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特開2024-80446圧縮機用エンクロージャ及び圧縮機ユニット
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  • 特開-圧縮機用エンクロージャ及び圧縮機ユニット 図1
  • 特開-圧縮機用エンクロージャ及び圧縮機ユニット 図2
  • 特開-圧縮機用エンクロージャ及び圧縮機ユニット 図3
  • 特開-圧縮機用エンクロージャ及び圧縮機ユニット 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080446
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】圧縮機用エンクロージャ及び圧縮機ユニット
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
F04B39/00 101T
F04B39/00 102V
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193642
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】藥師寺 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 保徳
(72)【発明者】
【氏名】萩田 貴幸
【テーマコード(参考)】
3H003
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AC03
3H003BA07
3H003BB08
3H003CE02
(57)【要約】
【課題】簡便な構成で圧縮機から発生する振動ないし騒音を抑制することができる圧縮機用エンクロージャを提供する。
【解決手段】圧縮機2に用いられるエンクロージャ1は、圧縮機2を内部に収納して包囲する本体部10と、本体部10の内面から突出して圧縮機2に対して接触する複数の突出部12と、を備え、本体部10は、自重で撓む程度の剛性とされている。本体部10には、圧縮機2の一部が外方に延出するように挿通させるための穴部が形成され、穴部の周囲には、突出部12としてシール材14が設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機を内部に収納して包囲する本体部と、
前記本体部の内面から突出して前記圧縮機に対して接触する複数の突出部と、
を備え、
前記本体部は、自重で撓む程度の剛性とされている圧縮機用エンクロージャ。
【請求項2】
前記本体部には、前記圧縮機の一部が外方に延出するように挿通させるための穴部が形成され、
前記穴部の周囲には、前記突出部としてシール材が設けられている請求項1に記載の圧縮機用エンクロージャ。
【請求項3】
前記突出部は、前記本体部よりも柔らかい材料とされている請求項1又は2に記載の圧縮機用エンクロージャ。
【請求項4】
前記本体部は、複数の分割体から構成されている請求項1に記載の圧縮機用エンクロージャ。
【請求項5】
前記突出部は、前記圧縮機の圧縮部に対応する位置よりも、前記圧縮機の電動モータ部に対応する位置に、多くの数が設けられている請求項1に記載の圧縮機用エンクロージャ。
【請求項6】
請求項1に記載された圧縮機用エンクロージャと、
前記圧縮機用エンクロージャ内に収容された圧縮機と、
を備えている圧縮機ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機を内部に収容する圧縮機用エンクロージャ及び圧縮機ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車の空調用冷凍サイクルに用いられる圧縮機として、電動圧縮機が用いられる。電動圧縮機は、スクロール機構等を備えた圧縮部を電動モータによって駆動する構成となっている。電動圧縮機は、車両の停止時にも空調の要求に応じて動作するので、さらなる騒音の低減が求められる。騒音低減のために、特許文献1のように圧縮機を内部に収容して覆うエンクロージャが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-202377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の圧縮機用エンクロージャは、圧縮機の全体を包囲するので騒音を抑制することができる。しかし、エンクロージャの本体部がPP(ポリプロピレン)等の剛性のある樹脂で形成されているため、圧縮機の振動を伝達しやすいという問題がある。
