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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080380
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】脳内のω3脂肪酸量増加促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/724 20060101AFI20240606BHJP
   A23L 33/12 20160101ALI20240606BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20240606BHJP
   A61K 31/202 20060101ALI20240606BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
A61K31/724
A23L33/12
A23L33/125
A61K31/202
A61P25/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193523
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】519214260
【氏名又は名称】株式会社S-Nanotech Co-Creation
(74)【代理人】
【識別番号】100183461
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 芳隆
(72)【発明者】
【氏名】吉清 恵介
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD11
4B018MD12
4B018MD13
4B018MD14
4B018MD15
4B018MD36
4B018ME14
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA20
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA15
4C086ZB21
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA05
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA15
4C206ZB21
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】脳内のω3脂肪酸量を増加させるための、ω3脂肪酸量増加促進剤の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、γ-シクロデキストリンを含有する、脳内のω3脂肪酸量増加促進剤、並びに、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂、及び、γ-シクロデキストリンを含有する、脳内のω3脂肪酸量増加促進剤に関する。本発明はまた、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂及びγ-シクロデキストリンを摂取する工程を備える、脳内のω3脂肪酸量の増加を促進する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ-シクロデキストリンを含有する、脳内のω3脂肪酸量増加促進剤。
【請求項2】
ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂、及び、γ-シクロデキストリンを含有する、脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物。
【請求項3】
前記ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂が、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、及びドコサヘキサエン酸(DHA)からなる群から選択される少なくとも1種を10質量%以上含む油脂である、請求項2に記載の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物。
【請求項4】
前記ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂が、α-リノレン酸を10質量%以上含む油脂である、請求項2に記載の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物。
【請求項5】
前記α-リノレン酸を10質量%以上含む油脂が、エゴマ油である、請求項4に記載の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物。
【請求項6】
前記脳内のω3脂肪酸量が、脳内のドコサヘキサエン酸量である、請求項2に記載の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物。
【請求項7】
請求項2に記載の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物を含有する医薬組成物。
【請求項8】
請求項2に記載の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物を含有する飲食品組成物。
【請求項9】
前記飲食品が、飲料、乳製品、発酵食品、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、保健機能食品、又は、病者用食品である、請求項8に記載の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物を含有する飲食品組成物。
【請求項10】
ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂及びγ-シクロデキストリンを摂取する工程を備える、脳内のω3脂肪酸量の増加を促進する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳内のω3脂肪酸量増加促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
α-リノレン酸(Alpha-linolenic acid:ALA)は、ω(オメガ)3脂肪酸の一種であり、エゴマ油等の油脂に多く含まれている。α-リノレン酸は、体内でエイコサペンタエン酸(EPA)を経てドコサヘキサエン酸(DHA)へと代謝される。これらのω3脂肪酸には、古くから抗炎症作用、心血管保護作用、脳神経系保護作用等があることが知られており、極めて重要な脂肪酸であるが、体内で合成できないため、経口的に摂取する必要がある。
これらのω3脂肪酸の中でも、ドコサヘキサエン酸(DHA)は、ヒトの脳の総脂肪酸の約10%を占め、学習能力増強、記憶力増強、痴呆予防等の脳機能改善効果を有することが知られている(例えば、特許文献1等)。このドコサヘキサエン酸(DHA)を体外から補給するために、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含む魚油又は魚油濃縮物等を素材とする健康食品等が市販されている。しかしながら、所望の効果を得るためには、これらを多量かつ長期間にわたり摂取することが必要であった。
【0003】
これまでに、エゴマ油を摂取することで、血漿中の脂肪酸組成においてALA及びEPAの組成比が増加することが報告されている(例えば、非特許文献1及び2等)が、高齢化社会において注目されている脳の脂肪酸組成への影響は報告されていない。
よって、近年の高齢化社会に伴い、脳機能の改善効果が高い物質又は薬剤を開発することが、医学的のみならず社会的にも切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02-049723号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Nutrition Research and Practice (Nutr Res Pract) 2013;7(4):256-261
【非特許文献2】Food Chemistry 294 (2019) 56-59
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、脳内のω3脂肪酸量を増加させるための、ω3脂肪酸量増加促進剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂とγ-シクロデキストリンとを一緒に摂取することにより、脳内のω3脂肪酸量が増加することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
項1.
γ-シクロデキストリンを含有する、脳内のω3脂肪酸量増加促進剤。
項2.
ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂、及び、γ-シクロデキストリンを含有する、脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物。
項3.
前記ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂が、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、及びドコサヘキサエン酸(DHA)からなる群から選択される少なくとも1種を10質量%以上含む油脂である、項2に記載の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物。
項4.
前記ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂が、α-リノレン酸を10質量%以上含む油脂である、項2に記載の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物。
項5.
前記α-リノレン酸を10質量%以上含む油脂が、エゴマ油である、項4に記載の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物。
項6.
前記脳内のω3脂肪酸量が、脳内のドコサヘキサエン酸量である、項2に記載の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物。
項7.
項2に記載の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物を含有する医薬組成物。
項8.
項2に記載の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物を含有する飲食品組成物。
項9.
前記飲食品が、飲料、乳製品、発酵食品、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、保健機能食品、又は、病者用食品である、項8に記載の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物を含有する飲食品組成物。
項10.
ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂及びγ-シクロデキストリンを摂取する工程を備える、脳内のω3脂肪酸量の増加を促進する方法。
項11.
ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂、及び、γ-シクロデキストリンを含有し、さらに薬学的に又は食品として許容される担体を含有する、脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物。
項12.
脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物の製造のための、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂及びγ-シクロデキストリンの使用。
項13.
ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂、γ-シクロデキストリン、及び、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂以外の油脂を含有する、脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物。
項14.
ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂、γ-シクロデキストリン、及び、大豆油を含有する、飼料組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、γ-シクロデキストリンを含有する脳内のω3脂肪酸量増加促進剤を提供することができる。また、本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂、及び、γ-シクロデキストリンを含有していることにより、脳内のω3脂肪酸量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1(実施例飼料区1)、比較例1(比較例飼料区1)、及び、参考例1(対照飼料区)のマウスの脳のDHA量を示すグラフである。
図2】魚油、及び、魚油にγ-シクロデキストリンを添加した場合の、リパーゼによる各遊離脂肪酸の分解反応の一次反応速度定数を示すグラフである。
図3】エゴマ油、及び、エゴマ油にγ-シクロデキストリンを添加した場合の、リパーゼによる各遊離脂肪酸の分解反応の一次反応速度定数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
脳内のω3脂肪酸量増加促進剤
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤は、γ-シクロデキストリンを含有する。本発明者は、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂とともに、γ-シクロデキストリンを摂取することで、脳内のω3脂肪酸量が増加することを初めて見出した。
【0012】
γ-シクロデキストリン
シクロデキストリン(以下、「CD」という場合もある)は、α-1,4-グルコシド結合を介して接続されたグルコース分子から形成される環状オリゴ糖である。シクロデキストリンは、シクロデキストリンを構築するグルコース分子の数に応じて接頭語としてギリシャ文字を含む。
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤には、8個のグルコース分子を有するγ-シクロデキストリン(以下、「γ-CD」という場合もある。)が使用される。γ-シクロデキストリン(γ-CD)は、環状にD-グルコピラノースが8個つながった化合物である。γ-シクロデキストリンは、円錐台形状を有し、空洞又は内腔(内側の縁部:約0.75nm、外側の縁部:約0.85nm)を形成している。
γ-シクロデキストリンは、公知の方法により製造することができる。そのようなγ-シクロデキストリンを製造する方法としては、特に限定されないが、例えば、特公平07-032715号公報に記載されている方法等が挙げられる。具体的には、デンプン又はデンプン質の構造を変化させ、不溶性のα化デンプンを調製し、不溶性のα化デンプン又はデンプン質にシクロデキストリン合成酵素を適当な条件下で直接作用させることで、シクロデキストリンを回収することができる。未反応のデンプンは、特に限定されない公知の方法を用いて除去することができる。また、γ-シクロデキストリンは、市販品を用いてもよい。
【0013】
ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂は、腸内でリパーゼにより分解されにくく、体内吸収性が悪いが、以下の実施例で説明するように、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂とγ-シクロデキストリンとを共摂取することによって、脳内のω3脂肪酸の含有量が著しく増加することがわかった。これは、腸内にω脂肪酸を10質量%以上含む油脂とともにγ-シクロデキストリンが存在することで、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂のリパーゼによる分解が促進され、体内に吸収されるω3脂肪酸が増加し、その結果脳内のω3脂肪酸の含有量が増加したと考えられる。よって、γ-シクロデキストリンは、脳内のω3脂肪酸量増加促進剤として作用する。
【0014】
脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂、及び、γ-シクロデキストリンを含有する。なお、本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、「脳内のω3脂肪酸量増加促進組成物」とも言い換えることができる。
前記γ-シクロデキストリンは、上述したとおりである。
【0015】
ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂
本明細書において、「油脂」とは、3価アルコールであるグリセリンの各水酸基に脂肪酸がエステル結合したものであり、通常はトリグリセリド(別名トリアシルグリセロール)の形態をとる化合物の総称である。ただし、植物、動物組織等の天然油脂原料から抽油又は製油した食用油脂には、微量成分として、リン脂質、遊離脂肪酸、モノグリセリド、ジグリセリド等のトリグリセリド水解物、トコフェロール等の不けん化物、クロロフィル、カロテノイド等の色素類等が含まれていることは広く知られており、本発明における「油脂」には、これらの微量成分を含んでいてもよい。また、「油脂」は、「油」と言い換えることもできる。
【0016】
ここで、油脂には、油脂を構成する脂肪酸として、ω3脂肪酸が含まれている。
本明細書において、「脂肪酸」には、遊離の飽和脂肪酸及び遊離の不飽和脂肪酸それら自体だけでなく、遊離の飽和若しくは不飽和脂肪酸、飽和若しくは不飽和脂肪酸アルキルエステル、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、リン脂質等中に含まれる構成単位としての脂肪酸も含まれる。「脂肪酸」は、構成脂肪酸と言い換えることができる。
【0017】
本明細書において、「ω(オメガ)3脂肪酸」とは、炭素数16以上の炭素からなる鎖式炭素骨格を持つ脂肪酸であって、炭素鎖のメチル末端(ω末端)から数えて3番目の炭素-炭素結合に初めて二重結合が現れる多価不飽和脂肪酸をいう。なお、ω3脂肪酸は、ω-3脂肪酸、n-3系脂肪酸等ともいう。
