(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080395
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】満充電容量推定方法、および、制御装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/378 20190101AFI20240606BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20240606BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240606BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240606BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20240606BHJP
G01R 31/387 20190101ALI20240606BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20240606BHJP
【FI】
G01R31/378
H02J7/04 A
H01M10/48 P
H01M10/44 Q
G01R31/385
G01R31/387
G01R31/382
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193547
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立石 満
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 元
(72)【発明者】
【氏名】竹岡 駿
(72)【発明者】
【氏名】竹下 慎也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 貴
(72)【発明者】
【氏名】松田 千裕
(72)【発明者】
【氏名】河合 智之
(72)【発明者】
【氏名】荒川 俊也
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA41
2G216BA61
2G216CA02
2G216CA03
2G216CB17
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA02
5G503CA03
5G503EA02
5G503HA03
5H030AA01
5H030AS20
5H030BB02
5H030BB03
5H030FF41
(57)【要約】
【課題】バイポーラ型のLFP電池において、単位セルの満充電容量を効率的に求める。
【解決手段】ΔQ算出部81は、正極活物質層1としてリン酸鉄リチウムを用いた単位セル101~10Mを積層したバイポーラ型LFP電池において、単位セル10N(Nは、1~Mの整数)の充電中に、単位セル10Nの電圧が第1電圧Vb1から第2電圧Vb2まで上昇したときの容量増加量ΔQを算出する。満充電容量推定部83は、満充電容量Cfマップを用いて、容量増加量ΔQをパラメータとして、単位セル10Nの満充電容量Cfを求める。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質としてリン酸鉄リチウムを用いた複数の単位セルが積層方向に積層されたバイポーラ型電池における、満充電容量推定方法であって、
前記バイポーラ型電池の充電中に、正極電位の上昇に起因して前記単位セルの電圧が上昇する所定領域において、前記単位セルの電圧が第1電圧から第2電圧まで上昇したときの容量増加量を用いて、前記単位セルの満充電容量を求める、満充電容量推定方法。
【請求項2】
前記単位セルの電圧の上昇量に対する容量の増加量の割合をdQ/dVとしたとき、
前記所定領域は、SOCの0%から100%において、dQ/dV-電圧の曲線における第2極小値の電圧以上の領域である、請求項1に記載の満充電容量推定方法。
【請求項3】
前記充電は、0.1C以下のレートで行う、請求項2に記載の満充電容量推定方法。
【請求項4】
前記充電は、CC充電またはCCCV充電である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の満充電容量推定方法。
【請求項5】
正極活物質としてリン酸鉄リチウムを用いた複数の単位セルが積層方向に積層されたバイポーラ型電池の制御装置であって、
前記制御装置は、
