(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080482
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】スクラバー装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/78 20060101AFI20240606BHJP
B01D 53/72 20060101ALI20240606BHJP
B01D 53/81 20060101ALI20240606BHJP
C02F 1/461 20230101ALI20240606BHJP
【FI】
B01D53/78
B01D53/72 ZAB
B01D53/81
C02F1/461 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193716
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【テーマコード(参考)】
4D002
4D061
【Fターム(参考)】
4D002AA33
4D002AA40
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA04
4D002BA05
4D002CA01
4D002CA06
4D002CA07
4D002DA35
4D002DA37
4D002DA41
4D002EA01
4D002EA02
4D002EA08
4D002EA14
4D061DA01
4D061DB09
4D061DC09
(57)【要約】
【課題】効率のよいスクラバー装置を提供しようとするもの。
【解決手段】排水処理槽1からの蒸発ガスGが供給されるスクラバー槽Sを有し、前記スクラバー槽Sにはスクラバー水が貯留され、前記蒸発ガスGは排気側からスクラバー水中に吸引するようにした。前記排水処理槽1は被処理液W中の汚れ成分の熱分解機構2を有するようにしてもよい。前記スクラバー槽Sに活性炭Cを貯留し前記熱分解槽2で再生して戻すようにしてもよい。前記スクラバー槽Sではスクラバー水を抜き出して電気分解して戻すようにしてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水処理槽(1)からの蒸発ガス(G)が供給されるスクラバー槽(S)を有し、前記スクラバー槽(S)にはスクラバー水が貯留され、前記蒸発ガス(G)は排気側からスクラバー水中に吸引するようにしたことを特徴とするスクラバー装置。
【請求項2】
前記排水処理槽(1)は被処理液(W)中の汚れ成分の熱分解機構(2)を有するようにした請求項1記載のスクラバー装置。
【請求項3】
前記スクラバー槽(S)に活性炭(C)を貯留し前記熱分解槽(2)で再生して戻すようにした請求項2記載のスクラバー装置。
【請求項4】
前記スクラバー槽(S)ではスクラバー水を抜き出して電気分解して戻すようにした請求項1乃至3のいずれかに記載のスクラバー装置。
【請求項5】
前記排水処理槽(1)からの蒸発ガス(G)と共に気体(Air)をスクラバー水中に注入するようにした請求項1乃至4のいずれかに記載のスクラバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、効率のよいスクラバー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、塗装工場などでは塗料から蒸発する揮発性有機化合物(VOC)、例えばキシレン、トルエン、ベンゼンなどで作業環境が汚染されることとなるが、これらのVOCガスをスクラバーに導いて処理していた。前記のようなVOCガスの処理関連技術に関する提案があった(特許文献1)。
この文献は排ガス回収方法とその装置とに関し、特に排ガス中の溶剤等の揮発性有機化合物を回収・再利用する方法とその装置に関するものであり、各種プラントからは、それぞれの溶媒等の揮発性有機化合物ガスが発生し、これらのガスは、そのまま外部に放出することは公害上問題を有することに鑑みてなされたものである。
