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  • 特開-熱センサ用配線シート 図1
  • 特開-熱センサ用配線シート 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080415
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】熱センサ用配線シート
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/02 20060101AFI20240606BHJP
   F23N 5/24 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
F23N5/02 310A
F23N5/24 106Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193587
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】303062440
【氏名又は名称】株式会社東洋レーベル
(74)【代理人】
【識別番号】100130498
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 禎哉
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英和
【テーマコード(参考)】
3K003
3K005
【Fターム(参考)】
3K003SB10
3K003SC04
3K005AA01
3K005AB12
3K005AC06
3K005EA01
3K005EA03
(57)【要約】
【課題】熱機器における安全装置に適用することで、危険な程高温になる前に安全に過熱状態を検知できるようにセンサに接続される熱センサ用配線シートを、安価且つ簡易に製造し提供する。
【解決手段】熱センサ用配線シート1を、非導電性のシート本体2と、シート本体2に形成された導電性インクからなる配線部3とから構成し、配線部3を、一対の接続端部31,31間を一筆書きの二次元幾何学形状をなす配線本体部32を有するものとし、シート本体2に配線本体部32の近傍をほぼ平行に通って延びる切断線4を形成することで、切断線4でシート本体2を部分的に切断すれば長尺な1本の帯状に展開し得るように構成とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱機器における異常過熱を検知するセンサに接続して用いられる熱センサ用配線シートであって、
非導電性のシート本体と、
前記シート本体の一方の面に対する印刷により形成された導電性インクからなる配線部とを備え、
前記配線部は、前記センサに電気的に接続される一対の接続端部の間を連続的に延びる線により途切れることなく重なることなく描かれた平面的に広がりを持つ幾何学図形を呈する配線本体部を有しており、
前記シート本体に、前記配線本体部の近傍を通り当該配線本体部とほぼ平行に延びる切断線を形成し、
前記切断線で前記シート本体を部分的に切断することにより、長尺な1本の帯状に展開し得るように構成していることを特徴とする熱センサ用配線シート。
【請求項2】
前記シート本体は長方形状をなすものであり、
前記配線部において、前記一対の接続端部を前記シート本体の隣接する2つの角部近傍に配置するとともに、前記配線本体部を、前記シート本体の一方の対向辺とほぼ平行な複数の直線部と、隣接する直進部同士を繋ぐ複数の連接部を有し前記一対の接続端部の間で蛇行する幾何学図形に形成し、
前記切断線を、前記シート本体において、隣接する前記直線部の間で前記対向辺と直交する他方の対向辺のうち一方の辺から前記連接部には至らない領域で直線的に形成したものとしている請求項1に記載の熱センサ用配線シート。
【請求項3】
前記導電性インクは、カーボンペーストを主成分として絶縁物質を混合したものである請求項1又は2に記載の熱センサ用配線シート。
【請求項4】
前記シート本体は、合成樹脂、布、合成又は人工皮革から選択される材質からなるシート状をなすものである請求項1乃至3の何れかに記載の熱センサ用配線シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器や熱源器等の加熱機器における安全装置に適用可能な熱センサ用配線シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
