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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080537
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】フィルター清掃装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 3/06 20060101AFI20240606BHJP
   B01D 46/68 20220101ALI20240606BHJP
   B01D 46/76 20220101ALI20240606BHJP
   B01D 46/52 20060101ALI20240606BHJP
   F24F 8/90 20210101ALI20240606BHJP
【FI】
B60H3/06 631
B01D46/68
B01D46/76
B01D46/52 A
F24F8/90 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193836
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】391044797
【氏名又は名称】株式会社コーワ
(72)【発明者】
【氏名】中川 和紀
【テーマコード(参考)】
3L211
4D058
【Fターム(参考)】
3L211BA52
3L211BA54
3L211DA75
4D058JA14
4D058KA01
4D058MA03
4D058MA06
4D058MA47
4D058SA20
(57)【要約】
【課題】 製造コストの低減を図ることができると共に、車両を使用するたびに頻繁にフィルターの清掃を行わせることができるフィルター清掃装置を提供する。
【解決手段】 フィルター清掃装置10は、フィルター1aと、フィルター枠1bとを有するフィルター体1と、フィルター体1を叩打し、又はフィルター体1に振動を与えてフィルター体1に付着した塵埃を剥離させる除塵体2と、除塵体2を支持する共に、除塵体2の可動を制御する可動機構3とを有しており、可動機構3は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、除塵体2がフィルター1aに対して相対的に可動できるようにしている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用空調設備に設置されるフィルター清掃装置であって、
前記フィルター清掃装置は、フィルターと、フィルター枠と、を有するフィルター体と、
前記フィルター体を叩打し、又は前記フィルター体に振動を与えて前記フィルター体に付着した塵埃を剥離させる除塵体と、
前記除塵体を支持する共に、該除塵体の可動を制御する可動機構と、を有し、
前記可動機構は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記除塵体が前記フィルターに対して相対的に可動することを特徴とするフィルター清掃装置
【請求項2】
可動機構は、除塵体を保持する棒状又はレール状の支持台を有し、
前記支持台の一端又は両端は、フィルターの近傍に固定されていると共に、前記除塵体は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記支持台の長手方向に沿って可動することを特徴とする請求項1に記載のフィルター清掃装置
【請求項3】
可動機構は、除塵体を保持する棒状又はレール状の支持台と、該支持台の端部又は中央部に形成された摺接部に摺接すると共に、該摺接部を支持する案内レールと、を有し、
前記支持台は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記案内レールの長手方向に沿って往復可動するものであって、
前記案内レールは、フィルターの端部近傍に設けられており、
前記除塵体は、前記支持台に固定、又は車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記支持台の長手方向に沿って可動することを特徴とする請求項1に記載のフィルター清掃装置
【請求項4】
案内レールは、長手方向の端部近傍に緩衝装置が設置されていると共に、前記緩衝装置は支持台が近づいた場合又は当接した場合に、前記支持台に対して反発力を生じさせ、前記案内レールとの衝突を緩和できることを特徴とする請求項3に記載のフィルター清掃装置
【請求項5】