このようなω3脂肪酸としては、例えば、α-リノレン酸(ALA)、ステアリドン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ヘンエイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられ、中でも、α-リノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、及び、ドコサヘキサエン酸(DHA)が好ましく、α-リノレン酸(ALA)がより好ましい。
なお、α-リノレン酸(ALA)は、直鎖18炭素で3つのシス(cis)二重結合を有するカルボン酸であり、最初の二重結合が、メチル末端(ω末端)から数えて3番目の炭素にあるω3脂肪酸である。
【0018】
なお、脂肪酸を表記する際に、炭素数、二重結合の数及び二重結合の場所を、それぞれ数字とアルファベットとを用いて簡略的に表した数値表現を用いることがある。例えば、炭素数20の飽和脂肪酸は「C20:0」と表記され、炭素数18の一価不飽和脂肪酸は「C18:1」等と表記される。また、アラキドン酸は「C20:4,n-6」等と表記され得る。ここで、「n-6」はω-6としても標記されるが、これは、メチル末端である最後の炭素(ω)からカルボキシに向って数えたときの最初の二重結合の結合位置が6番目であることを示す。また、前記α-リノレン酸は、「C18:3,n-3」と表記することができる。この方法は、当業者には周知であり、この方法に従って標記された脂肪酸については、当業者であれば容易に特定することができる。
【0019】
本明細書において「ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂」とは、油脂を構成する脂肪酸中のω3脂肪酸の含有量が10質量%以上である油脂をいう。
油脂を構成する脂肪酸中のω3脂肪酸の含有量は通常10質量%以上であり、生理効果の観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。油脂を構成する脂肪酸中のω3脂肪酸の含有量の上限は、特に限定されず、通常80質量%以下であり、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは65質量%以下である。
【0020】
本明細書において、脂肪酸の含有量は、特に断らない限り、脂肪酸組成に基づいて決定することができる。脂肪酸組成は、常法に従って求めることができる。例えば、測定対象となる油を、低級アルコールと触媒を用いてエステル化し、脂肪酸低級アルキルエステルを得る。次いで、得られた脂肪酸低級アルキルエステルを試料として、水素炎イオン化検出器(FID)付きのガスクロマトグラフを用いて分析する。得られたガスクロマトグラフィーのチャートにおいて、各脂肪酸に相当するピークを同定し、Agilent ChemStation積分アルゴリズム(リビジョンC.01.03[37],Agilent Technologies)を用いて、各脂肪線のピーク面積と感度補正係数を用いて補正ピーク面積を求める。脂肪酸の補正ピーク面積の総和に対する各補正ピーク面積の百分率(面積%)をもって、脂肪酸組成とする。上述の測定方法により得られた補正ピーク面積%による値は、試料中の各脂肪酸の質量%による値と同一として互換可能に使用でき、本発明における脂肪酸組成は、上述の測定方法により得られた補正ピーク面積%を「質量%」との表記で定義する。日本油化学会(JOCS)制定 基準油脂測定法 2013年版 2.4.2.1-2013 脂肪酸組成(FID恒温ガスクロマトグラフ法)、及び、同2.4.2.2-2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)を参照のこと。
【0021】
前記ω3脂肪酸を含む油脂として、例えば、α-リノレン酸を含む油脂;エイコサペンタエン酸(EPA)、及び/又はドコサヘキサエン酸(DHA)を含む油脂等が挙げられる。
前記ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂は、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、及びドコサヘキサエン酸(DHA)からなる群から選択される少なくとも1種を10質量%以上含む油脂であることが好ましい。
前記ω3脂肪酸がα-リノレン酸であり、α-リノレン酸を10質量%以上含む油脂として、例えば、エゴマ油、アマニ油、チアシードオイル等が挙げられる。
前記ω3脂肪酸がエイコサペンタエン酸(EPA)、及び/又はドコサヘキサエン酸(DHA)であり、EPA及び/又はDHAを10質量%以上含む油脂として、例えば、イワシ油、カタクチイワシ油等の青魚油等の魚油;クリルオイル等が挙げられる。
前記ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂として、α-リノレン酸を10質量%以上含む油脂が好ましく、具体的には、エゴマ油(α-リノレン酸の含有量:約60質量%)、アマニ油(α-リノレン酸の含有量:約56質量%)等が好ましく、エゴマ油がより好ましい。
【0022】
前記油脂は、天然由来の油脂及び合成樹脂のいずれも使用することができるが、天然由来の油脂であることが好ましい。
天然由来の油脂は、植物性、動物性、魚介性等の油糧原料から公知の方法により得ることができる。例えば、エゴマ油、アマニ油等であれば、コールドプレス(低温圧搾法)により得ることができる。
合成油脂は、公知の合成法、エステル交換法等により得ることができる。前記エステル交換法として、例えば、ナトリウムメトキシド等の触媒を使用した化学的エステル交換法、リパーゼを触媒とした酵素的エステル交換法、のどちらの方法も適用可能である。
【0023】
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂と、γ-シクロデキストリンとを含んでいる。γ-シクロデキストリンの含有量としては、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂100質量部に対して、通常、1~10000質量部、好ましくは10~1000質量部、より好ましくは200~500質量部である。
【0024】
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂、及び、γ-シクロデキストリンを含有している。つまり、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂とγ-シクロデキストリンとを、体内に摂取することで、脳内のω3脂肪酸量増加を促進することができる。この摂取方法としては、特に限定はなく、例えば、共摂取(同時に摂取)することができれば、本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物はどのような形態でもかまわない。
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物の形態としては、例えば、
ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂とγ-シクロデキストリンとを含む混合物の形態;
ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂をγ-シクロデキストリンに包接させた錯体の形態;
ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂とγ-シクロデキストリンとを含む混合物、又は、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂をγ-シクロデキストリンに包接させた錯体を水に分散又は溶解させた形態等が挙げられる。
【0025】
ここで、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂をγ-シクロデキストリンに包接させた錯体は、例えば、γ-シクロデキストリンを水に溶解させ、得られたγ-シクロデキストリン水溶液にω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂を添加して攪拌し、生成した沈殿物を凍結乾燥することにより製造することができる。
【0026】
ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂、及び、γ-シクロデキストリンを含有する、本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物を摂取することにより、脳内のω3系脂肪酸量の増加を促進することができる。
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物によれば、脳内の脂肪酸組成において、ω3脂肪酸量、その中でも、ドコサヘキサエン酸(DHA)量を増加させることができる。
脳の乾燥重量の60%が脂質であり、ヒトの脳の総脂肪酸の約10%がドコサヘキサエン酸(DHA)であることから、脳内のドコサヘキサエン酸(DHA)量を効率的に増加させることができる、本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は有用性が高い。
【0027】
ドコサヘキサエン酸(DHA)は、神経新生、シナプス形成、神経細胞分化、神経突起伸長、膜流動性の維持、抗炎症作用、抗酸化作用等を有している。
【0028】
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物を摂取することで、脳内のω3系脂肪酸量、特にドコサヘキサエン酸(DHA)量の増加を促進させることができる。その結果、ドコサヘキサエン酸(DHA)の減少により発症する、脳の発達障害、うつ病、アルツハイマー病等の精神又は神経疾患等を予防又は治療できる可能性がある。
【0029】
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、そのままの形又は状態で使用することもできる。
【0030】
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、さらに任意の成分を含むことができる。例えば、本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、後述する、医薬品、食品等に許容される担体等を含む形態にて提供することができる。
【0031】
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、さらに、医薬品、食品等に許容される担体等を含む場合、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂及びγ-シクロデキストリンを含有し、さらに、医薬品(薬学的に)又は飲食品として許容される担体を含有することができる。
【0032】
医薬品(薬学的に)又は飲食品として許容される担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤等が挙げられる。担体は、基剤と言い換えることもできる。
【0033】
賦形剤としては、特に限定はなく、例えば、乳糖、ブドウ糖、白糖、マンニトール、デキストリン、馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、結晶セルロース等が挙げられる。
【0034】
結合剤としては、特に限定はなく、例えば、デンプン、ゼラチン、シロップ、トラガントゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0035】
崩壊剤としては、特に限定はなく、例えば、デンプン、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム等が挙げられる。
【0036】
滑沢剤としては、特に限定はなく、例えば、ステアリン酸マグネシウム、水素添加植物油、タルク、マクロゴール等が挙げられる。
【0037】
着色剤としては、特に限定はなく、医薬品及び飲食品に添加することが許容されている任意の着色剤を使用することができる。
【0038】
さらに、本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、必要に応じて、白糖、ゼラチン、精製セラック、ゼラチン、グリセリン、ソルビトール、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、フタル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルメタクリレート、メタアクリル酸重合体等のコーティング剤で一層以上の層でコーティング(被覆)することができる。
【0039】
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、必要に応じて、その他にも、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤、香料、緩衝剤、増粘剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が添加されていてもよい。
【0040】
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、例えば、医薬組成物、医薬部外品、飲食品組成物、飼料(ペットフードを含む)等の形態で提供することができ、下記の記載に従って実施することができる。
【0041】
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物を投与又は摂取する対象としては、ヒト;チンパンジー、ゴリラ、ニホンザル等の霊長類、ラット、マウス等のげっ歯類、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ラバ、ラクダ等の家畜、イヌ、ネコ、フェレット、ウサギ等の愛玩動物等を含む非ヒト動物が挙げられる。
特に、脳の発達障害、うつ病、アルツハイマー病等の精神又は神経疾患の予防及び治療を必要とするヒト及び非ヒトは、本発明における好ましい投与対象及び摂取対象である。
【0042】
