(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080459
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 71/02 20060101AFI20240606BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20240606BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20240606BHJP
C08G 81/00 20060101ALI20240606BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
C08L71/02
C08L33/04
C08K5/17
C08G81/00
C09K3/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193665
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】石井 靖之
【テーマコード(参考)】
4H017
4J002
4J031
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AB01
4H017AD05
4H017AE03
4J002BG02X
4J002CH02W
4J002CH03W
4J002EN026
4J002EN036
4J002FD206
4J002GJ02
4J031AA20
4J031AA53
4J031AB01
4J031AC13
4J031AD01
4J031AE03
4J031AE05
4J031AF13
(57)【要約】
【課題】 本発明は、優れた伸び性及び防汚性を有する硬化物を生成することができる硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の硬化性組成物は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)と、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体を含む(メタ)アクリレート系重合体(B)と、アミン化合物(C)とを含み、上記ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、ウレタン結合、ウレア結合又は特定の構造を有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)と、
加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体を含む(メタ)アクリレート系重合体(B)と、
アミン化合物(C)とを含み、
上記ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、ウレタン結合、ウレア結合又は下記構造を有することを特徴とする硬化性組成物。
【化1】
但し、式(1)中、R
2は、それぞれ独立して炭素数が1~20の置換又は非置換の炭化水素基である。Y
2は、それぞれ独立して加水分解性基である。bは、1~3の整数である。R
3は、それぞれ独立して炭素数が1~20の置換又は非置換の炭化水素基である。Y
3は、それぞれ独立して加水分解性基である。cは、1~3の整数である。
【請求項2】
上記加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び上記(メタ)アクリレート系重合体(B)の総量100質量部に対して上記アミン化合物(C)0.1~5質量部を含有していることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
ナフサを含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
シーリング材として用いられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
構造部材間に形成された隙間部のシーリング材として用いられ、上記隙間部を形成している構造部材は、少なくとも一部に合成樹脂製の構造部材を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気により硬化し、耐候性、伸び性及び防汚性に優れた硬化物を生成することができる硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、架橋可能な加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体を含有する硬化性組成物が知られている(特許文献1)。硬化性組成物は、雰囲気中に含まれる湿気により架橋可能な加水分解性シリル基が加水分解した後に脱水縮合することによって、接着性に優れた硬化物を生じる。
【0003】
このような硬化性組成物は、例えば、建築構造物の外壁などにおいて、モルタル板、コンクリート板、ALC(Autoclaved Light-weight Concrete)板、金属板などの外壁部材間に形成される隙間部(いわゆる「目地部」)に充填することによって、外壁部材同士を接合するために用いられている。このように硬化性組成物を使用することによって、外壁部材間の隙間部から建築構造物内部へ雨水が浸入することを抑制している。
【0004】
又、硬化性組成物は、建築構造物の外壁に窓枠が取り付けられる場合、窓枠と外壁との間に形成される隙間部の充填にも用いられている。
【0005】
建築構造物の外壁では、温度変化に伴って外壁部材が膨張又は収縮したり、地震や強風による振動や外力によって外壁部材が移動したりするために、目地幅は僅かであるが変化を生じる。そのため、硬化性組成物には、硬化後に優れたゴム弾性を有し、伸縮可能とすることによって、外壁としっかり密着し目地幅の変化に追随できることが必要とされている。
【0006】
近年では建築構造物の外壁を構成している外壁部材の表面に防汚処理が施されていることがある。このような場合、外壁部材は汚れが付着し難く、長期間において外壁の美観を保つことが出来る。
【0007】
しかしながら、目地部に充填された硬化性組成物の硬化物には防汚処理が施されていない。このような場合、硬化性組成物の硬化物表面にタックが残るため、硬化性組成物の硬化物の表面に埃や汚染物質によって汚れが付着してしまう。そのため、外壁全体で見た場合に外観が損なわれるという問題があった。従って、硬化性組成物の硬化物にも長期間に亘って防汚効果を発揮できることが求められている。
【0008】
特許文献1には、加水分解性シリル基を有する重合体(A)100質量部に対して水酸基を有するシリコーン系化合物(B)0.1~10質量部、炭酸カルシウム(C)200~300質量部、及び二酸化ケイ素(D)0.1~10質量部を含有するシーリング材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のシーリング材は、その硬化物の伸び性が低く、目地幅の変化に十分に追従することができないと共に、防汚性も低いという問題点を有する。
【0011】
又、これまで住宅用途では合成樹脂製の構造部材は高価なため、金属製の構造部材が用いられることが多かったが、近年、合成樹脂の優れた断熱性と、金属製の構造部材よりも軽量化できることから、合成樹脂製の構造部材が多く用いられるようになってきている。
【0012】
しかしながら、特許文献1のシーリング材を合成樹脂製の構造部材と外壁部材との間に形成された隙間部の充填に用いると、合成樹脂製の構造部材にクラックを生じることがある。合成樹脂製の構造部材にクラックを生じると、構造部材自体の性能はもちろんのこと、断熱性も低下するという問題がある。
【0013】
本発明は、優れた伸び性及び防汚性を有する硬化物を生成することができる硬化性組成物を提供する。本発明は、構造部材間に形成された隙間部を充填するためのシーリング材として用いることができ、構造部材が、少なくとも一部に合成樹脂製の構造部材を含む場合にあっても、合成樹脂製の構造部材にクラックを生じさせることない硬化性組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の硬化性組成物は、
加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)と、
加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体を含む(メタ)アクリレート系重合体(B)と、
アミン化合物(C)とを含み、
上記ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、ウレタン結合、ウレア結合又は下記構造を有することを特徴とする。
【0015】
【0016】
但し、式(1)中、R2は、それぞれ独立して炭素数が1~20の置換又は非置換の炭化水素基である。Y2は、それぞれ独立して加水分解性基である。bは、1~3の整数である。R3は、それぞれ独立して炭素数が1~20の置換又は非置換の炭化水素基である。Y3は、それぞれ独立して加水分解性基である。cは、1~3の整数である。
【0017】
[加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)]
硬化性組成物は、ウレタン結合、ウレア結合又は式(1)で示される構造を有する、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)を含む(以下、単に「ポリオキシアルキレン系重合体(A)」ということがある)。ポリオキシアルキレン系重合体(A)によれば、雰囲気中や目地部などに存在する湿気により硬化することができる硬化性組成物を提供することが可能となる。
【0018】
