IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電源用半導体装置及び電源装置 図1
  • 特開-電源用半導体装置及び電源装置 図2
  • 特開-電源用半導体装置及び電源装置 図3
  • 特開-電源用半導体装置及び電源装置 図4
  • 特開-電源用半導体装置及び電源装置 図5
  • 特開-電源用半導体装置及び電源装置 図6
  • 特開-電源用半導体装置及び電源装置 図7
  • 特開-電源用半導体装置及び電源装置 図8
  • 特開-電源用半導体装置及び電源装置 図9
  • 特開-電源用半導体装置及び電源装置 図10
  • 特開-電源用半導体装置及び電源装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008046
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】電源用半導体装置及び電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/06 20060101AFI20240112BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H02M7/06 H
H02M3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109553
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 夏輝
(72)【発明者】
【氏名】名手 智
【テーマコード(参考)】
5H006
5H730
【Fターム(参考)】
5H006CA07
5H006CB01
5H006DC05
5H006FA04
5H730AA17
5H730AS01
5H730BB23
5H730BB43
5H730BB57
5H730CC01
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE07
5H730EE13
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FF05
5H730FG01
5H730XC00
(57)【要約】
【課題】停電発生時における相間コンデンサ及びメインコンデンサの放電を実現する。
【解決手段】相間コンデンサ(C)及びメインコンデンサ(CIN)が設けられる電源装置において、交流電圧の全波整流電圧を対象配線(WRIN)に発生させ、他の整流電圧(V)を第1入力端子に入力する。第2入力端子は対象配線に接続される。電位制御端子及び対象配線間にメインコンデンサが設けられ、電位制御端子及びグランド間に第1スイッチング素子(SW1)が設けられる。各コンデンサを放電させるための第2スイッチング素子(SW2)が設けられる。制御回路は、交流電圧の供給期間において第1入力端子及び電位制御端子の各電圧に基づき第1スイッチング素子のオン、オフを制御し、停電検出時には第1入力端子及び第2スイッチング素子経由で相間コンデンサを放電させてから第1及び第2スイッチング素子経由でメインコンデンサを放電させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の入力端子に加わる交流電圧をダイオードブリッジに供給することで対象配線に全波整流電圧を生じさせる電源装置に用いられる電源用半導体装置であって、
前記一対の入力端子に加わる前記交流電圧を前記ダイオードブリッジと異なる両波整流回路に供給することで得られる整流電圧を受けるよう構成された第1入力端子と、
前記対象配線に接続されるよう構成された第2入力端子と、
前記対象配線に対しメインコンデンサを通じて接続されるよう構成された電位制御端子と、
前記電位制御端子とグランドとの間に設けられた第1スイッチング素子と、
前記第1入力端子における電圧に基づき、前記一対の入力端子への前記交流電圧の供給が途絶える停電を検出するよう構成された停電検出回路と、
前記停電が検出されたときに前記一対の入力端子間に設けられる相間コンデンサを放電させるための電流及び前記メインコンデンサを放電させるための電流をグランドへと流すよう構成された第2スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を制御するよう構成された制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記一対の入力端子に対する前記交流電圧の供給期間において、前記第1入力端子における電圧と前記電位制御端子における電圧に基づき前記第1スイッチング素子のオン、オフを制御し、
前記制御回路は、前記停電が検出されたとき第1放電処理を行ってから第2放電処理を行い、
前記第1放電処理において、前記第1スイッチング素子をオフとしつつ前記第2スイッチング素子をオンとすることで前記両波整流回路、前記第1入力端子及び前記第2スイッチング素子を経由し且つグランドを含む第1放電経路で前記相間コンデンサを放電させ、
前記第2放電処理において、前記第2スイッチング素子及び前記第1スイッチング素子をオンとすることで前記第1スイッチング素子、前記第2入力端子及び前記第2スイッチング素子を経由し且つグランドを含む第2放電経路で前記メインコンデンサを放電させる
、電源用半導体装置。
【請求項2】
前記停電検出回路は、前記第1入力端子における電圧の変動状態に基づき前記停電の発生有無を検出して、検出結果を示す停電検出信号を前記制御回路に出力し、前記停電の検出期間において前記停電検出信号をアサート状態に設定する一方、前記停電の非検出期間において前記停電検出信号をネゲート状態に設定し、
前記制御回路は、前記停電検出信号が前記ネゲート状態から前記アサート状態に切り替わった後、前記停電検出信号が前記アサート状態にて維持されたまま所定の待機時間が経過すると前記第1放電処理を開始する
、請求項1に記載の電源用半導体装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記第1放電処理を開始すると、前記第1放電処理を所定の放電時間だけ行い、その後に前記第2放電処理を開始する
、請求項2に記載の電源用半導体装置。
【請求項4】
前記待機時間は第1待機時間であり、
前記制御回路は、前記第1放電処理を経て前記第2放電処理を行う際、前記停電検出信号が前記ネゲート状態から前記アサート状態に切り替わった後、所定の第2待機時間が経過したときに前記第2放電処理を開始し、
前記第2待機時間は、前記第1待機時間と前記第1放電処理における前記放電時間との和よりも長い又は前記和と一致する
、請求項3に記載の電源用半導体装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記第1放電処理の開始後、前記第1入力端子における電圧の分圧値が基準値未満となることを受けて前記第1放電処理を終了させ、その後に前記第2放電処理を開始する
、請求項2に記載の電源用半導体装置。
【請求項6】
前記制御回路は、前記第2入力端子における電圧に基づき動作し、
前記制御回路は、前記第2放電処理の開始後、前記第2入力端子における電圧が所定の下限電圧以下になると前記第2放電処理を終了させる
、請求項1に記載の電源用半導体装置。
【請求項7】
前記制御回路は、
前記第1入力端子における電圧を分圧するよう構成された第1分圧回路と、
前記電位制御端子における電圧を分圧するよう構成された第2分圧回路と、
前記第1分圧回路の分圧にて得られる第1対比電圧と、前記第2分圧回路の分圧にて得られる第2対比電圧との差に応じた差分信号を生成するよう構成された差動増幅回路と、を備え、
前記一対の入力端子に対する前記交流電圧の供給期間において、前記差分信号に応じて前記第1スイッチング素子のオン、オフを制御する
、請求項1に記載の電源用半導体装置。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載の電源用半導体装置と、
前記ダイオードブリッジと、
前記両波整流回路と、
前記相間コンデンサと、
前記メインコンデンサと、を備える
、電源装置。
【請求項9】
前記対象配線及び前記電位制御端子に接続され、前記メインコンデンサの両端間電圧を他の電圧に変換するよう構成された電力変換回路を更に備える
