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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080420
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】注射針
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
A61M37/00 514
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193595
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新津 貴利
(72)【発明者】
【氏名】西村 朋也
(72)【発明者】
【氏名】針生 渉
(72)【発明者】
【氏名】大西 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】小池 夏未
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA72
4C267BB02
4C267BB08
4C267BB23
4C267BB39
4C267BB40
4C267CC01
4C267GG16
4C267HH30
(57)【要約】
【課題】液の注入性と免疫誘導効果とを両立することができる注射針を提供する。
【解決手段】シート基部2から突出する突起を有し、前記突起は、内部が中空の錐体形状であり且つ先端部に開孔31aを有する第1突起31と、錐体形状であり且つ先端部に開孔を有していない第2突起32とを含み、1本以上6本以下の第1突起31を含み、平面視においてシート基部2の中心部に位置する第1領域R1と、第1領域R1と重ならない領域であり且つ2本以上の第2突起32を含む第2領域R2とを有し、第1領域R1における第1突起31と、第2領域R2における第2突起32との間の距離のうち最も短い距離である距離D1が0.3mm以上2mm以下である、注射針。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート基部から突出する突起を有し、
前記突起は、内部が中空の錐体形状であり且つ先端部に開孔を有する第1突起と、錐体形状であり且つ先端部に開孔を有していない第2突起とを含み、
第1領域と第2領域とを有し、
第1領域は、1本以上6本以下の第1突起を含み、平面視において前記シート基部の中心部に位置し、
第2領域は、第1領域と重ならない領域であり且つ2本以上の第2突起を含み、
第1領域における第1突起と、第2領域における第2突起との間の距離のうち最も短い距離である距離D1が0.3mm以上2mm以下である、注射針。
【請求項2】
第1領域に含まれる第1突起の本数は、2本以上5本以下である、請求項1に記載の注射針。
【請求項3】
第1突起は第2突起よりも高さが高い、請求項1又は2に記載に記載の注射針。
【請求項4】
第1領域に含まれる第1突起の本数は第2領域に含まれる第2突起の本数より少ない、請求項1~3のいずれか一項に記載の注射針。
【請求項5】
前記シート基部から突出する前記突起は、先端面が平面又は曲面である略円錐台形状の第3突起を含んでおり、
第2突起は第3突起よりも高さが高い、請求項1~4のいずれか一項に記載の注射針。
【請求項6】
前記シート基部から突出する前記突起は、先端面が平面又は曲面である略円錐台形状の第3突起を含んでおり、
第1突起は第3突起よりも高さが高い、請求項1~5のいずれか一項に記載の注射針。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の注射針と、該注射針に接続された薬剤供給器とを有し、
前記薬剤供給器は、前記注射針と接続された状態下に、該薬剤供給器に充填された薬剤を、第1突起の内部を経由して前記開孔から吐出させることが可能になされている、注射具。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の注射針と、該注射針に接続可能な薬剤供給器と、薬剤とを含み、
前記薬剤供給器は、前記注射針と接続された状態下に、該薬剤供給器に充填された薬剤を、第1突起の内部を経由して前記開孔から吐出させることが可能になされている、注射キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射針に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野、美容分野などにおいて、マイクロニードルなどとも呼ばれる微細な針状突起を備えた注射針による薬剤等の液の皮内投与が注目されている。この注射針によれば、マイクロニードルを表皮又は真皮などの皮膚における比較的浅い層に刺入させて体内に液を注入することが可能であり、通常の注射器に比べて被験者が感じる痛みが大幅に低減されることから、低侵襲的な液の投与手段として注目されている。
【0003】
特許文献1には、平面視円形状の基材シートの一面である上面から突出形成された針状且つ中空の第1突起部と、基材シートの上面における第1突起部の近傍から突出形成され且つ第1突起部より突出高さの低い中空の第2突起部とを有している微細突起具が記載されている。同文献には、第1突起部を先端側から皮膚に刺入させていった場合に、その近傍の第2突起部の先端が皮膚の表面に接触した時点で第1突起部の刺入が止まり、皮膚のより深い部位まで第1突起部が刺入することが防止されることが記載されている。第1突起部の先端部には開口部が形成されており、その開口部を介して第1突起部の中空部と外部とが連通している。また同文献には、第1突起部の先端部を皮膚に刺入し、該第1突起部の中空部に貯留された液状の薬剤を、該先端部の開口部から皮膚に注入することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、表面から突出する微小サイズの複数の針山が形成されたマイクロニードルシートが記載されている。同文献では、針山は、表面側から裏面側まで貫通する貫通孔が形成された貫通針山と、該貫通孔が形成されていないダミー針山とを有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-038781号公報
【特許文献2】国際公開第2021/177317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マイクロニードルを皮膚に刺入して液を注入する場合、皮膚に刺入するマイクロニードルの本数が多い程、免疫誘導効果が高いことが知られている。免疫誘導効果を向上させるためには、マイクロニードルの本数を増やすことが考えられる。しかし、特許文献1及び2のように、内部が中空であり先端部に開孔を有するマイクロニードルの場合、該マイクロニードルの本数を増やすと、全てのマイクロニードルを皮膚に適切に刺入することが困難になる。そのため、マイクロニードルの穿刺性の観点からは改善の余地があった。特許文献1及び2では、穿刺性と免疫誘導効果とを両立させることについて検討していない。
【0007】
本発明は、穿刺性と免疫誘導効果とを両立することができる注射針に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、注射針を提供するものである。
一実施形態では、前記注射針は、シート基部から突出する突起を有することが好ましい。
一実施形態では、第1突起は、錐体形状であり且つ先端部に開孔を有することが好ましい。
