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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080402
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】枕
(51)【国際特許分類】
   A47G 9/10 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
A47G9/10 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193567
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】596161695
【氏名又は名称】ヘルメット潜水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 正男
【テーマコード(参考)】
3B102
【Fターム(参考)】
3B102AA01
3B102AB07
(57)【要約】
【課題】就寝中の使用者の姿勢に関わらず、使用者の頭部及び頸部を安定して支持し、使用者に圧迫感及び寝苦しさ等を与えることなく使用者の頸部の温度を快適に保ち、睡眠不足等を解消し、睡眠の質を向上させる機能性に優れた枕を提供する。
【解決手段】三次元網状構造を有し、短辺方向一側に長辺に沿って頭部支持部15が形成されたクッション材16と、平面視して長方形状の中空状に形成されて、使用時に、液体が充填され、クッション材16の短辺方向他側に長辺に沿って配置されて頸部を支持する温度調整体18と、クッション材16及び温度調整体18が収容されるカバー材20とを備え、液体が充填された状態の温度調整体18の最大高さは、クッション材16の最大高さよりも高く形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視して外形が一対の長辺及び一対の短辺を有する横長の長方形状に形成され、就寝中の使用者の頭部及び頸部を支持しつつ前記頸部を加熱又は冷却する枕であって、
三次元網状構造を有し、前記短辺方向一側に前記長辺に沿って頭部支持部が形成されたクッション材と、平面視して長方形状の中空状に形成されて、使用時に、加熱用又は冷却用の液体が充填され、前記クッション材の前記短辺方向他側に前記長辺に沿って配置されて前記頸部を支持する温度調整体と、前記クッション材及び前記温度調整体が収容されるカバー材とを備え、前記液体が充填された状態の前記温度調整体の最大高さは、前記クッション材の最大高さよりも高く形成されることを特徴とする枕。
【請求項2】
請求項1記載の枕において、前記クッション材は、前記短辺方向他側の前記長辺方向中央部に形成され、前記温度調整体が着脱可能に保持される切り欠き状、凹状又は孔状の温度調整体収容部と、該温度調整体収容部の前記長辺方向両端部に形成された頸部補助支持部とを備えることを特徴とする枕。
【請求項3】
請求項2記載の枕において、前記頸部補助支持部は、前記短辺方向一側が高く前記短辺方向他側が低い傾斜面を有することを特徴とする枕。
【請求項4】
請求項1記載の枕において、前記カバー材の少なくとも上面は、透水性及び通気性を有するメッシュ生地で形成され、前記カバー材の底面に滑り止めが設けられていることを特徴とする枕。
【請求項5】
請求項1記載の枕において、前記温度調整体を構成するシート材は、独立気泡を有するゴム製の内面シートと、該内面シートの外表面に接合された合成繊維製の外面シートで形成された二層構造を有することを特徴とする枕。
【請求項6】
請求項1記載の枕において、前記液体が充填された前記温度調整体の前記長辺方向と直交する断面の形状は円形又は楕円形であることを特徴とする枕。
【請求項7】
請求項1記載の枕において、前記長辺の長さが600~800mm、前記短辺の長さが100~300mm、前記温度調整体の前記長辺方向の長さが400~600mm、前記液体が充填された状態の前記温度調整体の最大高さが60~120mm、前記クッション材の最大高さが50~100mmであることを特徴とする枕。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、就寝中の使用者の頭部及び頸部を安定的に支持しつつ、頸部を加熱又は冷却するための枕に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の体型に応じて、枕の各部の寸法(主に高さ)及び硬さ等が適正に選択されていなければ、睡眠中に頸部(首)及び肩に負荷が加わり、頸部及び肩の凝り或いは偏頭痛等が発生し易くなり、睡眠不足又は睡眠の質の低下に繋がることが知られている。
