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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080431
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】有機高分子光触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/00 20060101AFI20240606BHJP
   C08G 8/22 20060101ALI20240606BHJP
   C08G 8/16 20060101ALI20240606BHJP
   C08G 8/14 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
C08G8/00 F
C08G8/22
C08G8/16
C08G8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193615
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白石 康浩
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 泰彰
(72)【発明者】
【氏名】橋本 真紀
(72)【発明者】
【氏名】伊東 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】大倉 友也
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 敦史
【テーマコード(参考)】
4J033
【Fターム(参考)】
4J033CA02
4J033CA03
4J033CA13
4J033CC03
4J033CD05
4J033CD06
4J033EA18
4J033FA08
4J033HA07
4J033HB00
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、高圧下で反応を行うための耐圧性の反応容器の使用を必要としない有機高分子光触媒の製造方法を提供すること。
【解決手段】フェノール類とアルデヒド類とを含有する混合液を、フェノール類1gに対して溶媒10mL以上100mL未満にて調製する工程(1)と、前記混合液を大気圧下、反応させることにより樹脂を形成する工程(2)と、前記工程により得られた樹脂を親水性溶媒にて洗浄する工程(3)、および前記工程により得られた樹脂から溶媒を取り除く乾燥工程(4)とを有する、有機高分子光触媒の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール類とアルデヒド類とを含有する混合液を、フェノール類1gに対して溶媒10mL以上100mL未満にて調製する工程(1)と、
前記混合液を大気圧下、反応させることにより樹脂を形成する工程(2)と、
前記工程により得られた樹脂を親水性溶媒にて洗浄する工程(3)、
および前記工程により得られた樹脂から溶媒を取り除く乾燥工程(4)
とを有する、有機高分子光触媒の製造方法。
【請求項2】
フェノール類、アルデヒド類および有機溶媒を含有する混合液を、フェノール類1gに対して有機溶媒10mL以上100mL未満にて調製する工程(1)と、
前記混合液を大気圧下、反応させることにより樹脂を形成する工程(2)と、
前記工程により得られた樹脂を親水性溶媒にて洗浄する工程(3)、
および前記工程により得られた樹脂から溶媒を取り除く乾燥工程(4)
とを有する、請求項1に記載の有機高分子光触媒の製造方法。
【請求項3】
前記工程(2)において、混合液を大気圧下、100~320℃の温度で反応させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機高分子光触媒の製造方法。
【請求項4】
前記フェノール類がレゾルシノール、m-アミノフェノール、m-クロロフェノール、m-メトキシフェノール、m-クレゾール、m-フェニレンジアミン及びフェノールからなる群から選択される少なくとも一種のフェノール又はフェノール誘導体である請求項1に記載の有機高分子光触媒の製造方法。
【請求項5】
前記フェノール類がレゾルシノール、m-アミノフェノール、m-クロロフェノール、m-メトキシフェノール、m-クレゾール、m-フェニレンジアミン及びフェノールからなる群から選択される少なくとも一種のフェノール又はフェノール誘導体である請求項2に記載の有機高分子光触媒の製造方法。
【請求項6】
前記フェノール類がレゾルシノール、m-アミノフェノール、m-クロロフェノール、m-メトキシフェノール、m-クレゾール、m-フェニレンジアミン及びフェノールからなる群から選択される少なくとも一種のフェノール又はフェノール誘導体である請求項3に記載の有機高分子光触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機高分子光触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセチレンやポリチオフェンに代表される導電性高分子は、半導体としての性質を示し、有機EL素子やFET(電界効果型トランジスタ)、光電変換素子(太陽電池)への応用については多くの研究がおこなわれ、無機半導体を有機高分子半導体に置き換えた次世代電子デバイスの研究が進められている。
【0003】
一方、光触媒については、本多・藤嶋効果が見出されて以来、様々な無機材料による半導体光触媒が開発され、酸化チタン(TiO)は光触媒活性や光誘起親水性を示すことから実用化され、酸化タングステン(WO)は、光触媒や光電極材料として広く研究されている。しかし、有機高分子半導体を利用した有機高分子光触媒についての報告例はまだ少なく、光触媒への応用が期待されている。