更に、硬化性組成物がポリオキシアルキレン系重合体(A)を含有することによって、硬化性組成物の硬化物が、合成樹脂製のサッシなどの合成樹脂製の構造部材に接触していても、合成樹脂製の構造部材にクラック(亀裂)を生じさせることなく、合成樹脂製の構造部材に対する接着性を長期間に亘って安定的に維持することができる(耐クラック性)。従って、合成樹脂製の構造部材の品質を損なうことなく、合成樹脂製の構造部材と硬化性組成物の硬化物との界面を通じて水などが侵入することを効果的に防止することができる。
【0019】
本発明において、加水分解性シリル基とは、珪素原子に1~3個の加水分解性基が結合してなる基である。加水分解性シリル基の加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。
【0020】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の加水分解性シリル基としては、加水分解反応が穏やかであることから、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、ポリオキシアルキレン系重合体(A)の加水分解性シリル基としては、ジアルコキシシリル基がより好ましく、メチルジメトキシシリル基が特に好ましい。
【0021】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、1分子中に平均して、好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個の加水分解性シリル基を有している。ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖が直鎖状である場合、ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、1分子中に平均して、1~2個の加水分解性シリル基を有していることが好ましい。また、ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖が分岐状である場合、ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、1分子中に平均して、1~3個の加水分解性シリル基を有していることが好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A)における加水分解性シリル基の数が1個以上であると、硬化性組成物の硬化性が向上する。また、ポリオキシアルキレン系重合体(A)における加水分解性シリル基の数が上記上限値以下であると、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性が向上する。又、ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、その主鎖の両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していることが好ましい。
【0022】
なお、ポリオキシアルキレン系重合体(A)中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、1H-NMRにより求められるポリオキシアルキレン系重合体(A)中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められるポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0023】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)としては、主鎖が、一般式:-(R1-O)n-(式中、R1は炭素数が1~14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましく挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。なお、本発明において、主鎖とは、最も長い分子鎖をいい、分子鎖を構成している原子数に基づいて判断され、原子数が多いほど、分子鎖が長いとする。
【0024】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖骨格としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド共重合体、及びポリプロピレンオキサイド-ポリブチレンオキサイド共重合体などが挙げられる。なかでも、ポリプロピレンオキサイドが好ましい。ポリプロピレンオキサイドによれば、硬化後に優れたゴム弾性又は接着性に優れる硬化性組成物を提供することができる。
【0025】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量は、15000~50000が好ましく、16000~30000がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量が15000以上であると、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性が向上する。ポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量が50000以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。
【0026】
なお、本発明において、ポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量及び重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。具体的には、ポリオキシアルキレン系重合体6~7mgを採取し、採取したポリオキシアルキレン系重合体を試験管に供給した上で、試験管に0.05質量%のBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)を含むo-DCB(オルトジクロロベンゼン)溶液を加えてポリオキシアルキレン系重合体の濃度が1mg/mLとなるように希釈して希釈液を作製する。
【0027】
溶解濾過装置を用いて145℃にて回転速度25rpmにて1時間に亘って上記希釈液を振とうさせてポリオキシアルキレン系重合体をBHTを含むo-DCB溶液に溶解させて測定試料とする。この測定試料を用いてGPC法によってポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量及び重量平均分子量を測定することができる。
【0028】
なお、本発明において、ポリオキシアルキレン系重合体における数平均分子量及び重量平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC-8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT×3本
TSKguardcolumn-HHR(30)HT×1本
移動相:o-DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500~8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
【0029】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、分子中に、ウレタン結合(-NHCOO-)、ウレア結合(-NHCONH-)又は式(1)で示される構造式を有している。ポリオキシアルキレン系重合体(A)がこれらの分子構造を有していることによって、硬化性組成物の硬化物は、優れた耐クラック性を有している。
【0030】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、主鎖末端のうちの少なくとも一方に加水分解性シリル基を有することが好ましい。加水分解性シリル基は、主鎖末端のうちの少なくとも一方にウレタン結合又はウレア結合を介して結合していることが好ましい。加水分解性シリル基が主鎖末端にウレタン結合又はウレア結合を介して結合していると、硬化性組成物の硬化物は、優れた耐クラック性を有している。
【0031】
加水分解性シリル基と、ウレタン結合又はウレア結合との間に、アルキレン基が介在していることが好ましい。アルキレン基が介在していることによって、硬化性組成物の硬化物は、優れた耐クラック性を有している。
【0032】
本発明において、アルキレン基とは、脂肪族飽和炭化水素中の異なる2個の炭素原子に結合する2個の水素原子を除いて(引き抜いて)生じる2価の原子団であり、直鎖状及び分岐状の双方の原子団を含む。
【0033】
アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基[-CH(CH3)-CH2-]、トリメチレン基[-CH2-CH2-CH2-]、ブチレン基、アミレン基[-(CH2)5-]、ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ドデシレン基などが挙げられ、炭素数が1~6のアルキレン基が好ましく、炭素数が1~5のアルキレン基がより好ましく、炭素数が1~4のアルキレン基がより好ましく、炭素数が1~3のアルキレン基がより好ましい。
【0034】
式(1)で示される構造は、下記の構造を有している。
【0035】
【0036】
但し、式(1)中、R2は、それぞれ独立して炭素数が1~20の置換又は非置換の炭化水素基である。Y2は、それぞれ独立して加水分解性基である。bは、1~3の整数である。R3は、それぞれ独立して炭素数が1~20の置換又は非置換の炭化水素基である。Y3は、それぞれ独立して加水分解性基である。cは、1~3の整数である。
【0037】
