IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本製鋼所の特許一覧

特開2024-80462成形条件推定方法、プログラム、推定装置、表示装置及び学習モデルの生成方法
<>
  • 特開-成形条件推定方法、プログラム、推定装置、表示装置及び学習モデルの生成方法 図1
  • 特開-成形条件推定方法、プログラム、推定装置、表示装置及び学習モデルの生成方法 図2
  • 特開-成形条件推定方法、プログラム、推定装置、表示装置及び学習モデルの生成方法 図3
  • 特開-成形条件推定方法、プログラム、推定装置、表示装置及び学習モデルの生成方法 図4
  • 特開-成形条件推定方法、プログラム、推定装置、表示装置及び学習モデルの生成方法 図5
  • 特開-成形条件推定方法、プログラム、推定装置、表示装置及び学習モデルの生成方法 図6
  • 特開-成形条件推定方法、プログラム、推定装置、表示装置及び学習モデルの生成方法 図7
  • 特開-成形条件推定方法、プログラム、推定装置、表示装置及び学習モデルの生成方法 図8
  • 特開-成形条件推定方法、プログラム、推定装置、表示装置及び学習モデルの生成方法 図9
  • 特開-成形条件推定方法、プログラム、推定装置、表示装置及び学習モデルの生成方法 図10
  • 特開-成形条件推定方法、プログラム、推定装置、表示装置及び学習モデルの生成方法 図11
  • 特開-成形条件推定方法、プログラム、推定装置、表示装置及び学習モデルの生成方法 図12
  • 特開-成形条件推定方法、プログラム、推定装置、表示装置及び学習モデルの生成方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080462
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】成形条件推定方法、プログラム、推定装置、表示装置及び学習モデルの生成方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/92 20190101AFI20240606BHJP
   B29C 48/88 20190101ALI20240606BHJP
   B29C 55/14 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
B29C48/92
B29C48/88
B29C55/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193669
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】横溝 和哉
(72)【発明者】
【氏名】石黒 亮
(72)【発明者】
【氏名】木村 公一
【テーマコード(参考)】
4F207
4F210
【Fターム(参考)】
4F207AG01
4F207AJ08
4F207AM23
4F207AP05
4F207AR06
4F207AR08
4F207AR12
4F207AR14
4F207KA01
4F207KA17
4F207KM06
4F207KM15
4F207KM16
4F210AG01
4F210AM23
4F210AP01
4F210AP05
4F210AR06
4F210AR07
4F210AR08
4F210AR11
4F210AR12
4F210AR14
4F210QA02
4F210QA03
4F210QC06
4F210QD25
4F210QG01
4F210QG18
4F210QL16
4F210QM15
(57)【要約】
【課題】成形条件を好適に推定することができる成形条件推定方法等を提供する。
【解決手段】成形条件推定方法は、フィルム成形機により成形するフィルムに要求されるフィルム温度を取得し、押出し成形を行うフィルム成形機又は前記フィルム成形機により成形されるフィルムの状態を示す、検出装置により検出した成形中の成形情報及び該成形情報から予測されたフィルム温度に基づいて構築された、フィルム温度に対する成形条件を推定する推定モデルを用いて、取得した前記フィルム温度を満たす成形条件を推定する処理をコンピュータが実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム成形機により成形するフィルムに要求されるフィルム温度を取得し、
押出し成形を行うフィルム成形機又は前記フィルム成形機により成形されるフィルムの状態を示す、検出装置により検出した成形中の成形情報及び該成形情報から予測されたフィルム温度に基づいて構築された、フィルム温度に対する成形条件を推定する推定モデルを用いて、取得した前記フィルム温度を満たす成形条件を推定する
処理をコンピュータが実行する成形条件推定方法。
【請求項2】
フィルム温度を入力した場合に成形条件を出力するよう学習された前記推定モデルに取得した前記フィルム温度を入力することにより、前記成形条件を推定する
請求項1に記載の成形条件推定方法。
【請求項3】
成形情報に基づきフィルム温度を予測する温度予測モデルを用いて、成形情報に応じたフィルム温度を予測する
請求項1又は請求項2に記載の成形条件推定方法。
【請求項4】
キャスト工程、MD延伸工程又はTD延伸工程における前記フィルム温度を満たす前記成形条件を推定する
請求項1又は請求項2に記載の成形条件推定方法。
【請求項5】
キャスト工程におけるフィルム速度、吐出量、フィルム温度、フィルムの位置座標、ロールの位置座標、及びロール温度の少なくとも1つを含む前記成形条件を推定する
請求項1又は請求項2に記載の成形条件推定方法。
【請求項6】
MD延伸工程におけるフィルム速度、吐出量、ロールの位置座標、及びロール温度の少なくとも1つを含む前記成形条件を推定する
請求項1又は請求項2に記載の成形条件推定方法。
【請求項7】
TD延伸工程におけるフィルム速度、吐出量、エアーの温度、及びエアーの速度の少なくとも1つを含む前記成形条件を推定する
請求項1又は請求項2に記載の成形条件推定方法。
【請求項8】
フィルム成形機により成形するフィルムに要求されるフィルム温度を取得し、
押出し成形を行うフィルム成形機又は前記フィルム成形機により成形されるフィルムの状態を示す、検出装置により検出した成形中の成形情報及び該成形情報から予測されたフィルム温度に基づいて構築された、フィルム温度に対する成形条件を推定する推定モデルを用いて、取得した前記フィルム温度を満たす成形情条件を推定する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項9】
フィルム成形機により成形するフィルムに要求されるフィルム温度を取得する取得部と、
押出し成形を行うフィルム成形機又は前記フィルム成形機により成形されるフィルムの状態を示す、検出装置により検出した成形中の成形情報及び該成形情報から予測されたフィルム温度に基づいて構築された、フィルム温度に対する成形条件を推定する推定モデルを用いて、取得部で取得した前記フィルム温度を満たす成形条件を推定する推定部と
を備える推定装置。
【請求項10】
フィルム成形機により成形するフィルムに要求されるフィルム温度を取得する取得部と、
押出し成形を行うフィルム成形機又は前記フィルム成形機により成形されるフィルムの状態を示す、検出装置により検出した成形中の成形情報及び該成形情報から予測されたフィルム温度に基づいて構築された、フィルム温度に対する成形条件を推定する推定モデルを用いて、取得部で取得した前記フィルム温度を満たす成形条件を推定する推定部と、
推定した成形条件に関する情報を表示する表示部と
を備える表示装置。
【請求項11】
押出し成形を行うフィルム成形機又は前記フィルム成形機により成形されるフィルムの状態を示す、検出装置により検出した成形中の成形情報と、前記成形情報から予測されたフィルム温度とを含む訓練データを取得し、
取得した前記訓練データに基づき、フィルム温度を入力した場合に成形条件を出力するよう学習された学習モデルを生成する
