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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008040
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】線材の巻線方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/095 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
H02K15/095
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109543
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000227537
【氏名又は名称】NITTOKU株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121234
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 利明
(72)【発明者】
【氏名】河口 典正
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP13
5H615QQ02
5H615QQ20
5H615SS10
(57)【要約】
【課題】ステータコアの磁極に線材を高精度に巻回して、磁極における線材の占積率を向上させる。
【解決手段】線材の巻線方法は、ステータの中心軸Oを回転中心とする磁極13bの揺動と磁極間のスロット13cにおけるノズル11のステータの中心軸O方向への移動との組み合わせによりノズル11の先端を磁極13bの周囲に周回させて、ノズル11の先端から繰出される線材12を磁極13bに巻回させる方法である。そして、磁極13bの揺動時にノズル11をステータの半径方向に移動させて、線材12が繰出されるノズル11の先端を磁極13bに対して揺動方向に直線的に移動させる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコア(13,63)の中心軸(O)を回転中心とする磁極(13b,63b)の揺動と磁極間のスロット(13c,63c)におけるノズル(11)の前記ステータコア(13,63)の中心軸(O)方向への移動との組み合わせにより前記ノズル(11)の先端を前記磁極(13b,63b)の周囲に周回させて、前記ノズル(11)の先端から繰出される線材(12)を前記磁極(13b,63b)に巻回させる線材の巻線方法において、
前記磁極(13b,63b)の揺動時に前記ノズル(11)を前記ステータコア(13,63)の半径方向に移動させて、線材(12)が繰出される前記ノズル(11)の先端を前記磁極(13b,63b)に対して揺動方向に直線的に移動させる
ことを特徴とする線材の巻線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルの先端から繰出される線材をステータの半径方向に突出して形成された磁極に巻回させる線材の巻線方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インナーロータ型モータのステータは、環状の部材を複数積層してなるステータコアの内周側に突出する複数の磁極に線材を巻回して形成され、アウターロータ型モータのステータは、そのステータコアの外周側から放射状に突出する複数の磁極に線材を巻回して形成される。
【0003】
従来、このステータコアの各磁極への巻線装置として、本出願人は、ステータの中心軸を回転中心としてそのステータコアを回転可能に支持するステータ支持手段と、3軸方向のそれぞれにノズルを移動させる移動機構を備えた巻線装置を提案した(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この巻線装置では、ステータコアの回転と、線材を繰出すノズルのステータの軸方向の移動を組み合わせて、ノズルの線材繰出端である先端を磁極の周囲に周回移動させて、その先端から繰出される線材を磁極に巻回させるようにしており、このステータコアの回転とノズルの軸方向の移動を精密に制御することにより、線材が各磁極に整列巻されたステータが得られるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-271774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ステータコアを回転させた場合に、図10の実線矢印及び破線矢印で示す様に、そのステータコア3の半径方向に突出する磁極3bは円弧運動を行うことになる。