(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008052
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ヒータ、および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240112BHJP
H05B 3/06 20060101ALI20240112BHJP
H05B 3/42 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G03G15/20 505
H05B3/06 B
H05B3/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109563
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】上野 宏輔
(72)【発明者】
【氏名】玉井 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】青野 伸二郎
(72)【発明者】
【氏名】壷内 暁夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】土居 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】大橋 剛
(72)【発明者】
【氏名】酒井 誠
【テーマコード(参考)】
2H033
3K092
【Fターム(参考)】
2H033AA03
2H033AA31
2H033BA11
2H033BA25
2H033BA26
2H033BA27
2H033BA31
2H033BB03
2H033BB04
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB22
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BE03
2H033CA07
2H033CA30
2H033CA45
3K092PP18
3K092QA06
3K092QB02
3K092QB03
3K092QB33
3K092QB59
3K092QC05
3K092QC07
3K092QC19
3K092QC42
3K092RF03
3K092RF09
3K092RF22
3K092TT02
3K092VV26
(57)【要約】
【課題】基部の材料を金属としても、ヒータに反りが発生するのを抑制することができ、且つ、定着部の構成を簡略化することができるヒータ、および画像形成装置を提供することである。
【解決手段】実施形態に係るヒータは、画像形成装置の定着部に設けられるヒータである。前記ヒータは、板状を呈し、第1の方向に延び、一方の面が凸状の曲面であり、前記凸状の曲面に開口し、前記第1の方向に延びる凹部を有し、金属を含む基部と;前記凹部の底面に設けられた絶縁層と;前記絶縁層の上に設けられ、前記第1の方向に延びる発熱体と;前記発熱体を覆う保護部と;を具備している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置の定着部に設けられるヒータであって、
板状を呈し、第1の方向に延び、一方の面が凸状の曲面であり、前記凸状の曲面に開口し、前記第1の方向に延びる凹部を有し、金属を含む基部と;
前記凹部の底面に設けられた絶縁層と;
前記絶縁層の上に設けられ、前記第1の方向に延びる発熱体と;
前記発熱体を覆う保護部と;
を具備したヒータ。
【請求項2】
前記基部は、厚み方向に湾曲した形状を有し、
前記凹部は、前記基部の前記凸状の曲面である湾曲した外面に開口している請求項1記載のヒータ。
【請求項3】
板状を呈し、厚み方向に湾曲した形状を有する補強部をさらに備え、
前記基部は、前記凸状の曲面を有する第1の部分と;前記第1の部分の、前記凸状の曲面に対向する面の周縁に設けられ、前記第1の方向と交差する第2の方向に突出する一対の第2の部分と;を有し、
前記凹部は、前記第1の部分の前記凸状の曲面に開口し、
前記補強部の一方の端部は、一方の前記第2の部分と接続され、前記補強部の他方の端部は、他方の前記第2の部分と接続されている請求項1記載のヒータ。
【請求項4】