学習モデルの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形条件推定方法、プログラム、推定装置、表示装置及び学習モデルの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイスの吐出口から押し出された溶融樹脂を固化させてフィルムを成形するフィルム成形機が知られている。フィルム成形機では、成形するフィルムが要求される仕様を満たすよう、条件出し作業を行って各種成形条件項目の設定値を調整し、成形条件を求める必要がある。これらの成形条件の調整はオペレータの経験に基づいて行われており、適切な成形条件を得るためには、試行錯誤を繰り返す必要がある。そこで、オペレータによる成形条件の設定作業を支援する技術が提案されている
【0003】
例えば、特許文献1には、強化学習によって学習する機械学習器により、射出成形機の成形条件を適切に調整することができる射出成形機システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-166702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
成形条件の調整に用いる学習モデルに関し、成形中の成形情報を考慮することについて、未だ十分な検討が行われていない。
【0006】
本開示の目的は、成形条件を好適に推定することができる成形条件推定方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る成形条件推定方法は、フィルム成形機により成形するフィルムに要求されるフィルム温度を取得し、押出し成形を行うフィルム成形機又は前記フィルム成形機により成形されるフィルムの状態を示す、検出装置により検出した成形中の成形情報及び該成形情報から予測されたフィルム温度に基づいて構築された、フィルム温度に対する成形条件を推定する推定モデルを用いて、取得した前記フィルム温度を満たす成形条件を推定する処理をコンピュータが実行する。
【0008】
本開示の一態様に係るプログラムは、フィルム成形機により成形するフィルムに要求されるフィルム温度を取得し、押出し成形を行うフィルム成形機又は前記フィルム成形機により成形されるフィルムの状態を示す、検出装置により検出した成形中の成形情報及び該成形情報から予測されたフィルム温度に基づいて構築された、フィルム温度に対する成形条件を推定する推定モデルを用いて、取得した前記フィルム温度を満たす成形条件を推定する処理をコンピュータに実行させる。
【0009】
本開示の一態様に係る推定装置は、フィルム成形機により成形するフィルムに要求されるフィルム温度を取得する取得部と、押出し成形を行うフィルム成形機又は前記フィルム成形機により成形されるフィルムの状態を示す、検出装置により検出した成形中の成形情報及び該成形情報から予測されたフィルム温度に基づいて構築された、フィルム温度に対する成形条件を推定する推定モデルを用いて、取得部で取得した前記フィルム温度を満たす成形条件を推定する推定部とを備える。
【0010】
本開示の一態様に係る表示装置は、フィルム成形機により成形するフィルムに要求されるフィルム温度を取得する取得部と、押出し成形を行うフィルム成形機又は前記フィルム成形機により成形されるフィルムの状態を示す、検出装置により検出した成形中の成形情報及び該成形情報から予測されたフィルム温度に基づいて構築された、フィルム温度に対する成形条件を推定する推定モデルを用いて、取得部で取得した前記フィルム温度を満たす成形条件を推定する推定部と、推定した成形情報に関する情報を表示する表示部とを備える。
【0011】
本開示の一態様に係る学習モデルの生成方法は、押出し成形を行うフィルム成形機又は前記フィルム成形機により成形されるフィルムの状態を示す、検出装置により検出した成形中の成形情報と、前記成形情報から予測されたフィルム温度とを含む訓練データを取得し、取得した前記訓練データに基づき、フィルム温度を入力した場合に成形条件を出力するよう学習された学習モデルを生成する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、成形条件を好適に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態の成形機システムの概要図である。
図2】データ収集装置の構成例を示すブロック図である。
図3】情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
図4】温度予測モデルの予測方法を説明する説明図である。
図5】温度予測モデルの成形情報の設定画面の例を示す模式図である。
図6】温度予測モデルの成形情報の設定画面の例を示す模式図である。
図7】温度予測モデルの成形情報の設定画面の例を示す模式図である。
図8】温度予測モデルの予測結果を示す画面の一例を示す模式図である。
図9】情報処理装置が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10】第2実施形態の情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
図11】推定モデルの概要を示す説明図である。
図12】推定モデルの生成処理手順の一例を示すフローチャートである。
図13】成形条件の推定処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の成形機システム100の概要図である。成形機システム100は、フィルム成形機(以下、単に成形機と記載する)1、複数の検出装置2、データ収集装置3、情報処理装置4、及び表示装置5を備える。
【0016】
<成形機1>
成形機1は、押出機11、キャスト装置12、MD延伸装置13、TD延伸装置14、巻取機15、及び制御装置16を備える。
【0017】
押出機11は、例えば単軸押出機又は二軸押出機等であり、樹脂原料が投入されるホッパ111を有するシリンダ112と、スクリュ113と、ダイス114とを備える。スクリュ113は、シリンダ112の孔内に回転可能に挿入されており、ホッパ111に投入された樹脂原料を押出方向(図1中の右方向)へ搬送し、溶融及び混練する。押出機11は、溶融した樹脂原料をダイス114の先端の狭い隙間から膜状に押し出す。
【0018】
キャスト装置12は、ダイス114から押し出された高温の溶融物を冷却及び成形するための複数のキャストロール121を備える。複数のキャストロール121は、第1ロール1211及び第2ロール1212を含む。第1ロール1211は、例えば溶融物を冷却する図示しない温度調整部を有する金属ロールであり、ダイス114の下方に軸支されている。第1ロール1211は、ダイス114から押し出された膜状の溶融物を第2ロール1212との間に挟持し、第2ロール1212と共に膜状の溶融物を短時間で冷却しながらフィルム(シート)状に成形する。キャスト装置12は、フィルム厚みを所定の範囲内に制御する。これにより、未延伸のフィルムが得られる。第1ロール1211の温度調整方法としては、特に限定されるものではないが、例えば空気、水、オイル等の熱媒体による方法、あるいは電気ヒータや誘電加熱等の方法が挙げられる。図1に示す例では、複数のキャストロール121はさらに、溶融物を冷却又は搬送するためのロールを含む。
【0019】
MD延伸装置13は、複数のテンションロール131を備え、キャスト装置12から搬送された未延伸のフィルムをテンションロール131間に挿通させ、縦方向(フィルム送り方向:MD)に延伸する。複数のテンションロール131は、フィルムを加熱する温度調整部を有する加熱ロール1311と、フィルムを冷却する温度調整部を有する冷却ロール1312とを含む。テンションロール131の温度調整方法としては、上述のキャストロール121と同様の方法が挙げられる。フィルムは、加熱ロール1311に接触しながら延伸可能な所定温度の範囲内まで加熱され、その後、各冷却ロール1312の回転速度差を利用して縦方向に延伸される。フィルムは、例えば1本目の冷却ロール1312を開始ロールとして第1延伸され、さらに2本目の冷却ロール1312を開始ロールとして第2延伸される。MD方向の延伸倍率は、テンションロール131の速度比で調節することができる。なお図1は単なる例示であり、テンションロール131の本数は図1に示す例に限らない。