また、特許文献1の圧縮機用エンクロージャは、圧縮機を収納するだけでなく、車両側に取り付けるための取付足部を備えており、構造が複雑でコストが高いという問題がある。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、簡便な構成で圧縮機から発生する騒音を抑制することができる圧縮機用エンクロージャ及び圧縮機ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る圧縮機用エンクロージャは、圧縮機を内部に収納して包囲する本体部と、前記本体部の内面から突出して前記圧縮機に対して接触する複数の突出部と、を備え、前記本体部は、自重で撓む程度の剛性とされている。
【0007】
本開示の一態様に係る圧縮機ユニットは、上記に記載された圧縮機用エンクロージャと、前記圧縮機用エンクロージャ内に収容された圧縮機と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
簡便な構成で圧縮機から発生する騒音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係る圧縮機用エンクロージャを示した斜視図である。
図2】本開示の一実施形態に係る圧縮機を示した斜視図である。
図3】本開示の一実施形態に係り、圧縮機を収容したエンクロージャを示した縦断面図である。
図4】騒音低減効果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、電動圧縮機の全体を覆うエンクロージャ1が示されている。エンクロージャ1の本体部10は、電動圧縮機の外形に対応した形状とされており、分割面Pにて左右に2つの分割体10A,10Bに分割されている。
【0011】
分割面Pは、圧縮機の取付脚部3を下方とした場合に、鉛直方向に延在して設けられている。圧縮機の取付脚部3は、車両側の固定部に対して圧縮機を取り付けるための固定部である。このように、圧縮機に設けられた取付脚部3によって車両に固定される構成となっており、エンクロージャ1の剛性を用いて圧縮機が車両に固定されるわけではない。
【0012】
エンクロージャ1の本体部10は、自重で撓む程度の剛性とされており、例えば発泡ウレタン(軟質PURフォーム)等の発泡樹脂材料が用いられる。したがって、エンクロージャ1は、PP(ポリプロピレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)のような剛性のあるプラスチック材料よりも柔らかい。
【0013】
左右の分割体10A,10B同士の固定は、種々の固定方法を用いることができ、例えば、ボルト及びナット、爪部等を用いた係合などが用いられる。
【0014】
図2には、圧縮機2が示されている。同図に示された圧縮機2は、図1に示されたエンクロージャ1に対して、例えば取付脚部3の数など厳密に一致する形状ではないが、エンクロージャ1によって遮音される圧縮機の説明としては大きな相違はない。すなわち、本実施形態に係るエンクロージャ1は、以下に説明する構造の圧縮機であれば広く適用することができる。
【0015】
圧縮機2は、車両の空調に用いられる冷凍サイクルの一部を構成し、蒸発器から導かれた冷媒を吸い込んだ後に圧縮し、凝縮器へと圧縮した冷媒を吐出する。圧縮機2は、図2に示すように水平方向に長手軸線を有する略円筒形状とされている。圧縮機2は、電動圧縮機とされており、スクロール機構を有する圧縮部2Aと、スクロール機構を駆動する電動モータを備えたモータ部(電動モータ部)2Bとを備えている。
【0016】
圧縮部2Aは、圧縮機2の前側(図2において左側)に位置しており、内部に固定スクロール及び旋回スクロールを備えている。旋回スクロールが固定スクロールに対して部分的に接触しつつ旋回運動を行うので、圧縮部2Aが主として圧縮機2の振動源ないし騒音源となっている。圧縮部2Aの上部には、圧縮した冷媒を吐出するための筒形状とされた吐出口(延出部)5が設けられている。
【0017】
モータ部2Bは、圧縮部2Aの後部に接続されており、圧縮機2の後側(図2において右側)に位置する。モータ部2Bは、固定子及び回転子を有する電動モータと、電動モータに電力を供給するインバータ部とを備えている。モータ部2Bの径は、圧縮部2Aの径よりも大きい。モータ部2Bの上部には、冷媒を圧縮機2内に吸い込むための筒形状とされた吸込口7が設けられている。さらに、モータ部2Bの上部でかつ吸込口(延出部)7の近傍には、圧縮機2の外部に対して電力ケーブルや信号線等のハーネスを導くための筒形状とされた配線ガイド筒(延出部)9が設けられている。
【0018】
