(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080454
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】内燃機関の異常診断方法、及び内燃機関の異常診断システム
(51)【国際特許分類】
F01M 13/00 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
F01M13/00 K
F01M13/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193655
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 晋平
(72)【発明者】
【氏名】河田 友弘
(72)【発明者】
【氏名】正部川 英亨
(72)【発明者】
【氏名】杉田 丈治
(72)【発明者】
【氏名】前原 創
【テーマコード(参考)】
3G015
【Fターム(参考)】
3G015BD12
3G015BD23
3G015CA16
3G015EA03
3G015FA01
3G015FA04
3G015FB01
3G015FC04
3G015FC05
3G015FD01
(57)【要約】
【課題】ブローバイガス還流システムの異常診断の誤診断を効率的に低減する内燃機機関の異常診断方法、及び内燃機関の異常診断システムを提供する。
【解決手段】内燃機関10の燃焼室45に新気を吸気する吸気通路32及び内燃機関10のクランクケース46を連通して新気をクランクケース46に導入する新気導入通路(第2配管42)と、新気導入通路(第2配管42)に配置され新気の流量を調整する制御弁48と、を含むブローバイガス還流システムを備えた内燃機関10の異常診断方法であって、新気の温度である吸気温度に基づいて制御弁48の凍結の有無を判定し、制御弁48の凍結が解除されていると判定したのち制御弁48に閉弁を指示してクランクケース46の内部の圧力が所定圧力(P2)以下に低下しない場合に、ブローバイガス還流システムのいずれかの部分から空気が進入していると判定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室に新気を吸気する吸気通路及び前記内燃機関のクランクケースを連通して前記新気を前記クランクケースに導入する新気導入通路と、前記新気導入通路に配置され前記新気の流量を調整する制御弁と、を含み、前記クランクケースの内部にあるブローバイガスを前記吸気通路に供給するブローバイガス還流システムを備えた内燃機関の異常診断方法であって、
前記新気の温度である吸気温度に基づいて前記制御弁の凍結の有無を判定し、
前記制御弁の凍結が解除されていると判定したのち前記制御弁に閉弁を指示して前記クランクケースの内部の圧力が所定圧力以下に低下しない場合に、前記ブローバイガス還流システムのいずれかの部分から空気が進入していると判定する内燃機関の異常診断方法。
【請求項2】
前記内燃機関の始動時に前記制御弁に閉弁を指示して前記クランクケースの内部の圧力が前記所定圧力以下に低下しない場合であって、前記内燃機関の始動時の前記吸気温度が所定温度以上の場合に前記ブローバイガス還流システムのいずれかの部分から空気が進入していると判定する請求項1に記載の内燃機関の異常診断方法。
【請求項3】
前記内燃機関の始動時に前記制御弁に閉弁を指示して前記クランクケースの内部の圧力が前記所定圧力以下に低下しない場合であって、前記内燃機関の始動時の前記吸気温度が所定温度よりも低い場合に前記制御弁が凍結していると判定する請求項1に記載の内燃機関の異常診断方法。
【請求項4】
前記吸気温度の実測値、又は前記吸気温度の推定値が所定の閾値温度以上の温度を所定の閾値時間以上継続した場合に前記制御弁の凍結が解除されたと判定する請求項1に記載の内燃機関の異常診断方法。
【請求項5】
前記制御弁は電流により駆動するとともに、前記制御弁に電流を供給すると前記新気導入通路を閉止し、前記制御弁への電流の供給を停止すると前記新気導入通路を開放する請求項1に記載の内燃機関の異常診断方法。
【請求項6】
内燃機関の燃焼室に新気を吸気する吸気通路及び前記内燃機関のクランクケースを連通して前記新気を前記クランクケースに導入する新気導入通路と、前記新気導入通路に配置され前記新気の流量を調整する制御弁と、を含み、前記クランクケースの内部にあるブローバイガスを前記吸気通路に供給するブローバイガス還流システムを備えた内燃機関の異常診断システムであって、
前記新気の温度である吸気温度に基づいて前記制御弁の凍結の有無を判定する凍結判定手段と、
前記制御弁の凍結が解除されていると判定したのちに前記制御弁に閉弁を指示する閉弁指示手段と、
前記閉弁を指示した後に前記クランクケースの内部の圧力が所定圧力以下に低下しない場合に、前記ブローバイガス還流システムのいずれかの部分から空気が進入していると判定する異常診断手段と、を含む内燃機関の異常診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の異常診断方法、及び内燃機関の異常診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ブローバイガス還流システムを備えた内燃機関において、ブローバイガス還流システムを構成する新気導入通路に設けた制御弁を閉弁したときのクランクケース内の圧力に基づいてブローバイガス還流システムの異常の有無を診断する内容を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、内燃機関の停止中に制御弁が凍結する場合があり、この場合制御弁による閉弁が不十分な状態で異常の有無を診断することになり、誤診断を招くおそれがある。