また、近年では、スマートフォンの使い過ぎによりストレートネックが増加しており、現代人の頸部及び肩への負担が増大している。
そこで、就寝中の使用者の頭部及び頸部の位置を理想的な状態に保持するために形状が工夫された枕(例えば、特許文献1)や就寝中の使用者の頸部又は肩等を温めることにより快眠を促す枕(例えば、特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-178169号公報
【特許文献2】特開2015-51170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、使用者が仰向けに仰臥した状態から横向きに横臥した状態に移行した場合でも、横向きに横臥した状態から仰向けに仰臥した状態に移行した場合でも、頭部及び頸部の位置の理想的な状態を保持することができ、質の良い睡眠を得ることができると共に、それぞれの状態で、頭痛、腰痛、肩凝り、首の凝り及びその他の体調不良の発生を防ぐことができるとされている。
しかし、特許文献1では、枕の各部の寸法が詳細に規定されており、特に、使用者が仰臥した状態で頭部及び頸部が支持される中央のエリアは、頭部及び頸部の外周を囲むように左右両側のエリアよりも凹んだ形状に形成されており、就寝中に仰臥状態から横臥状態に移行する(寝返りを打つ)ことが困難であり、圧迫感を受け易いという課題がある。また、前述の中央のエリア(凹部)の幅及び深さの寸法はそれぞれ、使用者の頭部の幅及び奥行きの寸法と同程度であり、中央のエリアの平坦部と左右両側のエリアの平坦部との間に急斜面が形成されるため、使用者が、就寝中に横臥状態から仰臥状態に移行する際に、落差(段差)によって衝撃を受け易く、睡眠が妨げられるという課題がある。特に、仰臥状態の使用者の頭部を下方から支持する中央のエリアの平坦部の厚さが薄い(高さが低い)ため、クッション性が不十分で頭部支持の安定性に欠けるという課題もある。
特許文献2では、就寝中の使用者の頸部又は肩等を温めることができるが、それ以外は通常の枕と同様に構成されており、形状については特に工夫されていない。そのため、就寝中に枕がずれ、使用者の頸部を安定的に支持することができず、頸部又は肩等を確実に温めることができないという課題がある。また、加熱手段として、電源により加熱される加熱体が使用されるため、就寝中に、使用者の頸部が加熱体により常に一定温度で加温され続けることになり、使用者が喉の乾き及び寝苦しさを感じ、睡眠が妨げられるおそれがある。さらに、就寝中に加熱体が通電され続けることにより、電気代が高くなるという課題もある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、就寝中の使用者の姿勢(体勢)の違い及び姿勢の変化に関わらず、使用者の頭部及び頸部を安定して支持し、使用者に圧迫感及び寝苦しさ等を与えることなく、使用者の頸部の温度を快適に保ち、睡眠不足等を解消し、睡眠の質を向上させ、頸部等の凝りを和らげることが可能な機能性に優れた枕を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る枕は、平面視して外形が一対の長辺及び一対の短辺を有する横長の長方形状に形成され、就寝中の使用者の頭部及び頸部を支持しつつ前記頸部を加熱又は冷却する枕であって、
三次元網状構造を有し、前記短辺方向一側に前記長辺に沿って頭部支持部が形成されたクッション材と、平面視して長方形状の中空状に形成されて、使用時に、加熱用又は冷却用の液体が充填され、前記クッション材の前記短辺方向他側に前記長辺に沿って配置されて前記頸部を支持する温度調整体と、前記クッション材及び前記温度調整体が収容されるカバー材とを備え、前記液体が充填された状態の前記温度調整体の最大高さは、前記クッション材の最大高さよりも高く形成される。
【0007】
本発明に係る枕において、前記クッション材は、前記短辺方向他側の前記長辺方向中央部に形成され、前記温度調整体が着脱可能に保持される切り欠き状、凹状又は孔状の温度調整体収容部と、該温度調整体収容部の前記長辺方向両端部に形成された頸部補助支持部とを備えてもよい。
