(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080505
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】板材の接合構造及び製造方法
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20240606BHJP
B62D 25/04 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
B62D25/20 F
B62D25/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193761
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤下 公壽
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 博之
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB12
3D203BB53
3D203CA02
3D203CA52
3D203CA57
3D203CA63
3D203CA66
3D203CA67
3D203CA69
3D203CB03
(57)【要約】
【課題】十分な剛性及び強度を確保しつつ、板厚の設定に自由度を持たせたり、部品点数の増加を抑制したりできる板材の接合構造及び製造方法を提供する。
【解決手段】板材の接合構造1は、一対のフランジ部12を有し、断面ハット形状の第1板材10と、一対のフランジ部12に当接して接合された第2板材20と、を備え、筒形状に形成される。一対のフランジ部12は、第2板材20に当接する下面121と、下面121とは反対側に位置する上面122と、を有する。各フランジ部12の上面122には、第1板材10と第2板材20との接合部30とは異なる位置に設けられ、第2板材20とは反対側に突出する補強部13が一体的に設けられている。補強部13は、第1板材10の下面121と上面122との間に形成され、フランジ部12の長手方向及び板厚方向に直交する方向から見て閉断面を有する閉断面空間S2を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のフランジ部を有し、断面ハット形状の第1板材と、
前記第1板材の前記一対のフランジ部に当接して接合された第2板材と、
を備え、筒形状に形成された板材の接合構造であって、
前記第1板材の前記一対のフランジ部は、前記第2板材に当接する第1面と、該第1面とは反対側に位置する第2面と、を有し、
各フランジ部の前記第2面には、前記第1板材と前記第2板材との接合部とは異なる位置に設けられ、前記第2板材とは反対側に突出する補強部が一体的に設けられ、
前記補強部は、前記第1板材の前記第1面と前記第2面との間に形成され、前記フランジ部の長手方向及び板厚方向に直交する方向から見て閉断面を有する閉断面空間を含む、
板材の接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載の板材の接合構造であって、
前記接合部は、前記第1板材と前記第2板材との溶接により形成され、
前記接合部において、前記第1板材と前記第2板材の板厚は略同一である、
板材の接合構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の板材の接合構造であって、
各フランジ部の前記第2面には、前記補強部が前記長手方向に沿って複数設けられている、
板材の接合構造。
【請求項4】
請求項3に記載の板材の接合構造であって、
各フランジ部には、前記接合部が前記長手方向に沿って複数設けられ、
前記複数の接合部及び前記複数の補強部は、前記長手方向に沿って交互に設けられている、
板材の接合構造。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の板材の接合構造であって、
前記補強部の前記閉断面空間には、該閉断面空間を複数に分割する少なくとも1つの壁部が設けられている、
板材の接合構造。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の板材の接合構造であって、
前記第1板材は、積層造形することにより一体に形成された、
板材の接合構造。
【請求項7】
請求項6に記載の板材の接合構造であって、
前記第1板材の前記断面ハット形状は、凹部と、前記凹部に設けられる前記一対のフランジ部と、により構成され、
前記第1板材は、前記接合部の板厚が前記凹部の板厚よりも薄く形成される、
板材の接合構造。
【請求項8】
請求項6に記載の板材の接合構造であって、
前記補強部の前記閉断面空間は、前記フランジ部の前記長手方向及び前記板厚方向に直交する方向に貫通している、