【0004】
有機高分子半導体を利用した光触媒は、ポリマーの特徴を活かした、薄膜化や積層化・大面積フィルムの作製など加工性の点でも有効であると考えられる。また、有機高分子半導体は可視光領域に吸収極大を持つものが多く、可視光に応答する光触媒の設計が可能となり、効率の良い光化学変換システムの構築が可能である室内光で利用可能な有機高分子光触媒への応用が期待できる。
【0005】
例えば、有機高分子の光触媒の用途として、過酸化水素の製造に用いることが期待されている。過酸化水素は水のみを排出するクリーンな酸化剤であり、漂白剤、殺菌剤、洗浄剤および有機合成試薬(酸化剤)等として幅広い用途で広く利用されており、国内年間生産量は20万トンと非常に多い。
【0006】
現状、過酸化水素は、工業的にはアントラキノン法により合成されているが、過酸化水素を得るまでに多段階を必要とするため非効率で価格の高騰を招いている。他方、水素と酸素とから過酸化水素を直接合成する方法も多数研究されているが、水素、酸素混合ガスによる爆発の危険がある他、酸やハロゲンが製品に混入するという課題がある。また、水素を使うため、水素を作る必要がある他、Pdを触媒として使う必要がある点で課題がある。
【0007】
従って、安全性が高く且つ地球上に豊富に存在する原料から光触媒を用いて純粋な過酸化水素を合成する方法の開発が注目されている。例えば、特許文献1には、水、水の酸化触媒、特定の遷移金属錯体(光触媒)、及び酸素(O)を含む反応系に光照射することにより過酸化水素を発生させる過酸化水素発生工程を含む過酸化水素製造方法が開示されている。しかしながら、光触媒として高価な貴金属触媒(Ir、Ru等)が必要であること、酸素を選択的に二電子還元するために多量のSc塩を使う必要があること、太陽エネルギー変換効率(SCC efficiency)が最大0.25%に留まっていること等から、更なる改善の余地がある。
【0008】
その他、水を原料とし、光触媒を用いて過酸化水素を製造することは非特許文献1~3をはじめとして各種の文献で報告されているが、金属酸化物触媒を必要とすること、得られる過酸化水素濃度が0.1mM以下と低いこと、太陽エネルギー変換効率(SCC efficiency)がいずれも0.01%以下であると推測されること等から、更なる改善の余地がある。
【0009】
また、高圧高温下での有機高分子光触媒の合成反応を行い、過酸化水素製造用の有機高分子光触媒として用いた報告(特許文献2)があるが、オートクレーブといった耐圧性の高価な反応容器を用いる必要があり、コスト面での課題がある。さらに大規模生産設備での生産を行う場合、高圧であることによる反応容器の破損、それに伴う事故といった生産工程でのリスクが考えられ安全性についての課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開番号WO2013/002188
【特許文献2】国際公開番号WO2018/074456
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Mater.Chem.A 2014,2,13822-13826
【非特許文献2】Energy Environ.Sci.2014,7,4023-4028
【非特許文献3】Energy Environ.Sci.2016,9,1063-1073
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、高圧下で反応を行うための耐圧性の反応容器の使用を必要としない有機高分子光触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、発明者らは、高圧環境を必要としない有機高分子光触媒の製造方法について鋭意検討した結果、耐圧性の反応容器を必要としない、大気圧下で合成が可能である有機高分子光触媒の製造方法を見出した。すなわち、本発明は以下を要旨とするものである。
【0014】
1.フェノール類とアルデヒド類とを含有する混合液を、フェノール類1gに対して溶媒10mL以上100mL未満にて調製する得る工程(1)、
前記混合液を大気圧下、反応させることにより樹脂を形成する工程(2)、
前記工程により得られた樹脂を親水性溶媒にて洗浄する工程(3)、
および前記工程により得られた樹脂から溶媒を取り除く乾燥工程(4)
とを有する、有機高分子光触媒の製造方法。
【0015】
2.フェノール類、アルデヒド類および有機溶媒を含有する混合液を、フェノール類1gに対して有機溶媒10mL以上100mL未満にて調製する得る工程(1)、
前記分散液を大気圧下、反応させることにより樹脂を形成する工程(2)、
前記工程により得られた樹脂を親水性溶媒にて洗浄する工程(3)、
および前記工程により得られた樹脂から溶媒を取り除く乾燥工程(4)
とを有する、上記記載の有機高分子光触媒の製造方法。
【0016】
3.前記工程(2)において、混合液を大気圧下、100~320℃の温度で反応させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機高分子光触媒の製造方法。
【0017】
4.前記フェノール類がレゾルシノール、m-アミノフェノール、m-クロロフェノール、m-メトキシフェノール、m-クレゾール、m-フェニレンジアミン及びフェノールからなる群から選択される少なくとも一種のフェノール又はフェノール誘導体である上記1に記載の有機高分子光触媒の製造方法。
【0018】
5.前記フェノール類がレゾルシノール、m-アミノフェノール、m-クロロフェノール、m-メトキシフェノール、m-クレゾール、m-フェニレンジアミン及びフェノールからなる群から選択される少なくとも一種のフェノール又はフェノール誘導体である上記2に記載の有機高分子光触媒の製造方法。