図3には、図2の圧縮機2に対してエンクロージャ1を取り付けた状態の縦断面が示されている。なお、図3は、図2に示した圧縮機2とは左右が逆となっており、右側に圧縮部2A、左側にモータ部2Bが位置している。すなわち、図3は、図2の背面側から見た縦断面図となっている。
【0019】
図3に示すように、エンクロージャ1の本体部10は、圧縮機2の全体を内部に収納して包囲する。本体部10と圧縮機2との間には、5mm~20mm程度の隙間が設けられた上で、複数ヶ所で突出部12を介して圧縮機2と接触している。突出部12は、本体部10の内面から突出した突起形状とされており、突出部12の先端が圧縮機2の外面と接触する。本体部10の材質が自重で撓む程度の剛性とされているため、各位置に配置された突出部12によって本体部10の形状が保持されている。突出部12は、好ましくは、本体部10の材質よりも柔らかい材料が用いられ、例えば、エプトシーラー(登録商標)等のEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)発泡材のようなゴムスポンジ、連続気泡ポリエチレン等を用いることができる。突出部12は、本体部10の内面に対して接着等によって固定されている。
【0020】
突出部12は、主として圧縮機2のモータ部2Bに設けられている。より具体的には、モータ部2Bの前端部A1と、後端部A2と、これらの間の中間部A3とのそれぞれに設けられている。なお、中間部A3の突出部12は適宜省略することができる。また、突出部12は、圧縮機2の円周方向に対して複数ヶ所設けられている。例えば、図2に矢印Cで示すように、圧縮機2の下側と上側のそれぞれに設けられる。本実施形態のように、圧縮部2Aよりもモータ部2Bの方に多くの突出部12を設けることが好ましい。
【0021】
吐出口5に相当する位置には、吐出口5を挿通されるために本体部10に穴部が形成されている。この穴部の縁部と吐出口5の側周面との間の隙間を埋めるために、図3に示すように突出部12としてシール材14が設けられている。シール材14は、吐出口5の筒部の外周を巻回するように配置される。
【0022】
図4には、本実施形態のエンクロージャ1を用いた場合の騒音低減効果についての実験結果が示されている。圧縮機2の回転数が6000rpmとされたときの周波数が0~10kHzの騒音を測定した。
【0023】
同図から分かるように、本実施形態のエンクロージャ1の本体部10を用い、突出部12を用いない場合は、エンクロージャを取り付けない場合に比べて1.7デシベルの騒音低減が得られた。これに加えて、図3に示したようにモータ部2Bに複数の突出部12を設け、突出部12の材料にエプトシーラー(登録商標)を用いた場合は、エンクロージャを取り付けない場合に比べて3.7デシベルの騒音低減が得られた。さらに、吐出口5等の延出部5,7,9に突出部12としてシール材14を用いた場合には、エンクロージャを取り付けない場合に比べて5.0デシベルの騒音低減が得られた。
【0024】
以上説明した本実施形態の作用効果は以下の通りである。
エンクロージャ1の本体部10は自重で撓む程度の剛性とされており、変形可能なので取扱いが容易となり、簡便な構成で圧縮機2から発生する騒音を効果的に抑制することができる。
複数の突出部12が圧縮機2に対して接触するので、本体部10が自重で撓む程度の剛性であっても、突出部12で支えられることで本体部10の形状を保つことができる。また、突出部12によって圧縮機2と本体部10の内面との間に空間を形成することができるので、圧縮機2から発生する騒音を効果的に抑制することができる。
【0025】
圧縮機2には、冷媒を吐出する吐出口5や、冷媒を吸い込む吸込口7などのようにエンクロージャ1の本体部10から外方に延出する延出部5,7,9が設けられている。この延出部5,7,9を挿通するようにエンクロージャ1の本体部10には穴部が形成されている。この穴部の周囲に、圧縮機2の延出部5,7,9に接触する突出部12としてシール材14を設けることとした。これにより、エンクロージャ1の本体部10と延出部5,7,9との間の隙間から騒音が漏れること抑制できる。
【0026】
突出部12を本体部10よりも柔らかい材料とすることによって、圧縮機2から発生した振動を本体部10に伝達することを抑制することができる。
【0027】
エンクロージャ1の本体部10を複数の分割体10A,10Bで構成することで、圧縮機2を取り囲むようにエンクロージャ1を組み立てる作業が容易になる。
【0028】
圧縮機2の圧縮部2Aの方が、圧縮部2Aを駆動する電動モータ部2Bよりも振動が大きい。そこで、振動が比較的小さいモータ部2Bの方に多くの突出部12を設けてエンクロージャ1の本体部10と接続することとした。これにより、エンクロージャ1の本体部10に伝達される振動を抑制することができる。