請求項1または請求項2に記載の満充電容量推定方法によって、各単位セルの満充電容量を求める容量推定部と、
前記容量推定部で求めた各単位セルの満充電容量を用いて、前記単位セルを均等化する均等化制御部と、を備える制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、満充電容量推定方法、および、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2021-58071号公報(特許文献1)には、電池(二次電池)の充電終了後における電池電圧を用いて、定電流定電圧充電(CCCV(Constant Current Constant Voltage)充電)が実行されたことを判定し、電池の充電率(SOC(State Of Charge))を100%に設定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内部抵抗の低減や出力密度の向上等のため、バイポーラ型電池が提案されている。バイポーラ型電池は、たとえば、集電体と、集電体の一方の面に形成された正極と、集電体の他方の面に形成された負極とから構成されたバイポーラ電極を、セパレータを介して積層することによって形成されている。正極、セパレータ、および、負極からなる単位セル(単電池)において、製造時のバラツキ等に起因して単位セルの目付量(たとえば、正極、負極の密度)が異なる場合があり、単位セルの容量がばらつくことがある。
【0005】
バイポーラ型電池では、単位セルが積層され電気的に直列に接続されている。このため、単位セルが過充電にならないよう、容量(満充電容量)が小さい単位セルが満充電になったときに、バイポーラ型電池の充電を終了すると、容量の大きな単位セルは満充電にならない。正極活物質としてリン酸鉄リチウムを使用した、リン酸鉄リチウムイオン電池(LFP電池)では、OCV(Open Circuit Voltage)-SOC特性が、広い範囲でフラットな領域(電圧平坦領域)を示すことが知られている。
図6は、LFP電池の特性を説明する図である。
図6(A)は、LFP電池のOCV-SOC特性であり、SOCの変化に伴うOCVの変化が微小な領域(電圧平坦領域)が広く存在している。
【0006】
図6(B)は、容量の異なるLFP電池(単位セル)を満充電まで充電した場合の特性を示している。
図6(B)において、横軸は、容量[Ah]であり、縦軸はLFP電池(単位セル)の電圧である。なお、充電方法は、CC(Constant Current)充電、あるいは、CCCV充電である。
図6(B)において、破線は、満充電容量がC1の単位セルの特性であり、実線は、満充電容量がC2(>C1)の単位セルの特性を示している。バイポーラ型電池では、単位セルが過充電にならないよう、容量(満充電容量)がC1の単位セルが満充電になったときに充電を終了する。すると、容量がC2の単位セルの充電も終了するので、容量がC2の単位セルにおいて、一点鎖線で囲んだ範囲が未使用域になり、容量がC2の単位セルの電圧は、二点鎖線で示した異物溶解電位まで正極電位が上昇しない。特に、LFP電池では、三元系リチウムイオン電池に比較して、電池電圧が低いため、容量がC2の単位セルにおいて、異物溶解電位まで正極電位が上昇しないことが顕著に現れる。このため、容量がC2の単位セルにおいて、異物が溶解せず潜在的な短絡不良が生じる懸念がある。この潜在的な短絡不良の懸念を解消するためには、たとえば、すべての単位セルを満充電にする(異物溶解電位まで電圧を上昇させる)等の処理を行うことが考えられるが、そのためには、単位セルの容量(満充電容量)を効率的に求めることが望まれる。
【0007】
本開示の目的は、バイポーラ型のLFP電池において、単位セルの満充電容量を効率的に求めることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本開示の満充電容量推定方法は、正極活物質としてリン酸鉄リチウムを用いた複数の単位セルが積層方向に積層されたバイポーラ型電池における、満充電容量推定方法である。満充電容量推定方法は、充電中に、正極電位の上昇に起因して単位セルの電圧が上昇する所定領域において、単位セルの電圧が、第1電圧から第2電圧まで上昇したときの容量増加量を用いて、単位セルの満充電容量を求める。
【0009】