給湯器や熱源器では、過熱を検知するための部品として、熱検知シートが知られている。例えば、ガス給湯器等に適用される燃焼機器の熱検知シートとしては、シート状の絶縁基板に導電性インク層を蛇行状等の形状に印刷して配置するとともに、その導電性インク層状に所定温度で溶断する金属等からなるヒューズ層を電気メッキにより重合し固着して設け、さらにこの2層の表面をカバーコートで被覆した構成を有するものが案出されている(特許文献1参照)。導電性インク層の素材は同文献には明示されていないが、例えば銀、銅、カーボン等の材料をペースト状にしたものが知られている。ヒューズ層には、融点が約232℃の錫や、融点が約327℃の鉛が同文献に例示されている。カバーコートとしては、ポリエステルフィルムが同文献に例示されている。このような構成の熱検知シートを燃焼機器の燃焼室と熱交換器等の加熱部とケーシングとの間に挿入設置し、ヒューズ層を燃焼制御回路に組み込むことで、異常過熱によるひび割れ、穴あきなどが加熱部のいずれかの箇所に発生した場合、ヒューズ層がそれを感知して溶断されることで燃焼制御回路の通電が切断され、安全弁が閉止されるという仕組みが採用されている。
【0003】
その他にも、燃焼機器の安全装置に用いられるものとして、燃焼室及び熱交換器の外側に配設される温度ヒューズ線も知られている。この温度ヒューズ線は、導電性を有し所定温度で溶融する低温溶融金属からなる一連の線条体を、それと同程度の融点を持つ絶縁性の樹脂で被覆した構成を有するものである(特許文献2参照)。同文献には、低温溶融金属として、融点が145℃の合金(錫、鉛、カドミウムからなる)が例示されており、樹脂には融点が160℃のナイロンエラストマが例示されている。このような温度ヒューズ線を適用した安全装置では、燃焼室や熱交換器に生じたひび割れ等の損傷部位からの熱放出により機器本体ケース内が異常過熱され、それに伴い低温溶融金属からなる線条体の異常過熱部分が融点に達して溶融し始め、また線条体を覆う樹脂もその温度付近で溶融し始める結果、溶融した線条体が同じく溶融した樹脂に包み込まれて先端が球状化した状態で分離、断線することになり、線条体の導通が切れて異常過熱が検出され、燃焼機器の燃焼が停止されるという仕組みが採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4-57045号公報
【特許文献2】実開平5-52537号公報
【特許文献3】特開平11-241903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような熱検知シートでは、ヒューズ層が溶断される温度が、材質が錫の場合は約232℃、鉛の場合は融点が約327℃といった高温であり、また、導電性インク層に銀や銅を用いた場合はその融点は1000℃前後というさらに高温であるため、過熱箇所周辺でカバーコートの樹脂が先に溶け落ちてもヒューズ層や導電性インク層は繋がったまま残っており、非常に高い温度まで異常過熱しないと燃焼制御回路の通電が切断されないこととなり危険である。導電性インク層に別の材料を適用し、同文献の記載の通りヒューズ層の溶断により通電が切断されるとしても、過熱箇所周辺の温度はヒューズ層の融点には達していることになる。その上、燃焼制御回路の通電が切断される頃には、過熱箇所周辺の機器、ひいては燃焼機器全体に修理不能なほどの深刻なダメージを与えることになるといえる。また、特許文献2のような温度ヒューズ線でも、線条体を構成する低温溶融金属の融点は145℃、それを被覆する樹脂の融点は160℃であるため、過熱箇所周辺が比較的高温に達してようやく線条体と樹脂が溶融して断線するため、高温域まで過熱することによる危険性や周辺機器、燃焼機器全体の損傷のおそれは特許文献1の場合と同様である。
【0006】
一方、特許文献1において導電性インク層にカーボンペーストを用いた場合を考慮すると、カーボン(炭素)は電気抵抗率が低いため、導電性インク層の抵抗を上げるためには非常に長い蛇行等のパターンで印刷しなければならず、そのためには、シート状の絶縁基板として相当な大判のものを採用する必要がある。そのため、同文献では、設置位置にマッチする大きさのシート状絶縁基板は、燃焼機器が大型であればあるほど大判にせざるを得ず、同文献に例示されたようなシルクスクリーン印刷を採用したとしても、大型の印刷機が必要となり、製造コストが増大していたという問題もある。
【0007】
給湯器や熱源器の異常過熱対策の分野では、以上のような種々の問題を抱えたまま、長年に亘って上述した熱検知シートや温度ヒューズ線が利用されてきたという歴史的経緯が存在する。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、特に給湯器や熱源器の異常過熱対策の分野において、従来よりも安全な低い温度で異常過熱を検知することができ、しかも低コストで製造することができる熱センサ用配線シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係る熱センサ用配線シートは、加熱機器における異常過熱を検知するセンサに接続して用いられるものであって、非導電性のシート本体と、このシート本体の一方の面に対する印刷により形成された導電性インクからなる配線部とを備えるものである。そして、配線部を、異常過熱を検知するセンサに電気的に接続される一対の接続端部の間を連続的に延びる線により途切れることなく重なることなく描かれた平面的に広がりを持つ幾何学図形(いわば、一筆書きの形状)を呈する配線本体部を有する構成とし、シート本体には、配線本体部の近傍を通りその配線本体部とほぼ平行に延びる切断線を形成したものとし、この切断線でシート本体を部分的に切断することにより、長尺な1本の帯状に展開し得るように構成していることを特徴としている。