【0020】
TD延伸装置14は、MD延伸装置13で縦延伸されたフィルムを幅方向(フィルム幅方向:TD)に横延伸する。TD延伸装置14は、例えばクリップテンター、ピンテンター等のテンター延伸装置であり、図示しない温風吹出し装置等の加熱装置を有し、フィルムを延伸可能な所定温度の範囲内に加熱して、横延伸する。TD延伸装置14は、図示しないレール及びチェーンを含む走行機構と、チェーンに連続的に取り付けられた複数のクリップとを有する。レールは、フィルム送り方向(MD)の下流方向に向かって幅方向(TD)に広がるように配置される。
【0021】
クリップは、TD延伸装置14の入口でフィルムの端を把持し、レールに案内されてレール上を走行することでフィルムをフィルム送り方向(MD)に搬送し、TD延伸装置14の出口でフィルムを解放する。クリップによって両端を把持されたフィルムは、フィルム送り方向の下流方向に向かって温風吹出し装置を通過する。走行機構の上側及び下側に設けられた温風吹出し装置により、フィルムの両面に加熱されたエアーが吹き付けられ、フィルムが幅方向に延伸される。TD方向の延伸倍率は、エアーの量により調節することができる。幅方向に延伸されたフィルムは、巻取機15によって巻き取られる。
【0022】
本明細書において、キャスト工程とは、成形機1により行われる成形工程のうちのキャスト装置12により行われる工程を意味する。MD延伸工程とは、成形機1により行われる成形工程のうちのMD延伸装置13により行われる工程を意味する。TD延伸工程とは、成形機1により行われる成形工程のうちのTD延伸装置14により行われる工程を意味する。
【0023】
制御装置16は、成形機1の運転制御を行うコンピュータであり、図示しないCPU(Central Processing Unit)等の制御部、データ収集装置3との間で情報を送受信する送受信部、及び表示部を備える。制御装置16は、成形機1の運転状態を示す運転データをデータ収集装置3へ送信する。
【0024】
<検出装置2>
検出装置2は、成形機1及び当該成形機1により成形されるフィルム(樹脂)の状態を検出するセンサである。検出装置2は、データ収集装置3に接続されており、検出して得た計測データを直接又は間接的にデータ収集装置3へ出力する。計測データは、検出された成形機1及び当該成形機1により成形されるフィルムの状態を示す時系列のセンサ値のデータである。計測データは、成形機1及びフィルムの状態の少なくとも一方のデータであってもよい。検出装置2は、成形機1の運転制御に必要なものとして予め成形機1に備え付けられてもよく、後付けで設置されてもよい。
【0025】
検出装置2により検出する計測データとしては、例えば温度、長さ、厚み、画像、重さ、流量、位置、速度、加速度、電流、電圧、圧力、時間、トルク、力、歪、消費電力等が挙げられる。これらの計測データは、温度計、赤外線センサ、測長センサ、レーザセンサ、X線センサ、カメラ、重量計、流量計、位置センサ、速度センサ、加速度センサ、電流計、電圧計、圧力計、タイマ、トルクセンサ、電力計等を用いて測定することができる。
【0026】
検出装置2は、例えば、キャスト装置12における計測データを検出する第1センサ21と、MD延伸装置13における計測データを検出する第2センサ22と、TD延伸装置14における計測データを検出する第3センサ23とを含む。
【0027】
第1センサ21は、例えば、フィルムの幅を検出するレーザセンサ、フィルムの厚みを検出するレーザセンサ、フィルムの温度を検出する接触型の温度計又は非接触型のサーモグラフィカメラ、キャストロール121の温度を検出する接触型の温度計又は非接触型のサーモグラフィカメラ、キャストロール121の温度調整部における熱媒体の温度を検出する接触型の温度計又は非接触型のサーモグラフィカメラ、上記熱媒体の流量を検出する流量計等を含む。
【0028】
第2センサ22は、例えば、フィルムの幅を検出するレーザセンサ、フィルムの厚みを検出するレーザセンサ、フィルムの温度を検出する接触型の温度計又は非接触型のサーモグラフィカメラ、テンションロール131の温度を検出する接触型の温度計又は非接触型のサーモグラフィカメラ、テンションロール131の温度調整部における熱媒体の温度を検出する接触型の温度計又は非接触型のサーモグラフィカメラ、上記熱媒体の流量を検出する流量計等を含む。
【0029】
第3センサ23は、例えば、フィルムの幅を検出するレーザセンサ、フィルムの厚みを検出するレーザセンサ、フィルムの温度を検出する接触型の温度計又は非接触型のサーモグラフィカメラ、温風吹出し装置から吹き出されるエアーの温度を検出する接触型の温度計又は非接触型のサーモグラフィカメラ、上記エアーの速度を検出する速度計、温風吹出し装置のファン回転数を検出する回転計等を含む。
【0030】
検出装置2は、成形機1における所望の通過位置を通過する際の計測データを検出するよう、成形機1の適宜の場所に設けられる。なお、検出装置2により検出される計測データは、検出装置2により直接的に検出されるセンサ値のデータに限らず、当該センサ値から間接的に算出される算出値のデータを含んでもよい。
【0031】
検出装置2により検出する計測データとしては、例えば、フィルム幅、フィルム厚み、フィルム初期温度、キャストロール121の温度、キャストロール121とフィルムとの間の熱伝達率、テンションロール131の温度、テンションロール131とフィルムとの間の熱伝達率、温風吹出し装置から吹き出されるエアーの温度、温風吹出し装置から吹き出されるエアーの速度等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
上記熱伝達率は算出値の一例であり、キャストロール121又はテンションロール131の温度調整部における熱媒体(例えば水)の温度及び流量に基づき算出することができる。同様に、エアーの速度は、温風吹出し装置のファン回転数に基づき算出することができる。
【0033】
<データ収集装置3>
図2は、データ収集装置3の構成例を示すブロック図である。データ収集装置3は、コンピュータであり、制御部31、記憶部32、通信部33及びデータ入力部34を備え、記憶部32、通信部33及びデータ入力部34は制御部31に接続されている。データ収集装置3は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)である。
【0034】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の演算処理回路、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の内部記憶装置等を備える。制御部31は、後述の記憶部32が記憶する制御プログラムを実行することにより、成形情報を収集し、情報処理装置4へ送信する処理を実行する。なお、データ収集装置3の各機能部は、ソフトウェア的に実現してもよく、ハードウェア的に実現してもよく、それらの組合せによって実現してもよい。
【0035】
記憶部32は、ハードディスク、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを備える。記憶部32は、成形情報の収集処理をコンピュータに実施させるための制御プログラムを記憶している。
【0036】
通信部33は、LAN、インターネット等の通信ネットワークを介して外部装置と通信するための通信モジュールを備える。制御部31は、通信部33を介して制御装置16及び情報処理装置4との間で各種情報を送受信することができる。制御部31は、通信部33を介して成形機1の運転データを取得する。
【0037】
データ入力部34は、検出装置2から出力された信号が入力する入力インタフェースである。データ入力部34には検出装置2が接続されている。制御部31は、データ入力部34を介して検出装置2から出力された計測データを随時取得する。なおデータ収集装置3は、制御装置16及び通信部33を介して計測データを取得してもよい。
【0038】
<情報処理装置4>
