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  • 特開-防爆装置及び破砕方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080483
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】防爆装置及び破砕方法
(51)【国際特許分類】
   F42D 5/045 20060101AFI20240606BHJP
   E21F 11/00 20060101ALI20240606BHJP
   E21F 17/107 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
F42D5/045
E21F11/00
E21F17/107
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193719
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】594151715
【氏名又は名称】株式会社Sakatec
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 潤
(72)【発明者】
【氏名】嶺井 春菜
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 淳一
(72)【発明者】
【氏名】望月 治
(72)【発明者】
【氏名】望月 宏樹
(57)【要約】
【課題】破砕対象物を爆破した際に破砕対象物の破片を緩衝板に衝突させることにより、防爆箱が受ける損傷を緩和することが可能となる、防爆装置及び破砕方法を提供する。
【解決手段】防爆装置1は、破砕対象物である岩石Rを爆破により破砕する際に、破砕された破砕対象物の飛散を抑止するための装置であって、複数の側板22と天板21とを備えて破砕対象物の上方から被覆する防爆箱2と、側板22から外方に延出されるスカート部材3と、防爆箱2の内周面に貼付された緩衝板4と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕対象物を爆破により破砕する際に、破砕された破砕対象物の飛散を抑止するための防爆装置であって、
複数の側板と天板とを備えて破砕対象物の上方から被覆する防爆箱と、
前記側板から外方に延出されるスカート部材と、
前記防爆箱の内周面に貼付された緩衝板と、を備える、防爆装置。
【請求項2】
前記緩衝板の表面が樹脂化合物により被覆される、請求項1に記載の防爆装置。
【請求項3】
前記防爆箱の一部には、前記防爆箱の内部と外部とを連通する通気孔が形成される、請求項2に記載の防爆装置。
【請求項4】
前記防爆箱の上面に緩衝装置が設けられる、請求項3に記載の防爆装置。
【請求項5】
請求項4に記載の防爆装置における緩衝装置を重機により押圧した状態で破砕対象物を爆破する、破砕方法。
【請求項6】
破砕対象物の周囲に複数個の土嚢を配置し、
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の防爆装置を、破砕対象物と前記土嚢とに被せた状態で破砕対象物を爆破する、破砕方法。
【請求項7】
非火薬破砕材を用いて破砕対象物を爆破する、請求項6に記載の破砕方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、岩盤や岩石を爆破により破砕する際に破砕対象物の破片の飛散を抑止するための防爆装置、及び、この防爆装置を用いた破砕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、破砕対象物を爆破する際に破砕対象物の破片の飛散を抑止するための防護材が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-78516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような防護材において、破砕対象物の破片の飛散を抑止した際に、防護材に加わる衝撃によって防護材が損傷する場合があった。このため、破砕を行う度に防護材の交換又は修理を行う必要があり、作業効率が悪くなっていた。そこで、本開示は、上記に関する課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る防爆装置は、破砕対象物を爆破により破砕する際に、破砕対象物の破片の飛散を抑止するための防爆装置であって、複数の側板と天板とを備えて破砕対象物の上方から被覆する防爆箱と、前記側板から外方に延出されるスカート部材と、前記防爆箱の内周面に貼付された緩衝板と、を備える。
【0006】
この構成によれば、破砕対象物を爆破した際に破砕対象物の破片が緩衝板に衝突するため、防爆箱の損傷を緩和することができる。このため、破砕を行う度に防爆装置の交換又は修理を行う必要がなく、作業効率を向上させることができる。
【0007】
また、前記緩衝板の表面が樹脂化合物により被覆されることが好ましい。
【0008】
この構成によれば、緩衝板の強度を高めることが可能となる。
【0009】
また、前記防爆箱の一部には、前記防爆箱の内部と外部とを連通する通気孔が形成されることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、爆破の際の爆風を防爆箱の外部に逃がすことが可能となる。
【0011】
