(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080514
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】薄型ヒートシンク及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20240606BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H01L23/46 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193774
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】泊 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 哲
(72)【発明者】
【氏名】永田 康弘
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA02
5F136BA37
5F136CB06
5F136FA02
5F136GA04
5F136GA12
(57)【要約】
【課題】軽量化した薄型ヒートシンクを構成するシート材同士を、線接合時に発生する熱変形を抑制できるようにし、フレームへの組み付けを容易に行うことができる薄型ヒートシンク及びその製造方法を提供する。
【解決手段】薄型ヒートシンク100は、冷媒流路11を有する冷却板部13がフレーム15に接合されている。冷却板部13は、少なくとも一方に冷媒流路11となる凸部を有した一対のシート材17,19が互いに重なり合って線接合されている。シート材17,19の外周縁部には、外周縁部に沿ってシート面から突起する線状突起が設けられている。線状突起としては、例えばフランジ17a~17d、19a~19dであってもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒流路を有する冷却板部がフレームに接合された薄型ヒートシンクであって、
前記冷却板部は、少なくとも一方に前記冷媒流路となる凸部を有した一対のシート材が互いに重なり合って線接合され、
前記シート材の外周縁部に、該外周縁部に沿ってシート面から突起する線状突起が設けられた、
薄型ヒートシンク。
【請求項2】
前記線状突起は、前記シート材の前記外周縁部を折り曲げたフランジからなる、
請求項1に記載の薄型ヒートシンク。
【請求項3】
前記線状突起は、前記シート材の前記外周縁部に形成された凸条である、
請求項1に記載の薄型ヒートシンク。
【請求項4】
前記シート材同士は、レーザ溶接部又は摩擦攪拌接合部によって線接合されている、
請求項1に記載の薄型ヒートシンク。
【請求項5】
前記一対のシート材と前記フレームとが、レーザ溶接部又は摩擦攪拌接合部によって接合されている、
請求項1に記載の薄型ヒートシンク。
【請求項6】
前記シート材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる、
請求項1から5のいずれか1項に記載の薄型ヒートシンク。
【請求項7】
冷媒流路を有する冷却板部がフレームに接合された薄型ヒートシンクの製造方法であって、
前記冷却板部は、少なくとも一方に前記冷媒流路となる凸部を有した一対のシート材を有し、
前記シート材の外周縁部に、該外周縁部に沿ってシート面から突起する線状突起を設け、
前記一対のシート材を互いに重ね合わせて線接合し、
前記一対のシート材が接合された前記冷却板部を前記フレームに接合する、
薄型ヒートシンクの製造方法。
【請求項8】
前記線状突起は、前記シート材の前記外周縁部を折り曲げて形成したフランジである、
請求項7に記載の薄型ヒートシンクの製造方法。
【請求項9】
前記線状突起は、前記シート材の前記外周縁部をプレス成形した凸条である、
請求項7に記載の薄型ヒートシンクの製造方法。
【請求項10】
前記シート材同士を、レーザ溶接又は摩擦攪拌接合により接合する、
請求項7から9のいずれか1項に記載の薄型ヒートシンクの製造方法。
【請求項11】
前記一対のシート材と前記フレームとを、レーザ溶接部又は摩擦攪拌接合部により接合する、
請求項7から9のいずれか1項に記載の薄型ヒートシンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型ヒートシンク及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両における乗員の安全性向上が求められており、係る目的のために車体の強度を向上させてきた。他方、地球温暖化問題等の深刻化を背景に、自動車の燃費改善の動きが加速している。燃費改善には車体の軽量化が有効であることが知られている。