そして、この出願には前提として次の内容が記載されている。従来、プラント等から排出される揮発性有機化合物の回収には、活性炭等の吸着材に揮発性有機化合物を吸着させる方法が一般的に知られている。この方法は、揮発性有機化合物、例えば、溶剤ガスの種類によっては、吸着材に吸着されることなく、外部に放出されてしまい、所期する除去性能を達成できないことがある。また、溶剤ガスの種類によっては活性炭の劣化速度が速くなり、活性炭の交換コスト(ランニングコスト)が高くなる問題があり、また、スクラバーによる揮発性有機化合物ガスの回収は、一般的な手段である。しかし、風量が大きく、揮発性有機化合物ガスの濃度が薄いガスでは、スクラバーにより揮発性有機化合物ガスを回収する場合、スクラバーに必要とする水量が大量となる。水量が多くなると、スクラバーから回収される揮発性有機化合物を含有する廃水が多量に発生し、この廃水を処理して揮発性有機化合物を回収する工程が膨大となり、経済的に困難な回収手段となる。
その上で、揮発性有機化合物ガスを水に吸収させる第1の工程と、該第1の工程で得られる揮発性有機化合物を含む水を凍結濃縮し、高濃度の揮発性有機化合物を含む水と氷とに分離する第2の工程と、該工程で得られた氷の冷熱を利用する第3の工程と、高濃度の揮発性有機化合物を含む水を再利用する第4の工程と、を有する排ガス回収方法を提案している。
しかし、何か他の観点から効率がよい方法が望まれるところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、効率のよいスクラバー装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明のスクラバー装置は、排水処理槽からの蒸発ガスが供給されるスクラバー槽を有し、前記スクラバー槽にはスクラバー水が貯留され、前記蒸発ガスは排気側からスクラバー水中に吸引するようにしたことを特徴とする。
【0006】
このスクラバー装置は、排水処理槽からの蒸発ガスが供給されるスクラバー槽を有するので、蒸発ガスをスクラバー槽に溶解させ、(電解水や活性炭吸着などにより)浄化作用を及ぼすことができる(スクラバー槽で浄化中に攪拌効果を付与することが好ましい)。
また、前記スクラバー槽にはスクラバー水が貯留され、前記蒸発ガスは排気側からスクラバー水中に吸引するようにしたので、排水処理槽からの蒸発ガスを負圧によって円滑にスクラバー槽のスクラバー水中に導入することができる。
【0007】
ここで、蒸発ガスはスクラバー水中にバブリングしたり、蒸発ガスに対してスクラバー水シャワーリングしたりすることができる。
また、前記蒸発ガスをスクラバー水中に吸引するため(負圧を及ぼす)、真空ポンプやルーツ・ブロワーを用いることができ、これらの吸引機器の前にストレージ・タンクを設置してここで湿気を低減することもできる。
【0008】
(2)前記排水処理槽は被処理液中の汚れ成分の熱分解機構を有するようにしてもよい。
このように、排水処理槽は被処理液中の汚れ成分の熱分解機構を有するようにすると、スクラバー水中に導入する前に汚れ成分(例えば有機化合物など)を熱分解(例えば約650℃~900℃に昇温)により分断化(炭化水素の原子相互間の有機鎖の切断など)しておくことができ、スクラバー槽での浄化効率を向上させることができる。
【0009】
熱分解機構の加熱手段として、LNGバーナー、LPGバーナー、IH(誘導加熱)などを例示することができる。熱分解機構の加熱媒体として、真球状鋼体や低融点金属(合金)などを例示することができる。
【0010】
(3)前記スクラバー槽に活性炭を貯留し前記熱分解槽で再生して戻すようにしてもよい。
このように、スクラバー槽に活性炭を貯留し前記熱分解槽で再生して戻すようにすると、活性炭を吸着能が十分な状態として維持することができる。
活性炭の移送にはインペラー・ポンプや、モータにより回転駆動されるスパイラル・コンベアを用いることができる。
【0011】
(4)前記スクラバー槽ではスクラバー水を抜き出して電気分解して戻すようにしてもよい。
このように、スクラバー槽ではスクラバー水を抜き出して電気分解して戻すようにすると、電解(スクラバー)水によりスクラバー水の浄化活性度(CODの低減性など)が十分な状態を維持することができる。
【0012】
そして、電気分解処理では、電解機構によりオゾン含有水を電解して酸素ラジカルを生成させたり、塩化物イオン含有水を電解して電解塩素を生成させたり(例えば残留塩素濃度を約300ppm~1,000ppm程度とする)することができる。
【0013】
(5)前記排水処理槽からの蒸発ガスと共に気体をスクラバー水中に注入するようにようにしてもよい。前記気体として、室温近傍の圧縮空気を例示することができる。
【0014】
例えば熱分解槽の温度を約660℃程度に設定すると、高温の蒸発ガスのためスクラバー槽の温度上昇の度合いがかなりのものとなり、該槽の冷却能力が相当必要になるが、排水処理槽からの蒸発ガスと共に気体をスクラバー水中に注入するようにすると、蒸発ガスと気体とが混合してスクラバー水中に入ることとなり、蒸発ガスの温度を効率的に低減することができ、スクラバー水の温度の上昇を回避することができる。
