(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008039
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ポリアルキレンイミンアルキレンオキシド系共重合体
(51)【国際特許分類】
C08G 65/326 20060101AFI20240112BHJP
C11D 3/30 20060101ALI20240112BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
C08G65/326
C11D3/30
C11D3/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109542
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】服部 真美
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰弘
【テーマコード(参考)】
4H003
4J005
【Fターム(参考)】
4H003AB19
4H003AC08
4H003BA12
4H003DA01
4H003DB01
4H003DC02
4H003EB13
4H003EB34
4H003ED02
4H003FA04
4J005AA04
4J005BB01
4J005BD06
(57)【要約】
【課題】
洗剤用ビルダー、洗剤の用途において好適であり、皮脂洗浄力に於いて高い基本性能を発揮することができるポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体、その製造方法及び用途を提供する。
【解決手段】
ポリアルキレンイミンに由来する構造単位、
アルキレンオキシドに由来する構造単位、及び、
下記一般式(1)で表される置換基を有する
ポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体である。
【化0】
(一般式(1)中のMは、陽イオンを表す。アスタリスクは、一般式(1)で表される置換基が、結合している同種もしくは異種の他の構造単位に含まれる原子を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルキレンイミンに由来する構造単位、
アルキレンオキシドに由来する構造単位、及び、
下記一般式(1)で表される置換基を有する
ポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体。
【化1】
(一般式(1)中のMは、陽イオンを表す。アスタリスクは、一般式(1)で表される置換基が、結合している同種もしくは異種の他の構造単位に含まれる原子を表す。)
【請求項2】
前記ポリアルキレンイミンに由来する構造単位が下記一般式(2)で表される構造単位であり、前記アルキレンオキシドに由来する構造単位が前記下記一般式(3)で表される構造単位であり、且つ、下記一般式(2)で表される構造単位の水素原子の一つ以上が、下記一般式(3)で表される構造単位で置換されている
請求項1に記載のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体。
【化2】
(一般式(2)中、R
1は、同一若しくは異なって、炭素原子数2~6の直鎖アルキレン基、又は、炭素原子数3~6の分岐アルキレン基を表す。
Aは、分岐による別のポリアミン鎖を表す。
l、m及びnは、同一又は異なって、0又は1以上の整数を表す。但し、l、m、nの和は、2以上である。
Xは、同一若しくは異なって、水素原子、下記一般式(3)で表される置換基から選ばれる1種以上を表す。)
【化3】
(一般式(3)中、R
2は、同一もしくは異なって、炭素数2~6の有機基を表す。aは1以上の整数を表す。アスタリスクは、一般式(2)で表される構造単位が、結合している同種もしくは異種の他の構造単位に含まれる原子を表す。
Zは、水素原子、-SO
3Mから選ばれる一種以上を表す。Mは、陽イオンを表す。)
【請求項3】
前記アルキレンオキシドの末端構造100モル%に対して、
前記一般式(1)で表される置換基の割合が5モル%以上、100モル%以下である
請求項1に記載のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体。
【請求項4】
請求項1に記載のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体を含む洗剤用ビルダー。
【請求項5】
請求項1に記載のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体を含む洗剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、洗剤用ビルダー、洗剤の用途において好適であり、皮脂洗浄力に於いて高い基本性能を発揮することができるポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体、その製造方法及び用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキレンイミンを主鎖とし、エチレンオキシド等がポリアルキレンイミン中の窒素原子に付加した重合体は、ポリエチレンイミンエトキシレート変性体とも呼ばれ、例えば、高分子系ビルダーとして作用することができるものである。このような重合体は、液体洗剤中に溶けるという性質を有することから、液体洗剤を構成する成分として欠かすことができないものとなっている。ポリエチレンイミンエトキシレート変性体を活性剤と共に洗剤中に含有させると、洗濯により取り除かれた汚れによる再汚染を防止して、高い洗浄力を発揮することになる。
【0003】
このようなポリエチレンイミンエトキシレート変性体を含む洗剤に関し、エトキシ化アミン分散/再付着防止剤を含む洗剤ビルダー組成物が開示されている(特許文献1参照)。このエトキシ化アミンは、-〔(R5O)m(CH2CH2O)n〕-(R5はC3~C4アルキレン又はヒドロキシアルキレン、好ましくはプロピレンである。ポリアミン及びアミン重合体の場合には、mは0~10であり、nは少なくとも3である。これらのポリオキシアルキレン部分は混合でき、ブロックを形成することができる。)で表されるアルキレンオキシド付加体を有するものであり、アルキレンオキシド付加体の末端構造が相容性ノニオン基、アニオン基、これらの混合となる重合体である。ノニオン基としては、C1~C4アルキル基、ヒドロキシアルキルエステル基、エーテル基、水素、アセテート、メチルエーテルが挙げられ、アニオン基としては、PO3