支持台は、案内レールにより支持された摺接部近傍の前記支持台の長手方向における単位長さあたりの荷重が、前記支持台の摺接部近傍以外の単位長さあたりの荷重よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載のフィルター清掃装置
【請求項6】
可動機構は、除塵体を保持する棒状又はレール状の支持台を有し、
前記支持台の一端は、フィルターの近傍の回動軸に回動可能に固定されていると共に、他端は、往復回動可能な自由端となっているものであって、前記除塵体は、前記支持台に固定、又は車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記支持台の長手方向に沿って可動することを特徴とする請求項1に記載のフィルター清掃装置
【請求項7】
可動機構は、除塵体を挟んでフィルターと対向する位置に設けられる略蓋形状の支持台を有し、前記除塵体は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記支持台に沿って自由に可動することを特徴とする請求項1に記載のフィルター清掃装置
【請求項8】
支持台は、長手方向の端部近傍に緩衝装置が設置されていると共に、前記緩衝装置は除塵体が近づいた場合又は当接した場合に、前記除塵体に対して反発力を生じさせ、前記支持台との衝突を緩和できることを特徴とする請求項2又は3に記載のフィルター清掃装置
【請求項9】
フィルターは複数のプリーツを有すると共に、除塵体は前記プリーツを叩打し、又は前記プリーツに振動を与えることで、前記フィルターに付着した塵埃を剥離させることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のフィルター清掃装置
【請求項10】
除塵体は略球体であって、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によってフィルター表面を転がりつつ、プリーツを叩打することを特徴とする請求項9に記載のフィルター清掃装置
【請求項11】
フィルターは、プリーツの一部に形状を維持する補強部を有し、除塵体は前記補強部を叩打することによって前記フィルターに振動を与えることを特徴とする請求項9に記載のフィルター清掃装置
【請求項12】
可動機構は、案内レール又は支持台の長手方向が、水平方向に対して傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のフィルター清掃装置
【請求項13】
フィルターの近傍であって、除塵体の可動方向に対して直交する方向の少なくとも一方側にダストボックスが形成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のフィルター清掃装置
【請求項14】
可動機構は、除塵体の可動範囲において、該除塵体とフィルター体とが当接しない位置が含まれていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のフィルター清掃装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両用空調設備に設置されるフィルター清掃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用空調設備では外気を取り入れて空気を調和し室内に送り込む場合に、フィルターを通して外気を浄化した後に室内へと供給するようになっており、フィルターには外気中に含まれる塵埃が堆積して目詰まりが生じるため、フィルターの清掃が必要とされている。また、室内で内気を循環させる場合も同様に、室内で発生した塵埃を浄化するためにフィルターが設けられており、フィルターに堆積した塵埃の清掃が必要とされている。そして、このフィルターの清掃を自動化した発明が従来から知られている。(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の車両用空調装置は、小物を収脱するためにグラブボックスを開放すると、ワイヤがブラシボックスを引張り、掻落し部材がエアフィルター上の異物を除去して排気ダクトから排出する構成としており、グラブボックスを閉止すると引張りコイルばねによってブラシボックス及び掻落し部材は原位置へ戻る構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-216712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の車両用空調装置は、掻落し部材を駆動させるモーターを必要とせず、該モーターに電気を供給する配線も必要としないことから、製造コストの低減を図ることができる装置であった。