一実施形態では、前記突起は、内部が中空の錐体形状であり且つ先端部に開孔を有する第1突起を有することが好ましい。
一実施形態では、前記突起は、錐体形状であり且つ先端部に開孔を有していない第2突起を含むことが好ましい。
一実施形態では、前記注射針は、第1領域と第2領域とを有することが好ましい。
一実施形態では、第1領域は、1本以上6本以下の第1突起を含み、平面視において前記シート基部の中心部に位置することが好ましい。
一実施形態では、第2領域は、第1領域と重ならない領域であり且つ2本以上の第2突起を含むことが好ましい。
一実施形態では、第1領域における第1突起と、第2領域における第2突起との間の距離のうち最も短い距離である距離D1が0.3mm以上2mm以下であることが好ましい。
【0009】
また本発明は、前記注射針と、該注射針に接続された薬剤供給器とを有する注射具を提供するものである。
一実施形態において、前薬剤供給器は、前記注射針と接続された状態下に、該薬剤供給器に充填された薬剤を、第1突起の内部を経由して前記開孔から吐出させることが可能になされていることが好ましい。
【0010】
また本発明は、前記注射針と、該注射針に接続可能な薬剤供給器と、薬剤とを含む、注射キットを提供するものである。
一実施形態において、前記薬剤供給器は、前記注射針と接続された状態下に、該薬剤供給器に充填された薬剤を、第1突起の内部を経由して前記開孔から吐出させることが可能になされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、穿刺性と免疫誘導効果とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の好ましい一実施形態に係る注射針の斜視図である。
図2図2は、図1に示す注射針の突起配置領域の模式平面図である。
図3図3は、図2のIII-III線断面図である。
図4図4は、図2のIV-IV線断面図である。
図5図5は、図1に示す注射針の使用状態を模式的に示す図である。
図6図6は、本発明の好ましい別の実施形態を示す平面図であり、図4相当図である。
図7図7(a)~(c)は、本発明の好ましい更に別の実施形態の突起の配置パターンを示す平面図であり、図4相当図である。
図8図8は、本発明の好ましい更に別の実施形態の突起の配置パターンを示す平面図であり、図4相当図である。
図9図9は、本発明の好ましい更に別の実施形態を示す断面図であり、図3相当図である。
図10図10(a)は、実施例1の注射針の斜視図であり、図10(b)は、実施例1の突起の配置パターンを模式的に表す平面図である。
図11図11は、比較例1の注射針の突起の配置パターンを模式的に表す平面図である。
図12図12は、比較例2の注射針の突起の配置パターンを模式的に表す平面図である。
図13図13は、比較例3の注射針の突起の配置パターンを模式的に表す平面図である。
図14図14は、比較例4の注射針の突起の配置パターンを模式的に表す平面図である。
図15図15は、実施例1及び2並びに比較例1~4の注射針の免疫誘導効果の評価結果を示すグラフである。
図16図16は、液量と膨疹の半径との関係の評価に用いた注射針の突起の配置を模式的に示す平面図である。
図17図17は、液量と膨疹の半径との関係の評価において測定した膨疹の長軸と短軸を模式的に示す平面図である。
図18図18は、液量と膨疹の半径との関係の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明を、その好ましい実施形態を参照しながら説明する。
本発明の注射針1は、典型的にはシート基部2から突出する突起を有する。
注射針1は、典型的には、全体として偏平なシート状の形状を有しており、シート基部2及び該シート基部2の一方の表面から突出する複数の突起を有している。
注射針1は、典型的には、突起が平面方向に分散した状態に配列された突起配置領域を有している。突起配置領域は、典型的には、後述する第1領域R1及び第2領域R2を含む。
注射針1は、平面視したときに、シート基部2の表面に沿う方向である第1方向Xと、第1方向Xに直交する第2方向Yとを有する。
【0014】
注射針1のシート基部2から突出する突起は、内部が中空の錐体形状であり且つ先端部に開孔31aを有する第1突起31を含むことが好ましい。また突起は、錐体形状であり且つ先端部に開孔を有しない第2突起32を含むことが好ましい。また突起は、先端面33aが平面又は曲面である略円錐台形状の第3突起33を含むことが好ましい。この例を図1に示す。
【0015】
第1突起31は、中空部31bを有する微細突起、いわゆるマイクロニードルとなっていることが好ましい(図3及び図4参照)。
第2突起32及び第3突起33は、中空でも中実でもよい。図1及び図3に示す例では、第2突起32及び第3突起33は中実である。第2突起32及び第3突起33が中実であることによって、注射針1から薬剤等の液を注入する際に、該注射針1中に残存する薬剤を低減することができる。
第3突起33は、先端面が穿刺深さ制御部40となっていることが好ましい。図1及び図3に示す例では、第3突起33は、その先端面が平面、すなわち水平方向に延びる直線状となっている。第3突起33の先端面は、曲面、例えば、第3突起33の突出方向に向けて凸の湾曲線状となっていてもよい。
【0016】
注射針1は、第1領域R1を有することが好ましく、第1領域R1は典型的には平面視においてシート基部2の中心部に位置する。第1領域R1は、1本以上6本以下の第1突起31を含むことが好ましい。この例を図2に示す。
シート基部2の中心部は、例えば、シート基部2を、第1方向Xに5等分したときの中央の3領域、好ましくは3等分したときの中央の領域である。また中央領域は、シート基部2を、第2方向Yに5等分したときの中央の3領域であってもよいし、第2方向Yに3等分したときの中央の領域であってもよい。
【0017】
シート基部2の中心部は、シート基部2を第1方向Xに5等分したときの中央の3領域を、第2方向Yに5等分したときの中央の3領域であってもよいし、シート基部2を第1方向Xに5等分したときの中央の3領域を、第2方向Yに3等分したときの中央の領域であってもよい。
またシート基部2の中心部は、シート基部2を第1方向Xに3等分したときの中央の領域を、第2方向Yに5等分したときの中央の3領域であってもよいし、シート基部2を第1方向Xに3等分したときの中央の領域を、第2方向Yに3等分したときの中央の領域であってもよい。
【0018】
注射針1のシート基部2が円形状である場合、シート基部2の中心部は、シート基部2の直径の三分の一、好ましくは二分の一の直径の円形領域であってもよい。この具体例を図6に示す。なお、図6図7(a)~(c)、図8図10(b)、図11~14及び図16では、説明の便宜上、第1突起31の開孔31a、第1突起31及び第2突起32の先端、第3突起の先端面の図示を省略している。また図6図7(a)~(c)、図8図10(b)、図11~14及び図16において、第1突起31を右上がりのハッチングで示し、第2突起32を右下がりのハッチングで示し、第3突起33をドットのハッチングで示している。
シート基部2の中心と第1領域R1の中心とは一致していてもよいし、ずれていてもよい。
【0019】
注射針1は、2本以上の第2突起32を含む第2領域R2を有することが好ましい。第2領域R2は、第1領域R1と重ならない領域である。図2に示す例では、第2領域R2は、第1領域R1を囲んでいる。
