(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080373
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】オーバーシュート抑圧回路
(51)【国際特許分類】
H02H 9/04 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
H02H9/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193505
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】318006365
【氏名又は名称】JRCモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】関口 隆
(72)【発明者】
【氏名】誉田 環
【テーマコード(参考)】
5G013
【Fターム(参考)】
5G013AA02
5G013AA09
5G013BA02
5G013CB02
5G013DA05
5G013DA10
5G013DA11
(57)【要約】
【課題】消費電力などを抑えつつ、オーバーシュートを抑圧可能なオーバーシュート抑圧回路を提供する。
【解決手段】DC/DCコンバータ101の出力側に接続されるトランジスタ2と、トランジスタ2に接続され、トランジスタ2を制御するツェナーダイオード4と、トランジスタ2に接続され、電気を蓄放電するコンデンサ5と、を備え、DC/DCコンバータ101からの出力電圧が所定の電圧を超過すると、ツェナーダイオード4を介してトランジスタ2がオンし、超過した電圧分の電流がトランジスタ2を介してコンデンサ5に流れる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源回路の出力側に接続されるトランジスタと、
前記トランジスタに接続され、前記トランジスタを制御する制御部と、
前記トランジスタに接続され、電気を蓄放電する蓄放電部と、
を備え、前記電源回路からの出力電圧が所定の電圧を超過すると、前記制御部を介して前記トランジスタがオンし、前記超過した電圧分の電流が前記トランジスタを介して前記蓄放電部に流れる、
ことを特徴とするオーバーシュート抑圧回路。
【請求項2】
前記蓄放電部に接続され、電気を消費する消費部を備え、
前記トランジスタがオフすると、前記蓄放電部に蓄電された電気が前記消費部に流れる、
ことを特徴とする請求項1に記載のオーバーシュート抑圧回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電圧のオーバーシュートを抑圧するためのオーバーシュート抑圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、DC/DCコンバータでオン・オフさせて矩形波(方形波)状の規定電圧を出力する場合、
図2に示すように、矩形波の立ち上がり部分において、出力電圧が一時的・瞬時的に定常値(規定電圧)よりもオーバーシュート・超過する場合がある。そして、オーバーシュートした電圧が、PMIC(Power Management Integrated Circuit)などの回路の許容電圧・絶対定格値を超えると、回路の故障・損傷を招いてしまう。
【0003】
このため、従来から、オーバーシュートの対策として、コンデンサや抵抗で立ち上がり速度を遅くして定常値への制御が間に合うようにしたり、ツェナーダイオードを用いて定常値以上の電圧をカットしたりすることが知られていた(例えば、特許文献1等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コンデンサで立ち上がり速度を遅くする場合、回路のサイズが大きくなり、抵抗で立ち上がり速度を遅くしたりツェナーダイオードで超過電圧をカットしたりする場合、消費電力が増大してしまう。
【0006】
そこで本発明は、消費電力などを抑えつつ、オーバーシュートを抑圧可能なオーバーシュート抑圧回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、電源回路の出力側に接続されるトランジスタと、前記トランジスタに接続され、前記トランジスタを制御する制御部と、前記トランジスタに接続され、電気を蓄放電する蓄放電部と、を備え、前記電源回路からの出力電圧が所定の電圧を超過すると、前記制御部を介して前記トランジスタがオンし、前記超過した電圧分の電流が前記トランジスタを介して前記蓄放電部に流れる、ことを特徴とするオーバーシュート抑圧回路である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のオーバーシュート抑圧回路において、前記蓄放電部に接続され、電気を消費する消費部を備え、前記トランジスタがオフすると、前記蓄放電部に蓄電された電気が前記消費部に流れる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、電源回路からの出力電圧が所定の電圧を超過すると、超過した電圧分の電流がトランジスタを介して蓄放電部に流れるため、オーバーシュートした電圧を抑圧することが可能となる。この結果、本オーバーシュート抑圧回路から出力される電圧をPMICなどの回路の許容電圧以下とし、PMICなどの回路を保護することが可能となる。