【0019】
6.前記フェノール類がレゾルシノール、m-アミノフェノール、m-クロロフェノール、m-メトキシフェノール、m-クレゾール、m-フェニレンジアミン及びフェノールからなる群から選択される少なくとも一種のフェノール又はフェノール誘導体である上記3に記載の有機高分子光触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の製造方法によって製造された有機高分子光触媒は、良好な光触媒性能を有する。また、本発明の製造方法は、高圧下で反応を行うための耐圧性の反応容器の使用といった作業工程を含まない大気圧下で有機高分子光触媒を製造することができるため、安全性が高く、製造コストの低減にもつなげることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0022】
本発明の有機高分子光触媒の製造方法は、
フェノール類とアルデヒド類とを含有する混合液を、フェノール類1gに対して溶媒10mL以上100mL未満にて調製する得る工程(1)、
前記混合液を大気圧下、反応させることにより樹脂を形成する工程(2)、
前記工程により得られた樹脂を親水性溶媒にて洗浄する工程(3)、
および前記工程により得られた樹脂から溶媒を取り除く乾燥工程(4)
とを有する。
【0023】
(有機高分子光触媒)
本発明の有機高分子光触媒は、フェノール類が架橋基により連結された構造を有する有機高分子であり、前記有機高分子のバンド構造は、伝導帯(CB)が酸素の二電子還元電位よりも卑な電位であり、価電子帯(VB)が水の四電子酸化電位よりも貴な電位である。
【0024】
フェノール類の中でも、電子供与性の観点から、レゾルシノール、m-アミノフェノール、m-クロロフェノール、m-メトキシフェノール、m-クレゾール、m-フェニレンジアミン及びフェノールからなる群から選択される少なくとも一種のフェノール又はフェノール誘導体が好ましいものとして挙げられる。
【0025】
これらのフェノール類を連結して有機高分子とするための架橋基(リンカー)としては限定的ではないが、電子伝導性の観点から短い架橋基が望ましく、例えば、メチレン(-CH-)、エチレン(-CH-CH-)及びエーテル結合(-CH-O-CH-)からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0026】
本発明では、上記有機高分子の中でも、フェノール誘導体であるレゾルシノールがメチレン、エチレン及びエーテル結合の少なくとも一種の架橋基により連結された構造を有するレゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂(RF樹脂)が好ましいものとして挙げられる。
【0027】
本発明の有機高分子光触媒の製造方法としては、上記特定の構成及び上記特定のバンド構造を有する有機高分子が得られる方法である限り特に限定されないが、本発明では、フェノール類とアルデヒド類とを含有する原料混合物を、有機溶媒または水と有機溶媒を含有する反応溶媒中、酸性触媒、塩基性触媒または無触媒下、加熱して反応させる工程を有する製造方法であることが好ましい。
【0028】
〔工程(1)〕
準備工程では、フェノール類と、アルデヒド類と、および溶媒を含む混合液を調製する。必要に応じて、触媒を添加した反応系にて行うことができる。
以下、混合液について詳細を説明する。
【0029】
〈フェノール類〉
本発明において、フェノール類としては、具体的には、電子供与性の観点から、レゾルシノール、m-アミノフェノール、m-クロロフェノール、m-メトキシフェノール、m-クレゾール、m-フェニレンジアミン及びフェノールが挙げられるが、これらに限定されない。フェノール類としては、上記具体例からなる群から選択される少なくとも一種のフェノール又はフェノール誘導体が好ましいものとして挙げられる。
【0030】
〈アルデヒド類〉
本発明において、アルデヒド類としては、具体的には、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、サリチルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、トリオキサンなどが挙げられるが、これらに限定されない。アルデヒド類としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド及びトリオキサンからなる群から選択される1種以上を用いることが好ましい。
【0031】
〈溶媒〉
本発明の反応に用いる溶媒としては、有機溶媒を用いることができ、有機溶媒と水を含んだ反応系にて調製することもできる。有機溶媒を含むことで、オートクレーブ等の耐圧容器を使用せず、大気圧下で反応を行い有機高分子光触媒の調製が可能となる。
溶媒としては、具体的に、水;トリエタノールアミン等のアミン類;メタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、シクロヘキサノール、2-n-ブトキシエタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルフェニルケトン等のケトン系有機溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、ドデシルベンゼン、メシチレン、テトラリン(1,2,3,4‐テトラヒドロナフタレン)、モノクロロベンゼン(クロロベンゼン)、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族系有機溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