、請求項8に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源用半導体装置及び電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電圧から直流電圧を生成可能な電源装置に、相間コンデンサ及びメインコンデンサが設けられることが多い。相間コンデンサは一般にXコンデンサと称されることもある。相間コンデンサは交流電圧を受ける一対の入力端子間に接続される。メインコンデンサは交流電圧の全波整流電圧が加わる配線に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-177687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電源装置に対する交流電圧の供給が途絶えたとき、安全性確保等の観点から相間コンデンサ及びメインコンデンサの放電が要求される。しかしながら、相間コンデンサ及びメインコンデンサの双方を放電させる技術の実現は難しい点が多く、実用性の高い放電技術の開発が期待される。
【0005】
本開示は、停電発生時における相間コンデンサ及びメインコンデンサの放電を実現する(特に例えば簡素な構成で放電を実現する)電源用半導体装置及び電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電源用半導体装置は、一対の入力端子に加わる交流電圧をダイオードブリッジに供給することで対象配線に全波整流電圧を生じさせる電源装置に用いられる電源用半導体装置であって、前記一対の入力端子に加わる前記交流電圧を前記ダイオードブリッジと異なる両波整流回路に供給することで得られる整流電圧を受けるよう構成された第1入力端子と、前記対象配線に接続されるよう構成された第2入力端子と、前記対象配線に対しメインコンデンサを通じて接続されるよう構成された電位制御端子と、前記電位制御端子とグランドとの間に設けられた第1スイッチング素子と、前記第1入力端子における電圧に基づき、前記一対の入力端子への前記交流電圧の供給が途絶える停電を検出するよう構成された停電検出回路と、前記停電が検出されたときに前記一対の入力端子間に設けられる相間コンデンサを放電させるための電流及び前記メインコンデンサを放電させるための電流をグランドへと流すよう構成された第2スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を制御するよう構成された制御回路と、を備え、前記制御回路は、前記一対の入力端子に対する前記交流電圧の供給期間において、前記第1入力端子における電圧と前記電位制御端子における電圧に基づき前記第1スイッチング素子のオン、オフを制御し、前記制御回路は、前記停電が検出されたとき第1放電処理を行ってから第2放電処理を行い、前記第1放電処理において、前記第1スイッチング素子をオフとしつつ前記第2スイッチング素子をオンとすることで前記両波整流回路、前記第1入力端子及び前記第2スイッチング素子を経由し且つグランドを含む第1放電経路で前記相間コンデンサを放電させ、前記第2放電処理において、前記第2スイッチング素子及び前記第1スイッチング素子をオンとすることで前記第1スイッチング素子、前記第2入力端子及び前記第2スイッチング素子を経由し且つグランドを含む第2放電経路で前記メインコンデンサを放電させる構成である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、停電発生時における相間コンデンサ及びメインコンデンサの放電を実現する(特に例えば簡素な構成で放電を実現する)電源用半導体装置及び電源装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の実施形態に係る電源装置の構成図である。
図2図2は、本開示の実施形態に係る停電検出回路の構成図である。
図3図3は、本開示の実施形態に係る停電検出回路の動作説明図である。
図4図4は、本開示の実施形態に係り、停電発生前及び停電発生後における電源装置の各部の電圧又は信号波形等を示す図である。
図5図5は、本開示の実施形態に係り、第1放電処理における放電電流の流れを示す図である。
図6図6は、本開示の実施形態に係り、第2放電処理における放電電流の流れを示す図である。
図7図7は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、第1放電処理の終了タイミングを定めるために用いられるコンパレータを示す図である。
図8図8は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、電源装置の構成図である。
図9図9は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、第1放電処理における放電電流の流れを示す図である。
図10図10は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、第2放電処理における放電電流の流れを示す図である。
図11図11は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、電源装置の変形構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“140”によって参照されるシュミットトリガ回路は(図1参照)、シュミットトリガ回路140と表記されることもあるし、回路140と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0010】
まず、本開示の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。レベルとは電位のレベルを指し、任意の注目した信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。任意の注目した信号又は電圧について、信号又は電圧がハイレベルにあるとは厳密には信号又は電圧のレベルがハイレベルにあることを意味し、信号又は電圧がローレベルにあるとは厳密には信号又は電圧のレベルがローレベルにあることを意味する。
【0011】
任意の注目した信号又は電圧において、ローレベルからハイレベルへの切り替わりをアップエッジと称することがある。アップエッジをライジングエッジに読み替えて良い。同様に、任意の注目した信号又は電圧において、ハイレベルからローレベルへの切り替わりをダウンエッジと称することがある。ダウンエッジをフォーリングエッジに読み替えて良い。
【0012】
MOSFETを含むFET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通している状態を指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通となっている状態(遮断状態)を指す。FETに分類されないトランジスタについても同様である。MOSFETは、特に記述無き限り、エンハンスメント型のMOSFETであると解される。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。また、特に記述なき限り、任意のMOSFETにおいて、バックゲートはソースに短絡されていると考えて良い。
【0013】
以下、任意のトランジスタについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。任意のトランジスタについて、オフ状態からオン状態への切り替わりをターンオンと表現し、オン状態からオフ状態への切り替わりをターンオフと表現する。任意のスイッチング素子についても同様である。また、任意のトランジスタ又はスイッチング素子について、トランジスタ又はスイッチング素子がオン状態となっている期間をオン期間と称することがあり、トランジスタ又はスイッチング素子がオフ状態となっている期間をオフ期間と称することがある。
【0014】
任意の回路素子、配線、ノードなど、回路を形成する複数の部位間についての接続とは、特に記述なき限り、電気的な接続を指すと解して良い。
【0015】
図1に本開示の実施形態に係る電源装置AAの構成図を示す。電源装置AAは交流電圧から直流電圧を生成するAC/DCコンバータである。
【0016】
電源装置AAは、主たる構成部品として、電源用半導体装置である半導体装置1と、ダイオードブリッジ2と、両波整流回路3と、フィルタ4と、電力変換回路5と、コンデンサC、CIN及びCVCCを備える。電源装置AAの構成部品間を接続するための配線(例えば後述の配線WR、WR及びWRIN)も電源装置AAの構成要素に含まれる。
【0017】
半導体装置1は、半導体基板上に形成された半導体集積回路を有する半導体チップと、半導体チップを収容する筐体(パッケージ)と、筐体から半導体装置1の外部に対して露出する複数の外部端子と、を備えた電子部品である。半導体チップを樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで半導体装置1が形成される。図1には、上記複数の外部端子の一部として端子TM1~TM5が示されているが、これら以外の外部端子も半導体装置1に設けられる。