第2領域R2に配された第2突起32は、平面視において、各第2突起32の中心を結ぶ仮想線C2が環状をなすように配されていることが好ましい。例えば、第2突起32の中心を結ぶ仮想線C2は、四角形の環状であってもよいし(図2図7(b)参照)、三角形の環状であってもよいし(図7(c)参照)、円形の環状であってもよい(図6図7(a)参照)。
第2領域R2は、第1領域R1を挟んでいてもよい(図8参照)。
【0020】
注射針1は、第1突起31に開孔31aを有していることにより、薬剤等の液の皮内投与に利用可能な液注入具となる。
典型的には、第1突起31の先端部には開孔31aが形成されており(図2図4参照)、その開孔31aを介して第1突起31の中空部31bと外部とが連通している。なお、図3においては、説明の便宜上、開孔31aを大きく誇張している。
開孔31aは、第1突起31を形成するシート基部2を厚み方向に貫通する貫通孔であり、円錐状の第1突起31の先端部に位置していることが好ましい。
第1突起31の中空部31bは、開孔31aから外部に吐出される液の貯留部又は通路として機能する。
ここで第1突起31の先端部とは、シート基部2表面から第1突起31の先端までの突起高さH1(図3参照)の中間位置Mよりも先端側の領域を意味する。
【0021】
注射針1を薬剤の皮内投与に使用する場合には、第1突起31の先端部を皮膚Sに刺入し、該第1突起31の中空部31bに貯留された液状の薬剤Lを、該先端部の開孔31aから皮膚Sに注入する(図5参照)。このように第1突起31の中空部31bが薬剤の貯留部として機能するのは、典型的には、外部から薬剤の供給が無い場合である。
外部から薬剤の供給がある場合、例えば、注射針1と共にシリンジ等の薬剤供給器(図示せず)を併用する場合には、中空部31bは薬剤の通路として機能する。薬剤供給器は、注射針1の背面側にシート状部材を配置し、注射針1の背面と該シート状部材との間に薬剤収容空間を形成してなり、該シート状部材を押圧することで、第1突起31に薬剤を供給するものであってもよい(特開2020-096790号公報〔0011〕参照)。
【0022】
注射針1では、第1突起31と第2突起32との間の距離のうち最も短い距離である距離D1(図2参照)が0.3mm以上2mm以下であることが好ましい。前記距離D1が前述した範内であることの利点は、以下のとおりである。
第1突起31の先端部を皮膚Sに刺入し、薬剤Lを皮膚Sに注入すると、注入された薬剤Lによって皮膚が盛り上がり、膨疹9が形成される(図5参照)。このとき、前記距離D1が前述した範囲内であることにより、第2突起32が、平面視における膨疹9の範囲内において皮膚Sに穿刺されるようになる。つまり、第1突起31によって薬剤Lを注入するときに、第2突起32が膨疹に穿刺されるようになり、第2突起32によって皮膚Sを刺激して免疫誘導効果を高めることができる。
本発明者らが鋭意検討した結果、前記距離D1が大きく、第2突起32が膨疹に刺入されない場合よりも、第2突起32を膨疹に積極的に穿刺する場合の方が、免疫誘導効果を効果的に高めることができることを見出した。
【0023】
免疫誘導効果の有無は、各種公知の方法で判定できる。例えば、ワクチンとして用いられる液剤を皮内に注入し、そのワクチン効果を測定することで、第2突起32による免疫誘導効果を判定できる。ワクチン効果としては、各注射針を用いた場合の、ワクチン製剤に使用される抗原タンパク質や、遺伝情報を含むmRNAまたはDNAによって生体内で作られる抗原タンパク質に対する血中の抗体価を比較することによって判断することができる。
ここで、第1突起31と第2突起32との間の距離とは、第1突起31の頂点と第2突起32の頂点との間の距離を意味する。
【0024】
注射針1においては、第1領域R1に含まれる第1突起31の本数が、1本以上6本以下であることが好ましい。これにより、第1領域R1に含まれる第1突起31の全てを、皮膚Sに適切に刺入することが可能であり、穿刺性、特に第1突起31の穿刺性を向上させることができる。
このように、本発明の注射針1によれば、穿刺性と免疫誘導効果とを両立することができる。
【0025】
注射針1は、例えば、以下のようにして使用することができる。まず、第1突起31を皮膚S内に刺入した状態で、第1突起31の中空部31bに貯留された液状の薬剤Lを、開孔31aから吐出する。これと同時に、薬剤Lの注入により膨疹9が形成される範囲内の皮膚Sを第2突起32で穿刺する。皮膚Sを穿刺することにより、免疫誘導効果が発生し、薬剤Lが注入された人の免疫原性を向上させることができる。
このように、注射針1は、液の注入と免疫誘導とを同時に行うことができる。
【0026】
第1領域R1に含まれる第1突起31の本数は、第1領域R1に含まれる第1突起31の全てを皮膚Sに適切に刺入することが容易となるようにする観点から、好ましくは5本以下、より好ましくは4本以下である。
また、第1領域R1に含まれる第1突起31の本数は、第1突起31の開孔31aから吐出される液量を増やし、皮膚S内に薬剤Lを効率的に注入できるようにする観点から、好ましくは2本以上、より好ましくは3本以上である。
【0027】
前記距離D1は、第2突起32が、平面視における膨疹9の範囲内において確実に皮膚Sに穿刺されるようにする観点から、好ましくは1.9mm以下、より好ましくは1.7mm以下、更に好ましくは1.5mm以下である。
また、前記距離D1は、液Lによってできる膨疹を抑制せずに形成し、スムーズに開孔31aから液剤Lを吐出できるようにする観点から、好ましくは0.4mm以上、より好ましくは0.6mm以上、更に好ましくは0.9mm以上である。
【0028】
第2突起32の配置位置は、注射針1によって皮膚S内に注入される液量に応じて決定することもできる。注射針1によって皮膚S内に注入される液量に応じて、形成される膨疹9の大きさは多少変化する。注射針1を使用する前に、注入予定の液量によって、どの程度の大きさの膨疹9が形成されるかを予め確認して、膨疹9が形成される範囲内に、第2突起32が位置するようにしてもよい。発明者らは、以下の方法により、皮膚S内に注入される液量Vと、形成される膨疹の半径Rとの関係について鋭意検討した。
【0029】
<液量と膨疹の半径との関係の評価>
-20℃で保管されたゲッチンゲンミニブタの摘出皮膚(雄、6週齢、腹側部;オリエンタル酵母工業株式会社)を試験前日から冷蔵庫(4℃)に移し、解凍した。摘出皮膚はキムタオル5~7枚の上に載せ、シェーバーを用いて剃毛し、アルコール綿で表面を拭った状態で投与に供した。
粉末のローダミンB(Sigma-Aldrich)を超純水で0.5mg/mLに調整し、マイクロシリンジ(Agilent)に充填した。マイクロシリンジに穿刺用デバイス及び注射針を装着し、空気抜きを実施した。マイクロシリンジ内の液量を10、25、50、100又は250μLになるようにセットし、注射針に付着した余分な液はキムワイプに吸わせて除去した。注射針の突起の配置を、図16に示す。注射針の第1突起31の高さH1は2mm、第2突起32の高さH2は1.4mm、第3突起33の高さH3は0.9mmとした。第1突起31と第2突起32との間の距離のうち最も短い距離である距離D1は、2.2mmである。第1突起31の中心を結ぶ仮想線C1により形成される仮想円の半径D2は、0.75mmである。
【0030】
注射針を皮膚に垂直に穿刺し、ローダミンB水溶液を適量皮内に投与した。投与後、注射針を抜き取り、直ちにマジックペンで膨疹(周囲よりも白く、盛り上がって見える領域)の輪郭に印を付け、ノギスを用いて膨疹の長軸の長さAと短軸の長さBとを測定した。図17に膨疹を模式的に表した平面図を示す。図17中、符号91は膨疹の輪郭を示し、符号92は、膨疹内の液を示す。各用量3回ずつ投与を実施した。長軸の長さA及び短軸の長さBの平均値を2で除した値を膨疹の半径Rとし、マイクロソフト社製表計算ソフト「エクセル」を用いて対数近似曲線を算出した。結果を、図18に示す。