2-、SO3
-が挙げられている。
【0004】
またコットン汚れ放出効果を発揮する機能性主鎖部分を有した水溶性及び/又は分散性修飾ポリアミンを含む液体洗濯洗剤組成物が開示されている(特許文献2参照)。この修飾ポリアミンは、-(R1O)mB(R1はC2-C6アルキレン及びそれらの混合、好ましくはエチレンである。mは4~約400の値を有する。)で表されるアルキレンオキシド付加体を有するものであり、Bで表されるアルキレンオキシド付加体の末端構造が、水素、C1~C6アルキル、-(CH2)qSO3M、-(CH2)pCO2M、-(CH2)q(CHSO3M)CH2SO3M、-(CH2)q(CHSO2M)CH2SO3M、-(CH2)pPO3M、-PO3M(Mは水素又は電荷バランスを満たす上で充分な量の水溶性カチオンである。pは1~6の値を有する。qは0~6の値を有する。)となる重合体である。
【0005】
更に、アルコキシル化ポリアルキレンイミンを含んでなる洗濯洗剤組成物が開示されている(特許文献3参照)。このアルコキシル化ポリアルキレンイミンは、-(R1O)m(R2O)nR3(R1は1,2-プロピレン、1,2-ブチレン及びそれらの混合物であり、好ましくは1,2-プロピレンであり、R2はエチレンであり、R3は水素、C1~C4アルキル及びそれらの混合物であり、好ましくは水素又はメチルであり、更に好ましくは水素である。mは約1~約10であり、nは約10~約40である。)で表されるアルキレンオキシド付加体を有するものであり、アルキレンオキシド付加体の末端構造が、水素、C1~C4アルキル及びそれらの混合物となる重合体である。
【0006】
しかしながら、これらの先行技術においては、洗剤用途で用いる場合に、高分子系ビルダーとしてより好適なものとすることにより、再汚染を充分に防止して洗浄力を向上させたり、また、その他の用途における基本性能を向上させたりするために、アルキレンオキシド付加体を有する重合体の構造について工夫の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平7-116473号公報(第8~10頁)
【特許文献2】特表平11-508318号公報(第46~55頁)
【特許文献3】特表2002-518585号公報(第11~16頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者が鋭意検討したところ、ポリアルキレンイミンアルキレンオキシド系重合体には、改善の余地があることが分かった。
【0009】
本開示は、前記現状に鑑みてなされたものであり洗剤用ビルダー、洗剤の用途において好適であり、皮脂洗浄力に於いて高い基本性能を発揮することができるポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体、その製造方法及び用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体は、ポリアルキレンイミンに由来する構造単位、アルキレンオキシドに由来する構造単位、及び、下記一般式(1)で表される置換基を有するポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体である。
【0011】
【化1】
(一般式(1)中のMは、陽イオンを表す。アスタリスクは、一般式(1)で表される置換基が、結合している同種もしくは異種の他の構造単位に含まれる原子を表す。)
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、皮脂洗浄力に於いて高い基本性能を発揮することができるポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体、その製造方法及び用途を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態を詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0014】
なお、これ以降の説明において特に記載がない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0015】
〔ポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体〕
本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体は、
ポリアルキレンイミンに由来する構造単位、アルキレンオキシドに由来する構造単位、及び、下記一般式(1)で表される置換基を有していれば特に限定はない。
【0016】
【化2】
(一般式(1)中のMは、陽イオンを表す。アスタリスクは、一般式(1)で表される置換基が、結合している同種もしくは異種の他の構造単位に含まれる原子を表す。)
【0017】
前記一般式(1)中のMは、陽イオンであれば特に限定はない。
前記陽イオンとしては、水素イオンや後述する水素イオン以外の陽イオンが挙げられる。水素イオン以外の陽イオンとしては、硫酸基と塩形成可能であれば特に限定はなく、金属イオン、アンモニウムイオン、有機アミンの酸塩からなるイオン等が挙げられる。前記金属イオンには主として1~3価の金属イオンを用いることができる。好ましくは、1価又は2価の金属イオンである。より好ましくは水素イオン、1価の金属イオンである。1価の金属イオンの具体例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン等のアルカリ金属イオン、又は、銅イオン、銀イオンが挙げられる。好ましくは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンである。2価の金属イオンの具体例としては、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、スカンジウムイオン、バリウムイオン等の第2族元素イオン、又は、鉄イオン、亜鉛イオン、銅イオン、マンガンイオン、ニッケルイオンが挙げられる。好ましくは、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンである。