R2及びR3はそれぞれ、炭素数が1~20の置換又は非置換の炭化水素基であれば、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数が1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基などが挙げられ、炭素数が1~20のアルキル基が好ましく、炭素数が1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。なお、R2とR3は、互いに同一であっても相違してもよい。R2が、Siに2個以上結合している場合、R2は、互いに同一であっても相違していてもよい。R3が、Siに2個以上結合している場合、R3は、互いに同一であっても相違していてもよい。なお、アルキル基とは、脂肪族飽和炭化水素から水素原子1個を除いた(引き抜いた)残りの原子団をいう。アリール基とは、芳香族炭化水素の環に結合する水素原子1個を除いた(引き抜いた)残りの原子団をいう。アラルキル基とは、アリールアルキル基ともいい、側鎖をもつ芳香族炭化水素の側鎖から水素原子1個を除いた(引き抜いた)残りの原子団をいう。
【0038】
Y2及びY3はそれぞれ、特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられ、加水分解反応が穏やかであることから、アルコキシ基が好ましい。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、フェノキシ基などが挙げられ、メトキシ基が好ましい。なお、Y2とY3は、互いに同一であっても相違してもよい。Y2が、Siに2個以上結合している場合、Y2は、互いに同一であっても相違していてもよい。Y3が、Siに2個以上結合している場合、Y3は、互いに同一であっても相違していてもよい。
【0039】
bは、1~3の整数であるが、硬化性組成物の硬化反応の安定性に優れていることから、2が好ましい。cは、1~3の整数であるが、硬化性組成物の硬化反応の安定性に優れていることから、2が好ましい。
【0040】
式(1)で表される構造式としては、硬化性組成物の硬化物の耐クラック性及びゴム弾性が向上するので、下記式(1-1)で表される構造式が好ましい。
【0041】
【0042】
加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(メタ)アクリレート系重合体(B)の総量中における加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)の含有量は、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、55質量%以上がより好ましい。加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)の含有量が30質量%以上であると、硬化性組成物の硬化物の耐クラック性が向上する。
【0043】
加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(メタ)アクリレート系重合体(B)の総量中における加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)の含有量は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、70質量%以下がより好ましい。加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)の含有量が80質量%以下であると、硬化性組成物の硬化物は、耐候性が向上すると共に、長期間に亘って優れたゴム弾性を維持する。
【0044】
[加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体(B)]
硬化性組成物は、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体を含有する(メタ)アクリレート系重合体(B)を含有している。
【0045】
硬化性組成物が(メタ)アクリレート系重合体(B)を含有していることによって、硬化性組成物の硬化物は、優れた耐候性を有する。更に、硬化性組成物は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(メタ)アクリレート系重合体(B)を含有していることによって、硬化性組成物の硬化物は優れた伸び性を有している。
【0046】
従って、硬化性組成物の硬化物は、屋外に長期間に亘って晒された場合にあっても優れた伸び性を長期間に亘って維持し、目地部や隙間部などの変動にもかかわらず、目地部や隙間部への充填状態を確実に維持し、目地部や隙間部への水分などの侵入を効果的に阻止することができる。
【0047】
硬化性組成物は、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体を含有する(メタ)アクリレート系重合体(B)を含有する。(メタ)アクリレート系重合体(B)を用いることにより、硬化性組成物の硬化物の耐候性を向上させることができ、硬化物は、屋外での使用であっても長期間に亘って優れたゴム弾性を維持することができる。
【0048】
更に、ポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリレート系重合体(B)とを併用することによって、硬化性組成物の硬化物は更に優れたゴム弾性を有する。
【0049】
(メタ)アクリレート系重合体(B)は、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体を含有している。(メタ)アクリレート系重合体(B)又はその一部が加水分解性シリル基を有していることによって、硬化性組成物の硬化物の防汚性が向上する。
【0050】
加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体は、主鎖骨格の両末端に加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体と、主鎖骨格の何れか一方の末端のみに加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体とを含むことが好ましい。硬化性組成物の硬化物がより優れたゴム弾性を有する。
【0051】
(メタ)アクリレート系重合体が有している加水分解性シリル基としては、硬化性組成物の硬化物が長期間に亘って優れたゴム弾性を維持することができるので、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジメトキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、ジアルコキシシリル基及びトリアルコキシリル基がより好ましく、ジアルコキシシリル基がより好ましく、ジメトキシシリル基が特に好ましい。
【0052】
(メタ)アクリレート系重合体(B)は、1分子中に平均して、好ましくは0.1個以上、より好ましくは0.5個以上、より好ましくは0.6個以上、より好ましくは1個以上の加水分解性シリル基を有している。(メタ)アクリレート系重合体(B)は、1分子中に平均して、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下、より好ましくは2個以下、より好ましくは1.5個以下の加水分解性シリル基を有している。(メタ)アクリレート系重合体(B)において、1分子中における加水分解性シリル基の平均個数が0.1個以上であると、硬化性組成物の硬化性が向上する。(メタ)アクリレート系重合体(B)において、1分子中における加水分解性シリル基の平均個数が4個以下であると、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性が向上する。
【0053】
なお、(メタ)アクリレート系重合体(B)中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、1H-NMRにより求められる(メタ)アクリレート系重合体(B)中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められる(メタ)アクリレート系重合体(B)の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0054】
(メタ)アクリレート系重合体(B)の主鎖骨格としては、(メタ)アクリレート系モノマーをラジカル重合して得られる(メタ)アクリレート系重合体が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0055】
(メタ)アクリレート系重合体(B)の主鎖を構成する(メタ)アクリレート系モノマーとして、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-3-メチルブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-[アクリロイルオキシ]エチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、及び2-[アクリロイルオキシ]エチル-2-ヒドロキシプロピルフタル酸などが挙げられる。(メタ)アクリレート系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート及びブチル(メタ)アクリレートが好ましい。これらの(メタ)アクリレート系モノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0056】