図3は、情報処理装置4の構成例を示すブロック図である。情報処理装置4は、計測データを含む成形情報に基づきフィルムの温度(フィルム温度)を予測する予測装置に対応する。
【0039】
情報処理装置4は、コンピュータであり、制御部41、記憶部42、通信部43、表示部44及び操作部45を備える。記憶部42、通信部43、表示部44、及び操作部45は制御部41に接続されている。情報処理装置4は、ネットワークに接続されたサーバ装置であってもよい。情報処理装置4は、成形機1が設置される工場内に設けられたローカルマシンとすることで、工場内で予測処理を実行することができ好適である。情報処理装置4は、複数台のコンピュータで構成し分散処理する構成でもよいし、1台のサーバ内に設けられた複数の仮想マシンによって実現されていてもよいし、クラウドサーバを用いて実現されていてもよい。
【0040】
制御部41は、CPU、マルチコアCPU、ASIC、FPGA等の演算処理回路、ROM、RAM等の内部記憶装置、I/O端子等を有する。制御部41は、後述の記憶部42が記憶するプログラム4Pを実行することにより、本実施形態に係る情報処理装置4として機能する。なお、情報処理装置4の各機能部は、ソフトウェア的に実現してもよく、ハードウェア的に実現してもよく、それらの組合せによって実現してもよい。
【0041】
記憶部42は、例えばハードディスク、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性メモリを備える。記憶部42は、情報処理装置4に接続された外部記憶装置であってもよい。記憶部42は、制御部41が参照する各種プログラム及びデータを記憶する。本実施形態の記憶部42は、フィルム温度の予測に関する処理をコンピュータに実行させるためのプログラム4Pと、このプログラム4Pの実行に必要な温度予測モデル421とを記憶している。
【0042】
プログラム4Pを含むプログラム(プログラム製品)は、当該プログラムを読み取り可能に記録した非一時的な記録媒体4Aにより提供されてもよい。記憶部42は、不図示の読出装置によって記録媒体4Aから読み出されたプログラムを記憶する。記録媒体4Aは、例えば磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等である。また、通信ネットワークに接続されている外部サーバからプログラムをダウンロードし、記憶部42に記憶させてもよい。プログラム4Pは、単一のコンピュータプログラムでも複数のコンピュータプログラムにより構成されるものでもよく、また、単一のコンピュータ上で実行されても通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されてもよい。
【0043】
通信部43は、LAN、インターネット等のネットワークを介して外部装置と通信するための通信モジュールを備える。制御部41は、通信部43を介してデータ収集装置3との間で各種情報を送受信することができる。
【0044】
表示部44は、例えば液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイ装置を備える。表示部44は、制御部41からの指示に従って、予測したフィルム温度に関する情報を含む各種の情報を表示する。
【0045】
操作部45は、ユーザの操作を受け付けるインタフェースである。操作部45は、例えばディスプレイ内蔵のタッチパネルデバイス、キーボード、マウス、スピーカ及びマイクロフォン等を備える。操作部45は、ユーザからの操作入力を受け付け、操作内容に応じた制御信号を制御部41へ送出する。なお表示部44及び操作部45は省略してもよい。
【0046】
情報処理装置4とデータ収集装置3とは別個の装置に限られず、例えば情報処理装置4をデータ収集装置3に統合してもよい。また、制御装置16が情報処理装置4として機能してもよい。
【0047】
<表示装置5>
表示装置5は、成形情報に基づきフィルムの温度を予測し、予測したフィルム温度に関する情報を表示する。表示装置5は、情報処理装置4と同様のハードウェア構成であり、詳細な図示及び説明を省略するが、コンピュータであり、制御部、記憶部、通信部、表示部及び操作部等を備える。記憶部は不揮発性メモリを備え、フィルム温度の予測及び表示処理をコンピュータに実施させるための制御プログラムを含む各種プログラム並びにデータを記憶している。表示装置5は、可搬型であってもよい。なお、情報処理装置4を表示装置5として機能させてもよい。
【0048】
<フィルム温度の予測方法>
本実施形態の情報処理装置4は、フィルム成形において、成形中に取得される計測データに基づいて、キャスト工程、MD延伸工程及びTD延伸工程それぞれに関し、成形中にフィルム温度の予測値を求める。すなわち情報処理装置4は、成形機1の運転中にフィルム温度を予測する。
【0049】
フィルム温度は、特定の予測点について予測されてもよいが、例えばフィルム温度の変化を予測されることが好ましい。フィルム温度の変化は、例えば、時間変化、位置変化、工程変化等を含む。各工程の開始位置を通過したフィルムは、工程の進行に伴い流れ方向に移動し、搬送時間及び搬送量(位置の変化量)が増大する。時間変化は、開始位置を通過する開始時点からの搬送時間の経過によるフィルム温度の変化である。位置変化は、開始位置からの搬送量の変化によるフィルム温度の変化である。工程変化は、工程の進行度によるフィルム温度の変化である。本実施形態では、フィルム温度の時間変化を予測するものとする。
【0050】
情報処理装置4は、計測データを含む成形情報に基づきフィルム温度を予測する温度予測モデル421を用いてフィルム温度を予測する。温度予測モデル421は、設定された成形情報の計算条件に応じたフィルム温度をシミュレーションにより予想することができるモデルである。温度予測モデル421は、例えばCAE(Computer Aided Engineering)解析ソフトウェアであってもよい。
【0051】
図4は、温度予測モデル421の予測方法を説明する説明図である。図4の上側に示すように、温度予測モデル421は、成形機1内の流路を二次元の平板流れへと展開し、平板間の流路を要素分割することで、要素間での流入と流出の伝熱量及び発熱量のエネルギーバランスを計算する。温度予測モデル421は、各工程の初期のフィルム位置を搬送開始位置とし、搬送方向に沿って、エネルギーバランスを各要素内で逐次演算することにより、各要素位置のフィルム温度を予測する。
【0052】
図4の下側にi番目の要素を示す。i番目の要素内において、フィルム温度の変化に伴う発熱量は、i番目の要素の上下左右4方向からの熱移動量の総和に等しいことから、i番目の要素内のエネルギーバランスは下記(1)式で表すことができる。
ΔTi(ρ×Cp×D×W×vΔt)=-h1(Ti-Ta1)-h2(Ti-Ta2)-h3(Ti-Ta3)-h4(Ti-Ta4)…(1)
【0053】
ここで、Tiはi番目の要素におけるフィルム温度、ΔTiはフィルム温度の変化量、ρはフィルム樹脂の密度、Cpはフィルム樹脂の比熱、Dはフィルムの厚み、Wはフィルムの幅、vはフィルムの速度、Δtは経過時間、h1は要素左面側の熱伝達率、Ta1は要素左面と接する物質の温度、h2は要素右面側の熱伝達率、Ta2は要素右面と接する物質の温度、h3は要素下面側の熱伝達率、Ta3は要素下面と接する物質の温度、h4は要素上面側の熱伝達率、Ta4は要素上面と接する物質の温度である。
【0054】
各要素はさらに、フィルムの厚み方向に分割されてもよい。例えば各要素を厚み方向に等間隔に3分割して解析することで、フィルムの表面、中央及び裏面の3種類のフィルム温度を予測してもよい。
【0055】
温度予測モデルでは、成形情報に基づいて所定の通過位置の搬送時間を算出し、フィルム温度と搬送時間とを対応付けることにより、フィルム温度の時間変化が求められる。温度予測モデル421は、上述の解析手法を用いるものに限らず、成形情報に応じてフィルム温度を予測可能であればよい。
【0056】
情報処理装置4は、検出装置2により検出された計測データを取得し、取得した計測データを温度予測モデル421への入力として与える。
【0057】