この方法によれば、正極活物質としてリン酸鉄リチウムを用いた複数の単位セルが積層方向に積層されたバイポーラ型電池(バイポーラ型のLFP電池)の充電中に、単位セルの電圧が第1電圧から第2電圧まで上昇したときの容量増加量を用いて、単位セルの満充電容量を求める。第1電圧から第2電圧における容量増加量は、充電中に、正極電位の上昇に起因して単位セルの電圧が上昇する所定領域におけるものである。正極活物質としてリン酸鉄リチウムを用いた単位セルにおいて、所定領域における容量増加量と満充電容量は、正の線形相関の関係にある。したがって、第2電圧を満充電時の電圧未満の値とすることにより、単位セルを満充電まで充電を行うことなく、所定領域における容量増加量を求めることにより、比較的短時間で満充電容量を推定できるので、効率的に単位セルの満充電容量を求めることができる。
【0010】
(2)上記(1)の満充電容量推定方法において、単位セルの電圧の上昇量に対する容量の増加量の割合をdQ/dVとしたとき、所定領域は、SOCの0%から100%において、dQ/dV-電圧の曲線における第2極小値の電圧以上の領域であってよい。
【0011】
dQ/dV-電圧の曲線における第2極小値とは、SOCが0%から100%へ増加する際に、dQ/dV-電圧曲線における2番目の極小値である。充電中に、正極電位の上昇に起因して単位セルの電圧が上昇する電圧値は、dQ/dV-電圧の曲線における第2極小値の電圧値と一致する。したがって、この方法によれば、単位セルの正極電位を測定することなく、所定領域を設定することができる。
【0012】
充電は、0.1C以下のレートで行うことが好ましく、また、CC充電あるいはCCCV充電であることが好ましい。
【0013】
0.1Cより大きなレートで充電を行うと、所定領域における容量増加量と満充電容量とが相関しない場合がある。このため、0.1C以下のレートで充電を行うことが好ましい。なお、CCCV充電を行うことにより、所定領域(dQ/dV-電圧曲線における第2極小値より電圧が高い領域)での充電を確実に実行することが可能になる。
【0014】
本開示の制御装置は、正極活物質としてリン酸鉄リチウムを用いた複数の単位セルが積層方向に積層されたバイポーラ型電池の制御装置である。制御装置は、上記(1)または上記(2)の満充電容量推定方法によって、各単位セルの満充電容量を求める容量推定部と、容量推定部で求めた各単位セルの満充電容量を用いて、単位セルを均等化する均等化制御部と、を備える。
【0015】
この構成によれば、制御装置の容量推定部で、所定領域における容量増加量を求めることにより、単位セルを満充電まで充電を行うことなく、比較的短時間で満充電容量を推定し、この満充電容量を用いて、均等化制御部で、単位セルの蓄電量あるいはSOCを均等化することができる。したがって、バイポーラ型のLFP電池において、単位セルの満充電容量を効率的に求め、各単位セルの蓄電量あるいはSOCの均等化を図ることが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、バイポーラ型のLFP電池において、単位セルの満充電容量を効率的に求めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施の形態に係る、バイポーラ型のLFP電池および容量検査システムの概略構成を示す図である。
【
図2】(A)、(B)および(C)は、単位セルの充電時における特性を示したものである。
【
図3】(A)、(B)および(C)は、単位セルの満充電容量と容量増加量との関係を示した図である。
【
図4】容量検査システムによって行われる、満充電容量推定方法の処理ステップを示すフローチャートである。
【
図5】均等化回路を備えたバイポーラ型LFP電池の制御装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0019】
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態に係る、バイポーラ型LFP電池10および容量検査システム500の概略構成を示す図である。バイポーラ型LFP電池10は、単位セル101,102~10M(Mは、単位セルの数)を枠部材(シール部材)5とともに積層することによって、形成されている。単位セル101~10Mは、正極活物質層(正極)1、セパレータ2、および、負極活物質層(負極)3から構成される。たとえば、集電体4と、集電体4の一方の面(
図1では下面)に形成された正極活物質層1と、集電体4の他方の面(
図1では上面)に形成された負極活物質層3とから構成されたバイポーラ電極6を、セパレータ2を介して積層することによって形成されている。積層される単位セル101~10Mの数は任意であってよく、たとえば、20であってよい。なお、積層方向の一端(
図1では上端)に配置された集電体4は、正極端子板41を兼ねており、他端(
図1では下端)に配置された集電体4は、負極端子板42を兼ねる。