電気自動車(EV、HV、FCV等)用の電池パックには、アルミ製の冷却パネル、ヒートシンク等のアルミ製の薄型冷却器が使用され、車体の軽量化が図られている。このようなアルミ製の薄型冷却器の構造の一つに、プレスなどで流路形状を形成した板と、この板に対となる板とを重ね合わせて接合して冷媒流路の水密性を確保した薄型ヒートシンクがある。上記構造の接合はロウ付けが主流であるが、特許文献1,2のような高速な溶接が可能なレーザ溶接が適用できれば、生産性の向上、CO2排出量の低減も可能となる。また、特許文献3のような摩擦攪拌接合(FSW:Friction Stir Welding)を用いる場合には、高品質かつ高強度に接合可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-177861号公報
【特許文献2】特開2001-274297号公報
【特許文献3】特開2016-55317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した特許文献のように、重ね合わせたシート材(プレス成形体)をレーザ溶接又はFSWで接合して薄型ヒートシンクを製造する場合には、薄いシート材を広範囲にわたって線接合することになる。その場合、接合体が熱変形によって撓み、その後のフレームとの組み付けが困難となる問題がある。
【0005】
そこで本発明は、軽量化した薄型ヒートシンクを構成するシート材同士を、線接合時に発生する熱変形を抑制できるようにした薄型ヒートシンク及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は下記構成からなる。
(1) 冷媒流路を有する冷却板部がフレームに接合された薄型ヒートシンクであって、
前記冷却板部は、少なくとも一方に前記冷媒流路となる凸部を有した一対のシート材が互いに重なり合って線接合され、
前記シート材の外周縁部に、該外周縁部に沿ってシート面から突起する線状突起が設けられた、
薄型ヒートシンク。
(2) 冷媒流路を有する冷却板部がフレームに接合された薄型ヒートシンクの製造方法であって、
前記冷却板部は、少なくとも一方に前記冷媒流路となる凸部を有した一対のシート材を有し、
前記シート材の外周縁部に、該外周縁部に沿ってシート面から突起する線状突起を設け、
前記一対のシート材を互いに重ね合わせて線接合し、
前記一対のシート材が接合された前記冷却板部を前記フレームに接合する、
薄型ヒートシンクの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軽量化した薄型ヒートシンクを構成するシート材同士を、線接合時に発生する熱変形を抑制できるようにし、フレームへの組み付けを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、薄型ヒートシンクの模式的な外観斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す薄型ヒートシンクの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す薄型ヒートシンクのIII-III線に沿った概略断面図である。
【
図4】
図4は、シート材同士の接合位置を示す冷却板部の斜視図である。
【
図5】
図5は、冷却板部とフレームとが接合された薄型ヒートシンクの一部拡大断面図である。
【
図6】
図6は、冷却板部とフレームとの他の接合形態を示す薄型ヒートシンクの一部拡大断面図である。
【
図7】
図7は、シート材が線状突起を備えない場合の溶接時における熱変形の様子を示す参考図である。
【
図8】
図8は、線状突起の突出方向の変形例を示す概略斜視図である。
【
図9】
図9は、線状突起の他の突出方向の変形例を示す一部断面図である。
【
図10】
図10は、線状突起の形状の変形例を示す一部断面図である。
【
図11】
図11は、線状突起の形状の変形例を示す一部断面図である。
【
図12】
図12は、供試材の上板及び下板を示す説明図である。
【
図13】
図13は、試験例1,2の溶接後の供試材の各反り量を比較した結果を示すグラフである。
【
図14】
図14は、試験例1の溶接後の供試材を撮影した写真である。
【
図15】
図15は、試験例2の溶接後の供試材を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態の薄型ヒートシンクは、電気自動車(EV、HV、FCV等)用の電池パックに使用されるアルミ製薄型冷却器を例に説明するが、使用用途はこれに限らない。
【0010】
<薄型ヒートシンクの構造>
図1は、薄型ヒートシンク100の模式的な外観斜視図である。
図2は、
図1に示す薄型ヒートシンク100の分解斜視図である。
図3は、
図1に示す薄型ヒートシンクのIII-III線に沿った概略断面図である。
【0011】
図1及び