板材の接合構造。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の板材の接合構造に用いられる前記第1板材の製造方法であって、
前記第1板材を積層造形することにより一体に形成する、
製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の製造方法であって、
前記第1板材の前記断面ハット形状は、凹部と、前記凹部に設けられる前記一対のフランジ部と、により構成され、
前記第1板材を、前記接合部の板厚が前記凹部の板厚よりも薄くなるように形成する、
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材の接合構造及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも高齢者や障がい者や子供といった脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて車体剛性に関する開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。
【0003】
例えば、特許文献1には、車体における、フロア材と補強メンバーのフランジ部とが溶接により接合された構造が記載されている。補強メンバーのフランジ部の先端面には張出し部が設けられており、補強メンバーへの溶接面積を十分確保して溶接強度を高めている。また、薄肉のフロア材に対して補強メンバーを適切な厚みを有する肉厚に設定してフロア材の強度・剛性を高めつつも、スポット溶接を可能とするために、補強メンバーの溶接部は薄肉状に形成することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、自動車のフロントサイドフレームの後端部とフロアフレームの前端部とがスポット溶接により接合されている構造が記載されている。特許文献2では、フロアフレームとの間に閉断面を形成するスティフナ(補強部材)が設けられている。別部品として追加されたスティフナはフランジ部を有し、スティフナのフランジ部とフロアフレームのフランジ部とフロントサイドフレームのフランジ部とからなる3枚の板材を重ね合わせてスポット溶接することで、スティフナとフロアフレームとフロントサイドフレームとが接合されている。特許文献2では、十分な溶接強度を確保するために、4枚の板材(フロントサイドフレーム、フロアフレーム、スティフナ、及びフロアパネル)を重ねたスポット溶接は回避されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-284987号公報
【特許文献2】特開2006-290154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、補強メンバーの溶接部を薄肉状に形成しているものの、溶接対象であるフロア材の板厚と比較すると、補強メンバーの溶接部の板厚はフロア材の板厚の約3倍に設定されている。溶接の品質をより高めるためには、補強メンバーの溶接部とフロア材との板厚の差をより小さくすることが望ましいが、補強メンバーはプレス成形により加工されているので、補強メンバーの溶接部の板厚をより薄肉化することは困難であった。すなわち、製法の限界によって溶接部を含めた補強メンバーの板厚がある程度肉厚となり、板厚の設定に制限があった。
【0007】
特許文献2の接合構造では、スティフナを設けている。スティフナを設けることにより、フレームの強度を高めるために板材をさらに設ける必要がないものの、スティフナ自体を別部品として設けているので部品点数が増加している。
【0008】
板材の接合構造において、剛性及び強度を高めるための構造は様々提案されているものの、例えば前述した板厚の制限や部品点数の増加等の観点から、改善の余地があった。
【0009】
本発明は、十分な剛性及び強度を確保しつつ、板厚の設定に自由度を持たせたり、部品点数の増加を抑制したりできる板材の接合構造及び製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
一対のフランジ部を有し、断面ハット形状の第1板材と、
前記第1板材の前記一対のフランジ部に当接して接合された第2板材と、
を備え、筒形状に形成された板材の接合構造であって、
前記第1板材の前記一対のフランジ部は、前記第2板材に当接する第1面と、該第1面とは反対側に位置する第2面と、を有し、
各フランジ部の前記第2面には、前記第1板材と前記第2板材との接合部とは異なる位置に設けられ、前記第2板材とは反対側に突出する補強部が一体的に設けられ、
前記補強部は、前記第1板材の前記第1面と前記第2面との間に形成され、前記フランジ部の長手方向及び板厚方向に直交する方向から見て閉断面を有する閉断面空間を含む。
【0011】