【0010】
また、コンデンサや抵抗で立ち上がり速度を遅くしたり、ツェナーダイオードを用いて電圧をカットしたりしないため、消費電力やサイズ・大きさを抑えることが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、トランジスタがオフする度に、蓄放電部に蓄電された電気が消費部に流れて消費されるため、オーバーシュートが繰り返し生じても、継続してオーバーシュートを抑圧することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の実施の形態に係るオーバーシュート抑圧回路を示す構成図である。
【
図2】オーバーシュートの発生状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態に係るオーバーシュート抑圧回路1を示す構成図である。このオーバーシュート抑圧回路1は、電圧のオーバーシュートを抑圧するための回路であり、この実施の形態では、車両などに搭載される周辺監視レーダに適用する場合を例にして説明するが、その他の装置にも適用できることは勿論である。
【0015】
すなわち、この実施の形態では、DC/DCコンバータ(電源回路)101から出力される電圧をPMIC102に入力する場合において、DC/DCコンバータ101でオン・オフさせて矩形波状の規定電圧を出力する際に、オーバーシュートが発生するものとする。そして、この電圧のオーバーシュートを抑圧するために、DC/DCコンバータ101とPMIC102との間にオーバーシュート抑圧回路1が配設されている。
【0016】
オーバーシュート抑圧回路1は、主として、トランジスタ2と、ツェナーダイオード(制御部)4と、コンデンサ(蓄放電部)5と、第1の抵抗(消費部)6と、を備える。
【0017】
トランジスタ2は、PNP型で、DC/DCコンバータ101とPMIC102との間に接続される。つまり、トランジスタ2のエミッタ側が、DC/DCコンバータ101の出力側とPMIC102の入力側に接続される。これにより、DC/DCコンバータ101からの出力電圧V1を、トランジスタ2を介してPMIC102に入力電圧V2として給電する。そして、後述するように、ツェナーダイオード4を介してトランジスタ2がオンされると、トランジスタ2を介してDC/DCコンバータ101からの電流が第1の抵抗6に流れるようになっている。このトランジスタ2の動作・仕様などについては、後述する。
【0018】
ツェナーダイオード4は、そのカソード側が第2の抵抗3を介してトランジスタ2のベース側に接続され、アノード側が接地され、トランジスタ2をオン・オフ制御する。すなわち、後述するように、DC/DCコンバータ101からの出力電圧V1が所定の電圧を超過すると、トランジスタ2をオンし、その後、DC/DCコンバータ101からの出力電圧V1が低下すると、トランジスタ2をオフする。このツェナーダイオード4および第2の抵抗3の動作・仕様などについては、後述する。
【0019】
コンデンサ5は、トランジスタ2のコレクタ側に接続され、後述するように、トランジスタ2がオンされると、DC/DCコンバータ101からの電流が流れて電気を蓄電するようになっている。このコンデンサ5の容量仕様などについては、後述する。
【0020】
第1の抵抗6は、コンデンサ5に接続され、電気を消費する負荷である。つまり、コンデンサ5と並列にトランジスタ2のコレクタ側に接続され、後述するように、トランジスタ2がオフすると、コンデンサ5に蓄電された電気が第1の抵抗6に流れて消費されるようになっている。
【0021】
次に、このような構成のオーバーシュート抑圧回路1の作用・動作および各構成要素2~6の動作・仕様などについて説明する。
【0022】
まず、DC/DCコンバータ101からの出力電圧V1の定格電圧・規定電圧や、PMIC102の許容電圧・入力絶対定格電圧(許容される最大の入力電圧V2)に応じて、各構成要素2~6の動作・仕様などが設定されている。この実施の形態では、DC/DCコンバータ101の出力定格電圧が5.1Vで、PMIC102の入力絶対定格電圧が6Vの場合における、各構成要素2~6の動作・仕様などについて説明する。
【0023】