しかしながら、グラブボックスの開け閉めを行わない場合にはフィルターに塵埃が堆積したままの状態となり、目詰まりが生じる課題を有するものであった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、モーターや電気配線を必要としないので製造コストの低減を図ることができると共に、車両を使用するたびに頻繁にフィルターの清掃を行わせることができるフィルター清掃装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、請求項1の発明は、車両用空調設備に設置されるフィルター清掃装置であって、前記フィルター清掃装置は、フィルターと、フィルター枠と、を有するフィルター体と、前記フィルター体を叩打し、又は前記フィルター体に振動を与えて前記フィルター体に付着した塵埃を剥離させる除塵体と、前記除塵体を支持する共に、該除塵体の可動を制御する可動機構と、を有し、前記可動機構は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記除塵体が前記フィルターに対して相対的に可動することを特徴としている。
【0008】
請求項1の発明では、可動機構が車両の加減速及び操舵により生じる慣性力を利用して、除塵体がフィルターに対して相対的に可動できるように制御する構成としたので、モーターや電気配線を必要とせず、製造コストの低減を図ることができる。また、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力は、車両を使用するたびに発生するので、頻繁にフィルターの清掃を行わせることができる。また、フィルター体を叩打し、又はフィルター体に振動を与えて塵埃を剥離させるため、フィルターの内部に入り込んだ、排気ガス等に含まれる細塵を効果的に除去することができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、可動機構は、除塵体を保持する棒状又はレール状の支持台を有し、前記支持台の一端又は両端は、フィルターの近傍に固定されていると共に、前記除塵体は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記支持台の長手方向に沿って可動することを特徴としている。これにより、慣性力を支持台の長手方向に沿った力に変換して利用することができる。また、フィルターの規定箇所を除塵体で叩打させることができるため、効果的に塵埃を除去することができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、可動機構は、除塵体を保持する棒状又はレール状の支持台と、該支持台の端部又は中央部に形成された摺接部に摺接すると共に、該摺接部を支持する案内レールと、を有し、前記支持台は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記案内レールの長手方向に沿って往復可動するものであって、前記案内レールは、フィルターの端部近傍に設けられており、前記除塵体は、前記支持台に固定、又は車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記支持台の長手方向に沿って可動することを特徴としている。これにより、慣性力をフィルターに沿った直線方向の力に変換して利用することができる。また、フィルターの広範囲を除塵体で叩打させることができるため、フィルター全体を効率よく塵埃を除去することができる。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、案内レールは、長手方向の端部近傍に緩衝装置が設置されていると共に、前記緩衝装置は支持台が近づいた場合又は当接した場合に、前記支持台に対して反発力を生じさせ、前記案内レールとの衝突を緩和できることを特徴としている。これにより、大きな慣性力が加わった場合でも可動機構が損傷するのを防ぐことができる。
【0012】
請求項5の発明は、請求項3の発明において、支持台は、案内レールにより支持された摺接部近傍の前記支持台の長手方向における単位長さあたりの荷重が、前記支持台の摺接部近傍以外の単位長さあたりの荷重よりも大きいことを特徴としている。これにより、支持台に作用する慣性力を大きくすることができると共に、支持台の変形も抑制され、支持台は、案内レール上を滑らかに摺動することができる。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1の発明において、可動機構は、除塵体を保持する棒状又はレール状の支持台を有し、前記支持台の一端は、フィルターの近傍の回動軸に回動可能に固定されていると共に、他端は、往復回動可能な自由端となっているものであって、前記除塵体は、前記支持台に固定、又は車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記支持台の長手方向に沿って可動することを特徴としている。