このため、ステータコア3を回転させて、その磁極3bにノズル1の先端から繰出された線材2を巻回させようとすると、磁極3bに対してノズル1の先端は円弧状を成して移動し、その先端から繰出される線材2は円弧状を成して磁極3bに巻線されることに成る。
【0007】
そして、円弧状を成して移動するノズル1の先端から繰出される線材2は円弧状の癖が生じて、磁極3bに巻線される線材2の張力にばらつきを生じさせる傾向にある。この様な張力のばらつきは、線材2を磁極3bに整列に巻線する際の障害となり、結果として、その磁極3bに対する線材2の占積率を向上させることが困難に成るという未だ解決すべき課題があった。
【0008】
本発明の目的は、このような問題点に着目してなされたもので、ステータコアの磁極に線材を高精度に巻回して、磁極における線材の占積率を向上させ得る線材の巻線方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ステータコアの中心軸を回転中心とする磁極の揺動と磁極間のスロットにおけるノズルのステータコアの中心軸方向への移動との組み合わせによりノズルの先端を磁極の周囲に周回させて、ノズルの先端から繰出される線材を磁極に巻回させる線材の巻線方法の改良である。
【0010】
その特徴ある点は、磁極の揺動時にノズルをステータコアの半径方向に移動させて、線材が繰出されるノズルの先端を磁極に対して揺動方向に直線的に移動させるところにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の線材の巻線方法では、ステータコアのスロットにおいてノズルを往復移動させるとともに、ステータコアを回転させて半径方向に突出する磁極を揺動させ、これらの動作の組み合わせにより、ノズルを磁極の周囲に周回移動させてノズルから繰出された線材をステータコアの磁極に巻回する。
【0012】
そして、磁極の揺動時にノズルをステータコアの半径方向に移動させて、線材が繰出されるノズルの先端を磁極に対してその揺動方向に直線的に移動させるので、ノズルの先端から繰出される線材を、円弧状の癖を生じさせることなく磁極に直線的に巻き付けることが可能となる。
【0013】
すると、磁極に巻線される線材の張力にばらつきが生じるようなこともなく、巻線に巻乱れが生じるようなことを回避することができる。この結果、ステータコアの磁極に線材は高精度に巻回されて、その磁極における線材の占積率を向上させることが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明実施形態の巻線方法を示す図4のA-A線断面図である。
図2】その磁極に対するノズルの動きを示す図である。
図3】その磁極に線材が巻回されたアウターロータ型のステータを軸方向から見た図である。
図4】その方法を実施しうる巻線装置の正面図である。
図5】本発明の別のステータコアの磁極に対する巻線方法を示す図である。
図6】その磁極に対するノズルの動きを示す図である。
図7】その別のインナーロータ型のステータを軸方向から見た図である。
図8】その別のステータコアの巻線に用いる巻線装置を示す斜視図である。
図9】その別の巻線装置により線材を磁極に巻回させる状態を示す図8のB-B線断面図である。
図10】従来の巻線方法におけるノズルの動きを示す図1に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図4に、本発明における方法を実施し得る線材の巻線装置10を例示する。図では、互いに直交するX、Y及びZの3軸を設定し、X軸が略水平前後方向、Y軸が略水平横方向、Z軸が鉛直方向に延びるものとし、この巻線装置10を先ず説明する。
【0017】
この巻線装置10は、ノズル11から繰出された線材12をステータコア13の磁極13bに巻回するものである。そして、図3に示すように、この実施の形態におけるステータコア13はアウターロータ型のものが用いられ、円環状の環状部13aと、この環状部13aの外周面からその環状部13aの外側に向けて放射状に突出している複数の磁極13bとを備えるものである。