図18に示すように、皮膚S内に注入される液量Vと、形成される膨疹の半径Rとは、両者は、以下の式(1)の関係を有することが分かった。
R=0.5406ln(V)+0.9483・・・(1)
【0031】
第2突起32が、膨疹9が形成される範囲内において確実に皮膚Sに穿刺されるようにする観点から、注射針1によって皮膚S内に注入される液量Vと、第1領域R1の中心Pから第2突起32までの最短距離D5(図2図6参照)とは、以下の式(2)の関係を満たすことがこのましい。
D5≦0.5406ln(V)+0.9483・・・(2)
【0032】
注射針1では、第1突起31は、第2突起32よりも高さが高いことが好ましい。こうすることにより、第1突起31が確実に穿刺されるようにし、第1突起31を十分に刺入でき、薬剤を漏れなく注入することができる。また、第1突起31を皮膚Sに刺入したときに、第2突起32の刺入深さを必要な程度に調整でき、第2突起32が刺入されることに伴う痛みを低減することもできる。これらの効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、第2突起32の高さH2(図3参照)は、第1突起31の高さH1の、好ましくは99%以下、より好ましくは97%以下であり、更に好ましくは95%以下である。
また、第2突起32が確実に刺入されるようにし、免疫誘導効果が確実に奏されるようにする観点から、第2突起32の高さH2は、第1突起31の高さH1(図3参照)の、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上であり、更に好ましくは65%以上である。
【0033】
第1突起31と第2突起32の高さの差H1-H2は、第1突起31を確実に刺入する観点、及び第2突起32が刺入されることに伴う痛みを低減する観点から、10μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上である。
また、第1突起31と第2突起32の高さの差H1-H2は、第2突起32が確実に刺入されるようにし、免疫誘導効果が確実に奏されるようにする観点から、4900μm以下、好ましくは3000μm以下、より好ましくは2000μm以下である。
【0034】
第1突起31の高さH1は、第1突起31を皮膚に押し付けた際に皮膚が変形しても確実に刺入し、穿刺性を良好にするとともに薬剤を皮膚S内に確実に注入する観点から、100μm以上、好ましくは150μm以上、より好ましくは500μm以上である。
また第1突起31の高さH1は、低侵襲の観点から、5000μm以下、好ましくは4000μm以下、より好ましくは3000μm以下である。
【0035】
第2突起32の高さH2は、皮膚に押し付けることで皮膚に刺激を与え、免疫誘導効果を促進する観点から5μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは50μm以上である。
また第2突起32の高さH2は、低侵襲に注射する観点から、4900μm以下、好ましくは4000μm以下、より好ましくは3000μm以下である。
【0036】
第1領域R1に含まれる第1突起31の本数N1は、第2領域R2に含まれる第2突起32の本数N2よりも少ないことが好ましい。こうすることにより、免疫誘導効果が確実に奏されるようにすることができる。この効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、第1領域R1に含まれる第1突起31の本数N1に対する、第2領域R2に含まれる第2突起32の本数N2の比N2/N1は、2.4以上、好ましくは2.5以上、より好ましくは2.6以上である。
また第1領域R1に含まれる第1突起31の本数N1に対する、第2領域R2に含まれる第2突起32の本数N2の比N2/N1は、第2突起32が刺入されることに伴う痛みを低減する観点から、10以下、好ましくは9以下、より好ましくは8以下である。
【0037】
注射針1は、第3突起33を有していることにより、第1突起31及び第2突起32を先端側から皮膚Sに刺入させていった場合に、第3突起33の穿刺深さ制御部40が皮膚の表面に接触する。これによって、第1突起31及び第2突起32の刺入が止まり、皮膚のより深い部位まで第1突起31及び第2突起32が刺入することが防止される。つまり穿刺深さ制御部40は、第1突起31及び第2突起32の刺入深さを制限するストッパーとして機能する。
【0038】
注射針1は、第1突起31及び第2突起32の皮膚への刺入深さが制御可能になされていることにより、皮膚の任意の深さに薬剤を皮内投与させることができるとともに、免疫誘導効果を効果的に促進させることができる。そのため、本発明の注射針1によれば、薬剤の種類等に応じて第1突起31の刺入深さを調節することで、薬剤の効果を最大限に発揮させることが可能である。また、目的とする免疫誘導効果の程度に応じて第2突起32の刺入深さを調節することで、免疫誘導効果を効果的に生じさせることが可能である。
【0039】
第3突起33は、第1突起31及び第2突起32の何れよりも高さが低いことが好ましい。こうすることにより、第1突起31及び第2突起32の皮膚への刺入深さを容易に制御することができる。以下、この点について説明する。
先ず、第2突起32の高さH2と、第3突起33の高さH3との関係について説明する。第2突起32は、第3突起33よりも高さが高いことが好ましい。こうすることにより、第2突起32を確実に刺入し、皮膚の延伸を抑制して第1突起31を刺入しやすくするとともに、効果的に免疫誘導効果を得ることができる。この効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、第3突起33の高さH3は、第2突起32の高さH2の、好ましくは75%以下、より好ましくは70%以下、更に好ましくは65%以下である。
また皮膚に対してなるべく非侵襲にする観点から、第3突起33の高さH3は、第2突起32の高さH2の、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上である。
【0040】
第2突起32と第3突起33の高さの差H2-H3は、第2突起32を確実に刺入し、皮膚の延伸を抑制して第1突起31を刺入しやすくするとともに、効果的に免疫誘導効果を得るようにする観点から、100μm以上、好ましくは200μm以上、より好ましくは300μm以上である。
また第2突起32と第3突起33の高さの差H2-H3は、皮膚に対してなるべく非侵襲にする観点から、2400μm以下、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1000μm以下である。
【0041】
次に、第1突起31の高さH1と、第3突起33の高さH3との関係について説明する。第1突起31は、第3突起33よりも高さが高いことが好ましい。こうすることにより第1突起31を確実に刺入するとともに、第1突起31から皮膚S内に薬剤を確実に注入することができる。この効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、第3突起33の高さH3は、第1突起31の高さH1の、好ましくは75%以下、より好ましくは70%以下、更に好ましくは65%以下である。