前記凹部の近傍における、前記凸状の曲面の曲率半径は、0.1mm以上である請求項1~3のいずれか1つに記載のヒータ。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1つに記載のヒータと;前記ヒータを覆うフィルムベルトと;を有する定着部を具備した画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ヒータ、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタなどの画像形成装置には、トナーを定着させるためのヒータが設けられている。一般的に、この様なヒータは、長尺の平板状の基部と、基部の一方の面に設けられ、基部の長手方向に延びる発熱体と、発熱体を覆う保護部と、を有している。
【0003】
基部は、耐熱性および絶縁性を有し、熱伝導率の高い材料から形成される。基部は、例えば、酸化アルミニウムなどのセラミックスから形成される。また、基部は、例えば、金属板の表面を絶縁性材料で被覆したものとされる場合もある。
【0004】
保護部は、耐熱性および絶縁性を有し、熱伝導率が高く、化学的安定性の高い材料から形成される。例えば、保護部は、セラミックス、ガラスなどから形成される。
【0005】
ここで、基部の材料を金属とすれば、基部の剛性の向上や、製造コストの低減などを図ることができる。ところが、基部の材料を金属とすれば、基部の材料と、保護部の材料とが異なるものとなるので、材料の熱膨張率の差に起因して熱応力が発生する。熱応力が発生すると、ヒータに反りが発生し易くなる。またさらに、金属の熱膨張率は、セラミックスなどの熱膨張率に比べて高いので、熱応力が大きくなり易い。熱応力が大きくなると、ヒータの反りが大きくなる。
【0006】
ヒータの反りが大きくなると、ヒータと加熱対象物との間の距離がばらついて、加熱対象物に加熱ムラが生じるおそれがある。
またさらに、一般的に、この様なヒータは、画像形成装置に設けられる定着部のステー取り付けられる。そのため、定着部の構成が複雑となり、製造コストの低減が困難となっていた。
【0007】
そこで、基部の材料を金属としても、ヒータに反りが発生するのを抑制することができ、且つ、定着部の構成を簡略化することができる技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、基部の材料を金属としても、ヒータに反りが発生するのを抑制することができ、且つ、定着部の構成を簡略化することができるヒータ、および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態に係るヒータは、画像形成装置の定着部に設けられるヒータである。前記ヒータは、板状を呈し、第1の方向に延び、一方の面が凸状の曲面であり、前記凸状の曲面に開口し、前記第1の方向に延びる凹部を有し、金属を含む基部と;前記凹部の底面に設けられた絶縁層と;前記絶縁層の上に設けられ、前記第1の方向に延びる発熱体と;前記発熱体を覆う保護部と;を具備している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、基部の材料を金属としても、ヒータに反りが発生するのを抑制することができ、且つ、定着部の構成を簡略化することができるヒータ、および画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態に係るヒータを例示するための模式正面図である。
【
図2】
図1におけるヒータのA-A線方向の模式拡大断面図である。
【
図3】他の実施形態に係るヒータを例示するための模式正面図である。
【
図4】
図3におけるヒータのB-B線方向の模式拡大断面図である。
【
図5】本実施の形態に係る画像形成装置を例示するための模式図である。
【
図7】他の実施形態に係る定着部を例示するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。また、各図面中の矢印X、Y、Zは互いに直交する三方向を表している。
【0014】
(ヒータ)
図1は、本実施の形態に係るヒータ1を例示するための模式正面図である。
なお、
図1は、発熱部20が設けられた側からヒータ1を見た図である。
図2は、
図1におけるヒータ1のA-A線方向の模式拡大断面図である。
図1、および
図2に示すように、ヒータ1は、例えば、基部10、絶縁層11、発熱部20、配線部30、および保護部40を有する。
【0015】
