及び第2サイドフレーム(43)と一体成形できる。
【0008】
本開示の一態様では、バックボード(41)は、少なくとも1つのパス領域(412A)として、上下方向に並んで配置された複数のパス領域(412A,412B,412C)を有してもよい。このような構成によれば、バックボード(41)に開口を設けつつ、バックフレーム(4)の成型時にバックボード(41)の厚みをコントロールすることができる。
【0009】
本開示の一態様では、少なくとも1つのパス領域(412A)の上端部(4122)及び下端部(4123)の厚みは、少なくとも1つのパス領域(412A)の中央部(4121)の厚みよりも大きくてもよい。このような構成によれば、バックフレーム(4)の成型時にパス領域(412A)から主領域(411A)への溶融金属の供給を促進することができる。
【0010】
本開示の一態様では、バックボード(41)は、パス領域(412A)に隣接すると共に、角部の厚みがパス領域(412A)の厚みよりも大きい矩形状の開口部(414A)を有してもよい。このような構成によれば、バックフレーム(4)の成型時に開口部(414A)周囲の主領域(411A)の厚みがコントロールし易くなる。
【0011】
本開示の別の態様は、バックボード(41)と、バックボード(41)のシート幅方向の第1端部からシート前方に延伸する第1サイドフレーム(42)と、バックボード(41)のシート幅方向の第2端部からシート前方に延伸する第2サイドフレーム(43)と、を有する乗物用バックフレーム(4)の製造方法である。乗物用バックフレームの製造方法は、溶融金属を鋳型(100)に流し込む工程を備える。
【0012】
鋳型(100)は、バックボード(41)の主領域(411A)を形成する主部(101A)と、主領域(411A)に隣接すると共に主領域(411A)よりも厚みが大きく、かつ、バックフレーム(4)における幅方向に延伸する少なくとも1つのパス領域(412A)を形成する少なくとも1つのパス部(102A)と、第1サイドフレーム(42)を形成する第1サイド部(105)と、第2サイドフレーム(43)を形成する第2サイド部(106)と、を有する。流し込む工程では、少なくとも1つのパス部(102A)から主部(101A)に溶融金属を供給する。
【0013】
このような構成によれば、パス領域(412A)によって溶融金属をシート幅方向に供給することができる。そのため、バックボード(41)の厚みをコントロールして軽量化しつつ、バックボード(41)を第1サイドフレーム(42)及び第2サイドフレーム(43)と一体成形できる。
【0014】
本開示の一態様では、鋳型(100)は、少なくとも1つのパス部(102A)として、バックフレーム(4)における上下方向に並んで配置された複数のパス部(102A,102B,102C)を有してもよい。このような構成によれば、バックボード(41)に開口を設けつつ、バックボード(41)の厚みをコントロールすることができる。
【0015】
本開示の一態様では、少なくとも1つのパス部(102A)は、上端部(4122)及び下端部(4123)の厚みが中央部(4121)の厚みよりも大きい少なくとも1つのパス領域(412A)を形成してもよい。このような構成によれば、パス領域(412A)から主領域(411A)への溶融金属の供給を促進することができる。
【0016】
本開示の一態様では、鋳型(100)は、パス領域(412A)に隣接すると共に、角部の厚みがパス領域(412A)の厚みよりも大きい矩形状の開口部(414A)を形成する開口形成部(104A)を有してもよい。このような構成によれば、開口部(414A)周囲の主領域(411A)の厚みがコントロールし易くなる。
【0017】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態における乗物用シートの模式的な斜視図である。
図2図2は、図1の乗物用シートにおけるバックフレームの模式的な正面図である。
図3図3Aは、図2のIIIA-IIIA線での模式的な断面図であり、図3B及び図3Cは、図3Aとは異なる実施形態における模式的な断面図である。
図4図4は、実施形態における乗物用バックフレームの製造方法を示すフローチャートである。
図5図5は、図4の乗物用バックフレームの製造方法で用いる鋳型の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す乗物用シート1は、シートクッション2と、シートバック3と、バックフレーム4とを備える。
【0020】