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物の摂取量は、受容者の性別、年齢及び体重、症状、摂取時間、剤形、摂取経路並びに組み合わせる薬剤等に依存して決定することができる。
なお、本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、非ヒト動物(ヒト以外の哺乳動物)に対しても摂取させることができる。脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物の摂取量、摂取タイミング及び摂取期間は、ヒトに関する記載を参考にして決定することができる。
【0043】
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物の成人1日当たりの摂取量は、脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物が、例えば、ω3脂肪酸を含む油脂、及び、γ-シクロデキストリンを含有する錯体である場合、例えば、100~10000mg程度、好ましくは500~5000mg程度、より好ましくは1000~3000mg程度である。
【0044】
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物の摂取量、下記摂取タイミング、及び摂取期間は、本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物を非治療目的又は治療目的のいずれで使用する場合にも適用があり、治療目的の場合には摂取は投与に読み替えることができる。
【0045】
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、脳内のω3脂肪酸量の増加促進効果を期待する期間内は摂取を継続することが好ましい。本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物の摂取期間は、脳内のω3脂肪酸量の増加促進効果をよりよく発揮させる観点から、例えば、上記1日量での摂取を1週間以上、2週間以上、3週間以上、好ましくは1カ月以上(4週間以上)とすることができる。本発明のω3脂肪酸量増加促進剤組成物の摂取間隔は、上記1日量での摂取を3日に1回、2日に1回又は1日1回とすることができ、好ましくは2日に1回又は1日1回であり、より好ましくは1日1回である。
【0046】
医薬品組成物
例えば、本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物を、医薬品として提供する場合、本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、医薬品として採り得る公知の形態である、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、ピル、液剤等に製剤化することができる。
【0047】
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、経口剤として、ヒト及び非ヒト動物に経口投与することができる。
このような経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤が挙げられる。
これらの製剤は、当分野で通常行われている手法により、上述する担体等の任意成分を用いて製剤化することができる。
【0048】
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、これらの上述する担体等の任意成分を、1種又は2種以上の混合物として使用することもできる。
また、本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、他の薬理作用物質(有効成分)との混合物として使用することもできる。
【0049】
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物を、飲食品として提供する場合、本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物をそのまま飲食品として提供するか、又は、それを飲食品に含有させて提供することができる。
このようにして提供された飲食品は、本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物を有効量含有した飲食品である。
【0050】
本明細書において、本発明の有効成分を「有効量含有した」とは、個々の食品において通常喫食される量を摂取した場合に後述するような範囲で本発明の有効成分が摂取されるような含有量をいう。
【0051】
飲食品組成物
「飲食品」とは、飲料、加工食品、発酵食品、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、保健機能食品(例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、特別用途食品(例えば、幼児用食品、妊産婦用食品、病者用食品)及びサプリメントを含む意味で用いられる。
中でも、好ましい飲食品としては、飲料、乳製品、発酵食品、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、保健機能食品、又は、病者用食品である。
【0052】
また、保健機能食品は、さらに、疾病リスク低減表示を付した食品を含んでもよい。なお、本発明のω3脂肪酸量増加促進剤組成物を、ヒト以外の動物に摂取させる場合には、本発明でいう食品が飼料として使用されることはいうまでもない。
【0053】
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、上記のようなω3脂肪酸量の増加促進効果等を有するため、日常摂取する飲食品に含有させることができる。また、本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、サプリメントとして提供することができる。
【0054】
本発明の飲食品組成物は、1食当たりに摂取する量が予め定められた単位包装形態で提供することができる。1食当たりの単位包装形態としては、例えば、パック、包装、缶、ボトル等で一定量を規定する形態が挙げられる。
本発明の飲食品組成物の各種作用をよりよく発揮させるためには、後述する、本発明のω3脂肪酸量増加促進剤組成物の1日当たりの摂取量に従って、1食当たりの摂取量を決定することができる。本発明の飲食品は、摂取量に関する説明事項が包装に表示されるか、又は、説明事項が記載された文書等と一緒に提供されてもよい。
【0055】
単位包装形態においてあらかじめ定められた1食当たりの摂取量は、1日当たりの有効摂取量であっても、1日当たりの有効摂取量を、2回又はそれ以上(好ましくは2又は3回)に分けた摂取量であってもよい。
したがって、本発明の飲食品組成物の単位包装形態には、後述のヒト1日当たりの摂取量で本発明のω3脂肪酸量増加促進剤組成物を含有させることができ、あるいは、後述のヒト1日当たりの摂取量の2分の1から6分の1の量で本発明のω3脂肪酸量増加促進剤組成物を含有させることができる。