【0005】
本発明は、ブローバイガス還流システムの異常診断の誤診断を効率的に低減する内燃機機関の異常診断方法、及び内燃機関の異常診断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による内燃機関の異常診断方法は、内燃機関の燃焼室に新気を吸気する吸気通路及び内燃機関のクランクケースを連通して新気をクランクケースに導入する新気導入通路と、新気導入通路に配置され新気の流量を調整する制御弁と、を含み、クランクケースの内部にあるブローバイガスを吸気通路に供給するブローバイガス還流システムを備えた内燃機関の異常診断方法である。この内燃機関の異常診断奉納では、新気の温度である吸気温度に基づいて制御弁の凍結の有無を判定する。そして、制御弁の凍結が解除されていると判定したのち制御弁に閉弁を指示してクランクケースの内部の圧力が所定圧力以下に低下しない場合に、ブローバイガス還流システムのいずれかの部分から空気が進入していると判定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易な方法で制御弁の凍結の解除を判定した上でブローバイガス還流システムの異常診断を行うので、当該異常診断の誤診断を効率的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態の内燃機関の異常診断方法(異常診断システム)が適用される内燃機関の基本構成を模式的に示した説明図である。
【
図2】
図2は、内燃機関が始動してからの吸気温度の時間変化と、ブローバイガス還流システムの凍結判定を行うための閾値温度と閾値時間との関係を示す図である。
【
図3】
図3は、ブローバイガス還流システムの異常診断と凍結判定の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、ブローバイガス還流システムの異常診断を実施した際のクランクケース内の圧力変化の一例を示す特性図である。
【
図5】
図5は、ブローバイガス還流システムの異常診断の制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
[内燃機関10の基本構成]
図1は、本実施形態の内燃機関10の異常診断方法(異常診断システム)が適用される内燃機関10の基本構成を模式的に示した説明図である。内燃機関10は、例えば、当該内燃機関10により駆動されて発電する発電機(不図示)の電力と発電機(不図示)で発電された電力を充電可能なバッテリ(不図示)からの電力との少なくとも一方の電力で駆動される駆動用モータ(不図示)のみを駆動源とするハイブリッド車両に搭載されている。
【0011】
内燃機関10は、例えば多気筒の火花点火式ガソリン機関である。内燃機関10の各気筒には、吸気マニホールド31を介して吸気通路32が接続されている。
【0012】
吸気通路32には、吸気中の異物を捕集するエアクリーナ33と、吸入空気量を検出するエアフローメータ34と、電動のスロットル弁35と、スロットル弁35の上流側に位置する電動の圧力制御弁36と、が設けられている。
【0013】
エアフローメータ34は、吸気量検出センサに相当するものであり、圧力制御弁36の上流側に配置されている。エアフローメータ34は、温度センサを内蔵したものであって、吸気導入口の吸気温度を検出可能となっている。なお吸気温度は、エアフローメータ34で検出された温度を実測値とするが、他の部分の温度から推定した値を適用してもよい。
【0014】
エアクリーナ33は、エアフローメータ34の上流側に配置されている。
【0015】
スロットル弁35は、第1吸気絞り弁に相当するものであり、負荷に応じて内燃機関10の吸入空気量を制御する。圧力制御弁36は、第2吸気絞り弁に相当するものであって、後述するコンプレッサ38の上流側における吸気圧力を制御する。つまり、圧力制御弁36は、スロットル弁35の上流側に負圧を生成することが可能なものである。
【0016】
スロットル弁35及び圧力制御弁36は、制御部としてのエンジンコントロールモジュール(ECM)37からの制御信号により開度を変更(制御)可能となっている。
【0017】
ここで、圧力制御弁36の下流側には、図示せぬEGR通路が接続されている。EGR通路は、図示せぬ排気通路から排気ガスの一部を吸気通路32に還流する排気還流(EGR)を可能にするものである。EGR通路は、後述するコンプレッサ38の上流側で吸気通路32に接続されている。つまり、吸気通路32に還流するEGRガス量は、圧力制御弁36の開度調整に起因する圧力制御弁36下流側の吸気圧力(吸気負圧)によって制御可能である。
【0018】
また、この内燃機関10は、ターボ過給機を有している。ターボ過給機は、吸気通路32に設けられたコンプレッサ38と、図示せぬ排気通路に設けられた図示せぬタービンと、を有している。コンプレッサ38とタービンは、同軸上に配置され、一体となって回転する。コンプレッサ38は、スロットル弁35の上流側となり、圧力制御弁36よりも下流側となる位置に配置されている。