【0010】
このような構成の熱センサ用配線シートであれば、導電性インクを1枚のシート本体に一筆書きで1本の線状に印刷することで長尺な配線部を形成することができ、しかも切断線でシート本体を部分的に切断して長尺な帯状の配線シートとすることができるので、従来のような大判のシート状絶縁基板を用いなくても比較的コンパクトなシート本体を用意すれば、そこに印刷により形成する配線部の長さで導電性インク層の抵抗を上げることが容易となり、製造工程の簡易化や製造コストの低減を図ることができる。また、1本の帯状に展開した熱センサ用配線シートは、給湯器や熱源器等の加熱機器の本体部分(外装ケースの内側の機器)に巻回して両接続端部をセンサに接続すれば、異常過熱を検知するための安全装置を簡単に構築することができる。すなわち、加熱機器の本体部分の動作不良や一部の損傷等によって異常過熱が発生すると、シート本体の伸びによって、導電性インクからなる配線部が伸ばされることでその電気抵抗値が変化し、その変化をセンサで検知したりすることをきっかけとして、加熱機器への通電や燃料の供給を遮断するように構成しておけば、帯状となったシート本体と配線部が高温での溶融や燃焼によって初めて通電が遮断されるといった危険や加熱機器の本体部分に悪影響が生じる前に安全を確保することができるようになる。
【0011】
ここで、導電性物質を利用したセンサとしては、建築物や構造物の安全性検査のために、フィルムが延びることで電気抵抗値が変化する歪みセンサとして、導電性粒子を高分子物質フィルムに分散させてシート状等の成形物としたものが知られている(特許文献3)。しかしながら、このようなセンサは、加熱機器の安全装置に熱センサとして適用することはこれまで想定されてこなかった。本発明はこの点にも着目し、鋭意研究の結果、上述のような構成の熱センサ用配線シートを作成した場合に、シート本体を切断線で部分的に切断して長尺な帯状とした際に、それに伴って長尺になる配線部に導電性インクを利用すれば、加熱機器の安全装置として安価且つ適切に利用することができることを見出したものである。
【0012】
特に、シート本体は長方形状をなすものとした場合、配線部において、一対の接続端部をこのシート本体の隣接する2つの角部近傍に配置するとともに、配線本体部を、シート本体の一方の対向辺とほぼ平行な複数の直線部と、隣接する直進部同士を繋ぐ複数の連接部を有し一対の接続端部の間で蛇行する幾何学図形に形成し、さらに切断線を、シート本体において、隣接する配線本体部における直線部の間で前述の対向辺と直交する他方の対向辺のうち一方の辺から連接部には至らない領域で直線的に形成したものとすることが好適である。このように構成することで、例えば通常のシルクスクリーン印刷のサイズ(A4版など)のシート本体を適用すれば、シート本体への導電性インクの印刷に際して特別な設定をすることを要さず、低コストでの印刷が実現でき、完成した熱センサ用配線シートの運搬も容易なものとすることができる。そして、本発明の熱センサ用配線シートを切断線で部分的に切断すれば、十分に長尺な帯状の配線シートが簡単に得られることとなるため、加熱機器の本体部分への取付作業(巻回作業)を容易にできることから、例えば点検や交換作業の際であっても、熱センサ用配線シートを部分切断前のシート状の状態で加熱機器の設置現場へ持ち込めば、作業員がその場で帯状に展開して簡単に取付作業を行うことができる。
【0013】
本発明の熱センサ用配線シートに適用される導電性インクとしては、カーボンペーストを主成分として絶縁物質を混合したものが好ましい。カーボンペーストは、黒鉛、カーボンブラック、カーボングラファイト等の炭素粒子と、適宜の絶縁物質及び溶剤で構成される。前述した通り、カーボン(炭素)は電気抵抗率が低いため、導電性インク層の抵抗を上げるためには非常に長い蛇行等のパターンで印刷しなければならないが、本発明の熱センサ用配線シートであれば、比較的小さいシート本体であっても、導電性インクによる長いパターンの配線本体部を印刷により形成することができるため、十分に高い電気抵抗を得ることができる。絶縁物質の例としては、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル、シリコンポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、各種の無定形高分子(非晶性高分子)等の素材から、シート本体の素材に密着するものを選択的に適用することができる。
【0014】
