(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080534
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】可搬式切断装置ユニット、及び切断システム
(51)【国際特許分類】
B23K 7/10 20060101AFI20240606BHJP
E04G 23/08 20060101ALI20240606BHJP
B28D 7/02 20060101ALI20240606BHJP
B23K 7/08 20060101ALI20240606BHJP
B26F 3/16 20060101ALI20240606BHJP
B23K 7/00 20060101ALN20240606BHJP
【FI】
B23K7/10 M
E04G23/08 H
B28D7/02
B23K7/08 A
B26F3/16
B23K7/00 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193830
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【代理人】
【識別番号】100173680
【弁理士】
【氏名又は名称】納口 慶太
(72)【発明者】
【氏名】井戸 康浩
(72)【発明者】
【氏名】奥田 修司
(72)【発明者】
【氏名】石丸 達朗
(72)【発明者】
【氏名】松岡 明彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信也
(72)【発明者】
【氏名】右田 周平
(72)【発明者】
【氏名】田中 高広
(72)【発明者】
【氏名】工藤 真温
【テーマコード(参考)】
2E176
3C060
3C069
【Fターム(参考)】
2E176DD52
3C060AA14
3C060CF14
3C060CF19
3C069AA01
3C069BA00
3C069BB01
3C069BC05
3C069CA10
3C069DA07
3C069EA01
(57)【要約】
【課題】切断装置の適用範囲を拡大することが可能な切断装置ユニットを提供することを課題とする。
【解決手段】トラック車両1に搭載可能な大きさを有し、少なくとも、切断対象物を火炎により切断するための切断トーチ44に金属パウダーを供給するためのパウダーディスペンサ38と、切断対象物84の切断に伴って生じた排気中の塵埃を集めるブロアと、を保持した。パウダーディスペンサ38を保持したガス切断ユニット12と、ブロアを保持した集塵機ユニットと、を備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送車両に搭載可能な大きさを有し、少なくとも、
切断対象物を火炎により切断するための切断トーチに切断用パウダーを供給するためのパウダー供給部と、
前記切断対象物の切断に伴って生じた排気中の塵埃を集める集塵部と、を保持した可搬式切断装置ユニット。
【請求項2】
前記パウダー供給部を有する第1ユニットと、
前記集塵部を有する第2ユニットと、を備えた、請求項1に記載の可搬式切断装置ユニット。
【請求項3】
前記第1ユニットと、前記第2ユニットが、ジョイント部を介して結合と分離が可能である請求項2に記載の可搬式切断装置ユニット。
【請求項4】
前記第1ユニットに、
前記切断用パウダーの供給を制御可能な制御部と、
前記制御部との通信が可能な通信機器と、が備えられ、
切断作業時に、
前記通信機器を介して前記制御部に、前記切断用パウダーの供給及び供給停止のための指示を入力可能である請求項2又は3のいずれかに記載の可搬式切断装置ユニット。
【請求項5】
切断作業時に、
前記集塵部に、前記排気を導くダクト部が接続され、
前記排気の流動経路中に配置されて前記排気の温度を検出する温度検出部と、
前記ダクト部への冷却用気体の導入が可能な開閉部と、が備えられ、
前記第2ユニットに、
前記温度検出部の検出結果に基づいて前記開閉部を制御可能な制御部が備えられた請求項2又は3のいずれかに記載の可搬式切断装置ユニット。
【請求項6】
搬送車両に搭載可能な大きさを有し、少なくとも、
切断対象物を火炎により切断するための切断トーチに切断用パウダーを供給するためのパウダー供給部と、
前記切断対象物の切断に伴って生じた排気中の塵埃を集める集塵部と、を保持した可搬式切断装置ユニットを備え、
切断作業時に、
前記集塵部に、前記排気を導くダクト部が接続され、
前記排気の流動経路中に配置されて前記排気の温度を検出する温度検出部と、
前記ダクト部への冷却用気体の導入が可能な開閉部と、が備えられ、
前記温度検出部の検出結果に基づいて前記開閉部が制御される切断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鉄筋コンクリートやその他の切断対象物の切断に用いられる切断装置ユニット、及び切断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新たな建造物の工事着手前に、既存構造物を除去する解体工事が必要なケースが増加している。既存の構造物の中でも、鉄筋コンクリート造のような堅牢な躯体の解体工事では、大型のブレーカーを用いる工法が一般的である。しかし、作業に伴う周辺環境への工事振動が課題の一つとなっている。さらに、地下部分では、基礎の構造体断面が大きいにもかかわらず、狭い空間での作業となり、大型機械の採用が制限されるなどの課題がある。そして、これらの課題を解決できる工法開発が求められている。
【0003】
