(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080511
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】二次電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/633 20140101AFI20240606BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20240606BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240606BHJP
H01M 10/6571 20140101ALI20240606BHJP
【FI】
H01M10/633
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/6571
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193768
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】大渕 浩司
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031HH06
5H031KK03
(57)【要約】
【課題】二次電池を効率的に暖機できる二次電池システムを提供すること。
【解決手段】二次電池システム1は、二次電池2と、二次電池2を加熱する暖房装置3と、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t
1を算出する始動時間推定ユニット4と、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t
2を算出する暖房時間推定ユニット5と、始動時間推定ユニット4および暖房時間推定ユニット5に接続され、推定所要時間t
1、および、推定所要時間t
2に応じて、暖房装置3の運転を制御する制御ユニット6とを備えている。制御ユニット6は、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t
1が、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t
2以下である場合に、暖房装置3により二次電池2を加熱し、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t
2が経過したときに、二次電池2の運転が始動されていなかった場合に、暖房装置3により二次電池2を保温する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池と、
前記二次電池を加熱する暖房手段と、
前記二次電池の運転始動までの推定所要時間t1を算出する始動時間推定手段と、
前記二次電池の暖房完了までの推定所要時間t2を算出する暖房時間推定手段と、
前記始動時間推定手段および前記暖房時間推定手段に接続され、前記推定所要時間t1、および、前記推定所要時間t2に応じて、前記暖房手段の運転を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、
前記二次電池の運転始動までの推定所要時間t1が、前記二次電池の暖房完了までの推定所要時間t2以下である場合に、前記暖房手段により前記二次電池を加熱し、
前記二次電池の暖房完了までの推定所要時間t2が経過した後、前記二次電池の運転が始動されていなかった場合に、前記暖房手段により前記二次電池を保温する、
二次電池システム。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記暖房手段による前記二次電池の保温を開始させた後、所定条件に従って、前記保温を停止させる、請求項1に記載の二次電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の動力源として、二次電池システムが注目されている。二次電池システムは、二次電池(リチウムイオン電池など)を備えている。二次電池システムにおいて、二次電池は、例えば、外付けの暖房装置により加熱可能とされており、必要に応じて、作動開始の前に、暖房装置によって暖機(暖房)される。
【0003】
二次電池システムとして、具体的には、バッテリ暖機装置が知られている。バッテリ暖機装置は、車両に搭載されるバッテリと、バッテリを充電する外部充電手段と、バッテリを暖機するバッテリ暖機手段と、車両を始動する始動予定時刻を設定する始動時刻設定手段と、バッテリの状態を検出するバッテリ状態検出手段と、バッテリの充電を制御する充電制御手段と、バッテリの暖機を制御する暖機制御手段とを備えている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、二次電池システムには、低コスト化のために、より効率的に暖機することが、要求される。しかし、上記のバッテリ暖機装置は、二次電池を効率的に暖機できない。
【0006】
本発明は、二次電池を効率的に暖機できる二次電池システムである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、二次電池と、前記二次電池を加熱する暖房手段と、前記二次電池の運転始動までの推定所要時間t1を算出する始動時間推定手段と、前記二次電池の暖房完了までの推定所要時間t2を算出する暖房時間推定手段と、前記始動時間推定手段および前記暖房時間推定手段に接続され、前記推定所要時間t1、および、前記推定所要時間t2に応じて、前記暖房手段の運転を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記二次電池の運転始動までの推定所要時間t1が、前記二次電池の暖房完了までの推定所要時間t2以下である場合に、前記暖房手段により前記二次電池を加熱し、前記二次電池の暖房完了までの推定所要時間t2が経過した後、前記二次電池の運転が始動されていなかった場合に、前記暖房手段により前記二次電池を保温する、二次電池システムを、含んでいる。
