(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080447
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】直動案内装置、駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16C 29/04 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
F16C29/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193646
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003742
【氏名又は名称】弁理士法人海田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】趙 彬
(72)【発明者】
【氏名】冨山 貴光
(72)【発明者】
【氏名】志岐 和也
【テーマコード(参考)】
3J104
【Fターム(参考)】
3J104AA12
3J104AA19
3J104AA23
3J104AA25
3J104AA30
3J104AA34
3J104AA65
3J104AA70
3J104AA73
3J104AA76
3J104BA05
3J104BA41
3J104CA23
3J104DA05
(57)【要約】
【課題】2つの案内レールの全長に亘って潤滑剤を供給する。
【解決手段】直動案内装置1は、長手方向に延びて形成される2つの案内レール2,3と、2つの案内レール2,3の間に転動自在な状態で組み付けられることで、2つの案内レール2,3を長手方向で相対移動可能とする複数の転動体9a,9bと、複数の転動体9a,9bを保持するとともに、2つの案内レール2,3の少なくとも一方に設けられる噛合部2b,3bに係合するピニオン歯車13を回転可能に保持する保持器10と、を備え、噛合部2b,3bは、案内レール2,3の長手方向に並んで形成される複数のラック溝18を含み、2つの案内レール2,3が長手方向で相対移動するときに、ピニオン歯車13と複数のラック溝18が噛み合うように構成され、2つの案内レール2,3の少なくとも一方には、噛合部2b,3bの近傍に潤滑剤を供給する給脂経路19が形成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びて形成される2つの案内レールと、
前記2つの案内レールの間に転動自在な状態で組み付けられることで、前記2つの案内レールを長手方向で相対移動可能とする複数の転動体と、
前記複数の転動体を保持するとともに、前記2つの案内レールの少なくとも一方に設けられる噛合部に係合するピニオン歯車を回転可能に保持する保持器と、
を備え、
前記噛合部は、前記案内レールの長手方向に並んで形成される複数のラック溝を含み、
前記2つの案内レールが長手方向で相対移動するときに、前記ピニオン歯車と前記複数のラック溝が噛み合うように構成される直動案内装置において、
前記2つの案内レールの少なくとも一方には、前記噛合部の近傍に潤滑剤を供給するための給脂経路が形成されることを特徴とする直動案内装置。
【請求項2】
請求項1に記載の直動案内装置であって、
前記給脂経路は、前記複数のラック溝の少なくとも1つと接続していることを特徴とする直動案内装置。
【請求項3】
請求項1に記載の直動案内装置であって、
前記給脂経路は、前記複数のラック溝とは接続せずに、前記複数のラック溝の少なくとも1つと隣接して設けられることを特徴とする直動案内装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の直動案内装置を少なくとも1つ備えるとともに、
前記直動案内装置が備える前記2つの案内レールのいずれか一方に接続するベース部と、
前記直動案内装置が備える前記2つの案内レールのいずれか他方に接続するテーブル部と、
を備えることで、前記ベース部に対して前記テーブル部が前記直動案内装置を構成する前記2つの案内レールの長手方向に沿って相対的に水平移動する駆動装置であって、
前記ベース部と前記テーブル部の少なくとも一方には、前記給脂経路と接続する延長経路が形成されることを特徴とする駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動案内装置と、この直動案内装置を少なくとも1つ備える駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
保持器の位置ずれを防止する位置ずれ防止機構を備える直動案内装置が公知である(例えば、下記特許文献1参照)。この直動案内装置は、複数の転動体を介して長手方向に相対移動可能な2つの案内レールを備えており、複数の転動体は保持器に保持されている。