有機アミンの具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン等のアルキルアミン;ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン;モルホリン、ピロール等の環状アミン類が挙げられる。
前記Mとしては、水素イオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオンが好ましい。
前記Mが、前述の陽イオンであると、液体洗剤への相溶性を向上させる観点から好ましい。
【0018】
本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体は、前記アルキレンオキシドの末端構造100モル%に対して、前記一般式(1)で表される置換基の割合が5モル%以上、100モル%以下であることが好ましい。
より好ましくは10モル%以上、90モル%以下であり、更に、好ましくは20モル%以上、80モル%以下である。
本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体は、前記アルキレンオキシドの末端構造100モル%に対して、前記一般式(1)で表される置換基の割合が前述の範囲であると、皮脂汚れの架橋点となる金属イオンとの吸着が促進され、皮脂汚れ洗浄性能が向上する観点から好ましい。
末端構造のモル%は、1H-NMRや本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体の精製後の収量により測定することができる。
【0019】
本開示のアルキレンイミンに由来する構造単位は、下記一般式(2)で表される構造単位で表すことができる。
【0020】
【化3】
(一般式(2)中、R
1は、同一若しくは異なって、炭素原子数2~6の直鎖アルキレン基、又は、炭素原子数3~6の分岐アルキレン基を表す。
Aは、分岐による別のポリアミン鎖を表す。
l、m及びnは、同一又は異なって、0又は1以上の整数を表す。但し、l、m、nの和は、2以上である。
Xは、同一若しくは異なって、水素原子、下記一般式(3)で表される置換基から選ばれる1種以上を表す。)
【0021】
また、前記アルキレンオキシドに由来する構造単位は、前記下記一般式(3)で表すことができる。
【0022】
【化4】
(一般式(3)中、R
2は、同一もしくは異なって、炭素数2~6の有機基を表す。aは1以上の整数を表す。アスタリスクは、一般式(2)で表される構造単位が、結合している同種もしくは異種の他の構造単位に含まれる原子を表す。
Zは、水素原子、-SO
3Mから選ばれる一種以上を表す。Mは、陽イオンを表す。)
【0023】
前記アルキレンイミンに由来する構造単位が前記一般式(2)で表される構造単位であり、前記アルキレンオキシドに由来する構造単位が前記下記一般式(3)で表される構造単位である場合、前記一般式(2)で表される構造単位に含まれる窒素原子に結合している水素原子の一つ以上が、前記一般式(3)で表される構造単位で置換されていれば特に限定はない。
【0024】
前記一般式(3)中のZは、水素原子、-SO3Mから選ばれる一種以上であれば特に限定はない。
前記-SO3M中のMは、前記一般式(1)中のMと同じであり、好ましい形態についても同じである。
前記Z基に対する前記一般式(1)で表される置換基のモル分率は、1~100モル%であることが好ましい。より好ましくは5~100モル%、更に好ましくは10~90モル%、特に好ましくは20~80モル%である。
前記Z基に対する前記一般式(1)で表される置換基のモル分率が、前述の範囲であると、皮脂汚れの架橋点となる金属イオンとの吸着が促進され、皮脂汚れ洗浄性能が向上する観点から好ましい。
【0025】
更に、本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体の好ましい形態について説明する。
本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体の好ましい形態を概念的に表すと、下記一般式(4)で表すことができる。
【0026】
【0027】
一般式(4)中、R2は、同一又は異なって、炭素数2~6の有機基を表す。AIは、アルキレンイミン単量体単位を表すが、(AI)yは、ポリアミン主鎖を表し、アルキレンイミン単量体単位が直鎖状、環状、分岐状又はこれらの複合状態で結合した構造となったものである。前記一般式(4)は、一部又は全部のポリアルキレンイミン重合体がQ1-(R2O)x-、又は、-(R2O)z-Q2で表されるポリアルキレンオキシド単位を有することを概念的に表している。前記ポリアルキレンオキシド単位の末端構造であるQ1、及び、Q2は、同一若しくは異なって、水素原子、及び/又は、前記一般式(4)で表される構造単位による末端構造のいずれかである。
x、y及びzは、同一又は異なって、2以上の整数を表す。
【0028】
前記一般式(3)及び前記一般式(4)に於けるR2は、同じであり、炭素数2~6の有機基であれば特に限定はない。前記R2は、炭素数2~6の炭化水素基であってもよい。好ましくは、炭素数2~4の炭化水素基である。前記R2は同一の炭素数でもよいし、また、異なる炭素数の組み合わせであってもよく、前記R2は炭素数2~6から選ばれる1種以上であってもよい。好ましいR2の炭素数は、前述した通り、炭素数2~4である。また、前記R2は、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基から選ばれる1種以上であれば、本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体を洗剤用途に用いた際、
本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体の水溶性が向上し、泥汚れなどの粒子分散性向上の観点から好ましい。
【0029】