現在、断面の大きなコンクリート構造体の解体時に発生する振動を抑制するための工法として、ワイヤーソーイングやコアボーリングによる切断工法がある。しかし、前者はワイヤーソーを切断部位外周に設置しなければならないという課題がある。後者は構造体を構成する棒鋼や鉄骨などの鋼材がコアボーリングの障害となるという課題がある。そこで、発明者等は、コンクリート構造物における解体の効率化を図ったり、周辺環境に及ぼす影響を低減させたりできるよう、水素系混合ガスを用いた切断装置や切断方法を開発した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、混合ガスを用いた切断装置や切断方法は、上述のように、解体を効率化したり、周辺環境への影響を低減したりするうえで有効である。したがって、これらの切断装置を様々な作業現場で使用できるようにすることが望ましい。
【0006】
本発明は、切断装置の適用範囲を拡大することが可能な可搬式切断装置ユニット、及び切断システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の切断装置ユニットは、搬送車両に搭載可能な大きさを有し、少なくとも、
切断対象物を火炎により切断するための切断トーチに切断用パウダーを供給するためのパウダー供給部と、
前記切断対象物の切断に伴って生じた排気中の塵埃を集める集塵部と、を保持した。
また、上記課題を解決するために本発明の切断システムは、搬送車両に搭載可能な大きさを有し、少なくとも、
切断対象物を火炎により切断するための切断トーチに切断用パウダーを供給するためのパウダー供給部と、
前記切断対象物の切断に伴って生じた排気中の塵埃を集める集塵部と、を保持した可搬式切断装置ユニットを備え、
切断作業時に、
前記集塵部に、前記排気を導くダクト部が接続され、
前記排気の流動経路中に配置されて前記排気の温度を検出する温度検出部と、
前記ダクト部への冷却用気体の導入が可能な開閉部と、が備えられ、
前記温度検出部の検出結果に基づいて前記開閉部が制御される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、切断装置の適用範囲を拡大することが可能な可搬式切断装置ユニット、及び切断システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は本発明の実施形態に係る可搬式切断装置ユニットをトラック車両に積載した状態を示す図、(b)はトラック車両の上方から示す図である。
【
図2】(a)は可搬式切断装置ユニットを側面(
図1(a)の可搬式切断装置ユニットの右側)から見た状態を示す図である。
【
図3】(a)はガス切断ユニットを示す正面図、(b)は(a)の左側から見た状態を示す側面図、(c)は(a)の右側から見た状態を示す側面図、(d)は(a)の上方から見た状態を示す平面図である。
【
図4】(a)はガス切断ユニットを示す正面図、(b1)は(a)の左側から見た状態を示す側面図、(b2)は(a)のブロア66、フィルタ部68、エアータンク72、塵埃収容部154等を取り除いた状態を示す側面図、(c)は(a)の右側から見た状態を示す側面図、(d)は(a)の上方から見た状態を示す平面図である。
【
図5】切断作業時における塵埃や排気の回収を示す説明図である。
【
図6】切断の様子の一例を概略的に示す説明図である。
【
図7】ガス切断ユニットの構成を概略的に示す説明図である。
【
図8】集塵機ユニットの構成を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態に係る可搬式切断装置ユニット(以下では「切断装置ユニット」と称する)10について説明する。以下では先ず、主に切断作業が行われていない状況(非切断作業時)の切断装置ユニット10について説明する。その後に、切断作業時に使用される機器について説明する。なお、
図1~
図4は、設計図面を利用したものであり、実際には存在しない線(各部の中心線等)が描かれている。また、部品と部品とが重なり、実際には隠れて視認できない部分も一部は実線で描かれている。さらに、一部の図面には、重心位置を示すマークG(円を90度間隔で塗り分けたマーク、一部のみ符号を付す)も描かれている。
【0011】
<切断装置ユニット10の概要>
図1(a)、(b)は、トラック車両1の荷台に積載された切断装置ユニット10を示している。切断装置ユニット10は、
図3(a)~(d)に示すガス切断ユニット12と、
図4(a)~(e)に示す集塵機ユニット52とを備えている。
【0012】
ガス切断ユニット12と集塵機ユニット52は、互いに連結や分離が可能である。
図1(a)、(b)及び
図2には、ガス切断ユニット12と集塵機ユニット52を、向かい合わせた状態で連結した状態が示されている。
【0013】
本実施形態における切断装置ユニット10の大きさや重さは、切断作業が行われていない状況(非切断作業時)において、
図1(a)、(b)に示すように、2トンサイズのトラック(2tトラック)車両1の荷台に載置できる程度である。切断装置ユニット10は、トラック車両1に積載した状態で、各地の作業現場に搬送することが可能である。
【0014】
切断装置ユニット10が作業現場に設置される際には、クレーン機器(図示略)等を利用して吊り下げられ、トラック車両1から地面に降ろされる。切断装置ユニット10のトラック車両1への積み降ろしの際には、
図1(a)、(b)に示すように、ガス切断ユニット12と集塵機ユニット52を連結したまま、積み降ろしの作業を行うことが可能である。また、ガス切断ユニット12と集塵機ユニット52を分離し、それぞれ個別に積み降ろしの作業を行うことも可能である。
【0015】