【0019】
吸気通路32には、スロットル弁35の上流側にインタクーラ39が設けられている。インタクーラ39は、コンプレッサ38の下流側に位置し、コンプレッサ38により圧縮(加圧)された吸気を冷却して充填効率を良くするために設けられている。
【0020】
さらに内燃機関10は、吸気通路32におけるエアフローメータ34よりも下流側の位置に接続された複数の配管を利用して、ブローバイガスを吸気通路32に導入して処理するブローバイガス処理用のブローバイガス還流システムを有している。ブローバイガス還流システムは、第1配管41(第1ブローバイガス導入通路)、第2配管42(新気導入通路)及び第3配管43(第2ブローバイガス導入通路)を有している。ブローバイガスは、シリンダとピストンの隙間を通って、内燃機関10の燃焼室45から内燃機関10のクランクケース46に漏れ出した燃焼ガスである。
【0021】
第1配管41は、吸気通路32おけるスロットル弁35と圧力制御弁36との間の位置と内燃機関10のクランクケース46とを接続する(連通させる)第1通路を構成するものである。第1配管41は、一端が吸気通路32おけるスロットル弁35と圧力制御弁36との間の位置に接続され、他端が逆止弁47を介して内燃機関10に接続されている。詳述すると、第1配管41は、一端が吸気通路32におけるコンプレッサ38と圧力制御弁36との間の位置に接続されている。第1配管41(第1通路)は、クランクケース46内のブローバイガスを吸気通路32に導入可能なものである。
【0022】
逆止弁47は、ブローバイガス還流システムの一部であり、クランクケース46から吸気通路32へ向かう方向の流れを許容しつつ、吸気通路32からクランクケース46へ向かう方向の流れを禁止する機能を有している。なお、逆止弁47は、場合によっては省略することも可能である。
【0023】
第2配管42は、吸気通路32における圧力制御弁36とエアフローメータ34との間の位置と内燃機関10のクランクケース46とを接続する(連通させる)第2通路を構成するものである。第2配管42は、一端が吸気通路32における圧力制御弁36とエアフローメータ34との間の位置に制御弁48を介して接続され、他端が内燃機関10に接続されている。第2配管42(第2通路)は、内燃機関10のクランクケース46に新気(空気)を導入可能なものである。
【0024】
制御弁48は、ブローバイガス還流システムの一部であり、第2配管42内の新気(空気)の流れを制御する機能を有している。制御弁48は、第2配管42の一端を開閉可能に配置され、ECM37からの制御信号により開度を変更(制御)可能となっている。制御弁48は、所謂ソレノイドバルブであり、ECM37の制御信号により供給される電流が流れると第2配管42を閉止する方向に駆動するとともに当該電流が所定値に到達すると第2配管42を閉止し、当該電流が停止すると第2配管42を解放するように設定されている。なお、制御弁48の温度は、吸気温度と略同一の温度である。
【0025】
制御弁48は、後述するブローバイガス還流システムの異常診断時には、吸気通路32から第2配管42に空気が流れ込まないように、全閉状態に制御される。また、制御弁48は、後述するブローバイガス還流システムの異常診断時以外は、吸気通路32から第2配管42への空気の流れが許容されるように、開状態に制御される。
【0026】
第3配管43は、吸気通路32におけるスロットル弁35よりも下流側の位置と内燃機関10のクランクケース46とを接続する(連通させる)第3通路を構成するものである。第3配管43は、一端が吸気通路32におけるスロットル弁35よりも下流側の位置に接続され、他端がPCVバルブ49を介して内燃機関10に接続されている。第3配管43は、クランクケース46内のブローバイガスを吸気通路32に導入可能なものである。
【0027】
PCVバルブ49は、ブローバイガス還流システムの一部であり、第3配管43内のガスの流量を制御するものである。PCVバルブ49は、例えば周知の差圧作動弁であり、内燃機関10に取り付けられ、クランクケース46側の入口部の圧力(正圧)と、吸気通路32側の出口部の圧力(負圧)と、の差圧が大きいときに開くように作動する。詳述すると、PCVバルブ49は、第3配管43を通して吸気通路32からクランクケース46内部へ外気が逆流することを防ぎつつ、差圧に応じてクランクケース46から吸気通路32へブローバイガスを排出させるものである。つまり、ブローバイガスは、スロットル弁35よりも下流側の負圧を利用して、PCVバルブ49及び第3配管43を介して吸気通路32に戻すことが可能である。
【0028】
ECM37は、CPU、ROM、RAM及び入出力インターフェースを備えた周知のデジタルコンピュータである。ECM37には、上記したエアフローメータ34の検出信号のほか、クランクシャフトのクランク角を検出するクランク角センサ(不図示)、アクセルペダルの踏込量を検出するアクセル開度センサ(不図示)、クランクケース46内の圧力を検出する圧力センサ53等の各種センサ類の検出信号が入力されている。クランク角センサ(不図示)は、内燃機関10の機関回転数を検出可能なものである。ECM37は、各種センサ類の検出信号に基づいて、内燃機関10の運転を制御している。