また、真皮に対してなるべく非侵襲にする観点から、第3突起33の高さH3は、第1突起31の高さH1の、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、更に好ましくは40%以上である。
【0042】
第1突起31と第3突起33の高さの差H1-H3は、第1突起31を確実に刺入するとともに、第1突起31から皮膚S内に薬剤を確実に注入する観点から、100μm以上、好ましくは300μm以上、より好ましくは500μm以上である。
また第1突起31と第3突起33の高さの差H1-H3は、真皮に対してなるべく非侵襲にする観点から、4900μm以下、好ましくは4000μm以下、より好ましくは3000μm以下である。
【0043】
第3突起33の高さH3は、第1突起31及び第2突起32の皮膚への刺入深さを容易に制御することができるようにする観点から、3μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは50μm以上である。
また第3突起33の高さH3は、第1突起31及び第2突起32の穿刺性の向上の観点から、3600μm以下、好ましくは3000μm以下、より好ましくは2000μm以下である。
【0044】
注射針1では、第1領域R1は第1突起31を1本のみ含んでいてもよく、2本以上、即ち複数本含んでいてもよい。
第1領域R1が複数本の第1突起31を含んでいる場合、複数本の第1突起31は、配列されており、全体としてまとまって任意の形状を形成していることが好ましい。複数本の第1突起31は、例えば、三角形状(図6図7(c)参照)、円形(図7(a)参照)、四角形(図7(b)参照)、直線状(図8(a)及び(b)参照)に配列されていてもよい。複数本の第1突起31は、第1突起31の中心を結ぶ仮想線C1が環状をなすように配されていることが好ましい(図6図7(a)~(c)参照)。
第1突起31の中心を結ぶ仮想線C1が環状をなすように第1突起31が配されている場合、該仮想線C1で囲まれた領域内には、第1突起31が配されていないことが好ましい。
【0045】
注射針1は、第3領域R3を有することも好ましい。第3領域R3は、第3突起33を含み、第2領域R2を挟むか又は囲んでいる領域である。図6に示す例では、第3領域R3は、第2領域R2を囲んでいる。
第3領域R3に配された第3突起33は、平面視において、各第3突起33の中心を結ぶ仮想線C3が環状をなすように配されていることが好ましい。例えば、第3突起33の中心を結ぶ仮想線C3は、円形の環状であってもよいし(図6図7(a)参照)、四角形の環状であってもよいし(図7(b)参照)、三角形の形状(図7(c)参照)であってもよい。
【0046】
注射針1は、膨疹9が制約なく形成され、液を効率的に注入することができるようにする観点から、第2領域R2に含まれる第2突起32と第3領域R3に含まれる第3突起33との間の距離のうち最も短い距離である距離D4が、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1.0mm以上、更に好ましくは1.5mm以上である。
また前記距離D4は、第1突起31及び第2突起32の穿刺深さを適切に制御する観点から、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは4.5mm以下、更に好ましくは4.0以下である。
図6に示す例のように、第2領域R2が複数の第2突起32を含む場合、該複数の第2突起32それぞれについて、前記距離D4が上述した範囲内であることが好ましい。
【0047】
注射針1は、第2領域R2と第3領域R3との間に、突起を含まない突起非存在領域R4を有することが好ましい。
突起非存在領域R4は、第2領域R2に含まれる第2突起32それぞれについて、前記距離D4が、上述した範囲内である領域である。突起非存在領域R4は所定の幅を有する領域であるところ、図6に示す例では、突起非存在領域R4の幅は前記距離D4と同じである。突起非存在領域R4は、第2突起32及び第3突起33の少なくとも先端を含まない領域であることが好ましい。第2突起32及び第3突起33は、シート基部2から急激に立ち上がっていてもよいし、なだらかに立ち上がっていてもよいところ、突起非存在領域R4は、例えば第2突起32又は第3突起33がシート基部2からなだらかに立ち上がっている場合、第2突起32又は第3突起33の基端部を含んでいてもよい。
第2突起32又は第3突起33がシート基部2からなだらかに立ち上がっている場合、第2突起32の高さH2の80%の高さ位置における、第2突起32と第3突起33との間の距離を、突起非存在領域R4の幅としてもよい。第2突起32又は第3突起33がシート基部2から急激に立ち上がっている場合、第2突起32と第3突起33との基端部どうしの間の距離を、突起非存在領域R3の幅としてもよい。
【0048】
図6に示す例では、突起非存在領域R4は、シート基部2を平面視して、第2領域R2を囲んでいる。
また、突起非存在領域R4は、所定の幅を有し、第2領域R2の周囲を連続して囲んでいる。図8に示す例では、突起非存在領域R3は、シート基部2を平面視して、第1領域R1を挟んでいる。
注射針1が突起非存在領域R4を有することにより、注射針1によって液を皮膚に注入するときに、第3領域R3に含まれる第3突起33が膨疹9に接触することを防ぐことができるので、液注入時に膨疹9の形成が阻害されにくくなり、液を効率的に注入することができるようになる。
突起非存在領域R4の平面視形状は、特に制限されず、例えば、円形の環状(図6参照)、矩形の環状、三角形の環状等であってもよい。
【0049】
第2領域R2は、第3突起33を含んでいてもよいが、第3突起33を含まないことが好ましい。第2領域R2が第3突起33を含まないことにより、第1突起31及び第2突起32を皮膚Sに刺入して液を注入するときに、第3突起33が膨疹9に接触しない。これにより、液注入時に膨疹9が制約なく形成されやすくなり、液を効率的に注入することができるようになる。
第2領域R2及び第3領域R3は、第1突起31を含んでいてもよいが、第1突起31を含まないことが好ましい。こうすることにより、注射針1における第1領域R1のみが液を注入可能な領域となるので、該注射針1を使用して所望の位置に液を注入することが容易となる。
第1領域R1は、第2突起32及び第3突起33を含んでいてもよいが、第2突起32及び第3突起33を含まないことが好ましい。第1領域R1が第2突起32を含まないことにより、なるべく皮膚を非侵襲にすることが可能となる。また第1領域R1が第3突起33を含まないことにより、液を注入するときに第3突起33が膨疹9に接触しなくなる。これにより、制限なく膨疹9が形成されやすくなり、液を効率的に注入することが可能となる。
【0050】
第1領域R1に含まれる第1突起31の本数N1は、投与性及び免疫誘導性を確実に得る観点から、好ましくは1本以上、より好ましくは2本以上、更に好ましくは3本以上である。
また第1領域R1に含まれる第1突起31の本数N1は、なるべく非侵襲性にしつつ、投与性を確保する観点から、好ましくは6本以下、より好ましくは5本以下、更に好ましくは4本以下である。
【0051】
第2領域R2に含まれる第2突起32の本数N2は、投与性及び免疫誘導性を確実に得る観点から、好ましくは2本以上、より好ましくは5本以上、更に好ましくは7本以上である。
また第2領域R2に含まれる第2突起32の本数N2は、なるべく非侵襲性にしつつ、投与性を確保する観点から、好ましくは25本以下、より好ましくは20本以下、更に好ましくは15本以下である。