基部10は、板状を呈し、厚み方向に湾曲した形状を有している。基部10は、X方向(第1の方向の一例に相当する)に延びている。基部10の、凸状の曲面である湾曲した外面10aには、凹部10a1が設けられている。凹部10a1は、外面10aに開口し、外面10aの中央をX方向に延びている。
【0016】
基部10の厚みTは、例えば、0.5mm~1.0mm程度である。基部10のX方向の寸法は、加熱対象物(例えば、紙)の大きさなどに応じて適宜変更することができる。凹部10a1の近傍における、外面10aの曲率半径Rは、例えば、0.1mm以上である。外面10aの曲率半径Rをこの様にすれば、ヒータ1を通過する加熱対象物の搬送が円滑となる。また、基部10の外面10aと、保護部40の外面40aとの接続部分には、段差がないようにすることが好ましい。この様にすれば、ヒータ1を通過する加熱対象物の搬送がさらに円滑となる。
【0017】
基部10は、耐熱性を有し、熱伝導率の高い材料から形成される。基部10は、例えば、ステンレスやアルミニウム合金などの金属から形成することができる。基部10は、例えば、折り曲げ加工やプレス加工などの塑性加工や、引き抜き加工などにより形成することができる。
【0018】
金属の熱伝導率は、セラミックスなどの無機材料の熱伝導率よりも高い。そのため、基部10が金属から形成されていれば、ヒータ1の温度に面内分布が生じるのを抑制することができる。また、基部10の剛性の向上、割れや欠けなどの発生の抑制、製造コストの低減などを図ることができる。
なお、基部10における反りの抑制に関する詳細は後述する。
【0019】
絶縁層11は、基部10の凹部10a1の底面10a2に設けられている。絶縁層11は、X方向に延びている。絶縁層11は、少なくとも、凹部10a1の底面10a2の、発熱部20が設けられる領域を覆っている。絶縁層11は、耐熱性と絶縁性を有する材料から形成される。絶縁層11は、例えば、セラミックスなどの無機材料から形成することができる。絶縁層11は、例えば、スクリーン印刷法などを用いてペースト状の材料を凹部10a1の底面10a2に塗布し、焼成法などを用いてこれを硬化させることで形成することができる。
【0020】
発熱部20は、印加された電力を熱(ジュール熱)に変換する。発熱部20は、絶縁層11の上に設けられている。発熱部20と基部10は、絶縁層11により絶縁されている。
発熱部20は、例えば、発熱体21、および発熱体22を有する。なお、一例として、発熱体21、および発熱体22が設けられる場合を例示したが、発熱体の数や大きさは、基部10の大きさや加熱対象物の大きさなどに応じて適宜変更することができる。また、長さ、幅、形状などが異なる複数種類の発熱体を設けることもできる。すなわち、発熱体は少なくとも1つ設けられていればよい。
【0021】
発熱体21、および発熱体22は、Y方向(絶縁層11の短手方向)に所定の間隔をあけて並べて設けることができる。発熱体21、および発熱体22は、例えば、X方向(絶縁層11の長手方向)に延びている。
【0022】
発熱体21、および発熱体22のX方向の寸法(長さ寸法)は、例えば、略同一とすることができる。この場合、発熱体21、および発熱体22のそれぞれの中心が、直線1aの上に位置するようにすることが好ましい。すなわち、発熱体21、および発熱体22のそれぞれは、直線1aを対称軸として線対称となる形状を有することが好ましい。
【0023】
ヒータ1を画像形成装置100に取り付ける際には、例えば、直線1aが加熱対象物の搬送経路の中心線に重なるようにする。この様にすれば、加熱対象物の、搬送方向に直交する方向の寸法や位置が変化した場合であっても、加熱対象物を略均一に加熱することができる。
【0024】
発熱体21、および発熱体22の電気抵抗値は、略同一とすることもできるし、異なるものとすることもできる。例えば、発熱体21、および発熱体22の、X方向の寸法(長さ寸法)、Y方向の寸法(幅寸法)、およびZ方向(第2の方向の一例に相当する)の寸法(厚み寸法)をそれぞれ略同一とすることで、発熱体21、および発熱体22の電気抵抗値が略同一となるようにすることができる。また、これらの寸法の少なくともいずれかを変えることで、発熱体21、および発熱体22の電気抵抗値が異なるようにすることができる。また、材料を変えることで、発熱体21、および発熱体22の電気抵抗値が異なるようにすることができる。
【0025】