【0029】
ここで、第1配管41、第2配管42に配管外れや穴あき等がある場合や、PCVバルブ49が内燃機関10から外れた場合等、ブローバイガス還流システムに異常がある場合には、異常がある部位から空気が進入する。
【0030】
第1配管41の配管外れとは、例えば第1配管41が吸気通路32を構成する吸気管や逆止弁47から外れて脱落してしまうことである。第2配管42の配管外れとは、例えば第2配管42が制御弁48や内燃機関10から外れて脱落してしまうことである。第3配管43の配管外れとは、例えば第3配管43が吸気通路32を構成する吸気管やPCVバルブ49から外れて脱落してしまうことである。
【0031】
ブローバイガス還流システムは、圧力制御弁36を予め設定された所定の小開度となるように開弁すると、圧力制御弁36の下流側に生成された負圧と第1配管41を利用して、クランクケース46内のブローバイガスを吸気通路32に導入可能となる。ここで、上記所定の小開度とは、圧力制御弁36が全閉となる弁開度と全開となる弁開度との間の弁開度であり、換言すれば所定の中間開度である。そして、上記所定の小開度は、全閉側の弁開度に設定するのが望ましい。
【0032】
ブローバイガス還流システムは、圧力制御弁36を上記所定の小開度となるように開弁した際に制御弁48が全閉となるように閉弁していると、クランクケース46に新気が導入されない。そのため、クランクケース46内の圧力は、クランクケース46内のブローバイガスが第1配管41から吸気通路32へと導入(排出)されることで低下する(負圧が発達する)ことになる。
【0033】
しかし、ブローバイガス還流システムに異常があった場合には、ブローバイガス配管の異常があった部位から空気が流入することになる。そのため、クランクケース46内の圧力は、圧力制御弁36が上記所定の小開度となるように開弁した際に制御弁48が全閉となるように閉弁していても大きく低下する(負圧が発達する)ことはない。
【0034】
例えば、第1配管41に異常がある場合、圧力制御弁36を上記所定の小開度となるように開弁して制御弁48を全閉となるように閉弁すると、吸気通路32には、第1配管41の異常がある部位から流入した空気が流れ込む。そのため、クランクケース46内のブローバイガスが第1配管41から吸気通路32へと導入(排出)されにくくなくなるので、クランクケース46内の圧力は、大きく低下する(負圧が発達する)ことはない。
【0035】
例えば、第2配管42に異常がある場合、圧力制御弁36を上記所定の小開度となるように開弁した際に制御弁48を全閉となるように閉弁すると、クランクケース46には、第2配管42の異常がある部位から流入した空気が流れ込む。そのため、クランクケース46内のブローバイガスが第1配管41から吸気通路32へと導入(排出)されるものの、クランクケース46内の圧力は、大きく低下する(負圧が発達する)ことはない。
【0036】
例えば、PCVバルブ49が内燃機関10から外れた場合、圧力制御弁36を上記所定の小開度となるように開弁した際に制御弁48を全閉となるように閉弁すると、クランクケース46には、PCVバルブ49が外れた部位から流入した空気が流れ込む。そのため、クランクケース46内のブローバイガスが第1配管41から吸気通路32へと導入(排出)されるものの、クランクケース46内の圧力は、大きく低下する(負圧が発達する)ことはない。
【0037】
そこで、ECM37は、スロットル弁35の開度が一定(負荷が一定)、かつ内燃機関10の機関回転数が一定となる所定の運転状態にあるときに、圧力制御弁36を上記所定の小開度となるように開弁するとともに、制御弁48を全閉となるように閉弁している際に圧力センサ53で検出されたクランクケース46内の圧力に基づいてブローバイガス還流システムの異常の有無を診断する。つまり、ECM37は、診断部に相当する。
【0038】
なお、スロットル弁35の開度が一定(負荷が一定)、かつ内燃機関10の機関回転数が一定となる所定の運転状態としては、例えば車両の走行中に発電機(不図示)で発電するために内燃機関10を所定の運転点で運転する場合や、内燃機関10がアイドル運転する場合等がある。また、内燃機関10がモータリング可能な場合には、スロットル弁35の開度が一定(負荷が一定)、かつ内燃機関10の機関回転数が一定となる所定の運転状態として、内燃機関10がモータリング中の場合がある。
【0039】
このようにブローバイガス還流システムの異常診断は、圧力制御弁36を上記所定の小開度となるように開弁して圧力制御弁36の下流側に負圧を生成することで実施可能となる。そのため、ブローバイガス還流システムの異常診断は、例えば内燃機関10に供給される吸気を過給しているような過給運転状態等、幅広い内燃機関10の運転状態で実施が可能となる。
【0040】
特に、内燃機関10は、発電機(不図示)で発電するために駆動されるため、運転点を一定にすることが容易であり、ブローバイガス還流システムの異常診断の実施が容易となる。
【0041】
上記の異常診断は、制御弁48が正常に駆動する場合に正確な診断が可能となる。一方、例えば制御弁48が凍結した場合、制御弁48の動作が不十分で第2配管42を十分に閉止することができない場合が発生する。この場合に異常診断を行うと、ブローバイガス還流システム自体に異常がなくても異常があったと誤診断されるおそれがある。