【0020】
本実施の形態において、単位セル101~10Mは、リン酸鉄リチウムイオン電池(LFP電池)であり、正極活物質層1は、正極活物質としてリン酸鉄リチウム(LiFePO4)を含んでおり、負極活物質層3は、負極活物質として黒鉛粒子を含んでいる。そして、非水電解液をセパレータ2に含浸する等して、非水電解液が封入され、バイポーラ型LFP電池10が形成される。
【0021】
容量検査システム500は、充電器30、電流センサ40、電圧センサ50、容量測定装置80を含む。充電器30は、CC充電またはCCCV充電によって、バイポーラ型LFP電池10の充電を行う。電流センサ40は、充電電流[A]を検出する。電圧センサ50は、単位セル10N(Nは、1~Mの整数)の電圧Vb[V]を検出する。
【0022】
容量測定装置80は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、バス等からなるコンピュータと、ディスプレイとから構成される。容量測定装置80は、機能ブロックとして、容量増加量算出部81、記憶部82、満充電容量推定部83、および、表示部84を含む。
【0023】
図2は、単位セルの充電時における特性を示したものである。充電方式は、CCCV充電であり、終止電圧(CC充電からCV充電への切替電圧)を3.75Vに設定し、充電終了条件(充電終了時の電流)を0.01Cとして充電を行った場合の特性を示している。
図2(A)は、単位セルの電圧と正極電位の推移を示している。
図2(A)に示すように、単位セルの電圧が3.38[V]を超えると、正極電位の上昇とともに単位セルの電圧が上昇している。
図2(B)は、0.05CのCレートで充電を行ったときにおける、単位セルの電圧とdQ/dVの関係を示している。dQ/dVは、単位セルの電圧の上昇量に対する、単位セルの容量[Ah]の増加量の割合である。
図2(B)に破線で示すように、dQ/dV-電圧曲線には、単位セル10Nの電圧が上昇する(単位セルのSOCが0%から100%へ増加する)際に、第1極小値と第2極小値が現れる。dQ/dV-電圧曲線の第2極小値は、単位セルのSOCが0%から100%に増加する際に、2番目に現れる極小値である。
図2(B)に示すように、第2極小値における電圧は、3.38[V]であり、
図2(A)において、正極電位の上昇とともに単位セル10Nの電圧が上昇し始める電圧と同じ値である。
図2(C)は、0.1CのCレートで充電を行ったときにおける、単位セルの電圧とdQ/dVの関係を示している。
図2(C)に破線で示すように、dQ/dV-電圧曲線の第2極小値における電圧は、3.38[V]であり、
図2(A)において、正極電位の上昇とともに単位セルの電圧が上昇し始める電圧と同じ値である。
【0024】
図3は、単位セルの満充電容量と容量増加量との関係を示した図である。容量増加量ΔQは、充電によって、単位セルの電圧が第1電圧Vb1から第2電圧Vb2まで上昇したときにおける、単位セルの容量増加量である。たとえば、第1電圧Vb1における単位セルの容量がQ1[Ah]であり、第2電圧Vb2における容量がQ2[Ah」である場合、容量増加量ΔQは、「ΔQ=Q2-Q1」として表される。なお、
図3に示す関係は、終止電圧を3.75V、充電終了条件を0.01Cに設定し、0.05CのレートでCCCV充電を行った場合を示している。
【0025】
図3(A)は、単位セルのSOCが0%の状態から、単位セルの電圧が3.50[V]まで上昇したときの容量増加量ΔQであるΔQ0と、当該単位セルの満充電容量とをプロットしたものである。製造時のバラツキ等に起因して単位セルの目付量が異なるため、
図3(A)に示すように、満充電容量にバラツキが生じている。また、満充電容量と容量増加量ΔQ0の関係に相関は見られない。
【0026】
図3(B)は、単位セルの電圧が3.38[V]から3.50[V]まで上昇したときの容量増加量ΔQであるΔQ1と、当該単位セルの満充電容量とをプロットしたものである。製造時のバラツキ等に起因して単位セルの目付量が異なるため、
図3(B)に示すように、満充電容量にバラツキが生じている。しかし、満充電容量と容量増加量ΔQ1との間には、正の線形相関の関係がある。
【0027】
図3(C)は、単位セルの電圧が3.38[V]から3.60[V]まで上昇したときの容量増加量ΔQであるΔQ2と、当該単位セルの満充電容量とをプロットしたものである。製造時のバラツキ等に起因して単位セルの目付量が異なるため、
図3(C)に示すように、満充電容量にバラツキが生じている。しかし、満充電容量と容量増加量ΔQ2との間には、正の線形相関の関係がある。
【0028】