【0008】
本発明に係る枕において、前記頸部補助支持部は、前記短辺方向一側が高く前記短辺方向他側が低い傾斜面を有することができる。
【0009】
本発明に係る枕において、前記カバー材の少なくとも上面は、透水性及び通気性を有するメッシュ生地で形成され、前記カバー材の底面に滑り止めが設けられていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る枕において、前記温度調整体を構成するシート材は、独立気泡を有するゴム製の内面シートと、該内面シートの外表面に接合された合成繊維製の外面シートで形成された二層構造を有することが好ましい。
【0011】
本発明に係る枕において、前記液体が充填された前記温度調整体の前記長辺方向と直交する断面の形状は円形又は楕円形であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る枕において、前記長辺の長さが600~800mm、前記短辺の長さが100~300mm、前記温度調整体の前記長辺方向の長さが400~600mm、前記液体が充填された状態の前記温度調整体の最大高さが60~120mm、前記クッション材の最大高さが50~100mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る枕は、使用時に、加熱用又は冷却用の液体(例えば温水又は冷水(氷を含む))が充填される温度調整体で使用者の頸部を支持することにより、頸部を適温に保つことができ、使用者の睡眠不足等を解消し、睡眠の質を向上させることができる。特に、温度調整体に加熱用の液体が充填され使用者の頸部が温められることにより、使用者の頸部の凝り、肩の凝り、偏頭痛、疲れ目及びストレートネックに伴うその他の体調不良等が改善される。また、液体が充填された状態の温度調整体の最大高さが、クッション材の最大高さよりも高く形成されることにより、使用者の頸部が安定的に支持されると共に、クッション材が三次元網状構造を有するので、頭部支持部全体が柔らかさとバネ性を兼ね備え、高いクッション性と体圧分散効果を実現して使用者の頭部を優しく支持することができる。
【0014】
本発明に係る枕において、クッション材が、短辺方向他側の長辺方向中央部に形成され、温度調整体が着脱可能に保持される切り欠き状、凹状又は孔状の温度調整体収容部と、温度調整体収容部の長辺方向両端部に形成された頸部補助支持部とを備える場合、カバー材の中で温度調整体が移動することがなく、就寝中の使用者の頸部が枕の上を左右方向に移動しても温度調整体から落下し難く、温度調整体又は左右の頸部補助支持部で使用者の頸部を安定して支持することができる。
【0015】
本発明に係る枕において、頸部補助支持部が、短辺方向一側が高く短辺方向他側が低い傾斜面を有する場合、就寝中の使用者の体勢(寝姿勢)が変化(横臥状態と仰臥状態の間で変化)し、使用者の頸部が頸部補助支持部まで移動しても、使用者は圧迫感又は衝撃を受けることがなく、スムーズに寝返りを打つことができ、快適な睡眠を維持することができる。
【0016】
本発明に係る枕において、カバー材の少なくとも上面が、透水性及び通気性を有するメッシュ生地で形成され、カバー材の底面に滑り止めが設けられている場合、使用者が長期間使用しても蒸れ難く、使用者の寝苦しさが軽減されると共に、敷布団(マット)上に載置される枕が位置ずれし難く、使用者の快適な寝心地を実現できる。
【0017】
本発明に係る枕において、温度調整体を構成するシート材が、独立気泡を有するゴム製の内面シートと、内面シートの外表面に接合された合成繊維製の外面シートで形成された二層構造を有する場合、温度調整体の保温性、耐久性及び形状安定性に優れ、使用者の頸部の加熱又は冷却を継続的に行うことができる。
【0018】
本発明に係る枕において、液体が充填された温度調整体の長辺方向と直交する断面の形状が円形又は楕円形である場合、温度調整体が収容された枕の短辺方向他側の表面(上面部)を使用者の頸部に密着させ、頸部を確実に支持しながら効率的に加熱又は冷却を行うことができる。
【0019】
本発明に係る枕において、長辺の長さが600~800mm、短辺の長さが100~300mm、温度調整体の長辺方向の長さが400~600mm、液体が充填された状態の温度調整体の最大高さが60~120mm、クッション材の最大高さが50~100mmである場合、就寝中に使用者が寝返りを打つ等して頭部及び頸部が枕の上を長辺方向(左右方向)に移動しても、頭部支持部(クッション材)及び温度調整体で使用者の頭部及び頸部を確実に支持しながら効果的に使用者の頸部の加熱又は冷却を行うことができ、使用者の快眠を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施の形態に係る枕の平面図である。