これにより、可動機構を簡素化することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1の発明において、可動機構は、除塵体を挟んでフィルターと対向する位置に設けられる略蓋形状の支持台を有し、前記除塵体は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記支持台に沿って自由に可動することを特徴としている。これにより、可動機構を簡素化することができ、製造コストの低減を図ることができる。また、除塵体がレール等で拘束されることがないので、慣性力の働く方向にスムーズに可動することができる。
【0015】
請求項8の発明は、請求項2又は3の発明において、支持台は、長手方向の端部近傍に緩衝装置が設置されていると共に、前記緩衝装置は除塵体が近づいた場合又は当接した場合に、前記除塵体に対して反発力を生じさせ、前記支持台との衝突を緩和できることを特徴としている。これにより、大きな慣性力が加わった場合でも可動機構が損傷するのを防ぐことができる。
【0016】
請求項9の発明は、請求項1~7のいずれかの発明において、フィルターは複数のプリーツを有すると共に、除塵体は前記プリーツを叩打し、又は前記プリーツに振動を与えることで、前記フィルターに付着した塵埃を剥離させることを特徴としている。これにより、除塵体が複数のプリーツを有するフィルターを叩打し、又は振動を与えることで塵埃を剥離させることができるので、可動機構を簡素化することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0017】
請求項10の発明は、請求項9の発明において、除塵体は略球体であって、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によってフィルター表面を転がりつつ、プリーツを叩打することを特徴としている。これにより、可動機構を一層簡素化することができ、製造コストの低減を図ることができる。また、除塵体がフィルターに衝撃を与えつつも、フィルターとの過度な摩擦を低減することができるため、耐久性が向上し、メンテナンス頻度を低減させることができる。
【0018】
請求項11の発明は、請求項9の発明において、フィルターは、プリーツの一部に形状を維持する補強部を有し、除塵体は前記補強部を叩打することによって前記フィルターに振動を与えることを特徴としている。これにより、補強部によって複数のプリーツ有するフィルターの耐久性を向上させることができる。また、フィルターの形状が維持されることで、除塵体が衝撃を与えやすくなると共に、フィルター全体に衝撃が伝わりやすくなり、より効率よく塵埃を剥離させることができる。
【0019】
請求項12の発明は、請求項1~7のいずれかの発明において、可動機構は、案内レール又は支持台の長手方向が、水平方向に対して傾斜して形成されていることを特徴としている。これにより、車両に慣性力が作用していない状態であっても除塵体に重力が作用してフィルターのどちらかの端部側に移動させることができ、除塵体がフィルターの中間位置で停止して室内への通風を阻害するのを防ぐことができる。
【0020】
請求項13の発明は、請求項1~7のいずれかの発明において、フィルターの近傍であって、除塵体の可動方向に対して直交する方向の少なくとも一方側にダストボックスが形成されていることを特徴としている。これにより、除塵体によりフィルターから剥離された塵埃をダストボックスに蓄積させることができ、蓄積した塵埃をまとめて外部に排出することができる。
【0021】
請求項14の発明は、請求項1~7のいずれかの発明において、可動機構は、除塵体の可動範囲において、該除塵体とフィルター体とが当接しない位置が含まれていることを特徴としている。これにより、勢いよくフィルター体を叩打し、又はフィルター体に振動を与えることができるので、確実に塵埃をフィルターから剥離させることができる。また、除塵体の初動がスムーズとなり、小さな車両の慣性力によっても、除塵体を効率良く可動させることができる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明は、モーターや電気配線を必要とせず、製造コストの低減を図ることができると共に、頻繁にフィルターの清掃を行わせることができる。また、請求項2の発明は、慣性力を支持台の長手方向に沿った力に変換して利用することができる。また、請求項3の発明は、慣性力をフィルターに沿った直線方向の力に変換して利用することができる。
【0023】