本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体は、ポリアルキレンオキシドをもつポリアルキレンイミン単量体単位を必須の繰り返し単位として有する共重合体である。このような共重合体は、アルキレンイミンにより構成されるポリアルキレンイミンに由来する構造単位に含まれる窒素原子にオキシアルキレン基が付加した構造を有するものである。
前記一般式(3)中のaは、1以上の整数であれば特に限定はない。また、前記aは、前記オキシアルキレン基の付加モル数に相当する。前記aは、同一もしくは異なった整数であってもよく、分布があってもよい。
前記オキシアルキレン基は、前記ポリアルキレンイミンに由来する構造単位に対する平均付加モル数が1以上、200以下であることが好ましく、通常では、付加モル数が分布することになる。すなわちポリアルキレンイミン単位に対する付加モル数は、1又は2以上であり、平均付加モル数が2以上、200以下となることが好ましい。より好ましくは、3以上、100以下であり、更に好ましくは、4以上、80以下であり、特に好ましくは、5以上、50以下である。複数の前記ポリアルキレンイミンに由来する構造単位の中には、オキシアルキレン基が付加した構造を有しないものがあってもよい。
平均付加モル数とは、前記ポリアルキレンイミンに由来する構造単位1モルあたりに付加しているオキシアルキレン基のモル数の平均値である。
【0030】
前記一般式(3)で表される共重合体としては、下記一般式(2)で表される構造を有するポリアミンのアミン窒素原子に結合する水素原子をポリアルキレンオキシド単位で置換することにより得られる共重合体、すなわち、下記一般式(2)で表される構造を有するポリアミンのアミン窒素原子にアルキレンオキシドが付加して得られる共重合体であることが好ましい。
【0031】
【化6】
(一般式(2)中、R
1は、同一若しくは異なって、炭素原子数2~6の直鎖アルキレン基、又は、炭素原子数3~6の分岐アルキレン基を表す。
Aは、分岐による別のポリアミン鎖を表す。
l、m及びnは、同一又は異なって、0又は1以上の整数を表す。但し、l、m、nの和は、2以上である。
Xは、同一若しくは異なって、水素原子、前記一般式(3)で表される置換基から選ばれる1種以上を表す。)
【0032】
前記一般式(2)に於いて、Aで表される別のポリアミン鎖は、R1を介して一般式(2)で表される構造に結合することが好ましい。
前記一般式(2)中、R1は、同一若しくは異なって、炭素原子数2~6の直鎖アルキレン基、又は、炭素原子数3~6の分岐アルキレン基であれば特に限定ない。
前記R1が、炭素原子数2~6の直鎖アルキレン基である場合、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
前記R1が、炭素原子数3~6の分岐アルキレン基である場合、イソプロピレン基、イソブチレン基、t-ブチレン基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基等が挙げられる。中でも、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソプロピレン基が好ましく、より好ましくはエチレン基である。
前記一般式(2)中、R1はが、前述の置換基であると、アルキレンイミンの入手の観点および重合性の観点で好ましい。
【0033】
また、前記一般式(2)に於いて、l、m及びnは、同一又は異なって、0又は1以上の整数を表し、l、m、nの和が2以上であれば特に限定はない。mとnの好ましい比率については、後述する通りである。
【0034】
前記一般式(2)のXは、同一若しくは異なって、水素原子、前記一般式(1)で表される置換基から選ばれる1種以上であれば特に限定はない。
前記Xは、二つとも水素原子の場合もあれば、二つとも前記前記一般式(1)で表される置換基であってもよい。または、一方が水素原子であり、他方が前記一般式(1)で表される置換基であってもよい。
【0035】
前記ポリアミンは、一級アミン窒素原子に由来する単位、二級アミン窒素原子に由来する単位及び三級アミン窒素原子に由来する単位からなる群より選択される少なくとも一種を有するものである。
前記一級アミン窒素原子に由来する単位は、例えば、下記式で表すことができる。
(H2N-R1)-*
及び
*-NH2
なお、アスタリスクは、上記式、下記一般式(5)、及び、下記一般式(6)で表される構造単位が、結合している同種もしくは異種の他の構造単位に含まれる原子を表す。
【0036】
前記二級アミン窒素原子に由来する単位は、例えば、下記一般式(5)で表さすことができる。
【0037】
【0038】
上記三級アミン窒素原子に由来する単位は、例えば、下記一般式(6)で表さすことができる。
【0039】
【0040】
前記ポリアミンにおいて、前記単位の存在形態としては特に限定されず、例えば、前記単位をランダムに有することになる。なお、前記アミン窒素原子は、四級化又は酸化されていてもよい。
本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体においては、これらのアミン窒素原子の一部又は全部において、アミン窒素原子が有する水素原子の一部又は全部がポリアルキレンオキシド単位(ポリオキシアルキレン基)に置換された形態となる。
なお、前記一般式(5)、及び、前記一般式(6)に於けるR1は、前記一般式(2)と同じであり、好ましい形態も同じである。
また、同様に、前記一般式(6)に於けるAは、前記一般式(2)と同じであり、好ましい形態も同じである。
【0041】
前記ポリアミン主鎖を形成することができるポリアミンとしては、ポリアルキレンアミン(PAA)、ポリアルキレンイミン(PAI)であることが好ましい。
前記ポリアルキレンアミン(PAA)としては、ポリエチレンアミン(PEA)、テトラブチレンペンタミンが挙げられる。PEAは、アンモニア及びエチレンジクロリドを反応させ、その後、分別蒸留することにより得ることができる。このような方法により得られるPEAとしては、トリエチレンテトラミン(TETA)及びテトラエチレンペンタミン(TEPA)である。
【0042】