また、前記防爆箱の上面に緩衝装置が設けられることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、防爆箱を押圧した状態で破砕対象物の破砕を行うことが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る破砕方法は、防爆装置における緩衝装置を重機により押圧した状態で破砕対象物を爆破する。
【0014】
この構成によれば、防爆箱を重機で押圧した状態で破砕対象物の破砕を行うことが可能となる。
【0015】
また、破砕対象物の周囲に複数個の土嚢を配置し、防爆装置を破砕対象物と前記土嚢とに被せた状態で破砕対象物を爆破することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、破砕対象物の破片が緩衝板に衝突する際の衝撃を緩和することができる。
【0017】
また、非火薬破砕材を用いて破砕対象物を爆破することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、非火薬破砕材の保管・取扱を簡易にすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、破砕対象物を爆破した際に破砕対象物の破片を緩衝板に衝突させることにより、防爆箱が受ける損傷を緩和することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態に係る防爆装置を示した斜視図である。
図2】防爆装置の使用状態を示した断面図である。
図3】防爆装置を反転させた状態を示した斜視図である。
図4】第一比較例を用いた実験を示した模式図である。
図5】第二比較例を示した模式図である。
図6】第三比較例を示した模式図である。
図7】変形例に係る防爆装置の使用状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[防爆装置1]
以下、本発明の一実施形態に係る防爆装置1、及び、防爆装置1を用いた破砕方法について、図1から図3を用いて説明する。本実施形態に係る防爆装置1は、破砕材Cを用いて地面Gに露出する破砕対象物である岩石Rを破砕する際に、岩石Rに被せて使用することにより岩石Rの破片の飛散を抑止するために用いられる。なお、本発明を用いることができる破砕対象物は岩石Rに限定されるものではなく、岩盤やコンクリート構造物等を破砕する場合に用いることも可能である。
【0022】
本実施形態において、破砕材Cにはアルミニウム粉末と酸化銅を主成分とする非火薬破砕材が採用される。具体的に、破砕材Cは、テルミット反応(金属酸化還元反応)の際に生じる高熱・高温(3000度程度)による瞬発的な水蒸気膨張圧によって破砕を行うものが用いられる。
【0023】
破砕材Cには図示しない電極コードを介して電源スイッチに接続されている。電源スイッチをONにすることにより破砕材Cに電圧を印加し、テルミット反応の膨張圧により爆発させて岩石Rを破砕するのである。本実施形態においては、破砕材Cに非火薬破砕材を採用することにより、火薬を用いる爆薬に比べて低振動、低騒音にて破砕を行うことができる。また、破砕材Cの保管・取扱を爆薬に比べて簡易にすることができる。
【0024】
図1から図3に示す如く、防爆装置1は、防爆箱2、スカート部材3、及び、緩衝板4を主な構成要素として備える。防爆箱2はスチール合金等の金属製部材であり、矩形の天板21と、天板21の四辺に立設される四枚の側板22と、で構成される。図1に示す如く、防爆装置1は、岩石Rの上方から防爆箱2で被覆した状態で用いられる。
【0025】
図2に示す如く、側板22の下端部には、複数の連結部24を介して縁部材23が設けられる。防爆箱2の下部において、側板22と縁部材23との間には、防爆箱2の内部と外部とを連通する通気孔Hが形成される。本実施形態においては、通気孔Hを介して岩石Rの爆破の際の爆風を防爆箱2の外部に逃がすことにより、爆破時の防爆箱2の浮き上がりを抑制している。
【0026】
側板22の外側面における端部には、防爆装置1を移動させる際に図示しないワイヤを係止するための係止部25が形成されている。また、側板22の外側面における中途部には、固定ワイヤ31が挿通されるワイヤ挿通部26が形成されている。
【0027】
図1から図3に示す如く、防爆箱2にはスカート部材3が側板22の外側面から外方に延出される。スカート部材3は複数の樹脂製シートを繋ぎ合わせて形成されている。スカート部材3の内側端部には連結ワイヤ33が挿通されている。固定ワイヤ31と連結ワイヤ33とが連結部材32で連結されることにより、スカート部材3が防爆箱2に組付けられる。本実施形態においては、スカート部材3により通気孔Hからの破片の飛散や爆風を抑制する構成としている。
【0028】
図2及び図3に示す如く、防爆箱2の内周面(天板21の下面及び側板22の内側面)には緩衝板4が貼付される。緩衝板4は発泡材で形成された板材の表面を樹脂化合物で被覆することにより構成される。樹脂化合物にはポリウレア樹脂が採用される。このように、緩衝板4の表面を樹脂化合物で被覆することにより、緩衝板4の強度を高める構成としている。
【0029】
本実施形態に係る防爆装置1を使用する際は、まず、破砕対象物である岩石Rに穿孔して、穿孔した孔に破砕材Cを挿入し、破砕材Cの上から封止材を孔の開口部に挿入する。さらに、図1及び図2に示す如く岩石Rの周囲に複数個の土嚢Sを配置しする。そして、係止部25にワイヤを係止して防爆装置1を吊下げて、防爆装置1を岩石Rと土嚢Sとに被せる。この状態で破砕材Cに電圧を印加し、岩石Rを爆破するのである。