図2に示すように、薄型ヒートシンク100は、冷媒流路11を有する冷却板部13と、全体が矩形状の枠体であるフレーム15とを有する。冷却板部13は、好ましくは板厚が2.0mm~2.5mmのアルミニウム又はアルミニウム合金製の一対のシート材17,19を有する。少なくとも一方のシート材17には、特定のパターンの凸部21が形成されている。シート材17,19に接合されるフレーム15は、例えば、アルミニウム展伸材からなる複数の押出材からなり、各押出材を溶接等により長方形の枠状に形成している。
【0012】
図3に示すように、一対のシート材17,19は、互いに重ね合わせて凸部21の両脇に接合部23を設けることで、シート材17の凸部21とシート材19との間に閉空間となる冷媒流路11を形成する。接合部23は、レーザ光LDの照射によりシート材17,19を加熱溶融させるレーザ溶接により形成してもよく、その他にも、摩擦攪拌接合により形成してもよい。冷媒流路11には、不図示の冷媒流入口と冷媒流出口が設けられる。冷媒流路11の冷媒流入口から供給された冷媒は、冷媒流路11を流動して冷媒流出口から排出されることで熱交換される。
【0013】
図4は、シート材17,19同士の接合位置を示す冷却板部13の斜視図である。本構成の冷媒流路11は、シート材17,19の長辺に沿って延びる直線部11aと、直線部11aの端部で逆向きに折り返す折り返し部11bとの組を複数有して、一本の連続した流路を形成する。この冷媒流路11の両脇に、前述した接合部23が形成されている(
図3も参照)。接合部23は、冷媒流路11の直線部11aに沿って複数本が並設される。接合部23は、前述したレーザ溶接又は摩擦攪拌接合により形成されることで、冷媒流路11を隙間無く形成している。
【0014】
そして、
図2に示すように、シート材17の4辺の外周縁部には、外周縁部に沿ってシート面から突起する線状突起であるフランジ17a,17b,17c,17dがそれぞれ設けられている。各フランジ17a~17dは、折り曲げ加工によりシート面から直角又は直角に近い角度で屈曲して、外周縁部に沿って連続するように延びて形成されている。
【0015】
また、シート材19の4辺の外周縁部には、外周縁部に沿ってシート面から突起した線状突起であるフランジ19a,19b,19c,19dがそれぞれ設けられている。各フランジ19a~19dは、フランジ17a~17dと同様に、折り曲げ加工によりシート面から直角又は直角に近い角度で屈曲して、外周縁部に沿って連続するように延びて形成されている。
【0016】
図3に示すように、各フランジ17a~17d、及び各フランジ19a~19dは、シート材17,19が互いに重ね合わされた際、板厚方向に関して同じ側に屈曲して形成されている。
【0017】
図5は、冷却板部13とフレーム15とが接合された薄型ヒートシンク100の一部拡大断面図である。シート材17,19の各外周縁部に形成されたフランジ17b,19bの内側には、フレーム15が配置され、フレーム15の冷却板部13と接する端面15aに、シート材17,19と接合する接合部27が形成されている。つまり、接合部27は、シート材17,19とフレーム15の端面15aとを貫通して形成されている。一対のシート材17,19とフレーム15とをレーザ溶接又は摩擦攪拌接合により接合(線接合)する場合には、冷却板部13とフレーム15とを、連続した接合部27により高い接合強度で接合できる。接合部27は、フレーム15の枠に沿って連続してもよいが、複数箇所に分散させて形成してもよい。
【0018】
図6は、冷却板部13とフレーム15との他の接合形態を示す薄型ヒートシンク100の一部拡大断面図である。
図6に示すように、上記の接合部27に加え、接合部29をフランジ17b,19bとフレーム15の外側の側面15bを貫通して形成してもよい。この接合部29は、レーザ溶接又は摩擦攪拌接合により、フレーム15の枠に沿って連続して形成してもよく、複数箇所に分散させて形成してもよい。接合部27,29が互いに異なる方向に形成されることで、冷却板部13とフレーム15との接合強度を更に向上できる。
【0019】
<線状突起による接合時の熱変形防止効果>
上記構成の薄型ヒートシンク100は、シート材17,19の外周縁部にフランジ25a~17d,19a~19dからなる線状突起を設けることで、シート材17,19同士を接合(線接合)する際、レーザ溶接又は摩擦攪拌接合により発生するシート材17,19の熱変形を抑制し、後工程のフレーム15への組み付けを容易にしている。
【0020】
図7は、シート材17,19が線状突起を備えない場合の溶接時における熱変形の様子を示す参考図である。
図7では、線状突起を備えないシート材31の平面図と、シート材31の4辺を側面視した場合の側面図をそれぞれ示している。前述したように、レーザ溶接又は摩擦攪拌接合によってシート材31に破線で示すような接合部23を設けた場合、シート材31は、加熱後の熱収縮によって板面の中央を凸にして湾曲する。シート材31の互いに対向する辺の縁部を基準にすると、板面の中央はΔt1の反り量で凸状に撓み、板面の中央を基準にすると、互いに対向する辺の各縁部の反り量はΔt2,Δt3となる。