【0052】
第3領域R3に含まれる第3突起33の本数N3は、投与性及び免疫誘導性を確実に得る観点から、好ましくは2本以上、より好ましくは3本以上である。
また第3領域R3に含まれる第3突起33の本数N3は、なるべく非侵襲性にしつつ、投与性を確保する観点から、好ましくは23本以下、より好ましくは20本以下、更に好ましくは15本以下である。
【0053】
注射針1では、第2突起32の本数N2と第3突起33の本数N3との合計本数N2+N3は、第1突起の本数N1よりも多いことが好ましい。こうすることにより、薬液を投与する針を減少させることで確実な投与を実現するとともに、第2突起32による免疫誘導効果を高めることが可能となる。この効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、第1突起の本数N1に対する、第2突起の本数N2と第3突起の本数N3との合計本数N2+N3の比(N2+N3)/N1は、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは3以上である。
また、なるべく非侵襲にする観点から、前記比(N2+N3)/N1は、25以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは15以下である。
【0054】
注射針1では、投与性及び免疫誘導性を確実に得る観点から、第1突起31を1本以上、第2突起32を2本以上、及び、第3突起33を2本以上配置することが好ましく、該注射針1が有する突起の総本数は、5本以上、好ましくは7本以上、より好ましくは10本以上である。
また、注射針1が有する突起の総本数は、なるべく非侵襲性にしつつ、投与性を確保する観点から、26本以下、好ましくは20本以下、より好ましくは16本以下である。
【0055】
注射針1は、第2突起32の周囲に穿刺深さ制御部40が一体的に形成された複合第2突起52を備えていてもよい。例えば、第2突起32の基部側部分の外周部に穿刺深さ制御部40が一体成形されていることにより、複合第2突起52が形成されていることが好ましい。より詳細には、基部側部分に拡径部41が形成されており、該拡径部41の上端部に、第2突起32の径方向の外方に張り出した段部が形成されている。そして、その段部が穿刺深さ制御部40となっている。この例を図9に示す。
第1突起31及び複合第2突起52を先端側から皮膚に刺入させていった場合に、穿刺深さ制御部40が皮膚の表面に接触することによって、第1突起31及び複合第2突起52の刺入が止まり、皮膚のより深い部位まで第1突起31及び複合第2突起52が刺入することが防止される。複合第2突起52においては、第2突起32の周囲に穿刺深さ制御部40が一体的に形成されているので、皮膚のより深い部位まで複合第2突起52が刺入されることをより確実に防止することができる。
【0056】
次に、注射針1の構成材料について説明する。
注射針1は、材料のハンドリング性、該注射針の強度及び加工性、第1突起31、第2突起32及び第3突起33に硬さを確保し、液を注入しやすくする観点から、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。注射針は熱可塑性樹脂を含む基材シートから形成されていることがより好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂等から選ばれる1又は2以上を含むことができる。
ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等から選ばれる1又は2以上を含むことができる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリ脂肪酸エステル、ポリ乳酸、ポリカプロラクタン、ポリブチレンサクシネート等から選ばれる1又は2以上を含むことができる。
ポリアミドとしては、ナイロン等から選ばれる1又は2以上を含むことができる。
生分解性の観点から、ポリ脂肪酸エステルを含むことが好ましい。
ポリ脂肪酸エステルとしては、具体的に、ポリ乳酸、ポリグリコール酸から選ばれる1又は2以上を含むことができる。
【0057】
注射針1の全質量に対する、該注射針1に含まれる熱可塑性樹脂の質量の割合は、注射針の成型性、寸法安定性を向上する観点から好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上である。
また、熱可塑性樹脂の質量の割合は、注射針に例えば機能剤を添加して各種効果を持たせる観点から好ましくは100%以下、より好ましくは98%以下、更に好ましくは96%以下である。
また、熱可塑性樹脂の質量の割合は、好ましくは50%以上100%以下、より好ましくは70%以上98%以下、更に好ましくは90%以上96%以下である。
ここで、各種機能剤として、抗菌剤、殺菌剤、保湿剤、流動改善剤、帯電防止剤、着色剤等を用いることができる。
【0058】
注射針1によって皮膚に注入する薬剤は、注射針1の使用用途に応じて適宜選択することができる。薬剤は、例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、COVID-19、結核、狂犬病、ポリオ、水ぼうそう、風しん、麻疹、破傷風等の感染症を予防または慢性B型肝炎、結核、狂犬病、悪性新生物等を治療するワクチン、癌患者向けの鎮痛薬、インスリン、生物製剤、遺伝子治療薬、注射剤、皮膚適用製剤等から選ばれる1又は2以上を含むことができる。
注射針1が有する第1突起31は、皮膚を穿刺することから、注射針1は、従来の経皮投与に用いられる薬理活性物質以外にも、皮下注射、筋肉内注射、静脈注射が必要な薬理活性物質にも適用することが出来る。
【0059】
本発明には、注射針と、該注射針に接続された薬剤供給器とを有する注射具が包含される。薬剤供給器は、注射針と接続された状態下に、薬剤供給器に充填された薬剤を、第1突起の内部を経由して前記開孔から吐出させることが可能になされている。注射針と薬剤供給器とは、使用に際して互いに連結されるものでも、使用前から連結されていて使用後に分離可能なものでも、分離不可能に一体化されているものでもよい。薬剤は、典型的には、薬剤供給器に予め充填されているか、又は使用に際してアンプルや小瓶等の任意の容器から薬剤供給器に移されて充填される。
本発明の注射具が有する注射針としては、上述した本発明の注射針1を用いることができる。薬剤供給器は、注射針と接続された状態下に、該薬剤供給器に充填された薬剤を、第1突起31の内部を経由して開孔31aから吐出させることが可能になされている。薬剤供給器としては、例えば、シリンジ、チューブ等を用いることができる。
本発明の注射具によれば、薬剤を注入するときに、穿刺性と免疫誘導効果とを両立することができる。
【0060】
本発明には、注射針と、該注射針に接続可能な薬剤供給器と、薬剤とを含む注射キットが包含される。薬剤供給器は、注射針と接続された状態下に、薬剤供給器に充填された薬剤を、第1突起の内部を経由して前記開孔から吐出させることが可能になされている。注射針と薬剤供給器とは、使用に際して互いに連結されるものでも、使用前から連結されていて使用後に分離可能なものでも、分離不可能に一体化されているものでもよい。薬剤は、典型的には、薬剤供給器に予め充填されているか、又は使用に際してアンプルや小瓶等の任意の容器から薬剤供給器に移されて充填される。