【0015】
また、排水処理槽でダイオキシン類が発生した場合、熱分解後の蒸発ガス(例えば850℃以上)を気体と共にスクラバー槽に注入することにより、室温程度(約20~30℃)に急冷することによってダイオキシンの再合成を回避(約200℃以下)することができる。ダイオキシン類は、850℃以上に昇温して200℃以下に急冷すると再合成を回避することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
排水処理槽からの蒸発ガスを負圧によって円滑にスクラバー槽のスクラバー水中に導入することができるので、効率のよいスクラバー装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明のスクラバー装置の実施形態を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、この実施形態のスクラバー装置は、排水処理槽1からの蒸発ガスGが供給されるスクラバー槽Sを有し(図示、中央の上向きの長い矢印↑と、左右横向きの短い矢印←→と、下向きの二つの矢印↓)、前記スクラバー槽Sにはスクラバー水が貯留され、前記蒸発ガスGは排気側からスクラバー水中に吸引するようにした(図示、右側中央の下向きのやや長い矢印↓と、右側下の上向きの短い矢印↑)。
【0019】
蒸発ガスGは、スクラバー槽Sのスクラバー水中にバブリングBするようにした。また、前記蒸発ガスGをスクラバー水中に吸引するため(負圧を及ぼす)、真空ポンプVPを用い、この前にストレージ・タンクSTを設置してここで湿気を低減するようにした。スクラバー槽Sでは、浄化中に攪拌効果を付与するようにした。
【0020】
そして、排水処理槽1は被処理液W(高濃度廃液)中の汚れ成分の熱分解機構2を有するようにしており、スクラバー水中に導入する前に汚れ成分(有機化合物など)を熱分解(約650℃に昇温した)により分断化(炭化水素の原子相互間の有機鎖の切断)しておくことができ、スクラバー槽Sでの浄化効率を向上させることができた。
また、熱分解機構2の加熱手段としてLNGバーナーを用い、熱分解機構2の加熱媒体として複数個の真球状鋼体(直径φ11mm×300個)を用いた。そして、この真球状鋼体中に、被処理液Wである高濃度廃液を供給した。
【0021】
さらに、スクラバー槽Sに活性炭Cを貯留し前記熱分解槽2で再生して戻すようにしており、活性炭Cを吸着能が十分な状態として維持することができた。
活性炭Cの移送にはインペラー・ポンプIPと、モータMにより回転駆動されるスパイラル・コンベアSCを用いた。
【0022】
スクラバー槽Sではスクラバー水を抜き出して、電解機構Eにより電気分解して戻すようにしており、電解(スクラバー)水によりスクラバー水の浄化活性度(CODの低減性など)が十分な状態を維持することができた。電気分解処理では、オゾン含有水を圧入・電解して酸素ラジカルを生成させるようにした。
【0023】
前記排水処理槽1からの蒸発ガスGと共に気体をスクラバー水中に注入するようにようにした。前記気体として、室温近傍の圧縮空気CP Airを用いた。したがって、蒸発ガスGの温度を効率的に低減することができ、スクラバー水の温度の上昇を回避することができた。
また、排水処理槽1からの蒸発ガスGをコンプレッサーCP Airによってスクラバー水中に圧入するようにしており、コンプレッサーで押し込むのと真空ポンプVPで後ろから引っ張る(負圧)ことのコンビネーションにより、スクラバー水中への蒸発ガスGの導入・溶解をより効率良いものとすることができた。
【0024】
次に、この実施形態のスクラバー装置の使用状態を説明する。
このスクラバー装置は、排水処理槽1からの蒸発ガスGが供給されるスクラバー槽Sを有するので、蒸発ガスGをスクラバー槽Sに溶解させ、電解水と活性炭C吸着により浄化作用を及ぼすことができた。
【0025】
また、前記スクラバー槽Sにはスクラバー水が貯留され、前記蒸発ガスGは排気側からスクラバー水中に吸引するようにしたので、排水処理槽1からの蒸発ガスGを負圧によって円滑にスクラバー槽Sのスクラバー水中に導入することができ、効率のよいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
効率がよいことによって、種々のスクラバー装置の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 排水処理槽
2 熱分解機構
C 活性炭
G 蒸発ガス
S スクラバー槽
W 被処理水