(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080376
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】経編地および繊維製品
(51)【国際特許分類】
D04B 21/00 20060101AFI20240606BHJP
D04B 21/16 20060101ALI20240606BHJP
D02G 3/36 20060101ALI20240606BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20240606BHJP
B68G 11/03 20060101ALI20240606BHJP
A47G 27/02 20060101ALI20240606BHJP
G10K 11/162 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
D04B21/00 A
D04B21/16
D02G3/36
A41D31/00 502D
A41D31/00 502S
A41D31/00 503G
A41D31/00 503F
B68G11/03
A47G27/02 E
G10K11/162
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193514
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】信夫 理沙
(72)【発明者】
【氏名】尾形 暢亮
【テーマコード(参考)】
3B120
4L002
4L036
5D061
【Fターム(参考)】
3B120AA20
3B120AB03
4L002AA06
4L002AA07
4L002AB02
4L002AB04
4L002AB05
4L002AC01
4L002AC07
4L002CA00
4L002CA01
4L002CA03
4L002DA01
4L002DA04
4L002EA00
4L002EA06
4L002FA01
4L002FA06
4L036MA05
4L036MA33
4L036MA39
4L036PA33
4L036PA42
4L036PA46
4L036RA04
4L036RA24
4L036UA01
4L036UA09
5D061AA22
5D061AA23
(57)【要約】
【課題】ソフト風合い、適度なストレッチ、かつサッカー調外観にも優れた経編地、および該経編地を用いてなる繊維製品を提供する。
【解決手段】凹凸部と平坦部を交互に有する経編地であって、デンビー編またはコード編と、鎖編とがヨコ方向に交互に編成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨコ方向に凹凸部と平坦部を交互に有する経編地であって、前記凹凸部がデンビー編またはコード編を有し、かつ前記平坦部が鎖編を有することを特徴とする経編地。
【請求項2】
前記凹凸部と平坦部が、それぞれ2ウエール以上からなる、請求項1に記載の経編地。
【請求項3】
前記凹凸部のループが前記平坦部のループよりも大きい、請求項1に記載の経編地。
【請求項4】
前記凹凸部および平坦部のうち少なくとも一方に、開き目組織および閉じ目組織が交互に編成されている、請求項1に記載の経編地。
【請求項5】
経編地が、ポリエステル繊維またはポリアミド繊維で構成されている、請求項1に記載の経編地。
【請求項6】
前記ポリエステル繊維が、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、またはポリブチレンテレフタレートからなる、請求項5に記載の経編地。
【請求項7】
前記凹凸部の少なくとも一部が、トルクが30T/m以下の仮撚捲縮加工糸で編成されている、請求項1に記載の経編地。
【請求項8】
前記平坦部に仮撚捲縮加工糸が含まれる、請求項1に記載の経編地。
【請求項9】
請求項1~8に記載の経編地を用いてなる、アウター用衣料、ボトム用衣料、スポーツ用衣料、インナー用衣料、水着、防護衣料、寝装寝具、椅子やソファーの表皮材、カーペット、カーシート地、インテリア用品、吸音材からなる群より選択されるいずれかの繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフト風合い、適度なストレッチ、かつサッカー調外観にも優れた経編地、および該経編地を用いてなる繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、経糸挿入装置を有する経編機を用いて、緯糸に収縮差のある糸を交互に配列して編成し、熱処理を施して糸に収縮差が起こることによりサッカー調外観を発現させた経編地が提案されている(特許文献1、2)。しかしながら、高収縮糸が収縮する際に経編地の平坦部の組織が緻密化するため風合いが硬くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭51-007265号公報