本発明の飲食物組成物は、摂取の便宜上、1食当たりの摂取量が1日当たりの有効摂取量である、1食当たりの単位包装形態(すなわち、1日当たりの単位包装形態)で提供することが好ましい。
【0056】
「飲食品」の形態は、特に限定されるものではなく、例えば、飲料の形態であっても、半液体又はゲル状の形態であっても、固形状又は粉末状の形態であってもよい。
【0057】
また、「サプリメント」としては、本発明のω3脂肪酸量増加促進剤組成物に賦形剤、結合剤等を加え練り合わせた後に打錠して製造した錠剤、本発明のω3脂肪酸量増加促進剤組成物に賦形剤、結合剤等を加えて造粒化して製造した顆粒剤又は口腔内崩壊錠、本発明のω3脂肪酸量増加促進剤をカプセル等に封入したカプセル剤が挙げられる。
サプリメントとして提供するときは、上述の1食当たり、あるいは、1日当たりの単位包装形態とするほか、1週間当たり、2週間当たり、1ヶ月当たり、あるいは、2ヶ月当たりの単位包装形態として提供することも好適である。なお、後者の単位包装形態には、例えば、1食当たり又は1日当たりの摂取量を表示し、摂取者自身がその表示に従って本発明のω3脂肪酸量増加促進剤組成物を有効量摂取できるようにすることが望ましい。
【0058】
本発明で提供される飲食品は、本発明のω3脂肪酸量増加促進剤組成物を含有する限り、特に限定されるものではないが、例えば、清涼飲料水、炭酸飲料、果汁入り飲料、野菜汁入り飲料、果汁及び/又は野菜汁入り飲料、牛乳等の畜乳、豆乳、乳飲料、ドリンクタイプのヨーグルト、ドリンクタイプ、スティックタイプ等のゼリー、コーヒー、ココア、茶飲料、栄養ドリンク、エナジー飲料、スポーツドリンク、ミネラルウォーター、ニアウォーター、ノンアルコールのビールテイスト飲料等の非アルコール飲料;飯類、麺類、パン類、パスタ類等の炭水化物含有飲食品;チーズ類、ハードタイプ又はソフトタイプのヨーグルト、畜乳その他の油脂原料による生クリーム、アイスクリーム等の乳製品;クッキー、ケーキ、チョコレート等の洋菓子類、饅頭、羊羹等の和菓子類、ラムネ等のタブレット菓子(清涼菓子)、キャンディー類、ガム類、グミ類、ゼリー、プリン等の冷菓又は氷菓、スナック菓子等の各種菓子類;ウイスキー、バーボン、スピリッツ、リキュール、ワイン、果実酒、日本酒、中国酒、焼酎、ビール、アルコール度数1%以下のノンアルコールビール、発泡酒、その他雑酒、酎ハイ等のアルコール飲料;卵を用いた加工食品、魚介類、畜肉(レバー等の臓物を含む)の加工食品(珍味を含む)、味噌汁等のスープ類等の加工食品;みそ、しょうゆ、ふりかけ、その他シーズニング調味料等の調味料;濃厚流動食等の流動食等を例示することができる。なお、ミネラルウォーターは、発泡性及び非発泡性のミネラルウォーターのいずれもが包含される。また、本発明で提供される食品には、食品製造原料及び食品添加物のいずれもが含まれる。
【0059】
具体的な飲食品として、例えば、茶飲料としては、発酵茶、半発酵茶及び不発酵茶のいずれもが包含され、例えば、紅茶、緑茶、麦茶、玄米茶、煎茶、玉露茶、ほうじ茶、ウーロン茶、ウコン茶、プーアル茶、ルイボスティー、ローズ茶、キク茶、イチョウ葉茶、ハーブ茶(例えば、ミント茶、ジャスミン茶)が挙げられる。
【0060】
上記果汁入り飲料、果汁及び野菜汁入り飲料に用いられる果物としては、例えば、リンゴ、ミカン、ブドウ、バナナ、ナシ、モモ、マンゴー、アサイー、ブルーベリー及びウメが挙げられる。また、野菜汁入り飲料、果汁及び野菜汁入り飲料に用いられる野菜としては、例えば、トマト、ニンジン、セロリ、カボチャ、キュウリ及びスイカが挙げられる。
【0061】
ここで、本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物を飲食品中に含有させて、健康補助食品とする場合、脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物に含まれるω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂として、エゴマ油等の植物油のものを用いれば、魚介類を含む海洋生物を一切用いることなく、植物油のみを用いて、脳のドコサヘキサエン酸(DHA)組成比を増加させることができる。
よって、前記ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂が、エゴマ油である、脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物、及び、脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物を含む飲食品は、魚介類を食べない、ベジタリアン、ヴィーガン等の人たちでも利用可能である。すなわち、ベジタリアン、ヴィーガン等を含む幅広い人々が、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂がエゴマ油である、脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物、及び、脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物を含む飲食品を摂取することで、加齢とともに減少する脳のドコサヘキサエン酸(DHA)を補うことができる。
【0062】
飼料
本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂及びγ-シクロデキストリンに加えて、様々な飼料成分、飼料素材を含んでよい。このような本発明の脳内のω3脂肪酸量増加促進剤組成物は、ω3脂肪酸を含む油脂及びγ-シクロデキストリンを含有する飼料と言い換えることができる。
【0063】
飼料成分及び飼料素材としては、特に限定はなく、例えば、糖質、タンパク質、脂質、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類、飼料添加物(例えば、香料、保存剤、pH調整剤等)等が挙げられる。
【0064】
糖質としては、特に限定はなく、例えば、スクロース、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクチュロース、ラフィノース、デキストリン、澱粉等の糖類;可溶性澱粉、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル等の加工澱粉等が挙げられる。
【0065】
タンパク質としては、特に限定はなく、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、カゼイン、ホエイ粉、ホエイタンパク質、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質分離物、α-カゼイン、β-カゼイン、κ-カゼイン、β-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミン、ラクトフェリン、大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、肉タンパク質等の動植物性タンパク質、これら加水分解物;バター、乳性ミネラル、クリーム、ホエイ、非タンパク態窒素、シアル酸、リン脂質、乳糖等の各種乳由来成分等が挙げられる。