(メタ)アクリレート系重合体(B)において、他のモノマーを共重合することも可能である。このようなモノマーとしては、例えば、スチレン、インデン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、p-クロロメチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、珪皮酸ビニルなどのビニルエステル基を持つ化合物、無水マレイン酸、N-ビニルピロリドン、N-ビニルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、tert-アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、安息香酸(4-ビニロキシ)ブチル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン-1,4-ジオール-ジビニルエーテル、ヘキサン-1,6-ジオール-ジビニルエーテル、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール-ジビニルエーテル、イソフタル酸ジ(4-ビニロキシ)ブチル、グルタル酸ジ(4-ビニロキシ)ブチル、コハク酸ジ(4-ビニロキシ)ブチルトリメチロールプロパントリビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、3-アミノプロピルビニルエーテル、2-(N,N-ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテルなどのビニロキシ基を持つ化合物などを挙げることができる。これらのモノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0057】
なかでも、(メタ)アクリレート系重合体(B)の主鎖骨格としては、ブチル(メタ)アクリレート及びメチル(メタ)アクリレートの共重合体が好ましく、ブチルアクリレート及びメチルメタクリレートの共重合体がより好ましい。主鎖骨格が上記共重合体からなる(メタ)アクリレート系重合体(B)によれば、硬化後に優れたゴム弾性を有する硬化物を形成することが可能な硬化性組成物が得られる。
【0058】
(メタ)アクリレート系重合体(B)は、分子内にポリオキシアルキレン鎖を有していないことが好ましい。
【0059】
上記ポリオキシアルキレン鎖としては、一般式:-(R7-O)m-(式中、R7は炭素数が1~14のアルキレン基を表し、mは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体が挙げられる。ポリオキシアルキレン鎖は、一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0060】
上記ポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド共重合体、及びポリプロピレンオキサイド-ポリブチレンオキサイド共重合体などが挙げられる。
【0061】
(メタ)アクリレート系重合体(B)の重合方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、UVラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法などの各種重合法が挙げられる。
【0062】
(メタ)アクリレート系重合体への加水分解性シリル基の導入方法としては、特に限定されず、例えば、分子中に不飽和基を導入した(メタ)アクリレート系重合体に、加水分解性シリル基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する方法など、公知の方法を利用することができる。
【0063】
(メタ)アクリレート系重合体(B)の重量平均分子量は、4500以上が好ましく、5000以上がより好ましく、6000以上がより好ましく、6500以上がより好ましい。(メタ)アクリレート系重合体(B)の数平均分子量は、10000以下が好ましく、9000以下がより好ましく、8000以下がより好ましい。(メタ)アクリレート系重合体(B)の重量平均分子量が10000以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。(メタ)アクリレート系重合体(B)の数平均分子量が4500以上であると、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性が向上する。
【0064】
なお、本発明において、(メタ)アクリレート系重合体(B)の重量平均分子量及び数平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値を意味する。GPC法による測定においては、例えば、GPCカラムとして東ソー製Shodex KF800Dを用い、溶媒としてクロロホルムなどを用いることができる。
【0065】
なお、本発明において、(メタ)アクリレート系重合体における数平均分子量及び重量平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC-8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT×3本
TSKguardcolumn-HHR(30)HT×1本
移動相:o-DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500~8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
【0066】
加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(メタ)アクリレート系重合体(B)の総量中における(メタ)アクリレート系重合体(B)の含有量は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。(メタ)アクリレート系重合体(B)の含有量が20質量%以上であると、硬化性組成物の硬化物は長期間に亘って優れたゴム弾性を維持する。
【0067】
加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(メタ)アクリレート系重合体(B)の総量中における(メタ)アクリレート系重合体(B)の含有量は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、45質量%以下がより好ましい。(メタ)アクリレート系重合体(B)の含有量が70質量%以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。
【0068】
[アミン化合物(C)]
硬化性組成物は、アミン化合物(C)を含んでいる。アミン化合物(C)は、一分子中に1個のアミノ基(-NH2)を有しているモノアミン化合物(C1)、又は、一分子中に2個のアミノ基(-NH2)を有しているジアミン化合物(C2)を含有していることが好ましく、一分子中に1個のアミノ基(-NH2)を有しているモノアミン化合物(C1)を含有していることがより好ましい。アミン化合物(C)において、アミノ基が有している水素原子は、アルキル基やアリール基などの有機基によって置換されていてもよい。又、モノアミン化合物(C1)及びジアミン化合物(C2)は、珪素原子を含有していないことが好ましい。
【0069】
硬化性組成物において、モノアミン化合物(C1)又はジアミン化合物(C2)を用いることによって、硬化性組成物の硬化物の表面のべとつきを抑制することが可能となり、防汚性を向上させることができる。
【0070】
モノアミン化合物(C1)としては、下記式(2)で示されるモノアミン化合物(C1)が好ましく挙げられる。
R4-NH2 (2)
(式(2)において、R4は、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、一価の飽和脂環式炭化水素基である。)
【0071】
式(2)において、R4は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。R4における直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、イソドデシル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、パルミチル基、ヘプタデシル基、n-ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ステアリル基、イソオクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、及びベヘニル基などが挙げられ、ラウリル基、イソドデシル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、パルミチル基、ヘプタデシル基、n-ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ステアリル基、イソオクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ベヘニル基が好ましい。
【0072】
式(2)で示されるモノアミン化合物(C1)において、R4の炭素数は、12~40個が好ましく、15~30個がより好ましく、15~25個が特に好ましい。R4の炭素数が上記範囲内であるモノアミン化合物(C1)を用いることにより、硬化性組成物の硬化物表面のタックを短時間で低くすることができると共に、硬化性組成物の硬化物が長期間に亘って優れた防汚効果を発揮することができる。
【0073】
モノアミン化合物(C1)として、ラウリルアミン(C12H25-NH2、融点28℃)、ステアリルアミン(C18H37-NH2、融点50℃)、ミリスチルアミン(融点 38℃)、及びセチルアミン(n-ヘキサデシルアミン、C16H33-NH2、融点47℃)が好ましい。モノアミン化合物(C1)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0074】