また、発熱体21の、単位長さ当たりの電気抵抗値は、X方向において略均一とすることができる。例えば、発熱体21の、Y方向の寸法(幅寸法)およびZ方向の寸法(厚み寸法)は、略一定とすることができる。Z方向から見た発熱体21の形状は、例えば、X方向に延びる略長方形とすることができる。
【0026】
また、発熱体22の、単位長さ当たりの電気抵抗値は、X方向において略均一とすることができる。例えば、発熱体22の、Y方向の寸法(幅寸法)およびZ方向の寸法(厚み寸法)は、略一定とすることができる。Z方向から見た発熱体22の形状は、例えば、X方向に延びる略長方形とすることができる。
【0027】
発熱体21、および発熱体22は、例えば、酸化ルテニウム(RuO2)、銀・パラジウム(Ag-Pd)合金などを用いて形成することができる。発熱体21、および発熱体22は、例えば、スクリーン印刷法などを用いてペースト状の材料を絶縁層11の上に塗布し、焼成法などを用いてこれを硬化させることで形成することができる。
【0028】
配線部30は、絶縁層11の上に設けられている。
配線部30は、例えば、端子31、端子32、配線33、配線34、および配線35を有する。
【0029】
端子31、32は、例えば、X方向における基部10の一方の端部の近傍に設けられる。端子31、32は、例えば、X方向に並べて設けられる。端子31、32は、コネクタおよび配線などを介して、例えば、電源などと電気的に接続される。
【0030】
配線33は、例えば、X方向において、基部10の、端子31が設けられる側に設けられる。配線33は、X方向に延びている。配線33は、端子31と、発熱体21の端子31側の端部とに電気的に接続されている。
【0031】
配線34は、例えば、X方向において、基部10の、端子31、32が設けられる側とは反対側の端部の近傍に設けられる。配線34には、発熱体21の、配線33側とは反対側の端部、および、発熱体22の、配線35側とは反対側の端部が電気的に接続されている。
【0032】
配線35は、例えば、X方向において、基部10の、端子32が設けられる側に設けられる。配線35は、X方向に延びている。配線35は、端子32と、発熱体22の端子32側の端部とに電気的に接続されている。
【0033】
配線部30(端子31、32および配線33~35)は、例えば、銀や銅などを含む材料を用いて形成される。例えば、端子31、32、配線33~35は、スクリーン印刷法などを用いてペースト状の材料を絶縁層11の上に塗布し、焼成法などを用いてこれを硬化させることで形成することができる。
【0034】
保護部40は、絶縁層11の上に設けられ、発熱部20(発熱体21、および発熱体22)、および配線部30の一部(配線33、配線34、および配線35)を覆っている。この場合、配線部30の端子31、および端子32は、保護部40から露出している。
【0035】
保護部40は、X方向に延びている。保護部40は、例えば、発熱部20、および配線部30の一部を絶縁する機能、発熱部20において発生した熱を伝える機能、および、外力や腐食性ガスなどから発熱部20や配線部30の一部を保護する機能を有する。保護部40は、耐熱性および絶縁性を有し、化学的安定性および熱伝導率の高い材料から形成される。保護部40は、例えば、セラミックスや、ガラスなどから形成される。この場合、酸化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料を含むフィラーが添加されたガラスを用いて保護部40を形成することもできる。フィラーが添加されたガラスの熱伝導率は、例えば、2[W/(m・K)]以上とすることができる。
【0036】
また、ヒータ1には、発熱部20の温度を検出する検出部をさらに設けることができる。検出部は、例えば、サーミスタなどとすることができる。検出部は、例えば、絶縁層11の上、および、基部10の、外面10aと対向する凹状の内面10bの、絶縁層11と対向する領域の少なくともいずれかに設けることができる。
【0037】
検出部が、絶縁層11の上に設けられる場合には、検出部、および検出部に電気的に接続された配線と端子を、保護部40により覆うことができる。検出部に電気的に接続された端子は、保護部40から露出させることができる。
【0038】