【0018】
電源装置AAに一対の入力端子(一対の電源入力端子)が設けられ、電源装置AAに供給される交流電圧VACは一対の入力端子に加わる。一対の入力端子は入力端子TM及びTMから成る。電源装置AAに対して交流電圧VACが供給される期間を交流電圧VACの供給期間と称する。電源装置AAに対する交流電圧VACの供給が途絶えることを停電と称する。電源装置AAに対して交流電圧VACが供給されない期間、即ち、電源装置AAに対する交流電圧VACの供給が途絶えている期間を、交流電圧VACの非供給期間又は停電期間と称する。交流電圧VACは図示されない商用電源から出力される商用交流電圧であって良く、交流電圧VACの実効値は例えば90V~264Vの範囲内の何れかの値を持つ。交流電圧VACの供給期間において、電源装置AAは、交流電圧VACをダイオードブリッジ2により全波整流することで全波整流電圧を配線WRIN(対象配線)に発生させる。そして、全波整流電圧に基づくコンデンサCINの両端間電圧を電力変換回路5により他の電圧(後述の出力電圧VOUT)に変換する。
【0019】
フィルタ4はコモンモードフィルタであり、交流電圧VACに重畳し得るコモンモードノイズを低減する。フィルタ4は互いに磁気結合された第1コイル及び第2コイルを有する。フィルタ4において、第1コイルの第1端は配線WRを介して入力端子TMに接続され、第1コイルの第2端はダイオードブリッジ2に接続される。フィルタ4において、第2コイルの第1端は配線WRを介して入力端子TMに接続され、第2コイルの第2端はダイオードブリッジ2に接続される。配線WRは入力端子TMとフィルタ4の第1コイルとの間の配線を指し、配線WRは入力端子TMとフィルタ4の第2コイルとの間の配線を指す。フィルタ4によるコモンモードノイズの低減後の交流電圧VACがダイオードブリッジ2に入力される。
【0020】
ダイオードブリッジ2は、交流電圧VACの供給期間において、フィルタ4を通じて供給される交流電圧VACの全波整流を行う。ダイオードブリッジ2の全波整流により得られる全波整流電圧が配線WRINに加わる。具体的には、ダイオードブリッジ2は整流ダイオード2a~2dを有する。フィルタ4の第1コイルの第2端が整流ダイオード2aのアノード及び整流ダイオード2cのカソードに接続される。フィルタ4の第2コイルの第2端が整流ダイオード2bのアノード及び整流ダイオード2dのカソードに接続される。整流ダイオード2c及び2dの各アノードはグランドに接続される。整流ダイオード2a及び2bの各カソードは配線WRINに接続される。
【0021】
コンデンサCは配線WR及びWRに接続される相間コンデンサである。相間コンデンサは一般にXコンデンサと称されることもある。相間コンデンサCの一端は配線WRに接続され、相間コンデンサCの他端は配線WRに接続される。相間コンデンサCは高周波のノーマルノードノイズの低減に寄与する。
【0022】
両波整流回路3は、ダイオードブリッジ2とは別に設けられた、交流電圧VACの整流回路である。両波整流回路3は整流ダイオード3a及び3b並びに抵抗3cを有する。整流ダイオード3aのアノードは配線WRに接続される。整流ダイオード3bのアノードは配線WRに接続される。整流ダイオード3a及び3bのカソードは互いに共通接続され且つ抵抗3cを介して端子TM1に接続される。即ち、整流ダイオード3a及び3bの各カソードは抵抗3cの一端に接続され、抵抗3cの他端は端子TM1に接続される。交流電圧VACの供給期間において、整流ダイオード3a及び3bの各カソードには(従って端子TM1には)、交流電圧VACの両波整流電圧が加わる。両波整流電圧は全波整流電圧と等価である。但し、ここでは、ダイオードブリッジ2により生成される整流電圧と、両波整流回路3により生成される整流電圧とを、文言上、区別するべく、後者の整流電圧を両波整流電圧と称する(前者の整流電圧を第1全波整流電圧、後者の整流電圧を第2全波整流電圧と称しても良い)。
【0023】
以下、端子TM1における電圧を電圧Vと称する。交流電圧VACの供給期間における任意のタイミングにおいて、交流電圧VACの両波整流電圧の値(即ち電圧Vの値)は交流電圧VACの瞬時値の絶対値と等しい(但しここでは、整流ダイオード3a及び3bの順方向電圧及び抵抗3cの電圧降下は十分に小さいと仮定して無視)。
【0024】
配線WRINに加わる電圧を電圧VINと称する。端子TM2は配線WRINに接続され、電圧VINを受ける。コンデンサCINは配線WRIN及び端子TM3間に接続されるメインコンデンサ(入力コンデンサ)である。即ち、配線WRINに対してメインコンデンサCINの一端(陽極)が接続され、端子TM3に対してメインコンデンサCINの他端(陰極)が接続される。メインコンデンサCINの両端間電圧をコンデンサ電圧VCINと称する。コンデンサ電圧VCINは、端子TM3の電位から見た配線WRINの電位を指すものとする。メインコンデンサCINはダイオードブリッジ2から配線WRINに供給される電圧を平滑化する機能を有し、平滑化された電圧が実際に配線WRINに加わる。端子TM3における電圧を、以下、電圧Vと称する。また端子TM4はグランドに接続される。
【0025】
電力変換回路5は配線WRIN及び端子TM3に接続される。後にも述べられるが、交流電圧VACの供給期間においてコンデンサ電圧VCINは概ね一定の電圧値を持ち、厳密には一定電圧近辺に保たれた脈流電圧となる。電力変換回路5はコンデンサ電圧VCINに基づいて動作し、コンデンサ電圧VCINを他の電圧VOUTに変換する電力変換を実行する。電圧VOUTは電力変換回路5の出力電圧VOUTである。
【0026】
図1の構成例において、電力変換回路5はフライバック方式のスイッチング電源回路であり、トランス5a、Nチャネル型のMOSFETであるパワートランジスタ5b、スイッチング制御装置5c、整流ダイオード5d及び出力コンデンサ5eを有する。トランス5aは一次側巻線及び二次側巻線を有する。トランス5aにおいて一次側巻線と二次側巻線とは電気的に絶縁されつつ互いに逆極性にて磁気結合されている。一次側巻線の一端は配線WRINに接続され、一次側巻線の他端はパワートランジスタ5bのドレインに接続される。パワートランジスタ5bのソースは端子TM3に接続される。スイッチング制御装置5cは配線WRIN及び端子TM3に接続され、コンデンサ電圧VCINを電源電圧として動作する。或いは、トランス5aに設けられた補助巻線(不図示)での発生電圧に基づきスイッチング制御装置5cの電源電圧が生成されても良い。スイッチング制御装置5cはパワートランジスタ5bのゲートに接続され、パワートランジスタ5bのゲート電位の制御を通じ所定のスイッチング周波数でパワートランジスタ5bをスイッチングさせる(即ち交互にオン、オフとする)。
【0027】
トランス5aの二次側巻線の第1端は整流ダイオード5dのアノードに接続される。整流ダイオード5dのカソード及び出力コンデンサ5eの第1端は出力端子TMOUTに接続される。トランス5aの二次側巻線の第2端及び出力コンデンサ5eの第2端は所定の二次側基準電位点に接続される。二次側基準電位点はトランス5aの二次側に設けられた回路の基準電位点であり、二次側基準電位点の電位から見て出力電圧VOUTだけ高い電圧が出力端子TMOUTに加わる。本実施形態においてグランドとは、トランス5aの一次側に設けられた回路の基準電位点である一次側基準電位点を指し、一次側基準電位点は0Vの電位を有する。本実施形態において特に基準を設けずに示される電圧は当該グランドから見た電位を表す。一次側基準電位点における電位はグランド電位と称され得る。二次側基準電位点は一次側基準電位点から絶縁される(但し一次側及び二次側基準電位点は共通の電位点であっても良い)。
【0028】
パワートランジスタ5bのオン期間においてコンデンサ電圧VCINに基づく電流がトランス5aの一次側巻線に流れることで当該電流に基づくエネルギがトランス5aに蓄積される。パワートランジスタ5bのオフ期間においてトランス5aの蓄積エネルギに基づく電流が二次側巻線から整流ダイオード5dを通じ出力端子TMOUTに向けて流れる。これにより出力コンデンサ5eの両端間に直流電圧として出力電圧VOUTが発生する。特に図示しないが、電力変換回路5において出力電圧VOUTを一定に保つ帰還制御が行われて良い。
【0029】
尚、ここでは電力変換回路5がフライバック方式の絶縁型DC/DCコンバータとして構成されているが、電力変換回路5はフォワード方式の絶縁型DC/DCコンバータであっても良いし、二次側においてダイオード整流方式ではなく同期整流方式が採用されても良い。また、電力変換回路5がトランスを有することは必須ではなく、電力変換回路5は非絶縁型DC/DCコンバータであっても良い。電力変換回路5がコンデンサ電圧VCINに基づき他の直流電圧を出力電圧VOUTとして生成することができる限り、電力変換回路5の構成は任意である。出力電圧VOUTは、図1の構成例の如く二次側基準電位点の電位を基準とする直流電圧であっても良いし、端子TM3の電位又はグランドの電位を基準とする直流電圧であっても良い。