【0003】
この種の直動案内装置において、2つの案内レールを繰り返し相対移動させると、転動体を保持する保持器が正規の位置からずれる場合がある。このような保持器の位置ずれを防止するために、直動案内装置には位置ずれ防止機構が設けられる。位置ずれ防止機構は、案内レールに設けられる複数のラック溝と、保持器に設けられるピニオン歯車と、から構成される。2つの案内レールが相対移動する際、ピニオン歯車がラック溝に噛み合いながら正規の位置を移動するので、保持器の位置ずれを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上掲した特許文献1に代表される従来の直動案内装置では、2つの案内レールの全長に亘って潤滑剤を供給できる給脂手段が存在していなかった。すなわち、従来の直動案内装置に対して行われていた給脂方法としては、2つの案内レールを長手方向で互いにずらしておき、案内レール同士の対向面がむき出しになった案内レールの端部に潤滑剤を塗布し、この状態から2つの案内レールを繰り返し相対移動させることで、複数の転動体やピニオン歯車、ラック溝などに潤滑剤を行きわたらせることが行われていた。
【0006】
しかしながら、上記した従来の給脂方法では、2つの案内レールの全長に亘って満遍なく潤滑剤を給脂することが困難であった。特に、2つの案内レールが長尺の場合には、2つの案内レールの中央部分にまで潤滑剤を行きわたらせることができない。そのため、従来の直動案内装置では、十分な給脂ができないために、2つの案内レールのスムースな相対移動動作の実現や、直動案内装置の長寿命化の実現といった点について、改善の余地が残されていた。
【0007】
本発明は、上述した従来技術に存在する課題に鑑みて成されたものであって、その目的は、2つの案内レールの全長に亘って潤滑剤を供給できる給脂手段を提供することで、2つの案内レールのスムースな相対移動動作の実現や、装置の長寿命化の実現が可能な直動案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る直動案内装置は、長手方向に延びて形成される2つの案内レールと、前記2つの案内レールの間に転動自在な状態で組み付けられることで、前記2つの案内レールを長手方向で相対移動可能とする複数の転動体と、前記複数の転動体を保持するとともに、前記2つの案内レールの少なくとも一方に設けられる噛合部に係合するピニオン歯車を回転可能に保持する保持器と、を備え、前記噛合部は、前記案内レールの長手方向に並んで形成される複数のラック溝を含み、前記2つの案内レールが長手方向で相対移動するときに、前記ピニオン歯車と前記複数のラック溝が噛み合うように構成される直動案内装置であって、前記2つの案内レールの少なくとも一方には、前記噛合部の近傍に潤滑剤を供給するための給脂経路が形成されることを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る駆動装置は、上記の直動案内装置を少なくとも1つ備えるとともに、前記直動案内装置が備える前記2つの案内レールのいずれか一方に接続するベース部と、前記直動案内装置が備える前記2つの案内レールのいずれか他方に接続するテーブル部と、を備えることで、前記ベース部に対して前記テーブル部が前記直動案内装置を構成する前記2つの案内レールの長手方向に沿って相対的に水平移動する駆動装置であって、前記ベース部と前記テーブル部の少なくとも一方に、前記給脂経路と接続する延長経路を形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、2つの案内レールの全長に亘って潤滑剤を供給できる給脂手段を提供することができる。そのような給脂手段を備えることで、本発明に係る直動案内装置は、2つの案内レールのスムースな相対移動動作の実現や、装置の長寿命化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態である直動案内装置の斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る直動案内装置の内部構造図である。
【
図3】本実施形態に係る直動案内装置の転動体とピニオン歯車を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態に係る直動案内装置の案内レールとピニオン歯車を示す斜視図(一部に案内レールの断面図を含む)である。
【
図5】本実施形態に係る直動案内装置の案内レールの詳細図であり、図中の分図(a)は正面図を示し、分図(b)は分図(a)のV-V線断面図を示している。
【
図6】本実施形態に係る直動案内装置のピニオン歯車の詳細図であり、図中の分図(a)は斜視図を示し、分図(b)は平面図を示し、分図(c)は側面図を示している。
【