【0018】
図4に示すように、この巻線装置10は、設置場所に設置される機台14の上面にステータコア13を支持する支持具18が、揺動用サーボモータ19を介して設けられる。揺動用サーボモータ19は、回転軸19aをZ軸方向上方に向けて機台14の上面に取付けられ、その機台14の上面には、その揺動用サーボモータ19からY軸方向にずれて取付板21が立設される。
【0019】
ステータコア13を支持する支持具18は、ステータコア13を上端縁に水平に載置する鉛直方向に伸びた棒状芯材18aと、その芯材18aの上端縁に載置されたステータコア13を上方から押させる押さえ部材18bとを有する。棒状芯材18aは揺動用サーボモータ19の回転軸19aにその下端が取付けられ、上部はステータコア13の環状部13a(図3)の外径より僅かに小さな外径に形成される。
【0020】
取付板21の揺動用サーボモータ19に臨む側には直線運動ガイドレール23が鉛直方向に伸びて取付けられ、このガイドレール23に昇降部材22が上下動可能に取付けられる。押さえ部材18bは、中心の鉛直軸を棒状芯材18aの中心軸に一致させかつその鉛直軸を回転中心として回転可能にその昇降部材22に取付けられ、その昇降部材22の上方の取付板21には、この昇降部材22を押さえ部材18bとともに昇降させる昇降用シリンダ24が設けられる。
【0021】
芯材18aの上端縁に載置されたステータコア13を上方から実際に押させる押さえ部材18bの下部にあっては、ステータコア13の環状部13aの外径より僅かに小さな外径に形成され(図1)、心材18aと押さえ部材18bによりステータコア13はその環状部13aが挟まれ、その環状部13aからその外側に磁極13bが放射状に突出するように構成される。
【0022】
棒状芯材18aは揺動用サーボモータ19の回転軸19aにその下端が取付けられるので、サーボモータ19の回転軸19aが回転すると、棒状心材18aはその回転軸19aとともに回転し、棒状芯材18aと押さえ部材18bにより挟まれたステータコア13は棒状芯材18aと押さえ部材18bから成る支持具18の中心軸を中心として回転する。
【0023】
そして、ステータコア13は棒状芯材18aの上端縁にその中心が支持具18の中心軸に一致するように載置されて押さえ部材18bにより挟まれることにより、ステータコア13の周囲における磁極13bは、ステータコア13の回転により揺動するように構成される。
【0024】
また、この巻線装置10には、線材12を繰出すノズル11と、このノズル11を移動させるノズル移動機構30が設けられる。このノズル移動機構30は、機台14の上面にステータコア動作機構である揺動用サーボモータ19に隣接して設けられて、X方向にノズル11を移動させる前後方向駆動部31と、ステータコア13の軸に平行にノズル11を移動させる鉛直方向駆動部32とを備える。
【0025】
前後方向駆動部31は、駆動方向であるX軸に沿って機台14に配された前後方向ガイド31aと、その前後方向ガイド31aに平行に配され表面に螺旋状の雄ねじが配される前後方向回転軸31bと、その前後方向回転軸31bにボールねじにより螺合されその前後方向回転軸31bの回転により前後方向ガイド31aに沿って移動可能な前後方向移動部材31dと、前後方向回転軸31bを回転駆動する前後方向駆動源31cとが配される。
【0026】
この実施の形態における前後方向駆動源は前後方向サーボモータ31cであって、そのサーボモータ31cが駆動することにより移動する前後方向移動部材31dに鉛直方向駆動部32が取付けられる。
【0027】
この鉛直方向駆動部32は、駆動方向であるZ軸に沿って前後方向移動部材31dに立設された鉛直方向ガイド32aと、その鉛直方向ガイド32aに平行に配され表面に螺旋状の雄ねじが配される鉛直方向回転軸32bと、その鉛直方向回転軸32bにボールねじにより螺合されその鉛直方向回転軸32bの回転により鉛直方向ガイド32aに沿って移動可能な鉛直方向移動部材32dと、鉛直方向回転軸32bを回転駆動する鉛直方向駆動源32cとが配される。
【0028】
この実施の形態における鉛直方向駆動源も鉛直方向サーボモータ32cであって、そのサーボモータ32cが駆動することにより移動する鉛直方向移動部材32dに可動台33が取付けられる。そして、この可動台33にY軸方向に伸びて延長板34が固定され、この延長板34にノズル11がX軸方向に伸びて固定される。