温度予測モデル421への入力となる成形情報はまた、成形機1の運転データを含んでもよい。成形情報に含まれる運転データとしては、例えば、フィルム速度、フィルムの吐出量、フィルムの開始位置座標、フィルムの終了位置座標、キャストロール121の位置座標、テンションロール131の位置座標、延伸倍率、延伸角度等が挙げられる。運転データはまた、成形機1の設計に応じて、又は、計測データ及び他の運転データに応じて決定される各種設定データを含んでもよい。なお運転データは、制御装置16による制御値を取得してもよいが、検出装置2により検出した実際の運転状況のセンサ値を取得してもよい。すなわち、上述した運転データの例は、計測データに含まれ得る。
【0058】
温度予測モデル421への入力となる成形情報はさらに、樹脂物性を含んでもよい。樹脂物性としては、例えば樹脂の熱伝導率、比熱、密度等が挙げられる。樹脂物性は、例えばユーザからの入力を受け付けることにより取得してもよく、物性情報を記憶する所定の物性データベースを通じて取得してもよい。
【0059】
図5図7は、温度予測モデル421の成形情報の設定画面440の例を示す模式図である。設定画面440は、温度予測モデル421へ入力する成形情報の計算条件を設定する画面である。図5図7を用いて、各工程の温度予測に用いる成形情報を具体的に説明する。
【0060】
図5は、キャスト工程の温度予測に関する成形情報の設定画面の例を示す。図5に示すように、キャスト工程のフィルム温度の予測に用いる成形情報は、例えば、フィルム速度、フィルムの吐出量、フィルムの開始XY座標(ダイス114の出口XY座標)、フィルムの終了XY座標、及び各キャストロール121のXY座標等に係る運転データを含む。成形情報はまた、フィルム幅、フィルム厚み、フィルム初期温度(開始位置の近傍における温度)、各キャストロール121の温度、及び各キャストロール121とフィルムとの間の熱伝達率等に係る計測データを含む。
【0061】
成形情報はさらに、エアー搬送を行う場合のエアー温度、エアーの熱伝達率、各キャストロール121のロール径、次のキャストロール121への抱き状態、反ロール面の雰囲気温度、反ロール面の熱伝達率等に係る設定データと、樹脂物性とを含んでもよい。本明細書において、ロール面とはフィルムにおけるロールと接触する方の面を意味し、反ロール面とはフィルムにおける上記ロール面と反対側の面を意味する。
【0062】
図5中において、機器構成を示す図に含まれる黒丸は所定の通過位置であり、丸印の数字の順に通過位置を通ってフィルムが搬送される。丸印の数字には、開始位置から通過位置までの搬送量(位置の変化量)及び通過位置を通過するまでに経過する搬送時間が対応付けて表示されている。
【0063】
図6は、MD延伸工程の温度予測に関する成形情報の設定画面の例を示す。MD延伸工程のフィルム温度の予測に用いる成形情報は、例えば、初期のフィルム速度(開始位置の近傍における速度)、フィルムの吐出量、第1延伸の延伸倍率、第1延伸後のフィルム速度、第2延伸の延伸倍率、第2延伸後のフィルム速度、及び各テンションロール131のXY座標等に係る運転データを含む。成形情報はまた、フィルム幅、MD延伸前のフィルム厚み、フィルム初期温度(開始位置の近傍における温度)、MD延伸後のフィルム厚み、各テンションロール131の温度、及び各テンションロール131とフィルムとの間の熱伝達率等に係る計測データを含む。
【0064】
成形情報はさらに、エアー搬送を行う場合のエアー温度、エアーの熱伝達率、第1延伸及び第2延伸を開始するテンションロール131の識別情報、各テンションロール131のロール径、次のテンションロール131への抱き状態、反ロール面の雰囲気温度、反ロール面の熱伝達率、各テンションロール131の温度調整部の種類等に係る設定データと、樹脂物性とを含んでもよい。
【0065】
図7は、TD延伸工程の温度予測に関する成形情報の設定画面の例を示す。TD延伸工程のフィルム温度の予測に用いる成形情報は、例えば、フィルム速度(ライン速度)、フィルムの吐出量、延伸角度、及び延伸倍率等に係る運転データを含む。成形情報はまた、フィルム幅、TD延伸前のフィルム厚み、フィルム初期温度、TD延伸後のフィルム厚み、温風吹出し装置から吹き出されるエアーの温度、上記エアーの速度等に係る計測データを含む。エアーの温度及び速度は、フィルムの上側における温度及び速度と、フィルムの下側における温度及び速度とを含む。エアーの温度及び速度は、TD延伸工程におけるフィルムの全搬送区間をフィルム送り方向に所定間隔毎に区分した場合における、各区間それぞれについて検出されてよい。
【0066】
成形情報はさらに、TD延伸後のフィルム幅、延伸距離、区間数、区間距離、通過時間、合計通過時間、フィルム上側及び下側の熱伝達率等に係る設定データと、樹脂物性とを含んでもよい。
【0067】
なお、フィルム速度、フィルム幅及びフィルム厚みからフィルムの吐出量を決定することができるため、上記4項目のうちの3項目のみを必要入力項目とする構成であってよい。また、第1延伸後のフィルム速度の運転データの取得に代えて、初期のフィルム速度及び第1延伸の延伸倍率から第1延伸後のフィルム速度を算出してもよい。第2延伸後のフィルム速度も同様である。MD延伸後のフィルム厚みの計測データの取得に代えて、初期のフィルム速度、第1延伸の延伸倍率及び第2延伸の延伸倍率からMD延伸後のフィルム厚みを算出してもよい。TD延伸後のフィルム厚みも同様に、フィルム速度及び延伸倍率から算出してもよい。
【0068】
情報処理装置4は、データ収集装置3を通じて成形中のセンサ値を取得した場合、設定画面440において、取得したセンサ値又はそれらセンサ値から得られる算出値を計測データ項目の各入力欄に自動で入力する。情報処理装置4はまた、成形に用いられる樹脂の樹脂物性を樹脂物性項目の各入力欄に入力するとともに、制御装置16により取得された運転データ及び成形機1の設定データを運転データ項目の各入力欄に入力する。情報処理装置4は、設定画面440を介することなく、直接的に成形情報を温度予測モデル421へ入力してもよい。温度予測モデル421では、設定画面440を通して入力された成形情報の計算条件に基づき、フィルム温度を予測する。
【0069】
図8は、温度予測モデル421の予測結果を示す画面441の一例を示す模式図である。図8は、キャスト工程のフィルム温度の予測結果を示す画面441の例を示す。温度予測モデル421は、搬送時間に応じたフィルム温度の予測値を出力する。予測結果を示す画面441は、縦軸をフィルム温度、横軸を搬送時間とするグラフを含み、フィルム温度の予測結果を時系列的に表示する。
【0070】
情報処理装置4は、温度予測モデル421の予測結果に基づき、フィルムの表面、中央及び裏面それぞれに対するフィルム温度を時系列的に表示するグラフを生成する。なお温度予測モデル421は、表面、中央及び裏面のうちのいずれか1つのフィルム温度を予測するものであってもよい。情報処理装置4は、生成したグラフを含む画面を、表示部44を通じて表示する。なお、温度予測モデル421の予測結果は、キャスト工程の開始位置からの搬送量(位置変化)に対するフィルム温度の予測値であってもよい。なお、図5の設定画面440及び図6の予測結果を示す画面441は、一つの画面内に並べて表示される等、表示部44において同時に表示される構成であってよい。
【0071】
MD延伸工程の場合、温度予測モデル421は、MD延伸工程におけるフィルムのロール面、中央、及び反ロール面それぞれに対するフィルム温度の時間変化を予測する。TD延伸工程の場合、温度予測モデル421は、TD延伸工程におけるフィルムの表面、中央、及び裏面それぞれに対するフィルム温度の時間変化を予測する。
【0072】
情報処理装置4は、各工程が終了すると、成形中に取得した成形情報の実測値を用いてフィルム温度をリアルタイムで予測する。情報処理装置4は、各工程の途中でフィルム温度を予測してもよい。工程途中に予測を行う場合、情報処理装置4は、設定すべき成形情報のうち、成形中の実測値を取得済みの成形情報については成形中の実測値を使用し、成形中の実測値を未取得の成形情報については推定値又は過去の実測値等を参考値として使用してもよい。情報処理装置4は、温度予測モデル421の予測結果を随時表示部44へ表示させる。ユーザは、成形機1の運転中に、実際の成形情報に応じたフィルム温度の予測値を把握することができる。