本発明の注射キットが有する注射針としては、上述した本発明の注射針1を用いることができる。薬剤供給器としては、上述した本発明の注射具に係る薬剤供給器と同様のものを用いることができる。薬剤としては、上述した本発明の注射針1に用いられる薬剤と同様のものを用いることができる。
本発明の注射キットによれば、薬剤を注入するときに、穿刺性と免疫誘導効果とを両立することができる。
【0061】
本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されず適宜変更可能である。
例えば、図3に示す例では、第2突起32及び第3突起33は中実であったが、第2突起32及び第3突起33の何れか一方又は両方は、中空であってもよい。また図7に示す例では、複合第2突起52は中実であったが、複合第2突起52は中空であってもよい。注射針1において、第1突起31以外の突起は、中実であることが好ましい。こうすることにより、第1突起31の開孔31aから吐出されるべき液が、他の突起の内部に貯留されることを防ぐことができるので、液を効率的に注入することができる。
【0062】
前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0063】
<1>
シート基部から突出する突起を有し、
前記突起は、内部が中空の錐体形状であり且つ先端部に開孔を有する第1突起と、錐体形状であり且つ先端部に開孔を有していない第2突起とを含み、
第1領域と第2領域とを有し、
第1領域は、1本以上6本以下の第1突起を含み、平面視において前記シート基部の中心部に位置し、
第2領域は、第1領域と重ならない領域であり且つ2本以上の第2突起を含み、
第1領域における第1突起と、第2領域における第2突起との間の距離のうち最も短い距離である距離D1が0.3mm以上2mm以下である、注射針。
<2>
第1領域に含まれる第1突起の本数は、2本以上5本以下、好ましくは3以上4以下である、前記<1>に記載の注射針。
【0064】
<5>
第1突起は第2突起よりも高さが高い、前記<1>~前記<4>に何れか一に記載に記載の注射針。
<6>
前記シート基部から突出する前記突起は、先端面が平面又は曲面である略円錐台形状の第3突起を含んでおり、
第3突起は、第1突起及び第2突起の何れよりも高さが低い、前記<1>~前記<5>の何れか一に記載の注射針。
<8>
第1領域に含まれる第1突起の本数は第2領域に含まれる第2突起の本数より少なく、前者に対する後者の比が2.4以上10以下、好ましくは2.5以上9以下、より好ましくは2.6以上8以下である、前記<1>~前記<6>の何れか一に記載の注射針。
【0065】
<9>
前記シート基部から突出する前記突起は、先端面が平面又は曲面である略円錐台形状の第3突起を含んでおり、
第2突起の本数N2と第3突起の本数N3との合計本数N2+N3は、第1突起の本数N1よりも多く、
第1突起の本数N1に対する、第2突起の本数N2と第3突起の本数N3との合計本数N2+N3の比(N2+N3)/N1は、好ましくは2以上25以下、より好ましくは2.5以上20以下、更に好ましくは3以上15以下である、前記<1>~前記<8>の何れか一に記載の注射針。
<10>
前記シート基部から突出する前記突起は、先端面が平面又は曲面である略円錐台形状の第3突起を含んでおり、
第2突起は第3突起よりも高さが高く、
第3突起の高さは、第2突起の高さの、好ましくは50%以上75%以下、より好ましくは55%以上70%以下、更に好ましくは60%以上65%以下である、前記<1>~前記<9>の何れか一に記載の注射針。
<11>
前記シート基部から突出する前記突起は、先端面が平面又は曲面である略円錐台形状の第3突起を含んでおり、
第2突起は第3突起よりも高さが高く、
第2突起と第3突起の高さの差は、100μm以上2400μm以下、好ましくは200μm以上2000μm以下、より好ましくは300μm以上1000μm以下である、前記<1>~前記<10>の何れか一に記載の注射針。
【0066】
<12>
第1突起は第2突起よりも高さが高く、
第2突起の高さは、第1突起の高さの、好ましくは55%以上99%以下、より好ましくは60%以上97%以下、更に好ましくは65%以上95%以下である、前記<1>~前記<11>の何れか一に記載の注射針。
<13>
第1突起は第2突起よりも高さが高く、
第1突起と第2突起の高さの差は、10μm以上4900μm以下、好ましくは50μm以上3000μm以下、より好ましくは100μm以上2000μm以下である、前記<1>~前記<12>の何れか一に記載の注射針。
<14>
前記シート基部から突出する前記突起は、先端面が平面又は曲面である略円錐台形状の第3突起を含んでおり、
第1突起は第3突起よりも高さが高く、
第3突起の高さは、第1突起の高さの、好ましくは30%以上75%以下、より好ましくは35%以上70%以下、更に好ましくは40%以上65%以下である、前記<1>~前記<13>の何れか一に記載の注射針。
<15>
前記シート基部から突出する前記突起は、先端面が平面又は曲面である略円錐台形状の第3突起を含んでおり、
第1突起は第3突起よりも高さが高く、
第1突起と第3突起の高さの差は、100μm以上4900μm以下、好ましくは300μm以上4000μm以下、より好ましくは500μm以上3000μm以下である、前記<1>~前記<14>の何れか一に記載の注射針。
【0067】
<16>
第1突起の高さは、100μm以上5000μm以下、好ましくは150μm以上4000μm以下、より好ましくは500μm以上3000μm以下である、前記<1>~前記<15>の何れか一に記載の注射針。
<17>
第2突起の高さは、5μm以上4900μm以下、好ましくは20μm以上4000μm以下、より好ましくは50μm以上3000μm以下である、前記<1>~前記<16>の何れか一に記載の注射針。
<18>
第3突起の高さは、3μm以上3600μm以下、好ましくは10μm以上3000μm以下、より好ましくは50μm以上2000μm以下である、前記<1>~前記<17>の何れか一に記載の注射針。
<19>
前記注射針が有する突起の総本数は、5本以上26本以下、好ましくは7本以上20本以下、より好ましくは10本以上16本以下である、前記<1>~前記<18>の何れか一に記載の注射針。
【0068】
<20>
前記シート基部から突出する前記突起は、先端面が平面又は曲面である略円錐台形状の第3突起を含んでおり、
第3突起を含み、第2領域を挟むか又は囲んでいる第3領域を有する、前記<1>~前記<19>の何れか一に記載の注射針。
<21>
第2領域と第3領域の間には、突起を含まない突起非存在領域が配されており、
第2領域に含まれる第2突起と、第3領域に含まれる第3突起との間の距離のうち最も短い距離は、好ましくは0.5mm以上5.0mm以下、より好ましくは1.0mm以上4.5mm以下、更に好ましくは1.5mm以上4.0以下である、前記<20>に記載の注射針。
<22>
第2領域は、第3突起を含まない、前記<20>又は前記<21>の何れか一に記載の注射針。
<23>
第2領域及び第3領域は、第1突起を含まない、前記<20>~前記<22>の何れか一に記載の注射針。
<24>
第1領域は、第2突起及び第3突起を含まない、前記<20>~前記<23>の何れか一に記載の注射針。
<25>
前記注射針は熱可塑性樹脂を含む、前記<1>~前記<24>の何れか一に記載の注射針。
【0069】
<26>
第1突起の本数は3本以上4本以下であり、
前記距離D1は、0.9mm以上1.5mm以下であり、
第1突起は、第2突起よりも高さが高く、