【0008】
上記の二次電池システムでは、二次電池の運転始動までの推定所要時間t1が、二次電池の暖房完了までの推定所要時間t2以下である場合に、二次電池が加熱される。
【0009】
そのため、上記の二次電池システムによれば、二次電池の過剰な暖機を抑制できる。すなわち、上記の二次電池システムは、二次電池を効率的に暖機できる。
【0010】
さらに、上記の二次電池システムでは、二次電池の暖房完了までの推定所要時間t2が経過した後、二次電池の運転が始動されていなかった場合には、二次電池が保温される。
【0011】
そのため、上記の二次電池システムによれば、二次電池の冷却を抑制できる。すなわち、上記の二次電池システムは、二次電池を効率的に暖機できる。
【0012】
本発明[2]は、前記暖房手段による前記二次電池の保温を開始させた後、所定条件に従って、前記保温を停止させる、上記[1]に記載の二次電池システムを、含んでいる。
【0013】
上記の二次電池システムでは、二次電池の保温が、所定条件に従って停止する。
【0014】
そのため、上記の二次電池システムによれば、二次電池の過剰な保温を抑制できる。すなわち、上記の二次電池システムは、二次電池を効率的に暖機できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の二次電池システムでは、二次電池の運転始動までの推定所要時間t1が、二次電池の暖房完了までの推定所要時間t2以下である場合に、制御手段が、暖房手段により二次電池を加熱する。そのため、上記の二次電池システムは、二次電池の過剰な暖機を抑制できる。また、上記の二次電池システムでは、二次電池の暖房完了までの推定所要時間t2が経過した後、二次電池の運転が始動されていなかった場合には、制御手段が、暖房手段により二次電池を保温する。そのため、上記の二次電池システムによれば、二次電池の過剰な暖機を抑制できる。すなわち、上記の二次電池システムは、二次電池を効率的に暖機できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の二次電池システムの一実施形態を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に記載の二次電池システムにおいて実行される制御フローの一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.二次電池システム
(1)全体構成
図1において、二次電池システム1は、自動車100に搭載される二次電池2を、電気的に制御するシステムである。以下において、自動車100に搭載される二次電池2、および、二次電池2を制御する二次電池システム1について、詳述する。
【0018】
二次電池システム1は、二次電池2と、暖房手段としての暖房装置3と、始動時間推定手段としての始動時間推定ユニット4と、暖房時間推定手段としての暖房時間推定ユニット5と、制御手段としての制御ユニット6とを備えている。
【0019】
(2)二次電池
二次電池2は、自動車100の動力源である。二次電池2は、公知の構成を有している。例えば、二次電池2は、充放電可能な電池セル(図示せず)を、複数備えている。各電池セル(図示せず)は、例えば、セパレータと、セパレータを挟んで対向配置される正極および負極と、これらを浸漬させる電解液とを備えている。複数の電池セル(図示せず)は、例えば、直列にスタックされ、二次電池2を形成している。二次電池2としては、例えば、リチウムイオン電池が挙げられる。
【0020】
二次電池2は、図示しない外部電源に接続可能であり、外部電源から充電可能とされている。また、二次電池2は、図示しない電動装置(例えば、自動車100の駆動装置)に接続されており、電動装置(例えば、自動車100の駆動装置)に電力を供給可能としている。
【0021】
(3)暖房装置
暖房装置3は、二次電池2を加熱するための装置である。暖房装置3は、特に制限されず、公知の構成を有している。暖房装置3としては、公知のヒーターが挙げられる。暖房装置3は、二次電池2に接触または近接するように配置されている。好ましくは、暖房装置3は、二次電池2に接触するように配置されている。
【0022】
暖房装置3は、後述する制御ユニット6に電気的に接続されている。暖房装置3の作動が、制御ユニット6によって制御される。
【0023】
また、暖房装置3は、出力調整機能を有している。暖房装置3は、比較的高出力で作動することによって、二次電池2を加熱(温度上昇)できる。また、暖房装置3は、比較的低出力で作動することにより、二次電池2を保温(温度維持)できる。なお、暖房装置3の出力は、制御ユニット6によって制御される。
【0024】
(4)始動時間推定ユニット
始動時間推定ユニット4は、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1を算出するユニットである。二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1は、例えば、自動車100の運転開始までの所要時間の推定値である。
【0025】
より具体的には、始動時間推定ユニット4は、車両位置測定デバイス41と、運転者位置測定デバイス42と、始動時間演算装置43とを備えている。
【0026】
車両位置測定デバイス41は、例えば、自動車100に備えられ、自動車100の位置情報を取得する。車両位置測定デバイス41としては、例えば、公知のグローバル・ポジショニング・システム(GPS)が挙げられる。
【0027】