【0073】
図5図7に示した設定画面440は、温度予測モデル421への入力とする成形情報項目を選択可能に構成されていてもよい。情報処理装置4は、設定画面440を利用して、ユーザの操作部45の操作による各成形情報の入力要否の指定を受け付ける。情報処理装置4は、入力必要と指定された成形情報の実測値のみを温度予測モデル421への入力として用いることにより、フィルム温度を予測する。入力不要と指定された成形情報については、例えば参考値を用いてもよく、入力不要と指定された成形情報を使用せずフィルム温度を予測してもよい。上記構成によれば、実際の成形状況を反映すべきデータをユーザにより選択することができ、温度予測におけるカスタマイズ性が向上される。
【0074】
情報処理装置4は、得られたフィルム温度の予測値に基づき、成形条件の提案に関する提案情報を生成してもよい。提案情報は、例えば予測されたフィルム温度を上げる又は下げるために調整すべき成形情報の種類、成形情報の推奨値等を含む。情報処理装置4は、例えば過去の成形実績から得られる成形情報とフィルム温度との対応関係を予め記憶しておき、当該対応関係に基づいて、提案情報を特定することができる。提案情報の生成に際し、情報処理装置4は、満たすべきフィルム温度帯を取得し、取得したフィルム温度帯を満たす提案情報を特定してもよい。情報処理装置4は、ユーザの操作部45の操作を受け付けることにより満たすべきフィルム温度帯を受け付けてもよい。
【0075】
また情報処理装置4は、成形情報の一部に対する変更値と、残りの成形情報に対する成形中の実測値とを温度予測モデル421へ入力することにより、成形情報の変更前のタイミングで、フィルム温度を予測してもよい。予測結果が所定条件を満たす場合、情報処理装置4は、成形情報の変更指示を制御装置16へ送信してもよい。情報処理装置4は、得られた予測結果に基づき上述の提案情報を生成してもよい。
【0076】
なお、情報処理装置4は、工程毎にフィルム温度を予測するものに限らず、各工程を統合した全成形工程についてのフィルム温度を予測してもよい。情報処理装置4は、各工程を統合した1つの成形工程に対するフィルム温度の予測結果を温度予測モデル421により取得するよう構成されてもよく、工程毎に得られた温度予測モデル421の予測結果を統合することで全成形工程の予測を生成するよう構成されてもよい。
【0077】
図9は、情報処理装置4が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。情報処理装置4の制御部41は、記憶部42に記憶するプログラム4Pに従って以下の処理を実行する。以下では、キャスト工程を例に挙げて説明するが、制御部41は、MD延伸工程及びTD延伸工程についても同様の処理を実行するものであってよい。制御部41は、例えば成形中において、キャスト工程の終了後、又はキャスト工程中における適宜のタイミングで以下の処理を開始する。制御部41は、操作部45を通じた予測要求の受け付けに応じて処理を開始してもよい。
【0078】
情報処理装置4の制御部41は、例えば記憶部42に記憶する物性データベースを参照して、成形に用いられる原料樹脂の樹脂物性を取得する(ステップS11)。
【0079】
制御部41は、データ収集装置3を通じて、検出装置2により検出された成形中の計測データと、制御装置16から送信される成形中の運転データとを取得する(ステップS12)。運転データは、制御装置16を通じて又は既知の機器構成等に基づき得られる設計データを含んでよい。制御部41は、複数種の成形情報をまとめて取得してもよく、成形情報が検出されたタイミングで個別に成形情報を取得してもよい。
【0080】
制御部41は、取得した樹脂物性、計測データ及び運転データを含む成形情報を温度予測モデル421に入力する(ステップS13)。具体的には、制御部41は、図5にて説明した設定画面440に示される入力項目欄に、取得した成形情報を自動で入力することにより、温度予測モデル421に入力データを与える。この場合において、制御部41は、ユーザの操作部45の操作による各成形情報項目への入力要否の指定を受け付け、入力必要の指定を受け付けた成形情報の実測値のみを温度予測モデル421に入力してもよい。
【0081】
制御部41は、温度予測モデル421から出力されるフィルム温度の予測値を取得する(ステップS14)。制御部41は、取得したフィルム温度の予測値に基づきフィルム温度の予測結果を示す画面を生成し、生成した予測結果を示す画面を表示部44に表示させる(ステップS15)。制御部41は、例えばフィルム温度の時間変化をグラフ形式で示す画面を生成する。
【0082】
制御部41は、取得したフィルム温度の予測値に基づき、成形条件の提案に関する提案情報を生成する(ステップS16)。提案情報は、例えば調整すべき成形情報の種類、成形情報の推奨値等を含む。制御部41は、生成した提案情報を示す画面を表示部44に表示させる(ステップS17)。制御部41は、予測結果と提案情報とを同時に表示する画面を表示部44に表示させてもよい。制御部41は、処理を終了する。制御部41は、処理をステップS12に戻し、新たに検出された成形情報を取得し、取得した新たな成形情報を用いて、再度フィルム温度を予測してもよい。ステップS16及びステップS17は省略されてもよい。
【0083】
上記では情報処理装置4が一連の処理を実行する例を説明したが、表示装置5も同様の処理を実行して、フィルム温度の予測及び表示を行ってよい。
【0084】
本実施形態によれば、成形機システム100に複数の検出装置2を設けることにより、成形中における成形情報をリアルタイムで取得することができる。取得した成形情報を用いることにより、成形中のフィルムの温度を精度よく予測することができる。予め取得された参考値に基づく成形前予測ではなく、フィルムの成形工程中に、フィルム温度をリアルタイムで予測することができる。
【0085】
フィルム温度の予測に実際の成形状況を反映することができるため、フィルム温度の予測に過去の実測値や推定値のみを用いる場合に比べて、予測精度が向上される。フィルム成形においては、樹脂を溶融して成形するため、樹脂の状態が多様に変化する。また、多くの工程が含まれる。従って、成形毎に、成形機1や樹脂の状態に応じて実際の成形情報が変化する可能性が高く、成形前に予測された温度挙動から外れるおそれがある。フィルムの成形中に予測を行うことで、成形中のフィルム温度をより正確に把握することができる。
【0086】
フィルム温度の変化を予測することで、流路を移動するフィルム温度の挙動を把握することができる。温度予測モデル421を用いることで、効率的且つ精度よくフィルム温度を予測することができる。
【0087】
(第2実施形態)
第2実施形態では、推定モデルを用いて所望のフィルム温度を満たす成形条件を推定する構成を説明する。以下では主に第2実施形態との相違点を説明し、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0088】
図10は、第2実施形態の情報処理装置4の構成例を示すブロック図である。第2実施形態の情報処理装置4は、所望のフィルム温度を満たす成形機1の成形条件を推定する推定装置に対応する。成形条件とは、成形情報のうち、条件出し作業による調整対象となり得る成形情報である。
【0089】
情報処理装置4の記憶部42には、成形条件の推定に関する処理をコンピュータに実行させるためのプログラム4P及び上述の温度予測モデル421に加えて、推定モデル422及び成形DB(Data Base:データベース)423を記憶している。
【0090】
成形DB423は、温度予測モデル421を用いたフィルム温度の予測処理における成形情報及びフィルム温度の予測結果を記憶するデータベースである。成形DB423には、例えば複数種の成形情報、及びフィルム温度の予測値等の情報を紐付けたレコードが格納される。
【0091】
第2実施形態の表示装置5も同様に、推定モデル422及び成形DB423に対応する情報を記憶部に記憶する。