図7】本発明に係る直動案内装置の給脂経路が取り得る変形形態例を示す案内レールの断面図であり、図中の分図(a)および(b)とも
図5(b)に対応した図である。
【
図8】本実施形態に係る直動案内装置を2つ利用した本実施例に係る駆動装置の構成例を示す斜視透視図である。
【
図9】
図8で示す本実施例に係る駆動装置の要部を拡大した図である。
【
図10】本発明の駆動装置が取り得る別の実施例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態である直動案内装置の斜視図である。本実施形態に係る直動案内装置1は、2つの案内レール2,3を備える。2つの案内レール2,3それぞれには、断面V字状の軌道溝4,5が形成される。一方(
図1の左側)の案内レール2が備える軌道溝4は、互いに直角な軌道面7a,7bを備える。他方(
図1の右側)の案内レール3が備える軌道溝5は、互いに直角な軌道面8a,8bを備える。2つの案内レール2,3は、複数のローラ9a,9b(
図2参照)を介して長手方向に相対的に移動可能である。
【0014】
一方の案内レール2には、ベース部等に取り付けるための取付孔2aが形成される。他方の案内レール3には、テーブル部等に取り付けるための取付孔3aが形成される。他方の案内レール3の形状は、一方の案内レール2を180°反転させた形状に略等しい。
【0015】
図2は、本実施形態に係る直動案内装置の内部構造図である。
図2では、
図1の手前側の案内レール3を省略した状態を示す。また、
図3は、本実施形態に係る直動案内装置の転動体とピニオン歯車を示す斜視図である。
図3では、
図2の保持器10を省略した状態を示す。2つの案内レール2,3の対向する軌道溝4,5の間には、本発明の転動体としてのローラ9a,9bが複数個配置される。本実施形態の複数のローラ9a,9bは、隣り合うローラ9a,9bの軸線が直角に配置されたクロスローラである。複数のローラ9a,9bそれぞれは、側面視において略正方形であり、ローラ9a,9bの直径がローラ9a,9bの軸線方向の長さよりも僅かに大きい。そして、一の方向に配置されたローラ9aの側面が一方の案内レール2の軌道面7aと他方の案内レール3の軌道面8bに接触する。また、他の方向に配置されたローラ9bの側面が一方の案内レール2の軌道面7bと他方の案内レール3の軌道面8aに接触する。したがって、一方の案内レール2に働く力は、複数のローラ9a,9bを介して他方の案内レール3に伝わる。
【0016】
なお、本実施形態では転動体としてクロスローラを使用しているが、本発明では、転動体としてボールを使用してもよいし、ニードルローラ等のパラレルローラを使用してもよい。
【0017】
図2に示すように、複数のローラ9a,9bは2つの案内レール2,3に沿って長手方向に延びる保持器10に保持される。また、ピニオン歯車13も保持器10に回転可能に保持される。本実施形態のピニオン歯車13は、保持器10の長さ方向の略中央に配置される。
【0018】
図4は、本実施形態に係る直動案内装置の案内レールとピニオン歯車を示す斜視図(一部に案内レールの断面図を含む)である。
図4では、2つの案内レール2,3とピニオン歯車13を示す。2つの案内レール2,3の軌道溝4,5の底部には、逃げ溝16,17が形成される。逃げ溝16,17の底面には、ラック状の噛合部2b,3bが形成される。ピニオン歯車13の歯21は、噛合部2b,3bに係合する。2つの案内レール2,3に対するピニオン歯車13の相対位置は、2つの案内レール2,3の相対位置によって決定される。
【0019】
図5は、本実施形態に係る直動案内装置の案内レールの詳細図であり、図中の分図(a)は正面図を示し、分図(b)は分図(a)のV-V線断面図を示している。
図5では、一方の案内レール2の詳細図が示されている。噛合部2bは、案内レール2の長手方向に並んで形成される複数のラック溝18を備える。ラック溝18は、案内レール2の長手方向に等間隔で並んで形成される。ラック溝18は、その壁面18aが円筒形に形成される。すなわち、ラック溝18の断面形状は円形であり、ラック溝18の断面形状は深さ方向に一定である。ラック溝18の中心線18cは案内レール2の長手方向に直交するように配置される。なお、他方の案内レール3にも、一方の案内レール2と同様に複数のラック溝18が形成される(
図4参照)。
【0020】
本実施形態のラック溝18は、2つの案内レール2,3に直接形成される。また、ラック溝18は、例えば先端がフラットなドリル、エンドミル等の切削工具を用いて溝加工される。さらに、ラック溝18は、例えばその底面18bがフラットに形成される(
図5(b)参照)。なお、本発明のラック溝の形成方法や形状については、ラック溝を形成したラックを案内レールに取り付けてもよいし、ラック溝を放電加工等により溝加工してもよいし、ラック溝の底面を先端が円錐状のドリルに合わせた円錐形に形成してもよい。