また、本発明は、
上述の板材の接合構造に用いられる前記第1板材の製造方法であって、
前記第1板材を積層造形することにより一体に形成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、十分な強度を確保しつつ、板厚の設定に自由度を持たせたり、部品点数の増加を抑制したりできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態である板材の接合構造1の斜視図であり、接合部30をスポット溶接で形成した図である。
【
図2】板材の接合構造1を下方から見たときの分解斜視図である。
【
図3】板材の接合構造1の斜視図であり、接合部30をアーク溶接又はレーザー溶接で形成した図である。
【
図5】変形例1の補強部13Aが設けられた第1板材10の斜視図である。
【
図6】変形例2の補強部13Bが設けられた第1板材10の斜視図である。
【
図7】変形例3の補強部13Cが設けられた第1板材10の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の板材の接合構造及び製造方法の一実施形態について、添付図面に基づいて説明する。
【0015】
(板材の接合構造)
図1及び
図2に示すように、板材の接合構造1は、第1板材10と第2板材20とを備え、第1板材10と第2板材20とを接合して筒形状となるように形成されている。板材の接合構造1は、例えば、自動車に設けられたピラーやサイドシルである。ただし、板材の接合構造1は、これに限られず、少なくとも2枚の板材を接合して筒形状に形成したものであれば、様々な用途に適用可能であり、また自動車に設けられる部品に限られない。なお、説明の便宜上、筒形状の延在方向を前後方向とし、第1板材10と第2板材20とが重なる方向(板厚方向)を上下方向とし、前後方向及び上下方向に直交する方向を左右方向とするが、実際の方向とは無関係である。
【0016】
第1板材10は、前後方向から見たときに断面ハット形状をなす。具体的には、第1板材10は、凹部11と、凹部11に設けられる一対のフランジ部12と、を有する。本実施形態では、凹部11は、天板部111と、天板部111の左右方向の両端に傾斜して設けられた一対の縦壁部112と、を有する。一対のフランジ部12は、一対の縦壁部112に接続されている。
【0017】
一対のフランジ部12は、下面121と、下面121と反対側に位置する上面122とを有する。下面121には、第2板材20が当接する。
【0018】
第2板材20は、平板形状をなす。第2板材20は、第1板材10よりも薄肉の板材である。第2板材20は、第1板材10の一対のフランジ部12に当接して接合される。一対のフランジ部12には、補強部13が一体的に設けられており、第1板材10と第2板材20との接合部30は、一対のフランジ部12において補強部13とは異なる位置に設けられている。補強部13の詳細は後述する。
【0019】
接合部30における第1板材10の板厚は、第1板材10の他の部分、すなわち凹部11の板厚や補強部13の板厚(補強部13における下面121と上面122との距離)よりも薄肉に形成されている。また、接合部30における第1板材10の板厚は、第2板材20の板厚と略同一に形成されている。
【0020】
接合部30は、例えば、第1板材10と第2板材20との溶接により形成される。溶接態様としては、例えば、スポット溶接や、アーク溶接、レーザー溶接等が挙げられる。スポット溶接は、
図1の黒丸で示すように第1板材10と第2板材20とを重ね合わせた面上で行われ、アーク溶接又はレーザー溶接は、
図3の太い実線で示すように第1板材10及び第2板材20の外縁部で行われる。
【0021】
断面ハット形状の第1板材10と平板形状の第2板材20とが接合されることにより、第1板材10と第2板材20とにより囲まれた内部空間S1が形成される。すなわち、板材の接合構造1は、内部空間S1を有する筒形状に形成される。板材の接合構造1の断面は、前後方向から見たとき、台形形状をなす。
【0022】
続いて、補強部13の詳細について、
図4を参照して説明する。なお、以下では、一対のフランジ部12を単にフランジ部12とも称する。また、前後方向を、板材の接合構造1の長手方向又はフランジ部12の長手方向とも称する。
【0023】
補強部13は、フランジ部12の上面122に一体的に設けられており、第2板材20とは反対側に突出する突出部である。補強部13の突出面は、フランジ部12の上面122の一部を構成する。
【0024】
補強部13は、フランジ部12の長手方向及び板厚方向に直交する方向(すなわち左右方向)から見たとき、台形形状をなすように突出している。また、
図1及び
図3に示すように、補強部13は、左右方向において、凹部11の縦壁部112からフランジ部12の先端まで延在しており、左右方向におけるフランジ部12の長さと略同一の長さを有する。