ジアミン化合物(C2)としては、下記式(3)で示されるジアミン化合物(C2)が好ましく挙げられる。
R5-NH-R6-NH2 (3)
(式(3)において、R5は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、一価の不飽和脂肪族炭化水素基、一価の飽和脂環式炭化水素基、又はアリール基であり、R6は、アルキレン基である。)
【0075】
式(3)において、R5としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び、一価の不飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。R5における直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、イソドデシル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、パルミチル基、ヘプタデシル基、イソヘキサデシル基、ステアリル基、イソオクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、及びベヘニル基などが挙げられる。R5における一価の不飽和脂肪族炭化水素基としては、ウンデセニル基、cis-4-テトラデセニル基、cis-5-テトラデセニル基、cis-9-テトラデセニル基、cis-6-ヘキサデセニル基、パルミトレイル基、cis-6-オクタデセニル基、オレイル基、trans-9-オクタデセニル基、cis-11-オクタデセニル基、trans-11-オクタデセニル基、ミリストレイル基、パルミトレイル基、及びリノレイル基などが挙げられる。
【0076】
式(3)において、R6はアルキレン基である。R6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基[-CH(CH3)-CH2-]、トリメチレン基[-CH2-CH2-CH2-]、ブチレン基、アミレン基[-(CH2)5-]、ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ドデシレン基などが挙げられる。
【0077】
式(3)で示されるジアミン化合物(C2)において、R5及びR6の合計の炭素数は、15~40個が好ましく、15~30個がより好ましく、15~25個が特に好ましい。R5及びR6の合計の炭素数を上記範囲内とすることにより、硬化性組成物の硬化物表面が優れた防汚効果を長期間に亘って発揮できると共に、高温下において硬化性組成物の硬化物表面にタックが発生することも低減できる。
【0078】
式(3)で示されるジアミン化合物(C2)としては、具体的には、ベヘニルプロピレンジアミン(C22H45-NH-C3H6-NH2、融点63℃)、融点が40~45℃である硬化牛脂プロピレンジアミン、融点が25~34℃である牛脂プロピレンジアミン、及びオレイルプロピレンジアミン(C18H35-NH-C3H6-NH2、融点20℃)などが挙げられ、融点が40~45℃である硬化牛脂プロピレンジアミンが好ましい。ジアミン化合物(C2)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0079】
なお、本発明において、ジアミン化合物(C2)の融点は、JIS K7121(1987年)に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)によって測定された温度をいう。具体的には、示差走査熱量測定装置(例えば、株式会社島津製作所社製 装置名「DSC-60」など)を用いて、ジアミン化合物(C2)を10℃から150℃まで昇温速度5℃/分で加熱し、この加熱過程におけるDSC曲線の融解ピーク温度を、ジアミン化合物(C2)の融点とする。なお、融解ピークが複数ある場合には、最も吸熱の大きい融解ピークの頂点の温度を融点とする。
【0080】
牛脂プロピレンジアミンは、脂肪酸として牛脂を用いて公知の方法により製造されたジアミン化合物(C2)である。牛脂は、好ましくは、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸などの飽和脂肪酸と、オレイン酸、及びリノール酸などの不飽和脂肪酸とを含む。又、硬化牛脂プロピレンジアミンは、脂肪酸として硬化牛脂を用いて公知の方法により製造されたものである。硬化牛脂は、牛脂に含まれる不飽和脂肪酸の不飽和二重結合の少なくとも一部を水素添加することにより得られる。
【0081】
牛脂プロピレンジアミン及び硬化牛脂プロピレンジアミンは、好ましくは、上記式(3)において、R5が脂肪酸残基であり、R6がプロピレン基であるジアミン化合物(C2)である。ここで、脂肪酸残基とは、脂肪酸からカルボキシ基(-COOH)を除いた部分からなる基を意味する。脂肪酸残基としては、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基、及びリノレイル基などが挙げられる。
【0082】
硬化性組成物中におけるアミン化合物(C)の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(メタ)アクリレート系重合体(B)の総量100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、1~5質量部が特に好ましい。アミン化合物(C)の含有量が0.1質量部以上であると、硬化性組成物の硬化物表面が優れた防汚効果を長期間に亘って発揮することができると共に、硬化性組成物の貯蔵安定性が向上し、硬化性組成物の長期保存後の使用によっても硬化物は優れた防汚性を発揮する。又、アミン化合物(C)の含有量が20質量部以下であると、高温下において硬化性組成物の硬化物表面にタックが発生することを低減することができ、優れた防汚性を発揮する。
【0083】
[可塑剤(D)]
硬化性組成物は、可塑剤(D)を含んでいることが好ましい。可塑剤として、具体的には、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル類、ポリプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレン類、及びアクリル系重合体などが挙げられ、アクリル系重合体(D1)を含むことが好ましい。アクリル系重合体(D1)は、側鎖にポリオキシアルキレン鎖及び加水分解性シリル基を有していないことが好ましい。
【0084】
上記ポリオキシアルキレン鎖としては、一般式:-(R8-O)q-(式中、R8は炭素数が1~14のアルキレン基を表し、qは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体が挙げられる。ポリオキシアルキレン鎖は、一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0085】
上記ポリオキシアルキレン鎖としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド共重合体、及びポリプロピレンオキサイド-ポリブチレンオキサイド共重合体などが挙げられる。
【0086】
アクリル系重合体(D1)の主鎖骨格としては、(メタ)アクリレート系モノマーをラジカル重合して得られるアクリル系重合体が挙げられる。
【0087】
アクリル系重合体(D1)の主鎖を構成する(メタ)アクリレート系モノマーとして、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-3-メチルブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-[アクリロイルオキシ]エチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、及び2-[アクリロイルオキシ]エチル-2-ヒドロキシプロピルフタル酸などが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート系モノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0088】
アクリル系重合体(D1)の重量平均分子量は、1000以上が好ましく、1500以上がより好ましく、2000以上がより好ましい。アクリル系重合体(D1)の重量平均分子量が1000以上であると、硬化性組成物の硬化物の優れたゴム弾性が向上する。
【0089】
アクリル系重合体(D1)の重量平均分子量は、4000以下が好ましく、3500以下がより好ましく、3000以下がより好ましい。アクリル系重合体(D1)の重量平均分子量が4000以下であると、硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物において、アクリル系重合体(D1)を硬化物表面に更に移行し易くし、硬化物表面の親水性をより向上させることができ、硬化物はより優れた防汚性を有する。
【0090】
なお、アクリル系重合体(D1)の重量平均分子量は、(メタ)アクリレート系重合体(B)の重量平均分子量と同様の要領で測定される。
【0091】
アクリル系重合体(D1)の重合方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、UVラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法などの各種重合法が挙げられる。
【0092】
硬化性組成物中におけるアクリル系重合体(D1)の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(メタ)アクリレート系重合体(B)の総量100質量部に対して5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、12質量部以上がより好ましく、13質量部以上がより好ましい。アクリル系重合体(D1)の含有量が5質量部以上であると、硬化性組成物の硬化物が長期間に亘って優れた防汚効果を維持することができる。