【0042】
そこで、本実施形態では、ブローバイガス還流システムの異常診断において異常が診断された場合であって当該判定時に制御弁48が凍結しているおそれがある場合には、異常があった旨の仮判定をする。そして、制御弁48の凍結が解除されたか否かを判定し、凍結が解除されたと判定した後に異常診断を改めて実行する。
【0043】
[凍結判定]
図2は、内燃機関10が始動してからの吸気温度の時間変化と、ブローバイガス還流システムの凍結判定を行うための閾値温度と閾値時間との関係を示す図である。
図2において時刻t00は、内燃機関10の始動時となっている。また内燃機関10の始動時の外気の温度は0℃よりも低いとし、吸気温度及び内燃機関10の温度は所定温度(例えば0℃)よりも低いとする。ここで、所定温度は制御弁48に固着した氷を溶かすために必要となる下限温度である。
【0044】
内燃機関10の温度は、内燃機関10が始動することで上昇する。よって、吸気温度は、時刻t00において外気の温度となっているが内燃機関10(吸気通路32)の温度上昇に伴って上昇し、時刻t01において所定温度(例えば0℃)に到達し、その後も全体として上昇していく。なお、車速が速くなると吸気量が増えるのでその分吸気温度が低下し、車速が低下すると吸気量が低下するのでその分吸気温度が上昇する。よって、
図2の吸気温度の時間変化を示す曲線において上に凸となる部分は車速が低速となったときを示し、下に凸となる部分は車速が高速となった時を示す。
【0045】
ところで、内燃機関10(第2配管42)が制御弁48に付着している氷に与える熱量(Q(t))は、
図2の吸気温度の時間変化を示す曲線をf(t)とすると以下の(1)式のようになる。
【数1】
【0046】
ここでCは任意定数であり、実験より定めることができる。また、制御弁48に付着した氷を融解するのに必要な時間(t)も実験により定めることができる。さらに、(1)式の第1項は第2項に比べて十分小さく、始動時からの吸気温度の推移は、外気の温度が変化しても大きな変化はない。
【0047】
よって、制御弁48の凍結が解除したか否かは、時間(t)のときの吸気温度(すなわちf(t))、又は時刻t00からの吸気温度の履歴((1)式)により判定することが可能である。
【0048】
しかし、制御弁48に付着した氷に供給する熱量が当該氷を融解するのに必要な熱量に到達したか否かを簡易的に判断し、当該必要な熱量に到達した場合に制御弁48の凍結が解除されたと判定することもできる。
【0049】
したがって、本実施形態では、吸気温度に対して複数の温度閾値を設定し、各温度閾値に対して閾値時間を設定する。
【0050】
例えば、
図2に示すように、温度閾値(T1)に対して閾値時間(Δt1)が設定され、吸気温度が温度閾値(T1)に到達した後閾値時間(Δt1)の間継続的に吸気温度が温度閾値(T1)以上の場合に、制御弁48の凍結が解除されたと判定する。
【0051】
また、温度閾値(T2)(T1よりも高い温度)に対して閾値時間(Δt2)(Δt1よりも短い時間)が設定され、吸気温度が温度閾値(T2)に到達した後閾値時間(Δt2)の間継続的に吸気温度が温度閾値(T2)以上の場合に、制御弁48の凍結が解除されたと判定する。
【0052】
さらに、温度閾値(T3)(T2よりも高い温度)に対して閾値時間(Δt3)(Δt2よりも短い時間)が設定され、吸気温度が温度閾値(T3)に到達した後閾値時間(Δt3)の間継続的に吸気温度が温度閾値(T3)以上の場合に、制御弁48の凍結が解除されたと判定する。
【0053】
上記の判定を行うため、ECM37は、吸気温度が温度閾値(T1)に到達するとカウントを開始しその後吸気温度が温度閾値(T1)以上の温度を維持する場合にカウントアップし、閾値時間(Δt1)の間継続的に温度閾値(T1)よりも高い温度を維持した場合にフルカウントとなってキャリーを出力する第1カウンタ(不図示)と、吸気温度が温度閾値(T2)に到達するとカウントを開始しその後吸気温度が温度閾値(T2)以上の温度を維持する場合にカウントアップし、閾値時間(Δt2)の間継続的に温度閾値(T2)よりも高い温度を維持した場合にフルカウントとなってキャリーを出力する第2カウンタ(不図示)と、吸気温度が温度閾値(T3)に到達するとカウントを開始しその後吸気温度が温度閾値(T3)以上の温度を維持する場合にカウントアップし、閾値時間(Δt3)の間継続的に温度閾値(T3)よりも高い温度を維持した場合にフルカウントとなってキャリーを出力する第3カウンタ(不図示)と、を備える。
【0054】
そして、ECM37は、第1カウンタ、第2カウンタ、第3カウンタのいずれかがキャリーを出力した場合に、制御弁48の凍結が解除されたと判定する。なお、閾値温度(T1,T2,T3)は、内燃機関10及び車両の使用に応じて適宜設定し、閾値時間(Δt1,Δt2,Δt3)は制御弁48の凍結の解除を確認する実験に基づいて設定する。
【0055】
図2では、時刻t00において、例えば、第1カウンタ、第2カウンタ、第3カウンタは、それぞれリセット(カウント値が初期値(ゼロ)に設定)される。
【0056】
時刻t01の後、時刻t11において、吸気温度が閾値温度(T1)に到達することで第1カウンタのカウントが開始される。
【0057】