【0021】
このようなシート材31の熱変形は、フレーム15との接合を困難にし、仮に接合できた場合でも、接合後に薄型ヒートシンク100に歪みを生じさせる要因となる。しかし、本実施形態のシート材17,19では、シート材の外周縁部にフランジ25a~17d,19a~19dからなる線状突起を設けることで、シート材17,19の断面係数(断面二次モーメント)を増大させ、曲げ強さを向上させている。そのため、シート材17,19同士を接合する際の熱変形が抑制され、
図7に示す撓みの発生を抑制できる。その結果、シート材17,19とフレーム15との接合時に、シート材19の外周縁部の接合面は平坦状になり、フレーム15の端面15aと均一に面接触した状態で接合できる。これにより、接合部27の形成後の応力の発生を抑制でき、薄型ヒートシンク100の歪みを防止できる。
【0022】
また、互いに対向する辺に設けたフランジ17aとフランジ17bとの内側に、フランジ19aとフランジ19bが挟み込まれるため、シート材17,19を重ね合わせた際の曲げ剛性を向上できる。また、フランジ部17cとフランジ部17dとの内側にフランジ19cとフランジ19dが挟み込まれることで、同様にシート材17,19を重ね合わせた際の曲げ剛性を向上でき、2対の辺同士がそれぞれフランジ部によって挟み込まれることで、相乗的に曲げ剛性を向上できる。
【0023】
<変形例>
上記した薄型ヒートシンク100の構成は一例であって、種々の変形が可能である。例えば、シート材17,19の双方に線状突起となるフランジ17a~17d,19a~19dを設ける以外にも、いずれか一方のシート材にのみ線状突起を設けてもよい。また、線状突起をシート材の外周縁部となる4辺全てに設ける以外にも、いずれかの辺にのみ選択的に設けてもよい。その場合、接合部23に最も近い辺に線状突起を設けることが好ましい。
【0024】
線状突起を設ける幅Waは、
図4に示すように、少なくとも接合部23が外周縁部に沿って配置される全長Wbと同じか、全長Wb以上の長さすることが好ましい。
【0025】
図8は、線状突起の突出方向の変形例を示す概略斜視図で、
図9は、線状突起の他の突出方向の変形例を示す一部断面図である。
図8に示すように、シート材17及びシート材19のフランジ17a,19aと、フランジ17c,19cとを、それぞれの折り曲げ方向が板厚方向の一方の側と他方の側とに反転させた構成にしてもよい。また、
図9に示すようにフランジ17aとフランジ19aとをそれぞれ板厚方向に関して逆向きに折り曲げた構成にしてもよい。一方のフランジを他方のフランジの折り曲げ方向の逆向きにすることで、シート材17,19の曲げ剛性を高めつつ、フレーム15をシート材19側に接合する形態と、シート材17側に接合する形態とのいずれの構成にもでき、設計自由度を向上できる。
【0026】
図10、
図11は、線状突起の形状の変形例を示す一部断面図である。
図10に示すように、線状突起をシート材の板面から直角に折り曲げたフランジにする以外にも、プレス成形により形成した断面凸形状の凸条33であってもよく、
図11に示すように、断面形状が所定の曲率半径を有する湾曲形状の凸条35であってもよい。プレス成形により凸条33,35を形成する場合には、線状突起を効率よく形成でき、製造時のタクトタイムを短縮できる。
【0027】
このように、線状突起の断面形状は、シート材17,19の断面係数(断面二次モーメント)を増大させる形状であればよく、その形状は限定されない。例えば、ヘム加工等の端部処理した凸条であってもよい。また、冷却板部13を構成するシート材17,19は、2枚に限らず、3枚以上積層することでもよい。
【実施例0028】
次に、薄型ヒートシンクの冷却板部を模擬した長方形状の供試材に、接合部を形成した場合と形成しない場合とで、溶接により発生した反り量を比較した。
供試材は、上板として板厚1.2mmの6000系アルミニウム合金板を用い、下板として板厚2.0mmの6000系アルミニウム合金板を用いた。上板及び下板は、
図12に示すように長方形状で、短手方向の幅W
Sは400mm、長手方向の幅W
Lは700mmである。
【0029】
供試材は、外周縁部をプレス成形により10mm程度曲げ加工したフランジを有するシート材(上板及び下板)を用いる試験例1、及び平板状のシート材(上板及び下板)をそのまま用いる比較用の試験例2の2種類とした。
【0030】
試験例1,2共に、上板と下板とを、レーザ溶接により長軸方向の長さWaを500mm、短手方向のピッチPtを40mmとした合計9本の接合部23を形成した。そして、溶接による接合後の供試材を、その短手方向及び長手方向の溶接後の反り量を計測した。短手方向の反り量は、
図7に示すΔt2とΔt3との平均値とした。レーザ溶接の条件は、いずれも出力3.2kW、溶接速度4m/minとした、非貫通溶接である。
【0031】
試験例1,2の溶接後の供試材の各反り量を比較した結果を
図13に示す。また、