本実施形態の乗物用シート1は、乗用車の座席シートとして使用される。なお、以下の説明及び各図面における方向は、乗物用シート1を乗物(つまり乗用車)に組み付けた状態における方向を意味する。また、本実施形態では、シート幅方向は、乗物の左右方向に一致し、シート前方は、乗物の前方に一致する。
【0021】
シートクッション2は、着席者の臀部等を支持するための部位である。シートバック3は、着席者の背部を支持するための部位である。バックフレーム4は、シートバック3を支持する。
【0022】
<バックフレーム>
バックフレーム4は、バックボード41と、第1サイドフレーム42と、第2サイドフレーム43とを有する。
【0023】
バックボード41、第1サイドフレーム42及び第2サイドフレーム43は、例えばアルミニウム等の金属の鋳造によって一体成型されている。つまり、バックボード41、第1サイドフレーム42及び第2サイドフレーム43は、一体化されている。
【0024】
<バックボード>
バックボード41は、バックフレーム4の後壁を構成するパネルである。図2に示すように、バックボード41は、複数の主領域411A,411B,411C,411D,411E,411Fと、複数のパス領域412A,412B,412C,412Dと、複数の開口部414A,414B,414C,414D,414Eとを有する。
【0025】
第1主領域411A、第2主領域411B、第3主領域411C、第4主領域411D、第5主領域411E及び第6主領域411Fは、それぞれ板状の部位であり、パス領域412A-412Dと開口部414A-414Eとによって区画されている。各主領域411A-411Fの厚みは略同一であり、例えば2mmである。
【0026】
第1主領域411Aは、バックフレーム4の右肩部分を構成している。第1主領域411Aには、機能部品(例えば、スイッチ、レバー等)が取り付けられる第1台座415Aが設けられている。第1台座415Aは、第1主領域411Aの一部をシート前方に突出させた部位である。第1主領域411Aの下端は、第1パス領域412Aに接している。
【0027】
第2主領域411Bは、バックフレーム4の左肩部分を構成している。第2主領域411Bは、第1開口部414Aを挟んで、第1主領域411Aの左側に配置されている。第2主領域411Bの下端は、第4パス領域412Dに接している。
【0028】
第3主領域411Cは、第4パス領域412Dを挟んで、第2主領域411Bの下方に配置されている。第3主領域411Cには、機能部品が取り付けられる第2台座415Cが設けられている。第2台座415Cは、第3主領域411Cの一部をシート前方に突出させた部位である。第3主領域411Cの上端は、第4パス領域412Dに接している。また、第3主領域411Cの下端は、第1パス領域412Aに接している。
【0029】
第4主領域411Dは、第1パス領域412Aを挟んで、第1主領域411Aの下方に配置されている。第4主領域411Dには、シートベルト(図示省略)が挿通されるベルトパス416が設けられている。ベルトパス416は、第4主領域411Dに設けられた開口と、第4主領域411Dの一部をアーチ状に変形させた部位とで構成されている。第4主領域411Dの上端は、第1パス領域412Aに接している。また、第4主領域411Dの下端は、第2パス領域412Bに接している。
【0030】
第5主領域411Eは、第2パス領域412Bを挟んで、第4主領域411Dの下方に配置されている。第5主領域411Eには、機能部品を固定するためのボス417が設けられている。ボス417は、第5主領域411Eの一部をシート前方に突出させた有底筒状の部位である。第5主領域411Eの上端は、第2パス領域412Bに接している。また、第5主領域411Eの下端は、第3パス領域412Cに接している。
【0031】
第6主領域411Fは、第5開口部414Eを挟んで、第5主領域411Eの左側に配置されている。第6主領域411Fには、機能部品が取り付けられるブラケット付開口418が設けられている。ブラケット付開口418は、第6主領域411Fに設けられた開口と、第6主領域411Fの一部をブラケット状に変形させた部位とで構成されている。第6主領域411Fの上端は、第2パス領域412Bに接している。また、第6主領域411Fの下端は、第3パス領域412Cに接している。
【0032】
第1パス領域412A、第2パス領域412B、第3パス領域412C及び第4パス領域412Dは、それぞれ、シート幅方向に延伸する帯状の部位である。また、第1パス領域412A、第2パス領域412B及び第3パス領域412Cは上下方向に並んで配置されている。なお、図2では、第1パス領域412A、第2パス領域412B、第3パス領域412C及び第4パス領域412Dに粗いハッチが付してある。