前記ポリアルキレンイミンとしては、エチレンイミン、プロピレンイミン、1,2-ブチレンイミン、2,3-ブチレンイミン、1,1-ジメチルエチレンイミン等の炭素原子数2~6のアルキレンイミンの1種又は2種以上を常法により重合して得られる、これらのアルキレンイミンの単独重合体や共重合体が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。より好ましくは、エチレンイミンの単独重合体(ポリエチレンイミン;以下、PEIと称する。)である。これらのアルキレンイミンの単独重合体や共重合体においては、ポリアルキレンイミン鎖が形成されることになり、該ポリアルキレンイミン鎖は、分岐状の構造を必須とすることになる。PEIとしては、少なくとも中度の分岐を有しているもの、即ち、mとnとの比率がm/n=4/1~1/4であるものが好ましい。より好ましくは、mとnとの比率が約3/1~1/3であり、更に好ましくは、2/1~1/2である。
またエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等を重合して得られるものであってもよい。このようなポリアルキレンイミンでは、通常、構造中に3級アミノ基の他、1級アミノ基や2級アミノ基(イミノ基)を有することになる。
【0043】
本開示に於いては、ポリアミン主鎖がエチレンイミンを主体として形成されるものであることが好ましい。この場合、「主体」とは、ポリアミン主鎖が2種以上のアルキレンイミンにより形成されるときに、全アルキレンイミンのモル数において、大半を占めるものであることを意味する。
前記「大半を占める」ことを全アルキレンイミン100モル%中のエチレンイミンのモル%で表すと、50~100モル%であることが好ましい。50モル%未満であると、ポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体の洗浄力が低下するおそれがある。より好ましくは、60モル%以上であり、更に好ましくは、70モル%以上である。
【0044】
前記ポリアミン主鎖における一級、二級及び三級アミン窒素原子に由来する単位の相対割合は、特にPEIの場合で、製法に応じて適宜選択することができる。PEIは、二酸化炭素、重亜硫酸ナトリウム、硫酸、過酸化水素、塩酸、酢酸等の触媒の存在下でエチレンイミンを重合させることにより製造できる。
【0045】
前記ポリアルキレンイミン由来の構造単位/前記アルキレンオキシド由来の構造単位のモル比は、1/1~1/200であることが好ましい。より好ましくは1/2~1/200、更に好ましくは1/3~1/100、特に好ましくは1/4~1/80である。前記ポリアルキレンイミン由来の構造単位/前記アルキレンオキシド由来の構造単位のモル比が、前述の範囲であると、水溶性が向上し、スルホン酸変性反応時の取り扱いを容易にする観点から好ましい。
【0046】
本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシドに含まれる全ての水酸基に対する前記一般式(1)で表される置換基のモル分率は、1~100モル%であることが好ましい。より好ましくは5~100モル%、更に好ましくは10~90モル%、特に好ましくは20~80モル%である。
本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシドに含まれる全ての水酸基に対して、前記一般式(1)で表される置換基のモル分率が、前述の範囲であると、皮脂汚れの架橋点となる金属イオンとの吸着が促進され、皮脂汚れ洗浄性能が向上する観点から好ましい。
【0047】
本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体は、前述したように、ポリアルキレンイミンにアルキレンオキシドが付加して得られるものが好ましく、この場合、ポリアルキレンイミンの平均分子量としては、200~20000であることが好ましい。より好ましくは、300以上、10000以下であり、更に好ましくは、400以上、5000以下であり、特に好ましくは、500以上、2000以下である。また、オキシアルキレン基の平均付加モル数としては、2以上、200以下が好ましい。より好ましくは、3以上、100以下であり、更に好ましくは、4以上、80以下であり、特に好ましくは、5以上、50以下である。
前記アルキレンオキシド単位としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが好ましい。より好ましくは、エチレンオキシドである。
【0048】
本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体の好ましい形態を一般式で表すと、下記の通りとなる。
【0049】
【化9】
上記式中、EOは、エチレンオキシドを表す。Qは、同一若しくは異なって、水素原子、又は、前記一般式(3)で表される構造単位による末端構造を表す。
aは、1以上の整数である。なお、式中の点線の記号は、重合鎖が同様に続いていくことを表している。
前記一般式で表される共重合体は、PEI主鎖のアミン窒素原子にポリエチレンオキシドが付加して形成されるポリオキシエチレン基:-(CH
2CH
2O)aHを複数有し、そのポリオキシエチレン基の末端の水酸基100モル%に対して、前記一般式(1)で表される置換基の割合が5モル%以上、100モル%以下である末端構造を有する共重合体である。
【0050】
〔ポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体の製造方法〕
本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体の製造方法は、工程A)ポリアルキレンイミンに由来する構造単位に、1)アルキレンオキシドを付加反応させる工程、及び、2)硫酸化剤としてスルファミン酸(塩)を用いてエステル化する工程、工程B)アルキレンイミンに由来する構造単位に、1)アルキレンオキシドを付加反応させる工程、及び、2)硫酸化剤として硫酸を用いてエステル化する工程、工程C)アルキレンイミンに由来する構造単位に、1)アルキレンオキシドを付加反応させる工程、及び、2)硫酸化剤としてSO3またはSO3・ルイス塩基錯体を用いてエステル化する工程、を含んでいれば特に限定はない。
【0051】
以下、前記工程A)について、本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体の製造方法に関する説明する。
【0052】