ガス切断ユニット12と集塵機ユニット52の各々は、フレーム部14、54を備えている。フレーム部14、54は、鋼鉄製の角パイプを門型、且つ、直方体状に組んで形成されている。フレーム部14、54は、互いに同程度の大きさに形成されている。
【0016】
フレーム部14、54の下端部(脚部)は、各々が、ベース板16、56を介して、ベース架台18、58に搭載されている。ベース板16、56の厚さは5mm程度である。ベース架台18、58は、アングル材を矩形な枠状に組んで構成されている。
【0017】
フレーム部14、54が地面等に載置される際には、
図2(c)、(d)や
図3(c)、(d)に示すように、ベース架台18、58の下に、転倒防止アングル20、60が連結される。フレーム部14、54は、転倒防止アングル20、60により、短手方向(幅方向)に転倒しないよう支持される。
【0018】
フレーム部14、54は、露出しており、互いに異なる色に塗り分けられている。本実施形態では、ガス切断ユニット12のフレーム部14は暖色(ここではオレンジ色)に塗装され、集塵機ユニット52のフレーム部54は寒色(ここでは水色)に塗装されている。
【0019】
作業現場に設置された際、ガス切断ユニット12と、集塵機ユニット52は、
図2に示すように、互いの長辺を向かい合わせて結合されている。両ユニット12、52の結合は、ジョイント部22、62を介して行われている。ジョイント部22、62には、両ユニット12、52の分離や再結合が可能な結合具(図示略)が備えられている。結合具としては、ジョイント部22、62をボルトとナットを用いて結合させるもの、係止金具を引っ掛けてロックするもの、等といった一般的な種々のものを採用可能である。
【0020】
なお、図示は省略するが、切断装置ユニット10の、作業現場への設置の際には、フレーム部14、54を、互いの短辺を向かい合わせて結合してもよい。また、フレーム部14、54を、L字型に並べて結合できるようにしてもよい。
【0021】
図1(a)、
図2、
図3(a)~(c)、
図4(a)~(c)に示すように、両フレーム部14、54からは、複数の吊り金具24、64が突出している。吊り金具24、64は、前述したように、クレーン機器(図示略)等により切断装置ユニット10を吊り上げたり、設置場所に降ろしたりする際に利用される。ガス切断ユニット12と、集塵機ユニット52とを分離して、個別に吊り下げることも可能である。吊り金具24、64としては、例えば、リング、フック、アイボルト、シャックル等といった、一般的な種々のものを採用できる。
【0022】
<ガス切断ユニット12の基本的構成>
ガス切断ユニット12には、ガス切断のための各種の機器が搭載されている。
図3(a)~(c)に示すように、ガス切断ユニット12には、配管接続盤部26、配電盤部28、制御部30、及び、機械部32等を備えている。機械部32は、直方体状の収納室であり、フレーム部14の内側に配置されている。
【0023】
配電盤部28、制御部30、及び、配管接続盤部26は、フレーム部14の外側に配置されており、フレーム部14の内側の機械部32に、フレーム部14を介して隣接している。配電盤部28、制御部30、及び、配管接続盤部26は、下から順に積み上げられて、崩れ落ちないように固定されている。配電盤部28、制御部30、及び、配管接続盤部26は、いずれも、開閉扉付きの筐体を備えており、開閉扉を閉じることで、内部を覆い隠すことができる。
【0024】
切断作業時には、配電盤部28は外部電源(図示略)に繋げられ、配電盤部28には、制御部30、配管接続盤部26、及び、機械部32内の機器を作動させるための電力が、外部電源から供給される。制御部30は、ガス切断ユニット12における各部を制御する。制御部30には、図示は省略するが、CPU、記憶部、及び、入出力インタフェース等を備えたコンピュータ機器を内蔵している。制御部30は、ガス切断ユニット12の操作者により操作される。
【0025】
配管接続盤部26には、
図3(a)に示すように、各種の配管継手34が取り付けられる。配管継手34には、切断作業に用いられる各種のIN(入力)用のホース(
図5の前段ホース112)、及び、OUT(出力)用のホース(
図5の供給ホース114)が接続される。各種のホース112、114については後述する。
【0026】
機械部32には、ホッパ36、パウダーディスペンサ(パウダー供給タンク)38、エアドライヤ40等が備えられている。ホッパ36は、パウダーディスペンサ38の上部に設けられており、切断作業時に、金属パウダー(以下では「パウダー」と称する)をパウダーディスペンサ38に供給する。パウダーディスペンサ38は、パウダーと空気(パウダーエアー)を混合し、パウダーと空気の混合気(パウダー混合気)を吐出する。エアドライヤ40は、配管接続盤部26を介してパウダーディスペンサ38に供給される空気を乾燥させる。
【0027】
図1に符号42で示すのは、切断トーチラック(以下では「トーチラック」と称する。)である。このトーチラック42は、切断作業に用いられる切断トーチ44を保持する。
図1の例では、トーチラック42は、3本の切断トーチ44を保持している。切断作業時には、使用される切断トーチ44が選択され、トーチラック42から取り外される。切断トーチ44を用いた切断作業については後述する。
【0028】
ガス切断ユニット12における各種の機器の保持には、ボルト止め、クランプ止め、溶接、載置等といった一般的な種々の方法を採用することが可能である。
【0029】
<集塵機ユニット52の基本的構成>
集塵機ユニット52には、ガス切断により生じた粉塵を回収するための機器が設置されている。集塵機ユニット52は、
図4(a)~(c)に示すように、ブロア66、フィルタ部68、コンプレッサ70、エアータンク72、配電盤部74、及び、制御部75等を備えている。