【0029】
ノズル11は延長板34に固定される大径部11aと、その大径部11aに連続する小径部11bとを有する。そして、図1に示すように、小径部11bは大径部11aと同軸に設けられ、その小径部11bはステータコア13の磁極13bと磁極13bの間のスロット13cに進入可能な外径に形成される。この大径部11aと小径部11bには線材12が挿通可能な貫通孔がそれらの中心軸に貫通して設けられ、この貫通孔に挿通された線材12が小径部11bの先端から繰出し可能に構成される。
【0030】
次に、この巻線装置を用いた本発明の巻線方法について説明する。
【0031】
この巻線装置10を用いた巻線作業にあっては、先ず、ステータコア13を支持具18に支持させる。この支持に際して、前後方向駆動部31はその前後方向移動部材31dを鉛直方向駆動部32とともに図4の実線矢印で示すように支持具18から遠ざける。
【0032】
その状態で、取付板21に設けられた昇降用シリンダ24のロッド24aを没入させて昇降部材22を上昇させ、その昇降部材22に取付けられた押さえ部材18bを一点鎖線矢印で示すように上昇させて、その下方に棒状芯材18aとの間に空間を形成し、その空間を介してステータコア13を棒状芯材18aの上縁に水平に載置する。
【0033】
そして、昇降用シリンダ24のロッド24aを突出させて昇降部材22を二点鎖線矢印で示すように下降させ、その昇降部材22とともに下降する押さえ部材18bにより、棒状芯材18aの上縁に載置されたステータコア13を図4に示すように上方から押さえる。その後、前後方向駆動部31はその前後方向移動部材31dを鉛直方向駆動部32及びノズル11とともに図4の破線矢印で示すようにステータコア13に近づける。
【0034】
そして、実際の巻線を始めるに際して、そのノズル11の先端から繰出された線材12の端部を図示しない絡げピン又は線クランプ装置に絡げて固定しておく。次に、実際の巻線が行われることになる。
【0035】
そして、本発明の巻線方法は、図2に示す様に、磁極13bの揺動と磁極間のスロット13cをステータコア13の軸方向へのノズル11の移動の組み合わせによりノズル11の先端を磁極13bの周囲に周回させて、図1に示す様に、ノズル11の先端から繰出される線材12をその磁極13bに巻回させる方法である。
【0036】
図4の巻線装置10では、先ず、前後方向駆動部31によりノズル11をステータコア13に近づけて、図2に示す様に、ステータコア13の磁極13bと磁極13bの間に形成されるスロット13cにノズル11の先端、即ち小径部11bの線材繰出端である先端を対向又は進入させる。
【0037】
そして、ステータコア13の軸方向へのノズル11の移動は、鉛直方向駆動部32によりノズル11をZ軸方向に移動させることにより行われる。このように、ノズル11の先端が巻線する磁極13bとその一方に隣接する磁極13bにより挟まれるスロット13cにある場合には、揺動用サーボモータ19による磁極13bの揺動は行わずに、そのノズル11のみをステータコア13の軸方向に移動させる。
【0038】
一方、ステータの中心軸を回転中心とする磁極13bの揺動は、図2に示すように、そのノズル11の先端がそのスロット13cから抜け出た状態で開始するものとし、そのノズル11の先端が巻線する磁極13bとその他方に隣接する磁極13bとの間の隣接するスロット13cに対向した段階でその揺動を終了させる。
【0039】
このようなノズル11の移動と磁極13bの揺動を交互に繰り返すことにより、ノズル11は磁極13bの断面形状に沿って、その磁極13bの周囲に周回移動することになり、ノズル11の先端から繰出される線材12は、その磁極13bに巻回されることになる。
【0040】
そして、本発明では、図1に示す様に、その磁極13bの揺動時にノズル11をステータコア13の半径方向に移動させて、ノズル11の線材12が繰出される先端を磁極13bに対して、その揺動方向に直線的に移動させることを特徴とする。
【0041】
即ち、巻線される磁極13bの揺動は、ステータコア13をその中心軸Oを回転中心として回転させることにより行われるので、ノズル11を固定した状態で磁極13bを揺動させると、線材12が繰出されるノズル11の先端は、磁極13bに対して、円弧を描いてステータコア13の周方向に移動することになる(図10)。
【0042】