前記スルファミン酸(塩)をエステル化する工程を行う反応条件は、反応温度としては、0~200℃で行うことが好ましい。より好ましくは、30℃以上、150℃以下であり、更に好ましくは、40℃以上、130℃以下であり、特に好ましくは、50℃以上、120℃以下であり、最も好ましくは、60℃以上、110℃以下である。
また、反応時間としては、1~100時間が好ましい。より好ましくは、2時間以上、50時間以下であり、更に好ましくは、3時間以上、30時間以下であり、特に好ましくは、4時間以上、25時間以下である。
【0053】
前記スルファミン酸(塩)をエステル化する工程において、反応に用いるポリアルキルイミンアルキレンオキシドと、ポリアルキルイミンアルキレンオキシドと反応させる原料とのモル比としては、(ポリアルキルイミンアルキレンオキシド/ポリアルキルイミンアルキレンオキシドと反応させる原料)=50/1~1/50であることが好ましい。前記モル比としては、より好ましくは、40/1~1/40であり、更に好ましくは、30/1~1/30であり、特に好ましくは、20/1~1/20であり、最も好ましくは、15/1~1/15である。
【0054】
前記スルファミン酸(塩)をエステル化する工程は、空気雰囲気下で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気下で行ってもよいが、窒素雰囲気下で行うことがより好ましい。
反応器にポリアルキレンイミンアルキレンオキシドを仕込んでおいて、ポリアルキルイミンアルキレンオキシドと反応させる原料を一括添加してもよいし、逐時添加してもよいが、逐時添加が好ましい。また、反応時に、溶媒を用いないことが好ましいが、溶媒を用いても反応を行うことができる。
また、スルファミン酸は、スルファミン酸の塩を用いてもよいし、スルファミン酸のエステル化反応が終了してから、中和反応を行ってもよい。
スルファミン酸の塩については、前記一般式(1)のMと同じであり、好ましい形態も同じである。
【0055】
〔ポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体の用途〕
本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体は、洗剤用ビルダー、洗剤、水処理剤、分散剤、繊維処理剤、スケール防止剤(スケール抑制剤)、セメント添加剤、金属イオン封止剤、増粘剤、各種バインダー等に好適に用いることができる。中でも、洗剤用ビルダー、洗剤、水処理剤、分散剤に好適に用いることができる。
【0056】
本開示は更に、本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体、又は、本開示の製造方法により製造されてなるポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体を必須成分とする洗剤用ビルダー、洗剤、水処理剤又は分散剤でもある。
前記洗剤用ビルダーは、洗浄中の衣類等に汚れが再付着するのを防止するための作用を発揮するものである。本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体が汚れの再付着を防止する場合、ポリアルキレンオキシド鎖の立体構造に起因する作用と共に、疎水性の末端構造を有するときには汚れとの親和性を低下させる作用、又は、親水性の末端構造を有するときには、汚れの分散作用が充分に発揮されるようにすることが好ましい。前記洗剤用ビルダーは、界面活性剤との相溶性に優れ、得られる洗剤が高濃縮の液体洗剤となる点から、液体洗剤用ビルダーとして好適に用いることができる。界面活性剤との相溶性に優れることにより、液体洗剤に用いた場合の透明性が良好となり、濁りが原因として起こる液体洗剤の分離の問題を防ぐことができる。また、相溶性が優れることにより、高濃縮の液体洗剤とすることができ、液体洗剤の洗浄能力を向上することができる。
前記洗剤ビルダーは、再汚染防止能に優れ、更に、長期間保存した場合の性能低下や低温で保持した場合の不純物析出等が生じにくい極めて高品質剤性能で安定性に優れた洗剤ビルダーとすることができる。
【0057】
前記洗剤ビルダーにおけるポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体以外の他の組成成分や配合比率としては、従来公知の洗剤ビルダーに用いることができる各種成分、及び、その配合比率に基づき、本発明の作用効果を損なわない範囲で適宜用いることができる。
【0058】
前記洗剤は、粉末洗剤であってもよいし、液体洗剤であってもよいが、ポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体が液体洗剤との溶解性に優れる点から、液体洗剤が好ましい。上記洗剤には、ポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体以外に、通常、洗剤に用いられる添加剤を用いることができる。上記添加剤としては、例えば、界面活性剤、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン-チオ尿素等のよごれ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が好適である。また、粉末洗剤の場合にはゼオライトを配合することが好ましい。
前記洗剤に用いる場合、ポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体は、洗剤100質量%に対して0.1~20質量%添加することが好ましい。0.1質量%未満であると、洗剤の洗浄力が不充分になるおそれがあり、20質量%を超えると、不経済になるおそれがある。
【0059】
前記洗剤におけるポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体の配合形態は、液状、固形状等のいずれであってもよく、洗剤の販売時の形態(例えば、液状物又は固形物)に応じて決定することができる。重合後の水溶液の形態で配合してもよいし、水溶液の水分をある程度減少させて濃縮した状態で配合してもよいし、乾燥固化した状態で配合してもよい。
なお、上記洗剤は、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含む。