【0030】
制御部75には、図示は省略するが、CPU、記憶部、及び、入出力インタフェース等を備えたコンピュータ機器が内蔵されている。制御部75は、集塵機ユニット52の操作者により操作される。集塵機ユニット52の操作者は、ガス切断ユニット12の操作者と同一であってもよい。
【0031】
切断作業時には、
図5に概略的に示すように、集塵機ユニット52にダクト部76が接続される。ダクト部76は、集塵機ユニット52とチャンバ部90とを繋ぐ。ダクト部76、チャンバ部90、及び、集塵機ユニット52に備えられた各種機器の機能については後述する。
【0032】
集塵機ユニット52における各種の機器の保持には、ボルト止め、クランプ止め、溶接、載置等といった一般的な種々の方法を採用することが可能である。
【0033】
<切断装置ユニット10を用いた切断作業>
切断装置ユニット10を用いた切断作業時には、
図5及び
図6に示すように、前述した切断トーチ44が用いられる。
図5及び
図6に示す状況において、切断トーチ44は、作業者80により把持されている。
【0034】
<<切断トーチによる切断>>
切断トーチ44は、火炎82を噴射して、鉄筋コンクリートや強化コンクリート等の切断対象物84を切断する。切断トーチ44としては、例えば、本出願人による特願2022-016656号の明細書や図面に開示されたのと同様のものを利用できる。本出願人による特願2022-016656号の明細書や図面には、パウダー、燃料ガス、予熱酸素、及び、切断酸素等を、切断トーチに供給する切断装置が開示されている。
【0035】
図5に示すように、切断トーチ44は、切断装置ユニット10に接続されている。切断装置ユニット10には、ボンベラック78が接続されている。ボンベラック78には、図示は省略するが、燃料ガス用のボンベや、酸素用のボンベが設置されている。燃料ガス、予熱酸素、及び、切断酸素は、ボンベラック78の各種のボンベから、切断装置ユニット10のガス切断ユニット12(
図3(a)~(c))を経て、切断トーチ44に供給される。
【0036】
パウダーは、ガス切断ユニット12(
図3(a)~(c))の機械部32に設置されたパウダーディスペンサ38から、パウダーエアーと混合された状態で、切断トーチ44に供給される。
【0037】
切断トーチ44においては、燃料ガス、各種の酸素、及び、パウダーが、それぞれ個別に独立した流路を通り、切断トーチ44の基端側から先端側へ導かれる。切断トーチ44の先端部には、図示は省略するが、火口受けが装着され、火口受けには火口がねじ込まれている。
【0038】
切断トーチ44の先端部においては、燃料ガス、予熱酸素、切断酸素、及び、パウダーが噴射され、これらの混合ガスが形成される。この混合ガスにおいて、パウダーが加熱され、着火装置(図示略)により着火されて、切断トーチ44から火炎82が噴射される。
【0039】
図6は、作業者80が切断トーチ44を把持して操作し、鉄筋コンクリート等からなる切断対象物84を切断する様子を例示している。切断トーチ44からは、火炎82が直進するよう噴射される。
図6には、火炎82が切断対象物84に当たって反射する様子が模式的に示されている。
【0040】
作業者80は、切断対象物84に対して切断トーチ44の先端部を対向させ、切断対象物84の表面を加熱する。さらに、予熱の段階が終了すると、予熱酸素に切断酸素が足し合わされ、火炎82が維持(或いは増強)される。そして、切断酸素とパウダーとが供給されることで、高温の火炎82が噴射され、切断対象物84が加熱される。
【0041】
切断酸素の供給が行われた後には、火炎82の切断温度は、混合されたパウダーの作用により、2000~2500℃以上となり、切断対象物84の融点を越える温度に達している。そして、高温の火炎82が切断対象物84に吹き付けられ、切断対象物84の、火炎82の当たった部位が溶融する。
【0042】
切断対象物84には、火炎82によって、コンクリートや内包物(鉄筋等)が部分的に除去された裂開部86が形成される。裂開部86の形成に伴い、溶融した切断対象物(溶融物)が流れ出る。例えば、作業者80は、裂開部86に対して、切断トーチ44の先端側を徐々に進入させ、裂開部86を深化させる。
【0043】
作業者80は、切断トーチ44の前進移動や、横方向及び縦方向の移動を適宜組み合わせる。そして、作業者80は、切断対象物84を、例えば板状や直方体状に順次切り出し、コンクリート構造物により構成された建築物等の解体を進める。
【0044】
なお、
図6には、シールド金属板88が示されている。このシールド金属板88は、耐火性のある金属製の素材を用いて板状に形成されている。シールド金属板88は、作業者80が必要に応じて、単独で、或いは、チャンバ部90(後述する)と併用し、輻射熱や火花を防ぐことができるものである。シールド金属板88には長方形状の開口部89が設けられている。
【0045】
シールド金属板88は、図示は省略するが、例えば、他の作業者に持って貰ったり、架台上に載せたり、シールド金属板用の昇降機構(クレーンやウインチなど)により支持したり、或いは、切断対象物84に立て掛けたりして、使用することが可能である。作業者80は、開口部89に、切断トーチ44の先端側を差し込んで、輻射熱や火花を防ぎながら、前述のような切断作業を行える。
【0046】
開口部89の形状を、例えば
図6に示すように長方形とした場合、開口部89の縁部をガイドとして、切断トーチ44を、横方向や縦方向に直線的に移動させることが可能である。
【0047】
なお、切断トーチ44には、IN(入力)用及びOUT(出力)用の冷却水供給管(図示略)を介して冷却水が流通しており、この冷却水は、切断トーチ44の内部と外部との間で循環している。このため、切断作業時に切断トーチ44の過度な温度上昇が防止される。