図14は、試験例1の溶接後の供試材を撮影した写真であり、
図15は、試験例2の溶接後の供試材を撮影した写真である。
図13に示すように、試験例1の短手方向の反り量の平均値は、試験例2の場合の約1/4に低減でき、試験例1の長手方向の反り量は、試験例2の場合の約1/2に低減できた。また、
図14に示す試験例1の供試材は、
図15に示す試験例2の供試材よりも溶接後の反りが抑えられていることがわかる。
【0032】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせること、及び明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0033】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 冷媒流路を有する冷却板部がフレームに接合された薄型ヒートシンクであって、
前記冷却板部は、少なくとも一方に前記冷媒流路となる凸部を有した一対のシート材が互いに重なり合って線接合され、
前記シート材の外周縁部に、該外周縁部に沿ってシート面から突起する線状突起が設けられた、
薄型ヒートシンク。
この薄型ヒートシンクによれば、シート材の外周縁部に設けた線状突起により、一対のシート材が線接合された際、シート材に熱変形が生じ難くなる。これにより、冷却板部をフレームに接合しやすくなり、接合後の歪みの発生を防止できる。
【0034】
(2) 前記線状突起は、前記シート材の前記外周縁部を折り曲げたフランジからなる、(1)に記載の薄型ヒートシンク。
この薄型ヒートシンクによれば、折り曲げて形成されたフランジによってシート材の熱変形を容易に抑制できる。
【0035】
(3) 前記線状突起は、前記シート材の前記外周縁部に形成された断面凸形状の凸条である、(1)に記載の薄型ヒートシンク。
この薄型ヒートシンクによれば、凸条によってシート材の熱変形を容易に抑制できる。
【0036】
(4) 前記シート材同士は、レーザ溶接部又は摩擦攪拌接合部によって線接合されている、(1)から(3)のいずれか1つに記載の薄型ヒートシンク。
この薄型ヒートシンクによれば、接合部がレーザ溶接又は摩擦攪拌接合により連続して形成され、冷媒流路を確実に隙間無く形成できる。
【0037】
(5) 前記一対のシート材と前記フレームとが、レーザ溶接部又は摩擦攪拌接合部によって接合されている、(1)から(4)のいずれか1つに記載の薄型ヒートシンク。
この薄型ヒートシンクによれば、冷却板部とフレームとがレーザ溶接又は摩擦攪拌接合によりフレームに沿って連続して接合できるため、双方の接合強度を高められる。
【0038】
(6) 前記シート材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる、(1)から(5)のいずれか1つに記載の薄型ヒートシンク。
この薄型ヒートシンクによれば、軽金属の使用により薄型ヒートシンクの軽量化が図れる。
【0039】
(7) 冷媒流路を有する冷却板部がフレームに接合された薄型ヒートシンクの製造方法であって、
前記冷却板部は、少なくとも一方に前記冷媒流路となる凸部を有した一対のシート材を有し、
前記シート材の外周縁部に、該外周縁部に沿ってシート面から突起する線状突起を設け、
前記一対のシート材を互いに重ね合わせて線接合し、
前記一対のシート材が接合された前記冷却板部を前記フレームに接合する、
薄型ヒートシンクの製造方法。
この薄型ヒートシンクの製造方法によれば、シート材の外周縁部に設けた線状突起により、一対のシート材を線接合した際、シート材に熱変形が生じ難くなる。これにより、冷却板部をフレームに接合しやすくなり、接合後の歪みの発生を防止できる。
【0040】
(8) 前記線状突起は、前記シート材の前記外周縁部を折り曲げて形成したフランジである、(7)に記載の薄型ヒートシンクの製造方法。
この薄型ヒートシンクの製造方法によれば、簡単な折り曲げ加工により線状突起を形成できる。
【0041】
(9) 前記線状突起は、前記シート材の前記外周縁部をプレス成形した凸条である、(7)に記載の薄型ヒートシンクの製造方法。
この薄型ヒートシンクの製造方法によれば、プレス成形により線状突起を効率よく形成できるため、製造時のタクトタイムを短縮できる。
【0042】
(10) 前記シート材同士を、レーザ溶接又は摩擦攪拌接合により接合する、(7)から(9)のいずれか1つに記載の薄型ヒートシンクの製造方法。
この薄型ヒートシンクの製造方法によれば、シート材同士がレーザ溶接又は摩擦攪拌接合により連続して形成され、冷媒流路を確実に隙間無く形成できる。
【0043】
(11) 前記一対のシート材と前記フレームとを、レーザ溶接部又は摩擦攪拌接合部により接合する、(7)から(10)のいずれか1つに記載の薄型ヒートシンクの製造方法。
この薄型ヒートシンクの製造方法によれば、冷却板部とフレームとがレーザ溶接又は摩擦攪拌接合によりフレームに沿って連続して接合できるため、双方の接合強度を高められる。