時刻t11の後、時刻t21において、吸気温度が閾値温度(T2)に到達することで第2カウンタのカウントが開始される。
【0058】
時刻t21の後、時刻t31において、吸気温度が閾値温度(T3)に到達することで第3カウンタのカウントが開始される。
【0059】
時刻t31から閾値時間(Δt3)経過した時刻t32よりも前の時刻t32’において吸気温度が閾値温度(T3)よりも低くなるので、第3カウンタのカウントがフルカウントとなる前に停止する。
【0060】
時刻t32の後の時刻t22において、吸気温度は閾値温度(T2)よりも高い温度を維持しており且つ閾値時間(Δt2)に到達するので、第2カウンタはフルカウントなりキャリーを出力する。
【0061】
時刻t22よりも後の時刻t12において、吸気温度は閾値温度(T1)よりも高い温度を維持しており且つ閾値時間(Δt1)に到達するので、第1カウンタはフルカウントなりキャリーを出力する。
【0062】
ECM37は、時刻t00において、吸気温度が所定温度(例えば0℃)よりも低い場合、制御弁48が凍結していると判断し凍結フラグを設定する。
【0063】
ECM37は、吸気温度が
図2の推移を示す場合、時刻t22又は時刻t12において制御弁48の凍結が解除されたと判断し凍結フラグを解除する。
【0064】
一方、第1カウンタ、第2カウンタ、第3カウンタがいずれもカウントを開始することなく内燃機関10が停止した場合、すなわち、吸気温度がいずれの閾値温度(T1,T2、T3)に到達せずに内燃機関10が停止した場合、ECM37は、制御弁48の凍結が解除されていない(凍結している)と判断し凍結フラグを維持し内燃機関10の停止後も凍結フラグを維持する。
【0065】
また、第1カウンタ、第2カウンタ、第3カウンタがいずれもキャリーを出力することなく内燃機関10が停止した場合、すなわち、吸気温度がいずれかの閾値温度(T1,T2,T3)に到達したにも関わらず閾値時間(Δt1,Δt2,Δt3)に到達する前に内燃機関10が停止した場合、ECM37は、制御弁48の凍結が解除されていない(凍結している)と判断し凍結フラグを維持し内燃機関10の停止後も凍結フラグを維持する。
【0066】
ECM37は、凍結フラグが設定された状態で内燃機関10が停止した後、内燃機関10を再始動するまでの期間が所定期間(例えば6時間)を経過していない場合、当該再始動時において制御弁48の凍結が解除されていないと判断し凍凍結フラグを維持する。
【0067】
ECM37は、凍結フラグが設定された状態で内燃機関10の停止した後、内燃機関10を再始動するまでの期間が所定期間(例えば6時間)を経過し且つ当該再始動時の吸気温度が所定温度(例えば0℃)以上の場合、制御弁48の凍結が解除されたと判断し、凍結フラグを解除する。
【0068】
[異常診断と凍結判定フローチャート]
図3は、ブローバイガス還流システムの異常診断と凍結判定の流れの一例を示すフローチャートである。
【0069】
ステップS101において、内燃機関10が始動する。これにより、ECM37は、吸気温度の測定を開始し、第1カウンタ、第2カウンタ、第3カウンタをリセットする。ここで、内燃機関10の始動は、バッテリ(不図示)のSOC(充電率)が所定に下限値に到達した場合、ドライバがイグニッション(キースイッチ)の操作(ON)を行った場合、内燃機関10がアイドリングストップ状態のときにドライバがアクセル操作を行った場合等において発生する。
【0070】
ステップS102において、ECM37はブローバイガス還流システムの異常診断(リーク診断)を開始する。異常診断の内容については後述する。
【0071】
ステップS103において、ECM37は異常診断の判定がOK(異常なし)判定か否かを判断し、YESであればステップS111に移行し、NOであればステップS104に移行する。
【0072】
ステップS104において、ECM37は、異常診断に関してNG(異常あり)の仮判定を行うとともに、内燃機関10の始動時の吸気温度を取得する。
【0073】
ステップS105において、ECM37は内燃機関10の始動時の温度が所定温度(0℃)以上か否かを判断し、YESであれステップS106に移行し、NOであればステップS107に移行する。
【0074】
ステップS106において、ECM37は内燃機関10の前回停止時から所定期間(例えば6時間)経過しているか否かを判断し、YESであればステップS112に移行し、NOであればステップS107に移行する。ここで、内燃機関10の停止は、バッテリ(不図示)のSOCが所定の上限値に到達した場合、ドライバがイグニッション(キースイッチ)の操作(OFF)を行った場合、車速がゼロになってアイドリングストップ状態になった時に発生する。
【0075】
ステップS107において、ECM37は、制御弁48の凍結が解除されているか否か、すなわち第1カウンタ、第2カウンタ、第3カウンタのいずれかがキャリーを出力しているか否かを判断し、YESであればステップS112に移行し、NOであればステップS108に移行する。
【0076】
ステップS108において、ECM37は、制御弁48の凍結が解除されるまで、すなわち第1カウンタ、第2カウンタ、第3カウンタのいずれかがキャリーを出力するまで待機する。
【0077】
ステップS109において、ECM37は異常診断を再開する。
【0078】