シート本体には、合成樹脂、布、合成又は人工皮革から選択される材質からなるシート状をなすものを適宜に採用することができる。本発明では、シート本体を切断線で部分的に切断して展開して帯状にした際に、切断線の形成の仕方(すなわち、配線本体部のパターン形成の仕方)によっては、シート本体に折り曲げが生じることがあるため、折り曲げても容易には損傷したり破断したりし難い材質をシート本体に適用することが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来のようなコストのかかる大判のシートを用いずとも、通常の印刷により導電性インクで一筆書きの形状とした配線部を形成したシート本体を切断線で部分的に切断すれば長尺な帯状に展開することができ、それを加熱機器の本体部分に巻回して配線部の両端部に設けた接続端部を安全装置のセンサに接続することで、安価且つ容易に安全装置を構成することができる。特に本発明では、加熱機器に異常過熱が生じた場合、帯状となったシート本体及び導電性インクが熱により伸びることで配線部の電気抵抗値が変化する性質を利用しているため、その変化をセンサで検知することで加熱機器への通電や燃料の供給を遮断するようにしておけば、火災の危険や加熱機器の損傷に至る前に適正に安全を確保することができる加熱機器とその安全装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る熱センサ用配線シートを示す平面図。
図2】同実施形態に係る熱センサ用配線シートにおける切断線を部分的に切断して帯状に展開した状態を示す平面図。
図3】同実施形態に係る熱センサ用配線シートを帯状に展開して加熱機器の本体部分に巻回して取り付けた状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係る熱センサ用配線シート1は、図1に示すように、平面視長方形状をなすPET(ポリエチレンテレフタレート)製のフィルムをシート本体2とし、そのシート本体2の一方の面に導電性インクを蛇行する幾何学形状にシルクスクリーン印刷することによって配線部3を形成し、さらにシート本体2上において配線部3に沿った切断部4を形成したものである。
【0019】
本実施形態においてシート本体2には、一般的なシルクスクリーン印刷装置で特別な設定を施すことなく印刷することができるA4判(210mmX297mm)サイズのPETフィルムを適用した一例を示しているが、これとは異なるサイズのPETフィルムを採用することもできる。
【0020】
配線部3は、シート本体2の隣接する2つの角部近傍に一対の接続端部31,31を設定し、これら接続端部31,31の間を電気的に接続している配線本体部32とから構成される。配線本体部32は、シート本体2の短辺21,21と平行に延びる複数の直線部33,33…と、シート本体2の長辺22,22近傍で互い違いに隣接する直線部33,33の端部を湾曲形状で繋ぐ複数の連接部34,34…とによって、全体としてシート本体2の一面全域に亘って蛇行した形状となるように形成したものである。配線本体部32を構成する導電性インクには、炭素粒子に少量の絶縁物質を混合したカーボンペーストを採用している。炭素粒子としては、黒鉛、カーボンブラック、カーボングラファイト等から選択することができ、絶縁物質としては、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル、シリコンポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、各種の無定形高分子(非晶性高分子)等の素材から選択することができる。絶縁物質を選択する際には、特にシート本体2との親和性(密着性)を重視するのが好ましく、本実施形態では、例えばポリ塩化ビニルを採用している。
【0021】
切断部4は、シート本体2における配線部3の隣接する直線部33の中間位置において、連接部34を設けていない側の長辺22から、短辺21と平行に対向する長辺22近傍にある連接部34の手前まで延びる直線状にカッターで切り込みを入れたものである。この切断部4の存在により、シート本体2は、各切断部4で部分的に切断することで、図2に示すように、長尺な1本の帯状に展開することができるようにしている。シート本体2を帯状に展開した状態では、各連接部34を含む領域でシート本体2が部分的に折り曲げられた(折り返された)状態となっている。本実施形態では、配線部3の直線部33をほぼ等間隔で12本設定しており、それに対応して切断部4を11本設定している。このような構成により、シート本体2は帯状に展開した状態で約2mの長さとなっており、その両端部には配線部3の接続端部31,31が位置付けられる。
【0022】
このように帯状に展開した状態の熱センサ用配線シート1を使用する際には、図3に示すように、加熱装置の本体部分X(外装ケースの内側の機器、同図に想像線で示す)に巻回し、その両端部にある接続端部31,31を本体部分X側のセンサ(図示省略)に接続する。例えば、国内で普及しているガス給湯器のうち最も給湯能力が大きい(機器の物理的サイズも最も大きい)である24号給湯器の場合、幅方向及び奥行き方向を1周する長さが約1mであるため、この24号給湯器の本体部分Xに本実施形態の熱センサ用配線シート1を約2mの帯状に展開し巻回して適用する場合は2周巻くことになる。シート本体2が柔軟な帯状となっているため、配線部3に断線が生じなければ、巻回した状態の熱センサ用配線シート1は捻れていたり裏返っていても問題はない。