運転者位置測定デバイス42は、運転者の所持品(例えば、携帯電話、スマートフォンおよびイグニッションキー)に備えられ、運転者の位置情報を取得する。また、運転者位置測定デバイス42は、さらに、運転者が移動する場合、運転者の移動方向情報および移動速度情報を取得する。運転者位置測定デバイス42としては、例えば、公知のグローバル・ポジショニング・システム(GPS)が挙げられる。
【0028】
始動時間演算装置43は、自動車100の位置情報と、自動車100の運転者の位置情報、移動方向情報および移動速度情報とに基づいて、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1(自動車100の運転が開始されるまでの所要時間)を算出する。
【0029】
より具体的には、始動時間演算装置43は、図示しないが、上記の各種情報(自動車100の位置情報、自動車100の運転者の位置情報、移動方向情報および移動速度情報)が入力される情報格納部(例えば、ROMおよびRAM)と、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1を算出するための演算部(例えば、CPU)とを備えている。
【0030】
始動時間演算装置43の情報格納部は、車両位置測定デバイス41に対して、無線通信を介して接続されている。これにより、始動時間演算装置43の情報格納部は、自動車100の位置情報を入力可能としている。また、始動時間演算装置43の情報格納部は、運転者位置測定デバイス42に対して、無線通信を介して接続されている。これにより、始動時間演算装置43の情報格納部は、運転者の位置情報、移動方向情報および移動速度情報を入力可能としている。
【0031】
始動時間演算装置43の演算部は、始動時間算出プログラムP1を有している。始動時間算出プログラムP1は、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1を算出するためのプログラムである。始動時間算出プログラムP1は、始動時間演算装置43の情報格納部に入力された情報に基づいて、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1を算出する。
【0032】
例えば、始動時間算出プログラムP1は、自動車100の位置情報と、運転者の位置情報、移動方向情報および移動速度情報とに基づいて、運転者が自動車100に乗車する予測時間を算出し、自動車100の運転が開始される予測時間を算出する。これにより、始動時間演算装置43の演算部は、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1を算出(予測)する。
【0033】
換言すると、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1(自動車100の運転が開始されるまでの所要時間の推定値)は、例えば、自動車100の位置情報(例えば、地図座標)と、自動車100の運転者の位置情報(例えば、地図座標)、移動方向情報および移動速度情報(例えば、地図座標の移動速度)とに基づいて、算出される。
【0034】
(5)暖房時間推定ユニット
暖房時間推定ユニット5は、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2を算出するユニットである。二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2は、例えば、暖房装置3の作動開始から、二次電池2の温度(実測温度Ta)が、二次電池2の運転に適した温度(目標温度Tt)に到達するまでの所要時間の推定値である。
【0035】
暖房時間推定ユニット5は、電池温度測定デバイス51と、外気温度測定デバイス52と、暖房時間演算装置53とを備えている。
【0036】
電池温度測定デバイス51は、例えば、二次電池2に備えられ、二次電池2の温度情報および温度変化情報を取得する。電池温度測定デバイス51としては、例えば、公知の温度センサが挙げられる。
【0037】
外気温度測定デバイス52は、例えば、自動車100に備えられ、自動車100の外気温度情報を取得する。外気温度測定デバイス52としては、例えば、公知の温度センサが挙げられる。
【0038】
暖房時間演算装置53は、二次電池2の温度情報と、二次電池2の温度変化速度情報と、自動車100の外気温度情報と、暖房装置3の性能情報(暖房効率情報)とに基づいて、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2を算出する。
【0039】
より具体的には、暖房時間演算装置53は、上記の各種情報(二次電池2の温度情報、二次電池2の温度変化速度情報、自動車100の外気温度情報、および、暖房装置3の性能情報(暖房効率情報))が入力される情報格納部(例えば、ROMおよびRAM)と、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2を算出するための演算部(例えば、CPU)とを備えている。
【0040】
暖房時間演算装置53の情報格納部は、電池温度測定デバイス51に対して、無線通信を介して接続されている。これにより、暖房時間演算装置53の情報格納部は、二次電池2の温度情報および温度変化情報を入力可能としている。また、暖房時間演算装置53の情報格納部には、予め、暖房装置3の性能情報(暖房効率情報)が入力されている。
【0041】
暖房時間演算装置53の演算部は、暖房時間算出プログラムP2を有している。暖房時間算出プログラムP2は、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2を算出するためのプログラムである。暖房時間算出プログラムP2は、暖房時間演算装置53の情報格納部に入力された情報に基づいて、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2を算出する。
【0042】