【0030】
半導体装置1は、主たる構成部品として、スイッチング素子SW1及びSW2と、制御回路10、停電検出回路20、及び、放電機能付きのレギュレータ回路30を備える。ここでは、スイッチング素子SW1及びSW2はNチャネル型のMOSFETにより構成され、以下、スイッチング素子SW1、SW2はトランジスタSW1、SW2と称され得る。
【0031】
半導体装置1はトランジスタSW1のオン、オフ制御を通じて端子TM3の電位を制御し、これによってコンデンサ電圧VCINを所定の制限電圧VLIM以下に抑える機能を持つ。このため、端子TM3を電位制御端子と称することもできる。制限電圧VLIMは交流電圧VACの最大の波高値より小さい。交流電圧VACの実効値の最大値が264Vであれば、交流電圧VACの実効値が264Vであるときの交流電圧VACの波高値が、交流電圧VACの最大の波高値である。仮にメインコンデンサCINの負極がグランドに常時接続されていたならば、メインコンデンサCINの両端間には最大で400V程度の電圧が加わり、それを超える耐圧をメインコンデンサCINに持たせる必要がある。電源装置AAでは半導体装置1の上記機能により、制限電圧VLIMに合わせた耐圧にまでメインコンデンサCINの耐圧を抑えることができる。
【0032】
トランジスタSW1は端子TM3とグランドとの間に設けられる。具体的には、トランジスタSW1のドレインが端子TM3に接続され、トランジスタSW1のソースが端子TM4に接続される。上述したように端子TM4はグランドに接続される。トランジスタSW1のゲートに加わる信号をゲート信号G1と称する。ゲート信号G1は後述のドライブ回路160からトランジスタSW1のゲートに供給される。トランジスタSW1は、ゲート信号G1がハイレベルであるときにオン状態となり、ゲート信号G1がローレベルであるときにオフ状態となる。
【0033】
トランジスタSW2のドレインはノードND1に接続され、トランジスタSW2のソースはグランドに接続される。ノードND1は放電機能付きのレギュレータ回路30に設けられたノードである。停電が検出されたときにトランジスタSW2がオンとされ、相間コンデンサCを放電させるための電流及びメインコンデンサCINを放電させるための電流が、ノードND1を介してトランジスタSW2のドレイン及びソース間に流れる(詳細は後述)。トランジスタSW2のゲートに加わる信号をゲート信号G2と称する。ゲート信号G2は後述の制御ロジック回路150からトランジスタSW2のゲートに供給される。トランジスタSW2は、ゲート信号G2がハイレベルであるときにオン状態となり、ゲート信号G2がローレベルであるときにオフ状態となる。
【0034】
放電機能付きのレギュレータ回路30は端子TM1、TM2及びTM5に接続される。半導体装置1の外部において端子TM5はコンデンサCVCCを介してグランドに接続される。端子TM5における電圧を内部電源電圧VCCと称する。レギュレータ回路30は端子TM2に加わる電圧VINに基づき内部電源電圧VCCを生成する。レギュレータ回路30による内部電源電圧VCCの生成動作が行われるとき、内部電源電圧VCCは所定の正の直流電圧値である規定電圧値を持つ。但し、電圧VINが所定の下限電圧VUVLO以下であるとき、レギュレータ回路30による内部電源電圧VCCの生成動作は停止し、内部電源電圧VCCはゼロとなる又はゼロに向かう。内部電源電圧VCCの生成動作が行われて内部電源電圧VCCが規定電圧値を持つとき、半導体装置1内の各回路(制御回路10及び停電検出回路20を含む)は内部電源電圧VCCに基づいて動作する。以下、特に記述無き限り、内部電源電圧VCCは規定電圧値を持つものとする。
【0035】
制御回路10は、分圧回路110及び120と、差動増幅回路130と、シュミットトリガ回路140と、制御ロジック回路150と、ドライブ回路160と、バッファ回路BF1及びBF2と、を備える。
【0036】
分圧回路110は、端子TM1及びグランドに接続された複数の抵抗の直列回路から成り、電圧Vを分圧する。ここでは、分圧回路110は抵抗111及び112の直列回路から成る。抵抗111の第1端は端子TM1に接続され、抵抗111の第2端は抵抗112の第1端に接続され、抵抗112の第2端はグランドに接続される。抵抗111及び112間の接続ノードに、電圧Vの分圧(電圧Vに比例し且つ電圧Vより低い電圧)である電圧V1’が発生する。バッファ回路BF1は電圧V1’を低インピーダンスで出力するボルテージフォロアである。即ち、バッファ回路BF1は電圧V1’を受ける非反転入力端子を有するオペアンプから成り、当該オペアンプの反転入力端子及び出力端子が互いに接続される。バッファ回路BF1におけるオペアンプの出力端子(以下、バッファ回路BF1の出力端子とも称する)から電圧V1が出力される。電圧V1は電圧V1’と同じ電圧値を有する(但し誤差を無視)。電圧V1及びV1’は分圧回路110での分圧によって得られる電圧(第1対比電圧)である。
【0037】
分圧回路120は、端子TM3及びグランドに接続された複数の抵抗の直列回路から成り、電圧Vを分圧する。ここでは、分圧回路120は抵抗121及び122の直列回路から成る。抵抗121の第1端は端子TM3に接続され、抵抗121の第2端は抵抗122の第1端に接続され、抵抗122の第2端はグランドに接続される。抵抗121及び122間の接続ノードに、電圧Vの分圧(電圧Vに比例し且つ電圧Vより低い電圧)である電圧V2’が発生する。バッファ回路BF2は電圧V2’を低インピーダンスで出力するボルテージフォロアである。即ち、バッファ回路BF2は電圧V2’を受ける非反転入力端子を有するオペアンプから成り、当該オペアンプの反転入力端子及び出力端子が互いに接続される。バッファ回路BF2におけるオペアンプの出力端子(以下、バッファ回路BF2の出力端子とも称する)から電圧V2が出力される。電圧V2は電圧V2’と同じ電圧値を有する(但し誤差を無視)。電圧V2及びV2’は分圧回路120での分圧によって得られる電圧(第2対比電圧)である。
【0038】
差動増幅回路130はバッファ回路BF1及びBF2の出力端子に接続され、それらから電圧V1及びV2を受ける。差動増幅回路130は電圧V1及びV2間の差を増幅し、電圧V1及びV2間の差に応じた差分信号SDIFを出力する。具体的には、差動増幅回路130はオペアンプ(演算増幅器)131と抵抗132~135を備える。抵抗132の第1端はバッファ回路BF1の出力端子に接続され電圧V1を受ける。抵抗132の第2端はオペアンプ131の非反転入力端子に接続される一方で抵抗133を介してグランドに接続される。抵抗134の第1端はバッファ回路BF2の出力端子に接続され電圧V2を受ける。抵抗134の第2端はオペアンプ131の反転入力端子に接続される一方で抵抗135を介してオペアンプ131の出力端子に接続される。オペアンプ131の出力端子から差分信号SDIFが出力される。
【0039】
差分信号SDIFの電位は、電圧V2が一定であるという条件の下、電圧V1の上昇につれて上昇し、電圧V1の低下につれて低下する。差分信号SDIFの電位は、電圧V1が一定であるという条件の下、電圧V2の上昇につれて低下し、電圧V2の低下につれて上昇する。
【0040】
シュミットトリガ回路140は、アナログ信号である差分信号SDIFをヒステリシス付きでデジタルの信号SSMTに変換し且つ出力する。信号SSMTはハイレベル又はローレベルの何れかの信号レベルを有する。信号SSMTがローレベルであるときを起点にして回路140の動作を説明する。差分信号SDIFの電位が所定の上方閾電圧VH_SMTより低い状態から上方閾電圧VH_SMTより高い状態に遷移すると、回路140は信号SSMTのレベルをローレベルからハイレベルに切り替える。その後、差分信号SDIFの電位が所定の下方閾電圧VL_SMTより高い状態から下方閾電圧VL_SMTより低い状態に遷移すると、回路140は信号SSMTのレベルをハイレベルからローレベルに切り替える。ここで、上方閾電圧VH_SMTは下方閾電圧VL_SMTより高く、下方閾電圧VL_SMTは正である。
【0041】
制御ロジック回路150は、シュミットトリガ回路140から信号SSMTを受けると共に停電検出回路20から停電検出信号SFEを受ける。停電検出信号SFE及び後述の制御信号SCNTは“1”又は“0”の値を有する二値化信号である。交流電圧VACが安定して電源装置AAに供給される定常状態において、停電検出信号SFEの値は“0”に維持される。停電検出信号SFEが“0”の値を有する期間において、制御ロジック回路150はローレベルのゲート信号G2をトランジスタSW2に供給することでトランンジスタSW2をオフに保ち、且つ、信号SSMTに基づく制御信号SCNTをドライブ回路160に供給することでトランジスタSW1をオン又はオフに制御する。ドライブ回路160はトランジスタSW1のゲートに接続され、制御信号SCNTに応じてトランジスタSW1にゲート信号G1を供給することで、トランジスタSW1をオン又はオフとする。