【0048】
<<粉塵等の回収>>
切断トーチ44による切断対象物84の切断に伴い、火花や溶融物、粉塵、及び、排気等が生じる。発生した粉塵や排気は、
図5に矢印Aで示すように、チャンバ部90、及び、ダクト部76を介して、切断装置ユニット10の集塵機ユニット52(
図4(a)~(c))に導かれる。
【0049】
ダクト部76の一端部は、チャンバ部90に接続され、他端部は、切断装置ユニット10の集塵機ユニット52に備えられたブロア66(
図4(a))に接続されている。ブロア66としては、例えば、内部に回転翼(図示略)を備え、中心部から吸い込んだ排気を周方向(回転方向、接線方向)に向けて流動させるタイプのもの(ここではシロッコファン)が採用されている。そして、粉塵を含んだ排気に対し、ブロア66により流動性が与えられ、粉塵を含んだ排気は、側方に設置された集塵機ユニット52に向かって流れる。詳細は後述するが、集塵機ユニット52において、排気中の粉塵が回収され、排気が浄化されて外気中に放出される。
【0050】
<<チャンバ部90>>
チャンバ部90は、
図5及び
図6に示すように、一面を開放した直方体状に形成されている。チャンバ部90は、開放した面を切断対象物84の正面に向け、
図6に示すように、切断対象物84を部分的に覆い隠すように設置される。チャンバ部90は、作業者80が、切断作業時の輻射熱や火花等を防ぐために用いられている。
【0051】
チャンバ部90の作業者80側の面には、スリット状の作業側開口部92が形成されている。作業者80は、作業側開口部92に切断トーチ44を差し込む。
図5及び
図6の例では、チャンバ部90の向きは、作業側開口部92が縦方向(地面を下にした上下方向)に延びる向きである。
【0052】
チャンバ部90をチャンバ部用の昇降機構(クレーンやウインチ、滑車など、図示略)により支持し、昇降させることが可能である。
図6の例では、昇降機構から延びてチャンバ部90に接続されたワイヤ94が概略的に示されている。このようにすることで、作業側開口部92の高さを変更し、切断トーチ44の可動範囲を変化させることができる。
【0053】
また、昇降機構を、例えば、直交方向(水平2軸方向)に移動可能とすることにより、チャンバ部90を、立体的に任意の位置に移動させることが可能となる。
【0054】
チャンバ部90の作業側開口部92の両縁には、帯状に加工された防護シート96が取り付けられている。防護シート96は、可撓性や断熱性、及び、不燃性を有する不織布(フエルト等)により形成されている。防護シート96が、弾性的に変形しながら切断トーチ44を挟み、且つ、作業側開口部92を塞ぐことで、火花、溶融物、及び、排気等が作業者に触れるのを、より確実に防ぐことが可能である。
【0055】
このように、チャンバ部90の機能としては、(1)排気が漏れ得るような隙間が生じるのを防止し(開口面積を制御し)、効率的に排気を回収する機能、(2)火炎(火花、溶融物等)から作業者80を防護する機能、(3)切断により生じた粉じんの飛散を防止する機能、(4)切断時の破砕片から作業者を防護する機能、(5)切断時の輻射熱から作業者を防護する機能、などがある。
【0056】
<<ダクト部76>>
ダクト部76には、可撓性を有するフレキシブル管が用いられている。
図5においては、ダクト部76が作業者80の上方に配設されているように示されているが、ダクト部76を、地面において蛇行するように設置することも可能である。
【0057】
ダクト部76の内部には、高温の排気が流れる。このため、ダクト部76が長いほど、集塵機ユニット52のブロア66に到達するまでの距離が長くなり、排気の冷却が促進される。
【0058】
ダクト部76にフレキシブル管が用いられているのは、切断装置ユニット10の設置場所は一定ではないためである。つまり、切断装置ユニット10の周囲にどのような大きさのスペースを確保できるかは、作業現場次第である。このため、ダクト部76にフレキシブル管を用いることにより、様々な作業現場において必要な長さを確保しつつ、ダクト部76を設置できる。
【0059】
ダクト部76は、可能な限り露出する部分が生じないよう、断熱材(断熱シート、図示略)により覆われている。ダクト部76は、高温の排気が内部を流れることにより温度上昇し、ダクト部76の外周部は、例えば50℃以上の高温になる。したがって、ダクト部76を断熱材で覆うことにより、例えば、ダクト部76の周囲の作業者が高温のダクト部76に直接接触することを防止できる。なお、ダクト部76の、チャンバ部90に近い部位(例えば数m以内程度)では、断熱材を省略してもよい。
【0060】
図8には、ダクト部76や、集塵機ユニット52に備えられた主な機器の構成が概略的に示されている。ダクト部76の、集塵機ユニット52の手前の部位(より具体的にはブロア66の手前の部位)において、2箇所から外気が導入される。
図8に符号102、104で示すのは、外気導入部である。外気の取り込みにより、集塵機ユニット52に流入する排気の温度をさらに下げることが可能である。
【0061】
なお、
図8の例では、集塵機ユニット52に近い外気導入部102にバルブ装置106が設けられている。バルブ装置106を開放することにより、外気導入部102からダクト部76への外気の導入を制御できるようになっている。
【0062】
より具体的には、切断作業時に、ダクト部76内における排気の温度(排気温度)が温度センサー108により計測される。制御部75は、排気温度が予め定められた閾値を超えたと判定すると、バルブ装置106を作動させ、外気導入が行われるようにする。ブロア66(本実施形態ではシロッコファン)により、ダクト部76は陰圧となっている。バルブ装置106を開放した状況でも、ブロア66により陰圧が保たれて、外気が流入する。