【0092】
情報処理装置4は、多様な条件下で行われた成形工程に関し、第1実施形態で説明した予測処理を行うことにより得られたフィルム温度の予測結果及び計算条件となる成形情報を収集し、成形DB423に蓄積する。なお、第2実施形態の情報処理装置4は、成形中に取得した成形情報に基づいて成形工程の終了後にフィルム温度の予測処理を実行することでデータを生成し、成形DB423へ情報を蓄積してもよい。情報処理装置4は、成形DB423に記憶する情報を訓練データとして使用して、推定モデル422を生成する。
【0093】
<推定モデル422>
図11は、推定モデル422の概要を示す説明図である。推定モデル422は、フィルム温度に対する成形機1の成形条件を推定する。推定モデル422により推定される成形条件には、例えば成形機1の運転前又は運転途中等において予め設定すべき成形条件が含まれる。推定モデル422により推定される成形条件の項目は、上述した温度予測モデル421への入力となる成形情報の項目であり、例えば計測データ、運転データ及び樹脂物性を含む。
【0094】
本実施形態の推定モデル422は、フィルム温度を入力した場合に、成形機1の成形条件を示す情報を出力するモデルであり、所定の訓練データを学習済みの機械学習モデルである。推定モデル422は、例えばニューラルネットワークを用いた深層学習の手法により構築されたモデルである。時系列的データを取得する場合、推定モデル422は、RNN(Recurrent Neural Network)であってもよい。推定モデル422は、所定の訓練データを学習済みの機械学習モデルである。推定モデル422は、人工知能ソフトウェアの一部を構成するプログラムモジュールとしての利用が想定される。
【0095】
推定モデル422は、フィルム温度を入力する入力層と、フィルム温度の特徴量を抽出する中間層(隠れ層)と、成形条件を出力する出力層とを備える。中間層は、入力データの特徴量を抽出する複数のノードを有し、各種パラメータを用いて抽出された特徴量を出力層に受け渡す。入力層にフィルム温度が入力された場合、学習済みパラメータによって中間層で演算が行なわれ、出力層から成形条件を示す情報が出力される。
【0096】
推定モデル422の入力層へ入力されるフィルム温度は、所定の搬送時点に対する温度であってもよく、所定の搬送時間に対するフィルム温度の変化又は所定の搬送量に対するフィルム温度の変化等、フィルム温度の変化を示すデータであってもよい。推定モデル422の入力層へ入力されるフィルム温度は、フィルム温度の変化量であってもよい。フィルム温度の変化を入力とする場合、入力層へ入力されるフィルム温度は、時系列の温度データをグラフ化した画像データとして入力されてもよい。
【0097】
推定モデル422の出力層は、成形条件に係る複数の項目に対応する複数のノードを有する。各成形条件項目に対応するノードはそれぞれ、成形条件を示す値を出力する。なお、推定すべき成形条件を得ることができれば、出力層の構成は特に限定されない。
【0098】
本実施形態では、図11に示すように、上述した計測データ、運転データ及び樹脂物性を含む複数種の成形情報を、推定対象条件と推定対象外条件(成形条件)とに分類し、推定対象条件のみを推定モデル422により推定する。その他の推定対象外条件は、推定モデル422への入力データとして用いる。多数の成形情報を推定要否に応じて分類することで、効率的かつ精度よく所望の成形条件を推定する推定モデル422が得られる。なお、推定モデル422は、推定対象外条件を入力データに使用しない構成であってもよい。推定モデル422は、上述した複数種の成形情報の全てを推定対象外条件とする構成であってもよい。
【0099】
キャスト工程における推定対象条件には、例えばフィルム速度、フィルムの吐出量、フィルム初期温度、フィルムの開始XY座標、フィルムの終了XY座標、各キャストロール121のXY座標、及び各キャストロール121の温度等が含まれる。フィルム厚みを一定と仮定する場合、フィルム速度に応じて吐出量が決定されるため、推定対象条件から吐出量を省略してもよい。
【0100】
MD延伸工程における推定対象条件には、例えば初期のフィルム速度、フィルムの吐出量、各テンションロール131のXY座標、及び各テンションロール131の温度等が含まれる。
【0101】
TD延伸工程における推定対象条件には、例えば初期のフィルム速度、フィルムの吐出量、エアーの温度、及びエアーの速度等が含まれる。
【0102】
なお図5図7において、成形情報項目のうち成形情報項目名に黒い星印を付した成形情報は、推定対象条件であることを示している。黒い星印が付されていない成形情報は、推定対象外条件に対応する。
【0103】
本実施形態では、上述の推定モデル422を工程毎に用意する。情報処理装置4の記憶部42には、キャスト工程に係る成形条件を推定する推定モデル422と、MD延伸工程に係る成形条件を推定する推定モデル422と、TD延伸工程に係る成形条件を推定する推定モデル422とが記憶される。
【0104】
推定モデル422の構成は図11に示す例に限られない。推定モデル422は、フィルム温度に対し成形条件を識別可能であればよい。推定モデル422は、例えば、Transformer、CNN(Convolution Neural Network)、LSTM(Long Short-Term Memory)、SVM(Support Vector Machine)、決定木等、その他の学習アルゴリズムに基づくモデルであってもよい。推定モデル422は、機械学習モデルに限られず、ルールベースの手法や特定の数式によって成形条件を導出するものであってもよい。
【0105】
推定モデル422は、フィルム温度及び推定対象外条件と、推定対象条件を示すラベルとが対応付けられた訓練データを用意し、当該訓練データを用いて未学習のニューラルネットワークを機械学習させることにより生成することができる。
【0106】
一般的に、条件出し作業では、計算条件として過去の実測値や推定値を用いてフィルム温度を予測し、予測したフィルム温度が所望の温度を満たすよう成形条件が調整されている。しかしながら、フィルム成形においては、樹脂を溶融して成形するため、樹脂の状態が多様に変化する。また、多くの工程が含まれる。従って、実際の成形工程では、成形情報が過去の実測値や推定値に沿わない可能性が高く、実際の成形工程の状態を適正に把握可能なデータが十分に得られていないのが現状である。
【0107】
本実施形態では、成形機システム100に複数の検出装置2を設けることにより、成形工程中における成形条件を含む成形情報をリアルタイムで取得する。そして、取得した成形情報を用いて成形中のフィルム温度を予測する。予測されたフィルム温度(予測フィルム温度)と成形条件とを用いて生成された訓練データを用いて推定モデル422を学習することで、要求されるフィルム温度(要求フィルム温度)に応じた成形条件を好適に推定する推定モデル422を生成することができる。
【0108】
図12は、推定モデル422の生成処理手順の一例を示すフローチャートである。情報処理装置4の制御部41は、記憶部42に記憶するプログラム4Pに従って以下の処理を実行する。
【0109】
情報処理装置4の制御部41は、成形DB423に記憶する情報に基づき、訓練データを取得する(ステップS21)。訓練データは、フィルム温度及び推定対象外条件に対し推定対象条件が付与されたデータセットである。制御部41は、訓練データとして複数のデータセットを取得する。
【0110】
制御部41は、取得した訓練データに基づき、フィルム温度及び推定対象外条件を入力した場合に推定対象条件(成形条件)を出力する推定モデル422を生成する(ステップS22)。
【0111】