【0042】
具体的には、停電検出信号SFEが“0”の値を有する期間において、信号SSMTがハイレベルであるとき、制御ロジック回路150は“0”の制御信号SCNTをドライブ回路160に供給する。ドライブ回路160は“0”の制御信号SCNTを受けてローベルのゲート信号G1をトランジスタSW1に供給し、これによってトランジスタSW1をオフとする。停電検出信号SFEが“0”の値を有する期間において、信号SSMTがローレベルであるとき、制御ロジック回路150は“1”の制御信号SCNTをドライブ回路160に供給する。ドライブ回路160は“1”の制御信号SCNTを受けてハイベルのゲート信号G1をトランジスタSW1に供給し、これによってトランジスタSW1をオンとする。
【0043】
停電検出回路20は端子TM1における電圧Vに基づき停電を検出する(詳細には停電の発生有無を判断及び検出する)。図1の構成例では、電圧Vに応じた電圧である電圧V1が停電検出回路20に入力され、停電検出回路20は電圧V1に基づき停電を検出する(詳細には停電の発生有無を判断及び検出する)。停電検出回路20による検出の結果を示す信号が停電検出信号SFEとして停電検出回路20から制御ロジック回路150に出力される。“1”の停電検出信号SFEはアサート状態の信号(有効な信号)であり、停電が発生していることを示す。“0”の停電検出信号SFEはネゲート状態の信号(無効な信号)であり、停電が発生していることを示さない又は停電が発生していないことを示す。
【0044】
交流電圧VACの供給期間において、電圧Vは交流電圧VACの両波整流電圧であるから、電圧Vが変動し、従って電圧V1も変動する。このときの電圧V及び電圧V1の変動周期は交流電圧VACの半周期と一致する。この性質を利用し、停電検出回路20は電圧Vの変動状態に基づき停電の発生有無を検出する(実際には、電圧V1の変動状態に基づき停電の発生有無を検出する)。停電検出回路20において、停電検出信号SFEに“1”の値が設定される期間(即ち停電が発生していると検出される期間)を停電の検出期間と称する。停電検出回路20において、停電検出信号SFEに“0”の値が設定される期間(即ち停電の発生が検出されない期間)を停電の非検出期間と称する。交流電圧VACの供給期間と交流電圧VACの非供給期間とが切り替わる過渡期を除けば、交流電圧VACの供給期間は停電の非検出期間と一致し(即ち交流電圧VACの供給期間において停電検出信号SFEは“0”となり)、停電の検出期間は交流電圧VACの非供給期間と一致する(即ち交流電圧VACの非供給期間において停電検出信号SFEは“1”となる)。
【0045】
図2に停電検出回路20の内部構成例を示す。停電検出回路20は2以上のコンパレータ21と各コンパレータ21の出力信号を受ける判定回路22とを備える。図2に示す停電検出回路20には3つのコンパレータ21としてコンパレータ21[1]~21[3]が設けられる。コンパレータ21[1]~21[3]の夫々の非反転入力端子に電圧V1が入力される。コンパレータ21[1]~21[3]の反転入力端子に、夫々、所定の判定電圧VTH[1]~VTH[3]が入力される。ここで、“VTH[1]>VTH[2]>VTH[3]>0”が成立する。任意の整数iに関し、コンパレータ21[i]は電圧V1を判定電圧VTH[i]と比較し、電圧V1が判定電圧VTH[i]よりも高いときにハイレベルの信号CMP[i]を出力し、電圧V1が判定電圧VTH[i]よりも低いときにローレベルの信号CMP[i]を出力する。電圧V1が判定電圧VTH[i]とちょうど一致するとき、コンパレータ21[i]の出力信号CMP[i]はハイレベル又はローレベルとなる。
【0046】
判定回路22はコンパレータ21[1]~21[3]の各出力信号に基づき停電検出信号SFEを生成及び出力する。交流電圧VACの大きさ並びに端子TH1及びグランド間の寄生容量等に依存するが、交流電圧VACの供給期間においては、第1~第3出力トグルの内、1以上の出力トグルが発生する。図3に、第1~第3出力トグルが全て発生している状態を示す。任意の整数iに関し、第i出力トグルとは、交流電圧VACの半周期においてコンパレータ21[i]の出力信号CMP[i]にアップエッジとダウンエッジが1回ずつ発生することを指す。
【0047】
判定回路22は、コンパレータ21[1]~21[3]の各出力信号に基づき第1~第3出力トグルの発生有無を監視する。所定の判定時間tTH内において、第1~第3出力トグルの内、1以上の出力トグルが発生するとき、判定回路22は停電検出信号SFEの値を“0”に設定する。第1~第3出力トグルの何れもが発生しない状態が所定の判定時間tTH以上継続するとき、判定回路22は停電が発生したと判断して停電検出信号SFEの値を“1”に設定する。
【0048】
判定時間tTHは交流電圧VACの半周期以上の時間長さを有する。ここで、半導体装置1にとって交流電圧VACの半周期は既知であるとする。交流電圧VACの半周期は交流電圧VACの周期の半分を指す。交流電圧VACの周波数が所定の周波数範囲内の何れかとなる場合には、当該周波数範囲の最小周波数(例えば50Hz)に基づき判定時間tTHが設定される。即ち、上記最小周波数(例えば50Hz)の逆数の1/2以上の長さを判定時間tTHに持たせれば良い。停電検出信号SFEの初期値は“0”であるとする。停電検出信号SFEの値に“1”が設定された後でも、第1、第2又は第3出力トグルが検出された場合には、判定回路22は停電検出信号SFEの値を“0”に戻す。
【0049】
制御ロジック回路150は停電が検出されたときコンデンサC及びCINを放電させるための放電処理を実行する。
【0050】
当該放電処理の説明の前に、定常状態における制御回路10の動作を説明する。まず制御回路10の初期状態において、信号SSMTはローレベルであり、トランジスタSW1はオンとされるものとする。このとき電圧Vは実質的にグランド電位を有する。
【0051】
まず、交流電圧VACの大きさが十分に小さい第1状況を考える。第1状況では交流電圧VACの供給期間においてトランジスタSW1を常時オンにしていたとしても、“V1>V2”ではあるが電圧V1及びV2間の差があまり大きくならない。結果、差分信号SDIFはシュミットトリガ回路140の上方閾電圧VH_SMTを上回らずに信号SSMTはローレレベルに維持される。故に、トランジスタSW1はオンに維持される。ここで、交流電圧VACの大きさが十分に小さいとは、交流電圧VACの供給期間においてトランジスタSW1をオンに維持していてもコンデンサ電圧VCINが所定の制限電圧VLIM以下に維持される程度に交流電圧VACの大きさが小さいことを意味する。
【0052】
次に第2状況を考える。第2状況では交流電圧VACの供給期間においてトランジスタSW1をオンに維持したならばコンデンサ電圧VCINが所定の制限電圧VLIMを上回る程度に交流電圧VACの大きさが大きい。例えば、第2状況では交流電圧VACの実効値が240Vである。図4を参照する。図4は第2状況における電圧波形等が示される。図4において、上から下に向けて順番に、電圧VL-N、電圧V、電圧VIN、電圧VCIN、ゲート信号G1、ゲート信号G2の波形が示される。それらの波形の内、コンデンサ電圧VCINの波形だけ破線にて表され、他の波形は実線にて表される。電圧VL-Nは、入力端子TMの電位から見た入力端子TMの電位を表す。図4では、ゲート信号G2の波形の下に第1タイマ及び第2タイマの動作が図示される。各タイマの機能については後述される。
【0053】
時間が経過するにつれて、時刻T1、T2、T3、T4、T5、T6が、この順番で訪れるものとする。時刻T1より前から時刻T2の直前まで第2状況における交流電圧VACが電源装置AAに供給されている(従って入力端子TM及びTM間に供給されている)。時刻T2の直前までにおいて停電検出信号SFEの値は“0”に維持され、結果、ゲート信号G2はローレベルに維持される。
【0054】
時刻T1及びT2間の動作を信号SSMTがローレベルである状態(従ってゲート信号G1がハイレベルであり、トランジスタSW1がオンの状態)を起点に説明する。トランジスタSW1のオン期間において電圧Vが上昇すると差分信号SDIFが上昇する。第2状況では、トランジスタSW1のオン期間中における電圧Vの上昇過程で差分信号SDIFの電位がシュミットトリガ回路140の上方閾電圧VH_SMTを上回って信号SSMTにアップエッジが生じ、結果、ゲート信号G1にダウンエッジが生じてトランジスタSW1がターンオフする。