【0063】
<ガス切断ユニット12における各部の役割>
<<配管接続盤部26>>
ガス切断ユニット12における配管接続盤部26には、各種の配管継手34(
図3(a)等)が取り付けられている。切断作業時には、これらの配管継手34に、
図5に概略的に示すように、前段ホース112や、供給ホース114が接続される。
【0064】
前段ホース112は、主には、ボンベラック78から配管接続盤部26に延びるホースであり、供給ホース114は、配管接続盤部26から切断トーチ44に延びるホースである。前段ホース112や供給ホース114は、ガス(燃料ガス、各種酸素)の種類や用途に応じて、いずれも複数用いられている。各前段ホース112及び各供給ホース114は、ゴム等の材質により形成されており、可撓性を有している。
【0065】
配管継手34には、IN(入力)用の配管継手と、OUT(出力)の配管継手とがある。前段ホース112はIN(入力)用の配管継手に接続され、供給ホース114はOUT(出力)用の配管継手に接続される。
【0066】
配管接続盤部26には、各種の調整バルブや計測器等(図示略)が備えられている。ボンベラック78からの各種のガスの流量が、各種の調整バルブ等(図示略)により調節され、各種のガスが切断トーチ44に供給される。
【0067】
配管接続盤部26においては、多数のホース(前段ホース112及び供給ホース114)が接続される。このため、各種のホース112、114の誤接続を防止できるよう、ホース112、114の用途毎に、サイズや色が異なっている。
【0068】
前段ホース112は、各種のガスに関するIN(入力)用のホースである。また、供給ホース114は、各種のガスに関するOUT(出力)用のホースである。そして、例えば、水素IN(燃料ガス入力用の前段ホース112)と、水素OUT(燃料ガス出力用の供給ホース114)についてはオレンジ色、切断酸素OUTと予熱酸素OUTについては水色、パウダーエアーIN(混合気生成用エアーIN)、及び、パウダーエアーOUT(混合気生成用エアーOUT)については黒色が採用されている。
【0069】
切断酸素と予熱酸素の入力に関しては、1本の酸素IN(入力)用のホースが用いられており、この酸素IN(入力)用のホースには、紺色のホースが用いられている。酸素IN(入力)用の位置から入力された酸素は、配管接続盤部26において、切断酸素OUT(出力)用、及び、予熱酸素OUT(出力)に振り分けられる。
【0070】
このように、ホース112、114の接続部や色を用途に応じて異ならせることで、誤接続を防止でき、フェールセーフ対策を施すことが可能となる。
【0071】
また、ホース112、114の太さも、用途に応じて異なっている。ホース112、114の太さの相違によっても、フェールセーフ対策が施されている。ホース112、114の太さが相違することに合わせて、対応する配管継手のサイズも異なっている。
【0072】
なお、ホース112、114の色や太さについては、例えば、同じ種類のガスに対して、色は共通であるが、IN(入力)用の前段ホース112はOUT(出力)用の供給ホース114に比べて太い、といった使い分け行うことが可能である。また、一部のガスについては、IN(入力)用の前段ホース112とOUT(出力)用の供給ホース114とで、太さを同じにする、といったことも可能である。
【0073】
また、配管接続盤部26においては、気体の比重の大小に応じて、前段ホース112、供給ホース114の接続位置が決められている。具体的には、上から、水素IN(入力)用、水素OUT(出力)用、酸素IN(入力)用、切断酸素OUT(出力)用、予熱酸素OUT(出力)用、パウダーエアーIN(入力)用、及び、パウダーエアーOUT(出力)用の接続位置の順で並んでいる。
【0074】
<<機械部32>>
図2(a)~(d)には、非切断作業時のガス切断ユニット12が示されているが、切断作業時には、パウダーディスペンサ38に、
図7に概略的に示すように、配管接続盤部26を介して空気(混合気生成用の空気(パウダーエアー))が供給される。
【0075】
切断作業時には、パウダーディスペンサ38の下部に、バルブ装置126が設けられる。バルブ装置126が開放されることにより、パウダーと空気の混合気が、パウダーディスペンサ38から切断トーチ44へ向かって送出される。
【0076】
機械部32には、混合気の生成に用いられる空気を供給するためのコンプレッサ128が配置されている。コンプレッサ128は、
図4(a)等に示すように、棚状の機械部内架台130に設置されている。コンプレッサ128の設置にあたっては、防振材(例えば防振ゴム)を用いて、機械部内架台130に設置することが可能である。機械部内架台130の脚部を、防振材を挟んで、例えばベース板16又はベース架台18に固定することも可能である。これらのようにすることで、コンプレッサ128の動作時に発生する振動が、防振材により絶縁され、周辺環境への振動伝達が軽減される。
【0077】
コンプレッサ128と配管接続盤部26の間にはエアドライヤ40が配置されている。混合気の生成に用いられる空気(パウダーエアー)は、前述したように、エアドライヤ40からの乾燥した空気である。
【0078】
<<ガス切断ユニット12のその他の機能>>
また、
図7に示すように、ガス切断ユニット12には、遠隔操作のための無線通信機器132とリモートコントローラ(以下「リモコン」と称する)134が備えられている。この無線通信機器132とリモコン134は、制御部30を遠隔地(例えば数十メートル離れた位置)から操作できるものである。作業者がリモコン134を操作することにより、制御部30に対する指示(コマンド)が入力される。通信規格には、例えば、Wi-Fiやブルートゥース(登録商標)等といった一般的な種々の無線通信規格を採用することが可能である。