【0093】
硬化性組成物中におけるアクリル系重合体(D1)の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(メタ)アクリレート系重合体(B)の総量100質量部に対して50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましい。アクリル系重合体(D1)の含有量が50質量部以下であると、硬化性組成物の硬化物の優れたゴム弾性を確保することができる。
【0094】
硬化性組成物中において、可塑剤の総含有量は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(メタ)アクリレート系重合体(B)の総量100質量部に対して1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がより好ましく、12質量部以上がより好ましく、15質量部以上がより好ましい。可塑剤の含有量が1質量部以上であると、硬化性組成物の硬化物が長期間に亘って優れた防汚効果を維持することができる。
【0095】
硬化性組成物中において、可塑剤の総含有量は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(メタ)アクリレート系重合体(B)の総量100質量部に対して150質量部以下が好ましく、130質量部以下がより好ましく、100質量部以下がより好ましく、70質量部以下がより好ましく、50質量部以下がより好ましい。可塑剤の含有量が150質量部以下であると、硬化性組成物の硬化物の優れたゴム弾性を確保することができる。
【0096】
[溶剤]
硬化性組成物は、粘度調整やタックフリータイムの調整のために有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤としては、ポリオキシアルキレン系重合体(A)、(メタ)アクリレート系重合体(B)及びアミン化合物(C)を溶解させることができれば、特に限定されず、例えば、ナフサ、トルエン、キシレン、酢酸エチルベンゼン、アセトンなどが挙げられ、硬化性組成物の硬化物の耐クラック性が向上するので、ナフサが好ましい。なお、ナフサとは、原油を常圧蒸留装置にかけて得られる沸点範囲30~200℃に当たる留分をいい、石油ナフサともいわれる。ナフサは、例えば、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテルなどを含有している。
【0097】
硬化性組成物において、溶剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(メタ)アクリレート系重合体(B)の総量100質量部に対して1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、5質量部以上がより好ましい。溶剤の含有量が1質量部以上であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。
【0098】
硬化性組成物において、溶剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(メタ)アクリレート系重合体(B)の総量100質量部に対して30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がより好ましい。
【0099】
[充填剤]
硬化性組成物は、充填剤を更に含んでいるのが好ましい。硬化性組成物が、上記ポリオキシアルキレン系重合体(A)及び上記(メタ)アクリレート系重合体(B)の樹脂配合中において、充填剤を含有していると、硬化性組成物の硬化物の硬度を向上させて汚れを付着しにくくして、硬化性組成物の硬化物は、長期間に亘って優れた防汚性を維持することができる。
【0100】
充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸、微粉末シリカ、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック、及びガラスバルーンなどを挙げることができる。これらの充填剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、炭酸カルシウムが好ましく、コロイダル炭酸カルシウム及び重質炭酸カルシウムがより好ましい。
【0101】
炭酸カルシウムの平均粒子径は、0.01~5μmが好ましく、0.05~2.5μmがより好ましい。このような平均粒子径を有している炭酸カルシウムによれば、ゴム弾性に優れている硬化物を得ることができ、且つ優れた接着性を有している硬化性組成物を提供することができる。
【0102】
炭酸カルシウムは、脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されているのが好ましい。脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されている炭酸カルシウムによれば、硬化性組成物にチキソトロピー性を付与できると共に炭酸カルシムが凝集することを抑制することができる。
【0103】
硬化性組成物中における充填剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(メタ)アクリレート系重合体(B)の総量100質量部に対して1~700質量部が好ましく、10~200質量部がより好ましい。充填剤の含有量が1質量部以上であると、充填剤の添加による効果が十分に得られる。又、充填剤の含有量が700質量部以下であると、硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物が優れたゴム弾性を有する。
【0104】
[脱水剤]
硬化性組成物は、脱水剤をさらに含んでいるのが好ましい。脱水剤によれば、硬化性組成物を保存している際に、空気中などに含まれている水分によって硬化性組成物が硬化することを抑制することができる。
【0105】
脱水剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシランなどのシラン化合物;並びにオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、及びオルト酢酸エチル等のエステル化合物などを挙げることができる。これらの脱水剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0106】
硬化性組成物中における脱水剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(メタ)アクリレート系重合体(B)の総量100質量部に対して0.5~20質量部が好ましく、1~15質量部がより好ましい。脱水剤の含有量が0.5質量部以上であると、脱水剤による効果が十分に得られる。又、脱水剤の含有量が20質量部以下であると、硬化性組成物が優れた硬化性を有する。
【0107】
[シラノール縮合触媒]
硬化性組成物は、シラノール縮合触媒を含有していることが好ましい。シラノール縮合触媒とは、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体などが含有する加水分解性シリル基などが加水分解することにより形成されたシラノール基同士の脱水縮合反応を促進させるための触媒である。
【0108】
シラノール縮合触媒としては、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサン、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ビス(ジブチル錫ビストリエトキシシリケート)オキサイド、及びジブチル錫オキシビスエトキシシリケートなどの有機錫系化合物;テトラ-n-ブトキシチタネート、及びテトライソプロポキシチタネートなどの有機チタン系化合物などが挙げられる。これらのシラノール縮合触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0109】
シラノール縮合触媒としては、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサンが好ましい。このようなシラノール縮合触媒によれば、硬化性組成物の硬化速度を容易に調整することができる。
【0110】
硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(メタ)アクリレート系重合体(B)の総量100質量部に対して1~10質量部が好ましく、1~5質量部がより好ましい。シラノール縮合触媒の含有量が1質量部以上であると、硬化性組成物の硬化速度を速くして、硬化性組成物の硬化に要する時間の短縮化を図ることができる。又、シラノール縮合触媒の含有量が10質量部以下であると、硬化性組成物が適度な硬化速度を有し、硬化性組成物の貯蔵安定性及び取扱性を向上させることができる。
【0111】
[他の添加剤]
硬化性組成物は、チキソ性付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、沈降防止剤、及び溶剤など他の添加剤を含んでいてもよい。なかでも、チキソ性付与剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤が好ましく挙げられる。
【0112】
[チキソ性付与剤]
チキソ性付与剤は、硬化性組成物にチキソトロピー性を発現せることができるものであればよい。チキソ性付与剤としては、水添ひまし油、脂肪酸ビスアマイド、ヒュームドシリカなどが好ましく挙げられる。
【0113】