【0055】
電圧Vの上昇過程において電圧VINも上昇し、トランジスタSW1がオフであれば電圧Vも電圧VINの上昇に連動して上昇する。但し、電圧Vも上昇するので差分信号SDIFは比較的高いレベルに維持され、信号SSMTはハイレベルに維持される。その後、トランジスタSW1がオフのままで電圧Vの変化方向が上昇方向から低下方向に転じる。トランジスタSW1がオフの状態で電圧Vが低下するとき電圧VINも低下するが、電圧VINはコンデンサ電圧VCIN以下にまで下がることは無い。トランジスタSW1がオフの状態での電圧Vの低下過程において電圧V1の低下に伴って差分信号SDIFが低下する。そして、差分信号SDIFの電位が下方閾電圧VL_SMTを下回ると信号SSMTにダウンエッジが生じて、ゲート信号G1にアップエッジが生じ、結果、トランジスタSW1がターンオンする。その後、電圧Vの変化方向が低下方向から上昇方向に転じ、以後は上述と同様の動作が繰り返される。これにより、交流電圧VACの供給期間においてコンデンサ電圧VCINが所定の制限電圧VLIM以下であって且つ制限電圧VLIM近辺に保たれることになる。
【0056】
図4に示す例において、時刻T2にて交流電圧VACの供給期間から交流電圧VACの非供給期間に遷移する。このため、時刻T2にて停電検出回路20により停電の発生が検出され、停電検出信号SFEの値が“0”から“1”に変化する。尚、停電の発生検出には一定時間が必要であるため、実際には、交流電圧VACの供給期間から交流電圧VACの非供給期間への遷移後、当該一定時間が経過してから停電検出信号SFEの値が“0”から“1”に変化する。但し、ここでは、説明の便宜上、時刻T2にて停電検出信号SFEの値が“0”から“1”に変化したと考える。
【0057】
制御ロジック回路150は、停電検出信号SFEの値の“0”から“1”への変化に応答して、自身が所持又は管理する第1タイマ及び第2タイマを起動させる。第1タイマは第1待機時間tを計測し、第2タイマは第2待機時間tを計測する。第2待機時間tは第1待機時間tよりも長い。第1タイマは基準時刻からの経過時間を計測し、基準時刻からの経過時間が第1待機時間tに達したときに第1タイマアクティブ信号を発生する。第2タイマは基準時刻からの経過時間を計測し、基準時刻からの経過時間が第2待機時間tに達したときに第2タイマアクティブ信号を発生する。基準時刻は、停電検出信号SFEの値が“0”から“1”に変化した時刻であり、図4の例では時刻T2である。
【0058】
図4の例において、時刻T3は時刻T2より第1待機時間tだけ後の時刻であり、時刻T5は時刻T2より第2待機時間tだけ後の時刻である。故に、時刻T3にて第1タイマアクティブ信号が発生し、時刻T5にて第2タイマアクティブ信号が発生する。尚、図4の例では時刻T2以後、時刻T6を超えて停電が継続するものとする。このため、半導体装置1が動作し続ける限り、時刻T2以後も停電検出信号SFEの値が“1”に維持される。
【0059】
制御ロジック回路150は、第1タイマアクティブ信号の発生を受けて第1放電処理を実行し、第2タイマアクティブ信号の発生を受けて第2放電処理を実行する。図4の例において、第1放電処理は時刻T3及びT4間にて実行され、第2放電処理は時刻T5及びT6間にて実行される。
【0060】
第1放電処理において、制御ロジック回路150は、制御信号SCNTの値を“0”に維持することでゲート信号G1をローレベルに保つ(即ちトランジスタSW1をオフに維持する)。また、第1放電処理において、制御ロジック回路150はゲート信号G2をハイレベルに保つことでトランジスタSW2をオンに維持する。故に、図4の例では、時刻T3及びT4間において、トランジスタSW1がオフに且つトランジスタSW2がオンに維持される。
【0061】
尚、図4の例とは異なるが、仮に、時刻T2の後、第1タイマアクティブ信号が発生する前に、電源装置AAに対する交流電圧VACの供給が復帰して停電検出信号SFEの値が“1”から“0”に戻れば、制御ロジック回路150は第1放電処理を実行しない。この場合、停電検出信号SFEの値が“0”に戻った後は、時刻T2以前と同様の動作が行われることになる。
【0062】
このように、制御ロジック回路150は、停電検出信号SFEの値が“0”から“1”に切り替わった後、停電検出信号SFEの値が“1”に維持されたまま第1待機時間tが経過したときに第1放電処理を実行する。実際には停電が発生していないのにも関わらず、ノイズ等の影響により停電検出信号SFEの値が短時間だけ“1”になることもある。第1待機時間tを設けておくことで、このような誤検出に基づく第1放電処理の実行を抑制できる。
【0063】
第1放電処理により相間コンデンサCが放電される。図5に第1放電処理にて相間コンデンサCが放電される様子を示す。図5において、電流IDIS1が第1放電処理での相間コンデンサCの放電電流を表す。第1放電処理において、両波整流回路3、端子TM1及びスイッチング素子SW2を経由する第1放電経路で相間コンデンサCが放電される(即ち放電電流IDIS1が流れる)。第1放電経路中にグランドが含まれ、第1放電処理により相間コンデンサCの両端電位はグランド電位に向かう。
【0064】
第1放電処理は所定の放電時間tDIS1だけ行われる。即ち、時刻T3より放電時間tDIS1だけ後の時刻が時刻T4となる。、ここでは、放電時間tDIS1は予め定められた固定時間であるとする。放電時間tDIS1分の第1放電処理により、相間コンデンサCの両端間電圧が十分に低くなることが保証されるよう、放電時間tDIS1を定めておけば良い。図4の例において、第2待機時間tは第1待機時間tと放電時間tDIS1との和よりも長い。このため時刻T5は時刻T4よりも後の時刻となる。
【0065】
出力電圧VOUTに基づいて動作する負荷(不図示;マイクロコンピュータ等)が出力端子TMOUTに接続される。停電の発生後、出力電圧VOUTの供給が途絶える前に、負荷は必要な電断対応処理を実行する。電断対応処理が完了するまで、必要な出力電圧VOUTの供給が確保されるよう、時刻T4の後、第2放電処理の開始までに間隔を設けている。尚、半導体装置1は、時刻T3又はT4において停電が発生したことを示す信号を上記負荷に伝達するようにしても良く、この場合、当該信号を受けて負荷は電断対応処理を開始できる。
【0066】
但し、第2待機時間tが第1待機時間tと放電時間tDIS1との和と一致するように、それらの時間を設定しておいても良い。この場合、時刻T5と時刻T4は同じ時刻となる。何れにせよ、第2放電処理は第1放電処理の後に実行されることになる。
【0067】
第2放電処理において、制御ロジック回路150は、制御信号SCNTの値を“1”に維持することでゲート信号G1をハイレベルに保つ(即ちトランジスタSW1をオンに維持する)。また、第2放電処理において、制御ロジック回路150はゲート信号G2をハイレベルに保つことでトランジスタSW2をオンに維持する。故に、図4の例では、時刻T5及びT6間において、トランジスタSW1及びSW2が共にオンに維持される。
【0068】
第2放電処理によりメインコンデンサCINが放電される。図6に第2放電処理にてメインコンデンサCINが放電される様子を示す。図6において、電流IDIS2が第2放電処理でのメインコンデンサCINの放電電流を表す。第2放電処理において、スイッチング素子SW1、端子TM3、端子TM2及びスイッチング素子SW2を経由する第2放電経路でメインコンデンサCINが放電される(即ち放電電流IDIS2が流れる)。第2放電経路中にグランドが含まれ、第2放電処理によりメインコンデンサCINの両端電位はグランド電位に向かう。
【0069】
時刻T5の後、電圧VIN及びVCINが低下してゆく。電圧VINが上述の下限電圧VUVLO以下となると、半導体装置1内でリセット信号が発生し、リセット信号を受けて制御回路10にてリセット処理が実行される。リセット処理において、制御回路10により(制御ロジック回路150及びドライブ回路160の協働により)ゲート信号G1及びG2が共にローレベルに切り替えられる。時刻T6はリセット信号が発生する時刻であり、第2放電処理の終了時刻に相当する。時刻T6にてトランジスタSW1及びSW2が共にターンオフすることで第2放電処理が終了する。
【0070】
尚、スイッチング制御装置5cは、時刻T5の後、コンデンサ電圧VCINがスイッチング制御装置5cの動作下限電圧以下になるまでは、パワートランジスタ5bのスイッチングを継続する。コンデンサ電圧VCINが当該動作下限電圧以下になると、スイッチング制御装置5cの動作が停止する。スイッチング制御装置5cの動作が停止した後は、パワートランジスタ5bはオフに維持される。
【0071】