【0079】
そして、操作者は、リモコン134を用い、ガス切断ユニット12から離れた位置において、個別のガスの供給や停止、全体のガスの供給や停止、ガス供給の緊急遮断(個別及び全体)等といった指示を入力する操作を行う。これらの操作が行われると、制御部30が、無線通信機器132の信号を受信し、受信した情報に応じて、配管接続盤部26内の各種バルブを制御する。
【0080】
また、ガス切断ユニット12は、ガス漏れ検知器136及び警報灯(三色灯など)138を備えている。そして、ガス切断ユニット12の制御部30は、ガスの検出値が閾値を超えた場合にガス漏れした旨の判定を行い、アラートを発報するための情報処理を実行する。アラートが発報される際には、警報灯138が所定の色で点灯又は点滅を行う。
【0081】
また、ガス切断ユニット12は、パウダー使用量の計測機能を有している。ガス切断ユニット12の制御部30は、パウダーの使用量を常時計測しており、リアルタイムでパウダー使用量を把握している。パウダー使用量の計測は、例えば、ホッパ36及び/又はパウダーディスペンサ38にパウダー重量センサー(図示略)を設け、パウダー重量の減り具合を監視することにより行うことが可能である。
【0082】
<集塵機ユニット52における各部の役割>
<<ブロア66>>
図8に概略的に示すように、集塵機ユニット52のブロア66は、フィルタ部68に接続されている。ブロア66は、吸気と排気を行い、ダクト部76を介して塵埃や排気を吸引し、フィルタ部68へ送出する。
【0083】
<<エアータンク72>>
エアータンク72は、コンプレッサ70から送出された圧縮空気を貯える。エアータンク72の圧縮空気は、パルス状に送出され、フィルタ部68に吹き付けられる。
【0084】
<<フィルタ部68>>
フィルタ部68では、排気中の塵埃が回収される。フィルタ部68における塵埃の回収は、フィルタ(図示略)に対し、圧縮空気をパルス状に吹き付けて衝撃を与え、フィルタから塵埃(付着物)を落下させることにより行われる。圧縮空気の吹き付けは、所定時間間隔(例えば数分間隔など)で行われる。このように、排気は、フィルタ部68において濾過され、浄化されてから、外気中に放出される。
【0085】
フィルタ部68には、塵埃収容部154が設けられている。塵埃収容部154は、圧縮空気により吹き飛ばされて落下した塵埃を溜める機能を有している。塵埃収容部154はフィルタ部68に引き出し状に設けられており、フィルタ部68に対して脱着することが可能である。例えば、切断装置ユニット10の周辺の作業者が手作業により、塵埃収容部154をフィルタ部68から取り外すことにより、塵埃収容部154に溜まった塵埃を容易に廃棄することができる。
【0086】
フィルタ部68の下部には、柔軟な素材により袋状に形成された拡張部156が接続される。拡張部156は、補助的な塵埃収容部として機能する。収容することができる塵埃の総量は、塵埃収容部154と拡張部の大きさにより決まる。
【0087】
<集塵機ユニット52のその他の機能>
前述したように、集塵機ユニット52においては、切断作業時に、排気温度が閾値を超えると、バルブ装置106が作動し、外気導入が行われる。その際、アラートが発報される。アラートの発報には、例えば、
図7の警報灯(三色灯など)138を利用することが可能である。
【0088】
また、集塵機ユニット52には、集塵機ユニット52から離れた場所でも、風量をリモコンで制御することができる遠隔操作機能が備えられている。風量の変更は回転翼の回転数を制御することにより行われる。
図8に示すように、集塵機ユニット52には、遠隔操作のための無線通信機158が備えられている。この無線通信機158は、リモコン134との間で無線通信を行うことが可能である。リモコン134は、
図7に示されたのと同じものであり、チャンネルを切り替えて、無線通信機158とも通信を行うことが可能である。
【0089】
リモコン134は、集塵機ユニット52の制御部75を操作できるものである。作業者がリモコン134を操作することにより、制御部75に対する指示(コマンド)が入力される。通信規格には、例えば、Wi-Fiやブルートゥース(登録商標)等といった一般的な種々の無線通信規格を採用することが可能である。
【0090】
なお、ブロア66とフィルタ部68の組み合わせを集塵機と称することも可能である。また、ブロア66とフィルタ部68に、塵埃収容部154等を併せて集塵機と称することも可能である。
【0091】
また、本実施形態では、無線通信機158を用いた無線通信により、集塵機ユニット52を遠隔制御できるようにしているが、これに限定されず、例えば、有線通信のリモコン(有線の制御盤等を含む)など有線通信機器を用いて、集塵機ユニット52を制御できるようにしてもよい。また、状況に応じて選択的に、無線及び有線のいずれでも集塵機ユニット52を制御できるようにしてもよい。さらに、集塵機ユニット52の制御を有線で行い、アラートの発報を無線で行う、といったことも可能である。
【0092】
<実施形態に係る切断装置ユニット10の主なメリット>
以上説明したような切断装置ユニット10によれば、切断装置ユニット10は、トラック車両1により運搬が可能であるため、各地への運搬を容易に行うことが可能である。
【0093】