具体的には、制御部41は、訓練データに含まれる複数のフィルム温度及び推定対象外条件を入力データとして推定モデル422に入力し、推定モデル422から出力される推定対象条件を取得する。制御部41は、出力された推定対象条件と、訓練データに含まれる推定対象条件、即ち正解値である推定対象条件との誤差を所定の損失関数により算出する。制御部41は、損失関数を最適化(最小化又は最大化)するように、例えば誤差逆伝播法を用いて、ノード間の重み等のパラメータを調整する。学習が開始される前の段階では、推定モデル422を記述する定義情報には、初期設定値が与えられているものとする。誤差、学習回数が所定基準を満たすことによって学習が完了すると、最適化されたパラメータが得られる。学習が終了すると、制御部41は、学習済みの推定モデル422として、学習済みの推定モデル422に関する定義情報を記憶部42に記憶し、一連の処理を終了する。
【0112】
制御部41は、キャスト工程、MD延伸工程及びTD延伸工程それぞれに関するフィルム温度及び成形条件を含む訓練データを用いて上述の処理を実行する。これにより、キャスト工程に係るフィルム温度に応じた成形条件と、MD延伸工程に係るフィルム温度に応じた成形条件と、TD延伸工程に係るフィルム温度に応じた成形条件とを好適に推定する3つの推定モデル422が構築される。
【0113】
成形機システム100が複数の成形機1を備える場合、推定モデル422は成形機1毎に生成されることが好ましい。情報処理装置4は、各成形機1について取得した成形条件を含む訓練データを用いて、各成形機1に対応する推定モデル422を生成する。
【0114】
推定モデル422は、情報処理装置4により生成及び学習されるものに限られない。推定モデル422は、図示しない外部サーバにて学習済みのモデルが情報処理装置4へ送信され、記憶部42に記憶されてもよい。推定モデル422は、外部サーバにて生成され、情報処理装置4にて学習されてもよい。
【0115】
なお、推定モデル422は工程毎に構築されるものに限らず、各工程を統合した全成形工程についての成形条件を推定する1つの推定モデル422であってもよい。この場合、温度予測モデル421は、各工程を統合した全成形工程についてのフィルム温度を予測するものであってもよい。
【0116】
情報処理装置4は、上述の推定モデル422を用いて、成形条件を推定する。図13は、成形条件の推定処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0117】
情報処理装置4の制御部41は、ユーザの操作部45の操作を受け付けることにより、成形機1により成形するフィルムに要求されるフィルム温度を取得する(ステップS31)。フィルムに要求されるフィルム温度とは、例えば、成形機1により成形されるフィルムの温度の目標値としてオペレータにより設定されるフィルム温度である。フィルム温度は、例えば特定の搬送時点に対するフィルム温度であってもよく、所定の搬送時間におけるフィルム温度の変化であってもよく、フィルム温度の変化量であってもよい。制御部41は、フィルム温度の変化を示すグラフを取得してもよい。
【0118】
制御部41は、樹脂物性、計測データ及び運転データ等を含む推定対象外条件を取得する(ステップS32)。推定対象外条件は、例えばユーザの操作部45の操作を受け付けることにより取得されてもよく、各種樹脂の樹脂物性を格納する物性データベースを通じて取得されてもよく、又は外部装置との通信により取得されてもよい。ステップS31及びステップS32では、制御部41は、例えば表示部44に推定条件の受付用画面を表示し、当該受付用画面を利用してユーザからの入力を受け付けてもよい。
【0119】
制御部41は、取得したフィルム温度及び推定対象外条件を推定モデル422に入力する(ステップS33)。制御部41は、推定モデル422から出力される成形条件を取得する(ステップS34)。推定モデル422から出力される成形条件とは推定対象条件である。制御部41は、各工程に応じた推定モデル422それぞれに入力データを入力することにより、各工程の成形条件を推定する。
【0120】
制御部41は、取得した成形条件に関する情報を表示部44へ表示させ(ステップS35)、一連の処理を終了する。制御部41は、例えば、成形条件の推定結果と、推定条件としてのフィルム温度とを対応付けて表示する画面を生成し、生成した画面を表示部44へ表示させる。
【0121】
本実施形態によれば、推定モデル422を用いて、要求されるフィルム温度を満たす成形条件を好適に推定することができるため、条件出し作業が容易となる。推定モデル422は、成形中における成形情報の実測値とフィルム温度の予測値とを含む訓練データを用いて学習されることにより、成形中の成形情報を考慮し、実際の成形機1の状態に即した成形条件を精度よく推定することができる。
【0122】
機械学習モデルである推定モデル422を利用することにより、多様な成形条件が互いに影響を及ぼし合うフィルム成形工程の成形条件において、成形条件の最適化を容易に図ることができる。
【0123】
精度のよい推定モデル422の構築には、品質のよい訓練データを多数取得することが重要であるところ、成形条件に対するフィルム温度の予測処理により得られるデータを利用することで、訓練データを効率的に取得することができる。
【0124】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
フィルム成形機により成形するフィルムに要求されるフィルム温度(要求フィルム温度)を取得し、
押出し成形を行うフィルム成形機又は前記フィルム成形機により成形されるフィルムの状態を示す、検出装置により検出した成形中の成形情報及び該成形情報から予測されたフィルム温度(予測フィルム温度)に基づいて構築された、フィルム温度に対する成形条件を推定する推定モデルを用いて、取得した前記フィルム温度(要求フィルム温度)を満たす成形条件を推定する
処理をコンピュータが実行する成形条件推定方法。
(付記2)
フィルム温度を入力した場合に成形条件を出力するよう学習された前記推定モデルに取得した前記フィルム温度を入力することにより、前記成形条件を推定する
付記1に記載の成形条件推定方法。
(付記3)
成形情報に基づきフィルム温度を予測する温度予測モデルを用いて、成形情報に応じたフィルム温度を予測する
付記1又は付記2に記載の成形条件推定方法。
(付記4)
キャスト工程、MD延伸工程又はTD延伸工程における前記フィルム温度を満たす前記成形条件を推定する
付記1から付記3のいずれか1つに記載の成形条件推定方法。
(付記5)
キャスト工程におけるフィルム速度、吐出量、フィルム温度、フィルムの位置座標、ロールの位置座標、及びロール温度の少なくとも1つを含む前記成形条件を推定する
付記1から付記4のいずれか1つに記載の成形条件推定方法。
(付記6)
MD延伸工程におけるフィルム速度、吐出量、ロールの位置座標、及びロール温度の少なくとも1つを含む前記成形条件を推定する
付記1から付記5のいずれか1つに記載の成形条件推定方法。
(付記7)
TD延伸工程におけるフィルム速度、吐出量、エアーの温度、及びエアーの速度の少なくとも1つを含む前記成形条件を推定する
付記1から付記6のいずれか1つに記載の成形条件推定方法。
【0125】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
各実施形態に示すシーケンスは限定されるものではなく、矛盾の無い範囲で、各処理手順はその順序を変更して実行されてもよく、また並行して複数の処理が実行されてもよい。各処理の処理主体は限定されるものではなく、矛盾の無い範囲で、各装置の処理を他の装置が実行してもよい。
【0126】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0127】
100 成形機システム
1 フィルム成形機
11 押出機
12 キャスト装置
121 キャストロール
13 MD延伸装置
131 テンションロール
14 TD延伸装置
15 巻取機
16 制御装置
2 検出装置
21 第1センサ
22 第2センサ
23 第3センサ
3 データ収集装置
31 制御部
32 記憶部
33 通信部
34 データ入力部
4 情報処理装置(推定装置)
41 制御部
42 記憶部
43 通信部
44 表示部
45 操作部
4A 記録媒体
4P プログラム
421 温度予測モデル
422 推定モデル
5 表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13