硬化性組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(メタ)アクリレート系重合体(B)の総量100質量部に対して0.1~200質量部が好ましく、1~150質量部がより好ましい。チキソ性付与剤の含有量が0.1質量部以上であると、硬化性組成物にチキソトロピー性を効果的に付与することができる。又、チキソ性付与剤の含有量が200質量部以下であると、硬化性組成物が適度な粘度を有し、硬化性組成物の取扱性が向上する。
【0114】
[紫外線吸収剤]
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられ、及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。硬化性組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(メタ)アクリレート系重合体(B)の総量100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。
【0115】
[酸化防止剤]
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、及びポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく挙げられる。硬化性組成物中における酸化防止剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(メタ)アクリレート系重合体(B)の総量100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、0.3~10質量部がより好ましい。
【0116】
[光安定剤]
硬化性組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤を含んでいることが好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤によれば、硬化後に優れたゴム弾性をより長期間に亘って維持することができる硬化性組成物を提供することができる。
【0117】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートの混合物、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとの重縮合物などが挙げられる。
【0118】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく挙げられる。NOR型ヒンダードアミン系光安定剤によれば、硬化後に経時的なゴム弾性の低下が抑制されている硬化性組成物を提供することができる。
【0119】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤は、ピペリジン環骨格に含まれている窒素原子(N)に酸素原子(O)を介してアルキル基(R)が結合しているNOR構造を有している。NOR構造におけるアルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~18がより好ましく、18が特に好ましい。アルキル基としては、直鎖状のアルキル基、分岐鎖状のアルキル基、及び、環状のアルキル基(飽和脂環式炭化水素基)が挙げられる。
【0120】
直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられる。環状のアルキル基(飽和脂環式炭化水素基)としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。又、アルキル基を構成している水素原子が、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)又はヒドロキシル基などで置換されていてもよい。
【0121】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤としては、下記式(4)で示されるヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
【0122】
【0123】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤を用いる場合、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又はトリアジン系紫外線吸収剤とを組み合わせて用いることが好ましい。これにより、硬化後に経時的なゴム弾性の低下がより高く抑制されている硬化性組成物を提供することができる。
【0124】
硬化性組成物中におけるヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(メタ)アクリレート系重合体(B)の総量100質量部に対して0.01~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。
【0125】
[アミノシランカップリング剤]
硬化性組成物は、アミノシランカップリング剤を含有していることが好ましい。アミノシランカップリング剤を用いることにより、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性や接着性を向上させることができる。なお、アミノシランカップリング剤とは、一分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子と、窒素原子を含有する官能基とを含有している化合物を意味する。
【0126】
アミノシランカップリング剤として、具体的には、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’-ビス-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(メチルジメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。これらのアミノシランカップリング剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0127】
なかでも、アミノシランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシランが好ましく挙げられ、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランがより好ましく挙げられる。
【0128】
硬化性組成物中におけるアミノシランカップリング剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(メタ)アクリレート系重合体(B)の総量100質量部に対して1~10質量部が好ましく、1~5質量部がより好ましい。アミノシランカップリング剤の含有量が上記範囲内であると、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性や接着性を向上させることができる。
【0129】
硬化性組成物は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)、(メタ)アクリレート系重合体(B)及びアミン化合物(C)並びに、必要に応じて添加される添加剤を汎用の手段を用いて真空雰囲気下にて均一に混合することによって製造することができる。
【0130】
硬化性組成物は、空気中又は部材中に含まれる湿気によって硬化し、接着性に優れていると共に、優れたゴム弾性を長期間に亘って維持することができる硬化物を形成することができることから、シーリング材、コーティング材、接着剤、及び塗料など各種用途に使用することができる。
【0131】
特に、硬化性組成物を湿気によって硬化させて得られる硬化物は、優れた防汚性を有している。従って、特に屋外での使用にあっても、長期間に亘って美麗な外観を保持することができる。従って、硬化性組成物は、シーリング材又は接着剤として用いられることが好ましく、目地構造用シーリング材として用いられることがより好ましい。
【0132】
又、硬化性組成物の硬化物が合成樹脂製の構造部材に長期間に亘って接触した状態に維持されても、合成樹脂製の構造部材にクラックを生じさせることはなく、合成樹脂製の構造部材の品質を長期間に亘って安定的に維持することができると共に、合成樹脂製の構造部材に対する接着状態を長期間に亘って安定的に維持することができる。
【0133】
硬化性組成物の硬化物は、優れた耐候性に優れており、屋外において長期間に亘って使用されたとしても、優れたゴム弾性を維持し、隙間部の寸法変化にも円滑に追従し、隙間部への充填状態や、隙間部を形成している構造部材に対する接着状態を安定的に維持することができる。
【0134】
硬化性組成物を構造部材間に形成された隙間部に施工して充填構造を得る方法としては、硬化性組成物を隙間部に充填した後に養生させて硬化させる方法が用いられる。得られる目地構造は、建築構造物の壁部を構成している壁部材と、互いに隣接する壁部材間に形成された隙間部(目地部)に充填された、硬化性組成物の硬化物とを有している。得られる隙間部の充填構造は、所定間隔を存して配設された構造部材と、この構造部材間に形成された隙間部に充填された、硬化性組成物の硬化物とを有している。建築構造物の壁部としては、例えば、外壁、内壁、天井部などが挙げられ、なかでも外壁が好ましい。壁部材としては、例えば、外壁部材、内壁部材、天井部材などが挙げられ、外壁部材が好ましい。隙間部を形成している部材としては、例えば、窓枠とこの窓枠が取り付けられる外壁などが挙げられる。
【0135】