ステップS110において、ECM37は異常診断の結果が異常なし(OK)判定か否かを判断し、YESであればステップS111に移行し、NOであればステップS104に移行する。
【0079】
ステップS111において、ECM37は異常診断において異常なし(OK)判定を確定し、ブローバイガス還流システムにおいて異常(リーク)はないと判定する。
【0080】
ステップS112において、ECM37は異常診断において異常あり(NG)判定を確定し、ブローバイガス還流システムにおいて異常(リーク)があると判定する。なお、ステップS112の後、車両の種類によっては2次診断に移行する。
【0081】
[異常診断]
図4は、ブローバイガス還流システムの異常診断を実施した際のクランクケース46内の圧力変化の一例を示す特性図である。なお、
図4においては、時刻t1以前に圧力制御弁36が上記所定の小開度となるように開弁され、クランクケース46内の圧力が所定の圧力(P1)となっている。
【0082】
図4における時刻t1は、制御弁48が全閉となるようにECM37が閉弁を指示したタイミングである。つまり、
図4の時刻t1以降は、圧力制御弁36が上記所定の小開度となるように開弁され、制御弁48が全閉となるように閉弁された状態となっている。
【0083】
図4における時刻t2は、時刻t1から所定時間が経過したタイミングである。
【0084】
図4中に実線で示す特性線Aは、ブローバイガス還流システムに異常がない場合に圧力センサ53で検出されるクランクケース46内の圧力変化の一例を示している。
【0085】
ブローバイガス還流システムに異常がない場合、時刻t1で制御弁48を全閉となるように閉弁すると、クランクケース46内から一方的にブローバイガスが吸気通路32に排出される(吸い出される)ことになる。そのため、クランクケース46内の圧力は、圧力制御弁36の下流側に生成された負圧と均衡がとれるまで大きく低下する。
【0086】
図4中に破線で示す特性線Bは、ブローバイガス還流システムに異常がある場合に圧力センサ53で検出されるクランクケース46内の圧力変化の一例を示している。
【0087】
ブローバイガス還流システムに異常がある場合、時刻t1で制御弁48を全閉となるように閉弁しても、クランクケース46内からブローバイガスが吸気通路32に排出されなかったり、クランクケース46内に外部から空気が流入したりする。そのため、クランクケース46内の圧力は、大きく低下することはない。
【0088】
ECM37は、圧力制御弁36を上記所定の小開度となるように開弁し、制御弁48を全閉となるように閉弁してから予め設定された所定時間(T)が経過した際に、クランクケース46内の圧力が予め設定された所定圧力(P2)以下になっていると、ブローバイガス還流システムに異常はないと診断し、所定圧力(P2)よりも高いと異常があると診断する。
【0089】
これによって、ブローバイガス還流システムの異常診断は、速やかに完了することが可能となる。すなわち、ブローバイガス還流システムの異常診断は、診断中のクランクケース46内の過度な圧力低下が抑制されるとともに、診断に伴うクランクケース46内の圧力低下期間が短縮可能となる。そのため、ブローバイガス還流システムの異常診断は、クランクケース46内の圧力低下が各部へ及ぼす影響を抑制することができる。つまり、ブローバイガス還流システムの異常診断は、部品保護の観点から、制御弁48を閉弁して負圧を生成する期間を短縮することが可能となる。
【0090】
ブローバイガス還流システムの異常診断は、例えば車両のイグニッション(キースイッチ)をONしてからOFFするまでの1トリップにつき1回実施する。また、車両にアイドリングストップが設定されている場合、異常診断は、アイドリングストップ期間の終了後、内燃機関10が再始動したときに実施するように設定することもできる。ブローバイガス還流システムの異常診断の実施中に、スロットル弁35の開度が変化した場合には、異常診断を中止する。異常診断が中止された場合には、次の機会に異常診断を始めからからやり直す。
【0091】
[異常診断のフローチャート]
図5は、ブローバイガス還流システムの異常診断の制御の流れの一例を示すフローチャートである。初期状態として、圧力制御弁36が上記所定の小開度となるように開弁されているものとする。
【0092】
ステップS201において、ECM37は、制御信号を出力することで制御弁48を全閉となるように閉弁を指示する。
【0093】
ステップS202では、ECM37は、ステップS201で制御弁48に閉弁を指示してから所定時間(T)が経過したか否かを判定し、YESであればステップS203に移行し、NOであればステップS202に留まる。
【0094】
ステップS203において、ECM37は、クランクケース46内の圧力が所定圧力(P2)以下であるか否かを判断し、YESであればステップS204に移行し、NOであればステップS205に移行する。
【0095】
ステップS204において、ECM37は、ブローバイガス還流システムに関して異常なし(OK)と判定する。
【0096】
ステップS205において、ECM37は、ブローバイガス還流システムに関して異常あり(NG)と判定する。
【0097】
なお、ステップS204及びステップS205の後において、ECM37は、圧力制御弁36及び制御弁48の弁開度を戻す(開弁する)。すなわち、ECM37は、圧力制御弁36の弁開度を上記所定の小開度よりも大きくするとともに、制御弁48を全開となるように開弁する。