けれども、本発明の巻線方法では、この揺動方向における円弧により、単一の磁極13bに生じるステータコア13の直径方向のズレに相当する量を、ステータコア13の直径方向にノズル11を往復移動させて、そのノズル11の先端が磁極13bの揺動方向にその磁極13bに対して直線的に移動させることを特徴とする。
【0043】
具体的に、ノズル11の先端がスロット13cから抜け出た図1(a)に示す状態から、磁極13bの揺動を開始させると、図1(b)に示す様に、そのノズル11の先端が磁極13bの幅方向の中央に達するまでノズル11を徐々に磁極13bの回転中心に近づける。
【0044】
そして、そのノズル11の先端が磁極13bの幅方向の中央に達した後は、図1(c)に示す様に、ノズル11を磁極13bから徐々に遠ざけて、そのノズル11の先端が巻線する磁極13bとその他方に隣接する磁極13bとの間の隣接するスロット13cに対向した段階で、そのノズル11の位置を先のスロット13cに対向する位置における回転中心からの距離Lに一致させる。
【0045】
この移動量Aは、磁極13bの揺動角度をθとし、スロット13cにある揺動始めのノズル11の先端の揺動中心Oからの距離をLとすると、A=L(1-COSθ)として表せられる。このようにすることにより、磁極13bが揺動する際におけるノズル11の線材12が繰出される先端の動きを、磁極13bの幅方向に直線的に移動させることが可能となる。
【0046】
このようにノズル11の先端を磁極13bの幅方向に直線的に移動させると、そのノズル11から繰出される線材12は磁極13bの幅方向に真っ直ぐ案内されて巻回されることに成り、ノズル11の先端から繰出される線材12を、円弧状の癖を生じさせることなく磁極13bに直線的に巻き付けることが可能となる。すると、磁極13bに巻線される線材12の張力にばらつきが生じるようなこともなく、巻線に巻乱れが生じるようなことを回避することができる。
【0047】
一方、線材12を磁極13bに整列巻きさせるためには、ノズル11を磁極13bの周囲に周回移動させるとともに、線材12の一巻きごとに線材12の直径分だけ前後方向駆動部31によりノズル11の周回位置をX軸方向に移動させる必要がある。けれども、このノズル11の周回位置の移動は、磁極13bの揺動時におけるノズル11のX軸方向の往復移動とは別に行われる。
【0048】
そして、周回位置が磁極13bの軸方向、即ちステータコア13の半径方向に線材12の直径分だけ移動した状態であっても、その磁極13bの揺動時には、ノズル11をステータコア13の直径方向に往復移動させて、ノズル11の先端が磁極13bの揺動方向にその磁極13bに対して直線的に移動させる。
【0049】
これにより、周回位置が線材12の直径分だけずれた状態でも、ノズル11の先端から繰出される線材12を、円弧状の癖を生じさせることなく磁極13bに直線的に巻き付けて、その巻線に巻乱れが生じるようなことを回避する。このようなノズル11の周回を繰り返すことにより、磁極13bに線材12を高精度に整列巻きすることが可能となり、その磁極13bにおける線材12の占積率を向上させることが可能となるのである。
【0050】
なお、このような巻線を全ての磁極13bに対して行い、図3に示すように、全ての磁極13bへの巻線が終了した後には、ステータコア13を支持具18から取り外し、一連の巻線作業を終了させる。
【0051】
図5図9に本発明の別の実施の形態を示す。この別の実施の形態において、先の実施の形態における装置と同一符号は同一部品を示し、繰り返しての説明を省略する。
【0052】
図7に示すように、この別の実施の形態におけるステータコア63は、インナーロータ型のものが用いられ、円環状の環状部63aと、この環状部63aの内周面からその環状部63aの中心に向けて突出している複数の磁極63bとを備えるものとする。
【0053】
このインナーロータ型のようなステータコア63の磁極63bへの巻線を行う巻線装置60を図8に示す。この巻線装置60の機台14にはこのようなステータコア63を搭載する支持装置68が備えられる。この支持装置68は、機台14に配された固定台68aと、その固定台68aに水平面内で回転可能に取付けられ上側にステータコア63を搭載固定可能な回転台68bと、この回転台68bを回転させる図示しない揺動用サーボモータを備える。
【0054】