【0060】
前記界面活性剤は、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種であり、これらの界面活性剤は1種又は2種以上を使用することができる。2種以上使用する場合、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とを合わせた使用量は、全界面活性剤100質量%に対して50質量%以上が好ましい。より好ましくは、60質量%以上であり、更に好ましくは、70質%以上であり、特に好ましくは、80質量%以上である。
【0061】
前記アニオン系界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸又はエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステル又はその塩、アルケニルリン酸エステル又はその塩等が好適である。
前記アニオン系界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0062】
前記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が好適である。上記ノニオン系界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
前記カチオン系界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が好適である。
前記両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が好適である。
前記カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0063】
前記界面活性剤の配合割合は、通常、液体洗剤100質量%に対して10~60質量%であることが好ましい。より好ましくは、15質量%以上、50質量%以下であり、更に好ましくは、20質量%以上、45質量%以下であり、特に好ましくは、25質量%以上、40質量%以下である。界面活性剤の配合割合が10質量%未満であると、充分な洗浄力を発揮できなくなるおそれがあり、60質量%を超えると、経済性が低下するおそれがある。
前記液体洗剤用ビルダーの配合割合は、通常、液体洗剤100質量%に対して0.1~20質量%が好ましい。より好ましくは、0.2質量%以上、15質量%以下であり、より好ましくは、0.3質量%以上、10質量%以下であり、更に好ましくは、0.4質量%以上、8質量%以下であり、特に好ましくは、0.5質量%以上、5質量%以下である。
液体洗剤用ビルダーの配合割合が0.1質量%未満であると、充分な洗剤性能を発揮できなくなるおそれがあり、20質量%を超えると、経済性が低下するおそれがある。
【0064】
前記液体洗剤に含まれる水分量は、通常、液体洗剤100質量%に対して0.1~75質量%が好ましい。より好ましくは、0.2質量%以上、70質量%以下であり、更に好ましくは、0.5質量%以上、65質量%以下であり、特に好ましくは、0.7質量%以上、60質量%以下であり、より特に好ましくは、1質量%以上、55質量%以下であり、最も好ましくは、1.5質量%以上、50質量%以下である。
【0065】
前記液体洗剤は、カオリン濁度が200mg/L以下であることが好ましい。より好ましくは、150mg/L以下であり、更に好ましくは、120mg/L以下であり、特に好ましくは、100mg/L以下であり、最も好ましくは、50mg/L以下である。
また、本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体を液体洗剤に添加する場合としない場合とでのカオリン濁度の変化(差)は、500mg/L以下が好ましい。より好ましくは、400mg/L以下であり、更に好ましくは、300mg/L以下であり、特に好ましくは、200mg/L以下であり、最も好ましくは、100mg/L以下である。カオリン濁度は、例えば、下記の方法により測定することができる。
(カオリン濁度の測定方法)
厚さ10mmの50mm角セルに均一に攪拌した試料(液体洗剤)を仕込み、気泡を除いた後、日本電色株式会社製NDH2000(商品名、濁度計)を用いて25℃でのTurbidity(カオリン濁度:mg/L)を測定する。
【0066】
本開示の洗剤に配合することができる酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が好適である。中でも、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼ及びアルカリセルラーゼが好ましい。
前記酵素の添加量は、洗剤100質量%に対して5質量%以下であることが好ましい。5質量%を超えると、洗浄力の向上が見られなくなり、経済性が低下するおそれがある。
【0067】
前記アルカリビルダーとしては、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩等が好適である。上記キレートビルダーとしては、ジグリコール酸、オキシカルボン酸塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、クエン酸等が好適である。水溶性ポリカルボン酸系ポリマーを用いてもよい。
【0068】
前記洗剤は、分散能に優れ、更に、長期間保存した場合の性能低下や低温で保持した場合の不純物析出等が生じにくい極めて高品質剤性能で安定性に優れた洗剤とすることができる。
【0069】
前記水処理剤は、例えば、冷却水系、ボイラー水系等の水系に添加されることになる。この場合、本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体をそのまま添加してもよく、本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体以外のその他の成分を含むものを添加してもよい。
【0070】
前記水処理剤における本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体以外の他の組成成分や配合比率としては、従来公知の水処理剤に用いることができる各種成分、及び、その配合比率に基づき、本発明の作用効果を損なわない範囲で適宜用いることができる。