例えば、暖房時間算出プログラムP2は、二次電池2の温度(実測温度Ta)および温度変化速度と、自動車100の外気温度情報と、暖房装置3の性能情報(暖房効率情報)とに基づいて、暖房開始から所定時間経過後の二次電池2の温度(予測温度)を算出する。そして、暖房時間算出プログラムP2は、二次電池2の予測温度が、二次電池2の運転に適した温度(目標温度Tt)に到達するまでの所要時間を、算出する。これにより、暖房時間演算装置53の演算部は、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2を算出(予測)する。
【0043】
換言すると、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2(暖房装置3の作動開始から二次電池2の温度(実測温度Ta)が目標温度Ttに到達するまでの所要時間の推定値)は、例えば、二次電池2の温度情報と、二次電池2の温度変化速度情報と、自動車100の外気温度情報と、暖房装置3の性能情報(暖房効率情報)とに基づいて、算出される。
【0044】
また、暖房時間算出プログラムP2は、必要に応じて、推定所要時間t2を算出(予測)する前に、二次電池2に暖房が必要であるかを、判断できる。より具体的には、暖房時間算出プログラムP2は、二次電池2の温度情報に基づいて、二次電池2の温度(実測温度Ta)が所定の温度(暖房要求温度Tc)以下であるか否かを判断できる。そして、暖房時間算出プログラムP2は、二次電池2の温度が、所定の温度(暖房要求温度Tc)以下である場合に、二次電池2に暖房が必要であると判断する。なお、暖房時間算出プログラムP2は、二次電池2の温度が、所定の温度(暖房要求温度Tc)を超過している場合には、二次電池2に暖房が必要でないと判断する。
【0045】
(6)制御ユニット
制御ユニット6は、始動時間推定ユニット4および暖房時間推定ユニット5に電気的に接続されている。制御ユニット6は、始動時間推定ユニット4により算出された、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1、および、暖房時間推定ユニット5により算出された、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2に応じて、暖房装置3の運転を制御する。
【0046】
より具体的には、制御ユニット6は、上記推定所要時間t1および上記推定所要時間t2が入力される情報格納部(例えば、ROMおよびRAM)と、暖房装置3の運転を制御するための演算部(例えば、CPU)とを備えている。
【0047】
制御ユニット6の情報格納部は、始動時間推定ユニット4(始動時間演算装置43)に対して、電気的に接続されている。これにより、制御ユニット6の情報格納部は、始動時間推定ユニット4において算出された二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1を、入力可能としている。また、制御ユニット6の情報格納部は、暖房時間推定ユニット5(暖房時間演算装置53)に対して、電気的に接続されている。これにより、制御ユニット6の情報格納部は、暖房時間推定ユニット5において算出された二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2を、入力可能としている。
【0048】
制御ユニット6の演算部は、暖房制御プログラムP3を有している。暖房制御プログラムP3は、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1、および、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2に基づいて、暖房装置3の運転を制御するプログラムである。暖房制御プログラムP3は、制御ユニット6の情報格納部に入力された情報に基づいて、暖房装置3の作動および停止を制御する。
【0049】
二次電池システム1において、始動時間演算装置43、暖房時間演算装置53、および、制御ユニット6は、任意の場所に、設備されている。例えば、始動時間演算装置43、暖房時間演算装置53、および、制御ユニット6は、
図1において二点鎖線で示されるように、通信基地(コントロールセンター)に、設備される。また、始動時間演算装置43、暖房時間演算装置53、および、制御ユニット6は、それぞれ個別に形成されていてもよく、一体的に形成されていてもよい。
【0050】
2.制御フロー
以下において、二次電池システム1において実行される制御フローについて、
図2を参照して詳述する。
【0051】
より具体的には、二次電池システム1では、自動車100の運転終了時(イグニッションOFF)に、以下の制御が実行される(S0;スタート)。
【0052】
この制御では、まず、始動時間算出ユニット4および暖房時間算出ユニット5が、それぞれ作動し、各種情報を取得する(ステップS1)。
【0053】
より具体的には、始動時間算出ユニット4が作動すると、自動車100の位置情報が、車両位置測定デバイス41により取得され、始動時間演算装置43に入力される。また、運転者の位置情報、移動方向情報および移動速度情報が、運転者位置測定デバイス42により取得され、始動時間演算装置43に入力される。
【0054】
また、暖房時間算出ユニット5が始動すると、二次電池2の温度情報および温度変化情報が、電池温度測定デバイス51により取得され、暖房時間演算装置53に入力される。また、暖房時間演算装置53に入力されている暖房装置3の性能情報(暖房効率情報)が、読み出される。
【0055】
次いで、この制御では、暖房時間算出プログラムP2が、二次電池2の温度(実測温度Ta)が所定の温度(暖房要求温度Tc)以下であるか否かを、判断する(ステップS2)。
【0056】
例えば、二次電池2の温度(実測温度Ta)が所定の温度(暖房要求温度Tc)以下ではない場合(ステップS2;Ta>Tc)、二次電池2の温度(実測温度Ta)が所定の温度(暖房要求温度Tc)以下に至るまで、上記の処理を繰り返す。