系有機溶媒;ベンゾニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒;酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;N-メチル-2-ピロリドン、ホルムアミド、アセトアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、2-ピロリドン、N-メチル-ε-カプロラクタム、ε-カプロラクタム、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、N,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、のアミド尿素類、及びラクタム類;スルホラン、ジメチルスルホラン等のスルホラン類等があげられるが、これらに限定されない。また、上記溶媒は、1種または2種以上を混合して使用してもよい。アミン系有機溶媒、アルコール系溶媒、芳香族系有機溶媒およびアミド尿素類であることが好ましく、特に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリエタノールアミン、ドデシルベンゼン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素からなる群から選択される1種以上を用いることがより好ましい。
【0032】
本発明において、混合液をフェノール類1gに対して溶媒10mL以上100mL未満にて調製することが好ましい。溶媒量を低減することで、環境負荷の小さい反応条件にて有機高分子光触媒を調製することが可能となる。
【0033】
〔工程(2)〕
反応工程では、前記混合液を撹拌し、フェノール類とアルデヒド類とを反応させる。なお、反応工程は、アルゴン(Ar)や窒素(N)等不活性ガス気流の雰囲気下であってもよく、大気中で行うこともできる。
混合液を大気圧下(0.1MPa)で加熱し、撹拌することによってフェノール類とアルデヒド類とを反応させ、樹脂を形成することができる。
反応工程では、フェノール類と、アルデヒド類とが反応してレゾール型フェノール樹脂となり、さらに、レゾール型フェノール樹脂の一部が互いに架橋し架橋体となる。
【0034】
〈反応用触媒〉
本発明の製造方法においては、フェノール類とアルデヒド類との反応には触媒を用いてもよく、酸性触媒、塩基性触媒、または無触媒下で行うことができる。
【0035】
〈酸性触媒〉
酸性触媒としては、塩酸、硫酸およびリン酸等の無機酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸(PTSA)、酢酸亜鉛、およびメタンスルホン酸等の有機酸などがあげられるが、これらに限定されない。
【0036】
〈塩基性触媒〉
塩基性触媒としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カルシウム、マグネシウム、バリウムなどアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物;炭酸ナトリウム、アンモニア(NH)、N-(2-アミノエチル)プロパノールアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンテトラミン(すなわち、ヘキサミン)などのアミン類などを挙げることができるが、これらに限定されない。塩基性触媒としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。有機高分子光触媒の平均粒子径を小さくする(=触媒活性が向上する)観点では、塩基触媒としてはアンモニアが好適に使用できる。
【0037】
反応の系中における酸性触媒又は塩基性触媒の使用量は限定的ではないが、
酸性触媒の場合には、フェノール類1molに対して0.001~0.5molが好ましい。
塩基性触媒の場合には、フェノール類1molに対して0.1~5molが好ましく、0.1~0.8molがより好ましい。
【0038】
原料混合物に含まれる原料芳香族化合物とホルムアルデヒドとの混合比(モル比)は、限定的ではないが、X/Y=フェノール類/アルデヒド類(モル/モル)で表される混合比は、1/1~2.5が好ましく、1/1.5~2.5がより好ましい。
【0039】
〈反応温度〉
反応における処理温度は限定的ではないが、一般に100~320℃の範囲内から適宜選択できるが、本発明では処理温度が比較的高温である方が、有機高分子光触媒が安定な電荷移動吸収帯を形成し易く、それにより触媒活性が向上するため、170~310℃の比較的高温域で反応を進行させることが好ましく、180~300℃がより好ましい。
【0040】
〔工程(3)〕洗浄工程
本発明において、反応により得られた樹脂(以下、樹脂組成物)を洗浄により、原料成分、反応溶媒、触媒および不純物等を取り除くことができる。
洗浄する方法としては限定されないが、例えば、樹脂組成物を純水や親水性溶媒中に分散洗浄する方法、ソックスレー抽出などの公知の方法により抽出処理する方法により残留反応溶媒などの不純物を除去精製する。
【0041】
親水性溶媒としては、フェノール類及びアルデヒド類の原料成分と、親水性溶媒とがO/Wエマルションのように分散すれば限定されず、具体的には、水;メチルアルコール、エチルアルコールといった単官能アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールといった多官能アルコール;アセトンといったケトン;テトラヒドロフランといったエーテル;N-メチルピロリドンといったラクタムなどが挙げられる。親水性溶媒としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