このようなDC/DCコンバータ101の出力定格電圧やPMIC102の入力絶対定格電圧に対して、DC/DCコンバータ101からの出力電圧V1の制限電圧(所定の電圧)を5.8Vとする。そして、DC/DCコンバータ101からツェナーダイオード4までの電圧差(例えば、0.7V)を考慮して、ツェナーダイオード4がトランジスタ2をオンさせる電圧(降伏電圧)が5.1Vに設定され、第2の抵抗3の抵抗値が100Ωに設定されている。
【0024】
これにより、DC/DCコンバータ101からの出力電圧V1が5.8V(所定の電圧)を超過して(以上になって)、ツェナーダイオード4に5.1V以上の電圧がかかると、ツェナーダイオード4から逆方向電流が流れてトランジスタ2のベースに電圧が印加される。そして、トランジスタ2のエミッタ側とコレクタ側が導通し(トランジスタ2がオンし)、超過した電圧分の電流がトランジスタ2を介してコンデンサ5に流れて蓄電される。
【0025】
このように、ツェナーダイオード4でオーバーシュートを検出してトランジスタ2をオンさせ、オーバーシュート分の電流をコンデンサ5に蓄える。これにより、オーバーシュートした電圧・電流分がPMIC102に給電されず、つまり、DC/DCコンバータ101からの出力電圧V1が抑圧されて、PMIC102への入力電圧V2が入力絶対定格電圧以内に制限される。ここで、コンデンサ5の容量値によって、上記のような出力電圧V1の抑圧動作のスピード・収束時間が左右され、この実施の形態では、1μFに設定されている。
【0026】
その後、DC/DCコンバータ101からの出力電圧V1が5.8V以下に低下すると、ツェナーダイオード4の逆方向電流が停止してトランジスタ2がオフされ、コンデンサ5への蓄電が停止される。そして、コンデンサ5に蓄電された電気が第1の抵抗6に流れて消費される。
【0027】
ここで、第1の抵抗6の容量・抵抗値は、コンデンサ5に蓄電された電気が確実・迅速に消費されるように設定され、この実施の形態では、5Ωに設定されている。また、ツェナーダイオード4の動作・仕様は、上記のように、トランジスタ2をオン・オフ動作させ、かつ、オーバーシュートが生じていない定常時における消費電力が抑えられるように設定されている。
【0028】
次に、このオーバーシュート抑圧回路1による電圧抑圧効果を確認した検証結果について説明する。この検証・実験は、パルス・ファンクションジェネレータからの出力電圧を、オーバーシュート抑圧回路1を介さない場合と介した場合とで比較確認したものである。この検証によって、次のような結果が得られた。
【0029】
(a)印加パルス電圧6V
・オーバーシュート抑圧回路1を介さない場合、6.167V
・オーバーシュート抑圧回路1を介した場合、5.500V
(b)印加パルス電圧7V
・オーバーシュート抑圧回路1を介さない場合、7.033V
・オーバーシュート抑圧回路1を介した場合、5.767V
(c)印加パルス電圧8V
・オーバーシュート抑圧回路1を介さない場合、8.300V
・オーバーシュート抑圧回路1を介した場合、5.833V
以上のような検証結果から、オーバーシュート抑圧回路1を介することで、出力電圧を許容電圧(6V)以下に抑圧できることが確認された。
【0030】
以上のように、このオーバーシュート抑圧回路1によれば、DC/DCコンバータ101からの出力電圧V1が所定の電圧(5.8V)を超過すると、超過した電圧分の電流がトランジスタ2を介してコンデンサ5に流れるため、オーバーシュートした電圧を抑圧することが可能となる。この結果、本オーバーシュート抑圧回路1から出力される電圧をPMIC102の許容電圧・入力絶対定格電圧(6V)以下とし、PMIC102を保護することが可能となる。
【0031】
また、従来のように、コンデンサや抵抗で立ち上がり速度を遅くしたり、ツェナーダイオードを用いて電圧をカットしたりしないため、消費電力やサイズ・大きさを抑えることが可能となる。
【0032】
さらに、トランジスタ2がオフする度に、コンデンサ5に蓄電された電気が第1の抵抗6に流れて消費されるため、オーバーシュートが繰り返し生じても、継続してオーバーシュートを抑圧することが可能となる。
【0033】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、ツェナーダイオード4が制御部の場合について説明したが、その他の回路や素子で制御部を構成してもよく、例えば、ツェナーダイオード4に代ってシャントレギュレータで構成してもよい。また、電源回路がDC/DCコンバータ101の場合について説明したが、その他の電源回路にも適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1 オーバーシュート抑圧回路
2 トランジスタ
3 第2の抵抗
4 ツェナーダイオード(制御部)
5 コンデンサ(蓄放電部)
6 第1の抵抗(消費部)
101 DC/DCコンバータ(電源回路)