図2】同枕の側面図である。
図3】同枕の底面図である。
図4】同枕のクッション材の平面図である。
図5】同枕のクッション材の側面図である。
図6】同枕の温度調整体の平面図である。
図7】同枕の温度調整体の正面図である。
図8】同枕の使用状態を示す要部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1図5に示す本発明の一実施の形態に係る枕10は、図8に示すように、就寝中の使用者11の頭部12及び頸部13を支持しつつ頸部13を加熱(又は冷却)するために用いられるものである。
図1に示すように、枕10は、平面視して外形が一対の長辺及び一対の短辺を有する横長の長方形状に形成されている。図4図8に示すように、この枕10は、三次元網状構造を有し、短辺方向一側に長辺に沿って頭部支持部15が形成されたクッション材16と、平面視して長方形状の中空状に形成されて、使用時に、加熱用(又は冷却用)の液体17が充填され、クッション材16の短辺方向他側に長辺に沿って配置されて頸部13を支持する温度調整体18と、クッション材16及び温度調整体18が収容されるカバー材20とを備えている。また、図4に示すように、クッション材16は、短辺方向他側の長辺方向中央部に形成され、温度調整体18が着脱可能に保持される切り欠き状の温度調整体収容部21と、温度調整体収容部21の長辺方向両端部に形成された頸部補助支持部22とを備える。そして、図2及び図8に示すように、液体17が充填された状態の温度調整体18の最大高さは、クッション材16の最大高さよりも高く形成される。
【0022】
図4及び図5に示すように、クッション材16は、合成樹脂で中実又は中空に成形された線状材がループ又はカールを形成するように屈曲又は湾曲され、隣接する線状材同士が接触絡合することにより集合して形成された三次元網状構造を有する。クッション材16を構成する線状材としては、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂又は生分解性樹脂等の熱可塑性樹脂の押し出し成形により形成されバネ弾性を有する繊維が好適に用いられる。また、線状材として、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリプロピレン又はポリエチレン)と、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体又はスチレンブタジエンスチレンとの混合樹脂が用いられてもよい。
【0023】
ここで、ポリオレフィン系樹脂と、酢酸ビニル樹脂又はエチレン酢酸ビニル共重合体から混合樹脂が作製される場合、ポリオレフィン系樹脂70~97質量%に対して酢酸ビニルが3~30質量%含有されるように調製されたものが好適に用いられる。また、ポリオレフィン系樹脂とスチレンブタジエンスチレンから混合樹脂が作製される場合、ポリオレフィン系樹脂50~97質量%に対してスチレンブタジエンスチレンが3~50質量%含有されるように調製されたものが好適に用いられる。なお、線状材が中実の場合の外径は、例えば0.2~3mmであり、線状材が中空の場合の外径は、例えば1~3mmである。
【0024】
以上のようにして形成された多数本の線状材を上下左右ランダムに三次元的に屈曲又は湾曲させると共に絡み合わせ、複数のループ又はカールを形成し、絡み合った線状材同士の接触部を溶着等の加熱処理で接合することによって、三次元網状に集合させることができ、三次元網状構造を有するクッション材16を形成することができる。この三次元網状構造は線状材が絡み合った疎な構造であり、クッション材の見掛密度(嵩密度)としては、例えば20~80kg/m程度が好ましい。
【0025】