この別の実施の形態における巻線装置60は、上記支持装置68が備えられて設置場所に設置される機台14と、その機台14に設けられてノズル11を3軸方向に駆動する駆動手段70を備える。駆動手段70は、3軸方向の駆動部71,72,73を組み合わせてなり、前後方向駆動部71と、左右方向駆動部72と、上下方向駆動部73とを具備するものとされる。これらの駆動部71,72,73は、駆動方向X,Y,Zに沿って略同一の駆動機構とされる。
【0055】
先ず、上下方向駆動部73について説明すると、この上下方向駆動部73は、駆動方向Zに沿って配された上下方向ガイド73aと、該上下方向ガイド73aに平行に配され表面に雄ねじが配される上下方向回転軸73bと、その上下方向回転軸73bにボールねじにより螺合され上下方向ガイド73aに沿って移動可能な上下方向移動部73cと、その上下方向移動部73cに接続される上下方向接続部73dと、上下方向回転軸73bを回転駆動する上下方向駆動源73eとが配される。
【0056】
前後方向駆動部71と左右方向駆動部72とは、上下方向駆動部73と同様の構造として図8に示す駆動方向X,Yに沿って配される。前後方向駆動部71は、機台14に固定されて前後方向駆動源71eを具備するものとされ、かつ、左右方向駆動部72が、前後方向接続部71dを介して前後方向駆動部71に対して前後方向移動可能に配される。
【0057】
左右方向駆動部72は、左右方向駆動源72eを具備するものとされ、かつ、上下方向駆動部73が、左右方向接続部72dを介して左右方向駆動部72に対して左右方向移動可能に配される。
【0058】
そして、それぞれの駆動源71e,72e,73eとしては、例えば、高精度制御可能なサーボモータが用いられる。そして、上下方向駆動部73の上下方向接続部73dには、その先端に、支持装置68に支持されたステータコア63の軸方向に平行な可動台64が取付けられる。そして、この可動台64の下部は、ステータコア63に挿通可能な棒状を成して形成され、その下端近傍にノズル11がX軸方向に伸びて固定される。
【0059】
図9に示すように、可動台64にはノズル11に貫通した線材12を転向させる第1プーリ76が設けられ、上下方向接続部73dにはノズル11に貫通して第1プーリ76により転向した線材12を貫通させる貫通孔73fが形成される。そして、その上下方向接続部73dには、第1プーリ76により転向した線材12を貫通孔73fに案内する第2プーリ77が設けられる。
【0060】
次に、このような巻線装置を用いた本発明の巻線方法について説明する。
【0061】
この巻線装置60を用いた巻線作業にあっては、先ず、線材12をノズル11に貫通させてノズル11の先端から繰出す。そして、巻線を始めるに当たり、駆動手段70はノズル11を3次元方向に移動させ、線材12の端部を図示しない絡げピン又は線クランプ装置に絡げて固定する。その後、駆動手段70を駆動して、図9に示すように、水平位置にあるノズル11をステータコア63における巻線を行おうとする磁極63bとそれに隣接する磁極63bとの間のスロット63cに移動させる。
【0062】
次に実際の巻線が行われることになるけれども、本発明の巻線方法にあっては、駆動手段70によりノズル11をZ軸方向に往復移動するとともに、巻線される磁極63bが揺動するように支持装置68の図示しない揺動用サーボモータにより回転台68bをステータコア63とともに正回転及び逆回転させる。これらの動作の組み合わせにより、図6に示す様に、ノズル11を磁極63bの断面形状に沿ってその磁極63bの周囲に周回移動させる。
【0063】
ノズル11のZ軸方向の移動は、ノズル11の先端が巻線する磁極63bとその一方に隣接する磁極63bにより挟まれるスロット63cにある場合に、図示しない揺動用サーボモータによる磁極63bの揺動は行わずに、そのノズル11のみを下降又は上昇させる。
【0064】
そして、そのノズル11の先端がそのスロット63cから抜け出た後に磁極63bの揺動を開始し、そのノズル11の先端が巻線する磁極63bとその他方に隣接する磁極63bとの間の隣接するスロット63cの下方又は上方に位置した段階でその揺動を終了させる。この磁極63bの揺動は、ステータコア63を回転させることにより行われ、その回転は支持装置68における図示しない揺動用サーボモータにより行われる。
【0065】
このようなノズル11の移動とステータコア63の回転による磁極63bの揺動を交互に方向を変えて繰り返すことにより、図6の矢印で示す様に、ノズル11を磁極63bの断面形状に沿ってその磁極63bの周囲に周回移動させる。
【0066】