【特許文献2】特開昭56-037365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的はソフト風合い、適度なストレッチ、かつサッカー調外観にも優れた経編地、および該経編地を用いてなる繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、編組織を巧みに工夫することにより、ソフト風合い、適度なストレッチ、かつサッカー調外観にも優れた経編地が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
かくして以下の本発明が提供される。
【0006】
1.ヨコ方向に凹凸部と平坦部を交互に有する経編地であって、前記凹凸部がデンビー編またはコード編を有し、かつ前記平坦部が鎖編を有することを特徴とする経編地。
2.前記凹凸部と平坦部が、それぞれ2ウエール以上からなる、上記1に記載の経編地。
3.前記凹凸部のループが前記平坦部のループよりも大きい、上記1または2に記載の経編地。
4.前記凹凸部および平坦部のうち少なくとも一方に、開き目組織および閉じ目組織が交互に編成されている、上記1~3のいずかに記載の経編地。
5.経編地が、ポリエステル繊維またはポリアミド繊維で構成されている、上記1~4のいずれかに記載の経編地。
6.前記ポリエステル繊維が、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートからなる、上記5に記載の経編地。
7.経編地の凹凸部の少なくとも一部が、トルクが30T/m以下の仮撚捲縮加工糸で編成されている、上記1~6のいずれかに記載の経編地。
8.前記平坦部に仮撚捲縮加工糸が含まれる、上記1~7のいずれかに記載の経編地。
9.上記1~8に記載の経編地を用いてなる、アウター用衣料、ボトム用衣料、スポーツ用衣料、インナー用衣料、水着、防護衣料、寝装寝具、椅子やソファーの表皮材、カーペット、カーシート地、インテリア用品、吸音材からなる群より選択されるいずれかの繊維製品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ソフト風合い、適度なストレッチ、かつサッカー調外観にも優れた経編地、および該経編地を用いてなる繊維製品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の経編地において、ヨコ方向に凹凸部と平坦部を交互に有する。その際、前記凹凸部と平坦部はストライプ状に配されていることが好ましい。前記凹凸部と平坦部はそれぞれタテ方向に連続しており、サッカー調外観を呈する。
【0010】
また、前記凹凸部がデンビー編またはコード編を有し、かつ前記平坦部が鎖編を有する。例えば、編地面において、デンビー編またはコード編が連続して編成されている箇所と鎖編が連続して編成されている箇所がヨコ方向に交互に存在すると、ループ編成方法の違いによりデンビー編またはコード編は大きなループで編成され、鎖編は小さいループで編成される。その結果、ループ密度差が生じ凹凸部(ループ大)と平坦部(ループ小)が交互に形成され、サッカー調外観を呈する。
【0011】
前記凹凸部と平坦部において、2コース以上(好ましくは2~20コース)連続で編成されていることが好ましい。すなわち、前記凹凸部と平坦部において、1か所の凹凸部または平坦部が、それぞれ2ウエール以上(好ましくは2~20ウエール)からなることが好ましい。
【0012】
前記凹凸部のループ(ニードルループ)が前記平坦部のループよりも大きいことが好ましい。特に針の振りとして1~10針分(より好ましくは2~5針分)大きいことが好ましい。
【0013】
また、編組織において、凹凸部は表面と裏面がともに同じ振り巾の組織(例えば、ダブルデンビー編やダブルコード編など)であることが好ましく、平坦部はフロント筬の糸で鎖編を編成した組織(例えば、クインズコード編など)であることが好ましい。また、前記凹凸部および平坦部のうち少なくとも一方に、開き目組織および閉じ目組織が交互に編成されていることが好ましい。
【0014】
本発明の経編地を構成する繊維としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ乳酸などのポリエステル系繊維、第3成分を共重合させたポリエステル系繊維、ナイロン繊維、サイドバイサイド型または芯鞘型に2成分が接合されたコンジュゲートと称される複合繊維(例えばPET/PET、PET/PTT、PTT/PTTなど)が好適に例示される。かかる繊維中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。例えば、凹凸部と平坦部のうち、どちらか一方にカチオン可染性ポリエステル繊維を含ませ、他方にカチオン不染性ポリエステル繊維を含ませると、経編地にストライプ状に異色効果を付加することができ優れた外観が得られ好ましい。