【0025】
前述のとおり、補強部13は、第1板材10と第2板材20との接合部30とは異なる位置に設けられている。すなわち、補強部13において、第1板材10と第2板材20とは当接しているが、接合していない。
【0026】
図4に示すように、補強部13は、第1板材10の下面121と上面122との間に形成され、フランジ部12の長手方向及び板厚方向に直交する方向(すなわち左右方向)から見て閉断面を有する閉断面空間S2を含む。閉断面空間S2には後述する複数の壁部130が設けられており、閉断面空間S2の閉断面は、左右方向から見たとき、幾何学形状(トラス構造)をなす。閉断面空間S2は、左右方向に貫通しており、板材の接合構造1の内部空間S1に連通する(
図1~
図3参照)。
【0027】
板材の接合構造1は、前述した構成を備える補強部13を有することにより、剛性が高くなる。詳しく説明すると、補強部13により、板材の接合構造1の曲げ剛性が向上する。例えば、板材の接合構造1の後端部を固定して第1板材10の前端中央部に所定の荷重を上方に加えたとき、補強部13を設けない場合と比べて、板材の接合構造1の上方への変位が小さくなる。また、補強部13により、板材の接合構造1の強度も高くなる。
【0028】
以上説明したように、第1板材10には、第1板材10と第2板材20との接合部30とは異なる位置に、第2板材20とは反対側に突出する補強部13が一体的に設けられている。そして、補強部13は閉断面空間S2を含む。このような閉断面空間S2を含む補強部13により、板材の接合構造1の剛性及び強度を高めることができる。
【0029】
また、補強部13は、第1板材10に一体的に設けられているので、第1板材とは別に補強部を設ける場合と比べて、部品点数が増加することを抑制できる。
【0030】
本実施形態では、板材の接合構造1の剛性及び強度をより高めるために、各フランジ部12の上面122には、補強部13が長手方向に沿って複数設けられている。隣り合う補強部13は、所定の間隔を空けて設けられている。
【0031】
また、接合部30は、各フランジ部12の長手方向に沿って複数設けられており、複数の補強部13及び複数の接合部30が長手方向に沿って交互に設けられている。ここでは、長手方向における各フランジ部12の前端部及び後端部には接合部30が設けられている。複数の接合部30が長手方向に沿って設けられていることにより、第1板材10と第2板材20との接合が強固となる。また、複数の補強部13及び複数の接合部30が長手方向に沿って交互に設けられていることにより、板材の接合構造1の剛性及び強度をより高めることができる。
【0032】
さらに、閉断面空間S2には、閉断面空間S2を複数に分割する複数の壁部130が設けられている。各壁部130は、閉断面空間S2の下部から上部まで垂直に又は傾斜して設けられている。左右方向から見たとき、複数の壁部130により分割されて形成された各空間は、三角形状をなす。複数の壁部130は、閉断面空間S2の剛性及び強度をより一層高めるためのスティフナとして機能する。なお、本実施形態では、壁部130を複数設けたが、これに限られない。例えば、閉断面空間S2を2つに分割する1つの壁部130のみを設ける構成であってもよい。
【0033】
(接合部における板厚)
続いて、接合部30における第1板材10及び第2板材20の板厚について説明する。
補強部13を設けない場合、板材の接合構造の剛性及び強度を高めるために、一般的には、接合部における2枚の板材のうち少なくとも一方(例えば第1板材)を肉厚に形成する。
【0034】
本実施形態では、板材の接合構造1は、補強部13により十分な剛性及び強度を有する。よって、接合部30における第1板材10を肉厚にする必要はない。換言すると、補強部13により、接合部30における板厚の設定に自由度を持たせることができる。例えば、接合部30における第1板材10を薄肉にすることができ、軽量化につながる。
【0035】
また、接合部30を溶接により形成する場合、溶接品質を高めるためには、接合部30における第1板材10及び第2板材20の板厚比は1:1であることが望ましい。これは、板厚に差がある場合、溶接部が均質とならなかったり、溶接が安定しなかったりするためである。従来のように、例えば第1板材10の板厚を剛性及び強度の観点から厚くした場合、溶接品質を高めようとすると第2板材20の板厚も厚くする必要があり、板材の重量が増加してしまう。これに対し、前述のとおり、板材の接合構造1では、接合部30における板厚の設定に自由度があるので、第1板材10及び第2板材20の板厚を略同一として板厚比を1:1として溶接品質を高めることができる。すなわち、接合部30における薄肉の第1板材10に対し、同じく薄肉の第2板材20を溶接することで、溶接品質の向上と軽量化を両立できる。
【0036】
(第1板材の製作)