従来、停電の発生時に、相間コンデンサとメインコンデンサの双方を放電させることは、必要な外付け部品の増大をもたらすこと等を理由に、難しいことが多かった。特に、メインコンデンサは耐圧が高いこともあり、相間コンデンサと同時に放電させることは技術的に難しかった。これに対し、本実施形態に係る構成によれば、停電の発生時に相間コンデンサとメインコンデンサの双方を放電させることが可能となる。
【0072】
図1の構成では、メインコンデンサCINの必要耐圧低減のために必要なスイッチング素子SW1を用いつつ、スイッチング素子SW2を追加するだけで、相間コンデンサCとメインコンデンサCINの放電が可能となる。つまり、それらの放電を簡素な構成で実現することができる。
【0073】
以下、複数の実施例の中で、幾つかの具体的な動作例、応用技術、変形技術等を説明する。本実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の各実施例に適用される。各実施例において、上述の事項と矛盾する事項がある場合には、各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に示す複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0074】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。放電時間tDIS1は固定時間ではなく、第1放電処理の開始後の電圧Vに基づき動的に変化する時間であっても良い。具体的には、以下のようにしても良い。
【0075】
図7に示す如く、電圧V1を所定の終了判定電圧VTH_DIS1と比較するコンパレータ60を半導体装置1に設けておく。コンパレータ60の非反転入力端子には電圧V1が入力され、コンパレータ60の反転入力端子には終了判定電圧VTH_DIS1が入力される。終了判定電圧VTH_DIS1は所定の正の電圧値(基準値)を有する。コンパレータ60は図2のコンパレータ21[3]であっても良く、この場合、終了判定電圧VTH_DIS1は上述の判定電圧VTH[3]に等しい。
【0076】
コンパレータ60は、電圧V1が終了判定電圧VTH_DIS1よりも高いときにハイレベルの信号を出力し、電圧V1が終了判定電圧VTH_DIS1よりも低いときにローレベルの信号を出力する。“V1=VTH_DIS1”であるとき、コンパレータ60の出力信号はハイレベル又はローレベルとなる。コンパレータ60の出力信号は制御ロジック回路150に入力される。
【0077】
第1実施例に係る制御ロジック回路150は、第1放電処理の開始後、コンパレータ60の出力信号を監視し、コンパレータ60の出力信号がハイレベルからローレベルに遷移したこと受けて(即ち電圧Vの分圧値が基準値未満になることを受けて)第1放電処理を終了させる。このため、第1実施例において、放電時間tDIS1は、時刻T3での電圧V等に依存して様々に変化しうることになる。
【0078】
但し、常に“(t+tDIS1)<t”となるよう、即ち第1待機時間tと放電時間tDIS1との和よりも第2待機時間tの方が長くなるよう、コンパレータ60の出力信号に依らず第1放電処理の実行時間(即ち放電時間tDIS1)に上限が設けられていて良い。或いは、時刻T3での電圧Vの如何によらず、常に“(t+tDIS1)<t”となるよう、十分に長い時間を第2待機時間tに設定しておいても良い。何れにせよ、第1放電処理の終了後に第2放電処理が開始される。第2放電処理の開始後の動作は上述した通りである。
【0079】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。第2実施例では、放電機能付きのレギュレータ回路30の内部構成例を示す。図8は、第2実施例に係る電源装置AAの構成図である。第2実施例に係るレギュレータ回路30は、内部レギュレータ31、トランジスタ32及び33、スイッチング素子SW3を備える。
【0080】
トランジスタ32及び33は、Nチャネル型のJFET(接合型電界効果トランジスタ)である。トランジスタ32及び33はノーマリオンの電界効果トランジスタ、即ちゲート-ソース間電圧が0Vであってもドレイン及びソース間が導通状態となるトランジスタである。
【0081】
トランジスタ32のドレインは端子TM1に接続され、トランジスタ32のソースはノードND1に接続される。トランジスタ32のゲート及びバックゲートはグランドに接続される。トランジスタ33のドレインは端子TM2に接続され、トランジスタ33のソースはスイッチング素子SW3の第1端に接続される。トランジスタ33のゲート及びバックゲートはグランドに接続される。スイッチング素子SW3の第2端はノードND1に接続される。制御ロジック回路150によりスイッチング素子SW3のオン、オフが制御される。上述したように、ノードND1はトランジスタSW2のドレインに接続され、トランジスタSW2のソースはグランドに接続される。
【0082】
内部レギュレータ31はノードND1における電圧に基づき内部電源電圧VCCを生成する。内部電源電圧VCCは端子TM5に加わる。スイッチング素子SW3は1以上の任意のトランジスタにより構成されて良い。例えば、Nチャネル型のMOSFETにてスイッチング素子SW3を構成できる。この場合、スイッチング素子SW3としてのMOSFETのドレイン、ソースがスイッチング素子SW3の第1端、第2端として機能し、制御ロジック回路150が当該MOSFETのゲート電位を制御することによりスイッチング素子SW3のオン、オフを制御する。尚、制御回路10の起動前において“VIN>0”となったときに端子TM2の電圧を内部レギュレータ31に与えて内部レギュレータ31に内部電源電圧VCCを生成させるスタータ回路が半導体装置1に設けられていて良い。
【0083】
制御ロジック回路150は第1放電処理の実行期間だけスイッチング素子SW3をオフ状態に設定し、それ以外の期間ではスイッチング素子SW3をオン状態に保つ。このため、図4の例では、時刻T1から時刻T3の直前までスイッチング素子SW3はオンであり、時刻T3及びT4間においてスイッチング素子SW3はオフであり、その後、時刻T6までスイッチング素子SW3はオンである。
【0084】
図9に第1放電処理にて相間コンデンサCが放電される様子を示す。トランジスタ32はノーマリオンのJFETであるため、第1放電処理の実行期間においてスイッチング素子SW2がオンとされると、両波整流回路3、端子TM1、トランジスタ32及びスイッチング素子SW2を経由する第1放電経路で相間コンデンサCが放電される(即ち放電電流IDIS1が流れる)。この際、放電電流IDIS1の増大に伴いノードND1の電位が上昇すると、トランジスタ32は自身のチャネル(ドレイン及びソース間)に流れる電流を減ずるように作用する。このため、第1放電処理において放電電流IDIS1が過大となることが抑制される。
【0085】
図10に第2放電処理にてメインコンデンサCINが放電される様子を示す。上述の説明から明らかなように、第2放電処理の実行期間においてスイッチング素子SW3はオンである。トランジスタ33はノーマリオンのJFETであるため、第2放電処理の実行期間においてスイッチング素子SW1及びSW2がオンとされると、スイッチング素子SW1、端子TM3、端子TM2、トランジスタ33、スイッチング素子SW3及びスイッチング素子SW2を経由する第2放電経路でメインコンデンサCINが放電される(即ち放電電流IDIS2が流れる)。この際、放電電流IDIS2の増大に伴いノードND1の電位が上昇すると、トランジスタ33は自身のチャネル(ドレイン及びソース間)に流れる電流を減ずるように作用する。このため、第2放電処理において放電電流IDIS2が過大となることが抑制される。
【0086】
尚、第1放電処理の開始前と比べて第1放電処理又は第2放電処理の実行期間ではノードND1の電位が低くなり、内部電源電圧VCCの値が規定電圧値よりも低くなることが懸念される。この懸念を払拭すべく、第1放電処理又は第2放電処理の実行期間内に、スイッチング素子SW3をオンとしつつトランジスタSW2をオフとする再充電期間を挿入しても良い。再充電期間においてノードND1の電圧に基づきコンデンサCVCCの充電電圧が上記の規定電圧値まで引き上げられる。
【0087】
或いは、図11に示されるよう整流ダイオード34をレギュレータ回路30に追加しても良い。整流ダイオード34のアノードはノードND1に接続され、整流ダイオード34のカソードは内部レギュレータ31の入力端に接続される。図11の構成において、内部レギュレータ31は整流ダイオード34のカソードにおける電圧に基づき内部電源電圧VCCを生成する。更に或いは、特に図示しないが、内部レギュレータ31を端子TM3に直接接続する構成が採用されても良く、この場合、内部レギュレータ31は端子TM3の電圧に基づき内部電源電圧VCCを生成する。