【0021】
図6は、本実施形態に係る直動案内装置のピニオン歯車の詳細図であり、図中の分図(a)は斜視図を示し、分図(b)は平面図を示し、分図(c)は側面図を示している。
図6では、ピニオン歯車13の詳細図が示されている。
図6(a)に示すように、ピニオン歯車13は、外周に多数の歯21が形成される円盤部13aと、円盤部13aと一体に形成される軸部13bと、を備える。ピニオン歯車13は、保持器10によって軸部13bを中心に回転可能な状態で支持される。
【0022】
ピニオン歯車13の歯21は、歯先部21aと、歯元部21bと、を備える。歯先部21aは、直方体の角を丸めた形状となっている。
図6(b)および
図6(c)に示すように、歯先部21aの回転方向Rの長さLは、歯先部21aの歯幅W(回転軸方向の長さ)よりも長い。なお、
図6(c)において、歯先部21aを斜線で示す。
【0023】
さらに、
図6(b)に示すように、回転軸方向視において、歯元部21bはくびれていて、歯元部21bの回転方向Rの長さTは歯先部21aの回転方向Rの長さLよりも短い。
【0024】
さて、
図4および
図5に示すように、本実施形態に係る直動案内装置1を構成する2つの案内レール2,3には、噛合部2b,3bの近傍に潤滑剤を供給するための給脂経路19が形成される。より具体的には、本実施形態の給脂経路19は、噛合部2b,3bが備える複数のラック溝18と接続するように形成される。上述したように、本実施形態のラック溝18は、断面形状が円形であり、かつ、断面形状は深さ方向に一定である。また、ラック溝18の中心線18cは案内レール2,3の長手方向に直交するように配置される。
【0025】
これに対して、本実施形態の給脂経路19は、断面形状が円形であり、かつ、断面形状は深さ方向に一定である。また、給脂経路19はラック溝18の底面18bと接続して案内レール2,3を水平方向で貫通するように形成されており、給脂経路19の形成される方向は、ラック溝18の中心線18cと同一方向となるように配置される。さらに、給脂経路19の開口径は、ラック溝18の壁面18aを形成する円筒形をした開口径よりも小さく形成されている。またさらに、本実施形態では、2つの案内レール2,3それぞれに対して、2本ずつ、合計4本の給脂経路19が形成されており、これら4本の給脂経路19は、2つの案内レール2,3それぞれの全長を略均等に3分割する位置に配置されている。
【0026】
図4および
図5で示された本実施形態の給脂経路19を利用して、直動案内装置1の左右側面から給脂経路19とラック溝18を経由してピニオン歯車13に向けて潤滑剤を給脂すると、2つの案内レール2,3の相対移動によってピニオン歯車13が複数のラック溝18に噛み合いながら回転して、歯21に付いた潤滑剤が2つの案内レール2,3の対向面間で広がっていくので、2つの案内レール2,3の全長に亘って潤滑剤を供給できる。したがって、本実施形態に係る直動案内装置1によれば、2つの案内レール2,3のスムースな相対移動動作の実現や、装置の長寿命化を実現することができる。
【0027】
なお、
図4および
図5で示した本実施形態の給脂経路19は、本発明が取り得る一実施形態例であり、本発明の給脂経路については、例えば
図7で示すような様々な変形形態を採用することができる。
図7は、本発明に係る直動案内装置の給脂経路が取り得る変形形態例を示す案内レールの断面図であり、図中の分図(a)および(b)とも
図5(b)に対応した図である。
【0028】
図7(a)で示すように、一の変形形態に係る給脂経路19aは、ラック溝18の壁面18aを形成する円筒形をした開口径よりも大きい開口径を有するように形成されている。またこのとき、一の変形形態に係る給脂経路19aと接続するラック溝18dについては、他のラック溝18に比べて溝の深さが長くなるように形成してもよい。
【0029】
また、
図7(b)で示すように、他の変形形態に係る給脂経路19bは、噛合部2b,3bが備える複数のラック溝18とは接続せずに、複数のラック溝18と隣接して設けられている。つまり、
図7(b)で示す場合の変形形態例では、ラック溝18を利用せずに給脂経路19b単体で潤滑剤の供給手段としての機能を発揮できる。
【0030】
さらに、本発明の給脂経路は、1つの案内レールに対して1本又は複数本形成してもよく、この給脂経路の形成本数については、案内レールの長さや潤滑剤の種類、直動案内装置の使用条件等に応じて任意に選択することができる。またさらに、本発明の給脂経路の形状については、ラック溝18と同一の開口径としてもよいし、一直線で形成されるものに加えて複数の直線経路を組み合わせた複雑な経路を有するものとしてもよい。なお、発明者らの試験・研究によって、
図4および
図5、
図7で示した各形態を採用した直動案内装置1の給脂経路19,19a,19bを使用した場合に、2つの案内レール2,3の全長に亘って満遍なく潤滑剤を給脂できることが確認されている。