【0033】
第1パス領域412Aは、バックボード41の左端部(つまり第1サイドフレーム42)から右端部(つまり第2サイドフレーム43)まで延伸している。第1パス領域412Aは、第1主領域411A、第3主領域411C及び第4主領域411Dに隣接している。第1パス領域412Aは、第1主領域411A、第3主領域411C及び第4主領域411Dよりも厚みが大きい。
【0034】
図3Aに示すように、第1パス領域412Aは、中央部4121と、上端部4122と、下端部4123とを有する。中央部4121は、上下方向において上端部4122と下端部4123との間の領域である。中央部4121の厚みは、例えば3mmである。
【0035】
上端部4122は、第1主領域411A又は第3主領域411Cに隣接している。下端部4123は、第4主領域411Dに隣接している。上端部4122及び下端部4123の厚みは、中央部4121の厚みよりもさらに大きい。
【0036】
つまり、上端部4122及び下端部4123は、中央部4121よりもシート前方に突出している。これにより、バックフレーム4の成型時に第1パス領域412Aから第1主領域411A、第3主領域411C及び第4主領域411Dへの溶融金属の供給を促進することができる。
【0037】
また、図3Bに示すように、上端部4122及び下端部4123は、上下方向の外側に向かって(つまり隣接する主領域に向かって)厚みが小さくなってもよい。図3Bのケースでは、上端部4122及び下端部4123それぞれの前面は、中央部4121の前面と主領域411A,411C,411Dの前面とを繋ぐように傾斜している。
【0038】
さらに、図3Cに示すように、上端部4122及び下端部4123それぞれの厚みは、中央部4121の厚みと同じであってもよい。図3Cのケースでは、第1パス領域412Aは、上下方向において一定の厚みを有する。
【0039】
図2に示すように、第1パス領域412Aの上端縁及び下端縁(ただし、ベルトパス416との接続部分は除く)は、それぞれシート幅方向と平行である。第1パス領域412Aの上端縁は、第1主領域411Aと、第1開口部414Aと、第3主領域411Cとに隣接している。第1パス領域412Aの下端縁は、第4主領域411Dと、第3開口部414Cとに隣接している。
【0040】
第2パス領域412Bは、第1パス領域412Aよりも下方において、バックボード41の左端部から右端部まで延伸している。第2パス領域412Bは、第4主領域411D、第5主領域411E及び第6主領域411Fに隣接している。第2パス領域412Bは、第4主領域411D、第5主領域411E及び第6主領域411Fよりも厚みが大きい。第2パス領域412Bの断面形状は、第1パス領域412Aと同様である。
【0041】
第2パス領域412Bの上端縁及び下端縁は、それぞれシート幅方向と平行である。第2パス領域412Bの上端縁は、第4主領域411Dと、第3開口部414Cとに隣接している。第2パス領域412Bの下端縁は、第5主領域411Eと、第4開口部414Dと、第5開口部414Eと、第6主領域411Fとに隣接している。
【0042】
第3パス領域412Cは、第2パス領域412Bよりも下方において、バックボード41の左端部から右端部まで延伸している。第3パス領域412Cは、第5主領域411E及び第6主領域411Fに隣接している。第3パス領域412Cは、第5主領域411E及び第6主領域411Fよりも厚みが大きい。第3パス領域412Cの断面形状は、第1パス領域412Aと同様である。
【0043】
第3パス領域412Cの上端縁及び下端縁は、それぞれシート幅方向と平行である。第3パス領域412Cの上端縁は、第5主領域411Eと、第5開口部414Eと、第6主領域411Fとに隣接している。第3パス領域412Cの下端縁は、バックボード41の下端部に隣接している。
【0044】
第4パス領域412Dは、第1パス領域412Aよりも上方において、バックボード41の左端部から、第1パス領域412Aに向かって延伸している。つまり、第4パス領域412Dの右端部は、第1パス領域412Aに合流している。
【0045】
第4パス領域412Dは、第2主領域411B及び第3主領域411Cに隣接している。第4パス領域412Dは、第2主領域411B及び第3主領域411Cよりも厚みが大きい。第4パス領域412Dの断面形状は、第1パス領域412Aと同様である。
【0046】