請求項4及び8の発明は、大きな慣性力が加わった場合でも可動機構が損傷するのを防ぐことができる。また、請求項5の発明は、支持台に作用する慣性力を大きくすることができると共に、支持台の変形も抑制され、支持台は、案内レール上を滑らかに摺動することができる。また、請求項6、7、9及び10の発明は、可動機構を簡素化することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0024】
請求項11の発明は、補強部によって、複数のプリーツを有するフィルターの耐久性を向上させることができる。また、請求項12の発明は、除塵体がフィルターの中間位置で停止して室内への通風を阻害するのを防ぐことができる。
【0025】
請求項13の発明は、除塵体によりフィルターから剥離された塵埃をダストボックスに蓄積させることができ、蓄積した塵埃をまとめて外部に排出することができる。また、請求項14の発明は、確実に塵埃をフィルターから剥離させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】(a)本発明に係るフィルター清掃装置を車両用空調設備に設置した状態を示す断面図(b)本発明に係るフィルター清掃装置の第1実施形態を示す斜視図
図2】(a)車両後方に向けて慣性力が作用する場合の側面図(b)車両前方に向けて慣性力が作用する場合の側面図
図3】(a)及び(b)本発明に係るフィルター清掃装置の第2実施形態を示す斜視図
図4】本発明に係るフィルター清掃装置の第3実施形態を示す斜視図
図5】(a)緩衝装置の第1実施形態を示す断面図(b)緩衝装置の第2実施形態を示す断面図(c)緩衝装置の第3実施形態を示す断面図
図6】本発明に係るフィルター清掃装置の第4実施形態を示す斜視図
図7】(a)及び(b)本発明に係るフィルター清掃装置の第5実施形態を示す斜視図(c)第5実施形態のフィルター清掃装置を構成する支持台の斜視図
図8】(a)及び(b)本発明に係るフィルター清掃装置の第6実施形態を示す斜視図(c)第6実施形態のフィルター清掃装置を構成する支持台の斜視図
図9】本発明に係るフィルター清掃装置の第7実施形態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。図1(a)は、本発明に係るフィルター清掃装置を車両用空調設備に設置した状態を示す断面図であり、図1(b)は、本発明に係るフィルター清掃装置の第1実施形態を示す斜視図である。また、図2(a)は、車両後方に向けて慣性力が作用する場合の側面図であり、図2(b)は、車両前方に向けて慣性力が作用する場合の側面図である。これらの図を用いて本発明に係るフィルター清掃装置の第1実施形態について以下に説明する。
【0028】
第1実施形態のフィルター清掃装置10は、車両用空調設備に設置されるものであり、図1(a)に示すように、車両用エアコン本体ケース81の内部に設置されている送風ファン82の上流側であって、矢印方向から外気が導入される通風路内に基台9を介して設置され、フィルター体1を通過した空気が室内に供給される。
【0029】
フィルター清掃装置10は、フィルター1aと、フィルター枠1bとを有するフィルター体1と、フィルター体1を叩打し、又はフィルター体1に振動を与えてフィルター体1に付着した塵埃を剥離させる除塵体2と、除塵体2を支持する共に、除塵体2の可動を制御する可動機構3とを有している。
【0030】
可動機構3は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、除塵体2がフィルター1aに対して相対的に可動できるようにしている。これにより、モーターや電気配線を必要とせず、車両の電力を使用することもないため、車両全体の消費電力に負担をかけることなく、環境に優しい構造であると共に、製造コストの低減を図ることができる。また、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力は、車両を使用するたびに発生するので、頻繁にフィルター1aの清掃を行わせることができる。また、フィルター体1を叩打し、又はフィルター体1に振動を与えて塵埃を剥離させるため、フィルター1aの内部に入り込んだ、排気ガス等に含まれる細塵を効果的に除去することができる。尚、除塵体2がフィルター枠1bを叩打し、衝撃を与える構造としてもよく、この構造も本発明に含まれる。
【0031】