【0066】
脂質としては、特に限定はなく、例えば、ラード、魚油等、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の動物性油脂;パーム油、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、大豆油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の植物性油脂等が挙げられる。
【0067】
食物繊維としては、特に限定はなく、例えば、セルロース、シクロデキストリン、難消化デキストリン、アラビヤガム等が挙げられる。
【0068】
ビタミン類としては、特に限定はなく、例えば、ビタミンA、カロチン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸等が挙げられる。
【0069】
ミネラル類としては、特に限定はなく、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレン等が挙げられる。
【0070】
前記ω3脂肪酸を含む油脂及びγ-シクロデキストリンを含有する飼料は、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂及びγ-シクロデキストリンに加えて、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂以外の脂質を含むことができる。前記ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂以外の脂質として、ω3脂肪酸の含有量が10質量%未満である油脂を含んでもよい。前記ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂以外の脂質としては、パーム油、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、大豆油等が挙げられる。前記飼料は、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂以外の脂質を含む場合、全脂質(ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂と、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂以外の脂質との合計量)に対するω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂の含有量は、通常50質量%以下、好ましくは5~20質量%、より好ましくは10~15質量%である。
ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂以外の油脂の含有量は、γ-シクロデキストリン100質量部に対して、通常0.01~10質量部であり、好ましくは0.1~5質量部であり、より好ましくは0.3~2質量部である。
【0071】
脳内のω3系脂肪酸量向上方法
本発明は、ω3脂肪酸を10質量%以上含む油脂及びγ-シクロデキストリンを摂取する工程を備える、脳内のω3脂肪酸量の増加を促進する方法を包含する。
【実施例0072】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0073】
製造例1(包接錯体):
17.6gのエゴマ油(株式会社サンエイト製、製品名:島根県産エゴマ油)を、100gのγ-CD(株式会社シクロケムバイオ製、製品名:CAVAMAX(登録商標) W8 Food)を500mLの水に溶解させた溶液に添加して、室温(約25℃)で撹拌した。溶液の色が徐々に無色から白色に変化し、不溶性の錯体が形成した。溶媒の表面からエゴマ油が消失したら、撹拌を停止した。全混合物を凍結乾燥するとエゴマ油とγ-CDとの錯体が得られ、これを均質化して粉末化した。この方法によって、エゴマ油とγ-CDとの錯体は、定量的に回収された。
【0074】
製造例2(吸着性組成物):
上記シクロデキストリン100質量部と上記エゴマ油17.6質量部とを混合し、撹拌することで吸着性混合物を製造した。
【0075】
試験例1
マウスは、近交系マウス(雄C57BL/6JJmsSlc、おおよそ5週齢)を合計27匹用意し、これを各9匹ずつ3群に分け、所定期間給餌させる飼料の種類により、2つの試験区群(実施例飼料区1及び比較例飼料区1)と1つの対照区群(対照飼料区)とした。
飼料は、下記表1に示す飼料を基本組成とした。この飼料を順応期間に与えた。
【0076】
【表1】
【0077】
前記実験において2つの試験区群(実施例飼料区1及び比較例飼料区1)と1つの対照区群(対照飼料区)とに分ける試験飼料の成分配合を、下記表2に示す。実施例飼料区1の飼料、及び、比較例飼料区1の飼料は、基本組成の中の大豆油及びセルロースパウダーを以下のように変更したものである。
実施例飼料区1の飼料は、基本組成の大豆油(7質量%)及びセルロースパウダー(5質量%)の代わりに、大豆油(6.117質量%)及びエゴマ油-γ-CD粉末(5.883質量%)を使用した飼料である。ここで、エゴマ油-γ-CD粉末は、上記製造例1で得られた粉末を使用した。この粉末には、エゴマ油が0.883g、γ-CDが5g含まれている。
比較例飼料区1の飼料は、基本組成の大豆油の12.6%をエゴマ油に置き換えた飼料である。
対照飼料区の飼料(対照飼料)は、順応期間にマウスに与える飼料と同じである。
【0078】
【表2】
【0079】
各群9匹ずつの近交系マウスを、上記表1に示す飼料で10日間飼育した(順応期間)。その後、順応期間と同じ飼料(対照飼料)、対照飼料の大豆油の12.6%をエゴマ油に置き換えた飼料(比較例飼料区1)、及び、対照飼料の大豆油(7質量%)及びセルロースパウダー(5質量%)の代わりに、大豆油(6.117質量%)及びエゴマ油-γ-CD粉末(5.883質量%)を使用した飼料(実施例飼料区1)で、それぞれ4週間飼育した。なお、試験期間中、全マウスには、水及び前記飼料を自由摂取させた。そして、以下の方法により、脳の脂肪酸組成を分析した。
【0080】
マウスを解剖して脳を取り出し、Bligh-Dyer法で全脂質を抽出した。抽出液の溶媒を留去し、基準油脂分析試験法に準じてメチルエステル化してガスクロマトグラフィーで分析した。マウス脳内の主要な12種の脂肪酸組成の結果を表3及び図1に示す。
【0081】
【表3】
【0082】
ここで、DHA(C22:6,n-3)の値について、各群9匹のマウスの平均値とし、多重比較検定で有意差の判定を行った。
【0083】
<結果>
表3及び図1において、参考例1(対照飼料区)と、対照飼料の大豆油の一部をエゴマ油に置き換えた飼料を与えた比較例1(比較例飼料区1)との結果を比較すると、マウスの脳の脂肪酸組成に変化は見られなかった。これより、大豆油の一部をエゴマ油で置換した飼料をマウスに4週間与えても、脳の脂肪酸組成への影響は見られないことが確認された。