〔工程(4)〕乾燥工程
工程(4)の乾燥工程では、工程(3)により得られた樹脂を、乾燥して親水性溶媒を除くために行う。乾燥工程では、工程(3)により得られた樹脂を、真空デシケータ等を用いて減圧下、室温下(25℃±5℃)にて行うことができる。また、加熱して行うこともでき、温度100℃以下で熱処理することでも行うことができる。
これにより樹脂から親水性溶媒が離脱することにより形成される空孔の数を減らし、空孔の大きさを小さくすることができる。
【0043】
〈用途〉
本発明により製造された有機高分子光触媒は、成形加工性が容易であり、また粉末を溶媒や水に分散させることが可能なため広範な用途に用いることができる。例えば、各種フィルター、溶媒に懸濁させたものを基板等に塗布して膜状で利用したり、ペースト材料として利用すること、該粉末を含有する塗料等として利用することが考えられる。
また、処理水等の分解処理用途として、粒子を被処理水に分散させ、光照射によって水処理を実施することもできる。処理後は、粉末をろ過することにより簡便に回収することが可能である。水相(被処理水)としては、例えば、工業用循環水、工業用排水、産業用排水などが挙げられる。
【0044】
(過酸化水素製造)
本発明の有機高分子光触媒は、過酸化水素製造に用いることが考えられる。この場合、過酸化水素発生工程は、水、有機高分子光触媒及び酸素(O)を含む反応系に光照射することにより過酸化水素を発生させる。
【0045】
なお、本発明で用いる有機高分子は、過酸化水素製造工程において光触媒として用いる場合、そのバンド構造は、伝導帯(CB)が酸素の二電子還元電位よりも卑な電位であり、価電子帯(VB)が水の四電子酸化電位よりも貴な電位である。
【0046】
前記したレゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、並びに当該樹脂中のレゾルシノールをm-アミノフェノール、m-クロロフェノール、m-メトキシフェノール、m-クレゾール、m-フェニレンジアミン及びフェノールからなる群から選択される少なくとも一種のフェノール又は電子供与性官能基を含むフェノール誘導体に換えた樹脂については、後記の実施例で示される通り、過酸化水素製造工程において光触媒として作用することが実証されており、それらのバンド構造は、伝導帯(CB)が酸素の二電子還元電位よりも卑な電位であり、価電子帯(VB)が水の四電子酸化電位よりも貴な電位である。特にレゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂のレゾルシノールを、電子供与性官能基を含むフェノール誘導体に換えた樹脂は、上記光触媒に適したバンド構造が得られ易い。
【0047】
ここで、V vs Ag/AgCl(pH6.6)により測定されるバンド構造における酸素の二電子還元電位(O/H)は0.08Vであるため、伝導帯(CB:conduction band)は0.08Vよりも卑な電位であればよく、-1~0V程度が好ましい。また、水の四電子酸化電位(HO/O)は0.63Vであるため、価電子帯(VB:valence band)は0.63Vよりも貴な電位であればよく、0.7~2.5V程度が好ましい。
【0048】
過酸化水素発生工程の実施においては、先ず水、有機高分子光触媒及び酸素(O)を含む反応系を準備する。例えば、有機高分子光触媒及び酸素(O)のそれぞれを水中に分散させればよい。水中に分散しにくい物質の場合、例えば、常法に従って超音波照射などにより分散性を高めてもよい。
【0049】
前記反応系において、有機高分子光触媒の濃度は特に制限されないが、0.1~10mg/mLが好ましく、1~10mg/mLがより好ましい。酸素(O)の濃度も特に限定されないが、反応性の観点から、できるだけ高濃度であることが好ましく、反応系中(水中)を酸素(O)で飽和させることが特に好ましい。本発明の過酸化水素製造方法では水の四電子酸化により酸素が得られるが、当該水の四電子酸化により得られる酸素を二電子還元するだけでは効率的に過酸化水素を得ることはできないため、上記の通り予め反応系中(水中)酸素(O)に含めておくことが必要である。
【0050】
前記反応系は、水、有機高分子光触媒、及び酸素(O)以外の物質を更に含んでいてもよい。例えば、前記反応系は、後述する反応性の観点から、例えば、pH調整剤を更に含んでいてもよい。pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウム等の塩基性物質、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、リン酸等の酸性物質が挙げられる。
【0051】
また、例えば、前記水が、pH緩衝剤が溶解されてpH緩衝液となった状態でもよい。pH緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝水溶液、酢酸緩衝水溶液等が挙げられる。前記pH調整剤及び前記pH緩衝剤の添加量は特に制限されず、適宜設定可能である。
【0052】
他の反応条件にもよるが、酸素の還元は酸性条件下の方が反応効率が良いことが多く、水の酸化は塩基性条件下の方が反応効率が良いことが多い。従って、これらを考慮して、過酸化水素の製造効率が良くなるように反応系のpHを適切に設定することが好ましい。この観点から、前記反応系のpHは、通常2~10、好ましくは2~8、より好ましくは2~7、最も好ましくは2~6である。
【0053】