【0098】
[本実施形態の効果]
本実施形態の内燃機関10の異常診断方法によれば、内燃機関10の燃焼室45に新気を吸気する吸気通路32及び内燃機関10のクランクケース46を連通して新気をクランクケース46に導入する新気導入通路(第2配管42)と、新気導入通路(第2配管42)に配置され新気の流量を調整する制御弁48と、を含み、クランクケース46の内部にあるブローバイガスを吸気通路32に供給するブローバイガス還流システムを備えた内燃機関10の異常診断方法であって、新気の温度である吸気温度に基づいて制御弁48の凍結の有無を判定し、制御弁48の凍結が解除されていると判定したのち制御弁48に(制御信号により)閉弁を指示してクランクケース46の内部の圧力が所定圧力(P2)以下に低下しない場合に、ブローバイガス還流システムのいずれかの部分から空気が進入していると判定する。
【0099】
上記方法により、簡易な方法で制御弁48の凍結の解除を判定した上でブローバイガス還流システムの異常診断を行うので、当該異常診断の誤診断を効率的に低減することができる。
【0100】
本実施形態において、内燃機関10の始動時に制御弁48に(制御信号により)閉弁を指示してクランクケース46の内部の圧力が所定圧力(P2)以下に低下しない場合であって、内燃機関10の始動時の吸気温度が所定温度(例えば0℃)以上の場合にブローバイガス還流システムのいずれかの部分から空気が進入していると判定する。
【0101】
上記方法により、内燃機関10の始動時において制御弁48が凍結している可能性を除外でき、ブローバイガス還流システムの異常診断の誤診断を低減できる。
【0102】
本実施形態において、内燃機関10の始動時に制御弁48に(制御信号により)閉弁を指示してクランクケース46の内部の圧力が所定圧力(P2)以下に低下しない場合であって、内燃機関10の始動時の吸気温度が所定温度(例えば0℃)よりも低い場合に制御弁48が凍結していると判定する。
【0103】
上記方法により、内燃機関10の始動時において制御弁48が凍結していることを容易に判定できるので、故障警告灯の誤点灯を防止できる。
【0104】
本実施形態において、吸気温度の実測値、又は吸気温度の推定値が所定の閾値温度(T1,T2,T3)以上の温度を所定の閾値時間(Δt1,Δt2,Δt3)以上継続した場合に制御弁48の凍結が解除されたと判定する。
【0105】
上記方法により、カウンタ等の簡易に構成により温度の積分量(氷に与える熱量)を簡易に計算し、制御弁48の凍結の解除を判定することができる。
【0106】
本実施形態において、制御弁48は電流により駆動するとともに、制御弁48に電流を供給すると新気導入通路(第2配管42)を閉止し、制御弁48への電流の供給を停止すると新気導入通路(第2配管42)を開放する。
【0107】
上記方法により、制御弁48が凍結した場合であっても新気導入通路(第2配管42)の連通が確保されるので、制御弁48が凍結してもブローバイガスを吸気通路32に供給できる。
【0108】
本実施形態の内燃機関10の異常診断システムは、内燃機関10の燃焼室45に新気を吸気する吸気通路32及び内燃機関10のクランクケース46を連通して新気をクランクケース46に導入する新気導入通路(第2配管42)と、新気導入通路(第2配管42)に配置され新気の流量を調整する制御弁48と、を含み、クランクケース46の内部にあるブローバイガスを吸気通路32に供給するブローバイガス還流システムを備えた内燃機関10の異常診断システムであって、新気の温度である吸気温度に基づいて制御弁48の凍結の有無を判定する凍結判定手段(ECM37)と、制御弁48の凍結が解除されていると判定したのちに制御弁48に閉弁を指示する閉弁指示手段(ECM37)と、閉弁を指示した後にクランクケース46の内部の圧力が所定圧力(P2)以下に低下しない場合に、ブローバイガス還流システムのいずれかの部分から空気が進入していると判定する異常診断手段(ECM37)と、を含む。
【0109】
上記構成により、簡易な構成で制御弁48の凍結の解除を判定した上でブローバイガス還流システムの異常診断を行うので、当該異常診断の誤診断を効率的に低減することができる。
【0110】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
【0111】
例えば、本発明は、シリーズハイブリッド車両以外の車両に搭載される内燃機関10に適用することも可能である。
【0112】
また、判定の結果、ブローバイガス還流システムに異常がある場合には、車両の運転者に対して故障警告灯を点灯する等して告示し、修理を促すようにしてもよい。
【0113】
上記の実施形態においては、内燃機関10が過給機を備えたシステム構成になっているが、本願発明は、過給機を具備しない内燃機関に対しても適用可能である。すなわち、本願発明は、上記した
図1おいてコンプレッサ38が省略されたシステムに対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0114】
10 内燃機関,32 吸気通路,37 ECM(エンジンコントロールモジュール),42 第2配管,45 燃焼室,46 クランクケース,48 制御弁