検出部が、基部10の、凹状の内面10bに設けられる場合には、内面10bの上に絶縁層を設け、検出部、および検出部に電気的に接続された配線と端子を、絶縁層の上に設けることができる。絶縁層は、絶縁層11と同様とすることができる。また、検出部に電気的に接続された配線は、保護部により覆うことができる。検出部に電気的に接続された端子は、保護部から露出させることができる。保護部は、保護部40と同様とすることができる。
【0039】
次に、基部10における反りの抑制について説明する。
前述したように、基部10は、ステンレスやアルミニウム合金などの金属から形成される。一方、保護部40は、例えば、セラミックス、ガラス、フィラーが添加されたガラスなどから形成される。絶縁層11は、例えば、セラミックスなどの無機材料から形成される。
【0040】
そのため、基部10の熱膨張率と、保護部40および絶縁層11の熱膨張率とが異なるものとなる。また、ヒータ1の使用時に、発熱部20(発熱体21、22)を発熱させると、基部10、保護部40、および絶縁層11が加熱される。ヒータ1の製造時に、保護部40や絶縁層11を焼成すると、基部10、保護部40、および絶縁層11が加熱される。そのため、ヒータ1の使用時や製造時に、材料の熱膨張率の差に起因して熱応力が発生する。熱応力が発生すると、ヒータ1に反りが発生するおそれがある。
また、金属の熱膨張率は、セラミックスなどの熱膨張率に比べて高いので、ヒータ1の反りが大きくなり易くなる。
【0041】
また、一般的には、絶縁層11、発熱部20、および保護部40が設けられる基部は、平板状の基部となっている。平板状の基部は曲げ剛性が低いので、一般的なヒータにおいて熱応力が発生すると、ヒータの反りが大きくなる。この場合、平板状の基部のY方向(幅方向)の長さが短かったり、平板状の基部のX方向の長さが長かったり、平板状の基部の厚みが薄かったりすると、ヒータの反りがさらに大きくなる。
【0042】
図2に示すように、基部10は、板状を呈し、厚み方向に湾曲した形状を有している。この様な形状を有する基部10とすれば、基部10の曲げ剛性を大きくすることができる。基部10の曲げ剛性が大きくなれば、材料の熱膨張率の差に起因して熱応力が発生したとしても、ヒータ1に反りが発生するのを抑制することができる。
【0043】
また、平板状の基部を有する一般的なヒータは、画像形成装置に設けられる定着部のステーに取り付けられる。
基部10は、厚み方向に湾曲した形状を有しているので、基部10にステーの機能を持たせることができる。そのため、ヒータ1を、後述する定着部200にそのまま用いることができるので、ステーを省くことができる。ステーを省くことができれば、定着部200の構成を簡略化することができる。
【0044】
この場合、基部10のZ方向の寸法Lは、1mm以上、5mm以下とすることが好ましい。この様にすれば、ヒータ1を、定着部200にそのまま用いたとしても、ヒータ1を通過する加熱対象物の搬送が円滑となる。
また、基部10のZ方向の寸法Lをこの様にすれば、基部10の曲げ剛性を大きくすることができるので、例えば、基部10の厚みTを、0.5mm~1.0mm程度としても、発生する熱応力に対して十分な曲げ剛性を得ることができる。
【0045】
また、基部10のY方向の寸法Wは、4mm以上、10mm以下とすることが好ましい。この様にすれば、基部10の曲げ剛性を大きくすることができるので、例えば、基部10の厚みTを、0.5mm~1.0mm程度としても、発生する熱応力に対して十分な曲げ剛性を得ることができる。
【0046】
以上に説明した様に、本実施の形態に係るヒータ1とすれば、基部10の材料を金属としても、ヒータ1に反りが発生するのを抑制することができ、且つ、定着部200の構成を簡略化することができる。
【0047】
図3は、他の実施形態に係るヒータ50を例示するための模式正面図である。
なお、
図3は、発熱部20が設けられた側からヒータ50を見た図である。
図4は、
図3におけるヒータ50のB-B線方向の模式拡大断面図である。
【0048】
図3、および
図4に示すように、ヒータ50は、例えば、基部60、絶縁層11、発熱部20、配線部30、保護部40、および補強部70を有する。また、前述したヒータ1と同様に、発熱部20の温度を検出する検出部をさらに設けることもできる。
【0049】
また、発熱体21、および発熱体22のそれぞれの中心は、直線60aの上に位置するようにすることが好ましい。すなわち、発熱体21、および発熱体22のそれぞれは、直線60aを対称軸として線対称となる形状を有することが好ましい。
【0050】