また、前記反応系は有機溶媒を更に含んでいてもよい。前記有機溶媒としては、例えば、ベンゾニトリル、アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化溶媒、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル、ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド、アセトン等のケトン、メタノール等のアルコールが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いても二種類以上併用してもよい。有機溶媒としては、前記遷移金属錯体の溶解度、励起状態の安定性等の観点から、極性の高い溶媒が好ましく、アセトニトリルが特に好ましい。
【0054】
次に、前記反応系に光照射することにより過酸化水素を発生させる。光照射するための照射光は、特に限定されないが、可視光が好ましい。有機高分子光触媒が可視光励起するためには、有機高分子光触媒が可視光領域に吸収帯を有することが好ましい。照射する可視光の波長は、有機高分子光触媒が有する吸収帯にもよるが、例えば400~800nmが好ましく、400~650nmがより好ましく、400~550nmが最も好ましい。過酸化水素発生工程において、光照射する際の反応系の温度は、例えば10~60℃が好ましく、30~60℃がより好ましく、50~60℃が最も好ましい。
【0055】
前記光照射において、光源は特に限定されないが、例えば、省エネルギーの観点から、太陽光等の自然光を利用することが好ましい。また、太陽光は、幅広い波長領域(特に可視光領域)の光を含み、光の強度にも優れるため、高い反応効率が得やすい。前記自然光に代えて、又はこれに加えてキセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯、水銀灯等の光源を適宜用いてもよい。更に必要に応じて、必要波長以外の波長をカットするフィルターを適宜用いてもよい。
【0056】
前記光照射中、前記反応系は静置してもよく、撹拌しながら光照射してもよい。必要に応じて前記反応系に対して加熱をしてもよいが、加熱をせずに光照射のみで反応させることが簡便で好ましい。光照射の時間、光強度等は特に制限されず、適宜設定可能である。なお、光源にもよるが、照射光が赤外線を含むことにより、光照射のみで別途加熱しなくても反応系の温度は60℃程度までは上がり得る。
【0057】
過酸化水素発生工程における反応機構は、水の四電子酸化と酸素の二電子還元とを利用した過酸化水素の発生である。なお、過酸化水素の原料となる酸素は水の四電子酸化により得られる酸素に加えて反応前から反応系に含んでいるOを使用し、反応系を撹拌しながら大気中のOを反応系に取り込んだものでもよい。前述の通り、反応系(水中)を予めOで飽和させておくことが反応効率の観点から特に好ましい。
【0058】
以上のようにして本発明の過酸化水素製造方法を行うことができる。本発明の過酸化水
素製造方法は、必要に応じて、過酸化水素発生工程後に、発生した過酸化水素を精製する
過酸化水素精製工程を更に含んでいてもよい。これにより、実用に適した純度の高い過酸
化水素又は過酸化水素水を得ることができる。具体的な方法としては特に制限されないが
、例えばイオン交換水などで過酸化水素を抽出し、減圧蒸留することにより高濃度の過酸
化水素水が得られる。
【0059】
上記有機高分子光触媒は、その分子中に金属原子を含まないように構成することもでき、従来法の過酸化水素製造方法との比較で、貴金属触媒や金属酸化物触媒を用いることなく過酸化水素が得られる点でコストメリットも大きい。
【0060】
以上、好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲内で適宜変更してもよい。
【実施例0061】
以下に実施例(調製例)を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例(調製例)の範囲に限定されない。以下調製例での反応は、高圧容器を使用せず大気圧(0.1MPa)にて実験を行っている。
【0062】
[調製例1](Entry1のRF樹脂の合成)
200mLの4つ口フラスコに、アルゴン雰囲気下、レゾルシノール8g(富士フィルム和光純薬製)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)80mLを加え、攪拌を開始した。攪拌中に37%ホルムアルデヒド水溶液10.8mL、シュウ酸1.64gを加え、回転数500rpmにて攪拌を固定し、昇温を開始した。222℃~224℃で12時間攪拌を行った。反応液を室温まで冷却後、水100mLを加え、ろ取した。ろ取物を円筒ろ紙に移し、ソックスレー抽出器に入れた。アセトンを洗浄液として70℃で加熱しながら6時間洗浄した。得られた粉末を真空デシケータに入れ、室温下で乾燥させた。得られた粉末を乳鉢ですり潰し、Entry1のRF樹脂(有機高分子光触媒)を得た。
【0063】
[調製例2](Entry2のRF樹脂の合成)
200mLの4つ口フラスコに、アルゴン雰囲気下、レゾルシノール8g(富士フィルム和光純薬製)、テトラエチレングリコール80mLを加え、攪拌を開始した。攪拌中に37%ホルムアルデヒド水溶液10.8mL、シュウ酸1.64gを加え、回転数500rpmにて攪拌を固定し、昇温を開始した。236℃~260℃で12時間攪拌を行った。反応液を室温まで冷却後、水100mLを加え、ろ取した。ろ取物を円筒ろ紙に移し、ソックスレー抽出器に入れた。アセトンを洗浄液として70℃で加熱しながら6時間洗浄した。得られた粉末を真空デシケータに入れ、室温下で乾燥させた。得られた粉末を乳鉢ですり潰し、Entry2のRF樹脂(有機高分子光触媒)を得た。
【0064】
[調製例3](Entry3の樹脂の合成)