可動機構3は、除塵体2を保持する棒状又はレール状の支持台4を有しており、支持台4の一端又は両端は、フィルター1aの近傍に固定されていると共に、除塵体2は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、支持台4の長手方向に沿って可動する。これにより、慣性力をフィルターに沿った直線方向の力に変換して利用することができる。また、フィルター1aの規定箇所を除塵体2で叩打させることができるため、効果的に塵埃を除去することができる。尚、支持台は、例えば棒状の場合は断面が多角形や丸形のものが想定され、レール状の場合は除塵体を両側から支えるレールや片側のみで支えるレールなどが想定され、除塵体を支持する機能を持つ部材であれば、本発明に含まれる。
【0032】
フィルター1aは、複数のプリーツを有すると共に、除塵体は、プリーツを叩打し、又はプリーツに振動を与えることで、フィルターに付着した塵埃を剥離させる構成としている。これにより、除塵体が複数のプリーツを有するフィルター1aを叩打し、又は振動を与えることで塵埃を剥離させることができるので、可動機構3を簡素化することができ、製造コストの低減を図ることができる。尚、図示しないが、平面形状のフィルターを採用した場合は、除塵体はフィルターの面に対して垂直方向に叩打し、又は衝撃を与えることで、フィルターに付着した塵埃を剥離させるものであり、本発明に含まれる。更に、除塵体が直接的にフィルターを叩打せず、フィルター枠を叩打して、フィルター体全体に衝撃を与えた場合も、本発明に含まれる。
【0033】
また、フィルター1aは、プリーツの一部に形状を維持する補強部1cを有しており、除塵体2は補強部1cを叩打することによってフィルター1aに振動を与える構成としている。これにより、補強部1cによって複数のプリーツ有するフィルター1aの耐久性を向上させることができる。また、フィルター1aの形状が維持されることで、除塵体2が衝撃を与えやすくなると共に、フィルター1a全体に衝撃が伝わりやすくなり、より効率よく塵埃を剥離させることができる。尚、補強部の構造は樹脂やホットメルトが想定されるが、フィルターを補強する機能を有するものであれば、本発明に含まれる。
【0034】
除塵体2は、略球体であって、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によってフィルター1aの表面を転がりつつ、プリーツを叩打する構成としている。これにより、可動機構3を一層簡素化することができ、製造コストの低減を図ることができる。また、除塵体2がフィルターに衝撃を与えつつも、フィルター1aとの過度な摩擦を低減することができるため、耐久性が向上し、メンテナンス頻度を低減させることができる。
【0035】
可動機構3は、支持台4の長手方向が、水平方向に対して傾斜して形成されている構成としている。これにより、車両に慣性力が作用していない状態であっても除塵体2に重力が作用してフィルター1aのどちらかの端部側に移動させることができ、除塵体2がフィルターの中間位置で停止して室内への通風を阻害するのを防ぐことができる。
【0036】
尚、可動機構3は、除塵体2の可動範囲において、除塵体2とフィルター体1とが当接しない位置が含まれている構成とするのが好ましい。これにより、勢いよくフィルター体1を叩打し、又はフィルター体1に振動を与えることができるので、確実に塵埃をフィルター1aから剥離させることができる。また、除塵体の初動がスムーズとなり、小さな車両の慣性力によっても、除塵体を効率良く可動させることができる。
【0037】
ここで慣性力は、車両の加減速及び操舵により生じるものであり、車両が加速している状態では、図2(a)に示すように、運転者の前方から後方に向けて慣性力が作用するので、フィルター清掃装置10の可動機構3にも車両の前方から後方に向けて慣性力が作用することとなり、フィルター体1の車両前方側に位置していた除塵体2がフィルター体1の車両後方側に向けて可動することとなる。反対に、車両が減速している状態では、図2(b)に示すように、運転者の後方から前方に向けて慣性力が作用するので、フィルター清掃装置10の可動機構3にも車両の後方から前方に向けて慣性力が作用することとなり、フィルター体1の車両後方側に位置していた除塵体2がフィルター体1の車両前方側に向けて可動することとなる。また、図示しないが、操舵によって車両の進行方向が変化することによっても慣性力が発生し、除塵体2がフィルター体1に対して相対的に可動することとなる。尚、フィルター体1の面を垂直方向に立てると共に、面を前後方向、左右方向に向けて配置した場合も、車両の加速及び減速による慣性力や、操舵によって車両の進行方向が変化する慣性力により、除塵体がフィルター体に対して相対的に可動させることができる。
【0038】