図2および
図3から、バイポーラ型LFP電池10の単位セル10Nにおいて、充電中に、正極電位の上昇に起因して単位セル10Nの電圧が上昇する所定領域(3.38[V]以上の領域)おける容量増加量ΔQは、単位セル10Nの満充電容量と相関している。また、所定領域は、dQ/dV-電圧曲線の第2極小値より電圧が高い領域である。本実施の形態では、所定領域における容量増加量ΔQと満充電容量の相関を利用して、単位セル10Nの満充電容量を推定する。
【0029】
図1を参照して、容量測定装置80の容量増加量算出部(ΔQ算出部)81は、充電器30でCC充電あるいはCCCV充電が開始されると、所定領域における単位セル10Nの容量増加量ΔQを算出する。記憶部82には、満充電容量Cf算出マップが格納されている。この満充電容量Cf算出マップは、容量増加量ΔQと満充電容量Cfの相関に基づいて、予め実験等によって作成され、記憶部82に格納される。満充電容量推定部83は、ΔQ算出部81によって算出された容量増加量ΔQをパラメータとして、満充電容量Cf算出マップから、満充電容量Cfを算出する。算出された満充電容量Cfは、表示部84に表示される。
【0030】
図4は、容量検査システム500によって行われる、満充電容量推定方法の処理ステップを示すフローチャートである。まず、ステップ(以下、ステップを「S」と略す)10において、充電器30によって、単位セル10N(バイポーラ型LFP電池10)のCC充電またはCCCV充電が開始される。続くS11において、ΔQ算出部81は、電圧センサ50で検出した単位セル10Nの電圧Vbが、所定値α以上であるか否かを判定する。所定値αは、dQ/dV-電圧曲線において第2極小値に相当する電圧であり、
図2および
図3で例示した単位セルでは、3.38[V]である。充電が進行し、電圧Vbが所定値α以上になると、肯定判定されてS12へ進む。
【0031】
S12では、ΔQ算出部81は、電流センサ40および電圧センサ50の検出値に基づいて、単位セル10Nの電圧Vbが、第1電圧Vb1から第2電圧Vb2まで上昇したときの容量増加量ΔQを算出する。たとえば、Vb1は3.38[V]であってよく、Vb2は3.50[V]であってよい。続くS13において、満充電容量推定部83は、S12で算出した容量増加量ΔQから、記憶部82に格納された満充電容量Cf算出マップを用いて、単位セル10Nの満充電容量Cfを算出する。S11~S13の処理が、バイポーラ型LFP電池10に含まれるすべての単位セル10Nに対して行われることにより、すべての単位セル10Nの満充電容量Cfが算出される。
【0032】
この実施の形態によれば、CC充電あるいはCCCV充電を開始したあと、単位セル10Nの電圧Vbが所定値α(dQ/dV-電圧曲線において第2極小値に相当する電圧)以上の領域において、第1電圧Vb1から第2電圧Vb2まで上昇したときの容量増加量ΔQを算出する。そして、容量増加量ΔQをパラメータとして、満充電容量Cf算出マップから、単位セル10Nの満充電容量Cfを求める。したがって、第2電圧Vb2は単位セル10Nの満充電時の電圧未満の値であるので、単位セル10Nを満充電まで充電を行うことなく、所定領域(dQ/dV-電圧曲線において第2極小値に相当する電圧以上の領域)における容量増加量ΔQを求めることにより、比較的短時間で満充電容量Cfを推定できるので、効率的に単位セル10Nの満充電容量Cfを求めることができる。
【0033】
[実施の形態2]
図5は、均等化回路を備えたバイポーラ型LFP電池10の制御装置の概略構成を示す図である。
図5において、電圧検出回路20は、複数の電圧検出ラインL1、分岐ラインL11、および分岐ラインL12を介して、単位セル101~10Mの電圧を検出する。電圧検出ラインL1には、回路保護等のためヒューズFおよびチップビーズCbが設けられ、単位セル101~10Mと並列に設けたツェナーダイオードDによって、電圧検出回路20を過電圧から保護している。
【0034】
電圧検出ラインL1は、ツェナーダイオードDより電圧検出部VBc側において、分岐ラインL11と分岐ラインL12に分岐する。分岐ラインL11は、スイッチSoを介して電圧検出部VBcに接続され、分岐ラインL12は、スイッチShを介して電圧検出部VBcに接続される。スイッチSoおよびスイッチShは、たとえば、フォトMOS(Metal Oxide Semiconductor)リレーを用いることができる。
【0035】