200mLの4つ口フラスコに、アルゴン雰囲気下、レゾルシノール8g(富士フィルム和光純薬製)、N,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)80mLを加え、攪拌を開始した。攪拌中に37%ホルムアルデヒド水溶液10.8mL、シュウ酸1.64gを加え、回転数500rpmにて攪拌を固定し、昇温を開始した。245~247℃で12時間攪拌を行った。反応液を室温まで冷却後、水100mLを加え、ろ取した。ろ取物を円筒ろ紙に移し、ソックスレー抽出器に入れた。アセトンを洗浄液として70℃で加熱しながら6時間洗浄した。得られた粉末を真空デシケータに入れ、室温下で乾燥させた。得られた粉末を乳鉢ですり潰し、Entry3のRF樹脂(有機高分子光触媒)を得た。
【0065】
[調製例4](Entry4のRF樹脂の合成)
200mLの4つ口フラスコに、アルゴン雰囲気下、レゾルシノール8g(富士フィルム和光純薬製)、ジエチレングリコール80mLを加え、攪拌を開始した。攪拌中に37%ホルムアルデヒド水溶液10.8mL、28%アンモニア水(以下、NH)3.6mLを加え、回転数500rpmにて攪拌を固定し、昇温を開始した。240℃~244℃で12時間攪拌を行った。反応液を室温まで冷却後、水100mLを加え、ろ取した。ろ取物を円筒ろ紙に移し、ソックスレー抽出器に入れた。アセトンを洗浄液として70℃で加熱しながら6時間洗浄した。得られた粉末を真空デシケータに入れ、室温下で乾燥させた。得られた粉末を乳鉢ですり潰し、Entry4のRF樹脂(有機高分子光触媒)を得た。
【0066】
[調製例5](Entry5のRF樹脂の合成)
200mLの4つ口フラスコに、アルゴン雰囲気下、レゾルシノール8g(富士フィルム和光純薬製)、ジエチレングリコール80mLを加え、攪拌を開始した。攪拌中に37%ホルムアルデヒド水溶液10.8mL、シュウ酸1.64gを加え、回転数500rpmにて攪拌を固定し、昇温を開始した。242℃~244℃で12時間攪拌を行った。反応液を室温まで冷却後、水100mLを加え、ろ取した。ろ取物を円筒ろ紙に移し、ソックスレー抽出器に入れた。アセトンを洗浄液として70℃で加熱しながら6時間洗浄した。得られた粉末を真空デシケータに入れ、室温下で乾燥させた。得られた粉末を乳鉢ですり潰し、Entry5のRF樹脂(有機高分子光触媒)を得た。
【0067】
[調製例6](Entry6のRF樹脂の合成)
200mLの4つ口フラスコに、アルゴン雰囲気下、レゾルシノール4g(富士フィルム和光純薬製)、ジエチレングリコール80mLを加え、攪拌を開始した。攪拌中に37%ホルムアルデヒド水溶液5.4mL、シュウ酸820mgを加え、回転数500rpmにて攪拌を固定し、昇温を開始した。244℃で12時間攪拌を行った。反応液を室温まで冷却後、水100mLを加え、ろ取した。ろ取物を円筒ろ紙に移し、ソックスレー抽出器に入れた。アセトンを洗浄液として70℃で加熱しながら6時間洗浄した。得られた粉末を真空デシケータに入れ、室温下で乾燥させた。得られた粉末を乳鉢ですり潰し、Entry6のRF樹脂(有機高分子光触媒)を得た。
【0068】
[調製例7](Entry7のRF樹脂の合成)
200mLの4つ口フラスコに、アルゴン雰囲気下、レゾルシノール2.4g(富士フィルム和光純薬製)、ジエチレングリコール80mLを加え、攪拌を開始した。攪拌中に37%ホルムアルデヒド水溶液3.24mL、シュウ酸492mgを加え、回転数500rpmにて攪拌を固定し、昇温を開始した。244℃で12時間攪拌を行った。反応液を室温まで冷却後、ろ取した。ろ取物を円筒ろ紙に移し、ソックスレー抽出器に入れた。アセトンを洗浄液として70℃で加熱しながら20.5時間洗浄した。得られた粉末を真空デシケータに入れ、室温下で乾燥させた。得られた粉末を乳鉢ですり潰し、Entry7のRF樹脂(有機高分子光触媒)を得た。
【0069】
[調製例8](Entry8のRF樹脂の合成)
200mLの4つ口フラスコに、アルゴン雰囲気下、レゾルシノール8g(富士フィルム和光純薬製)、ジエチレングリコール80mLを加え、攪拌を開始した。攪拌中に37%ホルムアルデヒド水溶液10.8mL、を加え、回転数500rpmにて攪拌を固定し、昇温を開始した。236℃~242℃で12時間攪拌を行った。反応液を室温まで冷却後、アセトン200mLを加え、ろ取した。ろ取物にアセトン100mLを加え、20分間分散洗浄をし、ろ取する操作を3回繰り返して行った。最終的に得られたろ取物を円筒ろ紙に移し、ソックスレー抽出器に入れた。アセトンを洗浄液として70℃で加熱しながら6時間洗浄した。得られた粉末を真空デシケータに入れ、室温下で乾燥させた。得られた粉末を乳鉢ですり潰し、Entry8のRF樹脂(有機高分子光触媒)を得た。
【0070】
[調製例9](Entry9のRF樹脂の合成)
200mLの4つ口フラスコに、アルゴン雰囲気下、レゾルシノール8g(富士フィルム和光純薬製)、ジエチレングリコール80mLを加え、攪拌を開始した。攪拌中にパラホルムアルデヒド4.38g、シュウ酸1.64gを加え、回転数500rpmにて攪拌を固定し、昇温を開始した。236℃~240℃で12時間攪拌を行った。反応液を室温まで冷却後、水200mLを加え、ろ取した。ろ取物を円筒ろ紙に移し、ソックスレー抽出器に入れた。アセトンを洗浄液として70℃で加熱しながら6時間洗浄した。得られた粉末を真空デシケータに入れ、室温下で乾燥させた。得られた粉末を乳鉢ですり潰し、Entry9のRF樹脂(有機高分子光触媒)を得た。
【0071】
[調製例10](Entry10のRF樹脂の合成)
200mLの4つ口フラスコに、アルゴン雰囲気下、レゾルシノール8g(富士フィルム和光純薬製)、ジエチレングリコール80mLを加え、攪拌を開始した。攪拌中にパラホルムアルデヒド4.38gを加え、回転数500rpmにて攪拌を固定し、昇温を開始した。237℃~242℃で12時間攪拌を行った。反応液を室温まで冷却後、メタノール100mLを加え、ろ取した。ろ取物を水、アセトンで洗浄し、得られた粉末を真空デシケータに入れ、室温下で乾燥させた。得られた粉末を乳鉢ですり潰し、Entry10のRF樹脂(有機高分子光触媒)を得た。