【0057】
一方、二次電池2の温度(実測温度Ta)が所定の温度(暖房要求温度Tc)以下である場合(ステップS2;Ta≦Tc)、暖房制御プログラムP3が、暖房装置3の運転を制御する。
【0058】
より具体的には、この制御では、始動時間算出プログラムP1が、自動車100の位置情報と、運転者の位置情報、移動方向情報および移動速度情報とに基づいて、運転者が自動車100に乗車する予測時間を算出し、自動車100の運転が開始される予測時間を算出する。これにより、始動時間算出プログラムP1が、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1を算出(予測)する。二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1は、時間の経過に伴って変化する。このような二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1は、制御ユニット6の情報格納部に入力される(ステップS3)。
【0059】
また、この制御では、暖房時間算出プログラムP2が、二次電池2の温度(実測温度Ta)および温度変化速度と、暖房装置3の性能情報(暖房効率情報)とに基づいて、暖房開始から所定時間経過後の二次電池2の温度(予測温度)を算出する。そして、暖房時間算出プログラムP2は、二次電池2の予測温度が、二次電池2の運転に適した温度(目標温度Tt)に到達するまでの所要時間を、算出する。これにより、暖房時間演算装置53の演算部は、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2を算出(予測)する。二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2は、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2は、時間の経過に伴って変化する。このような二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2は、制御ユニット6の情報格納部に入力される(ステップS4)。
【0060】
次いで、この制御では、暖房制御プログラムP3が、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1と、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2とを、比較する。そして、暖房制御プログラムP3は、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1が、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2以下であるか否かを判断する(ステップS5)。
【0061】
二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1が、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2を超過している場合(ステップS5;t1>t2)、暖房制御プログラムP3は、二次電池2を加熱せずに、上記の算出および比較を繰り返す。
【0062】
つまり、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1が、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2を超過している場合、例えば、暖房装置3を作動させたとしても、二次電池2の暖房が完了したとき(すなわち、推定所要時間t2が経過したとき)に、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1が経過しておらず、自動車100の運転が開始されていないことが予測される。このような場合、二次電池2の暖房が完了した後にも、二次電池の暖房を継続する必要が生じる。つまり、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1が、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2を超過している場合(t1>t2)、暖房装置3を作動させると、暖房効率が低下し、高コスト化を惹起する。そこで、暖房制御プログラムP3は、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1が、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2を超過している場合には、暖房装置3により二次電池2を加熱せずに、上記の算出および比較を繰り返す。すなわち、始動時間算出プログラムP1が、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1する。二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1は、制御ユニット6の情報格納部に入力される(ステップS3)。また、暖房時間算出プログラムP2が、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2を算出する。二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2は、制御ユニット6の情報格納部に入力される(ステップS4)。そして、暖房制御プログラムP3は、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1が、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2以下であるか否かを判断する(ステップS5)。