図2及び図5に示すように、頭部支持部15の上面は、全体が平坦状(水平)に形成されている。これにより、就寝中の使用者は、寝返りを打つ(仰臥状態から横臥状態又は横臥状態から仰臥状態に移行する)際に、頭部12を頭部支持部15の長辺方向に沿ってスムーズに移動させることができる。なお、頭部支持部の上面の長辺方向両端部に平坦部が形成され、長辺方向中央部に凹部が形成されてもよい。このとき、凹部は、表面(上面)の長辺方向中央部に形成された中央平坦面(水平面)と、中央平坦面の両端部から各平坦部に向かってそれぞれ緩やかに上昇する左右の傾斜面とを有することが好ましく、傾斜面は平面状(直線状)でも下に凸の曲面状(湾曲状)でもよいが、凹部の形状はこれらに限定されるものではない。また、左右の頸部補助支持部22は、短辺方向一側が高く短辺方向他側が低い傾斜面23を有する。これにより、就寝中の使用者11の頸部13が頸部補助支持部22まで移動しても、使用者11は圧迫感又は衝撃を受けることなく、快適な睡眠を維持することができる。なお、頸部補助支持部に傾斜面を形成せず、頸部補助支持部の表面(上面)を水平面とし、頸部補助支持部の高さ(厚さ)が全面にわたって頭部支持部の高さ(厚さ)と等しくなるように形成されてもよい。
【0026】
図2及び図8に示すように、枕10の使用時に、液体17が充填された状態の温度調整体18の最大高さは、クッション材16の最大高さよりも高く形成されている
図6及び図7に示すように、温度調整体18は、平面視して長方形状の中空状(中空の直方体状又は円筒状)に形成されており、その上面部に設けられた液体注入口24は、着脱可能な蓋体25で密閉される。温度調整体18は、使用されていない状態(加熱用又は冷却用の液体が注入されていない状態)では、押し潰されて扁平状になる。そして、使用時に、液体注入口24から温度調整体18の内部に液体17が充填され、液体注入口24が蓋体25で閉じられることにより、図8に示すように、温度調整体18は円柱状又は楕円柱状に膨らみ、温度調整体18の長手方向と直交する断面の形状は円形又は楕円形となる。このとき、温度調整体18に充填される液体17の量により温度調整体18の高さが調整される。なお、温度調整体18は、液体注入口24及び蓋体25が枕10の底面28側となるようにカバー材20の中に収容されることが好ましい。これにより、使用者11の頸部13が蓋体25に干渉することがなく、使用者11の睡眠が妨げられることを防止できる。
【0027】
ここで、温度調整体18を構成するシート材26としては、独立気泡を有するゴム製の内面シートと、内面シートの外表面に接合された合成繊維製の外面シートで形成された二層構造(図示せず)を有するものが好適に用いられる。独立気泡を有するゴム製の内面シートにより、温度調整体18の保温性、水密性及びクッション性を高めることができる。具体的には、内面シートとして、クロロプレンゴム発泡シートが好適に使用されるが、これに限定されるものではなく、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)又はニトリルゴム(NBR)等のその他のゴムが使用されてもよい。また、外面シートにより、内面シートの伸びを規制して、温度調整体18の耐久性及び形状安定性を向上させることができる。このような外面シートとしては、例えば、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン中空糸繊維又はポリエチレン繊維等の合成繊維で形成されたジャージ生地が好適に使用されるが、これらに限定されるものではない。また、内面シートと外面シートの接合には、ゴム系(例えば、クロロプレンゴム系)の接着剤が好適に用いられる。
【0028】
カバー材20の上面及び外周面は、透水性及び通気性を有するメッシュ生地で形成されている。メッシュ生地には全面にメッシュ孔(図示せず)が設けられており、その開口面積は、例えば、0.1~4cm/個、好ましくは0.4~2cm/個である。このメッシュ生地としては、軽量で弾力性があり、速乾性にも優れるダブルラッセル生地が好適に用いられるが、ラッセル生地又はその他のメッシュ生地が用いられてもよい。また、メッシュ生地の材質としては、ポリエステルが好適に用いられるが、ナイロン、ポリエチレン又はその他の合成樹脂が用いられてもよい。
カバー材20の外周部にはファスナー(図示せず)によって開閉される開口部(図示せず)が形成されており、ファスナーを開閉することにより、クッション材16及び温度調整体18の出し入れを行うことができる。開口部は、例えば平面視したカバー材のいずれか一方の長辺といずれか一方の短辺に沿うようにL字状に配置されてもよいし、いずれか一方の長辺と左右両方の短辺に沿うようにU字状に配置されてもよいが、開口部の配置はこれらに限定されることなく、適宜、選択される。
【0029】