【0023】
センサ側には、熱センサ用配線シート1の配線部3に流れる電流値や電圧値等を検出できるようにしておく。加熱装置の本体部分Xに過熱状態が生じた際に、シート本体2がその熱で伸びたことにより同じく配線部3にも伸びが生じ、それに伴って配線部3の電気抵抗値が変化(本実施形態の場合は、抵抗値が上昇)する性質を利用して、その変化をセンサ側で電流値や電圧値の変化として検出した場合に、本体部分Xへの通電や燃料の供給を遮断するように設定しておくことで、この加熱装置における過熱対策用の安全装置として機能させることができる。
【0024】
このような本実施形態の熱センサ用配線シート1であれば、通常の印刷規格サイズであるA4判の大きさのシート本体2に導電性インクをシルクスクリーン印刷で印刷することにより配線部3を形成することができるため、熱センサ用配線シート1の製造コストの増大を招くことがなく、保管や運搬が容易なものである。また、配線部3はシート本体2の一方の面全域に亘って形成した蛇行形状であり、切断部4を配線部3における直線部33及びシート本体2の短辺21と平行に複数設けていることから、切断部4の配置や形成も容易であり、この切断部4でシート本体2を部分的に切断し展開することで、熱センサ用配線シート1を容易に長尺な帯状に変形させることができる。また、配線部3自体をシート本体2上に長く形成していることから、カーボンペースト製の配線部3の電気抵抗値を高めることにもなっている。
【0025】
このように長尺に展開した熱センサ用配線シート1は、加熱機器の製造時においては本体部分に巻回して接続端部31,31をセンサに接続するだけで安全装置を組み上げることができる上に、加熱機器の設置現場に作業員が持参して、その場で交換することも容易に行うことができる。
【0026】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した本実施形態では、A4判サイズのシート本体2に12本の直線部33を有するように蛇行させた配線部3を形成し、隣接する直線部33,33の間の切断部4で部分的に切断してシート本体2を展開しているが、例えば、展開した際の帯の幅は狭くなるが、この2倍の数(24本)の直線部33と隣接する直線部33,33間に切断部4を設け場合や、展開した際の帯の幅を変更せず、A3版サイズのシート本体2に24本の直線部33と隣接する直線部33,33間に切断部4を設けた場合には、部分切断後に展開した帯の長さは約4mとすることができるなど、シート本体2のサイズや蛇行形状をなす配線部3における直線部33と切断部4の本数は、必要に応じて適宜に変更することができる。
【0027】
また、シート本体2のサイズに限らず形状についても、印刷コストの低減を考慮すれば、通常のシルクスクリーン印刷等の印刷装置に特別な変更や設定をすることなく配線部3を印刷することができる限りにおいて、適宜の形状を採用することができる。シート本体2の材質については、PETに限らず、その他の合成樹脂、布、合成又は人工皮革等の材質から選択することができ、シート状又はフィルム状として利用することができる。特に本発明では、導電性インクからなる配線部3が熱により伸びて電気抵抗値が変化するという性質を過熱検知に用いていることを考慮すれば、想定される加熱装置の本体部分における過熱温度では溶融したり燃焼したりせず、適度に伸びが生じる材質を選ぶことが望ましく、展開時に折り曲げが生じるような配線部3の印刷パターンを考慮すれば、折り曲げにより配線部3が断線したりシート本体2自体が損傷しないような材質を選ぶことが望ましいといえる。
【0028】
また、配線部3において配線本体部32のシート本体2に対する印刷パターンは、上述した実施形態の蛇行形状に限らず、一対の接続端部31,31の間を連続的に延びる線により途切れることなく重なることなく描かれた平面的に広がりを持つ幾何学図形、すなわち一筆書きで描くことができる幾何学図形であればよく、例えば、ジグザク形状や渦巻形状等を例示することができる。こうした配線部本体32の幾何学形状に伴って、切断部4は配線部本体32にほぼ平行となるようにその近傍に形成すればよい。
【0029】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の熱センサ用配線シートは、給湯器や熱源器といった加熱機器の安全装置の分野において、コスト低減や作業効率の向上、機器の損傷や消失の防止に役立つものである。
【符号の説明】
【0031】
1…熱センサ用配線シート
2…シート本体
3…配線部
4…切断部
31…接続端部
32…配線本体部
33…直線部
34…連接部
X…加熱装置(本体部分)
図1
図2
図3