【0029】
なお、上述した実施形態では、エンクロージャ1の本体部10に対して突出部12を取り付けることとしたが、本体部10と突出部12を同じ材質として一体で成型することとしても良い。
【0030】
以上説明した各実施形態に記載の圧縮機用エンクロージャ及び圧縮機ユニットは、例えば以下のように把握される。
【0031】
本開示の第1態様に係る圧縮機用エンクロージャ(1)は、圧縮機(2)を内部に収納して包囲する本体部(10)と、前記本体部の内面から突出して前記圧縮機に対して接触する複数の突出部(12)と、を備え、前記本体部は、自重で撓む程度の剛性とされている。
【0032】
本体部は自重で撓む程度の剛性とされており、変形可能なので取扱いが容易となり、簡便な構成で圧縮機から発生する騒音を効果的に抑制することができる。
複数の突出部が圧縮機に対して接触するので、本体部が自重で撓む程度の剛性であっても、突出部で支えられることで本体部の形状を保つことができる。また、突出部によって圧縮機と本体部の内面との間に空間を形成することができるので、圧縮機から発生する騒音を効果的に抑制することができる。
本体部の材質としては、PP(ポリプロピレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)のような剛性のあるプラスチック材料よりも柔らかいものが用いられ、例えば、発泡ウレタン(軟質PURフォーム)等の発泡樹脂材料を用いることができる。
【0033】
本開示の第2態様に係る圧縮機用エンクロージャは、前記第1態様において、前記本体部には、前記圧縮機の一部が外方に延出するように挿通させるための穴部が形成され、前記穴部の周囲には、前記突出部としてシール材(14)が設けられている。
【0034】
圧縮機には、冷媒を吐出する吐出部や、冷媒を吸い込む吸込部などのようにエンクロージャの本体部から外方に延出する延出部が設けられている。この延出部を挿通するようにエンクロージャの本体部には穴部が形成されている。この穴部の周囲に、圧縮機の延出部に接触する突出部としてシール材を設けることとした。これにより、エンクロージャの本体部と延出部との間の隙間から騒音が漏れること抑制できる。
【0035】
本開示の第3態様に係る圧縮機用エンクロージャは、前記第2態様において、前記突出部は、前記本体部よりも柔らかい材料とされている。
【0036】
突出部を本体部よりも柔らかい材料とすることによって、圧縮機から発生した振動を本体部に伝達することを抑制することができる。
突出部の材料としては、例えば、エプトシーラー(登録商標)等のEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)発泡材のようなゴムスポンジ、連続気泡ポリエチレン等を用いることができる。
【0037】
本開示の第4態様に係る圧縮機用エンクロージャは、前記第1態様から前記第3態様のいずれかにおいて、前記本体部は、複数の分割体(10A,10B)から構成されている。
【0038】
本体部を複数の分割体で構成することで、圧縮機を取り囲むようにエンクロージャを組み立てる作業が容易になる。本体部の分割数としては2が好ましい。
【0039】
本開示の第5態様に係る圧縮機用エンクロージャは、前記第1態様から前記第4態様のいずれかにおいて、前記突出部は、前記圧縮機の圧縮部に対応する位置よりも、前記圧縮機の電動モータ部に対応する位置に、多くの数が設けられている。
【0040】
圧縮機の圧縮部の方が、圧縮部を駆動する電動モータ部よりも振動が大きい。そこで、振動が比較的小さい電動モータ部の方に多くの突出部を設けてエンクロージャの本体部と接続することとした。これにより、エンクロージャの本体部に伝達される振動を抑制することができる。なお、比較的剛性を高くするために,回転軸に直交してメインベアリング(圧縮部近傍の回転軸を回転支持する軸受)を通る平面、及び/又は、サブ軸受(メインベアリングに対して回転軸の反対側を回転支持する軸受)後部の端板部を通る平面に突出部を設けても良い。
【0041】
本開示の圧縮機ユニットは、前記第1態様から前記第5態様のいずれかに記載された圧縮機用エンクロージャと、前記圧縮機用エンクロージャ内に収容された圧縮機と、を備えている。
【符号の説明】
【0042】
1 エンクロージャ
2 圧縮機
2A 圧縮部
2B モータ部(電動モータ部)
3 取付脚部
5 吐出口(延出部)
7 吸込口(延出部)
9 配線ガイド筒(延出部)
10 本体部
10A,10B 分割体
12 突出部
14 シール材
P 分割面
図1
図2
図3
図4