ヒータ50を画像形成装置100に取り付ける際には、例えば、直線60aが加熱対象物の搬送経路の中心線に重なるようにする。この様にすれば、加熱対象物の、搬送方向に直交する方向の寸法や位置が変化した場合であっても、加熱対象物を略均一に加熱することができる。
【0051】
基部60は、第1の部分61、および第2の部分62を有する。第1の部分61、および第2の部分62は、一体に形成することができる。基部60(第1の部分61、および第2の部分62)は、例えば、ステンレスやアルミニウム合金などの金属から形成することができる。基部60は、例えば、折り曲げ加工やプレス加工などの塑性加工や、引き抜き加工などにより形成することができる。
【0052】
第1の部分61は、板状を呈している。第1の部分61は、X方向に延びている。第1の部分61の、Z方向における外面61aには、凹部61a1が設けられている。凹部61a1は、外面61aに開口している。凹部61a1は、外面61aの中央をX方向に延びている。前述した凹部10a1と同様に、凹部61a1の底面61a2には、絶縁層11が設けられている。絶縁層11の上には、発熱部20、配線部30、および保護部40が設けられている。保護部40は、発熱部20(発熱体21、および発熱体22)、および配線部30の一部(配線33、配線34、および配線35)を覆っている。配線部30の端子31、および端子32は、保護部40から露出している。
【0053】
第1の部分61の外面61aは、凸状の曲面とすることができる。凹部61a1の近傍における、外面61aの曲率半径R1は、例えば、0.1mm以上である。外面61aの曲率半径R1をこの様にすれば、ヒータ50を通過する加熱対象物の搬送が円滑となる。また、第1の部分61の外面61aと、保護部40の外面40aとの接続部分には、段差がないようにすることが好ましい。この様にすれば、ヒータ50を通過する加熱対象物の搬送がさらに円滑となる。
【0054】
第2の部分62は、板状を呈し、一対設けられている。第2の部分62は、第1の部分61の、外面61aに対向する内面61bの、Y方向における両側の周縁のそれぞれに設けられている。第2の部分62は、内面61bからZ方向に突出している。一対の第2の部分62は、互いに対向している。
【0055】
基部60(第1の部分61、および第2の部分62)のX方向の寸法は、加熱対象物の大きさなどに応じて適宜変更することができる。
第1の部分61の厚みT1、および第2の部分62の厚みT2は、例えば、0.5mm~1.0mm程度である。
【0056】
基部60のY方向の寸法(第1の部分61のY方向の寸法)W1は、例えば、4mm~10mm程度である。
基部60のZ方向の寸法L1は、1mm以上、5mm以下とすることができる。
【0057】
すなわち、基部60のY方向の寸法W1は、前述した基部10のY方向の寸法Wよりも小さくすることができる。また、基部60のZ方向の寸法L1は、前述した基部10のZ方向の寸法Lよりも小さくすることができる。そのため、基部60の小型化を図ることができる。
【0058】
しかしながら、基部60のY方向の寸法W1と、基部60のZ方向の寸法L1をこの様にすると、基部60の曲げ剛性が、基部10の曲げ剛性よりも小さくなる。
そのため、ヒータ50には、補強部70が設けられている。
【0059】
図4に示すように、補強部70は、第1の部分61の内面61b側に設けられている。補強部70は、一方の第2の部分62と、他方の第2の部分62との間に設けられている。補強部70は、Z方向に延びている。補強部70は、第1の部分61の内面61b側から突出している。補強部70は、板状を呈し、厚み方向に湾曲した形状を有している。例えば、X方向から見た補強部70の形状は、U字状とすることができる。補強部70のY方向の一方の端部は、一方の第2の部分62と接続されている。補強部70のY方向の他方の端部は、他方の第2の部分62と接続されている。補強部70の端部は、例えば、第2の部分62に溶接したり、ロー付けしたり、ネジなどの締結部材を用いて接続したりすることができる。
【0060】
補強部70は、例えば、ステンレスやアルミニウム合金などの金属から形成することができる。補強部70は、例えば、折り曲げ加工やプレス加工などの塑性加工や、引き抜き加工などにより形成することができる。
【0061】