また、切断装置ユニット10は、必要な機器が、ガス切断ユニット12と集塵機ユニット52とに集約されている。したがって、必要な機器を、コンパクトにまとめて配置することが可能である。このことによっても、切断装置ユニット10を、トラック車両1により容易に運搬することが可能である。また、切断装置ユニット10を用いて、各地の作業現場において容易に、周辺環境への影響が少ない切断システムを構築することが可能である。
【0094】
<実施形態から抽出可能な発明>
実施形態からは、以下のような発明を抽出することができる。
(1)搬送車両(トラック車両1など)に搭載可能な大きさを有し、少なくとも、
切断対象物(切断対象物84など)を火炎(火炎82など)により切断するための切断トーチ(切断トーチ44など)に切断用パウダー(金属パウダーなど)を供給するためのパウダー供給部(パウダーディスペンサ38など)と、
前記切断対象物の切断に伴って生じた排気中の塵埃を集める集塵部(ブロア66など)と、を保持した可搬式切断装置ユニット。
(2)前記パウダー供給部を有する第1ユニット(ガス切断ユニット12など)と、
前記集塵部を有する第2ユニット(集塵機ユニット52など)と、を備えた、上記(1)に記載の可搬式切断装置ユニット。
(3)前記第1ユニットと、前記第2ユニットが、ジョイント部(ジョイント部22、62など)を介して結合と分離が可能である上記(2)に記載の可搬式切断装置ユニット。
(4)前記第1ユニットに、
前記切断用パウダーの供給を制御可能な制御部(制御部30など)と、
前記制御部との通信が可能な通信機器(無線通信機器132、有線通信機器など)と、が備えられ、
切断作業時に、
前記無線通信機器を介して前記制御部に、前記切断用パウダーの供給及び供給停止のための指示を入力可能である上記(2)又は(3)のいずれかに記載の可搬式切断装置ユニット。
(5)切断作業時に、
前記集塵部に、前記排気を導くダクト部(ダクト部76など)が接続され、
前記排気の流動経路中(ダクト部76の中、ブロア66の入口部など)に配置されて前記排気の温度を検出する温度検出部(温度センサー108など)と、
前記ダクト部への冷却用気体の導入が可能な開閉部(バルブ装置106など)と、が備えられ、
前記第2ユニットに、
前記温度検出部の検出結果に基づいて前記開閉部を制御可能な制御部(制御部75など)が備えられた請求項2又は3のいずれかに記載の可搬式切断装置ユニット。
(6)搬送車両(トラック車両1など)に搭載可能な大きさを有し、少なくとも、
切断対象物(切断対象物84など)を火炎(火炎82など)により切断するための切断トーチ(切断トーチ44など)に切断用パウダー(金属パウダーなど)を供給するためのパウダー供給部(パウダーディスペンサ38など)と、
前記切断対象物の切断に伴って生じた排気中の塵埃を集める集塵部(ブロア66など)と、を保持した可搬式切断装置ユニット(切断装置ユニット10など)を備え、
切断作業時に、
前記集塵部に、前記排気を導くダクト部(ダクト部76など)が接続され、
前記排気の流動経路中に配置されて前記排気の温度を検出する温度検出部(温度センサー108など)と、
前記ダクト部への冷却用気体の導入が可能な開閉部(バルブ装置106など)と、が備えられ、
前記温度検出部の検出結果に基づいて前記開閉部が制御される切断システム。
【0095】
<その他>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で多くの変形が可能である。そして、説明した実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0096】
切断トーチ44は、作業者80が手で把持可能なものであるが、切断トーチ44の支持は、必ずしも、作業者80が手で直接把持することに限られるものではない。例えば、切断トーチ44の把持装置(図示略)を設け、この把持装置により切断トーチ44を支持することも可能である。把持装置としては、比較的軽量な簡易タイプ(ホルダタイプやスタンドタイプ、ハンドルタイプなど)のものや、重機への装着が可能な重機アタッチメント等を例示できる。
【0097】
また、切断対象物84としては、鉄筋コンクリート以外に、種々のものを採用できる。例えば、切断対象物として、アクリル樹脂ガラス製の物、鋼板、ソイル柱列壁(セメント混合土砂にH形鋼を芯材として埋め込んだもの)なども例示できる。また、切断対象物として、建設現場のものや、解体工事現場のもの、及び、鉄を含む構造物以外の構造物などを例示できる。
【符号の説明】
【0098】
1 :トラック車両
10 :可搬式切断装置ユニット
12 :ガス切断ユニット
14 :フレーム部
16 :ベース板
18 :ベース架台
20 :転倒防止アングル
22 :ジョイント部
24 :吊り金具
26 :配管接続盤部
28 :配電盤部
30 :制御部
32 :機械部
34 :配管継手
36 :ホッパ
38 :パウダーディスペンサ
40 :エアドライヤ
42 :トーチラック
44 :切断トーチ
52 :集塵機ユニット
54 :フレーム部
56 :ベース板
58 :ベース架台
60 :転倒防止アングル
62 :ジョイント部
64 :吊り金具
66 :ブロア
68 :フィルタ部
70 :コンプレッサ
72 :エアータンク
74 :配電盤部
75 :制御部
76 :ダクト部
78 :ボンベラック
80 :作業者
82 :火炎
84 :切断対象物
86 :裂開部
88 :シールド金属板
89 :開口部
90 :チャンバ部
92 :作業側開口部
94 :ワイヤ
96 :防護シート
102、104 :外気導入部
106 :バルブ装置
108 :温度センサー
112 :前段ホース
114 :供給ホース
126 :バルブ装置
128 :コンプレッサ
130 :機械部内架台
132 :無線通信機
134 :リモコン
136 :検知器
138 :警報灯
154 :塵埃収容部
156 :拡張部