第4パス領域412Dの上端縁及び下端縁は、それぞれ、シート幅方向と平行な部位とシート幅方向に対して傾斜した部位とを有する。第4パス領域412Dの上端縁は、第2主領域411Bと、第2開口部414Bとに隣接している。第4パス領域412Dの下端縁は、第3主領域411Cに隣接している。
【0047】
第1開口部414A、第2開口部414B、第3開口部414C、第4開口部414D及び第5開口部414Eは、第1パス領域412A、第2パス領域412B、第3パス領域412C及び第4パス領域412Dの少なくとも1つに隣接する矩形状の部位である。開口部414A-414Eは、内部領域に開口を有する。開口部414A-414Eの4つの角部は、それぞれ面取りされている。
【0048】
また、開口部414A-414Eの4つの角部を含む縁部の厚みは、隣接するパス領域412A-412Dの厚みよりも大きい。開口部414A-414Eの縁部の厚みは、例えば3.5mm以上である。なお、図2では、開口部414A-414Eの縁部に細かいハッチが付してある。
【0049】
第1開口部414Aは、第1主領域411Aと、第2主領域411Bと、第1パス領域412Aとに隣接している。第1開口部414Aの縁部の厚みは、第1パス領域412Aの厚みよりも大きい。第2開口部414Bは、第2主領域411Bと、第4パス領域412Dとに隣接している。第2開口部414Bの縁部の厚みは、第4パス領域412Dの厚みよりも大きい。
【0050】
第3開口部414Cは、第4主領域411Dと、第1パス領域412Aと、第2パス領域412Bとに隣接している。第3開口部414Cの縁部の厚みは、第1パス領域412Aの厚み及び第2パス領域412Bの厚みよりも大きい。第4開口部414Dは、第5主領域411Eと、第2パス領域412Bとに隣接している。第4開口部414Dの縁部の厚みは、第2パス領域412Bの厚みよりも大きい。
【0051】
第5開口部414Eは、第5主領域411Eと、第6主領域411Fと、第1パス領域412Aと、第2パス領域412Bとに隣接している。第5開口部414Eの縁部の厚みは、第1パス領域412Aの厚み及び第2パス領域412Bの厚みよりも大きい。
【0052】
<サイドフレーム>
第1サイドフレーム42及び第2サイドフレーム43は、それぞれ、シート上下方向に延伸すると共に、シート幅方向に互いに離れて配置されたパネル状の部材である。
【0053】
第1サイドフレーム42は、バックボード41のシート幅方向の第1端部(つまり左端部)からシート前方に延伸している。第2サイドフレーム43は、バックボード41のシート幅方向の第2端部(つまり右端部)からシート前方に延伸している。第1サイドフレーム42及び第2サイドフレーム43は、それぞれ、シート幅方向の長さよりも、シート前後方向の長さが大きい。
【0054】
<乗物用バックフレームの製造方法>
本実施形態の乗物用バックフレームの製造方法は、図2のバックフレーム4を得るための方法である。図4に示すように、乗物用バックフレームの製造方法は、流し込み工程S10と、取り出し工程S20とを有する。
【0055】
<流し込み工程>
本工程では、アルミニウム等の溶融金属を図5に示す鋳型100に流し込む。鋳型100は、複数の主部101A,101B,101C,101D,101E,101Fと、複数のパス部102A,102B,102C,102Dと、複数の開口形成部104A,104B,104C,104D,104Eと、第1サイド部105と、第2サイド部106と、注入口110とを有する。
【0056】
第1主部101Aは、第1主領域411Aを形成する空間である。第2主部101Bは、第2主領域411Bを形成する空間である。第3主部101Cは、第3主領域411Cを形成する空間である。第4主部101Dは、第4主領域411Dを形成する空間である。第5主部101Eは、第5主領域411Eを形成する空間である。第6主部101Fは、第6主領域411Fを形成する空間である。
【0057】
第1パス部102Aは、第1パス領域412Aを形成する空間である。第2パス部102Bは、第2パス領域412Bを形成する空間である。第3パス部102Cは、第3パス領域412Cを形成する空間である。第4パス部102Dは、第4パス領域412Dを形成する空間である。
【0058】
第1パス部102A、第2パス部102B及び第3パス部102Cは、バックフレーム4における上下方向に並んで配置されている。パス部102A-102Dは、例えば、図3Aに示す上端部4122及び下端部4123の厚みが中央部4121よりも大きいパス領域を形成するように構成されている。
【0059】