本実施形態の第1板材10は、例えば、金属粉末材料を一層ずつ積層凝固させて三次元の複雑な形状の部品を製作することができる付加製造技術(Additive Manufacturing技術、以下AM技術とも称する)で一体に形成されている。これにより、従来の機械加工や鋳造のような製造方法では製造が困難であった微細で複雑な三次元形状の部品を製作することができる。
【0037】
第1板材10の閉断面空間S2は、フランジ部12の下面121と上面122との間に設けられるので微細な構造となり得るが、AM技術を用いることで、閉断面空間S2を有する第1板材10を一体に製作することができる。また、閉断面空間S2内に設けられた複数の壁部130も微細で複雑な三次元形状となり得るが、AM技術を用いることで、複数の壁部130を有する第1板材10を一体に製作することができる。
【0038】
また、AM技術により、接合部30における第1板材10の板厚を、他の部分(凹部11や補強部13)の板厚よりも容易に薄肉にできる。したがって、実際に板材の接合構造1に要求される剛性及び強度や、第2板材20の板厚を鑑み、接合部30における第1板材10の板厚を設定することができる。
【0039】
また、AM技術により第1板材10を製作した後、閉断面空間S2内に凝固せずに残った金属粉末が付着していることがある。閉断面空間S2を左右方向に貫通した構成とする場合、例えば閉断面空間S2内に高圧エアーを吹きかけることで、閉断面空間S2内に付着した金属粉末を除去しやすい。
【0040】
《変形例1》
変形例1では、
図5に示すように、第1板材10に設けられた補強部13Aの閉断面空間S2Aは、左右方向に貫通していない。具体的には、閉断面空間S2Aは、板材の接合構造1の内部空間S1には連通していない。このような補強部13Aの構成であっても、板材の接合構造1の剛性及び強度を高めることができる。
【0041】
《変形例2》
変形例2では、
図6に示すように、第1板材10に設けられた補強部13Bの閉断面空間S2Bには、壁部130が設けられていない。このような補強部13Bの構成であっても、板材の接合構造1の剛性及び強度を高めることができる。
【0042】
《変形例3》
変形例3では、
図7に示すように、第1板材10に設けられた補強部13Cは、左右方向において、凹部11の縦壁部112からフランジ部12の中央部まで延在している。このような補強部13Cの構成であっても、板材の接合構造1の剛性及び強度を高めることができる。
【0043】
また、変形例3では、接合部30をアーク溶接やレーザー溶接で形成する場合、フランジ部12の長手方向における外縁部全体に接合部30を形成することができる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0045】
例えば、前述した実施形態では、板材の接合構造1の長手方向(前後方向)から見たとき、板材の接合構造1の断面は台形形状をなしたが、これに限られず、任意の形状とすることができる。例えば、板材の接合構造1の断面は、半円形状、半楕円形状、矩形状、略U字形状、略V字形状等であってもよい。この場合、第1板材10の凹部11をこれらの形状に形成する。
【0046】
また、第2板材20は、平板形状でなくてもよい。例えば、第2板材20は、第1板材10のように凹部及び一対のフランジ部を有してもよい。
【0047】
また、接合部30は、溶接により形成される構成に限られず、例えば、セルフピアスリベットのような機械締結であってもよい。前述した実施形態では、接合部30における板厚の設定に自由度を持たせることができるので、セルフピアスリベットによる締結に適した板厚の設定を行うことができる。
【0048】
また、接合部30は、ロウ材や接着剤により形成されてもよい。例えば、第1板材10と第2板材20との当接面の一部にペースト状のロウ材を塗布して加熱することで接合部30を形成してもよいし、当接面の一部に接着剤を塗布して接合部30を形成してもよい。
【0049】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0050】
(1) 一対のフランジ部(一対のフランジ部12)を有し、断面ハット形状の第1板材(第1板材10)と、
前記第1板材の前記一対のフランジ部に当接して接合された第2板材(第2板材20)と、
を備え、筒形状に形成された板材の接合構造(板材の接合構造1)であって、
前記第1板材の前記一対のフランジ部は、前記第2板材に当接する第1面(下面121)と、該第1面とは反対側に位置する第2面(上面122)と、を有し、
各フランジ部の前記第2面には、前記第1板材と前記第2板材との接合部(接合部30)とは異なる位置に設けられ、前記第2板材とは反対側に突出する補強部(補強部13,13A,13B,13C)が一体的に設けられ、
前記補強部は、前記第1板材の前記第1面と前記第2面との間に形成され、前記フランジ部の長手方向及び板厚方向に直交する方向(左右方向)から見て閉断面を有する閉断面空間(閉断面空間S2,S2A,S2B)を含む、