【0015】
繊維の糸条形態としては、長繊維(マルチフィラメント)、長繊維に仮撚捲縮加工を施した仮撚捲縮加工糸(DTY)、長繊維にインターレースなどの空気加工を施した空気加工糸、長繊維に撚糸を施した撚糸糸条などいずれでもよい。
【0016】
経編地を構成する糸条において、総繊度、フィラメント数、単繊維繊度は特に限定されないが、経編地の風合いの点で、総繊度が20~100dtex、フィラメント数が10~200本の範囲、単繊維繊度が0.1~2.5dtexの範囲であることが好ましい。また、単繊維の横断面形状も特に限定されず、丸、三角、十字、扁平、4つ山扁平などのくびれつき扁平、W 型などいずれでもよい。
【0017】
特に、経編地がソフト風合いと適度なストレッチを有する上で、前記凹凸部に、トルクが30T/m以下の仮撚捲縮加工糸が含まれることが好ましい。なお、トルクが30T/m以下の仮撚捲縮加工糸は、国際公開第2008/001920号パンフレットに記載されたような、S方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とZ方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とを合糸して空気交絡処理を行い、複合糸とすることにより得ることができる。トルクが30T/m以下の複合糸(複合仮撚捲縮加工糸)を用いると、布帛に抗スナッギング性を付加することができ好ましい。
また、経編地がソフト風合いと適度なストレッチを有する上で、前記平坦部に、仮撚捲縮加工糸が含まれることが好ましい。
【0018】
本発明の経編地は、前記のように凹凸部と平坦部をヨコ方向に交互を形成するには、バック筬、ミドル筬、およびフロント筬を有する経編機を使用し、バック筬に糸をフルセットに配し、ミドル筬に間欠的に糸を配し、フロント筬には、ミドル筬とは逆に位相(すなわち、ミドル筬の糸がないところに糸を配し、ミドル筬の糸があるところに糸を配さない。)で間欠的に糸を配するとよい。
【0019】
かかる経編地には染色加工を施してもよい。さらに、常法の親水加工、起毛加工、紫外線遮蔽あるいは制電剤、さらには、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
【0020】
かくして得られた経編地は、デンビー編またはコード編と、鎖編とがヨコ方向に交互に編成されることによるループ密度差により、経編地の表面および裏面の両面ともに凹凸部と平坦部がストライプ状に形成されサッカー調外観を呈する。さらには、ソフト風合いと適度なストレッチを有する。なお、ストレッチ性としては、タテ方向、ヨコ方向とも5%以上(より好ましくは5~40%)であることが好ましい。特に、ヨコ方向で10~40%であることが好ましい。
【0021】
かかる経編地は衣料をはじめ、各種の繊維製品に好適に用いられる。例えば、アウター用衣料、ボトム用衣料、スポーツ用衣料、インナー用衣料、水着、防護衣料、寝装寝具、椅子やソファーの表皮材、カーペット、カーシート地、インテリア用品、吸音材などである。かかる繊維製品には前記の経編地が含まれているので凹凸部と平坦部を交互に有することによりサッカー調外観を呈する。さらには、ソフト風合いと適度なストレッチを有する。
【実施例0022】
次に、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の各物性は下記の方法により測定したものである。
(1)伸長率
JIS L1096 8.16.1 D法(編物の定荷重法)により測定する。
(2)風合い
ソフト風合いの点で、優れている(〇)、普通(△)、不良である(×)、の3段階で評価した。
(3)外観
サッカー調外観(ヨコ方向に凹凸部と平坦部を交互に有する。)の点で、優れている(〇)、普通(△)、不良である(×)、の3段階で評価した。
【0023】
[実施例1]
36ゲージのトリコット編機を使用して、ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸(総繊度33dtex/36fil)をフルセットでL1筬(バック筬)に通し、トルクが30T/m以下のポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸(総繊度66dtex/72fil)を5in5outでL2筬(ミドル筬)に通し、ポリエチレンテレフタレートカチオン可染仮撚捲縮加工糸(総繊度33dtex/36fil)を1in5out4inでL3(フロント筬)に通し、L1:10/23(コード編)//、L2:23/10(コード編)//、L3:10/01(鎖編)//の編組織(裏:コード編、表:コード編と鎖編の交互編)で編成した。
【0024】