図3に示すように、カバー材20の底面28に滑り止め29が設けられている。本実施の形態では、カバー材20の底面28となるシート状の生地の表面に複数の微小突起30を形成して滑り止め29とした。この微小突起30は、例えば、直径1~3mm程度の半球状に形成され、2~8mmの間隔で配置されるが、微小突起の大きさ、形状及び配置は、これらに限定されるものではなく、適宜、選択される。また、カバー材20の底面28を構成する生地にはポリエステル若しくはポリ塩化ビニル等の合成樹脂又は合成ゴム等が用いられ、特に非透水性生地又は防水処理生地が用いられた場合は、カバー材20の上面及びクッション材16を通過した使用者の汗等が、カバー材20の底面28を通過することが妨げられる。その結果、枕10が載置される敷布団(マット)が汗等で濡れることが防止され、清掃の手間が軽減される。微小突起は、カバー材の底面を構成する生地と一体に形成されることが好ましいが、別部材で形成されて接着又は溶着等により生地に接合されてもよい。なお、カバー材の底面が十分な摩擦力を有する合成ゴムで構成される場合、微小突起が省略された平坦状の底面全体を滑り止めとして機能させることもできる。また、カバー材の底面を構成する合成ゴムは、単独で用いられてもよいし、合成樹脂製のシート等に積層されて用いられてもよい。
【0030】
本実施の形態では、枕10の各部の寸法につき、長辺の長さL1は600~800mm、短辺の長さW1は100~300mm、温度調整体18の長辺方向の長さ(=温度調整体収容部21の長辺方向の長さ)L2は400~600mm、液体17が充填された状態の温度調整体18の最大高さH1は60~120mm、クッション材16の最大高さ(=頭部支持部15の高さ)H2は50~100mmとした。また、温度調整体18の幅W2は50~150mmとした。
以上のように構成された枕10によれば、就寝中に使用者11が寝返りを打つ等して頭部12及び頸部13が枕10の上を長辺方向(左右方向)に移動しても、頭部支持部15及び温度調整体18で使用者11の頭部12及び頸部13がそれぞれ確実に支持される。そして加熱用の液体(例えば温水)17が充填された温度調整体18により使用者11の頸部13が適度に加熱されるので、使用者11の快眠を実現できる。また、使用者11の頸部13が加熱されることにより、使用者11の頸部13の凝り、肩の凝り、偏頭痛、疲れ目及びストレートネックに伴うその他の体調不良等も改善される。さらに、睡眠中の使用者11の体温の低下に対し、温度調整体18に充填された液体17の温度も徐々に低下するため、使用者11は夜中に暑さ(寝苦しさ)又は喉の乾き等で目を覚ますことがなく、快適に眠ることができる。なお、枕10の各部の寸法は、上記の範囲に限られるものではなく、使用者の体格等に応じて、適宜、選択される。
【0031】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものであり、本発明の要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
上記実施の形態では、主に温度調整体に加熱用の液体が充填されて本発明の枕が使用される場合について説明したが、使用者は、夏場又は発熱時に本発明の枕を使用する場合、温度調整体に冷却用の液体(例えば冷水(氷を含む))を充填することにより、頸部を適度に冷やすことができ、体温を下げ、寝苦しさを解消することが可能であり、快眠が促進される。
また、上記実施の形態では、クッション材の温度調整体収容部が切り欠き状に形成されているが、温度調整体収容部は、温度調整体が着脱可能に保持されるものであればよく、例えばクッション材の上面に凹状に形成されてもよいし、クッション材を厚さ方向(高さ方向)に貫通する孔状に形成されてもよい。凹状に形成された温度調整体収容部は温度調整体の底面及び外周を囲むようにして温度調整体を所定の位置に保持することができ、孔状に形成された温度調整体収容部は温度調整体の外周を囲むようにして温度調整体を所定の位置に保持することができる。
【符号の説明】
【0032】
10:枕、11:使用者、12:頭部、13:頸部、15:頭部支持部、16:クッション材、17:液体、18:温度調整体、20:カバー材、21:温度調整体収容部、22:頸部補助支持部、23:傾斜面、24:液体注入口、25:蓋体、26:シート材、28:底面、29:滑り止め、30:微小突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8