前記シート基部から突出する前記突起は、先端面が平面又は曲面である略円錐台形状の第3突起を含んでおり、
第3突起は、第1突起及び第2突起よりも高さが低く、
第1突起の本数に対する、第2突起の本数の比が2.6以上8以下であり、
第1突起の本数に対する、第2突起及び第3突起の本数の合計の比が3以上15以下であり、
第1突起の高さは、500μm以上3000μm以下であり、
第1突起と第2突起の高さの差は、100μm以上2000μm以下であり、
第1突起と第3突起の高さの差は、500μm以上3000μm以下である、前記<1>~前記<25>に記載の注射針。
【0070】
<27>
第1突起の前記開孔から吐出される液の液量をVとし、
平面視における第1領域の中心から第2突起までの間の最短距離をD5としたときに、
液量V(μL)と最短距離D5(mm)とが以下の式(1)を満たす、前記<1>~前記<26>の何れか一に記載の注射針。
D5≦0.5406ln(V)+0.9483・・・(1)
<28>
前記<1>~前記<27>の何れか一に記載の注射針と、該注射針に接続された薬剤供給器とを有し、
前記薬剤供給器は、前記注射針と接続された状態下に、該薬剤供給器に充填された薬剤を、第1突起の内部を経由して前記開孔から吐出させることが可能になされている、注射具。
<29>
前記<1>~前記<28>の何れか一に記載の注射針と、該注射針に接続可能な薬剤供給器と、薬剤とを含み、
前記薬剤供給器は、前記注射針と接続された状態下に、該薬剤供給器に充填された薬剤を、第1突起の内部を経由して前記開孔から吐出させることが可能になされている、注射キット。
【0071】
<30>
シート基部から突出する第1及び第2突起を有し、
第1突起は、内部が中空の錐体形状であり且つ先端部に開孔を有しており、
第2突起は、錐体形状であり且つ先端部に開孔を有しておらず、
1本以上6本以下の第1突起を含み、平面視において前記シート基部の中心部に位置する第1領域と、第1領域と重ならない領域であり且つ2本以上の第2突起を含む第2領域とを有する注射針を用いて皮膚内に薬剤を注入する方法であって、
第1突起を皮膚内に刺入した状態で薬剤を第1突起の開孔から吐出することにより、該薬剤を皮膚内に注入するとともに、
前記薬剤の注入により膨疹が形成される範囲内の皮膚を第2突起で穿刺することにより、該薬剤が注入された人の免疫原性を向上させる方法。
<31>
第1突起の前記開孔から吐出される液の液量をVとし、
平面視における第1領域の中心から第2突起までの間の最短距離をD5としたときに、
液量V(μL)と最短距離D5(mm)とが以下の式(1)を満たす、前記<31>に記載の方法。
D5≦0.5406ln(V)+0.9483・・・(1)
【実施例0072】
以下、実施例を基に本発明を更に詳述するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
〔実施例1〕
図10(a)に示す注射針1と同様の構成を有し、図10(b)と同じ突起の配置を有する注射針を製造した。実施例1の注射針は、突起の配置パターン以外は、図1に示す注射針と同様の構成を有する。注射針の各突起の寸法、シート基部の寸法、第1突起31と第2突起32との間の距離のうち最も短い距離である距離D1、第1突起31の中心を結ぶ仮想線C1により形成される仮想円の半径D2、及び第1領域R1における第1突起31どうしの間の距離のうち最も短い距離D3は、表1に示すとおりである。注射針は、熱可塑性樹脂であるポリ乳酸100%からなる基材シートに超音波振動を印可した加工針による突起形成加工を施して形成した。
〔比較例1~4〕
突起の本数や配置を変更した以外は、実施例1と同様にして注射針を製造した。比較例1~4の突起の配置を、それぞれ図11図14に示す。
【0074】
〔穿刺性〕
実施例1及び比較例1~4の注射針について、以下の方法により液の穿刺性を評価した。
-20℃で保管されたゲッチンゲンミニブタの摘出皮膚(雄、6週齢、腹側部;オリエンタル酵母工業株式会社)を試験前日から冷蔵庫(4℃)に移し、解凍した。摘出皮膚はキムタオル5~7枚の上に載せ、シェーバーを用いて剃毛し、アルコール綿で表面を拭った状態で投与に供した。
【0075】
粉末のローダミンB(Sigma-Aldrich)を超純水で0.5mg/mLに調整し、マイクロシリンジ(Agilent)に充填した。マイクロシリンジに、実施例1及び比較例1~4の注射針をそれぞれ装着し、空気抜きを実施した。マイクロシリンジ内の液量が100μLとなるようにセットし、注射針に付着した余分な液はキムワイプに吸わせて除去した。注射針の突起を穿刺対象に垂直に穿刺し、ローダミンB水溶液を注入して、液の注入不良が生じるか否かを目視により確認した。
〔穿刺性の評価基準〕
〇:以下(1)及び(2)の両方を満たす。
(1)第1突起を穿刺したときに、注液ができる程度の深さに穿刺することができる。
(2)第1突起を穿刺したときに、深く刺さり過ぎず、薬液注液時に膨疹が形成される程度の深さに穿刺することができる。
×:上記(1)及び(2)のいずれか又は両方を満たさない。
【0076】
【表1】
【0077】
〔免疫誘導効果〕
実施例1及び比較例1~3の注射針について、以下の方法により免疫誘導効果を評価した。
モルモット(Hartley,雌,6週齢;日本エスエルシー株式会社)を自由摂餌、自由飲水下において、7日間予備飼育した後、体重によるバラつきを考慮して群分けを実施した。モルモットをイソフルラン麻酔で眠らせ、投与部位(横腹)をバリカン及びシェーバーを用いて除毛し、アルコール消毒した。実施例1及び比較例1~3の注射針について100μLルアーロック式マイクロシリンジ(Agilent社)に取り付け、タンパク質溶液(B型肝炎表面抗原タンパク質製剤:ビークル社製)の充填及び空気抜きを実施した。モルモットの側腹部の皮膚を指でつまみ、伸張し、注射針付きのシリンジを垂直に振り下ろして穿刺し、各1.0μg/25μLのタンパク質溶液を投与した。タンパク質溶液の投与は、実施例1及び比較例1~3の注射針それぞれについて、前述した群分けにより分けられた別々の群のモルモットに対して行った。
2週間のインターバル後に2回目の投与を同様に行い、初回投与から42日後に足背静脈より一部採血を実施した。採取した血液は直ちにシリンジからキャピジェクトII(テルモ株式会社)に移し、室温で30分静置した後、氷上で保管し、3,000xg、4℃で10分間遠心分離し、上清を1.5mLエッペンチューブに回収し、解析日まで4℃で保管した。
タンパク質溶液に対する抗体価をELISA法により測定した。
結果を図15に示す。図15において、縦軸の吸光度は、投与したタンパク質に対する抗体価の指標であり、吸光度が大きい程、免疫誘導性が高いことを示す。
【0078】
実施例1の注射針は、表1に示すとおり、良好な穿刺性を示す。また、実施例1の注射針は、図15に示すとおり、比較例1~3の注射針に比して、免疫誘導効果が高いことが分かる。
比較例4の注射針よりも、実施例1及び比較例1~3の注射針の方が、表1に示すとおり、穿刺性は良好である。また比較例1~3の注射針よりも実施例1の方が、図15に示すとおり、免疫誘導効果に優れる。
実施例1の注射針は液の注入性と免疫誘導効果とを両立することができることから、本発明の注射針は、液の注入性と免疫誘導効果とを両立することができることが分かる。
【符号の説明】
【0079】
1 注射針
2 シート基部
31 第1突起
32 第2突起
R1 第1領域
R2 第2領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図18