そして、本発明では、その磁極63bの揺動時にノズル11をステータの半径方向に移動させて、ノズル11の線材12が繰出される先端を磁極63bの幅方向に直線的に移動させることを特徴とする。
【0067】
即ち、巻線される磁極63bの揺動は、ステータコア63をその中心軸を回転中心として回転させることにより行われるので、ノズル11を固定した状態で磁極63bを揺動させると、線材12が繰出されるノズル11の先端は、磁極63bに対して、円弧を描いてステータコア63の周方向に移動することになる(図10)。
【0068】
けれども、本発明の巻線方法では、図5に示す様に、この揺動方向における円弧により、単一の磁極63bに生じるステータコア63の直径方向のズレに相当する量を、ステータコア63の直径方向にノズル11を往復移動させて、そのノズル11の先端が磁極63bの揺動方向にその磁極63bに対して直線的に移動させることを特徴とする。
【0069】
具体的に、ノズル11の先端がスロット63cから抜け出た図5(a)に示す状態から、磁極63bの揺動を開始させると、図5(b)に示す様に、そのノズル11の先端が磁極63bの幅方向の中央に達するまでノズル11を磁極63bの回転中心に近づける。
【0070】
そして、そのノズル11の先端が磁極63bの幅方向の中央に達した後は、図5(c)に示す様に、ノズル11を磁極63bの回転中心から遠ざけて、そのノズル11の先端が巻線する磁極63bとその他方に隣接する磁極63bとの間の隣接するスロット63cに対向した段階で、そのノズル11の位置を先のスロット63cに対向する位置における回転中心からの距離に一致させる。
【0071】
この移動量Aと揺動角度との関係は、前述した実施の形態と同一であり、このようにすることにより、磁極63bが揺動する際におけるノズル11の線材12が繰出される先端の動きを、磁極63bの幅方向に直線的に移動させることが可能となる。
【0072】
このようにノズル11の先端を磁極63bの幅方向に直線的に移動させると、そのノズル11から繰出される線材12は磁極63bの幅方向に真っ直ぐ案内されて巻回されることに成り、ノズル11の先端から繰出される線材12を、円弧状の癖を生じさせることなく磁極63bに直線的に巻き付けることが可能となる。すると、磁極63bに巻線される線材12の張力にばらつきが生じるようなこともなく、巻線に巻乱れが生じるようなことを回避することができる。
【0073】
一方、線材12を磁極63bに整列巻きさせるためには、ノズル11を磁極63bの周囲に周回移動させるとともに、線材12の一巻きごとに線材12の直径分だけノズル11の周回位置をX軸方向に移動させる必要がある。けれども、このノズル11の周回位置の移動は、磁極63bの揺動時におけるノズル11のX軸方向の往復移動とは別に行われる。
【0074】
そして、周回位置が磁極63bの軸方向、即ちステータコア63の半径方向に線材12の直径分だけ移動した状態であっても、その磁極63bの揺動時には、ノズル11をステータコア63の直径方向に往復移動させて、ノズル11の先端が磁極63bの揺動方向にその磁極63bに対して直線的に移動させる。
【0075】
これにより、周回位置が線材12の直径分だけずれた状態でも、ノズル11の先端から繰出される線材12を、円弧状の癖を生じさせることなく磁極63bに直線的に巻き付けて、その巻線に巻乱れが生じるようなことを回避する。このようなノズル11の周回を繰り返すことにより、磁極63bに線材12を高精度に整列巻きすることが可能となり、その磁極63bにおける線材12の占積率を向上させることが可能となるのである。
【0076】
そして、このような巻線を全ての磁極63bに対して行い、図7に示す様に、全ての磁極63bへの巻線が終了した後には、ステータコア63を支持装置68から取り外し、一連の巻線作業を終了させることになる。
【0077】
なお、上述した実施の形態では、ステータコア13,63の中心軸を鉛直にして、それらの磁極13b,63bに線材12を巻回する場合を説明したけれども、これは一例であって、この線材12の巻線方法は、ステータコア13,63の中心軸を水平にして、それらの磁極13b,63bに線材12を巻回するようにしても良い。
【符号の説明】
【0078】
11 ノズル
12 線材
13,63 ステータコア
13b,63b 磁極
13c,63c スロット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10