分岐ラインL12には、抵抗R1が設けられている。各単位セルの正極に接続された分岐ラインL12と、負極に接続された分岐ラインL11との間に、キャパシタ(フライングキャパシタ)Cが設けられている。これにより、電圧検出部VBcは、単位セル101~10Mに対応したスイッチShおよびSoを順次ONすることにより、フライングキャパシタ方式によって、電圧検出回路20を用いて、各単位セル101~10Mの電圧Vbを検出することができる。
【0036】
均等化回路EQは、分岐ラインL11に設けた放電用抵抗Rdと、隣接する分岐ラインL11の間を導通(閉成)/遮断(開放)するスイッチS1から構成される。スイッチS1は、制御装置200からの制御信号を受けることにより、ON(閉成)およびOFF(開放)の間で切り替わる。たとえば、単位セル102の蓄電量[Ah]を減少させる場合には、単位セル102に対応するスイッチS1をON(閉成)する。すると、一点鎖線の矢印で示すように、単位セル102から放電された電流が放電用抵抗Rdによって消費されて、単位セル102の蓄電量が低下する。
【0037】
制御装置200は、CPU、メモリ、バス等からなるコンピュータである。制御装置200の容量推定部201は、容量測定装置80と同様の機能を有する。容量推定部201は、充電器30aによってCC充電またはCCCV充電が行われているとき、上記実施の形態1と同様の満充電容量推定方法を用いて、単位セル101~10Mの満充電容量Cfを算出する。
【0038】
均等化制御部202は、容量推定部201で求めた単位セル101~10Mの満充電容量Cfのうち、最も小さい満充電容量Cfを基準容量Cfmとして設定する。そして、バイポーラ型LFP電池10の充電が終了すると、基準容量Cfmより大きな満充電容量Cfを有する単位セルに対応するスイッチS1を順次ONして、放電を行う。単位セルからの放電量は、基準容量Cfmと満充電容量Cfとの偏差に比例する値として、予め実験等で設定してよい。これにより、単位セル101~10Mの蓄電量[Ah]を均等化できる。
【0039】
また、均等化制御部202によって、単位セル101のSOCを均等化するように、均等化回路EQを制御する。バイポーラ型LFP電池10の充電の終了時、単位セル101~10MのSOCが不均一なとき、満充電容量Cfが小さいほどSOCの値が大きくなる。容量推定部201で求めた単位セル101~10Mの満充電容量Cfのうち、最も大きい満充電容量Cfを基準容量Cfxとして設定する。そして、バイポーラ型LFP電池10の充電が終了すると、基準容量Cfxより小さな満充電容量Cfを有する単位セルに対応するスイッチS1を順次ONして、放電を行う。単位セルからの放電量は、基準容量Cfxと満充電容量Cfとの偏差に比例する値として、予め実験等で設定してよい。これにより、単位セル101~10MのSOCを均等化できる。
【0040】
この実施の形態によれば、制御装置200の容量推定部201で、所定領域における容量増加量ΔQを求めることにより、単位セル10Nを満充電まで充電を行うことなく、比較的短時間で満充電容量Cfを推定し、この満充電容量Cfを用いて、均等化制御部0202で、単位セル102の蓄電量あるいはSOCを均等化することができる。したがって、バイポーラ型のLFP電池10において、単位セル10Nの満充電容量Cfを効率的に求め、単位セル10Nの蓄電量あるいはSOCの均等化を図ることが可能になる。
【0041】
なお、
図5において、破線で図示しているように、充電器30aから供給される充電電力(充電電流)を、単位セル101~10M毎に供給可能なように、複数のスイッチScを設けてもよい。この構成によれば、単位セル101~10Mに対応するスイッチScをON(閉成)することにより、単位セル101~10M毎に充電(CC充電、CCCV充電)を行うことができる。そして、バイポーラ型LFP電池10の充電の終了後、容量測定装置80、あるいは、容量推定部201で求めた満充電容量Cfが大きな単位セルに対して、充電器30aおよびスイッチScを制御して、追加充電を行うことにより、満充電容量Cfが大きな単位セルの電圧を異物溶解電位以上に上昇させ、異物を溶解するようにしてもよい。
【0042】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0043】
1 正極活物質層(正極)、2 セパレータ、3 負極活物質層(負極)、4 集電体、5 枠部材(シール部材)、6 バイポーラ電極、10 バイポーラ型LFP電池、101~10M、10N 単位セル、20 電圧検出回路、30,30a 充電器、40 電流センサ、50 電圧センサ、80 容量測定装置、81 容量増加量算出部(ΔQ算出部)、82 記憶部、83 満充電容量推定部、200 制御装置、201 容量推定部、202 均等化制御部、500 容量検査システム、EQ 均等化回路。