なお、前記にトルクが30T/m以下の仮撚捲縮加工糸は、S方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とZ方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とを合糸して空気交絡処理を行うことにより得られた複合糸(複合仮撚捲縮加工糸)である。
【0025】
次いで、該経編地を通常の染色仕上げ加工をおこなった。かくして得られた経編地は、ソフト風合い、適度なストレッチ、サッカー調外観(表コード編:凹凸部、表鎖編:平坦部)にも優れたものであった。評価結果を表1に示す。
【0026】
[実施例2]
36ゲージのトリコット編機を使用して、ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸(総繊度33dtex/36fil)をフルセットでL1筬(バック筬)に通し、30T/m以下のトルクを有するポリエチレンテレフタレート複合糸(総繊度66dtex/72fil)を5in5outでL2筬(ミドル筬)に通し、PTT/PETコンジュゲート仮撚捲縮加工糸(総繊度56dtex/36fil)を1in5out4inでL3(フロント筬)に通し、L1:10/23(コード編)//4コース、01/32(コード編)//4コース(計8コースリピート)、L2:23/10(コード編)//、L3:10/01(鎖編)//の編組織(裏:コード編、表:コード編と鎖編の交互編)で編成した。
【0027】
なお、前記にトルクが30T/m以下の仮撚捲縮加工糸は、S方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とZ方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とを合糸して空気交絡処理を行うことにより得られた複合糸(複合仮撚捲縮加工糸)である。
【0028】
次いで、該経編地を通常の染色仕上げ加工をおこなった。かくして得られた経編地は、ソフト風合い、適度なストレッチ、かつサッカー調外観(表コード編:凹凸部、表鎖編:平坦部)にも優れたものであった。評価結果を表1に示す。
【0029】
[実施例3]
36ゲージのトリコット編機を使用して、ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸(総繊度33dtex/36fil)をフルセットでL1筬(バック筬)に通し、30T/m以下のトルクを有するポリエチレンテレフタレート複合糸(総繊度66dtex/72fil)を5in5outでL2筬(ミドル筬)に通し、PTT/PETコンジュゲート仮撚捲縮加工糸(総繊度56dtex/36fil)を1in5out4inでL3(フロント筬)に通し、L1:10/23(コード編)//、L2:23/10(コード編)//4コース、32/01(コード編)//4コース(計8コースリピート)、L3:10/01(鎖編)//の編組織(裏:コード編、表:コード編と鎖編の交互編)で編成した。
【0030】
なお、前記にトルクが30T/m以下の仮撚捲縮加工糸は、S方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とZ方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とを合糸して空気交絡処理を行うことにより得られた複合糸(複合仮撚捲縮加工糸)である。
【0031】
次いで、該経編地を通常の染色仕上げ加工をおこなった。かくして得られた経編地は、ソフト風合い、適度なストレッチ、かつサッカー調外観(表コード編:凹凸部、表鎖編:平坦部)にも優れたものであった。評価結果を表1に示す。
【0032】
[比較例1]
28ゲージのトリコット編機を使用して、ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸(総繊度56dtex/24fil)をフルセットでL1筬(バック筬)に通し、ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸(総繊度56dtex/24fil)とポリエチレンテレフタレートカチオン可染糸(総繊度56dtex/24fil)を3本ずつの配列でL2(フロント筬)に通し、L1:10/34(コード編)//、L2:10/01(鎖編)//の編組織(裏:コード編、表:鎖編)で編成した。
【0033】
次いで、該経編地を通常の染色仕上げ加工をおこなった。かくして得られた経編地は、ソフト風合い、適度なストレッチ性はあるものの、凹凸部のないプレーンな編地になりサッカー調外観は得られなかった。評価結果を表1に示す。
【0034】
本発明によれば、ソフト風合い、適度なストレッチ、かつサッカー調外観にも優れた経編地および該経編地を用いてなる繊維製品が提供され、その工業的価値は極めて大である。