補強部70の厚みは、例えば、0.3mm以上、2.0mm以下とすることができる。補強部70のZ方向の寸法L2は、例えば、30mm以上、80mm以下とすることができる。補強部70のX方向の寸法は、例えば、基部60のX方向の寸法と同じとすることができる。また、複数の補強部70を設けることができる。すなわち、補強部70は少なくとも1つ設けることができる。複数の補強部70を設ける場合には、複数の補強部70を所定の間隔を空けて、X方向に並べて設けることができる。
【0062】
Z方向に延びる補強部70が、基部60に接続されていれば、曲げ剛性を大きくすることができる、そのため、基部60のY方向の寸法W1と、基部60のZ方向の寸法L1を小さくしても、ヒータ50に反りが発生するのを抑制することができる。
また、凸状の曲面(外面61a)を有する基部60(第1の部分61)にステーの機能を持たせることができる。そのため、ヒータ50を、後述する定着部200aにそのまま用いることができるので、ステーを省くことができる。ステーを省くことができれば、定着部200aの構成を簡略化することができる。
【0063】
以上に説明した様に、本実施の形態に係るヒータ50とすれば、基部60の材料を金属としても、ヒータ50に反りが発生するのを抑制することができ、且つ、定着部200aの構成を簡略化することができる。
【0064】
(画像形成装置)
本発明の1つの実施形態において、ヒータ1を具備した画像形成装置100を提供することができる。前述したヒータ1に関する説明、およびヒータ1の変形例(例えば、前述したヒータ50など)は、いずれも画像形成装置100に適用することができる。
【0065】
また、以下においては、一例として、画像形成装置100が複写機である場合を説明する。ただし、画像形成装置100は複写機に限定されるわけではなく、トナーを定着させるための定着部(ヒータ)が設けられるものであればよい。例えば、画像形成装置100は、プリンタなどとすることもできる。
【0066】
図5は、本実施の形態に係る画像形成装置100を例示するための模式図である。
図6は、定着部200を例示するための模式図である。
図5に示すように、画像形成装置100は、例えば、フレーム110、照明部120、結像素子130、感光ドラム140、帯電部150、放電部151、現像部160、クリーナ170、収納部180、搬送部190、定着部200、およびコントローラ210を有する。
【0067】
フレーム110は、箱状を呈し、その内部に、照明部120、結像素子130、感光ドラム140、帯電部150、現像部160、クリーナ170、収納部180の一部、搬送部190、定着部200、およびコントローラ210を収納する。
フレーム110の上面には、ガラスなどの透光性材料を用いた窓111を設けることができる。窓111の上には、複写される原稿500が載置される。また、原稿500の位置を移動させる移動部を設けることができる。
【0068】
照明部120は、窓111の近傍に設けられる。照明部120は、例えば、ランプなどの光源121、および反射鏡122を有する。
結像素子130は、窓111の近傍に設けられる。
感光ドラム140は、照明部120および結像素子130の下方に設けられる。感光ドラム140は、回転可能に設けられる。感光ドラム140の表面には、例えば、酸化亜鉛感光層または有機半導体感光層が設けられる。
帯電部150、放電部151、現像部160、およびクリーナ170は、感光ドラム140の周辺に設けられる。
【0069】
収納部180は、例えば、カセット181、およびトレイ182を有する。カセット181は、フレーム110の一方の側部に着脱可能に取り付けられる。トレイ182は、フレーム110の、カセット181が取り付けられる側とは反対側の側部に設けられる。カセット181には、複写が行われる前の紙510(例えば、白紙)が収納される。トレイ182には、複写像511aが定着した紙511が収納される。
【0070】
搬送部190は、感光ドラム140の下方に設けられる。搬送部190は、カセット181とトレイ182との間で紙510を搬送する。搬送部190は、例えば、搬送される紙510を支持するガイド191、および紙510を搬送する搬送ローラ192~194を有する。また、搬送部190には、搬送ローラ192~194を回転させるモータを設けることができる。
【0071】
定着部200は、感光ドラム140の下流側(トレイ182側)に設けられる。
図6に示すように、定着部200は、例えば、ヒータ1、フィルムベルト202、および加圧ローラ203を有する。
【0072】