板材の接合構造。
【0051】
(1)によれば、第1板材には、第1板材と第2板材との接合部とは異なる位置に、第2板材とは反対側に突出する補強部が一体的に設けられている。そして、補強部は閉断面空間を含む。このような構成により、板材の接合構造の剛性及び強度を高めることができる。また、板材の接合構造は補強部により十分な剛性及び強度を有するので、剛性及び強度を高めるために溶接部における板厚を肉厚にする必要はなく、接合部における板厚の設定に自由度を持たせることができる。さらに、補強部は、第1板材に一体的に設けられているので、第1板材とは別に補強部を設ける場合と比べて、部品点数の増加を抑制できる。
【0052】
(2) (1)に記載の板材の接合構造であって、
前記接合部は、前記第1板材と前記第2板材との溶接により形成され、
前記接合部において、前記第1板材と前記第2板材の板厚は略同一である、
板材の接合構造。
【0053】
(2)によれば、均質且つ安定な溶接を行うことができ、溶接品質を高めることができる。
【0054】
(3) (1)又は(2)に記載の板材の接合構造であって、
各フランジ部の前記第2面には、前記補強部が前記長手方向に沿って複数設けられている、
板材の接合構造。
【0055】
(3)によれば、板材の接合構造の剛性及び強度をより高めることができる。
【0056】
(4) (3)に記載の板材の接合構造であって、
各フランジ部には、前記接合部が前記長手方向に沿って複数設けられ、
前記複数の接合部及び前記複数の補強部は、前記長手方向に沿って交互に設けられている、
板材の接合構造。
【0057】
(4)によれば、接合部が長手方向に沿って複数設けられているので、第1板材と第2板材との接合が強固となる。そして、複数の接合部及び複数の補強部は、長手方向に沿って交互に設けられているので、板材の接合構造の剛性及び強度をより高めることができる。
【0058】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の板材の接合構造であって、
前記補強部の前記閉断面空間には、該閉断面空間を複数に分割する少なくとも1つの壁部(壁部130)が設けられている、
板材の接合構造。
【0059】
(5)によれば、閉断面空間の剛性及び強度を高めることができ、板材の接合構造全体の剛性及び強度をより一層高めることができる。
【0060】
(6) (1)から(5)のいずれかに記載の板材の接合構造であって、
前記第1板材は、積層造形することにより一体に形成された、
板材の接合構造。
【0061】
(6)によれば、閉断面空間を含む補強部が設けられた第1板材を一体に形成することができる。
【0062】
(7) (6)に記載の板材の接合構造であって、
前記第1板材の前記断面ハット形状は、凹部(凹部11)と、前記凹部に設けられる前記一対のフランジ部と、により構成され、
前記第1板材は、前記接合部の板厚が前記凹部の板厚よりも薄く形成される、
板材の接合構造。
【0063】
(7)によれば、板材の接合構造に実際に要求される剛性及び強度や、第2板材の板厚を鑑み、接合部における第1板材の板厚を、積層造形により容易に設計することができる。
【0064】
(8) (6)又は(7)に記載の板材の接合構造であって、
前記補強部の前記閉断面空間は、前記フランジ部の前記長手方向及び前記板厚方向に直交する方向に貫通している、
板材の接合構造。
【0065】
積層造形により第1板材を形成した後、閉断面空間内に積層造形に用いた材料が付着していることがある。(8)によれば、閉断面空間はフランジ部の長手方向及び板厚方向に直交する方向に貫通しているので、閉断面空間内に付着した材料を除去しやすい。
【0066】
(9) (1)から(5)のいずれかに記載の板材の接合構造に用いられる前記第1板材の製造方法であって、
前記第1板材を積層造形することにより一体に形成する、
製造方法。
【0067】
(9)によれば、閉断面空間を含む補強部が設けられた第1板材を一体に形成することができる。
【0068】
(10) (9)に記載の製造方法であって、
前記第1板材の前記断面ハット形状は、凹部(凹部11)と、前記凹部に設けられる前記一対のフランジ部と、により構成され、
前記第1板材を、前記接合部の板厚が前記凹部の板厚よりも薄くなるように形成する、
製造方法。
【0069】
(10)によれば、板材の接合構造に実際に要求される剛性及び強度や、第2板材の板厚を鑑み、接合部における第1板材の板厚を、積層造形により容易に設計することができる。
【符号の説明】
【0070】
10 第1板材
11 凹部
12 一対のフランジ部
121 下面(第1面)
122 上面(第2面)
13,13A,13B,13C 補強部
130 壁部
20 第2板材
30 接合部
S2,S2A,S2B 閉断面空間