第1開口形成部104Aは、第1開口部414Aを形成する空間である。第2開口形成部104Bは、第2開口部414Bを形成する空間である。第3開口形成部104Cは、第3開口部414Cを形成する空間である。第4開口形成部104Dは、第4開口部414Dを形成する空間である。第5開口形成部104Eは、第5開口部414Eを形成する空間である。
【0060】
第1サイド部105は、第1サイドフレーム42を形成する空間である。第1サイド部105は、第1パス部102A、第2パス部102B、第3パス部102C及び第4パス部102Dに連通している。
【0061】
第2サイド部106は、第2サイドフレーム43を形成する空間である。第2サイド部106は、第1パス部102A、第2パス部102B、及び第3パス部102Cに連通している。
【0062】
注入口110は、鋳型100の内部に溶融金属を供給する流路である。注入口110は、第1サイド部105を介して少なくとも第1パス部102A、第2パス部102B、第3パス部102C及び第4パス部102Dに連通している。注入口110は、鋳型100のバックフレーム4における左側部に設けられている。
【0063】
本工程では、バックフレーム4における右側部が下方になる向きで鋳型100を設置した状態で、溶融金属を注入口110に供給する。この状態では、第1パス部102A、第2パス部102B及び第3パス部102Cの長手方向は、鉛直方向と平行となる。
【0064】
注入口110に供給された溶融金属は、第1パス部102A、第2パス部102B、第3パス部102C及び第4パス部102Dを鉛直下方に向かって流れる。その結果、これらのパス部102A-102Dから、溶融金属が主部101A-101F及び開口形成部104A-104Eに供給される。
【0065】
<取り出し工程>
本工程では、鋳型100に流し込まれた溶融金属が凝固した成型品を鋳型100から取り出す。取り出した成型品に必要な加工を施すことで、バックフレーム4が得られる。
【0066】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)バックフレーム4の成型時にパス領域412A-412D(つまりパス部102A-102D)によって溶融金属をシート幅方向に供給することができる。そのため、バックボード41の厚みをコントロールして軽量化しつつ、バックボード41を第1サイドフレーム42及び第2サイドフレーム43と一体成形できる。
【0067】
(1b)複数のパス領域412A-412C(つまりパス部102A-102C)が上下方向に並んで配置されることで、バックボード41に開口を設けつつ、バックフレーム4の成型時にバックボード41の厚みをコントロールすることができる。
【0068】
(1c)開口部414A-414Eの角部の厚みがパス領域412A-412Dの厚みよりも大きいことで、バックフレーム4の成型時に開口部414A-414E周囲の主領域411A-411Fの厚みがコントロールし易くなる。
【0069】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0070】
(2a)上記実施形態の乗物用シートにおいて、バックフレームは必ずしも複数のパス領域を有しなくてもよい。例えば、バックフレームは、1つのパス領域のみを有してもよい。
【0071】
(2b)上記実施形態の乗物用シートにおいて、開口部の角部の厚みは、必ずしも隣接するパス領域の厚みよりも大きくなくてもよい。また、バックフレームは、必ずしも開口部を有しなくてもよい。
【0072】
(2c)上記実施形態の乗物用シートは、乗用車以外の自動車に用いられるシートや、自動車以外の例えば鉄道車両、船舶、航空機等の乗物に用いられるシートにも適用することができる。
【0073】
(2d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0074】
1…乗物用シート、2…シートクッション、3…シートバック、4…バックフレーム、
41…バックボード、42…第1サイドフレーム、43…第2サイドフレーム、
100…鋳型、101A-101F…主部、102A-102D…パス部、
104A-104E…開口形成部、105…第1サイド部、106…第2サイド部、
110…注入口、411A-411F…主領域、412A-412D…パス領域、
414A-414E…開口部、415A,415C…台座、416…ベルトパス、
417…ボス、418…ブラケット付開口、4121…中央部、4122…上端部、
4123…下端部。
図1
図2
図3
図4
図5