【0072】
[調製例11](Entry11のRF樹脂の合成)
200mLの4つ口フラスコに、アルゴン雰囲気下、レゾルシノール8g(富士フィルム和光純薬製)、ジエチレングリコール80mLを加え、攪拌を開始した。攪拌中にトリオキサン4.38g、シュウ酸1.64gを加え、回転数500rpmにて攪拌を固定し、昇温を開始した。244℃~245℃で12時間攪拌を行った。反応液を室温まで冷却後、水100mLを加え、ろ取した。ろ取物にメタノール100mLを加え撹拌後、ろ過し、得られた粉末を真空デシケータに入れ、室温下で乾燥させた。得られた粉末を乳鉢ですり潰し、Entry11のRF樹脂(有機高分子光触媒)を得た。
【0073】
ここから
[調製例12](Entry12のRF樹脂の合成)
200mLの4つ口フラスコに、アルゴン雰囲気下、レゾルシノール8g(富士フィルム和光純薬製)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)80mLを加え、攪拌を開始した。攪拌中にパラホルムアルデヒド4.38g、シュウ酸1.64gを加え、回転数500rpmにて攪拌を固定し、昇温を開始した。211℃~225℃で12時間攪拌を行った。反応液を室温まで冷却後、水200mLを加え、ろ取した。
ろ取物にメタノール200mLを加え、ろ取し、得られた粉末を真空デシケータに入れ、室温下で乾燥させた。得られた粉末を乳鉢ですり潰し、Entry12のRF樹脂(有機高分子光触媒)を得た。
【0074】
[調製例13](Entry13のRF樹脂の合成)
200mLの4つ口フラスコに、アルゴン雰囲気下、レゾルシノール8g(富士フィルム和光純薬製)、ジエチレングリコール80mLを加え、攪拌を開始した。攪拌中にトリオキサン4.38g、シュウ酸1.64gを加え、回転数500rpmにて攪拌を固定し、昇温を開始した。100℃~245℃で12時間攪拌を行った。反応液を室温まで冷却後、水100mLを加え、ろ取した。ろ取物を円筒ろ紙に移し、ソックスレー抽出器に入れた。アセトンを洗浄液として70℃で加熱しながら6時間洗浄した。得られた粉末を真空デシケータに入れ、室温下で乾燥させた。得られた粉末を乳鉢ですり潰し、Entry13のRF樹脂(有機高分子光触媒)を得た。
【0075】
[調製例14](Entry14のRF樹脂の合成)
200mLの4つ口フラスコに、アルゴン雰囲気下、レゾルシノール8g(富士フィルム和光純薬製)、ジエチレングリコール80mLを加え、攪拌を開始した。攪拌中に37%ホルムアルデヒド水溶液10.8mL、85%リン酸水溶液(以下、リン酸)1.24mLを加え、回転数500rpmにて攪拌を固定し、昇温を開始した。189℃~238℃で12時間攪拌を行った。反応液を室温まで冷却後、水100mLを加え、ろ取した。ろ取物を円筒ろ紙に移し、ソックスレー抽出器に入れた。アセトンを洗浄液として70℃で加熱しながら6時間洗浄した。得られた粉末を真空デシケータに入れ、室温下で乾燥させた。得られた粉末を乳鉢ですり潰し、Entry14のRF樹脂(有機高分子光触媒)を得た。
【0076】
[実施例1](光触媒活性の評価)
ホウ珪酸ガラス製容器(容量50cc、内径3.5cm)に、純水(30mL)及び調製例1で得られた有機高分子光触媒50mg、並びにマグネチックスターラーバーを入れた。容器上部をラバーセプタムで栓をした。反応容器内を5分間超音波処理して各光触媒を溶液に分散させた。シリンジを差し込むことにより内部を酸素ガスで15分間パージした。
【0077】
反応容器をマグネチックスターラー上にセットしたパイレックス(登録商標)製ウォーターバスに入れ(298±0.5K)、攪拌しながら、側面からキセノンランプ(2kW、ウシオ電機製)により24時間光照射した。この際、色ガラスフィルターL42(アサヒテクノグラス製)を用い、420nm以上の光を照射した。420~700nmの範囲における光強度は、140.3Wm-2であった。
【0078】
反応終了後、ラバーセプタムを外し、懸濁液を遠心分離することにより、光触媒から溶液を回収した。
溶液内のH量を、電気化学アナライザー(ED723,GL Sciences Inc.)を検出器とするHPLC(Prominence UFLC, Shimadzu) により分析した。H生成量に基づいて光触媒活性を評価した。結果を表1に示す。
【0079】
[実施例2]~[実施例14]
調製例1で得られた有機高分子光触媒(Entry1)に代えて、表1の通り、調製例2~14で得られた有機高分子光触媒(Entry2~14)を使用した以外は実施例1と同様にH生成量[μmol]に基づいて光触媒活性を評価した。結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
表1より、大気圧下において製造された有機高分子光触媒を用いたところ、光触媒活性を示し、過酸化水素の製造に用いた場合においても充分な生成量が得られることがわかった。また、従来はフェノール類1gに溶媒量100mLを要していたが、本発明による製造方法では、フェノール類1gに対して溶媒量を100mL未満での条件でも有機高分子光触媒を調製できることが判明した。このため、従来よりも溶媒量を低減した本発明の有機高分子光触媒の製造方法は環境負荷を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の大気圧下で有機高分子光触媒を製造方法は安全性が高く、製造コストの低減にもつなげることができ、製造された有機高分子光触媒は良好な光触媒性能を示すことから、有機高分子光触媒としての様々な用途への展開が可能である。