【0071】
前記分散剤は、水系の分散剤であればよく、例えば、顔料分散剤、セメント分散剤、炭酸カルシウムの分散剤、カオリンの分散剤等が好適である。
前記分散剤は、ポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体が本来有する極めて優れた分散能を発現することができる。また、長期間保存しても性能低下や低温保持時の不純物析出なども生じることのない極めて高品質高性能で安定性に優れた分散剤とすることができる。
【0072】
上記分散剤におけるポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体以外の他の組成成
分や配合比率としては、従来公知の分散剤に用いることができる各種成分、及び、その配
合比率に基づき、本発明の作用効果を損なわない範囲で適宜用いることができる。
【0073】
本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体は、このように、洗剤用ビルダー、洗剤、水処理剤又は分散剤の用途において好適なものであるが、その他の用途においても、本開示のポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体が用いられる用途において、該共重合体が発揮する各種の特性を向上して好適に用いることができるものである。
【実施例0074】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0075】
(表面張力測定)
0.1%のポリマー水溶液を調製し、高機能表面張力計DY-500(協和界面科学株式会社製)を用いて、25℃の静的表面張力を測定した。測定手法には、Wilhelmy法(プレート法)を用いた。
【0076】
(皮脂洗浄力評価)
<硬度水母液の調製>
塩化カルシウム2水和物59.0g、塩化マグネシウム6水和物27.2gに純水を加えて1000.0gとし、硬水母液を調製した。
【0077】
<活性剤水溶液の調製>
(配合A)
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(花王製ネオぺレックスG-15(有効成分16.5%)、以下LASともいう)45.5gに純水204.5gを加えて、3%活性剤水溶液(A)を得た。
(配合B)
LAS(花王製ネオぺレックスG-15(有効成分16.5%))を34.1g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王製エマルゲン108(有効成分100%)、以下PAEともいう)を1.9gに純水214.0gを加えて、3%活性剤水溶液(B)を得た。
【0078】
<洗浄力評価手順>
1)5cm×5cmの人工汚染布PC-S-94(CFT社製)について、反射率計(分光式色差計、日本電色工業株式会社製、製品名:SE6000)を用い、反射率(Z値)を測定した。
2)Tergot-o-meter(大栄科学社製、製品名:TM-4)内の各ポットに純水865.2g、硬度水母液4.5gを加え、温度を25℃に調温し、1分間攪拌した。
3)各配合の3%活性剤水溶液7.5g、pH=7.5に調整したポリマー0.1%水溶液22.5gをそれぞれ加え、1分間攪拌した。
4)PC-S-94を5枚、浴比調整のための綿布Test fabrics社製5cm×5cmのStyle#460)をPC-S-94と合わせて30.0gとなるように各ポットにそれぞれ入れ、120rpmで10分間攪拌した。
5)各ポットから汚染布を取り出し、手で水を切ったのち、脱水機で1分間脱水した。
6)硬度水母液4.5g、純水895.5gを各ポットに入れ、調温し、120rpmで3分間攪拌した。
7)6)の操作をもう一度繰り返した。
8)各ポットから汚染布を取り出し、手で水を切り、室温で乾燥させた後、上記分光色差計にて再度、汚染布の反射率(Z値)を反射率計(分光式色差計、日本電色工業株式会社製、製品名:SE6000)を用いて測定し、下記式により洗浄率を求めた。
Z
before, Z
afterはそれぞれ洗浄前後のZ値を表す。
洗浄率の値が大きいほど、洗浄力が良好であることを意味する。
【0079】
(合成例)
<重合体(1)>
重合体(1)として、ポリエチレンイミン(PEI)(平均分子量600、日本触媒社製)に、窒素原子1モル当り20モルに相当するエチレンオキサイドをエトキシ化して得られたポリエチレンイミンエチレンオキシド共重合体を用いた。
【0080】
<実施例1>
温度計、撹拌機を備えたガラス製の反応器に重合体(1)を55.0g仕込み、窒素流量100ml/minのフローの下、120℃で1時間攪拌することで、系内の水分を除去した。その後、窒素流量を50ml/min に変更し、反応器内の温度を95℃に維持しながら、スルファミン酸1.16gを加え、19時間反応させ、水溶性重合体(1)を得た。
【0081】
<実施例2>
温度計、撹拌機を備えたガラス製の反応器に重合体(1)を55.0g仕込み、窒素流量100ml/minのフローの下、120℃で1時間攪拌することで、系内の水分を除去した。その後、窒素流量を50ml/min に変更し、反応器内の温度を95℃に維持しながら、スルファミン酸2.31gを加え、19時間反応させ、水溶性重合体(2)を得た。
【0082】
<実施例3>
温度計、撹拌機を備えたガラス製の反応器に重合体(1)を60.0g仕込み、窒素流量100ml/minのフローの下、120℃で1時間攪拌することで、系内の水分を除去した。その後、窒素流量を50ml/min に変更し、反応器内の温度を95℃に維持しながら、スルファミン酸3.79gを加え33時間反応させ、水溶性重合体(3)を得た。
【0083】
<実施例4>
温度計、撹拌機を備えたガラス製の反応器に重合体(1)を60.0g仕込み、窒素流量100ml/minのフローの下、120℃で1時間攪拌することで、系内の水分を除去した。その後、窒素流量を50ml/min に変更し、反応器内の温度を95℃に維持しながら、スルファミン酸5.05gを加え35時間反応させ、水溶性重合体(4)を得た。
【0084】
【0085】
【表2】
表1は、0.1%のポリマー水溶液の表面張力測定の結果を示す。
表2は、各配合における洗浄率の結果を示す。