図3(a)及び(b)は、本発明に係るフィルター清掃装置の第2実施形態を示す斜視図であり、図3(a)はフィルターの下流側から図示し、図3(b)はフィルターの上流側から図示している。尚、図3(b)では基台9を取り外した状態を示している。また、フィルター体1の面を垂直方向に立てて配置した場合を想定している。第2実施形態のフィルター清掃装置20では、フィルター1aの近傍であって、除塵体2の可動方向に対して直交する方向の一方側にダストボックス7が形成されている構成としている。これにより、除塵体2によりフィルター1aから剥離された塵埃14をダストボックス7に蓄積させることができ、蓄積した塵埃14をまとめて外部に排出することができる。その他の構成は第1実施形態のフィルター清掃装置10と同様なので説明は省略する。
【0039】
図4は、本発明に係るフィルター清掃装置の第3実施形態を示す斜視図である。第3実施形態のフィルター清掃装置30では、支持台4aは、長手方向の端部近傍に緩衝装置6aが設置されていると共に、緩衝装置6aは除塵体2aが近づいた場合又は当接した場合に、除塵体2aに対して反発力を生じさせ、除塵体2aとの衝突を緩和できる構成としている。これにより、大きな慣性力が加わった場合でも除塵体2aや可動機構3aが損傷するのを防ぐことができる。
【0040】
また、支持台4aの端部近傍には、フィルター枠1bとの間に切り欠き部1cが形成されており、除塵体2aとフィルター体1とが当接しない構成としている。これにより、除塵体2aが支持台4aの端部に移動した際は、除塵体2aにかかる抵抗が小さくなり、除塵体の初動がスムーズになると共に、除塵体2aを勢いよく可動させることができるため、除塵体2aがフィルター1aに強い衝撃を与えることができる。
【0041】
図5(a)~(c)は、図4のA-A断面を用いて緩衝装置の第1実施形態~第3実施形態を示した断面図である。図5(a)に示す第1実施形態の緩衝装置6aは、支持台4の長手方向の両端部近傍に形成されており、側部には、除塵体2aに形成された凸部13a、13aが挿入される挿入孔6g、6gが形成されている。また、挿入孔6gには、付勢手段であるバネ6hが設置されており、除塵体2aの凸部13aがバネ6h押圧すると跳ね返される構成としている。これにより、大きな慣性力が加わった場合でも可動機構3が損傷するのを防ぐことができる。
【0042】
図5(b)に示す第2実施形態の緩衝装置6bは、支持台4の長手方向の両端部近傍に形成されており、側部には、除塵体2bに形成された磁石からなる凸部13b、13bが挿入される挿入孔6g、6gが形成されている。また、挿入孔6gには、凸部13bの対向する面と同じ磁極を、凸部13b側に有する磁石6iが設置されており、除塵体2bの凸部13bが磁石6i近づくと跳ね返される構成としている。これにより、大きな慣性力が加わった場合でも可動機構3が損傷するのを防ぐことができる。
【0043】
図5(c)に示す第3実施形態の緩衝装置6cは、支持台4の長手方向の両端部近傍に形成されており、側部には、除塵体2cに形成された軟質部材からなる凸部13c、13cが挿入される挿入孔6g、6gが形成されている。また、挿入孔6gには、軟質部材からなるクッション部材6jが設置されており、除塵体2cの凸部13cがクッション部材6jに当接すると両者が変形して衝撃力を吸収する構成としている。これにより、大きな慣性力が加わった場合でも可動機構3が損傷するのを防ぐことができる。
【0044】
図6は、本発明に係るフィルター清掃装置の第4実施形態を示す斜視図である。第4実施形態のフィルター清掃装置40では、可動機構3bは、除塵体2を保持するレール状の支持台4と、支持台4の端部に形成された摺接部8a、8aに摺接すると共に、摺接部を支持する案内レール5a、5aとを有しており、支持台4は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、案内レール5aの長手方向に沿って往復可動するものであって、案内レール5aは、フィルター1aの端部近傍に設けられており、除塵体2は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、支持台4の長手方向に沿って可動する構成としている。これにより、慣性力をフィルターに沿った直線方向の力に変換して利用することができる。
【0045】
図7の(a)及び(b)は、本発明に係るフィルター清掃装置の第5実施形態を示す斜視図であり、図7(a)はフィルターの下流側から図示し、図7(b)はフィルターの上流側から図示している。また、図7(c)は、第5実施形態のフィルター清掃装置を構成する支持台の斜視図である。第5実施形態のフィルター清掃装置50では、可動機構3cは、除塵体2dを保持する棒状の支持台4bと、支持台4bの端部に形成された摺接部8b、8bに摺接すると共に、摺接部8b、8bを支持する案内レール5b、5bとを有しており、支持台4bは、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、案内レール5bの長手方向に沿って往復可動するものであって、案内レール5bは、フィルター1aの端部近傍に設けられており、除塵体2dは、支持台4bに固定されている構成としている。これにより、慣性力をフィルター1aに沿った直線方向の力に変換して利用することができる。