【0030】
本実施形態に係る防爆装置1によれば、岩石Rを爆破した際に岩石Rの破片が緩衝板4に衝突するため、防爆箱2が受ける損傷を緩和することができる。このため、破砕を行う度に防爆装置1の交換又は修理を行う必要がなく、作業効率を向上させることができる。
【0031】
また、本実施形態に係る防爆装置1によれば、緩衝板4の表面を樹脂化合物で被覆することにより、緩衝板4の強度を高める構成としている。これにより、岩石Rの破片が衝突した際に緩衝板4が受ける損傷を抑制できるため、防爆装置1の耐久性を向上させることができる。
【0032】
また、本実施形態に係る防爆装置1によれば、防爆箱2の下部に通気孔Hを形成している。これにより、爆破の際の爆風を防爆箱2の外部に逃がすことが可能となるため、防爆箱2の内面に設けた緩衝板4に加わる衝撃を緩和することができる。また、本実施形態に係る防爆装置1によれば、防爆箱2にスカート部材3を設けることにより、通気孔Hからの破片の飛散や爆風を抑制する構成としている。
【0033】
[比較実験]
次に、本実施形態に係る防爆装置1を比較例1から比較例3と比較して行った実験について、図4から図6を用いて説明する。防爆装置1は図2に示す如く、破砕材Cを挿入した岩石Rの周囲に複数の土嚢Sを配置した状態で使用した。
【0034】
比較例1は図4に示す如く、破砕材C1を挿入した岩石R1を地面Gに露出させた状態で実験を行った。比較例2は図5に示す如く、破砕材C2を挿入した岩石R2を地面Gに露出させ、岩石R2の周囲に複数の土嚢Sを配置した状態で実験を行った。
【0035】
比較例3は図6に示す如く、破砕材C3を挿入した岩石R3を地面Gに露出させ、岩石R3の周囲に防爆マット50を配置した状態で実験を行った。防爆マット50は、布製のマット用袋51の内部に土嚢Sを封入し、岩石R3側の面(下面)にポリウレア樹脂が塗布された緩衝部材52を貼付したものである。なお、何れのケースにおいても、使用した土嚢の数は同数として実験を行った。
【0036】
今回の実験においては、本実施形態に係る防爆装置1を用いた場合も、比較例1から比較例3の場合も、何れも図4に示す如く岩石R~R3から所定距離離れた場所にカメラ41を配置し、岩石R~R3を破砕する瞬間を撮影した。また、スケール42を用いて、岩石R~R3を破砕した際に飛散する破片の高さを計測した。また、岩石R~R3から所定距離離れた場所に集音機43を配置し、岩石R~R3を破砕する際の爆破音の音量を計測した。
【0037】
実験の結果、比較例1では飛散高さ2000mm以上、爆破音84.9dBが計測された。同様に、比較例2では飛散高さ300mm、爆破音71.4dBが計測された。同様に、比較例3では飛散高さ150mm、爆破音78.2dBが計測された。一方、本実施形態に係る防爆装置1を用いた結果、飛散高さ30mm、爆破音61.2dBが計測された。
【0038】
上記の如く、本実施形態に係る防爆装置1によって、何れの比較例と比べても、破片の飛散高さ及び爆破音の音量のそれぞれで抑制された計測結果となった。即ち、本実施形態に係る防爆装置1においては、破片の飛散及び爆破音が周囲に与える影響を抑制することができるという効果が確認された。
【0039】
[防爆装置1A]
次に、本発明の変形例に係る防爆装置1A、及び、防爆装置1Aを用いた破砕方法について、図7を用いて説明する。本実施形態に係る防爆装置1Aは、防爆装置1と同様に、地面Gに露出する破砕対象物である岩石Rを、破砕材Cを用いて破砕する際に、岩石Rの破片の飛散を抑止するために用いられる。
【0040】
図7に示す如く、防爆装置1Aは、防爆装置1の構成に、防爆箱2の上面に緩衝装置6加えて構成される。本変形例において、緩衝装置6以外の構成は防爆装置1と同様であるため、以下では緩衝装置6を中心に説明し、共通する構成については詳細な説明を省略する。
【0041】
本変形例に係る防爆装置1Aにおいて、緩衝装置6は図7に示す如く、枠材61、圧縮ばね62、押さえ板63、及び、ガイド部材64を主な構成要素として構成される。枠材61は防爆箱2の上面に固定される。枠材61には複数の圧縮ばね62が配置される。圧縮ばね62の上面には押さえ板63が配置され、押さえ板63はガイド部材64によって上下方向の変位がガイドされる。
【0042】
本変形例に係る防爆装置1Aを用いて岩石Rを破砕する際は、図7に示す如く、防爆装置1Aにおける緩衝装置6を重機Mにより押圧した状態で岩石Rを爆破する。これにより、重機Mで防爆箱2を押圧した状態で岩石Rの破砕を行うことが可能となる。即ち、本変形例に係る防爆装置1Aによれば、爆破の際の防爆箱2の浮き上がりを抑え、破片の飛散及び爆破音が周囲に与える影響を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1 防爆装置 1A 防爆装置(変形例)
2 防爆箱 3 スカート部材
4 緩衝板 6 緩衝装置
21 天板 22 側板
23 縁部材 24 連結部
25 係止部 26 ワイヤ挿通部
31 固定ワイヤ 32 連結部材
33 連結ワイヤ
41 カメラ 42 スケール
43 集音機
50 防爆マット 51 マット用袋
52 緩衝部材
61 枠材 62 圧縮ばね
63 押さえ板 64 ガイド部材
H 通気孔 R 岩石(破砕対象物)
C 破砕材(非火薬破砕材)
G 地面 S 土嚢
M 重機

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7