【0031】
以上、
図1~
図7を参照して、本実施形態に係る直動案内装置1と、その変形形態例を説明した。上述した本実施形態に係る直動案内装置1については、様々な産業分野で利用できるが、その一実施例を
図8および
図9を用いて説明する。
図8は、本実施形態に係る直動案内装置を2つ利用した本実施例に係る駆動装置の構成例を示す斜視透視図である。
図9は、
図8で示す本実施例に係る駆動装置の要部を拡大した図である。なお、以下の説明において、上述した実施形態と同一又は類似する部材については、同一符号を用いることで説明や図示を省略する場合がある。
【0032】
[実施例]
図8で示すように、本実施例に係る駆動装置100は、2組の直動案内装置1と、2組の直動案内装置1のそれぞれが備える2つの案内レール2,3のいずれか一方に接続するベース部102と、2組の直動案内装置1のそれぞれが備える2つの案内レール2,3のいずれか他方に接続するテーブル部101と、を備えることで、ベース部102に対してテーブル部101が直動案内装置1を構成する2つの案内レール2,3の長手方向に沿って相対的に水平移動する装置である。
【0033】
本実施例の駆動装置100において、テーブル部101には2つの案内レール2,3のいずれか一方に形成された給脂経路19と接続する延長経路110が形成されており、駆動装置100の外部から2組の直動案内装置1に対して潤滑剤を給脂することが可能となっている。
【0034】
本実施例の駆動装置100の場合、
図9において詳細に示されるように、給脂経路19と延長経路110との接続部には、潤滑剤の漏れを防止するためのOリング111が配置されており、テーブル部101の左右側面から給脂される潤滑剤は、延長経路110から給脂経路19、ラック溝18を経由してピニオン歯車13に向けて漏れなく給脂されることとなる。したがって、本実施例の駆動装置100についても、延長経路110と給脂経路19を利用して給脂される潤滑剤が上述した本実施形態の場合と同様に2つの案内レール2,3の対向面間に広がっていき、2つの案内レール2,3の全長に亘って潤滑剤を供給できる。したがって、本実施例の駆動装置100についても、スムースな相対移動動作の実現や、装置の長寿命化を実現することができる。
【0035】
なお、
図9で示した延長経路110と給脂経路19の接続部に配置されたOリング111については、種々の変形を行うことができる。例えば、延長経路110と給脂経路19の間に隙間がある場合には、両経路をつなぐパイプ状の封止部材を採用してもよいし、延長経路110と給脂経路19の間に隙間が無い場合には、延長経路110と給脂経路19の接続端部に溝を設け、この溝に嵌まり込む封止部材を設置してもよい。
【0036】
また、
図8および
図9で示した延長経路110は、直線形状で形成されたものであったが、本発明の延長経路については、あらゆる経路形状を採用することができる。例えば、
図10は、本発明の駆動装置が取り得る別の実施例を示す部分断面図であるが、
図10で示すように、テーブル部101に形成される延長経路110が断面視で略L字形をした経路としてもよい。またこのとき、給脂経路19についても断面視で略L字形をした経路とすることができ、延長経路110と給脂経路19の間には、あらゆる形態の封止部材を設けることができる。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0038】
例えば、
図10を用いて示した本発明の駆動装置が取り得る別の実施例の駆動装置100では、テーブル部101と案内レール3、ベース部102と案内レール2が別部材として構成されていたが、本発明の駆動装置では、テーブル部101と案内レール3、ベース部102と案内レール2のそれぞれが一体の部材として構成されていてもよい。
【0039】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0040】
1 直動案内装置、2 (一方の)案内レール、2a (一方の案内レールの)取付孔、2b (一方の案内レールの)噛合部、3 (他方の)案内レール、3a (他方の案内レールの)取付孔、3b (他方の案内レールの)噛合部、4 (一方の案内レールの)軌道溝、5 (他方の案内レールの)軌道溝、7a,7b (一方の案内レールの)軌道面、8a,8b (他方の案内レールの)軌道面、9a,9b ローラ(転動体)、10 保持器、13 ピニオン歯車、13a 円盤部、13b 軸部、16,17 逃げ溝、18,18d ラック溝、18a (ラック溝の)壁面、18b (ラック溝の)底面、18c (ラック溝の)中心線、19,19a,19b 給脂経路、21 歯、21a 歯先部、21b 歯元部、100 駆動装置、101 テーブル部、102 ベース部、110 延長経路、111 Oリング(封止部材)。