【0088】
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。第3実施例では、幾つかの変形例又は補足事項等を説明する。
【0089】
任意の信号又は電圧に関して、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係は上述したものの逆とされ得る。
【0090】
各実施形態に示されたFET(電界効果トランジスタ)のチャネルの種類は例示である。上述の主旨を損なわない形で、任意のFETのチャネルの種類はPチャネル型及びNチャネル型間で変更され得る。
【0091】
不都合が生じない限り、上述の任意のトランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述された任意のトランジスタを、不都合が生じない限り、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
【0092】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【0093】
<<付記>>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0094】
本開示の一側面に係る電源用半導体装置(1)は、一対の入力端子(TM及びTM)に加わる交流電圧(VAC)をダイオードブリッジ(2)に供給することで対象配線(WRIN)に全波整流電圧を生じさせる電源装置(AA)に用いられる電源用半導体装置であって、前記一対の入力端子に加わる前記交流電圧を前記ダイオードブリッジと異なる両波整流回路(3)に供給することで得られる整流電圧(V)を受けるよう構成された第1入力端子(TM1)と、前記対象配線に接続されるよう構成された第2入力端子(TM2)と、前記対象配線に対しメインコンデンサ(CIN)を通じて接続されるよう構成された電位制御端子(TM3)と、前記電位制御端子とグランドとの間に設けられた第1スイッチング素子(SW1)と、前記第1入力端子における電圧に基づき、前記一対の入力端子への前記交流電圧の供給が途絶える停電を検出するよう構成された停電検出回路(20)と、前記停電が検出されたときに前記一対の入力端子間に設けられる相間コンデンサ(C)を放電させるための電流及び前記メインコンデンサを放電させるための電流をグランドへと流すよう構成された第2スイッチング素子(SW2)と、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を制御するよう構成された制御回路(10)と、を備え、前記制御回路は、前記一対の入力端子に対する前記交流電圧の供給期間において、前記第1入力端子における電圧と前記電位制御端子における電圧に基づき前記第1スイッチング素子のオン、オフを制御し、前記制御回路は、前記停電が検出されたとき第1放電処理を行ってから第2放電処理を行い、前記第1放電処理において、前記第1スイッチング素子をオフとしつつ前記第2スイッチング素子をオンとすることで前記両波整流回路、前記第1入力端子及び前記第2スイッチング素子を経由し且つグランドを含む第1放電経路(図5参照)で前記相間コンデンサを放電させ、前記第2放電処理において、前記第2スイッチング素子及び前記第1スイッチング素子をオンとすることで前記第1スイッチング素子、前記第2入力端子及び前記第2スイッチング素子を経由し且つグランドを含む第2放電経路(図6参照)で前記メインコンデンサを放電させる構成(第1の構成)である。
【0095】
これにより、停電の発生時に相間コンデンサとメインコンデンサの双方を放電させることが可能となる(それらの放電を簡素な構成で実現することができる)。
【0096】
上記第1の構成に係る電源用半導体装置において、前記停電検出回路は、前記第1入力端子における電圧の変動状態に基づき前記停電の発生有無を検出して、検出結果を示す停電検出信号(SFE)を前記制御回路に出力し、前記停電の検出期間において前記停電検出信号をアサート状態に設定する一方、前記停電の非検出期間において前記停電検出信号をネゲート状態に設定し、前記制御回路は、前記停電検出信号が前記ネゲート状態から前記アサート状態に切り替わった後、前記停電検出信号が前記アサート状態にて維持されたまま所定の待機時間(t)が経過すると前記第1放電処理を開始する構成(第2の構成)であっても良い。
【0097】
これにより、停電の誤検出により相間コンデンサが放電されることが抑制される。
【0098】
上記第2の構成に係る電源用半導体装置において、前記制御回路は、前記第1放電処理を開始すると、前記第1放電処理を所定の放電時間(tDIS1)だけ行い、その後に前記第2放電処理を開始する構成(第3の構成)であっても良い。
【0099】
上記第3の構成に係る電源用半導体装置において、前記待機時間は第1待機時間(t)であり、前記制御回路は、前記第1放電処理を経て前記第2放電処理を行う際、前記停電検出信号が前記ネゲート状態から前記アサート状態に切り替わった後、所定の第2待機時間(t)が経過したときに前記第2放電処理を開始し、前記第2待機時間は、前記第1待機時間と前記第1放電処理における前記放電時間との和よりも長い又は前記和と一致する構成(第4の構成)であっても良い。
【0100】
これにより、相間コンデンサに対する放電処理(第1放電処理)が終了してからメインコンデンサに対する放電処理(第2放電処理)が開始されるというシーケンスが担保される。
【0101】
上記第2の構成に係る電源用半導体装置において(図7参照)、前記制御回路は、前記第1放電処理の開始後、前記第1入力端子における電圧の分圧値が基準値(VTH_DIS1)未満となることを受けて前記第1放電処理を終了させ、その後に前記第2放電処理を開始する構成(第5の構成)であっても良い。
【0102】
これによっても、相間コンデンサに対する放電処理(第1放電処理)が終了してからメインコンデンサに対する放電処理(第2放電処理)が開始されるというシーケンスが担保される。
【0103】
上記第1~第5の構成の何れかに係る電源用半導体装置において、前記制御回路は、前記第2入力端子における電圧に基づき動作し、前記制御回路は、前記第2放電処理の開始後、前記第2入力端子における電圧が所定の下限電圧(VUVLO)以下になると前記第2放電処理を終了させる構成(第6の構成)であっても良い。
【0104】
上記第1~第6の構成の何れかに係る電源用半導体装置において、前記制御回路は、前記第1入力端子における電圧を分圧するよう構成された第1分圧回路(110)と、前記電位制御端子における電圧を分圧するよう構成された第2分圧回路(120)と、前記第1分圧回路の分圧にて得られる第1対比電圧と、前記第2分圧回路の分圧にて得られる第2対比電圧との差に応じた差分信号(SDIF)を生成するよう構成された差動増幅回路(130)と、を備え、前記一対の入力端子に対する前記交流電圧の供給期間において、前記差分信号に応じて前記第1スイッチング素子のオン、オフを制御する構成(第7の構成)であっても良い。
【0105】
これにより、メインコンデンサの両端間電圧を所定電圧(VLIM)以下に抑えることが可能となる。結果、メインコンデンサの必要耐圧を低く抑えることが可能となる。
【0106】
本開示の一側面に係る電源装置は、上記第1~第7の構成の何れかに係る電源用半導体装置と、前記ダイオードブリッジと、前記両波整流回路と、前記相間コンデンサと、前記メインコンデンサと、を備える構成(第8の構成)である。
【0107】
上記第8の構成に係る電源装置において、前記対象配線及び前記電位制御端子に接続され、前記メインコンデンサの両端間電圧を他の電圧に変換するよう構成された電力変換回路を更に備える構成(第9の構成)であっても良い。
【符号の説明】
【0108】
AA 電源装置
1 半導体装置
2 ダイオードブリッジ
3 両波整流回路
4 フィルタ
5 電力変換回路
相間コンデンサ
IN メインコンデンサ
VCC コンデンサ
TM1~TM5 端子
2a~2d、3a、3b、5d 整流ダイオード
5a トランス
5b パワートランジスタ
5c スイッチング制御装置
5e 出力コンデンサ
10 制御回路
20 停電検出回路
21[1]~21[3]、60 コンパレータ
22 判定回路
30 レギュレータ回路
31 内部レギュレータ
32、33 トランジスタ
34 ダイオード
SW1~SW3 スイッチング素子
110、120 分圧回路
130 差動増幅回路
140 シュミットトリガ回路
150 制御ロジック回路
160 ドライブ回路
BF1、BF2 バッファ回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11