ヒータ1は、保護部40が設けられた側が加圧ローラ203と対向するように取り付けられる。
一般的に、定着部には、平板状の基部を有するヒータ、平板状のヒータが取り付けられるステー、フィルムベルト、および加圧ローラが設けられる。前述した様に、本実施の形態に係るヒータ1とすれば、厚み方向に湾曲した形状を有する基部10にステーの機能を持たせることができる。そのため、ステーを省くことができるので、定着部200の構成を簡略化することができる。
【0073】
フィルムベルト202は、ヒータ1を覆っている。フィルムベルト202は、例えば、ポリイミドなどの耐熱性を有する樹脂を含んでいる。
【0074】
加圧ローラ203は、ヒータ1と対向するように設けられる。加圧ローラ203は、例えば、芯金203a、駆動軸203b、および弾性部203cを有する。駆動軸203bは、芯金203aの端部から突出し、モータなどの駆動装置に接続される。弾性部203cは、芯金203aの外面に設けられる。弾性部203cは、耐熱性を有する弾性材料から形成される。弾性部203cは、例えば、シリコーン樹脂などを含むことができる。
【0075】
コントローラ210は、フレーム110の内部に設けられている。コントローラ210は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算部、および制御プログラムが格納された記憶部を有する。演算部は、記憶部に格納されている制御プログラムに基づいて、画像形成装置100に設けられた各要素の動作を制御する。また、コントローラ210は、使用者が複写条件などを入力する操作部、動作状態や異常表示などを表示する表示部などを備えることもできる。
なお、画像形成装置100に設けられた各要素の制御には、既知の技術を適用することができるので詳細な説明は省略する。
【0076】
図7は、他の実施形態に係る定着部200aを例示するための模式図である。
図7に示すように、定着部200aは、例えば、ヒータ50、フィルムベルト202、および加圧ローラ203を有する。
【0077】
ヒータ50は、保護部40が設けられた側が加圧ローラ203と対向するように取り付けられる。前述した様に、本実施の形態に係るヒータ50とすれば、凸状の曲面(外面61a)を有する基部60(第1の部分61)にステーの機能を持たせることができる。そのため、ステーを省くことができるので、定着部200aの構成を簡略化することができる。
【0078】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【0079】
以下、前述した実施形態に関する付記を示す。
【0080】
(付記1)
画像形成装置の定着部に設けられるヒータであって、
板状を呈し、第1の方向に延び、一方の面が凸状の曲面であり、前記凸状の曲面に開口し、前記第1の方向に延びる凹部を有し、金属を含む基部と;
前記凹部の底面に設けられた絶縁層と;
前記絶縁層の上に設けられ、前記第1の方向に延びる発熱体と;
前記発熱体を覆う保護部と;
を具備したヒータ。
【0081】
(付記2)
前記基部は、厚み方向に湾曲した形状を有し、
前記凹部は、前記基部の前記凸状の曲面である湾曲した外面に開口している付記1記載のヒータ。
【0082】
(付記3)
板状を呈し、厚み方向に湾曲した形状を有する補強部をさらに備え、
前記基部は、前記凸状の曲面を有する第1の部分と;前記第1の部分の、前記凸状の曲面に対向する面の周縁に設けられ、前記第1の方向と交差する第2の方向に突出する一対の第2の部分と;を有し、
前記凹部は、前記第1の部分の前記凸状の曲面に開口し、
前記補強部の一方の端部は、一方の前記第2の部分と接続され、前記補強部の他方の端部は、他方の前記第2の部分と接続されている付記1記載のヒータ。
【0083】
(付記4)
前記凹部の近傍における、前記凸状の曲面の曲率半径は、0.1mm以上である付記1~3のいずれか1つに記載のヒータ。
【0084】
(付記5)
付記1~4のいずれか1つに記載のヒータと;前記ヒータを覆うフィルムベルトと;を有する定着部を具備した画像形成装置。
【符号の説明】
【0085】
1 ヒータ、10 基部、10a 外面、10a1 凹部、11 絶縁層、20 発熱部、21 発熱体、22 発熱体、40 保護部、50 ヒータ、60 基部、61 第1の部分、61a 外面、62 第2の部分、70 補強部、100 画像形成装置、200 定着部、200a 定着部