【0046】
尚、第4実施形態のフィルター清掃装置40と第5実施形態のフィルター清掃装置50において、摺接部及び案内レールを支持台の両端部に形成しているが、支持台のどちらか一方の端部のみに形成してもよく、これも本発明に含まれる。また、摺接部及び案内レールを支持台の略中央部に形成した場合も、本発明に含まれる。
【0047】
また、第4実施形態のフィルター清掃装置40と第5実施形態のフィルター清掃装置50において、案内レールは、長手方向の端部近傍に緩衝装置が設置されていると共に、緩衝装置は支持台が近づいた場合又は当接した場合に、支持台に対して反発力を生じさせ、案内レールとの衝突を緩和できる構成とするのが好ましい。これにより、大きな慣性力が加わった場合でも可動機構が損傷するのを防ぐことができる。尚、緩衝装置の構成については、図5(a)~(c)に記載されている構成を適用することができるので、説明は省略する。
【0048】
また、第4実施形態のフィルター清掃装置40と第5実施形態のフィルター清掃装置50において、支持台は、案内レールにより支持された摺接部近傍の支持台の長手方向における単位長さあたりの荷重が、支持台の摺接部近傍以外の単位長さあたりの荷重よりも大きくするのが好ましい。これにより、支持台に作用する慣性力を大きくすることができると共に、支持台変形も抑制され、支持台は、案内レール上を滑らかに摺動することができる。
【0049】
図8の(a)及び(b)は、本発明に係るフィルター清掃装置の第6実施形態を示す斜視図であり、図8(a)はフィルターの上流側から図示し、図8(b)はフィルターの下流側から図示している。また、図8(c)は、第6実施形態のフィルター清掃装置を構成する支持台の斜視図である。第6実施形態のフィルター清掃装置60では、可動機構3dは、除塵体2eを保持する棒状の支持台4cを有し、支持台4cの一端は、フィルターの近傍の回動軸15に回動可能に固定されていると共に、他端は、往復回動可能な自由端となっているものであって、除塵体2eは、支持台4cに固定されている構成としている。尚、符号7aは、塵埃を回収するダストボックスであると共に、支持台4cの可動領域を制限するストッパー部材である。また、第6実施形態のフィルター清掃装置は、除塵体をフィルター面の上流側に配置した構造であり、除塵体はフィルター面の上流側と下流側のどちらに配置しても、同様の効果を発揮するものであり、本発明に含まれる。
【0050】
尚、図8(c)に示す支持台4c及び除塵体2eを図6に示すレール状の支持台4と略球体の除塵体2に変更して、除塵体2が車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、支持台4の長手方向に沿って可動する構成としてもよく、これも本発明に含まれる。また、除塵体2eは、凸状の部材や、略球状の回転体など、フィルター1aと当接し、衝撃を与える形状であれば、本発明に含まれる。
【0051】
図9は、本発明に係るフィルター清掃装置の第7実施形態を示す斜視図である。第7実施形態のフィルター清掃装置70では、可動機構3eは、除塵体2fを挟んでフィルター1aと対向する位置に設けられ、通風孔12を備えた略蓋形状の支持台4dを有しており、除塵体2fは、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、支持台4dに沿って自由に可動する構成としている。これにより、可動機構3eを簡素化することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係るフィルター清掃装置は、自動車等の車両用空調設備に設置されて利用される。
【符号の説明】
【0053】
1 フィルター体
1a フィルター
1b フィルター枠
1c 補強部
2、2a、2b、2c、2d、2e、2f 除塵体
3、3a、3b、3c、3d、3e 可動機構
4、4a、4b、4c、4d 支持台
5a、5b 案内レール
6、6a、6b、6c 緩衝装置
6g 挿入孔
6h バネ
6i 磁石
6j クッション部材
7、7a ダストボックス
8a、8b 摺接部
9 基台
10、20,30、40,50、60,70 フィルター清掃装置
12 通風孔
13a、13b、13c 凸部
14 塵埃
15 回動軸
81 車両用エアコン本体ケース
82 送風ファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9