【0063】
一方、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1が、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2以下である場合(ステップS5;t1≦t2)、暖房制御プログラムP3は、暖房装置3により二次電池2を加熱する(ステップS6)。
【0064】
つまり、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1が、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2以下である場合、暖房装置3を作動させると、二次電池2の暖房が完了したとき(すなわち、推定所要時間t2が経過したとき)には、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1が経過しており、自動車100の運転が開始されていることが予測される。このような場合、二次電池2の暖房が完了した後に、二次電池の暖房を継続する必要が生じない。つまり、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1が、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2以下である場合に、暖房装置3を作動させると、暖房効率が向上し、低コスト化を図ることができる。
【0065】
そこで、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1が、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2以下である場合(t1≦t2)、暖房制御プログラムP3は、暖房装置3を比較的高出力で作動させ、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2が経過するまでの間、二次電池2を加熱(温度上昇)する。これにより、二次電池2を効率的に暖機できる。
【0066】
好ましくは、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1と、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2とが、一致するタイミング(t1=t2)で、暖房制御プログラムP3は、暖房装置3を、比較的高出力で作動させ、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2が経過するまでの間、二次電池2を加熱(温度上昇)する。このようなタイミングで暖房装置3を作動させると、二次電池2の暖房が完了したとき(すなわち、推定所要時間t2が経過したとき)に、同時に、自動車100の運転が開始されると予測される。そのため、二次電池2を、より効率的に暖機できる。
【0067】
そして、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2が経過した後、この制御では、暖房制御プログラムP3は、二次電池2の温度(実測温度Ta)が、二次電池2の運転に適した温度(目標温度Tt)以上であるかを判断する(ステップS7)。
【0068】
二次電池2の温度(実測温度Ta)が、二次電池2の運転に適した温度(目標温度Tt)未満である場合(ステップS7;Ta<Tt)、二次電池2の温度が、二次電池2の運転に適した温度(目標温度Tt)に到達するまで、上記の暖機(暖房)を継続する。
【0069】
一方、二次電池2の温度(実測温度Ta)が、二次電池2の運転に適した温度(目標温度Tt)以上である場合(ステップS7;Ta≧Tt)、暖房制御プログラムP3は、二次電池2の暖房が完了したものと判断する。例えば、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2が経過したタイミングで、二次電池2の温度(実測温度Ta)が、二次電池2の運転に適した温度(目標温度Tt)以上になり、二次電池2の暖房が完了する。このような場合、暖房制御プログラムP3は、続いて、二次電池2の運転が始動されているか否かを、判断する(ステップS8)。
【0070】
二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2が経過した後、二次電池2の運転に適した温度(目標温度Tt)以上であり、二次電池2の運転が始動されている場合(ステップS8;YES)、暖房制御プログラムP3は、上記の処理を終了する(ステップS9;エンド)。
【0071】
一方、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2が経過した後、二次電池2の運転に適した温度(目標温度Tt)以上であるにも関わらず、二次電池2の運転が始動されていない場合(ステップS8;NO)、暖房制御プログラムP3は、暖房装置3により二次電池2を保温する(ステップS10)。
【0072】
より具体的には、暖房制御プログラムP3は、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2が経過したときに、二次電池2の運転が始動されていなかった場合に、暖房装置3を、比較的低出力で作動させ、二次電池2を、所定の保温温度Tkに維持する。これにより、二次電池2の冷却を抑制して、二次電池2を効率的に暖機できる。なお、保温温度Tkは、上記の目標温度Ttと同一であってもよく、目標温度Ttより低くてもよい。
【0073】
そして、この制御では、二次電池2の保温が開始されると、続いて、暖房制御プログラムP3は、二次電池2の運転が始動されているか否かを、判断する(ステップS11)。
【0074】