目地部は、特に制限されないが、建築構造物の外壁、内壁、及び天井における目地部などが挙げられる。本発明の硬化性組成物は、硬化後に長期間に亘って優れた防汚効果を維持することができる。従って、建築構造物の外壁における目地部など、所謂、「ワーキングジョイント」とも呼ばれる埃や汚染物質によって汚れ易い目地部をシーリングするために好適に用いられる。
【0136】
建築構造物の外壁における目地部としては、例えば、モルタル板、コンクリート板、窯業系サイディングボード、金属系サイディングボード、ALC板、及び金属板などの外壁部材間に形成される目地部が挙げられる。
【発明の効果】
【0137】
本発明の硬化性組成物は、優れた耐クラック性、耐候性、防汚性及びゴム弾性を有する硬化物を生成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0138】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例0139】
実施例及び比較例の硬化性組成物の製造において下記の原料を使用した。
[加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)]
・ポリオキシアルキレン系重合体(A1)(主鎖骨格:ポリアルキレンオキサイド、主鎖の末端に式(1-1)の構造を有している、数平均分子量:20000、1分子中のメチルジメトキシシリル基の平均個数:2.8個、カネカ社製 商品名「HS2」)
・ポリオキシアルキレン系重合体(A2)(主鎖骨格:ポリプロピレンオキサイド、主鎖骨格の末端にウレア結合を有している、数平均分子量:18000、主鎖の両末端にトリメトキシシリル基を有する、ポリプロピレンオキサイド骨格の両末端にウレタン結合を介してトリメトキシシリル基を有する、トリメトキシシリル基とウレタン結合との間にプロピレン基を有する、旭化成ワッカーシリコーン社製 商品名「GENIOSIL STP-E35」)
・ポリオキシアルキレン系重合体(A3)(主鎖骨格:ポリプロピレンオキサイド(直鎖状)、分子中にウレタン結合、ウレア結合及び式(1)で示される構造を有しない、数平均分子量:18990、主鎖の両末端にメチルジメトキシシリル基を有する、1分子中のメチルジメトキシシリル基の平均個数:1.7個、AGC社製 商品名「S2420」)
【0140】
[(メタ)アクリレート系重合体(B)]
・(メタ)アクリレート系重合体(B)(分子中に加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体と、分子中に加水分解性シリル基を有しないアクリル系重合体の混合物、主鎖骨格:メチルメタクリレート-n-ブチルアクリレート共重合体(メチルメタクリレート成分の含有量:25質量%、n-ブチルアクリレート成分の含有量:75質量%、ポリオキシアルキレン鎖を有していない、1分子中の加水分解性シリル基の平均個数:0.9個、重量平均分子量:7000、東亜合成社製 商品名「ARUFON US-6150」)
【0141】
[アミン化合物(C)]
・モノアミン化合物(C1)(ステアリルアミン、融点50℃、花王社製 商品名「ファーミン80S」)
【0142】
[可塑剤(D)]
・アクリル系重合体(D1)(分子内に加水分解性シリル基及びポリオキシアルキレン鎖を有していないアクリル系重合体、重量平均分子量:2500、東亜合成株式会社製 製品名「UP-1110」)
・ポリプロピレングリコール(分子内に加水分解性シリル基を有していない、重量平均分子量:3000、AGC社製 商品名「エクセスター3020」)
【0143】
[ナフサ]
・2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン
【0144】
[充填剤]
・コロイダル炭酸カルシウム(平均粒子径:80nm、脂肪酸による表面処理、丸尾カルシウム社製 商品名「カルファイン200M」)
・重質炭酸カルシウム(平均粒子径:1.0μm、脂肪酸による表面処理、日東粉化社製 商品名「NCC2310」)
【0145】
[脱水剤]
・ビニルトリメトシシラン(信越化学工業株式会社製 商品名「KBM-1003」)
【0146】
[シラノール縮合触媒]
・シラノール縮合触媒(1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサン、日東化成株式会社製 商品名「ネオスタンU-130」)
【0147】
[紫外線吸収剤]
・ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASFジャパン社製 商品名「チヌビン326」)
【0148】
[酸化防止剤]
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン社製 商品名「イルガノックス1010」)
【0149】
[光安定剤]
・NH型ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン社製 商品名「チヌビン770」)
【0150】
・アミノシランカップリング剤(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製 商品名「KBM-603」)
・揺変剤(脂肪酸アマイドワックス、楠本化成社製 商品名「ディスパロン#6500」
)
【0151】
(実施例1~4、比較例1~6)
上述した、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)、(メタ)アクリレート系重合体(B)、モノアミン化合物(C1)、可塑剤(D)、ナフサ、充填剤、脱水剤、シラノール縮合触媒、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、NH型ヒンダードアミン系光安定剤、アミノシランカップリング剤及び揺変剤をそれぞれ表1に示した配合量となるようにして、密封した攪拌機中で減圧しながら均一になるまで混合することにより硬化性組成物を得た。
【0152】
得られた硬化性組成物について、耐クラック性、耐候性(MWOM)、防汚性及びゴム弾性を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0153】
[耐クラック性]
ポリメタクリル酸メチル製の試験片(エンジニアリングテストサービス社製)を用意した。試験片は、幅65mm×長さ100mm×厚み1mmの平面長方形状であった。
【0154】
一方、一対の直方体形状の治具を用意した。一対の治具を平坦面上に載置した。一対の治具をこれら治具の対向面間の距離が96mm又は98mmとなるように平坦面上に固定した。一対の治具の対向面間に試験片の配設部を形成した。
【0155】
試験片をその長さ方向の端縁同士が近接する方向に変形させて凸円弧状に彎曲させた状態とし、この彎曲状態の試験片を一対の治具間に形成された試験片の配設部に配設した。試験片の端縁のそれぞれは、一対の治具の対向面に受止されており、試験片の凸円弧状面が上方に指向した状態とした。
【0156】
次に、彎曲状態の試験片の凸円弧状面の中央部に、硬化性組成物を長さ30mm×幅30mm×厚み5mmに塗工し、23℃及び相対湿度50%の環境下に48時間に亘って放置して放置した。
【0157】
しかる後、試験片上に塗工した硬化性組成物を除去した。試験片における硬化性組成物が塗工されていた部分を顕微鏡観察(倍率50倍)し、試験片の表面にクラックが生じているか否かを確認し、下記基準にて評価した。
○・・・何れの湾曲度合いにおいてもクラックは発生していなかった。
×・・・何れかの湾曲度合いにおいてクラックが発生していた。
【0158】
[耐候性(MWOM)]
硬化性組成物をステンレス板上に厚みが5mmとなるように塗工して、温度23℃及び相対湿度50%の雰囲気下で14日間に亘って養生させることにより、硬化性組成物を硬化させて、ステンレス板上に硬化性組成物の硬化物が形成されている積層体を得た。
【0159】
次に、積層体を、光源にメタルハライドランプを用いた促進耐候性試験機(ダイプラ・ウインテス株式会社製、商品名「KW-R5TP-A」)内に設置し、温度63℃及び相対湿度50%の雰囲気下で、硬化性組成物の硬化物表面に、300~400nmの波長を有する紫外線を照度80mW/cm2で1200時間照射した。紫外線照射後の硬化物表面を目視観察し、下記基準に基づいて評価した。
○・・・ひび割れ及び退色の双方とも発生しなかった。
×・・・ひび割れ又は退色が発生した。
【0160】
[防汚性]
ステンレス板上に硬化性組成物を温度23℃及び相対湿度50%の雰囲気下にて厚さ5mmとなるように塗工して1日間養生して硬化させた。硬化性組成物の硬化物の表面に7号硅砂を振り掛け、硅砂の付着の有無を目視観察し、下記基準に基づいて評価した。その結果を表1に示した。
◎・・硅砂の付着はなかった。
○・・5cm角当たりの硅砂の付着数が50粒未満であった。
△・・5cm角当たりの硅砂の付着数が50粒以上で且つ200粒未満であった。
×・・5cm角当たりの硅砂の付着数が200粒以上であった。
【0161】
[ゴム弾性]
硬化性組成物を用いてJIS A1439 4.21に準拠してH型試験体を作製した。具体的には、アルマイト処理を施したアルミニウム板(縦50mm×横50mm×厚み3mm)2枚を用い、これらのアルミニウム板の間にスペーサーを挟むことによってアルミニウム板間の中央部に直方体状の空間(縦12mm×横50mm×高さ12mm)を形成した。この空間内に硬化性組成物を空気が入らないように充填し、温度23℃及び相対湿度50%の雰囲気下で14日間放置した。
【0162】
更に、温度30℃の雰囲気下で14日間放置することにより、硬化性組成物を養生させて硬化させ、2枚のアルミニウム板が硬化性組成物の硬化物によって接着一体化されてなるH型試験体を作製した。
【0163】
作製直後のH型試験体について、温度23℃及び相対湿度50%の雰囲気下にて、引張速度50mm/分での引張試験をJIS A1439に準拠して行い、最大荷重時伸び[%]を測定した。
○・・・500%以上であった。
×・・・500%未満であった。
【0164】