対照飼料区と、エゴマ油とγ-CDとの包接錯体を含む飼料を与えた実施例飼料区1との結果を比較すると、エゴマ油とγ-CDとの包接錯体を含む飼料を4週間与えたマウスの脳の脂肪酸組成において、DHA(22:6,n-3)の割合が有意に増加したことが確認された(p<0.01)。
また、比較例飼料区1と実施例飼料区1との結果の比較から、エゴマ油とγ-CDとの包接錯体を含む飼料を4週間与えたマウスの脳のDHAの割合(18.07±0.17%)は、同じ量のエゴマ油を液体として摂取させた比較例飼料区2のマウスの脳のDHAの割合(16.44±0.16%)と比較して有意に大きかった。
以上の結果から、エゴマ油とγ-CDとを同時に摂取することで、脳の脂肪酸組成におけるDHAの組成比、すなわち脳内のDHA量が顕著に増加することがわかった。この結果より、γ-CDは、脳内のω3脂肪酸含有量の増加促進剤として作用しているといえる。
【0084】
試験例2(リパーゼによるトリグリセリド分解反応の一次反応速度定数の測定)
試薬の準備
(1)反応液Aの調製
まず、1.5143g(0.0125mol)の2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(Tris、分子量=121.14g/mol)を、蒸留水を用いて250mLにフィルアップし、そこに塩酸を加えてpHを8.0に調整して、50mM Tris-HCl溶液を得た。次に、0.0111g(0.1mmol)の塩化カルシウム(分子量=110.98g/mol)を、100mLの50mM Tris-HCl溶液に溶解させ、1mM CaClの50mM Tris-HCl溶液を得た。0.1452g(0.27mmol)のタウロコール酸ナトリウム(分子量=537.69g)を、100mLの1mM CaClの50mM Tris-HCl溶液に溶解させて2.7mMとし、これを反応液Aとした。
(2)膵リパーゼ溶液の調製
100mgの膵リパーゼを10mLの反応液Aに溶解させて、膵リパーゼ溶液を調製した。
(3)BHT含有CHCl/MeOH溶液の調製
0.1102g(0.5mmol)のジブチルヒドロキシトルエン(BHT、分子量=220.36g/mol)を50mLのクロロホルム(CHCl)に溶解させた。50mLのBAT含有クロロホルムと、100mLのメタノールとを混合した。
(4)TMSD溶液
市販のTMSD溶液((トリメチルシリル)ジアゾメタンのヘキサン溶液(約10%))をそのまま使用した。
(5)2mg/mlのマルガリン酸のヘキサン溶液の調製(内標準物質)
200mgのマルガリン酸(分子量=270.45g/mol)をヘキサンで100mLにフィルアップした(2mg/ml)。
(6)10%酢酸/MeOHの調製
1mLの酢酸を10mLのメスフラスコにとり、メタノールを用いてフィルアップした。
【0085】
サンプリング容器の準備
反応開始後0、10、20、30、60、90、及び120分に50μL×2個ずつサンプリングするため、合計14個のサンプリング容器を準備した。そのうちの半分(7個のサンプリング容器)には10μLの内標準物質のヘキサン溶液を予め加えた。各容器にサンプリング時間と内標準物質の有無を記載し、全てのサンプリング容器にBHT含有CHCl/MeOHを750μL加えた。
【0086】
リパーゼによるトリグリセリド分解反応
(i)魚油だけの場合
(1)反応器の風袋重量を秤量した。
(2)反応器に魚油(日油株式会社製、サンオメガ(登録商標)DHA23)を20mg加え、魚油の質量を正確に記録した。
(3)そこに反応液Aを10mL加えた。
(4)これを5分間超音波処理し、反応液を完全に懸濁させた。
(5)反応0分のサンプル(ブランク)として、反応液から50μL×2個(内標準物質あり、なし)のサンプリングを行った。
(6)反応器を37℃の振とう恒温槽に入れ、熱平衡に達するまで5分間振とうした。
(7)膵リパーゼ溶液を37℃の振とう恒温槽に入れ、熱平衡に達するまで5分間振とうした。
(8)反応溶液に、予め37℃に温めた膵リパーゼ溶液を2mL加えた(反応開始)。
(9)37℃で振とうしながら反応させた。
(10)反応開始後10、20、30、60、90、及び120分に50μL×2個ずつ(内標準物質あり、なし)のサンプリングを行った。
(ii)魚油にγ-CDを添加する場合(魚油+γ-CD)
上記(2)において、反応器に魚油(日油株式会社製、サンオメガ(登録商標)DHA23)を20mg、及びγ-CD(株式会社シクロケムバイオ製、製品名:CAVAMAX(登録商標) W8 Food)を14.3mg加え、魚油及びγ-CDの質量を正確に記録した以外は、上記(i)と同様にしてリパーゼによるトリグリセリド分解反応を行った。
【0087】
サンプリングした反応溶液の処理(脂質の抽出及びメチル化反応)
(1)サンプリング容器にクロロホルム及び水を250μLずつ添加し、ボルテックスで混合した。
(2)下層(クロロホルム層)から200μLを回収し、別の容器に移した。
(3)遠心エバポレーター(40℃)で溶媒を除去した。
(4)メタノールを200μL、及びTMSD溶液を30μL加えて激しく混合し、室温で30分間放置した。
(5)10%酢酸/MeOHを10μL加えて混合し、反応を停止した。
(6)遠心エバポレーター(40℃)で溶媒を除去した。
(7)そこにヘキサンを200μL加えた。
(8)150μLをGCMS用インサートに移し、専用バイアルに入れてセプタム付きキャップで蓋をし、GC-MS分析に供した。
【0088】
一次反応速度定数の算出
GC-MSを用いて遊離脂肪酸(パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、EPA、及びDHA)を定量し、各脂肪酸のモル数を求めて時間に対してプロットし、これを一次反応として解析した。
各遊離脂肪酸の一次反応速度定数(min-1)は、以下の式により計算した。
式:A=A-A・e-kt+b
式中、Aは、反応時間t(min)における遊離脂肪酸の量(mol)であり、Aは、平衡状態での遊離脂肪酸の量(mol)であり、bは、t=0における遊離脂肪酸の量(mol)である。
その結果を、表4及び図2に示す。
【0089】
【表4】
【0090】
表4及び図2より、測定した5種の脂肪酸全てで、魚油にγ-CDを添加することにより、リパーゼによる魚油分解反応速度が増加することが確認された。
【0091】
魚油の代わりにエゴマ油を用いて、上記と同様にリパーゼによるトリグリセリド分解反応の一次反応速度定数を測定した。
その結果を、表5及び図3に示す。
【0092】
【表5】
【0093】
表5及び図3より、測定した5種の脂肪酸全てで、エゴマ油にγ-CDを添加することにより、リパーゼによる魚油分解反応速度が増加することが確認された。
以上の結果より、γ-CDは、エゴマ油だけでなく、魚油を基質とするリパーゼの脂質分解を加速させることがわかった。したがって、魚油とγ-CDとを共摂取することによって、魚油の体内吸収効率が上昇することから、γ-CDの脳内のω3脂肪酸含有量増加促進作用により、エゴマ油と同様に、魚油の場合にも脳内のω3脂肪酸含有量が増加することが予想される。
図1
図2
図3