二次電池2の運転が始動されている場合(ステップS11;YES)、暖房制御プログラムP3は、自動車100の運転が開始されていると判断し、上記の処理を終了する(ステップS9;エンド)。
【0075】
一方、二次電池2の運転が始動されていない場合(ステップS11;NO)、二次電池2の保温は、任意の条件で継続または停止される。
【0076】
より具体的には、この制御では、暖房制御プログラムP3は、例えば、運転者と自動車100とが離れているか否かを判断する。すなわち、暖房制御プログラムP3は、自動車100の位置情報と、運転者の位置情報とに基づいて、運転者と自動車100との距離(L)を算出し、運転者と自動車100との距離(L)が所定値以上であるかを、判断する(ステップS12)。
【0077】
運転者と自動車100との距離(L)が所定値未満である場合、運転者が自動車100の近傍にいると判断される。この場合、暖房制御プログラムP3は、近い将来、自動車100の運転が開始されるものと判断する。そこで、暖房制御プログラムP3は、二次電池2の保温を維持する(ステップS12;NO)。
【0078】
一方、運転者と自動車100との距離(L)が所定値以上である場合(ステップS12;YES)、運転者が自動車100から遠方にいると判断される。この場合、暖房制御プログラムP3は、続いて、二次電池2の保温開始から所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS13)。
【0079】
二次電池2の保温開始から所定時間が経過していない場合、暖房制御プログラムP3は、近い将来において、自動車100の運転が開始されるものと判断する。このような場合には、暖房制御プログラムP3は、二次電池2の保温を維持する(ステップS13;NO)。
【0080】
一方、二次電池2の保温開始から所定時間が経過している場合(ステップS13;YES)、暖房制御プログラムP3は、近い将来において、自動車100の運転が開始されないものと判断する。このような場合には、暖房制御プログラムP3は暖房装置3による二次電池2の保温を終了する(ステップS14)。
【0081】
このような場合、上記の処理は、二次電池システム1の作動中、繰り返される(ステップS15;リターン)。すなわち、暖房時間算出プログラムP2が、二次電池2の温度(実測温度Ta)が所定の温度(暖房要求温度Tc)以下であるか否かを、判断する(ステップS2)。そして、二次電池2の温度(実測温度Ta)が、所定の温度(暖房要求温度Tc)以下まで放冷された場合、暖房制御プログラムP3は、再度、二次電池2を暖機(暖房)する。なお、上記の処理は、二次電池システム1の停止とともに、終了される。
【0082】
3.作用効果
上記の二次電池システム1では、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1が、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2以下である場合に、二次電池2が加熱される。
【0083】
そのため、上記の二次電池システム1によれば、二次電池2の過剰な暖機を抑制できる。すなわち、上記の二次電池システム1は、二次電池2を効率的に暖機できる。
【0084】
また、上記の二次電池システム1では、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2が経過したときに、二次電池2の運転が始動されていなかった場合には、二次電池2が保温される。
【0085】
そのため、上記の二次電池システム1によれば、二次電池2の冷却を抑制できる。すなわち、上記の二次電池システム1は、二次電池2を効率的に暖機できる。
【0086】
加えて、上記の二次電池システム1では、二次電池2の保温が、所定条件に従って停止する。
【0087】
そのため、上記の二次電池システム1によれば、二次電池2の過剰な保温を抑制できる。すなわち、上記の二次電池システム1は、二次電池2を効率的に暖機できる。
【0088】
4.変形例
上記した説明では、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1の算出において、自動車100の位置情報、自動車100の運転者の位置情報、移動方向情報および移動速度情報が使用されている。しかし、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1を算出できれば、使用される情報の種類は、上記に限定されない。
【0089】
例えば、自動車100と、運転者の所持品(例えば、携帯電話、スマートフォンおよびイグニッションキー)とを、直接的に無線通信させることにより、自動車100と運転者との距離を算出し、その距離に基づいて、二次電池2の運転始動までの推定所要時間t1を算出することができる。
【0090】
また、上記した説明では、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2の算出において、二次電池2の温度情報、二次電池2の温度変化速度情報、自動車100の外気温度情報、および、暖房装置3の性能情報(暖房効率情報)が使用されている。しかし、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2を算出できれば、使用される情報の種類は、上記に限定されない。
【0091】
例えば、二次電池2の加熱開始から目標温度Ttに至るまでの所要時間をマッピングし、そのマッピングデータに基づいて、二次電池2の暖房完了までの推定所要時間t2を算出することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 二次電池システム
2 二次電池
3 暖房装置
4 始動時間推定ユニット
5 暖房時間推定ユニット
6 制御ユニット
41 車両位置測定デバイス
42 運転者位置測定デバイス
43 始動時間演算装置
51 電池温度測定デバイス
53 暖房時間演算装置